JP2014013169A - 集光径可変なx線集光システム - Google Patents

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Abstract

【課題】
同一集光光学系を用いて回折限界下でX線の集光径を、走査型X線顕微鏡での使用に適した50nm以下からX線回折顕微鏡での使用に適したμmオーダーまでの広範囲に変更可能なX線集光システムを提供する。
【解決手段】
第1楕円E1の一方の焦点を光源Aとし、他方の焦点を共通焦点Bとするとともに、第2楕円E2の一方の焦点を固定焦点Cとし、他方の焦点を共通焦点と一致させ、第1ミラーMUの形状を第1楕円の一部で形成し、第2ミラーMDの形状を第2楕円の一部で形成し、光源と固定焦点の位置を固定したまま、共通焦点の位置と第1ミラーと第2ミラーの形状を変化させて、固定焦点での集光径を変える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、集光径可変なX線集光システムに係わり、更に詳しくは同一集光光学系を用いて集光径を広範囲で変更可能なX線集光システムに関するものである。
レントゲンによってX線が発見されて以来、X線分析技術は、医学・生物学・材料科学など、あらゆる分野の最先端研究の進展に不可欠な存在となっている。特に最近ではX線分析の高分解能化の流れは目覚ましく、既に100nm分解能のX線顕微鏡が日常的に用いられている。X線顕微鏡に用いる集光光学系の開発も進み、形状可変X線ミラーを用いて反射面の形状誤差を補正して回折限界を達成する試みもある。
例えば、特許文献1には、超精密な反射面を有する垂直方向楕円集光ミラーと水平方向楕円集光ミラーを互に直角に光軸方向に配置してKirkpatrick−Baez(KB)ミラー系を構成し、各楕円集光ミラーで硬X線を反射させて集光するX線集光方法において、前記楕円集光ミラーの前段であって波面補正をする楕円集光ミラーに対応させて反射面の形状可変機能を有する形状可変型平面ミラーを配置し、該形状可変型平面ミラーで反射されたX線が楕円集光ミラーで焦点に集光するようなX線集光光学系とし、焦点近傍での光軸に垂直な平面におけるX線強度分布を測定するとともに、入射X線の光軸に垂直な平面におけるX線強度分布を測定し若しくは入射X線の既知のX線強度分布を用い、焦点近傍でのX線強度分布と入射X線強度分布から位相回復法を用いて反射面での複素振幅分布を算出し、この複素振幅分布からX線集光光学系の波面収差を算出し、この算出した波面収差を最小にするように前記形状可変型平面ミラーの反射面の形状を制御することを特徴とする位相回復法を用いたX線集光方法が開示されている。
また、特許文献2には、軟X線から硬X線領域のX線ビームを反射させて理想波面に変更するための反射面形状制御ミラー装置であって、基板の表面中央部に帯状のX線反射面を形成し、該X線反射面の両側に沿って基準平面を形成するとともに、基板の両側部で少なくとも表裏一面に複数の圧電素子を前記X線反射面の長手方向に並べて基板に接合した反射面形状制御ミラーと、前記各圧電素子に電圧を印加する多チャンネルのコントロールシステムとからなる反射面形状制御ミラー装置が開示されている。ここで、前記反射面形状制御ミラーが、前記基板の両側部で、前記X線反射面を中心として左右対称に前記圧電素子を列設し、更に前記基板の表裏両面に同じ配置パターンで前記圧電素子を列設した点も開示されている。
ところで、X線顕微鏡には二つの方式があり、一つは走査型X線顕微鏡であり、もう一つはX線回折顕微鏡である。走査型X線顕微鏡は、小さな集光径のX線で試料を照射し、それを所定領域に渡って走査し、試料から発生する蛍光X線や、散乱X線、透過X線を検出して分析するので、分解能はX線の集光径に依存する。そのため、走査型X線顕微鏡では、X線の集光径は小さいほど良い。一方、X線回折顕微鏡は、大きな集光径のX線で試料の全体又は広い領域を同時に照射し、試料を透過した前方散乱X線の回折像を取得し、それに基づいて試料の各部の情報を得るのである。そのため、X線回折顕微鏡では、X線の集光径は比較的大きくなるが、明るさも必要であるので、あまり大きくすることもできない。例えば、走査型X線顕微鏡ではサブ50nm、X線回折顕微鏡ではμmオーダーのX線集光径である。
