JP2014015542A - フタロシアニン化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】赤外線カットフィルター等のフタロシアニン化合物および組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1):(式中、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14、Z15は、フェノキシ基、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13、Z16は、フッ素原子等、Mは金属等を表わす。)で示されるフタロシアニン化合物。
Figure 2014015542

【選択図】なし

Description

本発明はフタロシアニン化合物およびフタロシアニン組成物に関する。
赤外線カットフィルターは、特定波長の光の透過率を選択的に低減するフィルターであり、例えば、機械部品、電気・電子部品、自動車部品等に用いられる光フィルター部材、光学部材等として好適に用いられるものである。例えば、代表的な光学部材の1つである固体撮像素子(カメラモジュールとも称す)においては、光学ノイズとなる赤外線(特に波長>780nm)を遮断する赤外線カットフィルター(IRカットフィルター)が用いられている。
赤外線カットフィルターとしては、基材に金属等を蒸着させ無機多層膜とし、各波長の屈折率を制御した反射型フィルターが主に用いられている。例えば、特許文献1に記載の赤外線カットフィルターは、基材上に反射型のIRカット膜(誘電体多層膜)を蒸着したものである。反射型フィルターは光の遮断性能には非常に優れる。
しかしながら、このような反射型フィルターは、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性を有しており、その低減が課題であった。近年、カメラモジュールは小型化してきており、このような角度依存性は特に問題となる。
また、ガラス基板上に多層膜を蒸着形成する場合には、透過させたい波長域(例えば、可視領域)での高い透過性、遮断したい波長域(例えば、近赤外領域)での高いカット性能を実現しようと多層膜の層数を多くすると、蒸着工程における加熱・冷却によって層間に応力が生じクラックや割れが発生するおそれがある。
上記のような反射型フィルター以外のフィルターとしては、例えば、透明基材が近赤外光を吸収する吸収剤を含有する吸収型フィルターが挙げられる。吸収型フィルターは入射角依存性が少ないという点で、反射型フィルターよりも優れる。しかしながら、反射型フィルターに比べて吸収特性が劣るため、充分な吸収特性を実現するためには吸収剤を多く配合するか、膜厚を厚くする必要がある。透明基材がガラスの場合、吸収剤の濃度を高めるとクラックが発生し、ガラスとして成形できないため、吸収剤濃度を低くせざるを得ない。一方、透明基材の膜厚を厚くすると、モジュールの小型化の点で問題が生ずる場合がある。
近年、光学部材等においては、例えば、デジタルカメラモジュールが携帯電話に搭載されるなど小型化が進み、光学部材の小型化が一層求められている。それにともなって、デジタルカメラモジュール等に用いられる赤外線カットフィルターの薄膜化が望まれている。薄膜・軽量化の観点からは、ガラス基材よりも樹脂基材のほうが有利であり、また、ガラス基材には上述したようなクラックや割れといった問題点も生じうることから、樹脂を基材とする赤外線カットフィルターが検討されている。かような樹脂基材を用いて、特性の異なる反射型フィルターと吸収型フィルターとを併用して反射吸収型フィルターとすることによって、反射型フィルターの角度依存性を低減する試みも行われている。例えば、特許文献2および特許文献3では、樹脂に吸収剤を含有させた基材に誘電多層膜の近赤外線反射膜を積層させた赤外線カットフィルターが記載されている。
一方、蒸着によって無機多層膜を作製する反射型フィルターは一般的にコストが高く、また、赤外線カットフィルターをセンサー上に設置する際にフィルターの反りによって歩留まりが低下する場合があった。そこで、赤外線カットフィルターを用いずに近赤外光を吸収する吸収剤を含んだ樹脂組成物を例えばセンサー(センサー上のカバーガラス)上に塗布し硬化させた赤外線カット層を設けることでセンサー上に直接赤外線カット層を形成させる検討も進められている。例えば、特許文献4では、マイクロレンズを構成する透明樹脂上部層、または光電変換素子上に形成された平坦化層に赤外線吸収機能を付与することにより、赤外線カットフィルタを除くことができることが記載されている。特許文献5では、このような構成とすることにより、赤外カットフィルタが不要となることで、色再現性を失わずに従来に比してレンズ下距離が短いものとなっているとしている。
さらに、特許文献5および6ではタングステン化合物を赤外線吸収材として用いた重合性組成物が開示され、かような重合性組成物を固体撮像素子においてソルダーレジスト層や赤外線遮光膜として用いることが開示されている。
このように、カメラモジュールにおいて赤外域の光を効率的に遮断するためには、上記吸収剤の検討が非常に重要となる。近赤外線吸収色素はこれまでにも種々知られているが、中でもフタロシアニン化合物は、耐熱性、耐光性等の耐久性に優れる近赤外線吸収色素である(例えば、特許文献7参照)。
特開2008−181121号公報 特開2011−100084号公報 特開2012−8532号公報 国際公開第2004/006336号 特開2012−118294号公報 特開2012−118295号公報 特開平6−228533号公報
しかしながら、従来のフタロシアニン化合物では、カメラモジュールに用いられる赤外線カットフィルターや赤外線カット層に適した分光曲線に沿った設計がなされていないために、反射吸収型フィルターや赤外線カット層に含有させても、可視光線はできるだけ透過させ、700nm以上の近赤外波長域はできるだけ遮断することが難しいという問題がある。
そこで本発明は、反射吸収型フィルターや赤外線カット層に用いた場合に、反射吸収型フィルターや赤外線カット層の目的波長に沿った分光特性を有するフタロシアニン化合物および組成物を提供することを目的とする。
本発明の課題は、下記フタロシアニン化合物によって解決されうる。
下記式(1):
Figure 2014015542
(式中、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14、およびZ15は、それぞれ独立して、下記式(2):
Figure 2014015542
上記式(2)中、Rは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、またはシアノ基であり、mは1〜5の整数であり、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基である)、またはフッ素原子であり、m’は0〜4の整数である、
で表わされる置換基(a)、または下記式(3):
Figure 2014015542
上記式(3)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基)、またはフッ素原子であり、nは0〜5の整数である、
で表わされる置換基(b)を表わし、
、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13、およびZ16は、それぞれ独立して、フッ素原子または下記式(3’):
Figure 2014015542
上記式(3’)中、R4’は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR5’(この際、R5’は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基)、置換基を有してもよい炭素原子数6〜30のアリール基、またはハロゲン原子であり、n’は0〜5の整数である、
で表わされる置換基(b’)を表わし、
およびZをユニット1、ZおよびZをユニット2、ZおよびZ12をユニット3、Z13およびZ16をユニット4とした場合に、ユニット1〜4のいずれか1〜3個がユニットを構成する置換基のいずれもがフッ素原子であり、かつ、残りのユニットが、ユニットを構成する置換基のいずれもが置換基(b’)である、またはユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子であり、
Mは金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。)で示されるフタロシアニン化合物(A)。
また、本発明の課題は、下記フタロシアニン組成物によって解決されうる。
フタロシアニン化合物(A)の最大吸収波長に対して5〜50nm短い最大吸収波長を有するフタロシアニン化合物(B)を含み、前記フタロシアニン化合物(B)の最大吸収波長での吸光度に対するサブピークでの吸光度の割合が0.4以下である、フタロシアニン組成物。
本発明のフタロシアニン化合物およびこれを含む組成物によれば、反射吸収型フィルターや赤外線カット層の目的波長に沿った分光特性を有するため、特にカメラモジュール用の赤外線カットフィルターまたは赤外線カット層に用いられる色素として有用である。
カメラモジュールの構成を示す断面模式図である。 実施例1、参考例3および比較例1のフタロシアニン化合物の吸収スペクトルを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書では、上記式(1)で示されるフタロシアニン化合物を、単に「フタロシアニン化合物」あるいは「本発明に係るフタロシアニン化合物」とも称する。また、本明細書中、上記式(1)における、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15の置換基を単に「β位の置換基」とも称する、またはZ、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15を総称して「β位」とも称する。同様にして、上記式(1)中、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16の置換基を単に「α位の置換基」とも称する、またはZ、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16を総称して「α位」とも称する。
上記式(1)において、Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わすものである。金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、チタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、塩化珪素等が挙げられる。好ましくは、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、バナジル、チタニル、塩化インジウム、塩化錫(II)であり、より好ましくは銅、バナジル及び亜鉛である。
上記式(1)において、β位はそれぞれ独立して下記式(2):
Figure 2014015542
上記式(2)中、Rは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、またはシアノ基であり、mは1〜5の整数であり、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基である)、またはフッ素原子であり、m’は0〜4の整数である、で表わされる置換基(a)、または下記式(3):
Figure 2014015542
上記式(3)中、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基)、またはフッ素原子であり、nは0〜5の整数である、で表わされる置換基(b)である。好適には、β位のうち、少なくとも2個は置換基(a)であり、3個以上は置換基(a)であることがより好ましい。
β位に式(2)または(3)で表されるフェノキシ基が存在することによって、本発明のフタロシアニン化合物は可視光線透過率が向上する。特に、反射吸収型フィルターの目標分光としては、700nm未満の可視光領域では、透過率が高いことが望まれるため、かような目標分光を達成するために、本発明のフタロシアニン化合物(A)のβ位に存在する置換基は、全て、フェノキシ基である必要がある。
そして、β位のうち、少なくとも2個は置換基(a)であることが好ましい。フェノキシ基の置換基として少なくとも塩素原子、臭素原子、ニトロ基、またはシアノ基が存在することによって、他の置換基と比較して可視光線透過率がさらに向上するとともに耐光性、耐熱性が向上する。また、置換基が存在しないフェニル基を有する化合物と比較すると、置換基として少なくとも塩素原子、臭素原子、ニトロ基、またはシアノ基が存在することによって、純度の高いフタロシアニン化合物が得られ、グラム吸光特性が向上するという利点がある。
この際、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15に存在する置換基(a)または、置換基(b)は同一であっても異なるものであってもよい。
次いで、置換基(a)について説明する。
は塩素原子、臭素原子、ニトロ基、またはシアノ基(−CN)を表す。Rとしてかような置換基が存在することによって、可視光透過性、耐熱性、耐光性の点で好ましい。mは1〜5の整数であるが、mは1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。Rの存在位置は特に限定されるものではないが、少なくとも2位に存在することが好ましい。mが2である場合、Rは、2,6位、2,5位に存在することが好ましく、2,5位に存在することがより好ましい。このような位置にRが存在することによって、有機溶剤や樹脂への溶解性に優れたものとなる。また、立体障害が生じてフタロシアニン分子の重なり合いを防ぐことができるため、シャープの吸収スペクトルを得ることができ、グラム吸光係数が高くなる。Rが複数存在する場合(mが2以上の場合)、Rは同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基)、またはフッ素原子である。Rとしてかような置換基が存在することによって、有機溶媒、特にPEGMEAへの溶媒溶解性が向上するため好ましい。m’は、0〜4の整数であるが、m’は0〜2であることが好ましく、0であることがより好ましい。Rの存在位置は特に限定されるものではないが、2位または4位に存在することが好ましい。アルキル基、アルコキシ基、−COORは置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合(m’が2以上の場合)、Rは同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基は、炭素原子数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基のいずれかであればよく、好ましくは炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及びn−ブチル基が好ましい。
非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基は、炭素原子数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基などが挙げられる。これらのうち、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基であり、この場合のアルキル基としては、上述のアルキル基と同様のものが挙げられる。
なお、上記アルキル基、アルコキシ基または−COORに場合によっては存在する置換基(以下、任意の置換基と称する)としては、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、オキシアルキルエーテル基、シアノ基などが例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基の種類も、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良い。上記置換基よりその一部をより具体的な例を挙げて以下に示す。
任意の置換基のうちハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
任意の置換基のうちアシル基としては、好ましくは炭素原子数2〜21のアシル基が挙げられ、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、p−t−ブチルベンゾイル基など等が挙げられる。
任意の置換基のうちアルキル基は、上述のアルキル基と同様である。
任意の置換基のうちアルコキシ基は、上述のアルコキシ基と同様である。
任意の置換基のうちハロゲン化アルキル基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものである。具体的には、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基などが挙げられる。
