JP2019030260A - 細胞生産方法及び細胞生産装置 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の細胞培養においては、ディッシュでの細胞の培養、ディッシュからの細胞の剥離、細胞の回収及び洗浄の各工程を経て、目的とする細胞が取得される。
このような細胞培養の手法において、細胞を大量生産する上では、細胞の生産に要する時間を短縮すること、細胞の生産工程を簡素化すること、及び、生産される細胞の品質を確保することが求められる。
なお、細胞の品質低下を抑制可能な細胞の生産方法として、特許文献1に記載された技術が知られている。
特許文献1に記載された技術においては、温度刺激による細胞の剥離方法を実現しており、トリプシンを用いることなく細胞を剥離するものとしている。そのため、特許文献1に記載された技術によれば、トリプシンによるタンパク質の溶解に起因して、細胞の増殖性や活性が低下することを抑制できると考えられる。
したがって、従来の技術においては、細胞を効率的かつ高品質に大量生産することが困難であった。
アモルファスカーボンの被膜を有する培養基材を用意する第1の工程と、
前記第1の工程で用意された前記培養基材において細胞を培養する第2の工程と、
前記第2の工程において培養された前記培養基材内の細胞に音響放射圧を付与することにより、培養された細胞を剥離する第3の工程と、
を含む。
[本発明の基本的概念]
本発明に係る細胞生産方法では、培養ディッシュ表面に所定のアモルファスカーボン膜を成膜し、この培養ディッシュに細胞の培地を形成して、接着性細胞を培養する。ここで成膜される所定のアモルファスカーボン膜には、DLC(Diamond−Like Carbon)あるいはPLC(Polymer−Like Carbon)の被膜が含まれるが、本実施形態においては、アモルファスカーボン膜の一例として、DLC被膜を培養ディッシュ表面に形成するものとする。以下、この構造を有する培養ディッシュを適宜「DLCコーティングディッシュ」と称する。そして、DLCコーティングディッシュの外底面(裏面)から振動子によって超音波振動を入力し、培養された細胞を音響放射圧によって剥離する。
このとき音響放射圧(超音波振動)を発生させる装置は、例えば、圧電素子を用いた超音波振動子等からなる振動発生装置を用いることができる。
本実施形態で用いられるDLCコーティングディッシュは、細胞の定着性が培養に適した表面特性であると共に、音響放射圧を付与した場合の細胞の剥離性がDLCの非成膜時に対して一定以上の表面特性となっている。
そのため、細胞の生産において、超音波振動をDLCコーティングディッシュに入力することで、音響放射圧によって細胞がDLCの被膜から容易に分離し、トリプシン等の酵素を用いることなく、培養された細胞を剥離・回収することができる。
したがって、本発明によれば、細胞の剥離工程及び回収工程において、トリプシン等の酵素による浸漬や洗浄が不要となるため、工程の簡素化、生産時間の短縮、生産される細胞の高活性化・高品質化等の効果を実現することができる。
即ち、本発明によれば、細胞をより効率的かつ高品質に大量生産することが可能となる。
なお、以下、培養の対象とする細胞がCHO(Chinese Hamster Ovary)である場合を想定して説明するが、iPS細胞等の各種接着性細胞を培養の対象とすることができる。また、本発明において、細胞の培養に用いられる培地としては、無血清の培地及び血清が添加された培地のいずれも採用可能である。
[培養ディッシュの構成]
本実施形態において用いられる培養ディッシュ(DLCコーティングディッシュ)は、ディッシュ表面に所定のDLC被膜が形成された構造を有している。
図1は、本実施形態で用いられるDLCコーティングディッシュ100の構成を示す模式図である。
図1においては、DLCコーティングディッシュ100の鉛直断面図が示されており、内周面及び内底面にDLCの被膜が形成された状態が模式的に示されている。なお、図1におけるDLC被膜の膜厚等は、説明の便宜上、実際の膜厚よりも誇張して示されている。
一方、細胞の培養作業の便宜上、DLCコーティングディッシュ100における細胞の培養状態を外部から視認可能であることが望ましく、例えば、DLCコーティングディッシュ100の蓋にはDLC被膜を形成しない(またはDLCコーティングディッシュ100よりも膜厚を薄く形成する)ことや、DLCコーティングディッシュ100に形成する膜の形態(膜厚及び膜種等)を、外部から細胞の培養状態を視認可能なものとすることが好適である。