特許第4814782号公報 特開2011−137710号公報
しかし、X線の光学系には、電子顕微鏡の電磁レンズが持つ柔軟性(倍率可変・多様な顕微手法)はなく、一つの実験を固定された倍率で行えるだけである。これまで開発されてきた形状可変ミラーを用いたX線集光光学系は、単純に形状可変ミラーを楕円形状に変形させ、これを2枚直交するように配置(KB配置)したものであった。この場合、集光径を変化させるには、焦点距離を変化させなければならず、このような集光ビームで試料分析を行うに当たっては、再度試料位置を調整しなくてはならなかった。そこで、光学パラメータを自由に変更できる新しいX線顕微システムの開発が求められている。
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、同一集光光学系を用いて回折限界下でX線の集光径を、走査型X線顕微鏡での使用に適した50nm以下からX線回折顕微鏡での使用に適したμmオーダー、更に大きいサイズまで広範囲に変更することが可能となる集光径可変なX線集光システムを提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、光源から射出されたX線を反射面の形状が可変な1次元の第1ミラーと第2ミラーで反射させて固定焦点に集光する斜入射X線光学系であり、第1楕円の一方の焦点を光源とし、他方の焦点を共通焦点とするとともに、第2楕円の一方の焦点を光学系全体の固定焦点とし、他方の焦点を前記共通焦点と一致させ、前記第1ミラーの反射面の形状を前記第1楕円の一部で形成し、前記第2ミラーの反射面の形状を前記第2楕円の一部で形成し、前記光源からのX線を前記第1ミラーの反射面で反射させて前記共通焦点を通過させた後、前記第2ミラーの反射面で反射させて固定焦点に集光する配置とし、前記光源と固定焦点の位置を固定したまま、前記共通焦点の位置を変更してそれに対応して前記第1ミラーと第2ミラーの反射面の形状を変化させることにより、前記固定焦点での集光径を変えることを特徴とする集光径可変なX線集光システムを構成した(請求項1)。
ここで、前記光源から前記第1ミラーの反射面の中心点までの距離、前記固定焦点から前記第2ミラーの反射面の中心点までの距離、前記第1ミラーの反射面の中心点に対する入射角及び前記第2ミラーの反射面の中心点に対する入射角を予め定めた後、固定焦点で集光径が最小となる共通焦点の位置を算出し、前記第1楕円と第2楕円を決定してなることが好ましい(請求項2)。
そして、前記第1ミラーの反射面の中心点の座標と前記第2ミラーの反射面の中心点の座標を固定し、前記光源から第1ミラーの反射面の中心点、共通焦点、第2ミラーの反射面の中心点及び固定焦点を結ぶX線の中心軌跡を維持するとともに、前記共通焦点を前記第1ミラーと第2ミラーの間の中心軌跡に沿って移動させてなることがより好ましい(請求項3)。
そして、2対の前記第1ミラーと第2ミラーを用い、1対を水平方向に配向して水平第1ミラーと水平第2ミラーとするとともに、1対を垂直方向に配向して垂直第1ミラーと垂直第2ミラーとし、前記水平第1ミラーと垂直第1ミラーを前後に配置して1段目のKB配置とするとともに、前記水平第2ミラーと垂直第2ミラーを前後に配置して2段目のKB配置としてなることが、2次元の集光を行えて更に好ましい。
以上の構成により、前記固定焦点での集光径を30nmから10μmの範囲で変更可能とした(請求項5)。
以上にしてなる本発明の集光径可変なX線集光システムは、水平方向又は垂直方向の集光において、一対の楕円形状の形状可変ミラーを用いるので、色収差がなく、共通焦点の位置を変えることにより、光源や試料を配置する固定焦点の位置を変更することなく、同一集光光学系を用いて集光径を容易に変更することができ、またフラックスロスもない。常に、回折限界での集光となり、回折顕微鏡で需要なダークフィールドを最大化することができる。長波長(低エネルギー)領域のX線では、仮想光源サイズ、集光サイズともに波長に比例して大きくなるが、常に回折限界での集光条件を維持することが可能である。
