JP2014013702A - 蓄電デバイス用電極、それを用いた蓄電デバイスおよびその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い重量エネルギー密度および高いレート特性を有する新規な蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】集電体1表面の少なくとも一部に形成された多孔質層2を備える蓄電デバイス用電極であって、上記多孔質層が少なくとも下記(X)および(Y)からなり、上記多孔質層の表面が、平均直径50〜10,000μmの凹部を複数分布した凹凸構造である蓄電デバイス用電極。
(X)イオンを挿入・脱離する活物質。
(Y)バインダー。
【選択図】図1

Description

本発明は蓄電デバイス用電極、それを用いた蓄電デバイスおよびその製法に関し、詳しくは高い重量エネルギー密度および高いレート特性を有する新規な蓄電デバイス用電極、それを用いた蓄電デバイスおよびその製法に関するものである。
近年、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等における電子技術の進歩、発展に伴い、これら電子機器の蓄電デバイスとして、繰り返し充放電することができる二次電池等が広く用いられている。このような二次電池等の電気化学的蓄電デバイスにおいては、電極として使用する材料の高容量化およびハイレート特性が望まれる。
蓄電デバイスの電極は、イオンの挿入・脱離が可能な機能を有する活物質を含有する。活物質のイオンの挿入・脱離は、いわゆるドーピング・脱ドーピングとも称され、一定の分子構造あたりのドーピング・脱ドーピング量をドープ率(またはドーピング率)と呼び、ドープ率が高い材料ほど、電池としては高容量化が可能となる。
電気化学的には、イオンの挿入・脱離の量が多い材料を電極として使用することにより、電池として高容量化が可能となる。より詳しく述べると、蓄電デバイスとして注目されるリチウム二次電池においては、リチウムイオンを挿入・脱離することができるグラファイト系の負極が用いられ、6つの炭素原子あたり1つ程度のリチウムイオンが挿入・脱離し高容量化が得られている。
このようなリチウム二次電池のなかでも、正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素材料を用い、両電極を電解液中で対峙させたリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有するようになるため、上述した電子機器の蓄電デバイスとして広く用いられている。
しかし、上記リチウム二次電池は、電気化学反応によって電気エネルギーを得る二次電池であって、上記電気化学反応の速度が小さいために、出力密度が低いという欠点がある。さらに、二次電池の内部抵抗が高いため、急速な放電は困難であるとともに、急速な充電も困難となっている。また、充放電に伴う電気化学反応によって電極や電解液が劣化するため、一般に寿命、すなわち、サイクル特性もよくない。
そこで、上記の問題を改善するため、ドーパントを有するポリアニリンのような導電性ポリマーを正極活物質に用いるリチウム二次電池も知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、一般に、導電性ポリマーを正極活物質として有する二次電池は、充電時には導電性ポリマーにアニオンがドープされ、放電時にはそのアニオンがポリマーから脱ドープされるアニオン移動型である。そのため、負極活物質にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素材料等を用いたときは、充放電時にカチオンが両電極間を移動するカチオン移動型のロッキングチェア型二次電池を構成することができない。すなわち、ロッキングチェア型二次電池は電解液量が少なくてすむという利点を有するが、上記導電性ポリマーを正極活物質として有する二次電池はそれができず、蓄電デバイスの小型化に寄与することができない。
このような問題を解決するために、電解液を大量に必要とせず、電解液中のイオン濃度を実質的に変化させないとともに、これにより体積や重量あたりの容量密度、エネルギー密度の向上を目的とした、カチオン移動型の二次電池も提案されている。これは、ドーパントとしてポリビニルスルホン酸のようなポリマーアニオンを有する導電性ポリマーを用いて正極を構成し、負極にリチウム金属を用いているものである(特許文献2参照)。
特開平3−129679号公報 特開平1一132052号公報
しかしながら、上記二次電池は、性能において未だ充分ではない。すなわち、上記電池は、正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用いたリチウム二次電池に比べ、重量エネルギー密度が低くハイレート特性が低い。
本発明は、従来のリチウム二次電池のような蓄電デバイスにおける上述した問題を解決するためになされたものであって、高い重量エネルギー密度および高いレート特性を有する新規な蓄電デバイス用電極、それを用いた蓄電デバイスおよびその製法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、集電体表面の少なくとも一部に形成された多孔質層を備える蓄電デバイス用電極であって、上記多孔質層が少なくとも下記(X)および(Y)からなり、上記多孔質層の表面が、平均直径50〜10,000μmの凹部を複数分布した凹凸構造である蓄電デバイス用電極を、第1の要旨とする。
