なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。以下、実施例について図面を参照しつつ説明する。
本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置を含む動力伝達装置の構成を模式的に示した図2及び図3のX−X´間の断面図である。図2は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した図1の矢視Aから見た平面図である。図3は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した図1の矢視Bから見た一部切欠平面図である。図4は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した部分拡大断面図である。
図1を参照すると、動力伝達装置1は、エンジン(図示せず、内燃機関)の回転動力を変速機(図示せず)へ伝達する装置である。動力伝達装置1は、エンジンのクランクシャフト2と、変速機のインプットシャフト6との間の動力伝達経路において、トルク変動吸収装置3と、トルクコンバータ4と、が直列に配されている。クランクシャフト2とインプットシャフト6は、回転軸7上で同軸に配されている。
トルク変動吸収装置3は、エンジンと変速機との間に生じた変動トルクを吸収(抑制)する装置である(図1〜図4参照)。トルク変動吸収装置3は、クランクシャフト2とトルクコンバータ4(フロントカバー40)との間の動力伝達経路に配されている。トルク変動吸収装置3は、弾性力(バネ力)によって変動トルクを吸収するダンパ部を有するものである。トルク変動吸収装置3は、主な構成部として、ドライブプレート10と、サイド部材11、12と、ボルト13と、ブロック部材14と、溶接部15と、ボルト16と、サイドプレート17と、サイドプレート18と、溶接部19と、キャップ20と、リングギヤ21と、溶接部22と、センタプレート23と、シール部材24、25と、サイド部材26と、リベット27と、ベアリング28と、ボルト29と、ブロック部材30と、溶接部31と、シート部材32、33と、アウタコイルスプリング34と、インナコイルスプリング35、36と、を有する。
ドライブプレート10は、クランクシャフト2からの回転動力をトルク変動吸収装置3に入力するための円盤状のプレートである(図1、図4参照)。ドライブプレート10は、径方向内側の部分でサイド部材11とサイド部材12との間に挟まれた状態で、複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。これにより、ドライブプレート10は、クランクシャフト2と一体に回転する。ドライブプレート10は、径方向外側の部分で複数のボルト16によって、対応するブロック部材14に締結されている。
サイド部材11は、ボルト13の頭部の座面を安定させるとともに、ドライブプレート10の耐久性を向上するための環状かつ板状の部材である(図1参照)。サイド部材11は、ボルト13の頭部とドライブプレート10との間に配され、ドライブプレート10及びサイド部材12とともに複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。
サイド部材12は、振動などに対するドライブプレート10の耐久性を向上するための環状かつ板状の部材である(図1参照)。サイド部材12は、ドライブプレート10とクランクシャフト2との間に配され、ドライブプレート10及びサイド部材11とともに複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。
ボルト13は、ドライブプレート10及びサイド部材11、12をクランクシャフト2に締結(接続)するための部材である(図1参照)。
ブロック部材14は、ボルト16によってドライブプレート10を締結するためのブロック状の部材である(図1、図2参照)。ブロック部材14は、サイドプレート17における周方向にて隣り合う収容部17a(コイルスプリング34、35、36を収容する部分)間の部位に形成された凹部17dに装着されている。言い換えると、ブロック部材14は、収容部17aと周方向に重なる位置に配設される。ブロック部材14は、径方向外側の部位と径方向内側の部位にて溶接部15によってサイドプレート17に溶接固定されている。ブロック部材14は、ボルト16と対応する位置に、ボルト16と螺合する雌ネジ部14aを有する。ブロック部材14は、ボルト16によってドライブプレート10が締結(接続)されることで、ドライブプレート10及びサイドプレート17と一体に回転する。
溶接部15は、溶接によりブロック部材14をサイドプレート17に固定するための部分である(図1、図2参照)。溶接部15は、ブロック部材14の径方向外側の部位と径方向内側の部位をサイドプレート17に固定する。