また、本実施形態においては、1つのDLCコーティングディッシュ100を用いて、CHO細胞の培養及び音響放射圧による剥離を1回または複数回行い、剥離された細胞を回収することで、大量の培養細胞をトリプシン等の酵素を用いることなく生産することも可能である。この場合、CHO細胞の培養後、音響放射圧によって剥離された細胞をDLCコーティングディッシュ100から回収し、このDLCコーティングディッシュ100に残存した細胞をさらに培養することで、一旦、培養環境が整えられたDLCコーティングディッシュ100を再利用し、複数回の培養を行うことが可能である。
次に、本実施形態で用いられる細胞生産装置1の構成について説明する。
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る細胞生産装置1の全体構成を示す模式図である。また、図2Bは、本発明の第1実施形態に係る細胞生産装置1の使用形態例を示す模式図である。
図2A及び図2Bに示すように、細胞生産装置1は、加振ユニット10と、発信器20と、アンプ30と、コントローラ40とを備えている。
フェルト部材12は、円環形状に構成され、下側アクリル板11の上に設置される。また、フェルト部材12は、その上に設置される振動部材13を下側から支持する。
振動部材13は、圧電素子からなる超音波振動子等を備えて構成され、本実施形態においては、円環形状の部材として構成されている。また、振動部材13は、下面をフェルト部材12に支持されている。なお、後述するように、本実施形態においては、振動部材13が有する固有振動数の範囲をカバーするように、振動部材13における加振振動数がスイープされる。これにより、DLCコーティングディッシュ100の個体差等、条件の相違がある場合であっても、これらの条件を吸収して、振動部材13に固有振動(超音波振動)を確実に発生させることができる。
上側アクリル板16は、方形のアクリル樹脂によって構成され、上側シリコーンラバー部材15の上に設置される。また、上側アクリル板16は、上側シリコーンラバー部材15と同様に、中央にDLCコーティングディッシュ100を収容する貫通穴を有すると共に、上側シリコーンラバー部材15を上側から支持する。なお、上側アクリル板16に代えて、ポリカーボネート製の板状部材等を用いることとしてもよい。
さらに、このように構成された加振ユニット10において、図2Bに示すように、上側シリコーンラバー部材15及び上側アクリル板16に形成された貫通穴内にDLCコーティングディッシュ100が配置され、ガラス板14上にDLCコーティングディッシュ100が載置されると共に、重りWがDLCコーティングディッシュ100の蓋に載せられた状態で、超音波振動が入力される。
アンプ30は、発信器20によって発生された交流信号を目的とするレベルに増幅する。アンプ30の出力は、振動部材13における圧電素子の駆動電圧として印加される。
コントローラ40は、PC(Personal Computer)あるいはPLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置によって構成される。コントローラ40には、振動部材13に対して印加する加振振動数の範囲が設定されている。この加振振動数の範囲は、振動部材13が有する固有振動数の範囲をカバーするように設定されている。そして、コントローラ40は、発信器20に対して指示信号を出力し、設定された加振振動数の範囲を所定時間でスイープさせる。
次に、細胞生産装置1の動作を説明する。
図3は、細胞生産装置1の動作時におけるDLCコーティングディッシュ100内の状態遷移を模式的に示す図である。
以下、図3を適宜参照しつつ、細胞生産装置1の動作について説明する。
[装置の基本動作]
細胞生産装置1の駆動に先立ち、培養工程として、DLCコーティングディッシュ100の内底面に培地を形成し、この培地に細胞を培養する(図3における状態(a))。
そして、剥離工程として、細胞生産装置1によって、培養されたDLCコーティングディッシュ100内の細胞に音響放射圧を付与し、接着性細胞を剥離させる。
具体的には、剥離工程として、細胞生産装置1による以下のような処理が実行される。
細胞が培養されたDLCコーティングディッシュ100を細胞生産装置1のステージ(ガラス板14)上に載置する。
この状態において、細胞生産装置1の発信器20が、設定された周波数で交流信号を発生させ、アンプ30が、発生された交流信号を増幅して振動部材13の圧電素子に印加する。このとき、コントローラ40に設定された加振振動数の範囲をスイープさせて、発信器20から交流信号を発生させる。
すると、発信器20によって発生された交流信号がアンプ30によって増幅されて、振動部材13の圧電素子に印加される。