任意の置換基のうちハロゲン化アルコキシ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基の一部がハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基の一部がハロゲン化されたものである。具体的には、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ブロモエトキシ基、クロロプロポキシ基、ブロモプロポキシ基などが挙げられる。
任意の置換基のうちアルキルアミノ基とは、炭素原子数1〜20個のアルキル部位を有するアルキルアミノ基、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル部位を有するアルキルアミノ基である。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基などが挙げられる。これらのうち、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基及びn−ブチルアミノ基が好ましい。
任意の置換基のうちアルキルカルボニルアミノ基とは、炭素原子数1〜20個のアルキル部位を有するアルキルカルボニルアミノ基、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル部位を有するアルキルカルボニルアミノ基である。具体的には、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、iso−プロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、iso−ブチルカルボニルアミノ基、sec−ブチルカルボニルアミノ基、t−ブチルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基、n−ヘキシルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、n−ヘプチルカルボニルアミノ基、3−ヘプチルカルボニルアミノ基、n−オクチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
任意の置換基のうちアリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、p−メチルフェニルアミノ基、p−t−ブチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ−p−メチルフェニルアミノ基、ジ−p−t−ブチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
任意の置換基のうちアリールカルボニルアミノ基としては、ベンゾイルアミノ基、p−クロロベンゾイルアミノ基、p−メトキシベンゾイルアミノ基、p−t−ブチルベンゾイルアミノ基、p−トリフロロメチルベンゾイルアミノ基、m−トリフロロメチルベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
任意の置換基のうちアルコキシカルボニル基とは、アルコキシ基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでもよいアルコキシカルボニル、またはヘテロ原子を含んでもよいアルコキシカルボニルを示す。アルコキシ基としては、上述のアルコキシ基と同様である。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。これらのうち、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が好ましい。
任意の置換基のうちアルキルアミノカルボニル基とは、炭素原子数1〜20のアルキル部位を有するアルキルアミノカルボニル基、好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル部位を有するアルキルアミノカルボニル基である。具体的には、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、n−プロピルアミノカルボニル基、n−ブチルアミノカルボニル基、sec−ブチルアミノカルボニル基、n−ペンチルアミノカルボニル基、n−ヘキシルアミノカルボニル基、n−ヘプチルアミノカルボニル基、n−オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジ−n−プロピルアミノカルボニル基、ジ−n−ブチルアミノカルボニル基、ジ−sec−ブチルアミノカルボニル基、ジ−n−ペンチルアミノカルボニル基、ジ−n−ヘキシルアミノカルボニル基、ジ−n−ヘプチルアミノカルボニル基、ジ−n−オクチルアミノカルボニル基等が挙げられる。
任意の置換基のうちアルコキシスルホニル基とは、炭素原子数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基を有するスルホニル基である。具体的には、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基等が挙げられる。
任意の置換基のうちアルキルチオ基とは、炭素原子数1〜20のアルキル部位を有するアルキルチオ基、好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル部位を有するアルキルチオ基である。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、t−ブチルチオ基、ジ−tert−ブチルチオ基、2−メチル−1−エチルチオ基、2−ブチル−1−メチルチオ基等が挙げられる。
任意の置換基のうちアリールオキシカルボニル基とは、炭素原子数6〜18のアリール部位を有するアリールオキシカルボニル基であり、具体的には、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル基等が挙げられる。
任意の置換基のうちオキシアルキルエーテル基とは、エチレングリコールヘプチルエーテル、オキシエチレンオレイルエーテル、オキシプロピレンブチルエーテル、オキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。
なお、上記任意の置換基は同種の置換基を置換することはない。例えば、アルキル基を置換する任意の置換基にはアルキル基は含まれない。
上記式(3)中、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基)、またはフッ素原子であり、nは0〜5の整数である、で表わされる置換基(b)である。
ここで、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基については式(2)で説明したのと同様である。また、アルキル基、アルコキシ基、または−COORに場合によって存在する任意の置換基についても、式(2)で説明したのと同様である。
nは0〜5の整数であるが、可視光線透過率の観点からはnは1以上であることが好ましく、より好ましくは1または2である。
の存在位置は特に限定されるものではないが、少なくとも2位または4位に存在することが好ましい。
上記式(1)において、α位は独立して、フッ素原子または下記式(3’):
Figure 2014015542
上記式(3’)中、R4’は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR5’(この際、R5’は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基)、置換基を有してもよい炭素原子数6〜30のアリール基、またはハロゲン原子であり、n’は0〜5の整数である、
で表わされる置換基(b’)である。
α位に式(3’)で表されるフェノキシ基が存在することによって、本発明のフタロシアニン化合物は溶剤や樹脂への溶解性、可視光線透過率が向上する。
ここで、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基については式(2)で説明したのと同様である。また、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または−COORに場合によって存在する任意の置換基についても、式(2)で説明したのと同様である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
非置換の炭素原子数6〜30のアリール基は、具体的には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基及びナフチル基が好ましい。
n’は0〜5の整数であるが、好ましくは耐熱性、耐光性の点で0〜2である。
4’の存在位置は特に限定されるものではないが、少なくとも2位または4位に存在することが好ましい。nが2である場合、R4’は、2,6位、2,4位に存在することが好ましく、2,6位に存在することがより好ましい。R4’が複数存在する場合(nが2以上の場合)、R4’は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
およびZをユニット1、ZおよびZをユニット2、ZおよびZ12をユニット3、Z13およびZ16をユニット4とした場合に、ユニット1〜4のいずれか1〜3個がユニットを構成する置換基のいずれもがフッ素原子であり、かつ、残りのユニットが、ユニットを構成する置換基のいずれもが置換基(b’)である、またはユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子である。
ここで、「ユニット1〜4のいずれか1〜3個がユニットを構成する置換基のいずれもがフッ素原子であり、かつ、残りのユニットが、ユニットを構成する置換基のいずれもが置換基(b’)である、またはユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子である」について具体例を挙げて説明する。なお、ここでは、α位の置換基としてZおよびZである場合、すなわちユニット1のZおよびZの場合を例示する。
「ユニットを構成する置換基のいずれもがフッ素原子である」とはユニットを含む部分構造が、下記フェノキシ2置換体の部分構造;
Figure 2014015542
であることを意味する。
「ユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子である」とはユニットを含む部分構造が、下記フェノキシ3置換体の部分構造;
Figure 2014015542
であることを意味する。
「ユニットを構成する置換基のいずれもが置換基(b’)である」とはユニットを含む部分構造が、下記フェノキシ4置換体の部分構造;
Figure 2014015542
であることを意味する。
具体的に説明すると、ユニット1および2の2個がユニットを構成する置換基のいずれもがフッ素原子であり、かつ、残りのユニット(ユニット3および4)が、ユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子である場合を例にとる。ユニット1および2を構成する置換基のいずれもがフッ素原子であるので、ZおよびZ(ユニット1を構成する置換基)、ZおよびZ(ユニット2を構成する置換基)のすべてがフッ素原子である。他方、残りのユニット(ユニット3および4)が、ユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子であるので、ZおよびZ12(ユニット3を構成する置換基)のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子であり、かつZ13およびZ16(ユニット4を構成する置換基)のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子である。
かような構成とすることで、α位の置換基は、各ユニットによって異なるものとなり、フタロシアニン化合物全体でみると、不均一なものとなる。通常、フタロシアニン化合物は、目的波長を適切に吸収するためにシャープな吸収波長を有するように設計する目的や生産性の観点から、各ユニットを構成する置換基を同一のものとする場合が多い。すなわち、α位およびβ位に存在する置換基が同一のフタロニトリルを用いる場合が多い。しかしながら、本願では、反射吸収型の赤外線カットフィルターや赤外線カット層の目的波長に沿った分光曲線の形を有するフタロシアニン化合物とするために鋭意検討した結果、あえて、α位の置換基を各ユニットによって異なるものとし、フタロシアニン化合物全体でみると、α位の置換基が不均一なものとなる上記構成とすることで、所望の分光曲線を有するフタロシアニン化合物が得られることを見出したものである。
フタロシアニン化合物(A)のα位に存在するフッ素原子の数が少ないほどサブピークの吸収強度は小さくなり、逆にフッ素原子の数が多いほどサブピークの吸収強度は大きくなることから、適切な分光特性を得るためには、α位に存在するフッ素原子の数は2個を超え、7個以下であることが好ましく、2個を超え、6個以下であることがより好ましい。 カメラモジュール用の赤外線カットフィルターに用いられる吸収型フィルターの目標分光としては、700nmでの透過率と650nm付近の透過率のバランスを考慮する。具体的には、後述の実施例に記載の方法でポリイミド中で測定した透過率が、650nmで50%透過率となるように調整した場合に、700nmでの透過率が30%以下となることが好ましく、25%以下となることがより好ましい。さらに650nm付近まではできる限り高い透過率を維持して、650nm付近を境に透過率が急激に低下するとより好ましい。この観点から、具体的には、後述の実施例に記載の方法でポリイミド中で測定した透過率が、650nmで50%透過率となるように調整した場合に、630nmでの透過率が50%以上となることが好ましく、55%以上となることがより好ましい。なお、赤外線カットフィルターの目標分光としては、より長波長側の赤外領域の光のカット率が高いほうが望ましいため、フタロシアニン化合物(A)の実施例に記載の方法でポリイミド中で測定した最大吸収波長は700nmを超えることが好ましく、700〜750nmであることがより好ましく、700〜730nmであることがさらに好ましい。
およびZをユニット1、ZおよびZをユニット2、ZおよびZ12をユニット3、Z13およびZ16をユニット4とした場合に、置換基のいずれもがフッ素原子であるユニット(ユニットAとする)は樹脂中での分子会合性が高い。一方、置換基のいずれもが置換基(b’)である、または置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子であるユニット(ユニットBとする)は分子会合性が低い。会合性の相違により、フタロシアニン化合物の波長−透過率の分光曲線に現れるピークが複数となる。ユニットBのみから構成されるフタロシアニン化合物(後述の比較例1)は、650〜700nmの間に透過率のサブピークと主ピークとの間の透過率が低下し、650〜700nmの間の吸収特性が低下することとなる。一方、分子会合性が高いユニットAが存在することによって650〜700nmの間に透過率のサブピークが現れ、このサブピークによって、700nm付近の主ピークにつながる滑らかな透過率曲線となり、目標分光に近い分光特性となる。
従来、フタロシアニン化合物の分光特性としては、溶媒への溶解性の向上などを目的としてピークが単一で幅がシャープなものが求められてきた。しかしながら、本発明では、あえて二つのピークを有する分光特性を有するフタロシアニン化合物とすることで、赤外線カットフィルターに用いられる色素に適した設計としたものである。
したがって、本発明のフタロシアニン化合物(A)は、主ピークでの吸光度に対するサブピークでの吸光度が0.2を超えることが好ましく、0.23を超えることが好ましい。なお、サブピークとは、最大吸収波長の主ピークに次いで吸光度の高い波長でのピークを指す。また、各化合物の最大吸収波長を求める際の分光曲線に基づいて、最大吸収波長や、フタロシアニン化合物(A)におけるサブピークの主ピークに対する吸光度の値が決定される。分光曲線は、下記実施例に記載の方法によってポリイミド樹脂中で求めたものを用いる。
赤外線カットフィルター用の色素としては、目的の分光曲線が得られることから式(1)で表されるフタロシアニン化合物(A)の中心金属が亜鉛であることが好ましい。
赤外線カット層に用いられる色素の目標分光としては、上記カメラモジュール用の赤外線カットフィルターに用いられる吸収型フィルターの目標分光と同様である。
ユニットBが存在することによって、最大吸収波長は長波長域となるが、ユニットBのみとすると、上述のように650nm未満に吸収ピークが生じてしまうため、赤外線カット層に用いる色素には適さない。一方、ユニットAのみとすると、可視光領域にまで吸収が生じてしまうため、これもまた、赤外線カット層に用いる色素には適さない。ユニットAおよびユニットBが混在することによって、赤外線カット層に用いられる色素の目標分光に近いものとなる。
このように赤外線カット層で用いられる色素としては、式(1)で表されるフタロシアニン化合物(A)の中心金属が亜鉛(Zn)、銅(Cu)、バナジル(VO)であることが好ましい。