ボルト16は、ドライブプレート10をブロック部材14に締結(係合)するための部材である(図1参照)。
サイドプレート17は、環状の部材である(図1〜図4参照)。サイドプレート17は、センタプレート23の外周ないしエンジン側サイドに配されている。サイドプレート17は、径方向内側の部分にてフロントカバー40側に突出した円筒部17cを有する。サイドプレート17は、円筒部17cの外周面にてベアリング28の内輪が装着(圧入、カシメ固定)され、ベアリング28を介してセンタプレート23を回転可能に支持する。サイドプレート17は、ボルト29を通すための穴部17bを有する。穴部17bには、穴部17b全体を塞ぐキャップ20が装着されている。サイドプレート17は、径方向外側の部分にてシート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための袋状の収容部17aを有するとともに、コイルスプリング34、35、36、シート部材32、33の遠心力及びコイル圧縮時の径方向への分力を支える。収容部17aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。サイドプレート17は、周方向において隣り合う収容部17aの間の部位のドライブプレート10側の面に凹部17dを有する。凹部17dは、ブロック部材14を装着するための部分である。凹部17dは、削り、プレス成型で形成することができる。サイドプレート17には、凹部17dに装着されたブロック部材14が溶接部15により固定されている。サイドプレート17は、アウタコイルスプリングの径方向外側を覆うように形成されている。サイドプレート17は、外周面にて、環状のリングギヤ21の内側に挿入されており、溶接部22によってリングギヤ21が固定されている。サイドプレート17は、トルクコンバータ4側の端部が全周に渡ってサイドプレート18と密着しており、溶接部19によってサイドプレート18に固定されている。
サイドプレート17は、径方向における穴部17bと収容部17aとの間の部位において円周方向に連続的にセンタプレート23側に突出した凸部17eを有する。凸部17eは、径方向においてコイルスプリング34、35、36とシール部材24との間のサイドプレート17部位に形成されており、シール部材24の外周側の先端面(筒状部分の軸方向にある端面、シール部材24におけるサイドプレート17に最も近い部分)よりも軸方向のセンタプレート23側に張り出している(図4の張出し61参照)。これにより、スプリング収容室58内において、コイルスプリング34、35、36が配置された位置からサイドプレート17とシール部材24との間の隙間60に至る経路を長くすることができ、トルク変動吸収装置3が作動したときにスプリング収容室58内の潤滑剤が径方向内側に飛散するのを低減(抑制)することができる。
サイドプレート17は、凸部17eと穴部17bとの径方向の間の部分にて、シール部材24の外周側の先端面と所定間隔の隙間(図4の隙間60参照;軸方向に0mmよりも大きく、かつ、2mm以下の間隔の隙間)をおいて配される。これにより、トルク変動吸収装置3が作動したときにもサイドプレート17とシール部材24との間にヒステリシスが生じることなく、コイルスプリング34、35、36を収容するスプリング収容室58におけるサイドプレート17とセンタプレート23との間の隙間を部分的にカバーすることができ、組立ての際にスプリング収容室58内の潤滑剤の漏れを生ずることなく組立作業が可能である。
サイドプレート18は、環状の部材である(図1、図3、図4参照)。サイドプレート18は、トルク変動吸収装置3におけるトルクコンバータ側サイドに配されている。サイドプレート18は、環状のブロック部材30から所定間隔をおいて径方向外側に配されている。サイドプレート18は、径方向外側の部分が全周に渡ってサイドプレート17と密着しており、溶接部19によってサイドプレート17に固定されている。これにより、サイドプレート18はサイドプレート17と一体に回転するとともに、サイドプレート17、18の接合部分から内部の潤滑剤が漏れない。サイドプレート18は、中間部分にて、シート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための袋状の収容部18aを有する。収容部18aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。サイドプレート18は、収容部18aよりも径方向内側の部位において円周方向に連続的にセンタプレート23側に突出した凸部18bを有し、凸部18bにてシール部材25と全周に渡ってスライド可能に圧接している。シール部材25により、コイルスプリング34、35、36を収容するスプリング収容室58におけるサイドプレート18とセンタプレート23との間の隙間が完全にカバーされる。
溶接部19は、サイドプレート17とサイドプレート18との密着した部分を溶接固定した部分である(図1参照)。