この結果、DLCコーティングディッシュ100の外底面において、超音波振動が入力され、DLCコーティングディッシュ100内の細胞に音響放射圧が付与される(図3における状態(b))。
このとき、コントローラ40に設定された加振振動数の範囲がスイープされることから、細胞生産装置1に設置された振動部材13に確実に固有振動が発生し、音響放射圧によって接着性細胞が剥離される状態となる(図3における状態(c))。
即ち、細胞生産装置1によれば、細胞をより効率的かつ高品質に大量生産することができる。
次に、細胞生産装置1を用いた細胞生産方法の具体例について説明する。
なお、以下の各工程は、滅菌環境を維持した状態で実行される。
具体的には、工程1においては、以下の手順(1)〜(4)が含まれる。
(1)細胞を培地に懸濁してDLCコーティングディッシュ100に播種する。
(2)インキュベータ(37℃、CO25%、湿度100%)内で数日間培養する。
(3)細胞を観察し、DLCコーティングディッシュ100内底面のおよそ8〜9割に細胞が接着していることを確認し、培地を除去する。
(4)生理食塩水(PBS)でDLCコーティングディッシュ100の表面を1〜3回洗浄し、培地を完全に除去する。
そして、剥離工程として、細胞生産装置1によって、DLCコーティングディッシュ100内の細胞に音響放射圧を付与し、接着性細胞を剥離させる(工程2)。
具体的には、工程2においては、以下の手順(5)、(6)が含まれる。
(5)PBSを添加し、インキュベータ(37℃、CO25%、湿度100%)内に5分間静置する。
(6)音響放射圧(29〜31kHz、200V)をDLCコーティングディッシュ100の外底面から照射(即ち、超音波振動を入力)する。
さらに、回収工程として、工程2によって剥離した細胞をDLCコーティングディッシュ100から回収する(工程3)。
具体的には、工程3においては、以下の手順(7)が含まれる。
(7)細胞懸濁液をDLCコーティングディッシュ100から遠沈管に回収し、培地で懸濁する。
このとき、工程3で取得したサンプルの一部を培地で満たした新たなDLCコーティングディッシュ100に再播種し、再度培養が行われる。
このような細胞生産方法を実施することにより、トリプシン等の酵素を用いることなく剥離・回収された細胞が再び培養されるため、培養される細胞の活性が高いものとなり、培養を複数回繰り返す場合の接着等に要する時間が短縮され、細胞をより効率的かつ高品質に大量生産することができる。
この場合、DLCコーティングディッシュ100内の培地は新しい培地に交換されるが、DLCコーティングディッシュ100の内底面には、細胞が生成したタンパク質(細胞外マトリクス)が残存している。そのため、新たなDLCコーティングディッシュ100に新たに培地を形成して細胞を培養する場合よりも、細胞が増殖し易く、培養された細胞の活性化も高いものとなるため、大量に細胞を培養する上で有利である。
このような細胞生産方法を実施することにより、同一のDLCコーティングディッシュ100において、トリプシン等の酵素を用いることなく、複数回の細胞の培養、剥離及び回収を行うことができるため、細胞生産工程の自動化率を高め、細胞の生産効率を向上させることが可能となる。
以下、工程1から工程3を目的とする回数だけ繰り返す。
図4は、既存の細胞生産方法の手順と本発明における細胞生産方法の手順とを比較して示す模式図である。
図4に示すように、既存の細胞生産方法では、以下の手順(5)〜(9)を経て細胞の生産が行われる。
(5)トリプシン−EDTAを添加し、インキュベータ(37℃、CO25%、湿度100%)内に3〜10分間静置する。
(6)ピペッティングや振とうにより細胞を剥離する。
(7)培地を添加し、トリプシンの効果を阻害する。
(8)遠沈管に回収して、2〜5分間遠心分離器にかけて、細胞と溶液を分離する。
(9)上積み液を回収し,培地で再度懸濁する。
なお、既存の細胞生産方法の場合、手順(9)の後、手順(9)で取得した細胞を、培地で満たした新たな培養ディッシュに再播種して、再度培養が行われる。
次に、本発明に係る細胞生産方法を適用した場合の効果を説明する。
[細胞の剥離性]
図5は、本発明に係る細胞生産方法とトリプシンを用いた場合とにおいて細胞の回収実験を行った結果を示す模式図である。
図5に示す細胞の回収実験では、以下の手順で細胞を回収した。なお、以下の説明において、PBS(−/−)の表記は、PBSの成分として、カルシウム及びマグネシウムが含まれていないことを示している。
(1)CHO細胞をφ35ディッシュ(DLC,Cellculture treated dish)に播種する(4.0×105cells)。
(2)24時間後、PBS(−/−)で洗浄して、PBS(−/−)に浸漬して5分間スイープ振動励振(29−31kHz,10ms,200V)して細胞を回収した。