また、自由かつ高精度に変形できる形状可変ミラーを4枚用いることで、集光径が可変な集光光学系が構築可能となる。これによる具体的な応用として、これまで別々に開発されてきた走査型X線顕微鏡と回折顕微鏡を統合した新しい顕微鏡の開発が挙げられる。このような顕微鏡では、スペクトロスコピーによって局所分析を行い(走査型X線顕微鏡モード)つつも、試料全体からの散乱X線を計算機によって再構成することで試料全体を可視化することが可能となり、真の意味で汎用的なX線顕微鏡を実現できる。
本発明における一対の形状可変X線ミラーと光源、共通焦点及び固定焦点との関係を示す説明図である。 本発明の基本原理を示す説明図である。 本実施形態で使用した形状可変X線ミラーの全体斜視図である。 同じく形状可変X線ミラーの構造を示す部分斜視図である。 同じく形状可変X線ミラーの変形再現性を試験した結果を示すグラフである。 本発明の集光径可変なX線集光システムの説明用配置図である。 一対の形状可変X線ミラーを用いた1次元集光におけるシミュレート結果を示し、上流側の第1ミラーMUの形状を示すグラフである。 同じく下流側の第2ミラーMDの形状を示すグラフである。 同じく第1ミラーによる共通焦点Bでの集光強度プロファイルを示すグラフである。 同じく第2ミラーによる固定焦点Cでの集光強度プロファイルを示すグラフである。 同じく一対の形状可変X線ミラーを用いた1次元集光におけるシミュレート結果を示し、固定焦点においた試料面での回折パターンを示す説明図である。
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の基本原理を示す説明図であり、水平方向又は垂直方向の何れか1次元の集光について説明している。
本光学系では、図1に示すように、第1楕円E1の焦点(光源A)から出たX線が、第1ミラーMUに反射され、共通焦点Bに集まり、第2ミラーMDで反射された後に、第2楕円E2の固定焦点Cに集まる。第1ミラーMUと第2ミラーMDは、形状可変ミラーとし、光源の位置Aと固定焦点C(試料位置)を固定し、2つの楕円E1,E2の共通焦点Bを一致するように変形させることで、すべての光を固定焦点Cに集められる。焦点距離を変化させることなく、光学系の開口数(NA)を変化させることで回折限界下において集光径(ビームサイズ)を30nmから10μmの範囲で変化させることができる。また、楕円と放物線を組み合わせると更に大きな集光径が得られる。
上述したように、2枚のミラーMU,MDはそれぞれ2つの楕円E1,E2の一部の形状を持つように変形させる。形状可変ミラーMU,MDを上述したように2つの焦点(A,C)を固定し、共通焦点Bを一致させながら異なる楕円形状へと変形させると、第2ミラーMDに照射させる光束の大きさが変化する。これによって開口数が変化できるので、開口数に反比例する形で回折限界下の集光径を変化させることができる。尚、図中符号E1Aは、第1楕円E1の長軸、E2Aは、第2楕円E2の長軸を示している。また、第1ミラーMUの反射面R1の中心点をP1、第2ミラーMDの反射面R2の中心点をP2で表している。また、CLは、X線の中心軌跡であり、X線ビームの中心位置を表している。
図2は本発明のX線集光光学系の基本原理を説明する配置を示している。一対の形状可変ミラー、即ち第1ミラーMUと第2ミラーMDは、反射面R1,R2が向き合うように配置されている。光源Aには、第3世代及び第3.5世代放射光、例えばSPring-8から切り出したコヒーレントX線を通過させるスリットが対応する。固定焦点Cの位置に試料面を置き、該試料面を透過した散乱X線や回折X線を下流に配置したX線用CCDで検出する。また、試料面で発生した蛍光X線をX線検出器XDで検出するようになっている。
