JP2014007165A - 電池素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】より信頼性に優れる電池素子を提供する。
【解決手段】この電池素子は、正極とセパレータと負極との積層構造を有し、かつ、対向する一対の平坦部と対向する一対の曲線部とを含む扁平状の断面を有する。セパレータは、多孔質の樹脂からなる基材と、この基材の一方の面または両面に設けられた単層からなる樹脂層とを有し、曲線部におけるセパレータの樹脂層の厚みが、平坦部におけるセパレータの樹脂層の厚みよりも大きい。曲線部におけるセパレータの透気度は、その曲線部と連続した平坦部におけるセパレータの透気度よりも高くなっている。
【選択図】図3
【解決手段】この電池素子は、正極とセパレータと負極との積層構造を有し、かつ、対向する一対の平坦部と対向する一対の曲線部とを含む扁平状の断面を有する。セパレータは、多孔質の樹脂からなる基材と、この基材の一方の面または両面に設けられた単層からなる樹脂層とを有し、曲線部におけるセパレータの樹脂層の厚みが、平坦部におけるセパレータの樹脂層の厚みよりも大きい。曲線部におけるセパレータの透気度は、その曲線部と連続した平坦部におけるセパレータの透気度よりも高くなっている。
【選択図】図3
Description
本発明は、正極と負極とがセパレータを介して積層された巻回体である電池素子に関する。
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータに代表される携帯型電子機器の小型化、軽量化が精力的に進められ、その一環として、それらの駆動電源である電池、特に二次電池のエネルギー密度の向上が強く望まれている。高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、負極に炭素材料などのリチウム(Li)を吸蔵および離脱することが可能な材料を用いたリチウムイオン二次電池が商品化され、その市場が拡大している。
リチウムイオン二次電池は、例えば、正極と負極とがセパレータを介して積層された巻回体(電池素子)を外装缶に収容したものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどからなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜が用いられている。セパレータは両極の接触による電流の短絡を防止する一方、電解質を保持することでリチウムイオンを通過させ、両極間での電池反応を可能としている。
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。
一方で、炭素材料を上回る高容量負極として、ある種の金属がリチウムと電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。さらには、サイクル特性を改善する手法として、スズやケイ素(Si)を合金化してこれらの膨張を抑制することが検討されている。例えば、鉄などの遷移金属とスズとを合金化することが提案されている(特許文献1〜3,非特許文献1〜3参照)。このほかにも、Mg2Siなども提案されている(非特許文献4参照)。
また、高エネルギー密度を得ることができる他の二次電池としては、負極にリチウム金属を用い、負極反応にリチウム金属の析出および溶解反応のみを利用したリチウム金属二次電池がある。リチウム金属二次電池は、リチウム金属の理論電気化学当量が2054mAh/cm3 と大きく、リチウムイオン二次電池で用いられる黒鉛の2.5倍にも相当するので、リチウムイオン二次電池を上回る高いエネルギー密度を得られるものと期待されている。これまでも、多くの研究者等によりリチウム金属二次電池の実用化に関する研究開発がなされている(例えば、非特許文献5参照。)。
「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p405
「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p414
「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p423
「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p4401
ジャンポール・ガバノ(Jean-Paul Gabano)編,「リチウム・バッテリーズ(Lithium Batteries )」,ロンドン,ニューヨーク,アカデミック・プレス(Academic Press),1983年
しかしながら、負極活物質として上記のような合金材料を用いた場合、充放電に伴う膨張によって電池素子の圧力分布が不均一となりやすい。その結果、極端な高容量化を図った場合、金属箔からなる集電体が、特に巻回体の曲線部において亀裂を生じる可能性が高まる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、十分な容量を確保しつつ、より信頼性に優れる二次電池に好適な電池素子を提供することにある。
本発明の電池素子は、正極とセパレータと負極との積層構造を有し、かつ、対向する一対の平坦部と対向する一対の曲線部とを含む扁平状の断面を有するものである。セパレータは、多孔質の樹脂からなる基材と、基材の一方の面または両面に設けられた単層からなる樹脂層とを有し、曲線部におけるセパレータの樹脂層の厚みが、平坦部におけるセパレータの樹脂層の厚みよりも大きく、曲線部におけるセパレータの透気度は、その曲線部と連続した前記平坦部における前記セパレータの透気度よりも高くなっている。
本発明の電池素子によれば、曲線部におけるセパレータの透気度が比較的高いことにより、曲線部での電池反応が抑制される。このため、充放電に伴う膨張収縮による巻回体内部の応力が緩和され、特に曲線部における正極集電体などの亀裂が生じにくくなる。
本発明の電池素子によれば、セパレータが平坦部よりも曲線部において高い透気度を有するようにし、曲線部での電池反応を抑制するようにしたので、例えばスズやケイ素を含む高容量が得られる負極活物質を採用した場合であっても、充放電の繰り返しに伴う正極などの損傷を防ぐことができ、高い信頼性を確保することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施の形態としての二次電池の断面構造を表すものである。図1に示された断面と図2に示された断面とは、互いに直交する位置関係にある。すなわち、図2は、図1に示したII−II線に沿った矢視方向における断面図である。
この二次電池は、例えば、負極22の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池である。
外装缶11は、例えば、角型の外装部材である。この角型の外装部材とは、図1に示したように、長手方向における断面が矩形型あるいは略矩形型(一部に曲線を含む)の形状を有するものであり、矩形状の角型電池だけでなくオーバル形状の角型電池も構成するものである。すなわち、角型の外装部材とは、矩形状あるいは円弧を直線で結んだ略矩形状(長円形状)の開口部を有する有底矩形型あるいは有底長円形状型の器状部材である。なお、図1では、外装缶11が矩形型の断面形状を有する場合を示している。この外層缶11を含む電池構造は、いわゆる角型と呼ばれている。