なお、本発明の「フタロシアニン化合物」を製造する際には、原料(フタロニトリル誘導体)を所望の割合において混合する。この際、製造された「フタロシアニン化合物」は、様々な構造を有する混合物のような形態となっている。したがって、該混合物全体を分析する、または理論的には、以下の例のように置換基(a)、置換基(b)および置換基(b’)の導入(置換)数は小数点で表れる。
フタロシアニン化合物(1)の好ましい例としては、下記のものが挙げられる。以下では、Mが無金属として記載した。Pcはフタロシアニン核を表わし、Pcのすぐ後にα位に置換する置換基を表わし、そのα位に置換する置換基の後にβ位に置換する置換基を表わす。「{α−(置換基(b))8−A}」と、記載されるのは、得られるフタロシアニン化合物は、α位に平均A個の置換基bが導入され、フッ素原子が平均8−A個存在していることを意味する。なお、ここでは、α位の置換基として、式(3)で表される置換基のうち、2,6−(CHPhO−を、β位の置換基として、式(2)で表される置換基のうち、2,5−ClPhO−を代表的に例示した。
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)F}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が3個、フェノキシ3置換体の部分構造が1個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)1.26.8}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が2.8個、フェノキシ3置換体の部分構造が1.2個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)1.66.4}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が2.4個、フェノキシ3置換体の部分構造が1.6個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が2個、フェノキシ3置換体の部分構造が2個、または、フェノキシ2置換体の部分構造が3個、フェノキシ4置換体の部分構造が1個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が1.6個、フェノキシ3置換体の部分構造が2.4個、または、フェノキシ2置換体の部分構造が2.8個、フェノキシ4置換体の部分構造が1.2個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)2.85.2}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が1.2個、フェノキシ3置換体の部分構造が2.8個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が1個、フェノキシ3置換体の部分構造が3個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)3.24.8}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が2.4個、フェノキシ4置換体の部分構造が1.6個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が2個、フェノキシ4置換体の部分構造が2個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)4.83.2}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が1.6個、フェノキシ4置換体の部分構造が2.4個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)5.62.4}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が1.2個、フェノキシ4置換体の部分構造が2.8個)
・[Pc−{α−(2,6−(CHPhO)}{β−(2,5−ClPhO)}](フェノキシ2置換体の部分構造が1個、フェノキシ4置換体の部分構造が3個)
本発明のフタロシアニン化合物(1)の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適当に利用することができるが、好ましくは溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物と金属塩とを環化反応する方法が特に好ましく使用できる。以下、本発明のフタロシアニン化合物(1)について、製造方法の特に好ましい実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、下記好ましい実施形態に制限されるものではない。
すなわち、下記式(I):
Figure 2014015542
で示されるフタロニトリル化合物(1)、下記式(II):
Figure 2014015542
で示されるフタロニトリル化合物(2)、下記式(III):
Figure 2014015542
で示されるフタロニトリル化合物(3)、および下記式(IV):
Figure 2014015542
で示されるフタロニトリル化合物(4)を、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属(本明細書中では、一括して「金属化合物」とも称する)からなる群から選ばれる一種と環化反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物が製造できる。
なお、上記式(I)〜(IV)中、Z〜Z16は、所望のフタロシアニン化合物(1)の構造によって規定される。具体的には、上記式(I)〜(IV)中、Z〜Z16は、それぞれ、上記式(1)中のZ〜Z16の定義と同様である。
ここで、好適な実施形態としては、フタロニトリル化合物(1)〜(4)において、式(4);
Figure 2014015542
で表されるフェノキシ2置換体のフタロニトリル化合物と、式(5);
Figure 2014015542
で表されるフェノキシ3置換体のフタロニトリル化合物、または式(6);
Figure 2014015542
で表されるフェノキシ4置換体のフタロニトリル化合物と、を混合することによって、上記フタロシアニン化合物(A)を得ることができる。上記式(4)〜(6)において、α位の置換基であるYおよびY’は、置換基(a)または置換基(b)である。この際、式(4)で表されるフタロニトリル化合物と、式(5)および/または式(6)で表されるフタロニトリル化合物と、の混合比は特に限定されるものではないが、1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.2〜5であることがより好ましく、1:1/3〜3であることがより好ましく、1:2/3〜1.5であることが特に好ましい。
環化反応は、特開昭64−45474号公報に記載の方法などの、従来公知方法により合成できる。
上記態様において、環化反応は、式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物と金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種を溶融状態または有機溶媒中で反応させることが好ましい。この際使用できる金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属(以下、金属化合物とも称する)としては、反応後に得られる式(1)のフタロシアニン化合物(1)のMに相当するものが得られるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、上記式(1)におけるMの項で列挙された鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属、当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物、酢酸塩等の有機酸金属、ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル等が挙げられる。具体的には、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、マグネシウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、例えば、塩化バナジウム、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化ガリウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化アルミニウム、臭化ガリウム;一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化バラジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、及び二酸化ゲルマニウム等の金属酸化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛等の有機酸金属;ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びコバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物及び金属ハロゲン化物であり、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、さらに好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム、ヨウ化銅およびヨウ化亜鉛であり、より好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム、およびヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、中心金属は、亜鉛ということになる。
フタロニトリル化合物の環化反応は、特に制限されるものではなく、特許第28216249号公報、特開2008−231153号公報などの従来公知の方法を単独であるいは適宜修飾して適用することができる。上記式(I)〜(IV)で示されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、を無溶媒で溶融状態で反応させることもできるが、有機溶媒中で反応させることが好ましい。
有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒がよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリメチルベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、及びベンゾニトリル等の不活性溶媒;ならびにピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、トリメチルベンゼン及びベンゾニトリルが、より好ましくは、トリメチルベンゼン、ベンゾニトリルが使用される。これらの溶媒は単独で用いても、混合して用いてもよい。溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、式(II)で示されるフタロニトリル化合物の濃度が、通常、1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%となるような量である。
上記式(I)〜(IV)で示されるフタロニトリル化合物と金属化合物との反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではないが、反応温度は通常100〜240℃、好ましくは130〜200℃である。反応時間も特に制限はないが、通常2〜24時間、好ましくは5〜20時間である。また、金属化合物を該フタロニトリル化合物4モルに対して、好ましくは0.8〜2.0モル、より好ましくは1.0〜1.5モルの範囲で仕込む。また、上記反応は、大気雰囲気中で行なってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガスまたは酸素含有ガス雰囲気、(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、または酸素/窒素混合ガスなどの流通下)で、行なわれることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、乾燥を行なってもよい。
次に本発明に係るフタロシアニン組成物について説明する。
本発明に係るフタロシアニン組成物は、本発明のフタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン化合物(B)を含む。フタロシアニン化合物(B)は、フタロシアニン化合物(A)の最大吸収波長に対して5〜50nm短い最大吸収波長を有するフタロシアニン化合物(B)を含み、前記フタロシアニン化合物(B)の最大吸収波長の吸光度に対するサブピークでの吸光度の割合が0.4以下である。
このようなフタロシアニン化合物(B)は、フタロシアニン化合物(A)よりも最大吸収波長が短く、また、サブピークの吸光度が低い、すなわち、最大吸収波長での単一ピークに近いという分光特性を有するため、フタロシアニン化合物(A)と組み合わせると、650nmでの透過率が50%程度、700nmでの透過率ができるだけ低いという赤外線カットフィルターに用いられる吸収型フィルターの目標分光に近いものとなり、650〜700nmへ透過率曲線が滑らかな曲線となる。
なお、サブピークとは、最大吸収波長の主ピークに次いで吸光度の高い波長でのピークを指す。また、各化合物の最大吸収波長を求める際の分光曲線に基づいて、最大吸収波長や、フタロシアニン化合物(B)におけるサブピークの主ピークに対する吸光度の値が決定される。分光曲線は、下記実施例に記載の方法によってポリイミド樹脂中で求めたものを用いる。
フタロシアニン化合物(B)の最大吸収波長の吸光度に対するサブピークでの吸光度の割合は、通常0.01以上であり、好ましくは0.1〜0.3であり、より好ましくは0.15〜0.23である。
フタロシアニン化合物(B)の最大吸収波長は、用いるフタロシアニン化合物(A)の分光特性を考慮して、680〜710nmであることが好ましい。また、後述の実施例に記載の方法でポリイミド中で測定した透過率が、650nmで50%透過率となるように調整した場合に、700nmでの透過率が10%以下となることが好ましい。
フタロシアニン組成物において、フタロシアニン化合物(A)は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、フタロシアニン化合物(B)についても単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。混合して用いる場合には、フタロシアニン化合物(A)全体(複数のフタロシアニン化合物(A)の混合物)の吸収スペクトルおよびフタロシアニン化合物(B)全体(複数のフタロシアニン化合物(B)の混合物)の吸収スペクトルを組成物中の配合比にしたがって分光曲線を測定し、それぞれの最大吸収波長を求めればよい。
フタロシアニン化合物(B)としては、上記条件を満たす限り特に限定されるものではないが、以下の式(7)で示されるフタロシアニン化合物が挙げられる。
Figure 2014015542
式(7)中、Z2’、Z3’、Z6’、Z7’、Z10’、Z11’、Z14’及びZ15’は、水素原子を表わし、Z1’、Z4’、Z5’、Z8’、Z9’、Z12’、Z13’及びZ16’は、それぞれ独立して、水素原子または式(8):
Figure 2014015542
上記式(8)中、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜30のアリール基、シアノ基、または−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基である)であり、lは0〜5の整数である、
で表わされる置換基(c)を表わし、
1’、Z4’、Z5’、Z8’、Z9’、Z12’、Z13’及びZ16’のうち4個は置換基(c)であり、
Mは金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。
ここで、式(8)中のハロゲン原子、アルキル基、アリール基および中心金属Mにおける金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物の説明および好適な例については、式(1)の欄で説明したものと同じである。また、アルキル基、アリール基に場合によって存在する置換基についても、式(1)の欄で説明したものと同じである。
式(8)中、lは0〜5の整数であるが、好ましくは1または2である。
また、フタロシアニン化合物(B)としては、以下の式(9)で示されるフタロシアニン化合物が挙げられる。式(9)で示されるフタロシアニン化合物は、特開2010−077408号公報に開示されている。
Figure 2014015542
式中、Z”〜Z16”は、それぞれ独立して、水素原子、下記化学式(10):
Figure 2014015542