キャップ20は、サイドプレート17の穴部17bの全体をシールする(塞ぐ)部材であり、穴部17bに装着(圧入)されている(図1、図4参照)。キャップ20により、エンジン側からスプリング収容室58への埃、塵、水、泥等の異物の進入を防ぐことができる。なお、キャップ20の代わりに、外部側から穴部17b全体を塞いて貼付け可能な粘着フィルム、粘着シート、防水透湿性素材等を用いてもよい。
リングギヤ21は、外周面にギヤを有するリング状のギヤである(図1〜図4参照)。リングギヤ21は、スタータモータ(図示せず)の出力ギヤ(図示せず)と噛合う。リングギヤ21は、サイドプレート17の外周部に装着されており、溶接部22によってサイドプレート17に固定されている。
溶接部22は、リングギヤ21をサイドプレート17に溶接固定した部分である(図1、図2、図4参照)。
センタプレート23は、環状の部材である(図1、図3、図4参照)。センタプレート23は、サイドプレート17の円筒部17cの外周に配されている。センタプレート23は、内周端部にて、ベアリング28を介して回転可能にサイドプレート17の円筒部17cに支持されている。センタプレート23は、サイドプレート17、18の接続部分よりも所定間隔をおいて内側に配されている。センタプレート23は、径方向内側の部分の両側に配されたシール部材24、25、及びサイド部材26が複数のリベット27によって固定されている。これにより、センタプレート23は、シール部材24、25と一体に回転する。センタプレート23は、シール部材24、25及びサイド部材26とともにボルト29によってブロック部材30に締結(係合)されている。これにより、センタプレート23は、ブロック部材30を介して、トルクコンバータ4のフロントカバー40と一体に回転する。センタプレート23は、外周部分にて、シート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための切欠の窓部23aを有する。窓部23aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。
シール部材24は、環状かつ板状の部材である(図1、図3、図4参照)。シール部材24には、例えば、薄い金属製又は樹脂製のプレートを用いることができる。シール部材24は、径方向内側の部分にて、センタプレート23とサイド部材26との間に挟み込まれており、リベット27によってシール部材25及びサイド部材26とともにセンタプレート23に対して円周方向に連続的に密着してかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、シール部材25及びサイド部材26とともにブロック部材30に締結(係合)されている。シール部材24は、径方向外側の部分にて軸方向のサイドプレート17側に曲がって円筒状になった部分を有する。シール部材24の外周側の先端面は、サイドプレート17に対して所定間隔の隙間(図4の隙間60参照;軸方向に0mmよりも大きく、かつ、2mm以下の間隔の隙間)をおいて円周方向に連続的に配される。これにより、トルク変動吸収装置3が作動したときにもサイドプレート17とシール部材24との間にヒステリシスが生じることなく、コイルスプリング34、35、36を収容するスプリング収容室58におけるサイドプレート17とセンタプレート23との間の隙間を組立時に潤滑剤の漏れが生じないようにカバーすることができる(組立ての際にスプリング収容室58内の潤滑剤の漏れを生ずることなく組立作業が可能である)。なお、組立作業後、トルク変動吸収装置3の作動によりスプリング収容室58内の潤滑剤が隙間60を通り抜けた場合は、キャップ20及びベアリング28によってサイドプレート17とセンタプレート23との間が完全にカバー(遮断、分離)されているので、潤滑剤が外部に流出することがない。また、シール部材24はサイドプレート17と接触していないので、シール部材24の摩耗の心配がなくなり、シール部材24を安い材料(シール部材25に用いられる材料よりも安価な材料)で製造することが可能である。
シール部材25は、環状かつ板状の部材である(図1、図3、図4参照)。シール部材25は、シール部材24に用いられる材料よりも耐摩擦性に優れる材料よりなる。シール部材25には、例えば、薄い金属製又は樹脂製のプレートを用いることができる。シール部材25は、径方向内側の部分にて、センタプレート23とブロック部材30との間に挟み込まれており、リベット27によってシール部材24及びサイド部材26とともにセンタプレート23に対して円周方向に連続的に密着してかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、シール部材24及びサイド部材26とともにブロック部材30に締結(係合)されている。シール部材25は、径方向外側の部分にて、センタプレート23から離間しており、サイドプレート18の凸部18bに対して円周方向に連続的に密着して回転方向にスライド可能に当接(好ましくは、予荷重をかけて圧接)する。これにより、コイルスプリング34、35、36を収容するスプリング収容室58におけるサイドプレート18とセンタプレート23との間の隙間を完全にカバー(遮断、分離)することができ、スプリング収容室58をシール(潤滑剤漏れ防止・異物進入防止)することができる。