図3及び図4は、本実施形態で使用した形状可変ミラー1を示している。この形状可変ミラー1は、合成石英基板2の表裏に貼り付けられた圧電素子3,3とその上に形成された電極4,…で構成されている。更に詳しくは、100mm×50mmで所定厚さの四角形板状の前記基板2の表面で、長手方向に沿った中央部に、X線の反射面5が高精度な平坦度で形成され、その両側に沿って帯状の圧電素子3,3が貼り付けられ、各圧電素子3の上には表面電極4が一定間隔毎に多数積層されている。尚、前記圧電素子3の下には全面に渡り裏面電極6が積層されている。そして、前記裏面電極6と各表面電極4,…間に独立して電源7から電圧を印加できるようになっている。そして、各表面電極4,…に所定の電圧を印可することで圧電素子3が変形し、もって反射面5の形状が変形し、自由曲面を創り出せるのである。尚、初期の反射面5の形状は、平面で良いので加工が容易である。勿論、予め反射面5の形状を球面状や任意の円弧状に加工しておけば、圧電素子3による変形量を少なくすることができる。
次に、実際に第1ミラーMUと第2ミラーMDの反射面R1,R2の形状を決定する具体的なプロセスを図1及び図2に基づいて説明する。先ず、光源Aの座標は予め決められている。それ以外に、光源Aから第1ミラーMUの反射面R1の中心点P1までの距離、固定焦点Cから第2ミラーMDの反射面R2の中心点P2までの距離、第1ミラーMUの反射面R1の中心点P1に対するX線の入射角と第2ミラーMDの反射面R2の中心点P2に対するX線の入射角を前もって決定する。これらの値が初期条件となる。
そして、共通焦点Bから第1ミラーMUの反射面の中心点P1までの距離L1と、共通焦点Bから第2ミラーMDの反射面の中心点P2までの距離L2に、適当な値を入力すると、第1楕円E1と第2楕円E2は一義的に決定され、前記第1ミラーMUの反射面R1と第2ミラーMDの反射面R2の形状が決まる。この光学系で固定焦点Cにおいて集光径が最も小さく、NAが最も大きくなるように、前記距離L1,L2の組み合わせを繰り返し計算によって見つける。その結果、前記第1ミラーMUの反射面R1の中心点P1の座標を決定すれば、前記固定焦点C、第2ミラーMDの反射面R2の中心点P2の座標及び共通焦点Bの座標が決定され、これ以降これらの座標は固定する。このときの共通焦点Bの座標をB1とする。こうして、前記光源Aから第1ミラーMUの反射面R1の中心点P1、共通焦点B(B1)、第2ミラーMDの反射面R2の中心点P2及び固定焦点Cを結ぶX線の中心軌跡CLが決まり、以降、この中心軌跡CLは変更されない。つまり、第1ミラーMUの反射面R1の中心点P1に対するX線の入射角と第2ミラーMDの反射面R2の中心点P2に対するX線の入射角は、反射面の形状を変えても初期決定した値のまま維持される。X線の入射角を固定することは実験において有利である。
次に、共通焦点Bを前記第1ミラーMUと第2ミラーMDの間の中心軌跡CLに沿って第2ミラーMDに接近する方向にB1からB3まで変化させる。つまり、距離L1を増加させ、その増加分だけ距離L2を減少させる。新たな共通焦点Bの座標を決めれば、二つの焦点と楕円上の一点の座標、つまり(A,B,P1)の座標と(C,B,P2)の座標が決まるので、該楕円E1,E2の形状を一義的に決めることができる。そして、楕円E1,E2の形状に応じて、形状可変の前記第1ミラーMUの反射面R1と、前記第2ミラーMDの反射面R2を、前記圧電素子3の各表面電極4,…に所定の電圧を印加して所望形状に変形させるのである。