で示される基、または下記化学式(12):
Figure 2014015542
で示される基である。
式(10)中、Xは酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは酸素原子であり、Aはフェニル基、1〜5の置換基Rを有するフェニル基または1〜7の置換基Rを有するナフチル基であり、好ましくはフェニル基、または1〜5の置換基Rを有するフェニル基である。置換基Rは、それぞれ独立して、ニトロ基、COOR、OR10(R10は炭素数1〜8のアルキル基)、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、Rは、炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基は、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子もしくはアリール基で置換されていてもよい)、または下記化学式(11)で示される基;
Figure 2014015542
式中、R11は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R12は炭素数1〜8のアルキル基であり、Oは1〜4の整数である;である。
式(12)中、R13は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R14は炭素数1〜8のアルキル基であり、pは0〜4の整数である。
式(9)において、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16のうち1〜3個は、化学式(10)または化学式(12)で示される基であり、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15のうち3〜1個は、化学式(10)または化学式(12)で示される基であり、Z〜Z16のうち合計4個は、化学式(10)または化学式(12)で示される基であり、Z〜Z16のうち少なくとも1個は、化学式(10)で示される基であり、Mは無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。
化学式(9)で表されるフタロシアニン化合物のうち、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子または前記化学式(10)で示される基を表すことが好ましい。
また、化学式(10)で示される基のうち少なくとも1、好ましくは全てが、前記置換基Rがニトロ基、COOR、ハロゲン原子、またはシアノ基である−X−Aであることが好ましい。また、化学式(10)で示される基のうち少なくとも1、好ましくは全てが下記化学式(13):
Figure 2014015542
上記化学式(13)中、Xは前記化学式(10)における定義と同様の定義であり、Rは、前記置換基Rに該当し、qは1〜5の整数である:または、下記化学式(14):
Figure 2014015542
上記化学式(14)中、Xは前記化学式(10)における定義と同様の定義であり、Rは、前記置換基Rに該当し、q’は1〜7の整数である:で示されることが好ましい。
ここで、式(9)中の中心金属Mにおける金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物の説明および好適な例については、式(1)の欄で説明したものと同じである。また、アリール基については、式(8)の欄で説明したものと同じである。
フタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン(B)の組成物中での含有質量比は特に限定されるものではないが、含有質量比でフタロシアニン(A):フタロシアニン(B)=1:0.05〜2.5であることが好ましく、1:0.1〜1であることがより好ましい。
本発明のフタロシアニン化合物(A)、ならびにフタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン化合物(B)を含むフタロシアニン組成物(以下、単にフタロシアニン組成物とする)は、赤外線カットフィルターに好適に用いられる。以下、本発明に係るフタロシアニン化合物(A)またはフタロシアニン組成物を単にフタロシアニン類とする。
赤外線カットフィルターとしては特に限定されるものではないが、反射型フィルターの角度依存性を低減しつつ薄膜化を実現するために、フタロシアニン類を含有する樹脂層、および光学多層膜を含む、反射吸収型赤外線カットフィルターであることが好ましい。この際、下記に記載するように、樹脂層が基材を兼ねていてもよい。
赤外線カットフィルターにフタロシアニン類を用いる形態としては、(i)フタロシアニン類を含有する樹脂層と樹脂支持体フィルムとからなる基材上の少なくとも一方に、光学多層膜(反射膜)が積層される形態、(ii)フタロシアニン類を含有する樹脂基材上の少なくとも一方に、光学多層膜(反射膜)が積層されている形態、(iii)樹脂基材上の少なくとも一方に光学多層膜が形成され、該光学多層膜上にフタロシアニン類を含有する樹脂層またはフタロシアニン類を含有する樹脂層と樹脂支持体フィルムとを含む樹脂シートが積層されている形態が挙げられる。
(i)の形態の場合、基材樹脂にフタロシアニン類が分散困難であっても、表面に樹脂層をコートすることにより本発明の効果を付与できる。樹脂層のフタロシアニン類濃度や樹脂層のコート厚さを変えることにより、吸収特性の制御が可能であるため、例えば樹脂層を極薄コートすることにより支持体フィルムの膜厚をほとんど変えずに本発明の効果を付与したり、支持体フィルムの厚み調整に利用したり、樹脂層を支持体フィルムの表面傷削減等の表面改質に利用することもできる。
また、樹脂層を支持体フィルムで挟み込んだ樹脂シートとすることも好ましい。
上記(i)または(iii)の形態における、支持体フィルムとしては、透明性に優れる樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、光学多層膜を蒸着形成する際の耐熱性に優れる点で、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
上記(iii)の形態における樹脂基材は、上述した支持体フィルムと同様のものを使用することができ、好適な形態についても支持体フィルムの場合と同様である。
上記(ii)の形態においては、色素を含有する樹脂層が支持体フィルムを兼ねることとなる。(ii)の形態において、樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、任意の基材(樹脂フィルムやガラス板)の表面に、溶剤キャスト法によって樹脂層を形成し、剥離することにより製造する方法が好ましい。
フタロシアニン類が樹脂層中に均一に分散されてなる形態において、色素が分散された樹脂層の形成方法としては特に限定されず、例えば、練込法や溶媒キャスト法等を採用することができる。中でも、溶媒キャスト法を採用することが好ましい。これにより、色素をより均一に分散できるため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができる。また、色素を高濃度で分散可能であるため薄膜化が可能であり、撮像レンズ素子等の部材の低背化要求に応えることができる。更に、比較的低温で樹脂層を形成することができるため、比較的耐熱性の低い色素も使用することができる。
溶媒キャスト法において使用する溶媒(有機溶剤)としては、上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分を溶解可能であれば特に限定されず、樹脂の種類に応じて適宜選択可能であるが、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(より具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプチルエーテル等のエーテル類等が好適である。より好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミドである。
溶媒の使用量としては、上記樹脂層を形成するためのバインダー樹脂の総量100質量%に対して、150質量%以上であることが好ましく、また、1900質量%以下が好ましい。より好ましくは、200質量%以上であり、また、1400質量%以下である。
溶媒キャスト法においては、溶媒に樹脂層を形成するための樹脂形成成分(バインダー樹脂)を溶解して得られる溶液に色素を均一に分散させた分散液を、基材上に塗布・乾燥(硬化)することにより樹脂層を製膜(成膜)することになる。樹脂形成成分として液状樹脂原料を用いる場合には、該樹脂原料に直接色素を分散させてもよく、該樹脂原料を溶媒で希釈したうえで色素を分散させてもよい。
樹脂層に含有されるバインダー樹脂としては、本発明に係るフタロシアニン類に対する溶解性が高いものであれば特に限定されないが、例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂(化合物)、アクリル樹脂(化合物)、ビニル系単量体((メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物等)、ポリ(アミド)イミド前駆体等が挙げられる。フッ素化芳香族ポリマーとしては、少なくとも1以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位により構成された重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子を有するポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドエーテル、ポリアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエステル等が挙げられる。ポリ(アミド)イミド前駆体とは、ポリ(アミド)イミド樹脂を形成するための原料、すなわちイミド化反応に供される化合物であり、例えば、ポリアミック酸等が好適である。具体的には、例えば、日立化成工業社製のHPC−7000−30等が好ましく使用される。
可視光透過性の観点から、上記バインダー樹脂として、ポリ(アミド)イミド樹脂、FPEK等のフッ素化芳香族ポリマー、及び/又は、ポリ(アミド)イミド前駆体を用いることが好適である。
なお、樹脂層にはフタロシアニン類以外のその他の光吸収性の色素を含有させてもよい。その他の光吸収性の色素としては、他のフタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素、ピロメテン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、スクアリリウム系色素、トリアリールメタン系色素、インジゴ系色素、銅イオン系色素、ジイモニウム系色素が好適である。可視光領域での透過率が高いとの理由から、他のフタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素、銅イオン系色素が好ましい。
上記樹脂層におけるフタロシアニン類の濃度(含有量)としては、樹脂層の総量100質量%に対して、0.0001質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、0.001質量%以上、10質量%未満である。更に好ましくは樹脂層の総量100質量%に対して、0.1質量%以上、10質量%未満であり、特に好ましくは、0.5質量%以上、10質量%未満である。
樹脂層の厚みは1mm以下であることが好ましい。これにより、赤外線カットフィルターを充分に薄膜化することができ、光学部材等の低背化要求に応えることができる。樹脂層の厚みとしてより好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは100μm以下である。また、色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなる形態においては、上記樹脂層の厚みが10μm以下、支持体フィルムの厚みが100μm以下であることが好ましい。
上記光学多層膜としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては、基材やその他の機能性材料層の上に、真空蒸着法、スパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜が好ましい。上記光学多層膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好ましい。
上記無機多層膜としては、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜が好適である。誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
上記無機多層膜等の光学多層膜は、上記方法等により好適に形成することができるが、蒸着によって赤外線カットフィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくするために、以下の方法を用いることができる。具体的には、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、赤外線カットフィルターの基材となる樹脂シートに、該蒸着層を転写して多層膜を形成する多層膜の転写方法が好適である。この場合、樹脂シートには、接着層を形成しておくことが好ましい。また樹脂シートが有機材料、具体的には、樹脂組成物により形成される場合には、未硬化、半硬化状態の樹脂シート(樹脂組成物)に、上記誘電体層等を蒸着した後、樹脂シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、赤外線カットフィルターの変形(カール)を抑制することができる。
このように樹脂シートへの光学多層膜(好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。
光学多層膜は、上記樹脂シートの少なくとも一方の表面に形成されてなるものである。上記光学多層膜は、樹脂シートの一方の表面のみに形成されていてもよいし、樹脂シートの両面に形成されていてもよいが、両面に形成されることが好ましい。これにより、本発明に係る赤外線カットフィルターの反りや光学多層膜の割れを低減することができる。また、樹脂シートが上記色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなる形態においては、光学多層膜は、該樹脂層の表面に形成されることが好ましい。
光学多層膜の積層数は、樹脂シートの一方の表面にのみ上記光学多層膜を有する場合は、10〜80層の範囲が好ましく、より好ましくは25〜50層の範囲である。一方、樹脂シートの両面に上記光学多層膜を有する場合は、上記光学多層膜の積層数は、樹脂シート両面の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましく、より好ましくは25〜50層の範囲である。また、上記光学多層膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。光学多層膜が上記樹脂シートの両面に形成される形態においては、両面の光学多層膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
赤外線カットフィルターは、厚みが1mm以下であることが好ましい。ここで、赤外線カットフィルターの厚みとは、該赤外線カットフィルターの最大厚みをいう。上記赤外線カットフィルターの厚みとしてより好ましくは、薄膜化要求に対応し得る点で、200μm以下であり、更に好ましくは150μm以下であり、特に好ましくは120μm以下であり、最も好ましくは60μm以下である。また、耐リフロー性、特に260℃の温度における耐熱性に優れる点で、上記赤外線カットフィルターの厚みとして好ましくは、1μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更に好ましくは30μm以上である。赤外線カットフィルターの厚みの範囲としては、1〜150μmであることが好ましく、より好ましくは10〜120μmであり、更に好ましくは30〜120μmであり、特に好ましくは30〜60μmである。
上記赤外線カットフィルターの厚みを1mm以下とすることにより、赤外線カットフィルターを、小型化、軽量化することができ、種々の用途に好適に用いることができる。特に、光学部材等の光学用途において好適に用いることができる。光学用途においては、他の光学部材と同様に赤外線カットフィルターも小型化、軽量化が強く求められている。本発明の赤外線カットフィルターは、厚みを1mm以下とすることで、薄膜化を達成でき、特に撮像レンズ等のレンズユニットに用いた場合に、レンズユニットの低背化を実現することができる。言い換えると1mm以下の薄い赤外線カットフィルターを光学部材として用いた場合に、光路を短縮することができ、該光学部材を小さくすることができる。
赤外線カットフィルターとして、色素含有の吸収層と、例えば無機蒸着膜などの光学多層膜とから構成される反射吸収型フィルターとすることで、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができる。