サイド部材26は、環状かつ板状の部材である(図1、図2、図4参照)。サイド部材26は、リベット27によってシール部材24の径方向内側の部分をセンタプレート23側に押さえ付けて固定するためのものである。サイド部材26は、リベット27によってシール部材24、25とともにセンタプレート23にかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、及びシール部材24、25とともにブロック部材30に締結(係合)されている。
リベット27は、シール部材24、25及びサイド部材26をセンタプレート23に連結(かしめ固定)するための連結部材である(図1、図3参照)。ボルト29とは別にリベット27によって予めシール部材24、25をセンタプレート23に固定しておくことで、シール部材24、25の脱落(位置ずれ)防止とセンタプレート23とシール部材24、25との間の浮きを低減し、潤滑剤がセンタプレート23とシール部材24、25との間の隙間に入り込むことを防止することができる。
ベアリング28は、センタプレート23をサイドプレート17に対して回転可能に装着するための軸受けである(図1、図3、図4参照)。ベアリング28は、内輪がサイドプレート17の円筒部17cの外周面に固定され、外輪がセンタプレート23の内周端部に固定されている。なお、ベアリング28は、グリスが封入されたシール型であり、鋼板に合成ゴムを固着したシール板が外輪に固定され、該シール板の先端のリップ部が内輪に摺接することで潤滑剤を密封している。
ボルト29は、センタプレート23、シール部材24、25、及びサイド部材26をブロック部材30に締結するための締結部材である(図1、図3、図4参照)。
ブロック部材30は、ボルト29によってセンタプレート23を締結(係合)するための環状でブロック状の部材である(図1、図4参照)。ブロック部材30は、径方向外側の部位と径方向内側の部位にて溶接部31によってトルクコンバータ4のフロントカバー40に溶接固定されている。ブロック部材30は、ボルト29と対応する位置に、ボルト29と螺合する雌ネジ部を有する。ブロック部材30は、ボルト29によってセンタプレート23、シール部材24、25、及びサイド部材26が締結(係合)されることで、センタプレート23及びフロントカバー40と一体に回転する。ブロック部材30は、リベット27の頭部(かしめ部分)を収容する凹部を有する。
溶接部31は、溶接によりブロック部材30をトルクコンバータ4のフロントカバー40に固定するための部分である(図1、図4参照)。溶接部31は、ブロック部材30の径方向外側の部位と径方向内側の部位をフロントカバー40に固定する。
シート部材32は、スプリング収容室58におけるサイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、当該収容部17a、18a及び窓部23aの周方向にある一方の端面とアウタコイルスプリング34の一方の端部との間に配された部材である(図3参照)。シート部材32には、アウタコイルスプリング34の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。シート部材32は、アウタコイルスプリング34の内側に配されたインナコイルスプリング35の一方の端部の内側に圧入された部分を有し、インナコイルスプリング35の一方の端部を圧入で固定する。
シート部材33は、スプリング収容室58におけるサイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、当該収容部17a、18a及び窓部23aの周方向にある他方の端面とアウタコイルスプリング34の他方の端部との間に配された部材である(図3参照)。シート部材33には、アウタコイルスプリング34の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。シート部材33は、アウタコイルスプリング34の内側に配されたインナコイルスプリング36の他方の端部の内側に圧入された部分を有し、インナコイルスプリング36の他方の端部を圧入で固定する。