(X)イオンを挿入・脱離する活物質。
(Y)バインダー。
また、上記電極を用いる蓄電デバイス用正極を第2の要旨とし、さらにこれを正極とし、負極が下記(Z)を含んでいる蓄電デバイスを第3の要旨とする。
(Z)イオンを挿入・脱離し得る化合物または金属とから選ばれる少なくとも一種。
そして、少なくとも活物質(X)およびバインダー(Y)からなる多孔質層組成物と、溶媒とを超音波分散処理する工程を備える蓄電デバイス用電極の製法を第4の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、高い重量エネルギー密度および高いレート特性を有する蓄電デバイスを得るため、鋭意検討を重ねた。一般に、集電体との接触率を向上させて高い重量エネルギー密度等を図るため、電極表面は全て(集電体と接触する面のみならず全ての表面)平坦かもしくはサブミクロンの細孔を存在させるにとどめるものである。しかしながら、本発明者らは、多孔質の電極表面の凹部の大きさが、高容量密度等の電池特性に影響を与えることに着目し、さらに研究を進めた結果、電極表面に存在する凹凸構造に、従来の技術常識に反し、比較的大きな凹部を形成し、それによって電極表面に、特定量の電解液を溜めることが可能な電解液溜まりを形成すると、活物質の充放電時のイオン移動をスムーズに行うことができ、これによって高い重量エネルギー密度および高いレート特性を有する蓄電デバイスが得られることを見出し、本発明に到達した。
以上のように、集電体表面の少なくとも一部に形成された多孔質層を備える蓄電デバイス用電極であって、上記多孔質層が少なくとも上記(X)および(Y)からなり、上記多孔質層の表面が、平均直径50〜10,000μmの凹部を複数分布した凹凸構造である蓄電デバイス用電極であると、これを用いた蓄電デバイスは重量エネルギー密度に優れるとともに高いレート特性が得られるようになる。
また、上記凹凸構造の液溜まり率が、3〜70%であると、得られる蓄電デバイスはさらに重量エネルギー密度に優れるようになる。
さらに、上記活物質(X)が、導電性ポリマーであると、電極や電解液の劣化を低減できる蓄電デバイスを実現できるようになる。
そして、上記バインダー(Y)の主成分が、アニオン性ポリマーであると、電解液中のイオン濃度が実質的に変化せず、電解液を大量に必要としないようになり、蓄電デバイスの小型化が実現できるようになる。
上記蓄電デバイス用電極を正極に用いると、得られる蓄電デバイスは、高い重量エネルギー密度を実現できるようになる。
さらに、電解質層とこれを挟んで対向して設けられた正極と負極とを有する蓄電デバイスであって、正極が上記蓄電デバイス用電極であり、負極が下記(Z)を含む蓄電デバイスであると、高性能な電池特性を有するようになる。
(Z)イオンを挿入・脱離し得る化合物または金属とから選ばれる少なくとも一種。
また、少なくとも上記活物質(X)およびバインダー(Y)からなる多孔質層組成物と、溶媒とを超音波分散処理する工程を備える蓄電デバイス用電極の製法によれば、よりエネルギー特性に優れる蓄電デバイスが得られるようになる。
本発明の蓄電デバイス用電極の構造を示す断面図である。 本発明の蓄電デバイスの構造を示す断面図である。 本発明の蓄電デバイス用電極の液溜まり率の測定を説明するための断面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明は、以下の内容に限定されない。
本発明の蓄電デバイス用電極は、図1に示すように、集電体1表面の少なくとも一部に形成された多孔質層からなる電極2であり、この電極2は、その表面に凹凸構造を有し、平均直径が特定の比較的大きな凹部が複数分布していることを特徴とする。なお、孔2’は多孔質層の孔を示す。
そして、本発明の蓄電デバイスは、図2に示すように、電解質層3とこれを挟んで対向して設けられた正極2と負極4とを有し、この正極2が上記説明した電極2であるとともに、負極4がイオンを挿入・脱離し得る化合物または金属とから選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。以下、詳しく順に説明する。
<電極について>
本発明の蓄電デバイス用電極は、少なくともイオンを挿入・脱離する活物質(X)およびバインダー(Y)からなる多孔質層である。
ここで上記イオンの挿入・脱離する活物質(X)(以下、「活物質」ということがある)としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアズレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、およびこれらの置換体ポリマー等の導電性ポリマー系材料、あるいはポリアセン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン等のカーボン系材料があげられる。また、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等の無機系材料もあげられる。特に、電気化学的容量の大きなポリアニリンまたはポリアニリン誘導体が特に好ましく用いられる。
上記ポリアニリンの誘導体としては、例えば、アニリンの4位以外の位置にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基等の置換基を少なくとも1つ有するものがあげられる。なかでも、o−メチルアニリン、o−エチルアニリン、o−フェニルアニリン、o−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン等のo−置換アニリン、m−メチルアニリン、m−エチルアニリン、m−メトキシアニリン、m−エトキシアニリン、m−フェニルアニリン等のm−置換アニリンが好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