ここで、前記固定焦点CにおいてX線の強度プロファイルを計測し、該強度プロファイルに乱れがある場合には、特許第4814782号公報に記載された位相回復法による反射面の形状補正手法等を利用して前述の前記第1ミラーMUと第2ミラーMDの各圧電素子に印加する電圧を微調整して形状を補正することができる。あるいは、O.Hignetteらが提案(SPIE Proc. 3152,188-199(1997))したペンシルビーム法によるミラーの反射面の形状修正も可能である。このペンシルビーム法は、X線のビームをミラーに入射直前でスリットによって細く絞り、スリットをビームに直交する方向に変位させて細いX線ビームでミラーの反射面を走査し、反射面に微小凹凸があると、X線の反射角度が大きくずれるので、そのスロープエラーをX線検出器で測定する方法である。このスロープエラーから曲率エラーを算出し、それに基づいて形状可変ミラーの圧電素子への投入電圧を計算するのである。この方法、大きな形状誤差を持っていても計測可能である。
前述のように二つの楕円を組み合わせる場合、集光径を極端に大きくするのに限界がある。それに対して、楕円と放物線を組み合わせ、楕円の一方の焦点と放物線の焦点を一致させて共通焦点とすることで、集光径を更に大きくすることができる。つまり、放物線をもちいることで、第2楕円の固定焦点が無限遠にあると考えることができ、これを使うことでNAを0にできる。楕円と放物線を組み合わせることで集光ビームではなく,サイズ可変の平行ビームを作ることができる。
図5は、本実施形態で使用した形状可変ミラー1の変形再現性を試験した結果を示している。先ず、大阪大学において、形状可変ミラー1を専用ホルダーにセットした状態で、前記圧電素子3の各表面電極4,…に所定の電圧を印加し、反射面5の形状をフィゾー型干渉計(GPI)で測定し、所定曲面からのずれを形状誤差として取得した。次に、形状可変ミラー1を専用ホルダーにセットしたまま、SPring-8がある播磨学研都市に搬送した後、前記圧電素子3の各表面電極4,…に同じ電圧を印加し、反射面5の形状をフィゾー型干渉計(GPI)で測定し、所定曲面からのずれを形状誤差として取得した。図5から、両者の形状誤差は数nmの範囲で非常に良く一致していることが分かる。つまり、形状可変ミラー1の反射面5の変形再現性は非常に優れていることが確認できた。従って、形状可変ミラー1の反射面5の形状を、X線集光光学系に組み込んだ状態で測定しなくても、ほぼ正確に修正可能である。
図6は、本発明の集光径可変なX線集光システムの全体配置を示し、2対の前記第1ミラーMUと第2ミラーMDを用い、1対を水平方向に配向して水平第1ミラーM1と水平第2ミラーM3とするとともに、1対を垂直方向に配向して垂直第1ミラーM2と垂直第2ミラーM4とし、前記水平第1ミラーM1と垂直第1ミラーM2を前後に配置して1段目のKB配置8とするとともに、前記水平第2ミラーM3と垂直第2ミラーM4を前後に配置して2段目のKB配置9としている。
また、本発明は別の表現をすれば、KB配置した2枚の形状可変ミラーを更に2対用い、合計4枚の形状可変ミラーを用いた光学系である。つまり、1対の形状可変ミラーM1と形状可変ミラーM2を互いに直交するように配置して1段目のKB配置8を構成し、もう1対の形状可変ミラーM3と形状可変ミラーM4を互いに直交するように配置して2段目のKB配置9を構成している。ここで、M1とM3、M2とM4が前述の第1ミラーMUと第2ミラーMDの対をそれぞれ構成している。図1及び図2で示した例のミラーを用いる場合は、1段目のKB配置8における水平第1ミラー(M1)と二段目のKB配置9における水平第2ミラー(M3)は反射面が上下逆向きであり、1段目のKB配置8における垂直第1ミラー(M2)と2段目のKB配置9における垂直第2ミラー(M4)は反射面が左右逆向きである。1段目のKB配置8では、従来のミラーマニピュレータをそのまま使用することができ、2段目のKB配置9では、通常とは水平第2ミラー(M3)が上下反転しているので、若干の工夫が必要であるが、従来のミラーマニピュレータを利用することができる。このように、2枚の形状可変ミラーを直交するようにKB配置し、それを2対用いることで、水平方向と垂直方向の2次元で、X線を集光することができる。尚、第2楕円E2をうまく配置することで、水平第2ミラー(M3)の反射面を上向きすることも可能であり、その場合には従来のミラーマニピュレータをそのまま使用することができる。