外装缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、負極端子としての機能も有している。この外装缶11は、一端部が閉鎖され他端部が開放されており、開放端部に絶縁板12および電池蓋13が取り付けられることにより内部が密閉された構造となっている。絶縁板12は、ポリプロピレンなどにより構成され、電池素子20の上に巻回周面に対して垂直に配置されている。電池蓋13は、例えば、外装缶11と同様の材料により構成され、外装缶11と共に負極端子としての機能も有している。電池蓋13の外側には、正極端子となる端子板14が配置されている。また、電池蓋13の中央付近には貫通孔が設けられ、この貫通孔に、端子板14に電気的に接続された正極ピン15が挿入されている。端子板14と電池蓋13との間は絶縁ケース16により電気的に絶縁され、正極ピン15と電池蓋13との間はガスケット17により電気的に絶縁されている。絶縁ケース16は、例えばポリブチレンテレフタレートにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
電池蓋13の周縁付近には開裂弁18および注入孔19が設けられている。開裂弁18は、電池蓋13と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に開裂して内圧の上昇を抑えるようになっている。注入孔19は、例えばステンレス鋼球よりなる封止部材19Aにより塞がれている。
電池素子20は、正極21と負極22とが、セパレータ23を間にして積層された巻回体である。電池素子20は、巻回中心側から巻回外周側に向けて図1に矢印で示した巻回方向Rに沿って巻回され、対向する一対の平坦部20Sおよび一対の曲線部20Rを含むように、外装缶11の形状に合わせて扁平な形状に成形されている。電池素子20の最外周にはセパレータ23が位置しており、そのすぐ内側には正極21が位置している。正極21の端部(例えば内終端部)にはアルミニウムなどの金属材料によって構成された正極リード24が取り付けられており、負極22の端部(例えば外終端部)にはニッケルなどの金属材料によって構成された負極リード25が取り付けられている。正極リード24は、正極ピン15の一端に溶接されて端子板14と電気的に接続されており、負極リード25は、外装缶11に溶接されて電気的に接続されている。なお図2では、正極21および負極22の積層構造を簡略化して示している。また、電池素子20の巻回数は、図1および図2に示したものに限定されず、任意に設定可能である。
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
正極集電体21Aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤や結着剤などの他の材料を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は、充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などが挙げられる。
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、セレン化ニオブなどのカルコゲン化物や、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
負極22は、帯状の負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが選択的に設けられたものである。負極リード25は、例えば巻回外周側の、負極集電体22Aが露出した領域に接合されている。なお、負極集電体22Aが露出した領域は、その両面において一致している必要はなく、片面のみに負極活物質層22Bが設けられた領域が存在していてもよい。
負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。この負極集電体22Aの厚みは、例えば5μm〜50μmである。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて例えば正極活物質層21Bに用いるものと同種の結着剤や導電剤などを含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。この負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またはそれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。なお、本発明における合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素および1種以上の半金属元素を含むものも含まれる。もちろん、上記した合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素および半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素および半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などが挙げられる。中でも、特に好ましいのは、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種である。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金、あるいは化合物、またはスズの単体、合金、あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
ケイ素の化合物あるいはスズの化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、ケイ素またはスズに加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を有する材料の具体例としては、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を含むものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。これらの第2および第3の元素を含むことにより、優れたサイクル特性が得られるからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内であると共にスズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が20質量%以上40質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に、サイクル特性が向上するからである。
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を有していてもよい。この他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を有していてもよい。より高い効果が得られるからである。
なお、SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質な相であるのが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、これによって優れたサイクル特性が得られるようになっている。この相のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵および放出され、しかも電解液を備えた二次電池などの電気化学デバイスに負極が用いられた場合に、電解液との反応性が低減されるからである。
X線回折によって得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することによって容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性あるいは非晶質な反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。この低結晶性あるいは非晶質な反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素によって低結晶化あるいは非晶質化しているものと考えられる。
なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体あるいは一部を含む相を有している場合もある。
特に、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線か、Mg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用によって減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
XPSにおいて、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素よりも陽性な元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合している場合には、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。
なお、XPS測定を行う場合には、表面が表面汚染炭素で覆われている際に、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタするのが好ましい。また、測定対象のSnCoC含有材料を有する負極が電解液を備えた二次電池などの電気化学デバイスの中に存在する場合には、電気化学デバイスを解体して負極を取り出したのち、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うのが好ましい。
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、例えば、各構成元素の原料を混合した混合物を電気炉、高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などで溶解させたのち、凝固させる方法によって形成可能である。また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法や、各種ロール法や、メカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法などを用いてもよい。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法が好ましい。SnCoC含有材料が低結晶性あるいは非晶質な構造になるからである。メカノケミカル反応を利用した方法では、例えば、遊星ボールミルやアトライタなどの製造装置を用いることができる。
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いるのが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法を利用した方法によって合成することにより、低結晶性あるいは非晶質な構造が得られ、反応時間も短縮されるからである。なお、原料の形態は、粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として有するSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9重量%以下、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が20質量%以上40質量%以下であるのが好ましい。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下、スズとコバルトと鉄との合計に対するコバルトと鉄との合計の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトと鉄との合計に対するコバルトの割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%以上79.5質量%以下であるのが好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の結晶性、元素の結合状態の測定方法、および形成方法などについては、上記したSnCoC含有材料と同様である。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料として、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料を用いた負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、塗布法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成される。この場合には、負極集電体22Aと負極活物質層22B2とが界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散していてもよいし、負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、それらの構成元素が互いに拡散し合っていてもよい。充放電時における負極活物質層22Bの膨張および収縮に起因する破壊が抑制されると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の電子伝導性が向上するからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法によって塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
上記した他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このコークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものである。炭素材料は電極反応物質の吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、例えば、他の負極材料と一緒に用いることにより、高いエネルギー密度が得られると共に、負極が二次電池などの電気化学デバイスに用いられた場合に優れたサイクル特性も得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられ、高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の負極材料を任意の組み合わせで2種類以上混合してもよい。
この二次電池では、正極活物質と負極活物質との間で量を調整することにより、正極活物質による充電容量よりも負極活物質の充電容量の方が大きくなっている。これにより、完全充電時においても負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながら電極反応物質のイオンを通過させるものである。図3に、セパレータ23を展開して表す。図3(A)が平面図であり、図3(B)が図3(A)のIIIB−IIIB線に沿った断面図である。このセパレータ23は、図3に示したように、基材231と、その表面に塗布された高分子化合物層232(232A,232B)とを有するものである。基材231は、この高分子化合物層232によって機械的強度の補強がなされると共に、高分子化合物層232を介して正極21および負極22と接着されるようになっている。