本発明の赤外線カットフィルターは、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができるとともに、充分な薄膜化が可能であるため、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等に用いられるIRカットフィルターとして有用であるのみならず、カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとして有用である。具体的には、の様々な用途に好適に用いることができ、特にカメラモジュール用IRカットフィルターとして特に有用である。
中でも、薄型化・軽量化が進むデジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュール用のフィルターとして有用である。
図1に、カメラモジュールの一例を、模式的に示した。図1で示されるカメラモジュールは、レンズ(撮像レンズ)1、レンズ1を保持するバレル2、赤外線カットフィルター3、部材を保持するホルダー4、カバーガラス5、およびCCDやCMOS等のセンサー6を備える。赤外線カットフィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、CMOSセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。
すなわち、本発明は、本発明の赤外線カットフィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子をも提供する。通常、反射型の赤外線カットフィルターを用いた固体撮像素子では、入射角依存性に起因する影響(入射角による色むらの発生等)を抑制するために、多数のレンズを使用してレンズユニット部を構成するが、本発明の固体撮像素子では、上述した赤外線カットフィルターを用いることによって、入射角依存性に起因する影響が充分に排除されるため、レンズユニット部を構成するレンズの枚数を少なくすることができ、薄型化・軽量化がより実現されることになる。なお、レンズユニット部については、WO2008/081892に記載の形態が好ましく採用できる。
本発明の他の実施形態として、本発明に係るフタロシアニン類を含む赤外線カット層を有する、固体撮像素子が挙げられる。すなわち、本発明はフタロシアニン類を含む赤外線カット層、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子をも提供する。
赤外線カット層は、フタロシアニン類の他、バインダー樹脂を含む。フィルターを形成させずに不要な赤外線をカットする形態は、生産性が高く、また、赤外線カットフィルターをセンサー上に設置する際にフィルターの反りによって歩留まりが低下するといった問題点も解決できる。
赤外線カット層の固体撮像素子における配置としては、国際公開第2004/006336号で開示されているように、固体撮像素子のセンサー全体を覆う形態、特開2012−118294号公報や特開2012−118295号公報に開示されているように、ソルダーレジスト中に含有させる形態などが挙げられる。赤外線カット層は、他の機能を有する部材中にフタロシアニン類を含有させることによって赤外線カット能を有するようになった部材を指す場合もある。
本発明においては、フタロシアニン類を含む点に特徴を有するため、赤外線カット層の作製方法は従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。例えば、国際公開第2004/006336号で開示されている方法が、本発明の赤外線カット層を作製する上で好ましいが、無論これに限定されるわけではない。
例えば、光電変換素子、遮光層等が形成された半導体基板上に、本発明のフタロシアニン類を含有してなる感光性樹脂組成物をスピンコート等により塗布し、乾燥する。次に、その後、必要に応じフォトマスクを介し露光する。その後、必要に応じ、アルカリ現像を行い赤外線カット層を得る。その上にカラーレジストを用い、露光装置を使用してフォトリソグラフィにてカラーフィルターを作成する。さらに、マイクロレンズを形成し固体撮像素子とすることができる。
以下、より具体的に、本発明のフタロシアニン類を用いた感光性樹脂組成物の作製方法を説明する。
感光性樹脂組成物は、本発明のフタロシアニン類を含むが、さらに、溶媒、感光性樹脂組成物または分散剤等を含むことが好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、テトラリン、スチレン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、エチルクロライド、1,1,1−トリクロロエタン、1−クロロブタン、シクロヘキシルクロライド、trans−ジクロロエチレン、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、n−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ベンズアルデヒド、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−i−アミルケトン、シクロヘキサン、アセトフェノン、メチラール、フラン、β−β−ジクロロエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、n−酢酸ブチル、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジメチルスルオキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。中でも、沸点と粘性の観点で好ましくはジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンなどが好ましい溶媒として挙げられる。
溶媒に対してフタロシアニン類は、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。
次に、本発明に用いることのできる感光性樹脂組成物は、光の作用によって化学反応を起こし、その結果、溶媒に対する溶解度または親和性に変化を生じたり、液状より固体状に変化するものであればよく、例えば、アクリル系またはマレイミド系樹脂をバインダー樹脂(ベースポリマー)とし、これに各種のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルからなる感光性モノマー(光重合性モノマー)、光重合開始剤を加えてなる光重合型の感光性樹脂組成物、あるいは光二量化するアクリル系樹脂液を用いてなる光二量化型の感光性樹脂組成物などが挙げられるが、中でも光重合型の感光性樹脂組成物が好ましい。なお、ここでいうアクリル系樹脂液とは、通常、適当な粘度になるようにアクリル系樹脂を使用溶媒に溶解してなる溶液をいうが、無溶媒の液状のアクリル系樹脂液を含むものであってもよい。すなわち、本発明の組成物には、溶媒は必ずしも必須ではなく、無溶媒系の組成物であっても、感光性樹脂組成物が液状であり、上述した色素を均一に溶解することができ、かつレジスト調製液として適当な粘度をもたせることができるものであれば溶媒を用いなくともよい場合もある。この場合は、トルエンあるいはトルエンおよびジエチレングリコールジメチルエーテルを用いて色素の溶解性を予め測定することにより、使用可能な色素を選定できるものである。
前記アクリル系またはマレイミド系樹脂としては、それを構成するモノマー、オリゴマーのうち10質量%以上がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびマレイミド基を有する化合物から選ばれた1種以上であり、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイミド基を有する化合物を好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜35質量%、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイミド基を有する化合物を好ましくは10〜90質量部、さらに好ましく30〜80質量部含むものである。
アクリル系樹脂を構成するモノマー、オリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2一ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、マレイン酸、フマル酸、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマーが例示され、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、各種アルキル(メタ)アクリレートを重合してなるアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、各種アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを重合してなるアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸、各種アルキル(メタ)アクリレートを重合してなるアクリル樹脂が好ましい。
マレイミド系樹脂を構成するモノマーとしては、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N―メチルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等の芳香族置換マレイミドのほか、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のアルキル置換マレイミドが例示できる。
また、感光性樹脂組成物の成分となり得る感光性モノマーとしては、前記のアクリル系樹脂を構成するモノマーが挙げられるが、好ましくはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、感光性モノマーの使用量は、前記アクリル系樹脂100質量部に対し40〜90質量部が好ましく、60〜70質量部がさらに好ましい。
光重合型の感光性樹脂組成物の組成成分となり得る光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルケトン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物およびアントラキノン系化合物などが挙げられる。より具体的には、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾインアルキルエーテル系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジンなどのトリアジン系化合物、2−(2,3−ジクロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(2,3−ジクロロフェニル)−4,5−ビス(3−メトキシフェニル)−イミダゾール二量体、2−(2,3−ジクロロフェニル)−4,5−ビス(4−メトキシフェニル)−イミダゾール二量体、2−(2,3−ジクロロフェニル)−4,5−ビス(4−クロロフェニル)−イミダゾール二量体、2−(2,3−ジクロロフェニル)−4,5−ジ(2−フリル)−イミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、イルガキュア369、イルガキュア907(両者ともチバガイギーカ株式会社製、商品名)などのアセトフェノン系化合物などが挙げられる。
光重合開始剤の添加量は、特に限定されるものではないが、アセトフェノン系化合物(イルガキュア369など)については、感光性モノマー(光重合性モノマー;例えば、ジペンタエリスリトールヘキサクリレートなど)を100質量部とした際に、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜15質量部の割合で添加されることが望ましい。
なお、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、熱重合防止剤等の任意成分を添加することができる。上記熱重合防止剤は、保存安定性改良の目的で添加されるものであり、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−(メルカプトベンゾイミダゾール)など用いることができる。また、必要に応じて、光劣化防止剤を添加しても良い。
以下、実施例および比較例を説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記化合物の名称において、Pcはフタロシアニン核を、PNはフタロニトリルを表す。
[合成例1]4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル50g(0.25mol)、フッ化カリウム34.8g(0.60mol)、およびアセトン50gを仕込み、さらに滴下ロートに2,5−ジクロロフェノール82.3g(0.50mol)およびアセトン82.3gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2,5−ジクロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル88.8g(テトラフルオロフタロニトリルに対する収率(以下、特に記載のない場合は同じ)72.7%)を得た。
[合成例2]4,5−ビス(2−メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム20.1g(0.35mol)、およびアセトン120.1gを仕込み、さらに滴下ロートに2−メチルフェノール34.4g(0.32mol)およびアセトン120.1gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2−メチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2−メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル45.5g(収率80.6%)を得た。
[合成例3]4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム19.2g(0.33mol)、およびアセトン50.0gを仕込み、さらに滴下ロートに4−ヒドロキシ安息香酸メチル46.5g(0.31mol)およびアセトン74.5gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル30.7g(収率42.8%)を得た。
[合成例4]4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル15.7g(0.078mol)、フッ化カリウム10.9g(0.188mol)、およびアセトン45.0gを仕込み、さらに滴下ロートに4−ニトロフェノール22.2g(0.16mol)およびアセトン30.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ニトロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル28.3g(収率82.2%)を得た。
[合成例5]4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル7.0g(0.03mol)、フッ化カリウム4.9g(0.08mol)、およびアセトン60.0gを仕込み、さらに滴下ロートに4−ブロモフェノール 12.2g(0.16mol)およびアセトン30.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ブロモフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル9.6g(収率54.0%)を得た。
[合成例6]4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル12.0g(0.060mol)、フッ化カリウム5.4g(0.144mol)、およびアセトン30.0gを仕込み、さらに滴下ロートに3−シアノフェノール14.5g(0.12mol)およびアセトン14.5gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより3−シアノフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル18.8g(収率78.8%)を得た。
[合成例7]4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル50g(0.250mol)、フッ化カリウム17.4g(0.30mol)、およびアセトン50gを仕込み、さらに滴下ロートに2−クロロフェノール33.2g(0.26mol)およびアセトン33.2gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2−クロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル 50.1g(収率65.0%)を得た。