ポリアニリンのような導電性ポリマー系材料は、通常、ドープ状態(イオンが挿入された状態)にある。また、上記(X)がドープ状態にない場合には、ドープ処理を行うことによりドープ状態となる。ドープ処理としては、具体的には、出発物質(例えば、アニリン)にドープする原子を含むドーパントを混ぜる方法、また生成物質(例えば、ポリアニリン)をドーパントと反応させる方法等があげられる。
上記(X)の、イオンの挿入・脱離は、先に述べたように、いわゆるドーピング・脱ドーピングとも称され、一定の分子構造あたりのドーピング・脱ドーピング量をドープ率と呼び、ドープ率が高い材料ほど、電池としては高容量化が可能となる。この際のイオンをドーパントと呼ぶことがある。
例えば、X成分である導電性ポリマーのドープ率は、ポリアニリンでは0.5、ポリピロールでは0.25と言われている。ドープ率が高いほど、高容量の電池が形成できる。この際、例えば導電性ポリアニリンの導電性は、ドープ状態では100〜103S/cm程度、脱ドープ状態では、10-15〜10-2S/cmとなる。
したがって、上記(X)は充電時または放電時において、ドープ状態(放電時)であってもよいし、脱ドープ状態もしくは還元脱ドープ状態(充電時)であってもよい。
ところで、上記(X)を初期に還元脱ドープ状態とするためには、直接還元脱ドープ状態とする方法もあるが、一般には、脱ドープ状態にした後、還元する工程を要する。まず、脱ドープ状態は、(X)が有するドーパントを中和することによって得られる。例えば、上記(X)のドーパントを中和する溶液中で撹拌し、その後洗浄濾過することにより、脱ドープ状態の(X)が得られる。具体的には、テトラフルオロホウ酸をドーパントとするポリアニリンを脱ドープするには、水酸化ナトリウム水溶液中で撹拌することにより中和させる方法があげられる。
つぎに、脱ドープ状態の(X)を還元することにより、還元脱ドープ状態が得られる。例えば、脱ドープ状態の(X)を還元する溶液中で撹拌し、その後洗浄濾過することにより、還元脱ドープ状態の(X)が得られる。具体的には、脱ドープ状態となったポリアニリンを、フェニルヒドラジンのメタノール水溶液中で撹拌することにより還元させる方法があげられる。
本発明の蓄電デバイスは、少なくとも上記(X)と、つぎに説明するバインダー(Y)とを含有する材料を用いて電極を構成する。
<バインダー(Y)について>
ここで、バインダー(Y)としては、例えば、フッ化ビニリデンやスチレン−ブタジエンゴムのようなバインダーだけでなく、ポリアニオンや分子量の比較的大きなアニオン化合物、電解液に溶解性の低いアニオン性ポリマー等があげられる。
なかでも、バインダー(Y)の主成分が上記アニオン性ポリマーからなることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
またさらにアニオン性ポリマーの中でも、分子中にカルボキシル基を有する化合物が好ましく用いられ、特にポリマーであるポリカルボン酸はより好適に用いられる。
上記ポリカルボン酸としては、例えば、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸等があげられ、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が特に好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
本発明による蓄電デバイスにおいて、上記ポリカルボン酸などのポリマーをバインダー(Y)に用いた場合は、このポリマーがドーパントとしても機能することから、ロッキングチェア型の機構を有し、蓄電デバイスの特性の向上に関与するものとみられる。
上記ポリカルボン酸としては、分子中にカルボキシル基を有する化合物のカルボン酸をリチウム型にするものがあげられる。リチウム型への交換率は、好ましくは100%であるが、状況に応じては交換率は低くてもよく、好ましくは40%〜100%である。
上記バインダー(Y)は、活物質(X)100重量部に対して、通常、1〜100重量部、好ましくは、2〜70重量部、最も好ましくは、5〜40重量部の範囲で用いられる。上記(X)に対するバインダー(Y)の量が少なすぎると、均一な電極が得られない傾向にあり、他方、上記(X)に対するバインダー(Y)の量が多すぎても、エネルギー密度の高い蓄電デバイスを得ることができない傾向にある。
本発明の蓄電デバイスに係る電極は、少なくとも上記(X)と(Y)とからなる複合体からなり、好ましくは多孔質シートに形成される。通常電極の厚みは、1〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがさらに好ましい。
上記電極の厚みは、電極を先端形状が直径5mmの平板であるダイヤルゲージ(矢崎製作所製)を用いて測定し、電極の面に対して10点の測定値の平均をもとめることにより得られる。集電体上に電極(多孔質層)が設けられ複合化している場合には、その複合化物の厚みを、上記と同様に測定し、測定値の平均をもとめ、アルミ箔の厚みを差し引いて計算することにより電極の厚みが得られる。