図3(A),(B)に示したように、高分子化合物層232A,232Bは、それぞれ曲線部20Rに相当する部分23Rが、平坦部20Sに相当する部分23Sよりも例えば5μm程度厚みが大きくなっている。その結果、曲線部20Rにおけるセパレータ23の透気度は、その曲線部20Rと連続した平坦部20Sにおけるセパレータ23の透気度よりも高くなっている。すなわち、電池素子20の巻回方向Rにおいて隣り合う曲線部20Rのセパレータ23と平坦部20Sのセパレータ23とを比較すると、曲線部20Rのセパレータ23のほうが高い透気度を有している。例えば電池素子20の最外周の曲線部20Rに位置するセパレータ23は、電池素子20の最外周の平坦部20Sに位置するセパレータ23よりも高い透気度を有する。同様に、電池素子20の最内周の曲線部20Rに位置するセパレータ23は、電池素子20の最内周の平坦部20Sに位置するセパレータ23よりも高い透気度を有する。電池素子20における、最外周および最内周以外の途中の周回部分においても、セパレータ23の透気度に関して上記と同様の関係が維持されている。
セパレータ23の透気度は、例えば、平坦部20Sにおいて200秒/100cm3 以上800秒/100cm3 以下である。一方、曲線部20Rにおけるセパレータ23の透気度は、800秒/100cm3 以上であることが好ましく、特に1500秒/100cm3 以上であることが望ましい。なお、セパレータ23の透気度は、JIS K7126に規定されている方法により測定する。
基材231は、電気的絶縁性を有すると共に、正極活物質、負極活物質あるいは電解液の溶媒などに対して化学的に安定であることが要求される。このため、基材231は、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などにより構成される。なお、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。
高分子化合物層232A,232Bは、溶媒に電解質塩が溶解された電解液と、この電解液を保持する高分子化合物とを含むものである。ここで、高分子化合物が電解液を「保持する」とは、電解液に高分子化合物が膨潤した状態のほか、電解液と高分子化合物とが相互作用することなく混在した状態をも含む概念である。すなわち、高分子化合物層232A,232Bは、電解液に高分子化合物が膨潤したいわゆるゲル状の電解質であってもよいし、剛直な高分子化合物の空隙に電解液が相互作用を生ずることなく存在した状態の電解質であってもよい。なお、電解液は、正極21、負極22またはセパレータ23に含浸されていてもよい。
電解液に含まれる溶媒としては、各種の高誘電率溶媒および低粘度溶媒を用いることができる。例えば高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネートのほか、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(フルオロエチレンカーボネート)、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(クロロエチレンカーボネート)、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートなどの環状カーボネートが好適に用いられる。高誘電率溶媒としては、上記のような環状カーボネートの代わりに、またはこれと併用して、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン,δ−バレロラクトンもしくはε−カプロラクトンなどのラクトン、N−メチルピロリドンなどのラクタム、N−メチルオキサゾリジノンなどの環状カルバミン酸エステル、テトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物なども使用可能である。一方、低粘度溶媒としては、ジエチルカーボネートのほか、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびメチルプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどの鎖状カルボン酸エステル、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状アミド、N,N−ジエチルカルバミン酸メチルおよびN,N−ジエチルカルバミン酸エチル等の鎖状カルバミン酸エステル、ならびに1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよび1,3−ジオキソランなどのエーテルを用いることができる。
なお、溶媒としては、上述の高誘電率溶媒および低粘度溶媒のうちの1種を単独で、またが2種以上を任意に混合して用いることができるが、20〜50質量%の環状カーボネートと50〜80質量%の低粘度溶媒とを含むものが好ましく、特に低粘度溶媒として、沸点が130℃以下の鎖状カーボネートを含むものが好ましい。このような溶媒を用いることにより、少量の電解液で、高分子化合物を良好に膨潤させることができ、電池の膨れ抑制や漏れ防止と高いイオン伝導性との両立を図ることができる。ここで、電解液を占める低粘度溶媒の含有率が高すぎると誘電率の低下を招くこととなり、低粘度溶媒の含有率が低すぎると粘度の低下を招くこととなり、いずれの場合においても十分なイオン伝導度が得られず、良好な電池特性が得られなくなるおそれがある。
電解質塩としては、溶媒に溶解してイオンを生ずるものであればいずれを用いてもよく、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。例えばリチウム塩であれば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4 )等の無機リチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(CF3 SO2 )2 )、リチウムビス(ペンタフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、およびリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド(LiC(CF3 SO2 )3 )などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウム塩などが使用可能である。なかでも、六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムは、酸化安定性の点から好ましい。
なお、このような電解質塩の濃度は、溶媒1dm3 に対して0.1mol以上3.0mol以下であることが好ましく、特に、溶媒1dm3 に対して0.5mol以上2.0mol以下であることが好ましい。このような範囲においてより高いイオン伝導性を得ることができるからである。
高分子化合物層232A,232Bを構成する高分子化合物としては、電解液を保持してイオン伝導性を発揮する限り特に限定されるものではないが、アクリロニトリルの共重合体が50%以上(特に80%以上)であるアクリロニトリル系重合体、芳香族ポリアミド、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、アクリレートもしくはメタクリレートの単独重合体または共重合体よりなるアクリル系重合体、アクリルアミド系重合体、フッ化ビニリデンなどの含フッ素ポリマー、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類を挙げることができる。特にアクリロニトリルの共重合量が50%以上の重合体は、その側鎖にCN基を有しているため誘電率が高く、イオン伝導性の高いゲル状の電解質を形成可能である。これら重合体に対する電解液の担持性向上や電解質のイオン伝導性を向上させるため、アクリルニトリルとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のビニルカルボン酸、アクリルアミド、メタクリルスルホン酸、ヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、各種(メタ)アクリレートなどを好ましくは50%以下、特に好ましくは20%以下の割合で共重合したものも用いることができる。また、芳香族ポリアミドは高耐熱性ポリマーであることから、高耐熱性が要求される場合には好適である。