アウタコイルスプリング34は、スプリング収容室58におけるサイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、両端に配設されたシート部材32、33と接している(図1、図3参照)。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに収縮する。アウタコイルスプリング34は、内側において、周方向のシート部材32側にインナコイルスプリング35が配され、周方向のシート部材33側にインナコイルスプリング36が配されている。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに、インナコイルスプリング35及びインナコイルスプリング36の両方が密着する前に、密着する。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに密着するとサイドプレート17、18とセンタプレート23との間の捩りを規制するストッパとなる。アウタコイルスプリング34は、インナコイルスプリング35、36よりもバネ定数が小さく設定されている。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときにおいて、インナコイルスプリング35が密着した後に、密着する。
インナコイルスプリング35は、アウタコイルスプリング34の内側における周方向のシート部材32側に配されたコイルスプリングである(図1、図3参照)。インナコイルスプリング35の一方の端部は、内側にシート部材32の部分が圧入され、シート部材32に固定されている。インナコイルスプリング35の他方の端部は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じていないときにインナコイルスプリング36の一方の端部と離間しており、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じて所定の捩り角に達するとインナコイルスプリング36の一方の端部と接し、所定の捩り角よりさらに捩りが生じたときに収縮する。インナコイルスプリング35は、アウタコイルスプリング34よりもバネ定数が大きく、かつ、インナコイルスプリング36よりもバネ定数が小さく設定されている。インナコイルスプリング35は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときにおいて、アウタコイルスプリング34が密着する前に、密着する。
インナコイルスプリング36は、アウタコイルスプリング34の内側における周方向のシート部材33側に配されたコイルスプリングである(図3参照)。インナコイルスプリング36の他方の端部は、内側にシート部材33の部分が圧入され、シート部材33に固定されている。インナコイルスプリング36の一方の端部は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じていないときにインナコイルスプリング35の他方の端部と離間しており、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じて所定の捩り角に達するとインナコイルスプリング35の他方の端部と接し、所定の捩り角よりさらに捩りが生じたときに収縮する。インナコイルスプリング36は、アウタコイルスプリング34及びインナコイルスプリング35よりもバネ定数が大きく設定されている。インナコイルスプリング36は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに、アウタコイルスプリング34が密着する前には、密着しない。
トルクコンバータ4は、流体作動室における流体の力学的作用を利用して、入力側のポンプインペラ42と出力側のタービンランナ46との回転差によりトルクの増幅作用を発生させる流体伝動装置である(図1参照)。トルクコンバータ4は、トルク変動吸収装置3とインプットシャフト6との間の動力伝達経路上に配設されている。トルクコンバータ4は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との回転数差が小さいときに、それらを直結してクランクシャフト2とインプットシャフト6との回転数差をなくす単板式のロックアップクラッチ5を有する。トルクコンバータ4は、主な構成部として、フロントカバー40と、ポンプシェル41と、ポンプインペラ42と、シャフト43と、ポンプコア44と、タービンシェル45と、タービンランナ46と、タービンコア47と、タービンハブ48と、ステータ49と、ワンウェイクラッチ50と、シャフト51と、プレート部材52と、ロックアップピストン53と、摩擦材54と、を有する。
フロントカバー40は、トルクコンバータ4のエンジン側(図1の右側)に配置された円盤状の部材である(図1参照)。フロントカバー40は、回転軸7から径方向外側へ延び、外周部分が変速機側(図1の左側)に延びた形状に形成されている。フロントカバー40の外周端部は、溶接によってポンプシェル41の外周端部に固定されている。フロントカバー40は、ポンプシェル41と一体に回転する。フロントカバー40とポンプシェル41とにより囲まれた空間内には、トルクコンバータ4のポンプインペラ42、タービンランナ46等の構成部が配置されており、作動流体としてのオートマチックトランスミッションフルード(ATF)が封入されている。フロントカバー40は、エンジンからの回転動力がクランクシャフト2及びトルク変動吸収装置3を介して入力される。フロントカバー40は、エンジン側(図1の右側)の面にトルク変動吸収装置3におけるブロック部材30が溶接部31により溶接されている。フロントカバー40は、変速機側(図1の左側)の面にて、ロックアップクラッチ5の摩擦材54と摩擦係合可能になっている。