本発明の蓄電デバイス用電極は、例えば、つぎのようにして形成される。上記バインダー(Y)を水に溶解して水溶液とし、これに活物質(X)と、必要に応じて、導電性カーボンブラックのような導電助剤を加え、充分に分散させて、ペーストを調製する。これを集電体上に塗布した後、水を蒸発させることによって、集電体上にX成分とY成分と(必要に応じて、導電助剤と)の均一な混合物の層を有する複合体としてシート電極を得ることができる。
そして、本発明の蓄電デバイス用電極は、多孔質層からなり、その表面(電解液と接する面)において凹凸構造を有する。蓄電デバイスを作製した際、この凹凸構造に電解液を溜め得るようになっており、これが本発明の特徴である。なお、本発明の凹凸構造を形成する凸部は多孔質層から形成されており、凹部に存在する電解液と凸部多孔質層中の電解液とは貫通孔により連結されている場合がある。
このような凹凸構造の形成は、例えば、つぎのような手法を用いて行うことができる。多孔質層を作製する際に、活物質(X)およびバインダー(Y)、そして必要に応じて溶媒、導電助剤等を加えたスラリー状溶液を調製するが、このスラリー状溶液を調製する際の撹拌混合工程で、通常より大きな一定の分散径を有する分散状態にスラリー状溶液を維持する。具体的には、元から存在する大きなある一定の分散径を残すように各本混合条件を制御する。
スラリー状溶液の溶媒をバインダーに対して比較的溶解性が小さい溶媒を用いると、集電体上に塗布し、乾燥する際に、比較的大きな分散径を有する多孔質層が得られる。したがって、この多孔質層の表面は分散径に起因する凹凸構造が形成される。
また、活物質(X)の粒子の円形度を小さくし、最密充填し難い構造にすることも有効である。
<凹部の平均直径について>
上記のように電極表面には凹凸構造が存在するが、この凹凸構造の凹部の平均直径は、50〜10,000μmである。特に上記平均直径は、100〜10,000μmであることが好ましく、さらに好ましくは500〜5,000μmである。
ここで、上記平均直径は、次のようにして測定される。
まず、作製した電極を厚み方向に切断し、測定試料を作製する。X線CTにより断層像を構築し、50μm以上の凸部間の距離を、複数点求め、その平均値を平均直径とする。なお、50μm未満の凸部のみ存在する場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い同様の操作により平均直径を求める。
なお、上述のように上記凹部は多孔質層表面に形成され、その凹部の平均直径は50〜10,000μmであるのに対し、多孔質層の孔の平均直径は5μm未満であり、両者は明らかに異なる。
<液溜まり率について>
また、上記電極表面は、従来より、平坦か微少な細孔が存在することが好ましいとする技術常識に反して、本発明は比較的大きな凹部が分布形成され、そこがかなりの量の電解液を溜め得る液溜まり部になっている。電極表面の凹部の液溜まり率は、3〜70%であることが好ましく、より好ましくは5〜50%であり、さらに好ましくは10〜30%である。液溜まり率が少なすぎると、電極と電解液との接触面が減少するため、高エネルギー密度等を実現することが困難な傾向にあり、多すぎると、電極中の活物質量が不充分なことから高エネルギー密度等を実現することが困難な傾向にあるからである。
ここで、電極表面の液溜まり率は、下記式(1)により表され、図3を用いて以下に説明する。
〔数1〕
液溜まり率(%)=(T1−T2)/T1×1/100 …(1)
上記式(1)において、T1は面接触平均厚み(図3のT1)であり、T2は点接触平均厚み(図3のT2)をいう。これらを測定することによって、液溜まり率を測定する。
具体的には、T1(面接触平均厚み)は、先端形状が直径5mmの平板であるダイヤルゲージ(尾崎製作所社製)を用いる。電極大きさ70mm(横)×140mm(縦)を縦横それぞれ10mm間隔で78点を測定する。得られた値の平均値から、集電体厚みを差し引き塗膜厚み(T1)とする。なお、通常の塗膜厚みはT1を用いる。
つぎに、T2(点接触平均厚み)は、電極上面および下面に接触する測定子先端部が超硬製2mm直径、先端部の曲率半径20mmの球面測定子を用い、測定圧が0.40N(40gf)のシート厚み測定装置(ミツトヨ社製)を用いて、上記と同じように78点の厚み測定を行う。得られた値の平均値から、集電体厚みを差し引いた値を塗膜厚み(T2)とする。
上記得られたT1およびT2を用い、上記式(1)にあてはめることにより、本発明の液溜まり率(%)が得られる。
上記のように形成された電極を、本発明の蓄電デバイスの正極として用いることができる。
<電解質層について>
本発明の蓄電デバイスに係る電解質層としては、電解質材料を用いて構成されるが、例えば、セパレータに電解液を含浸させてなるシートや、固体電解質からなるシートが好ましく用いられる。固体電解質からなるシートは、それ自体がセパレータを兼ねている。
上記電解質層材料は、溶質(電解質)と、必要に応じて溶媒と、各種添加剤とを用いて構成される。このような溶質としては、例えば、リチウムイオンなどの金属イオンとこれに対する適宜のカウンターイオン、スルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ハロゲンイオン等を組み合わせてなるものが好ましく用いられる。従って、このような電解質の具体例としては、LiCF3SO3、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCl等をあげることができる。