高分子化合物層232A,232Bを構成する高分子化合物としては、上記のほか、ブタジエンなどを共重合させた架橋構造を有する重合体も挙げられる。さらに、構成成分としてフッ化ビニリデンを含む重合体、すなわち単独重合体、共重合体および多元共重合体についても高分子化合物として使用可能である。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP)、およびポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF−HEP−CTFE)を挙げることができる。特に、酸化還元安定性の点からは、ポリフッ化ビニリデンあるいはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物が望ましい。高分子化合物層232A,232Bには、さらに、安全性向上を目的として酸化アルミニウム(Al2 O3),酸化チタン(TiO2)あるいは酸化硅素(SiO2 )などの金属酸化物粒子を含有させるようにしてもよい。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aにドクタブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
次いで、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aにドクタブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機により圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。ロールプレス機は加熱して用いてもよい。また、目的の物性値になるまで複数回圧縮成型してもよい。さらに、ロールプレス機以外のプレス機を用いてもよい。また、気相法など上記した他の方法により、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを設け、負極22を作製するようにしてもよい。
続いて、正極集電体21Aに正極リード24を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード25を溶接などにより取り付ける。
その一方で、基材231の両面に高分子化合物層232を形成する。具体的には、まず、基材231の両面に、ポリフッ化ビニリデンやカルボキシメチルセルロースなどの高分子化合物をN−メチル−2−ピロリドンや水などの溶剤に溶解した高分子溶液を塗布する。次いで、塗布した高分子溶液を乾燥させて溶剤を除去することで高分子化合物層232を形成する。ここでは、例えば、自らの長手方向に走行する基材231の上にシャッターを有するポットを配置し、そのポットに上記の高分子溶液を供給しながらシャッターを開き、所定量の高分子溶液を基材231上に付着させるようにする。この際、ポットのシャッターの開放量を調整することにより基材231の長手方向における高分子溶液の塗布量を変化させ、最終的に得られる高分子化合物層232の厚みが、部分23Sよりも部分23Rにおいて大きくなるようにする(図3参照)。なお、隣り合う部分23R同士の間隔は、電池素子20の巻回中心側から巻回外周側へ向かうほど巻き量に応じて徐々に広がることとなる。このため、その間隔の変化に応じてポットのシャッターの開閉動作を行うようにする。
次に、正極21とセパレータ23と負極22とセパレータ23とをこの順に積層し、図1に示した巻回方向Rに複数回巻回したのち成形することで、偏平な形状を有する電池素子20を作製する。
続いて、上記のように作製した電池素子20を外装缶11の内部に収容する。そののち、電池素子20の上に絶縁板12を配置し、負極リード25を外装缶11に溶接すると共に、正極リード24を正極ピン15の下端に溶接して、外装缶11の開放端部に電池蓋13をレーザ溶接により固定する。最後に、電解液を電解液注入孔19から外装缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させ、電解液注入孔19を封止部材19Aで塞ぐ。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
このように、本実施の形態の二次電池では、電池素子20の曲線部20Rにおけるセパレータ23の透気度を、平坦部20Sにおけるセパレータ23の透気度よりも高くするようにしたので、電池素子20の曲線部20Rでのイオン導電性が低下し、電池反応が抑制される。このため、充放電に伴う膨張収縮による電池素子20内部の応力が緩和され、特に応力を受けやすい曲線部20Rにおいて、正極集電体21Aなどの亀裂が生じにくくなる。その結果、高容量が得られるスズやケイ素を含む負極活物質を採用した場合であっても、充放電の繰り返しに伴う正極21などの損傷を防ぐことができ、電池として高い信頼性を確保することができる。
また、本実施の形態の二次電池によれば、セパレータ23の基材231が高分子化合物層232を介して正極21および負極22と接着されるので、セパレータ23と正極21および負極22との相対位置を高精度に保持することができる。よって、電池素子20の内部での短絡を確実に防止することができる。さらに、セパレータ23が正極21および負極22と十分に接着されることから、セパレータ23における電解質の保持性能が高まり、良好な電池特性(例えばサイクル特性)をも確保することができる。
(変形例)
次に、本実施の形態の二次電池における変形例としてのセパレータ23Aについて説明する。図4は、変形例としてのセパレータ23Aの断面構成を表すものであり、上記実施の形態の図3(B)に対応している。
次に、本実施の形態の二次電池における変形例としてのセパレータ23Aについて説明する。図4は、変形例としてのセパレータ23Aの断面構成を表すものであり、上記実施の形態の図3(B)に対応している。
上記実施の形態では、基材231の表面に塗布された高分子化合物層232A,232Bの双方が、曲線部20Rに相当する部分23Rの各々において平坦部20Sに相当する部分23Sよりも大きな厚みを有するように構成した。これに対し、本変形例では、高分子化合物層232A,232Bのうちのいずれか一方のみが、各部分23Rにおいて部分23Sよりも大きな厚みを有するように構成されている。すなわち、高分子化合物層232Aが比較的大きな厚みを有する部分23R1と、高分子化合物層232Bが比較的大きな厚みを有する部分23R2とが、巻回方向Rにおいて交互に配列されている。したがって、この二次電池における一対の曲線部分20Rのうちの一方では、基材231の例えば巻回内面側に位置する高分子化合物層232Aが基材231の巻回外面側に位置する高分子化合物層232Aよりも大きな厚みを有する。これに対し、他方の曲線部20Rでは、基材231の巻回外面側に位置する高分子化合物層232Bが基材231の巻回内面側に位置する高分子化合物層232Aよりも大きな厚みを有する。