[合成例8]4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例7で得られた4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル36.0g(0.013mol)、フッ化カリウム10.9g(0.19mol)、およびアセトン70.2gを仕込み、さらに滴下ロートに4−ヒドロキシ安息香酸メチル16.3g(0.13mol)およびアセトン30gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)3,6−ジフルオロフタロニトリル28.5g(4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルに対する収率58.2%)を得た。
[合成例9]4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル24.3g(0.050mol)、フッ化カリウム7.3g(0.10mol)、およびアセトン97.2gを仕込み、さらに滴下ロートに2,6−ジメチルフェノール6.79g(0.055mol)およびアセトン6.79gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジメチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル25.2g(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率85.6%)を得た。
[合成例10]3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル19.4g(0.040mol)、フッ化カリウム2.3g(0.082mol)、およびアセトン77.8gを仕込み、さらに滴下ロートに4−メトキシフェノール2.1g(0.082mol)およびアセトン9.0gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより4−メトキシフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−フタロニトリル24.7g(4,5−(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率88.8%)を得た。
[合成例11]3,6−ビス(2,6−ジクロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル12.2g(0.025mol)、フッ化カリウム3.5g(0.060mol)、およびアセトン48.6gを仕込み、さらに滴下ロートに2,6−ジクロロフェノール9.0g(0.056mol)およびアセトン9.0gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジクロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3,6−ビス(2,6−ジクロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−フタロニトリル16.5g(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率85.4%)を得た。
[合成例12]3,6−ビス(2−クロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル12.2g(0.025mol)、フッ化カリウム3.5g(0.060mol)、およびアセトン48.6gを仕込み、さらに滴下ロートに2−クロロフェノール9.0g(0.056mol)およびアセトン9.0gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより2−クロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により3,6−ビス(2−クロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル16.5g(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率85.4%)を得た。
[合成例13]4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル100.0g(0.50mol)、フッ化カリウム58.7g(1.0mol)、およびアセトン100.0gを仕込み、さらに滴下ロートに4−シアノフェノール120.3g(1.0mol)およびアセトン120.3gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−シアノフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル145.7g(収率73.2%)を得た。
[合成例14]4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例13で得られた4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル19.9g(0050mol)、フッ化カリウム3.2g(0.055mol)、およびアセトン19.9gを仕込み、さらに滴下ロートに2,6−ジメチルフェノール7.4g(0.060mol)およびアセトン7.4gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジメチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル20.9g(4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率78.8%)を得た。
[合成例15]3,4,5,6−テトラ(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30g(0.15mol)、フッ化カリウム39.2g(0.68mol)、およびアセトン60gを仕込み、さらに滴下ロートに4−メトキシフェノール78.10g(0.63mol)およびアセトン120gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより4−メトキシフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3,4,5,6−テトラ(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル85.1g(収率92.0%)を得た。
[合成例16]4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム18.3g(0.315mol)、およびアセトン70.0gを仕込み、さらに滴下ロートに4−メトキシフェノール37.6g(0.30mol)およびアセトン37.6gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−メトキシフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、さらに2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3,6−テトラフルオロフタロニトリル39.15g(収率63.9%)
を得た。
[合成例17]4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例16で得られた4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル 20.4g(0050mol)、フッ化カリウム3.20g(0.055mol)、およびアセトン99.7gを仕込み、さらに滴下ロートに2,6−ジメチルフェノール7.40g(0.060mol)およびアセトン7.4gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジメチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル20.9g(4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率78.9%)を得た。
[合成例18]4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例3で合成した4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ))−3,6−ジフルオロフタロニトリル 11.6g(0.025mol)、フッ化カリウム3.2g(0.055mol)、およびアセトン30gを仕込み、さらに滴下ロートに4−メトキシフェノール6.3g(0.051mol)およびアセトン45.0gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより4−メトキシフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル13.7g(4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ))−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率81.3%)を得た。
[合成例19]4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル19.33g(0.040mol)、フッ化カリウム2.79g(0.048mol)、およびアセトン77.7gを仕込み、さらに滴下ロートに2−フェニルフェノール7.22g(0.042mol)およびアセトン7.22gを仕込んだ。室温で攪拌しながら、滴下ロートより2−フェニルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、40℃に昇温して一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル20.9g(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率82.4%)を得た。
[合成例20]3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル6.9g(0.040mol)、サリチル酸メチル6.8g(0.044mol)、炭酸カリウム11.06g(0.080mol)、およびアセトニトリル27.8gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル10.3g(3−ニトロフタロニトリルに対する収率92.8%)を得た。
[合成例21]3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル17.3g(0.10mol)、2−クロロフェノール13.6g(0.105mol)、炭酸カリウム16.6g(0.12mol)、およびアセトニトリル69.3gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリル27.8/g(3−ニトロフタロニトリルに対する収率91.7%)を得た
[合成例22]3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル15.0g(0.087mol)、2,6−ジクロロフェノール15.7g(0.095mol)、炭酸カリウム23.9g(0.17mol)、およびアセトニトリル60.0gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル17.5g(3−ニトロフタロニトリルに対する収率69.9%)を得た。
[合成例23]3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル15.0g(0.087mol)、2,6−ジメチルフェノール11.2g(0.091mol)、炭酸カリウム23.9g(0.17mol)、およびアセトニトリル60.0gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2,6−ジフェノキシメチル)フタロニトリル17.5g(3−ニトロフタロニトリルに対する収率69.9%)を得た。
[合成例24]3−(4−シアノフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル13.8g(0.08mol)、4−シアノフェノール10.1g(0.084mol)、炭酸カリウム13.3g(0.096mol)、およびアセトニトリル55.4gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(4−シアノフェノキシ)フタロニトリル19.3g(3−ニトロフタロニトリルに対する収率98.2%)を得た。
[合成例25]4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに4−ニトロフタロニトリル20.0g(0.116mol)、2,6−ジクロロフェノール20.9g(0.127mol)、炭酸カリウム31.9g(0.231mol)、およびアセトニトリル80.0gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル25.8g(4−ニトロフタロニトリルに対する収率77.2%)を得た。
[フタロシアニン化合物(A)の製造]
[実施例1][ZnPc−{α―(2,6−(CHPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.86g(0.010mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル5.88g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル16.1gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、反応液をフタロシアニン化合物の理論収量の20倍に相当するメタノール(221.2g)中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、フタロシアニン化合物の理論収量の10倍量に相当するメタノール(110.6g)で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機を用いて、90℃で24時間乾燥後、目的物9.99gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率90.3%)。
[実施例2][VOPc−{α―(2,6−(CHPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
100mlの四ツ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル7.29g(0.015mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル8.8g、塩化バナジウム(III) 1.30g(0.0083モル)、1,2,4−トリメチルベンゼン 24.17gおよびベンゾニトリル 2.63gを仕込み、170℃でMガス(窒素と酸素の混合ガス、酸素濃度7体積%)を液相部に吹き込みながら、攪拌下18時間、反応させた。反応終了後、反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物14.82g(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率89.2%)を得た。
[実施例3][ZnPc−{α―(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.00g(0.0082mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル7.26g(0.0123mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.81g(0.0057mol)、ベンゾニトリル16.89gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物10.66gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率92.0%)。
[実施例4][ZnPc−{α―(2,6−(CHPhO)2.85.2}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0062mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル8.47g(0.0144mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.81g(0.0057mol)、ベンゾニトリル17.21gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物10.88gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率92.2%)。