必要に応じて用いられる溶媒としては、例えば、カーボネート類、ニトリル類、アミド類、エーテル類等の少なくとも1種の非水溶媒、すなわち、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン等をあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、溶媒に溶質が溶解したものを「電解液」ということがある。
また、本発明においては、上述のように、セパレータを各種の態様で用いることができる。上記セパレータとしては、これを挟んで対向して配設される正極と負極の間の電気的な短絡を防ぐことができ、さらに、電気化学的に安定であり、イオン透過性が大きく、ある程度の機械強度を有する絶縁性の多孔質シートであればよい。従って、上記セパレータの材料としては、例えば、紙、不織布や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂からなる多孔性のフィルムが好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
<負極について>
本発明による蓄電デバイスにおける負極としては、金属またはイオンを挿入・脱離し得る化合物または金属の少なくとも一方(以下、「負極活物質」ということがある)(Z)を用いて形成される。上記負極活物質(Z)としては、金属リチウムや、酸化・還元時にリチウムイオンが挿入・脱離し得る炭素材料や遷移金属酸化物、シリコン、スズなどが好ましく用いられる。また、本発明において、「用いる」とは、その形成材料のみを使用する場合以外に、その形成材料と他の形成材料とを組み合わせて使用する場合も含める趣旨であり、通常、他の形成材料の使用割合は、その形成材料の50重量%未満に設定される。
また、負極の厚みは、正極の厚みに準ずることが好ましい。
<蓄電デバイスの作製について>
上記材料を用いて、蓄電デバイスの作製を、図2にもとづき説明する。なお、電池の組立ては、グローブボックス中、超高純度アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
図2において、正極2および負極4の集電体(図2の1,5)としては、ニッケル、アルミ、ステンレス、銅等の金属箔やメッシュが適宜用いられる。そして、この集電体1,5に、正極2および負極4の電流取り出し用接続端子(タブ電極、図示せず)を、スポット溶接機にて接続して用いる。
つぎに、正極2と、集電体1とを真空乾燥する。この後、露点−100℃のグローブボックス内にて金属リチウム箔等の負極活物質をステンレスメッシュに押しつけて、負極4と集電体5の複合体を作製する。
ついで、グローブボックス内にて、この正極2と負極4の間に所定枚数の各種セパレータ(図示せず)を挟み、これらの三方をヒートシールされたラミネートセルの中に、正極2と負極4が正しく対向するように、またショートしないようにセパレータの位置を調整する。
そして、正極および負極用タブ部分にシール剤をセットした上で、電解液注入口を少し残して、タブ電極部分のヒートシールを行う。その後、所定量の電池電解液をマイクロピペットで吸引して、ラミネートセルの電解液注入口から所定量注入する。最後にラミネートセル上部の電解液注入口をヒートシールにて溶封し、本発明の蓄電デバイス(ラミネートセル)が完成する。
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、上記ラミネートセル以外に、フィルム型、シート型、角型、円筒型、ボタン型等種々の形状に形成される。また、蓄電デバイスの正極電極サイズとしては、ラミネートセルであれば1辺が、1〜300mmであることが好ましく、特に好ましくは10〜50mmであり、負極の電極サイズは1〜400mmであることが好ましく、特に好ましくは10〜60mmである。負極の電極サイズは、正極電極サイズより、わずかに大きくすることが好ましい。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例,比較例となる蓄電デバイスの作製に先立ち、下記に示す各成分を調製・準備した。
〔活物質(X)の調製〕
活物質(X)として、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン粉末を下記のように調製した。なお、本発明において粉末とは、粒子が集合したものをいう。
(導電性ポリアニリン粉末)
イオン交換水138gを入れた300mL容量のガラス製ビーカーに42重量%濃度のテトラフルオロホウ酸水溶液(和光純薬工業社製、試薬特級)84.0g(0.402モル)を加え、磁気スターラーにて撹拌しながら、これにアニリン10.0g(0.107モル)を加えた。テトラフルオロホウ酸水溶液にアニリンを加えた当初は、アニリンは、テトラフルオロホウ酸水溶液に油状の液滴として分散していたが、その後、数分以内に水に溶解し、均一で透明なアニリン水溶液になった。このようにして得られたアニリン水溶液を低温恒温槽を用いて−4℃以下に冷却した。
つぎに、酸化剤として二酸化マンガン粉末(和光純薬工業社製、試薬1級)11.63g(0.134モル)を上記アニリン水溶液中に少量ずつ加えて、ビーカー内の混合物の温度が−1℃を超えないようにした。このようにして、アニリン水溶液に酸化剤を加えることによって、アニリン水溶液は直ちに黒緑色に変化した。その後、しばらく撹拌を続けたとき、黒緑色の固体が生成し始めた。