ポンプシェル41は、ATFを循環させる空間を構成する環状の部材である(図1参照)。ポンプシェル41は、外周端部がフロントカバー40の外周端部に溶接されており、内周端部がシャフト43に溶接されている。ポンプシェル41は、フロントカバー40及びシャフト43と一体に回転する。ポンプシェル41は、エンジン側(図1の右側)の面(内面)にて複数のポンプインペラ42が装着されており、ポンプインペラ42と一体に回転する。
ポンプインペラ42は、ポンプ側の羽根部材である(図1参照)。ポンプインペラ42は、タービンランナ46と向かい合うように配置されている。ポンプインペラ42は、外側端部がポンプシェル41に装着されており、内側端部がポンプコア44に装着されている。ポンプインペラ42は、ポンプシェル41及びポンプコア44と一体に回転する。ポンプインペラ42は、ポンプシェル41が一方の方向に回転したときに、ステータ49から流れてきたATFをタービンランナ46側へ向かって押し出すような形状に形成されている。
シャフト43は、トルクコンバータ4及びトルク変動吸収装置3の外周ないし変速機側を覆うケース(図示せず)に回転可能に支持された筒状の軸部材である(図1参照)。シャフト43は、ポンプシェル41の内周端部と溶接されており、ポンプシェル41と一体に回転する。シャフト43は、シャフト51の外周に所定の間隔をおいて配されている。
ポンプコア44は、複数のポンプインペラ42の内側端部が装着される環状の部材である(図1参照)。
タービンシェル45は、ATFを循環させる空間を構成する環状の部材である(図1参照)。タービンシェル45は、内周部分にて複数のリベットによってタービンハブ48に固定されている。タービンシェル45は、タービンハブ48と一体に回転する。タービンシェル45は、変速機側(図1の左側)の面(内面)にて複数のタービンランナ46が装着されており、タービンランナ46と一体に回転する。タービンシェル45は、エンジン側(図1の右側)の面(外面)にて、プレート部材52が溶接により固定されている。
タービンランナ46は、タービン側の羽根部材である(図1参照)。タービンランナ46は、ポンプインペラ42と向かい合うように配置されている。タービンランナ46は、外側端部がタービンシェル45に装着されており、内側端部がタービンコア47に装着されている。タービンランナ46は、タービンシェル45及びタービンコア47と一体に回転する。タービンランナ46は、回転するポンプインペラ42から押し出されたATFを受けて回転し、かつ、ステータ49に向かってATFを排出するような形状に形成されている。タービンランナ46は、ポンプインペラ42に対して独立に回転することが可能である。
タービンコア47は、複数のタービンランナ46の内側端部が装着される環状の部材である(図1参照)。
タービンハブ48は、筒状のハブ部から径方向外側に延在したフランジ部を有する部材である(図1参照)。タービンハブ48は、フランジ部の外周部分にて複数のリベットによってタービンシェル45が固定されている。タービンハブ48は、ハブ部の内周側にて、変速機のインプットシャフト6に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。タービンハブ48は、タービンシェル45及びインプットシャフト6と一体に回転する。タービンハブ48のハブ部の外周面には、ロックアップピストン53の内周部分の円筒部が軸方向にスライド可能に配されている。タービンハブ48とロックアップピストン53とのスライド面はシールされている。
ステータ49は、タービンランナ46からポンプインペラ42へ戻るATFの流れを整流するための複数の羽根を有する部材である(図1参照)。ステータ49は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との間における径方向内側寄りの位置に配されている。ステータ49は、タービンランナ46からポンプインペラ42へ流れるATFの流れ方向を変えるように作用する。ステータ49は、ワンウェイクラッチ50及びシャフト51を介して変速機(図示せず)のケース(図示せず)に取付けられており、1方向にのみ回転することが可能である。
ワンウェイクラッチ50は、1方向にのみ回転することが可能なクラッチである(図1参照)。ワンウェイクラッチ50としては、ローラ、スプラグまたはラチェット機構を用いる構造を用いることができる。ワンウェイクラッチ50は、軸方向においてシャフト43とタービンハブ48との間に配され、径方向においてステータ49とシャフト51との間に配されている。ワンウェイクラッチ50は、外輪がステータ49に固定され、内輪がシャフト51に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。