本変形例では、このような構成により、上記実施の形態の二次電池と同様の効果が得られる。さらに、上記実施の形態の二次電池と比較した場合、曲線部20Rでの充放電に伴う膨張収縮と、高分子化合物層232の厚みに起因した電池素子20の径方向寸法の増大に伴う体積エネルギー密度低下とをバランス良く抑制することができる。すなわち、上記実施の形態と比べ、充放電に伴う膨張収縮に起因する応力の適度な緩和と、容量向上との両立の点において有利である。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実験例1−1〜1−7)
本実験例では、以下の手順により、図1,2に示した角型の二次電池を作製した。ここでは、図3に示した構造を有するセパレータ23を採用した。
本実験例では、以下の手順により、図1,2に示した角型の二次電池を作製した。ここでは、図3に示した構造を有するセパレータ23を採用した。
まず、正極21を作製した。具体的には、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調整した。この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。こののち、帯状のアルミニウム箔(厚さ=20μm)からなる正極集電体21Aの両面に上記の正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層21Bを形成した。最後に、正極集電体21Aの一端に、アルミニウム製の正極リード24を溶接して取り付けた。
次に、以下のように負極22を作製した。具体的には、まず、電解銅箔からなる負極集電体22A(表面粗さRz=3.5μm)を用意して蒸着装置のチャンバ内に載置した。次いで、チャンバ内を真空としたのち、電子ビーム蒸着法により負極集電体22Aの両面に負極活物質としてのケイ素を堆積させ、7μmの平均厚みを有する負極活物質層22Bを形成した。この際、蒸着源としては純度99%の単結晶ケイ素を用い、堆積速度を150nm/秒とした。最後に、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード25を取り付けた。
続いて、20μm厚の微孔性ポリエチレンフィルム(東燃化学製)よりなる基材231を用意し、アラミド(芳香族ポリアミド)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた高分子溶液を基材231の両面にローラーコーティングによって塗布したのち、純水によって洗浄し乾燥させることで、基材231に高分子化合物層232A,232Bが形成されたセパレータ23を得た。ここでは、塗布装置におけるヘッドからの高分子溶液の吐出量を調整することにより、高分子化合物層232A,232Bが、比較的厚みの大きな部分23Rと、比較的厚みの小さな部分23Sとを交互に有するようにした。このとき、実験例ごとに部分23R,23Sの厚み(平均厚み)をそれぞれ変化させることにより、部分23Rの透気度が部分23Sの透気度よりも大きくなるようにした(後出の表1参照)。なお、部分23Rは曲線部20Rに相当する位置に形成し、部分23Sは平坦部20Sに相当する位置に形成した。また、部分23Rの巻回方向の幅は7mmとした。透気度は、JIS K7126に規定されている方法により測定した。
さらに、正極21と,セパレータ23と、負極22と、セパレータ23とを順に積層して積層体を形成したのち、この積層体を渦巻状に20回巻回し、さらに偏平な形状に成形することで電池素子20を作製した。
次に、電池素子20を外装缶11の内部に収容したのち、電池素子20の上に絶縁板12を配置し、負極リード25を外装缶11に溶接すると共に、正極リード24を正極ピン15の下端に溶接して、外装缶11の開放端部に電池蓋13をレーザ溶接により固定した。そののち、注入孔19から外装缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸エチレン(EC)30体積%と炭酸ジエチル(DEC)70体積%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/dm3 の濃度で溶解させたものを用いた。最後に、注入孔19を封止部材19Aで塞ぐことにより、角型の二次電池を得た。なお、電池容量は800mAhとなるようにした。また、負極活物質の容量利用率を60%として設計した。ここでいう負極活物質の容量利用率とは、負極容量に対する正極容量の比(すなわち、正極容量/負極容量)を意味する。
(実験例2−1)
本実験例では、基材231の両面に高分子化合物層232A,232Bを形成せず、セパレータ23として基材231をそのまま用いるようにした。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
本実験例では、基材231の両面に高分子化合物層232A,232Bを形成せず、セパレータ23として基材231をそのまま用いるようにした。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
(実験例2−2)
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、基材231の両面に形成される高分子化合物層232A,232Bの厚みがほぼ一定となるようにした。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、基材231の両面に形成される高分子化合物層232A,232Bの厚みがほぼ一定となるようにした。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
(実験例2−3,2−4)
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、部分23Sの厚みが部分23Rの厚みよりも大きくなるように高分子化合物層232A,232Bを形成した。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、部分23Sの厚みが部分23Rの厚みよりも大きくなるように高分子化合物層232A,232Bを形成した。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
上記のように作製した実験例1−1〜1−7,2−1〜2−4の各二次電池について、以下の要領でサイクル特性として第1および第2の放電容量維持率を調べたところ、表1に示した結果が得られた。なお、ここでは、各実験例について複数のサンプルを作製し、第1および第2の放電容量維持率の測定を各々異なるサンプルについて実施した。
(第1の放電容量維持率の測定)
サイクル特性を調べるにあたり、25℃の雰囲気中において以下の手順でサイクル試験を行うことにより第1の放電容量維持率を求めた。ここでは、以下に述べる第1の充電処理、第1の放電処理、第2の充電処理および第2の放電処理の一連の充放電処理を1サイクルとし、100サイクルまで繰り返して充放電処理を行った。具体的には、第1の充電処理では、0.6mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.25Vに到達するまで定電流充電を行い、引き続き4.25Vの定電圧で電流値が40mAに到達するまで定電圧充電した。第1の放電処理では、0.6mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに到達するまで定電流放電した。第2の充電処理では、3mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、引き続き4.2Vの定電圧で電流値が50mAに到達するまで定電圧充電した。第2の放電処理では、3mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.7Vに到達するまで定電流放電した。さらに、第1の放電容量維持率として、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率、すなわち(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)を算出した。