このようにして、80分間かけて酸化剤を加えた後、生成した反応生成物を含む反応混合物を冷却しながら、さらに、100分間、撹拌した。その後、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて、得られた固体をNo.2濾紙にて吸引濾過して、粉末を得た。この粉末を約2モル/Lのテトラフルオロホウ酸水溶液中にて磁気スターラーを用いて撹拌、洗浄した。ついで、アセトンにて数回、撹拌、洗浄し、これを減圧濾過した。得られた粉末を室温(25℃)で10時間真空乾燥することにより、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン(以下、単に、「導電性ポリアニリン」という。)12.5gを得た。この導電性ポリアニリンは鮮やかな緑色粉末であった。
(導電性ポリアニリン粉末の電導度)
上記導電性ポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み720μmの導電性ポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ボー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、19.5S/cmであった。
(脱ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末)
上記により得られたドープ状態である導電性ポリアニリン粉末を2モル/L水酸化ナトリウム水溶液中に入れ、3Lセパラブルフラスコ中にて30分間撹拌し、中和反応によりドーパントのテトラフルオロホウ酸を脱ドープした。濾液が中性になるまで脱ドープしたポリアニリンを水洗した後、アセトン中で撹拌洗浄し、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過し、No.2濾紙上に、脱ドープしたポリアニリン粉末を得た。これを室温下、10時間真空乾燥して、茶色の脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末)
つぎに、フェニルヒドラジンのメタノール水溶液中に、この脱ドープ状態のポリアニリン粉末を入れ、撹拌下30分間還元処理を行った。ポリアニリン粉末の色は、還元により、茶色から灰色に変化した。反応後、メタノール洗浄、アセトン洗浄し、濾別後、室温下真空乾燥し、還元脱ドープ状態のポリアニリンを得た。
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末の電導度)
上記還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み720μmの還元脱ドープ状態のポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ボー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、5.8×10-3S/cmであった。
〔バインダー(Y)の準備〕
(バインダー1溶液:水溶媒)
ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、重量平均分子量100万)を用い、これを水に加熱撹拌して溶解し、4.4重量%濃度の均一で粘稠なポリアクリル酸水溶液20.5gを得た。この水溶液に水酸化リチウム0.15gを加え、再度溶解させ、アクリル酸部位の50%がリチウムに置換したポリアクリル酸−ポリアクリル酸リチウム複合体溶液(バインダー1溶液)を準備した。
(バインダー2溶液:水/メタノール混合溶媒)
ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、重量平均分子量100万)を用い、これを水/メタノール混合溶媒(重量比1/1)に加熱撹拌して溶解し、4.4重量%濃度の均一で粘稠なポリアクリル酸水溶液20.5gを得た。この水溶液に水酸化リチウム0.15gを加え、再度溶解させ、アクリル酸部位の50%がリチウムに置換したポリアクリル酸−ポリアクリル酸リチウム複合体溶液(バインダー2溶液)を準備した。
〔負極材料の準備〕
厚み50μmの金属リチウム箔(本城金属社製、コイン型金属リチウム)を準備した。
〔電解液の準備〕
1モル/dm3濃度のテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)のエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート溶液(キシダ化学社製)を準備した。
〔セパレータの準備〕
不織布(宝泉社製、TF40−50(空孔率:55%)を準備した。
〔タブ電極〕
正極の電流取り出し用タブ電極として、厚み50μmのアルミ金属箔を準備し、負極の電流取り出し用タブ電極として、厚み50μmのニッケル金属箔を準備した。
〔集電体〕
正極用集電体として、厚み30μmのアルミ箔を準備し、負極用集電体として、厚み180μmのステンレスメッシュを準備した。
〔実施例1〕
<上記(X)と(Y)とを用いて正極を形成>
上記X成分として調製した還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末4gと、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)粉末0.5gと、さらに水4gとを混合した後、これを上記準備したバインダー1溶液20.5g中に加え、スパチュラでよく練った。これを超音波式ホモジナイザーにて5分間超音波処理を施し、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて流動性を有するペーストを得た。このペーストをさらにあわとり練太郎(シンキー社製)にて3分間脱泡操作を行い、脱泡ペーストを得た。