また、共通焦点の近傍には、蛍光板10とミラー11を配置し、それらを臨む位置に顕微鏡12を配置してビーム軌道モニター13を構成し、更に固定焦点Cの位置にナイフエッジ14とその後方にX線検出器15を配置して集光径評価系16を構成している。
SPring-8のBL29XULの第二ハッチでの実験を想定した具体的な設計パラメータは以下の通りである。X線のエネルギーは14keV以下に対応可能とした。ミラーM1〜M4の各ミラー長は100mmであり、X線の入射角は全て4.0mradとした。そして、光源AからミラーM1の中心までの距離は45m、ミラーM1の中心から共通焦点Bまでの距離は0.8m、ミラーM2の中心から共通焦点Bまでの距離は0.7m、ミラーM3の中心から共通焦点Bまでの距離は0.7m、ミラーM4の中心から共通焦点Bまでの距離は0.8m、ミラーM3の中心から固定焦点Cまでの距離は255mm、ミラーM4の中心から固定焦点Cまでの距離は150mmである。
次に、フレネルキルヒホッフ回折積分に基づいた計算によって本光学系の動作をシミュレートした結果を図7〜図10に示す。シミュレーションは、一対の第1ミラーMUと第2ミラーMDのみの1次元の集光である。共通焦点Bを下流に0mm(B1),200mm(B2),400mm(B3)ずらした場合について、共通焦点を一致させる条件で楕円形状を変化させた。図7は、第1ミラーMUの反射面の形状、図8は、第2ミラーMDの反射面の形状を示している。また、図9は、共通焦点Bでの集光強度プロファイル、図10は固定焦点Cでの集光強度プロファイルを示している。図9及び図10中に集光強度プロファイルの半値全幅(FWHM)の値も併せて示している。この結果、固定焦点Cにおいて、集光径を36nm〜322nmまで変化させることができた。図11には、固定焦点Cに置いた試料面での回折パターンを示し、共通焦点B1ではNAが最大となり、共通焦点B2ではNAが小さくなり、共通焦点B3ではNAがとても小さくなる。
ここで構築する視野可変型光学系では、第3世代及び第3.5世代放射光からのコヒーレントX線を切り出し、トータルフラックスを保存しながら任意の集光径で試料照射が可能な光学システムを実現できる。そして、二つの楕円を組み合わせる場合、視野の可変域は30nm〜10μmレベルであり、照明強度は最大でSPring-8光の10倍である。楕円と放物線を組み合わせると更に大きなビームサイズが得られる。光学系は、一軸ごとに2枚の形状可変ミラーによって構成し、全反射光学系を採用することにより、色収差がなくX線を集光できる。また、開口が一定である第1ミラーMUが受け止めた光をフラックスロスなく試料面に照射できる。この際、第1ミラーMUから共通焦点Bまでの距離L1、第2ミラーMDから共通焦点Bまでの距離L2を用いれば、第2ミラーMDのNAも縮小倍率もL1/L2に比例するため、常に回折限界での集光となり、回折顕微鏡で重要なダークフィールドを最大化できる。そして、波長が変わっても、波長に応じた集光径となり、上記の関係は不変である。その結果、10keVのエネルギーのX線でコヒーレンス照明時は常に10photons/s以上、蛍光分析やXAFSの際のインコヒーレント照明では、試料上の位置を動かすことなく最大1012photons/s以上が可能である。
そして、本発明の光学システムを用いてX線顕微鏡を構築すれば、倍率を変えながら1nmに迫る分解能を達成することができ、更に、30nmの分解能で元素分布XAFS分析等の同時計測が可能となる。これらが同一の顕微鏡システムの中で実現するので、放射光利用分野への大きな貢献ができる。
また、本発明は、生命科学分野への展開が可能である。例えば、有効な唯一の抗がん剤と言える白金製剤(抗がん剤)の作用・副作用機序解明に寄与する。白金製剤は、その重篤な副作用からこのメカニズムの解明と新薬の開発ががん患者のQOLの向上に不可欠とされている。また、がん細胞自身が耐性を獲得することも大きな問題となっている。耐性にタンパク質GSHが効いていることをX線顕微鏡分析から既に突き止められている。