[実施例5][ZnPc−{α―(2,6−(CHPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
あ 200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル2.43g(0.0050mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル8.82g(0.015mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0050mol)、ベンゾニトリル16.88gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物10.71gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率92.6%)。
[実施例6][ZnPc−{α―(4−CHOPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.86g(0.010mol)、合成例10で得られた3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル5.88g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル16.11gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物10.63gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率96.1%)
[実施例7][ZnPc−{α―(4−CHOPhO)4.83.2}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.86g(0.010mol)、合成例10で得られた3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル8.82g(0.015mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.19g(0.0069mol)、ベンゾニトリル20.53gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物12.56gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率89.2%)。
[実施例8][ZnPc−{α―(2,6−ClPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0062mol)、合成例11で得られた3,6−ビス(2,6−ジクロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル4.46g(0.062mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.08g(0.0034mol)、ベンゾニトリル11.18gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物7.02gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと3,6−ビス(2,6−ジクロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率91.7%)
[実施例9][ZnPc−{α―(2−ClPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0062mol)、合成例12で得られた3,6−ビス(2−クロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル4.22g(0.062mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.08g(0.0034mol)、ベンゾニトリル10.84gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物6.73gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと3,6−ビス(2−クロロフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率90.7%)
[実施例10][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(2,5−ClPhO)4.8(2−CHPhO)3.2}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例2で得られた4,5−ビス(2−メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0080mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル7.03g(0.012mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.75g(0.0055mol)、ベンゾニトリル15.1gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物7.26gを得た(4,5−ビス(2−メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率70.1%)。
[実施例11][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(2,5−ClPhO)4.8(4−(COOCH)PhO)3.2}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例3で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0065mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル5.70g(0.0097mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.42g(0.0044mol)、ベンゾニトリル13.1gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物4.82gを得た(4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率53.8%)。
[実施例12][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(2,5−ClPhO)4.8(4−NOPhO)3.2}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例4で得られた4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0068mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル6.04g(0.0103mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.50g(0.0047mol)、ベンゾニトリル13.56gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物6.87gを得た(4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率73.8%)。
[実施例13][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(2,5−ClPhO)4.8(4−BrPhO)3.2}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例5で得られた4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0059mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル5.23g(0.0089mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.30g(0.0041mol)、ベンゾニトリル12.40gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物6.15gを得た(4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率72.6%)。
[実施例14][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(3−CNPhO)3.2(4−CNPhO)4.8}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例6で得られた4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0075mol)、合成例14で得られた4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル5.99g(0.0113mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.65g(0.0052mol)、ベンゾニトリル13.49gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物5.5gを得た(4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率59.2%)。
[実施例15][ZnPc−{α−(4−CHOPhO)}{β−(3−CNPhO)(4−CHOPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例6で得られた4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0075mol)、合成例15で得られた3,4,5,6−テトラ(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル4.64g(0.0075mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.32g(0.0041mol)、ベンゾニトリル11.47gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物5.72gを得た(4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと3,4,5,6−テトラ(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルに対する収率72.5%)。
[実施例16][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)2.45.6}{β−(4−NOPhO)3.2(4−MeOPhO)4.8}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例4で得られた4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0075mol)、合成例17で得られた4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル5.24g(0.0103mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.50g(0.0047mol)、ベンゾニトリル12.36gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物6.73gを得た(4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−フルオロー6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率79.1%)。
[実施例17][ZnPc−{α−(4−CHOPhO)44}{β−(4−BrPhO)4(4−COOCHPhO)4}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例5で得られた4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル2.30g(0.0045mol)、合成例18で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル3.06g(0.0045mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.80g(0.0025mol)、ベンゾニトリル8.04gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物4.49gを得た(4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルに対する収率81.6%)。
[実施例18][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)}]{β−(2−ClPhO)(4−COOCHPhO)(2,5−ClPhO)}の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例8で得られた4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)3,6−ジフルオロフタロニトリル2.03g(0.0052mol)、合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル3.07g(0.0052mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.92g(0.0029mol)、ベンゾニトリル8.05gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物4.32gを得た(4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)3,6−トリフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率78.0%)。
[実施例19][ZnPc−{α―(2−PhPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.86g(0.010mol)、合成例19で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル6.36g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル16.84gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物8.57gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルと4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率74.3%)。
[比較例1][ZnPc−{α―(2,6−(CHPhO)}{β―(2,5−ClPhO)}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例9で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル30.0g(0.0510mol)、ヨウ化亜鉛(II)4.48g(0.0140mol)、ベンゾニトリル45.0gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物26.73gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−フルオロ−6−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率86.7%)。
[評価]
(ポリイミド樹脂中での分光特性測定)