卓上型自動塗工装置(テスター産業社製)を用い、マイクロメーター付きドクターブレード式アプリケータによって、溶液塗工厚みを360μmに調整し、塗布速度10mm/秒にて、上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉社製、30μm厚み)上に塗布した。ついで、室温で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥し、多孔質のポリアニリンシート電極を作製した。
<蓄電デバイスの作製>
上記により得られたポリアニリンシート電極を正極として用い、その他準備した上記材料を用いて、蓄電デバイス(リチウム二次電池)であるラミネートセルの組立をつぎに示す。
電池の組立てはグローブボックス中、超高純度アルゴンガス雰囲気下にて行った(グローブボックス内の露点:−100℃)。
また、ラミネートセル用正極の電極サイズは27mm×27mmとし、負極サイズは29mm×29mmとし、正極電極サイズより、わずかに大きくしてある。
まず、正極および負極のタブ電極の金属箔を、対応する集電体の金属箔にスポット溶接機にてそれぞれ接続して用いた。あらかじめスポット溶接機にてタブ電極を取り付けた正極と負極と、セパレータとを80℃にて2時間、真空乾燥した。その後、露点−100℃のグローブボックスに入れ、グローブボックス内にて、準備した金属リチウム箔を集電体のステンレスメッシュに押しつけてめり込ませて、負極と集電体の複合体を作製した。
つぎに、グローブボックス内にて、この正極と負極の間に各種セパレータを挟み、これらを三方がヒートシールされたラミネートセルの中にセットし、正極と負極が正しく対向するように、またショートしないようにセパレータの位置も調整し、正極および負極用タブ部分にシール剤をセットした上で、電解液注入口を少し残して、タブ電極部分のヒートシールを行った。その後、所定量の電解液をマイクロピペットで吸引して、ラミネートセルの電解液注入口から所定量注入する。最後にラミネートセル上部の電解液注入口をヒートシールにて溶封し、ラミネートセルとして完成させた。
このようにして組み立てたリチウム二次電池の特性は、電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて、定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて行った。本発明では、特に断わらない限り、充電終止電圧は3.8Vとし、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、3.8Vの定電圧充電を2分間行い、この後、放電終止電圧2.0Vまで定電流放電を行った。充放電電流は0.18mAで行った。
〔実施例2〕
実施例1で調製した脱泡ペーストをさらに超音波式ホモジナイザーにて1分間超音波処理を施した以外は、実施例1と同様の操作でポリアニリンシート電極を得、その後リチウム二次電池を作製した。
〔実施例3〕
前記導電性ポリアニリン粉末4gに導電性カーボンブラック粉末(電気化学工業社製、デンカブラック)0.5gを混合した後、これを前記準備したバインダー2溶液20.5g中に加え、スパチュラでよく練った後、超音波式ホモジナイザーにて5分間超音波処理を施した後、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて流動性を有するペーストを得た。このペーストをあわとり練太郎(シンキー社製)にて3分間脱泡操作を行い、脱泡ペーストを得た。この脱泡ペーストの調製以外は、実施例1と同様の操作でポリアニリンシート電極を得、その後リチウム二次電池を作製した。
〔比較例1〕
実施例1の超音波式ホモジナイザーによる超音波処理とフィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いる処理に代えて、遊星回転式ボールミル(フィリッチュ社製、P−6)を使用し、5mmのジルコニアボールを使用しつつ回転数400rpmで1時間混合撹拌を行った。ジルコニアボールを分離後、得られたペーストを、あわとり練太郎(シンキー社製)を用い、3分間脱泡操作を行い、脱泡ペーストを得た。これ以外は、実施例1と同様の操作でポリアニリンシート電極を得、その後リチウム二次電池を作製した。
〔比較例2〕
コバルト酸リチウム90重量部、導電助剤としてアセチレンブラックが5重量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末が5重量部となるよう混合し、さらにこれをN−メチルピロリドン(NMP)液95重量部と混合し、スパチュラでよく練った後、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて分散させ正極活物質スラリーを調製した。このスラリーを厚さ30μmのアルミニウム製の集電体にドクターブレード法により塗布して、正極集電体上に電極層を形成した。その後、圧延ロールを用いて電極塗布層厚み30μmになるように圧縮し、正極を得た。実施例1のポリアニリンシート電極に代えて、上記作製した正極を用いる以外は、実施例1と同様の操作でリチウム二次電池を作製した。
このようにして得られた各蓄電デバイスを用い、前記した平均直径および液溜まり率の測定方法に加え、下記の測定方法に従って、各種特性を測定・評価し、その結果を後記の〔表1〕に示した。