シャフト51は、変速機(図示せず)のケース(図示せず)に対して回転不能に取付けられた筒状の軸部材である(図1参照)。シャフト51は、ワンウェイクラッチ50の内輪に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。シャフト51は、筒状のシャフト43の内側に所定の間隔をおいて配されている。シャフト51は、変速機のインプットシャフト6の外周に配されており、ブッシュを介してインプットシャフト6を回転可能に支持する。
プレート部材52は、溶接によりタービンシェル45の外面に固定された環状の部材である(図1参照)。プレート部材52は、ロックアップピストン53に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合する。プレート部材52は、タービンシェル45及びロックアップピストン53と一体に回転する。
ロックアップピストン53は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との回転数差が小さいときに、それらを直結するための環状のピストンである(図1参照)。ロックアップピストン53は、フロントカバー40及びポンプシェル41で囲まれた空間のうち、ロックアップピストン53とフロントカバー40との間に配された油室56と、ロックアップピストン53とポンプシェル41との間に配された油室57と、の間に配されている。ロックアップピストン53は、外周部分のフロントカバー40側の面に環状の摩擦材54が固定されており、摩擦材54と一体に回転する。ロックアップピストン53は、摩擦材54がフロントカバー40と摩擦係合することで、摩擦材54、フロントカバー40、及びトルク変動吸収装置3を介してクランクシャフト2と一体に回転する。ロックアップピストン53は、外周端部にてプレート部材52に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。ロックアップピストン53は、プレート部材52、タービンシェル45、及びタービンハブ48を介して変速機のインプットシャフト6と一体に回転する。ロックアップピストン53は、タービンハブ48の筒状のハブ部の外周面に対して軸方向にスライド可能に配されており、タービンハブ48とのスライド面にてシールされている。ロックアップピストン53は、油室56内の油圧が油室57内の油圧よりも低いときにフロントカバー40側に押付けられて、摩擦材54とフロントカバー40とが摩擦係合する。ロックアップピストン53は、油室56内の油圧が油室57内の油圧よりも高いときにフロントカバー40から離れる方向に移動して、摩擦材54とフロントカバー40との摩擦係合を解除する。油室56、57内の油圧は、油圧回路(図示せず)によって制御され、油室56内の油圧を油室57内の油圧よりも低くすることでロックアップ状態(クランクシャフト2とインプットシャフト6との回転数差をなくした状態)とし、油室56内の油圧を油室57内の油圧よりも高くすることでロックアップ状態を解除する。
摩擦材54は、ロックアップピストン53(フロントカバー40でも可)に固定されるとともに、フロントカバー40に対して摩擦係合可能な環状の部材である(図1参照)。
本発明によれば、センタプレート23に固定された一方のシール部材25がサイドプレート17、18にスライド可能に圧接し、かつ、センタプレート23に固定された他方のシール部材24がサイドプレート17、18に接触しないで所定間隔の隙間をおいて配されるので、トルク変動吸収装置3が作動するときのヒステリシス(摺動抵抗)が少なく、ダンパ減衰性能を向上させることができる。また、スプリング収容室58においてシール部材24とサイドプレート18との間の隙間60があるが、サイドプレート17とセンタプレート23との間の隙間を組立時に潤滑剤の漏れが生じないようにカバーすることができ、シール部材25によってサイドプレート18とセンタプレート23との間の隙間を完全にカバーすることができる。これにより、スプリング収容室58内の潤滑剤がボルト29の座面に付着しないようにすることができ、トルク変動吸収装置3とトルクコンバータ4とを締結する前にトルク変動吸収装置3のみで捩り特性を測るときに、ボルト29付近への潤滑剤の付着を防止することができる。さらに、組立作業後、トルク変動吸収装置3の作動によりスプリング収容室58内の潤滑剤が隙間60を通り抜けた場合は、キャップ20及びベアリング28によってサイドプレート17とセンタプレート23との間が完全にカバー(遮断、分離)されているので、潤滑剤が外部に流出することがない。
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。