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)8部にジメチルアセトアミド(DMAc)100部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液6.063gに上記で得られたフタロシアニン化合物(A)または比較例1のフタロシアニン化合物15mgを加え、混合、溶解して樹脂塗料液を調整した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス板状に塗布し120度で20分間乾燥させた(乾燥後膜厚:3μm)。得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)で測定した。その結果を以下の表1にまとめた。
Figure 2014015542
Figure 2014015542
(アクリル樹脂中での分光特性測定)
上記で得られたフタロシアニン化合物(A)または比較例1のフタロシアニン化合物0.100gに(株)日本触媒社製アクリル系バインダーポリマー1.48gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略す)2.58g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.350g、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製(IRGACURE369)0.024gを加え、溶解、混合して、樹脂塗料液を調製した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス板に塗布し、100℃にて20分間乾燥させた後、さらに230℃にて20分間、加熱処理した(乾燥後膜厚:3μm)。得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)にて測定し以下の表2にまとめた。
Figure 2014015542
以上の結果より、実施例1〜22のフタロシアニン化合物(A)は、比較例1のフタロシアニン化合物と比較して700nmでの透過率が低いことがわかる。これは、Abs(Q1)/Abs(Q2)が高い、すなわち、サブピークでの吸光度が比較的高く、分光特性として700nm付近の透過率を低下させることができるためであると考えらえる。また、630nmの透過率も比較的高く、赤外フィルター用いるのに適したバランスのとれた分光特性となっている。
[フタロシアニン化合物(B)]
[参考例1][ZnPc−{α−(2−(COOCH)PhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例20で得られた3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル4.17g(0.0150mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.32g(0.0041mol)、ベンゾニトリル16.70gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物2.00gを得た(3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率45.0%)。
[参考例2][CuPc−{α−(2−(COOCH)PhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例20で得られた3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル4.00g(0.0144mol)、塩化銅(I)0.39g(0.0040mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル9.33gを仕込み、180℃で撹拌しながら10時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物2.94gを得た(3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率69.5%)。
[参考例3][ZnPc−{α−(2−ClPhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例21で得られた3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリル10.19g(0.040mol)、ヨウ化亜鉛(II)3.51g(0.011mol)、ベンゾニトリル23.8gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物2.74gを得た(3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率25.3%)。
[参考例4][ZnPc−{α−(2、6−ClPhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例22で得られた3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル2.3g(0.0080mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.70g(0.0022mol)、ベンゾニトリル13.1gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物0.80gを得た(3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率32.8%)。
[参考例5][CuPc−{α−(2,6−ClPhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例22で得られた3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル4.00g(0.0144mol)、塩化銅(I)0.38g(0.0038mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル9.33gを仕込み、180℃で撹拌しながら10時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物3.22gを得た(3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロ
ニトリルに対する収率76.3%)。
[参考例6][ZnPc−{α−(2,6−(CHPhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例23で得られた3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル3.72g(0.015mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.32g(0.0041mol)、ベンゾニトリル14.90gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物2.59gを得た(3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率65.4%)。
[参考例7][CuPc−{α−(2,6−(CHPhO)}{β−H}]の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例23で得られた3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル4.00g(0.0161mol)、塩化銅(I)0.44g(0.0044mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル9.33gを仕込み、180℃で撹拌しながら10時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物2.87gを得た(3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率67.44%)。
[参考例8][ZnPc−{α−(4−CNPhO)}{β−H}]亜鉛の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例24で得られた3−(4−シアノフェノキシ)フタロニトリル8.0g(0.0326mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.86g(0.0090mol)、ベンゾニトリル18.6gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物3.6gを得た(3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルに対する収率47.3%)。
[参考例9][ZnPc−{α−(2,6−ClPhO)}{β−(2,6−ClPhO)}]亜鉛の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例22で得られた3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル2.5g(0.0086mol)、合成例23で得られた4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル2.5g(0.0086mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.1g(0.0048mol)、ベンゾニトリル7.5gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1と全く同様の操作を行い、目的物4.2gを得た(3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルと4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率79.2%)
[評価]
上記で得られたフタロシアニン化合物(B)について、フタロシアニン(A)の評価方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表3にまとめた。また、フタロシアニン(A)の評価方法と同様にして、アクリル樹脂中での分光特性を測定し、その結果を表4にまとめた。
Figure 2014015542
Figure 2014015542
実施例20〜36
(2種の色素を混合してのポリイミド中での分光特性測定)
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)8部にDMAc100部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液6.063gにフタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン化合物(B)を表5に記載の重量比で総量が15mgになるように量り取った色素混合物を、、混合、溶解して樹脂塗料液を調整した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス板状に塗布し120度で20分間乾燥させた。得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)で測定した。その結果を以下の表5にまとめた。
Figure 2014015542
以上の結果より、フタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン化合物(B)とを組み合わせることにより、700nmでの透過率が低いものとなっていることがわかる。
以下、フタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン化合物(B)とを組み合わせることの効果を補足する。
参考例1−9は、表3に示したように650nmの透過率を50%としたとき、620〜640nmに存在するサブピークによって、630nmの透過率が低下することが分かる。
また、比較例1は、図2に示すように680nm付近に吸収の谷があるため、650nmの透過率を50%としたとき680nm付近の透過率が高くなってしまう。
実施例1〜19のフタロシアニン化合物は650nmの透過率を50%としたとき、比較的高い会合性を持たせることで、比較例1や参考例3に比べて目標分光に近い吸収波形が得られる。
実施例20〜36のフタロシアニン組成物では、実施例1〜19の比較的高い会合性を有するフタロシアニン化合物に参考例の会合性の低いフタロシアニンを加えることで、実施例のフタロシアニン化合物で吸収がやや不足している680〜700nm付近の吸収を補い、より目標分光に近い分光特性が得られる。
実施例37〜40
(2種の色素を混合してのアクリル樹脂中での分光特性測定)
フタロシアニン化合物(A)およびフタロシアニン化合物(B)を表6に記載の重量比で総量が0.100gになるように量り取り、(株)日本触媒社製アクリル系バインダーポリマー1.48gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略す)2.58g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.350g、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製(IRGACURE369)0.024gを加え、溶解、混合して、樹脂塗料液を調製した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス板に塗布し、100℃にて20分間乾燥させた後、さらに230℃にて20分間、加熱処理した。得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)にて測定し以下の表6にまとめた。
Figure 2014015542
1 レンズ、
2 バレル、
3 赤外線カットフィルター、
4 ホルダー、
5 カバーガラス、
6 センサー。

Claims (3)

  1. 下記式(1):
    Figure 2014015542
    (式中、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14、およびZ15は、それぞれ独立して、下記式(2):
    Figure 2014015542
    上記式(2)中、Rは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、またはシアノ基であり、mは1〜5の整数であり、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基である)、またはフッ素原子であり、m’は0〜4の整数である、
    で表わされる置換基(a)、または下記式(3):
    Figure 2014015542
    上記式(3)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR(この際、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基)、またはフッ素原子であり、nは0〜5の整数である、
    で表わされる置換基(b)を表わし、
    、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13、およびZ16は、それぞれ独立して、フッ素原子または下記式(3’):
    Figure 2014015542
    上記式(3’)中、R4’は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、−COOR5’(この際、R5’は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基)、置換基を有してもよい炭素原子数6〜30のアリール基、またはハロゲン原子であり、n’は0〜5の整数である、
    で表わされる置換基(b’)を表わし、
    およびZをユニット1、ZおよびZをユニット2、ZおよびZ12をユニット3、Z13およびZ16をユニット4とした場合に、ユニット1〜4のいずれか1〜3個がユニットを構成する置換基のいずれもがフッ素原子であり、かつ、残りのユニットが、ユニットを構成する置換基のいずれもが置換基(b’)である、またはユニットを構成する置換基のいずれかが置換基(b’)であり、他方がフッ素原子であり、
    Mは金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。)で示されるフタロシアニン化合物(A)。
  2. 前記Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14、およびZ15のうち少なくとも2個は、前記置換基(a)である、請求項1に記載のフタロシアニン化合物(A)。
  3. 前記フタロシアニン化合物(A)の最大吸収波長に対して5〜50nm短い最大吸収波長を有するフタロシアニン化合物(B)を含み、前記フタロシアニン化合物(B)の最大吸収波長での吸光度に対するサブピークでの吸光度の割合が0.4以下である、フタロシアニン組成物。
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