なお、Controlとして、PBS(−/−)に5分間浸漬した後にトリプシンに5分間浸漬したシリーズを準備した。
(2)の後、血球計算盤で細胞数を測定した。
その結果、図5に示すように、本発明に係る細胞生産方法とトリプシンを用いた場合(Control)とでは、有意差が見られず、同等の数の細胞が回収されていることがわかった。
即ち、本発明に係る細胞生産方法とトリプシンを用いた場合とにおいて、細胞の剥離性は同等であることがわかる。
図6は、本発明に係る細胞生産方法とトリプシンを用いた場合とにおいて細胞の定着実験を行った結果を示す模式図である。
図6に示す細胞の定着実験では、以下の手順で細胞を回収した。
(1)CHO細胞をφ35ディッシュ(DLC,Cellculture treated dish)に播種する(4.0×105cells)。
(2)24時間後、PBS(−/−)で洗浄して、PBS(−/−)に浸漬して5分間スイープ振動励振(29−31kHz,10ms,200V)して細胞を回収した。
なお、Controlとして、PBS(−/−)に5分間浸漬した後にトリプシンに5分間浸漬したシリーズを準備した。
(3)回収した細胞を培養ディッシュに再播種し(2.0×105cells)、10分後に、トリプシンに5分間浸漬して細胞を回収した。なお、このとき、上澄みは洗浄し、浮遊細胞は予め除去した。
その結果、図6に示すように、本発明に係る細胞生産方法とトリプシンを用いた場合(Control)とでは、回収された細胞の数に有意差が見られ、本発明に係る細胞生産方法では、定着した細胞の数が多いことがわかった。
即ち、本発明に係る細胞生産方法の方が、トリプシンを用いた場合よりも、細胞の定着性が高いことがわかる。
図7は、本発明に係る細胞生産方法とトリプシンを用いた場合とにおいて細胞の表面を撮影した顕微鏡写真である。
図7に示す細胞の表面観察では、以下の手順で細胞を観察した。
(1)CHO細胞をφ35ディッシュ(DLC,Cellculture treated dish)に播種する(4.0×105cells)。
(2)24時間後、PBS(−/−)で洗浄して、PBS(−/−)に浸漬して5分間スイープ振動励振(29−31kHz,10ms,200V)して細胞を回収した。
なお、Controlとして、PBS(−/−)に5分間浸漬した後にトリプシンに5分間浸漬したシリーズを準備した。
(3)回収した細胞を培養ディッシュに再播種し(2.0×105cells)、10分間培養した後、グルタルアルデヒドで固定し、SEM(Scanning Electron Microscope)で観察した。
その結果、図7の細胞全体写真に示すように、本発明に係る細胞生産方法では、細胞から仮足が延び、定着が進んでいる状態であるのに対し、トリプシンを用いた場合では、細胞表面が分解されて細胞全体が球状となっており、定着が進んでいないことがわかる。また、図7の細胞表面の拡大写真に示すように、本発明に係る細胞生産方法では、細胞表面に細胞外マトリクスが残っており、定着し易い状態であるのに対し、トリプシンを用いた場合では、細胞表面の細胞外マトリクスが分解により減少していることがわかる。
即ち、本発明に係る細胞生産方法の方が、トリプシンを用いた場合よりも、細胞表面の構造が定着性の高いものであることがわかる。
上述の実施形態において、振動部材13は圧電素子からなる超音波振動子を備えるものとして説明したが、振動部材13をランジュバン型超音波振動子によって構成することができる。
図8は、ランジュバン型超音波振動子からなる振動部材13の構成例を示す模式図である。
図8に示すように、ランジュバン型超音波振動子によって振動部材13が構成される場合、電極Eを挟んで配置された2つの圧電素子P1,P2をさらに2つの金属ブロックM1,M2で挟み込み、軸方向にボルト締結されたボルト締結型ランジュバン型超音波振動子として構成することができる。
ランジュバン型超音波振動子とした場合、振動部材13は、金属ブロックの端面が軸方向に一様に振動するため、DLCコーティングディッシュ100内の細胞に対して一様な音響放射圧を付与することが可能となる。
これにより、細胞の生産において、音響放射圧をアモルファスカーボンの被膜を有する培養基材(例えば、DLCコーティングディッシュ100)内の細胞に付与することで、細胞がDLCの被膜から容易に分離し、トリプシン等の酵素を用いることなく、培養された細胞を剥離・回収することができる。
したがって、細胞の剥離工程及び回収工程において、トリプシン等の酵素による浸漬や洗浄が不要となるため、工程の簡素化、生産時間の短縮、生産される細胞の高活性化・高品質化等の効果を実現することができる。