サイクル特性を調べるにあたり、25℃の雰囲気中において以下の手順でサイクル試験を行うことにより第1の放電容量維持率を求めた。ここでは、以下に述べる第1の充電処理、第1の放電処理、第2の充電処理および第2の放電処理の一連の充放電処理を1サイクルとし、100サイクルまで繰り返して充放電処理を行った。具体的には、第1の充電処理では、0.6mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.25Vに到達するまで定電流充電を行い、引き続き4.25Vの定電圧で電流値が40mAに到達するまで定電圧充電した。第1の放電処理では、0.6mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに到達するまで定電流放電した。第2の充電処理では、3mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、引き続き4.2Vの定電圧で電流値が50mAに到達するまで定電圧充電した。第2の放電処理では、3mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.7Vに到達するまで定電流放電した。さらに、第1の放電容量維持率として、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率、すなわち(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)を算出した。
(第2の放電容量維持率の測定)
サイクル特性を調べるにあたり、第1の放電処理の際の電流密度を1.8mA/cm2 としたことを除き、他は第1の放電容量維持率の測定と同様にして第2の放電容量維持率(負荷特性)を求めた。
サイクル特性を調べるにあたり、第1の放電処理の際の電流密度を1.8mA/cm2 としたことを除き、他は第1の放電容量維持率の測定と同様にして第2の放電容量維持率(負荷特性)を求めた。
(正極集電体の損傷の確認)
上記第1の放電容量維持率の測定に用いた各実験例のサンプルを解体し、正極集電体21Aにおける亀裂や破断の発生箇所の数を確認した。その結果についても表1に併せて示す。表1では、全く亀裂および破断が生じなかったものを◎と表示し、1または2カ所の亀裂が見られたものを○と表示し、3カ所以上の亀裂または破断が見られたものを×と表示した。
上記第1の放電容量維持率の測定に用いた各実験例のサンプルを解体し、正極集電体21Aにおける亀裂や破断の発生箇所の数を確認した。その結果についても表1に併せて示す。表1では、全く亀裂および破断が生じなかったものを◎と表示し、1または2カ所の亀裂が見られたものを○と表示し、3カ所以上の亀裂または破断が見られたものを×と表示した。
なお、上記したサイクル特性を調べる際の手順および条件、ならびに正極集電体の損傷の確認の手順および条件は、特に記載がない限り、以降の一連の実験例に関する同特性の評価についても同様である。
表1に示したように、実験例1−1〜1−7では、実験例2−1〜2−4と比べて正極集電体の亀裂等が発生しにくく、かつ良好なサイクル特性が得られることが確認できた。これは、実験例1−1〜1−7では、曲線部20Rに位置するセパレータ23の部分23Rが、平坦部20Sに位置するセパレータ23の部分23Sよりも高い透気度を有することにより、特に曲線部20Rでの充放電に伴う応力が緩和された結果によるものと考えられる。これに対し、実験例2−1〜2−4では、曲線部20Rでの電池反応が活発であり、正極集電体の損傷により第2の放電容量維持率が低下したものと考えられる。なお、実験例1−4,1−5では、実験例1−1〜1−3と比べ、第2の放電容量維持率においてより高い数値が得られた。これは、実験例1−1〜1−3では正極集電体に僅かな亀裂が発生したことによって抵抗が上昇した一方で、実験例1−4,1−5では、部分23Rでの透気度を大幅に高くしたことにより正極集電体に全く亀裂が生じなかったからである。また、実験例1−6,1−7では、部分23Rにおける透気度の絶対値が実験例1−4,1−5よりも小さいので、やはり正極集電体に僅かな亀裂が発生し、第2の放電容量維持率の数値が実験例1−4,1−5に比べて小さくなった。
(実験例3−1)
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、基材231上に高分子化合物層232A,232Bをほぼ一定の厚みとなるように形成し、曲線部20Rに相当するセパレータ23の部分23R(7mm幅)をプレス機で圧延することにより、その透気度を高めた。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、基材231上に高分子化合物層232A,232Bをほぼ一定の厚みとなるように形成し、曲線部20Rに相当するセパレータ23の部分23R(7mm幅)をプレス機で圧延することにより、その透気度を高めた。この点を除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。
(実験例4−1)
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、以下のようにしたことを除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。具体的には、基材231上に高分子化合物層232A,232Bをほぼ一定の厚みとなるように形成したのち、曲線部20Rに相当するセパレータ23の部分23R(7mm幅)以外の高分子化合物層232A,232Bを水で洗浄するようにした。すなわち、セパレータ23の部分23Rの高分子化合物層232A,232Bに対し、それを覆うようにマスキングテープを貼り付けて洗浄時に水と接触しないようにすることで、空孔の形成を抑制するようにした。この結果、セパレータ23の部分23Rの透気度を高めることができた。
本実験例では、セパレータ23を作製するにあたり、以下のようにしたことを除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。具体的には、基材231上に高分子化合物層232A,232Bをほぼ一定の厚みとなるように形成したのち、曲線部20Rに相当するセパレータ23の部分23R(7mm幅)以外の高分子化合物層232A,232Bを水で洗浄するようにした。すなわち、セパレータ23の部分23Rの高分子化合物層232A,232Bに対し、それを覆うようにマスキングテープを貼り付けて洗浄時に水と接触しないようにすることで、空孔の形成を抑制するようにした。この結果、セパレータ23の部分23Rの透気度を高めることができた。
上記のように作製した実験例3−1,4−1の各二次電池について、実験例1−1〜1−7などと同様にして第1および第2の放電容量維持率、ならびに正極集電体の損傷を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
表2に示したように、実験例3−1,4−1においても、部分23Rが、部分23Sよりも高い透気度を有することにより、正極集電体の亀裂等が発生しにくく、かつ良好なサイクル特性が得られることが確認できた。
(実験例5−1〜5−7)