<電極の空隙率(%)>
電極の空隙率(%)={(電極の見かけ体積−電極の真体積)/電極の見かけ体積}×100
上記電極の見かけ体積とは、「電極の電極面積×集電体であるアルミ箔除いた電極厚み」を意味する。一方、上記電極の真体積とは、「アルミ箔を除いた電極構成材料の体積」をいう。具体的には、前述したように、電極構成材料の構成重量割合と各構成材料の真密度の値を用いて、電極構成材料全体の平均密度を算出しておき、電極構成材料の重量総和をこの平均密度で除することにより求められる。
<重量エネルギー密度(Wh/kg)>
各蓄電デバイスを、電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて、25℃の環境下で、定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて測定を行った。充電終止電圧は3.8Vとし、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、3.8Vの定電圧充電を2分間行い、この後、放電終止電圧2.0Vまで定電流放電を行った。充放電電流はポリアニリンの重量容量密度を150mAh/gとし、20時間で全容量を充放電するように設定した(0.05C)。
<充電効率(%)>
上記電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて測定を行った際の、定電流充電により電圧が充電終止電圧3.8Vに到達するまでの容量(Ah)を測定し、下記式(2)により得られた値を充電効率(%)とした。
〔数2〕
充電効率(%)=10Cでの充電容量/0.2Cでの充電容量×100 …(2)
<放電容量維持率(%)>
放電容量維持率(%)は、電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて、0.2Cでの充放電を行い放電容量を求め、さらに、10Cでの充放電を行い放電容量を求めた。これを下記式(3)により得られた値を放電容量維持率(%)とした。
〔数3〕
放電容量維持率(%)=10Cでの放電容量/0.2Cでの放電容量×100 …(3)
なお、ここで「0.2C」とは、組み立てた二次電池を用いて、定電流充電もしくは放電して、5時間で充電もしくは放電終了となる電流値のことで、「10C」とは、定電流充電もしくは放電して、6分間で充電もしくは放電終了となる電流値のことを意味する。
Figure 2014013702
上記表1の実施例1〜3から明らかなように、平均直径50〜10,000μmの凹部が複数分布している本実施例品の電極は、充電効率および放電容量維持率が比較例に比べて高く、高いレート性能を有することが分かった。また、いずれの実施例も比較例1を除き高い重量エネルギー密度を有することも分かった。
これは多孔質電極表面の特定の凹凸構造により、電解液が滞留可能な液溜まり層を形成することにより、多孔質内部から出てきたイオンの移動速度が、液溜まり層でより大きくなったことによるものと考えられる。
本発明の蓄電デバイスは、リチウム二次電池等の蓄電デバイスとして好適に使用できる。また、本発明の蓄電デバイスは、従来の二次電池と同様の用途に使用でき、例えば、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の携帯用電子機器や、ハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の駆動用電源に広く用いられる。
1 集電体
2 電極
2’ 孔
3 電解質層

Claims (7)

  1. 集電体表面の少なくとも一部に形成された多孔質層を備える蓄電デバイス用電極であって、上記多孔質層が少なくとも下記(X)および(Y)からなり、上記多孔質層の表面が、平均直径50〜10,000μmの凹部を複数分布した凹凸構造であることを特徴とする蓄電デバイス用電極。
    (X)イオンを挿入・脱離する活物質。
    (Y)バインダー。
  2. 上記凹凸構造の液溜まり率が、3〜70%である請求項1記載の蓄電デバイス用電極。
  3. 上記活物質(X)が、導電性ポリマーである請求項1または2記載の蓄電デバイス用電極。
  4. 上記バインダー(Y)の主成分が、アニオン性ポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用電極。
  5. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用電極を用いることを特徴とする蓄電デバイス用正極。
  6. 電解質層とこれを挟んで対向して設けられた正極と負極とを有する蓄電デバイスであって、正極が請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極であり、負極が下記(Z)を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
    (Z)イオンを挿入・脱離し得る化合物または金属とから選ばれる少なくとも一種。
  7. 少なくとも上記活物質(X)およびバインダー(Y)からなる多孔質層組成物と、溶媒とを超音波分散処理する工程を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用電極の製法。
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