即ち、細胞をより効率的かつ高品質に大量生産することが可能となる。
これにより、アモルファスカーボンの被膜を有する培養基材の個体差等、条件の相違がある場合であっても、これらの条件を吸収して、音響放射圧の発生源である振動部材に固有振動を確実に発生させることができる。
これにより、トリプシン等の酵素を用いることなく剥離・回収された細胞が再び培養されるため、培養される細胞の活性が高いものとなり、培養を複数回繰り返す場合の接着等に要する時間が短縮され、細胞をより効率的かつ高品質に大量生産することができる。
これにより、同一の培養基材において、トリプシン等の酵素を用いることなく、複数回の細胞の培養、剥離及び回収を行うことができるため、細胞生産工程の自動化率を高め、細胞の生産効率を向上させることが可能となる。
これにより、細胞生産方法に適した表面特性の培養基材を用いて、細胞の生産をより適切に行うことができる。
ガラス板14は、アモルファスカーボンの被膜を有し、細胞が培養された培養基材(例えば、DLCコーティングディッシュ100)に超音波振動を伝達する。
振動部材13は、ガラス板14に付与される超音波振動を発生する。
ガラス板14から培養基材に超音波振動が伝達されることにより、培養基材において培養されている細胞が音響放射圧によって剥離される。
これにより、細胞の生産において、超音波振動をアモルファスカーボンの被膜を有する培養基材(例えば、DLCコーティングディッシュ100)に入力することで、音響放射圧によって、細胞がアモルファスカーボンの被膜から容易に分離し、トリプシン等の酵素を用いることなく、培養された細胞を剥離・回収することができる。
したがって、細胞の剥離工程及び回収工程において、トリプシン等の酵素による浸漬や洗浄が不要となるため、工程の簡素化、生産時間の短縮、生産される細胞の高活性化・高品質化等の効果を実現することができる。
即ち、細胞をより効率的かつ高品質に大量生産することが可能となる。
例えば、上述の実施形態において、DLC被膜を形成する対象を培養ディッシュであるものとして説明したが、これに限られない。例えば、細胞生産装置1に内蔵された細胞の培養基材等、培養ディッシュ以外の基材にDLC被膜を形成して、細胞を培養・剥離等することが可能である。
上述の実施形態における制御のための処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれにより実行させることも可能である。
即ち、上述の処理を実行できる機能が細胞生産装置1に備えられていればよく、この機能を実現するためにどのような機能構成及びハードウェア構成とするかは上述の例に限定されない。
Claims (6)
- アモルファスカーボンの被膜を有する培養基材を用意する第1の工程と、
前記第1の工程で用意された前記培養基材において細胞を培養する第2の工程と、
前記第2の工程において培養された前記培養基材内の細胞に音響放射圧を付与することにより、培養された細胞を剥離する第3の工程と、
を含むことを特徴とする細胞生産方法。 - 前記第3の工程では、前記音響放射圧を発生するための加振振動数がスイープされることを特徴とする請求項1に記載の細胞生産方法。
- 前記第3の工程の後、剥離された細胞を別の前記培養基材で再び培養する第4の工程と、
前記第4の工程において培養された前記培養基材内の細胞に音響放射圧を付与することにより、培養された細胞を剥離する第5の工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の細胞生産方法。 - 前記第3の工程の後、前記培養基材に残存した細胞を再び培養する第6の工程と、
前記第6の工程において培養された前記培養基材内の細胞に音響放射圧を付与することにより、培養された細胞を剥離する第7の工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の細胞生産方法。 - 前記第1の工程では、所定の培養基材表面にアモルファスカーボンの被膜を形成することにより、前記培養基材が用意されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞生産方法。
- アモルファスカーボンの被膜を有し、細胞が培養された培養基材に超音波振動を伝達する伝達媒体と、
前記伝達媒体に付与される超音波振動を発生する音響放射圧発生手段と、
を備え、
前記伝達媒体から前記培養基材に前記超音波振動が伝達されることにより、前記培養基材において培養されている細胞を音響放射圧によって剥離することを特徴とする細胞生産装置。
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