一般に生体内の異物の代謝や毒性、副作用の解明には細胞レベルでの異物の動態を如何に高分解能に同定するかが重要であり、オルガネラレベルでの同定が鍵となる。そして、組織分離し、ターゲットタンパク質の同定が作用や副作用の解明の第一歩となる。3種類のPt製剤を投与した細胞では白金製剤は一般にはDNAにとりつき、その転写を抑制することが作用機序とされているが、その詳細はまだ明らかではない。これに加えて、ゴルジや小胞体に蓄積されるとの知見もあるが、その真偽が不明な状況である。これらの知見をベースにしながら、本発明を用いたX線顕微鏡で、Ptの細胞内動態を高分解能観察することで、細胞内組織との対応を明らかになる。そして、Pt結合タンパク質の精製と特定の研究が進展する。
A 光源(第1楕円E1の焦点)
B、B1、B2、B3 共通焦点
C 固定焦点(試料面)
CL 中心軌跡
MU 第1ミラー(上流側)
MD 第2ミラー(下流側)
E1 第1楕円
E2 第2楕円
L1 第1ミラーMUと共通焦点Bの距離
L2 第2ミラーMDと共通焦点Bの距離
M1、M2、M3、M4 形状可変ミラー
P1 第1ミラーMUの反射面の中心点
P2 第2ミラーMDの反射面の中心点
R1 第1ミラーMUの反射面
R2 第2ミラーMDの反射面
XD X線検出器
1 形状可変ミラー
2 合成石英基板
3 圧電素子
4 表面電極
5 反射面
6 裏面電極
7 電源
8 1段目のKB配置
9 2段目のKB配置
10 蛍光板
11 ミラー
12 顕微鏡
13 ビーム軌道モニター
14 ナイフエッジ
15 X線検出器
16 集光径評価系

Claims (5)

  1. 光源から射出されたX線を反射面の形状が可変な1次元の第1ミラーと第2ミラーで反射させて固定焦点に集光する斜入射X線光学系であり、第1楕円の一方の焦点を光源とし、他方の焦点を共通焦点とするとともに、第2楕円の一方の焦点を光学系全体の固定焦点とし、他方の焦点を前記共通焦点と一致させ、前記第1ミラーの反射面の形状を前記第1楕円の一部で形成し、前記第2ミラーの反射面の形状を前記第2楕円の一部で形成し、前記光源からのX線を前記第1ミラーの反射面で反射させて前記共通焦点を通過させた後、前記第2ミラーの反射面で反射させて固定焦点に集光する配置とし、前記光源と固定焦点の位置を固定したまま、前記共通焦点の位置を変更してそれに対応して前記第1ミラーと第2ミラーの反射面の形状を変化させることにより、前記固定焦点での集光径を変えることを特徴とする集光径可変なX線集光システム。
  2. 前記光源から前記第1ミラーの反射面の中心点までの距離、前記固定焦点から前記第2ミラーの反射面の中心点までの距離、前記第1ミラーの反射面の中心点に対する入射角及び前記第2ミラーの反射面の中心点に対する入射角を予め定めた後、固定焦点で集光径が最小となる共通焦点の位置を算出し、前記第1楕円と第2楕円を決定してなる請求項1記載の集光径可変なX線集光システム。
  3. 前記第1ミラーの反射面の中心点の座標と前記第2ミラーの反射面の中心点の座標を固定し、前記光源から第1ミラーの反射面の中心点、共通焦点、第2ミラーの反射面の中心点及び固定焦点を結ぶX線の中心軌跡を維持するとともに、前記共通焦点を前記第1ミラーと第2ミラーの間の中心軌跡に沿って移動させてなる請求項2記載の集光径可変なX線集光システム。
  4. 2対の前記第1ミラーと第2ミラーを用い、1対を水平方向に配向して水平第1ミラーと水平第2ミラーとするとともに、1対を垂直方向に配向して垂直第1ミラーと垂直第2ミラーとし、前記水平第1ミラーと垂直第1ミラーを前後に配置して1段目のKB配置とするとともに、前記水平第2ミラーと垂直第2ミラーを前後に配置して2段目のKB配置としてなる請求項1〜3何れか1項に記載の集光径可変なX線集光システム。
  5. 前記固定焦点での集光径を30nmから10μmの範囲で変更可能とした請求項1〜4何れか1項に記載の集光径可変なX線集光システム。
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