基材231に塗布する高分子溶液として、アラミド(芳香族ポリアミド)に代えて表3に表した各樹脂をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させたものを用いるようにしたことを除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。具体的には、実験例5−1ではポリイミド、実験例5−2ではポリアミド、実験例5−3ではポリアミドイミド、実験例5−4ではポリエーテルサルフォン、実験例5−5ではポリエーテルイミドをそれぞれ用いた。実験例5−6では、Al2 O3 粒子(平均粒径:0.3μm)を、アラミド(芳香族ポリアミド)とAl2 O3 粒子との質量比が20:80となるように添加したものをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて用いた。さらに、実験例5−7では、SiO2 粒子(平均粒径:0.3μm)を、アラミド(芳香族ポリアミド)とAl2 O3 粒子との質量比が20:80となるように添加したものをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて用いた。
基材231に塗布する高分子溶液として、アラミド(芳香族ポリアミド)に代えて表3に表した各樹脂をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させたものを用いるようにしたことを除き、他は実験例1−1〜1−7と同様にして角型の二次電池を作製した。具体的には、実験例5−1ではポリイミド、実験例5−2ではポリアミド、実験例5−3ではポリアミドイミド、実験例5−4ではポリエーテルサルフォン、実験例5−5ではポリエーテルイミドをそれぞれ用いた。実験例5−6では、Al2 O3 粒子(平均粒径:0.3μm)を、アラミド(芳香族ポリアミド)とAl2 O3 粒子との質量比が20:80となるように添加したものをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて用いた。さらに、実験例5−7では、SiO2 粒子(平均粒径:0.3μm)を、アラミド(芳香族ポリアミド)とAl2 O3 粒子との質量比が20:80となるように添加したものをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて用いた。
上記のように作製した実験例5−1〜5−7の各二次電池について、実験例1−1〜1−7などと同様にして第1および第2の放電容量維持率、ならびに正極集電体の損傷を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
表3に示したように、実験例5−1〜5−7においても、部分23Rが、部分23Sよりも高い透気度を有することにより、正極集電体の亀裂等が発生しにくく、かつ良好なサイクル特性が得られることが確認できた。
以上の各実験例の結果から、本発明の二次電池によれば、高分子化合物層342の樹脂種や作製方法によらず、セパレータ23が平坦部20Sよりも曲線部20Rにおいて高い透気度を有することにより、サイクル特性および信頼性に優れることがわかった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、セパレータの両面に高分子化合物層を設けるようにしたが、片面のみに高分子化合物層を設けるようにしてもよい。
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質、正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
11…外装缶、12…絶縁板、13…電池蓋、14…端子板、15…正極ピン、16…絶縁ケース、17…ガスケット、18…開裂弁、19…注入孔、19A…封止部材、20…電池素子、20R…曲線部、20S…平坦部、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23,23A…セパレータ、231…基材、232A,232B…高分子化合物層、23R,23S…部分、24…正極リード、25…負極リード。
Claims (12)
- 正極とセパレータと負極との積層構造を有し、かつ、対向する一対の平坦部と対向する一対の曲線部とを含む扁平状の断面を有する電池素子であって、
前記セパレータは、多孔質の樹脂からなる基材と、前記基材の一方の面または両面に設けられた単層からなる樹脂層とを有し、
前記曲線部におけるセパレータの樹脂層の厚みが、前記平坦部におけるセパレータの樹脂層の厚みよりも大きく、
前記曲線部における前記セパレータの透気度は、その曲線部と連続した前記平坦部における前記セパレータの透気度よりも高くなっている
電池素子。 - 前記樹脂層は、塗布装置を用いて前記基材の一方の面または両面に高分子溶液を塗布し、乾燥させることで得られるものであり、前記塗布装置からの前記高分子溶液の吐出量の調整により互いに異なる厚みをなす第1の部分および第2の部分を有する
請求項1に記載の電池素子。 - 前記セパレータの樹脂層は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、アラミドのうちの少なくとも1種を含む材料からなる
請求項1または請求項2に記載の電池素子。 - 前記セパレータの基材は、ポリプロピレンおよびポリエチレンの少なくとも一方を主体として含む樹脂の単層膜、またはそれらの単層膜が複数積層されてなる多層膜からなる
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池素子。 - 前記平坦部における前記セパレータの透気度は、200秒/100cm3 以上800秒/100cm3 以下である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池素子。 - 前記曲線部における前記セパレータの透気度は、800秒/100cm3 以上である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電池素子。 - 前記曲線部における前記セパレータの透気度は、1500秒/100cm3 以上である
請求項6記載の電池素子。 - 前記負極は、活物質としてケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)およびスズ(Sn)の少なくとも一種を含む
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電池素子。 - 前記正極は、活物質として、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物を含む
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電池素子。 - 前記複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))またはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )である
請求項9記載の電池素子。 - 前記リン酸化合物は、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )またはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))である
請求項9または請求項10に記載の電池素子。 - 前記正極は、活物質として、酸化チタン、酸化バナジウム、二酸化マンガン、二硫化チタン、硫化モリブデン、セレン化ニオブ、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンの少なくとも一種を含む
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電池素子。
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