JP2009211857A - 電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池容量を確保しつつ安全性を向上させることが可能な電池を提供する。
【解決手段】正極20と、セパレータ41と、負極30とを含み、これらが外周側より負極30、セパレータ41および正極20の順に位置するように積層および巻回された構造を有する巻回電極体10を備える。この巻回電極体10は、内周側負極活物質層32の表面の一部に、絶縁性の被膜34を有する。この被膜34は、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とがセパレータ41を介して対向する領域のうち、最外周端から1周の範囲に設けられている。巻回電極体10の半径方向におけるいずれの方向から釘などが刺さったとしても、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との間に被膜34が介在するため、内部短絡しにくい。しかも、被膜34を設けた場合においても巻回電極体10の巻回数を増やすことができるため、電池容量も増やすことができる。
【選択図】図2
【解決手段】正極20と、セパレータ41と、負極30とを含み、これらが外周側より負極30、セパレータ41および正極20の順に位置するように積層および巻回された構造を有する巻回電極体10を備える。この巻回電極体10は、内周側負極活物質層32の表面の一部に、絶縁性の被膜34を有する。この被膜34は、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とがセパレータ41を介して対向する領域のうち、最外周端から1周の範囲に設けられている。巻回電極体10の半径方向におけるいずれの方向から釘などが刺さったとしても、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との間に被膜34が介在するため、内部短絡しにくい。しかも、被膜34を設けた場合においても巻回電極体10の巻回数を増やすことができるため、電池容量も増やすことができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、正極、セパレータおよび負極を含み、これらが積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備えた電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(video tape recorder )、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
中でも、充放電反応にリチウムの吸蔵および放出を利用する二次電池、いわゆるリチウムイオン二次電池は、鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるため、大いに期待されている。このリチウムイオン二次電池としては、正極、セパレータおよび負極を含み、これらが積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備えたものが知られている。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有しており、負極は、負極集電体上に負極活物質層を有している。セパレータは、正極と負極との間を電気的に分離すると共に電解液を保持する役割を担っており、そのセパレータとしては、ポリエチレンなどの高分子材料からなる微多孔性薄膜シートが用いられている。
リチウムイオン二次電池では、巻回電極体に釘などが刺さって正極、セパレータおよび負極を貫通すると、正極と負極とが電池内部で接触(いわゆる内部短絡)するため、短絡反応熱が発生する。この場合には、短絡反応熱の影響を受けてセパレータが瞬時に収縮し、短絡範囲が急速に拡大するため、短絡反応熱が急激に増大し、いわゆる異常過熱に至る。この短絡反応熱は、リチウムを吸蔵および放出して化学的ポテンシャルが高くなった正極活物質層および負極活物質層と、高い導電性を有する正極集電体および負極集電体との間において短絡した場合に、最大となる。異常過熱に至ると、正極活物質層および負極活物質層が過熱されるため、発火などの甚大な被害を招くおそれがある。
そこで、異常過熱に至ることを防止するために、正極活物質層あるいは負極活物質層の表面に、島状の多孔質絶縁層を形成する技術(例えば、特許文献1参照。)や、セパレータと正極活物質層との間およびセパレータと負極活物質層との間に、多孔質耐熱層を部分形成する技術(例えば、特許文献2参照。)や、正極活物質層あるいは負極活物質層の表面に、0.1μm〜200μmの厚さの多孔性保護膜を全面形成する技術(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。上記した多孔質絶縁層は、アルミナ、シリカあるいは酸化チタンなどであり、スパッタリング法などによって形成されている。また、多孔質耐熱層および多孔性保護膜は、アルミナなどの絶縁性フィラーと、結着剤とを含んでいる。この他、サイクル特性や高電流充放電特性を向上させるために、負極中に、BET法による比表面積が30m2 /g以上300m2 /g以下である絶縁性の固体微粒子を含有させる技術(例えば、特許文献4参照。)も提案されている。
特開2005−183179号公報
特開2006−120604号公報
特開平07−220759号公報
特開平09−219199号公報
近年、ポータブル電子機器は益々高性能化および多機能化しており、その消費電力も増大する傾向にある。これに伴い、二次電池の容量も高容量化する傾向にあるため、内部短絡時に異常過熱に至りやすい状況にある。このため、二次電池に関して、電池の高容量化はもちろんのこと、破損時の安全性に関してもより一層の向上が望まれている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電池容量を確保しつつ安全性を向上させることが可能な電池を提供することにある。
本発明の第1の電池は、正極集電体に内周側正極活物質層および外周側正極活物質層が設けられた正極と、セパレータと、負極集電体に内周側負極活物質層および外周側負極活物質層が設けられた負極とを含み、これらが外周側より負極、セパレータおよび正極の順に位置するように積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備えたものである。特に、外周側正極活物質層および内周側負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の被膜を有し、その被膜が、外周側正極活物質層と内周側負極活物質層とがセパレータを介して対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている。
本発明の第2の電池は、正極集電体に内周側正極活物質層および外周側正極活物質層が設けられた正極と、セパレータと、負極集電体に内周側負極活物質層および外周側負極活物質層が設けられた負極とを含み、これらが外周側より正極、セパレータおよび負極の順に位置するように積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備えたものである。特に、内周側正極活物質層および外周側負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の被膜を有し、その被膜が、内周側正極活物質層と外周側負極活物質層とがセパレータを介して対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている。
本発明の電池によれば、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極と、セパレータと、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極とを含み、これらが積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備えている。また、セパレータを介して対向する正極活物質層および負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の被膜を有している。この被膜は、正極活物質層と負極活物質層とのセパレータを介した対向領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている。この場合には、巻回電極体の半径方向におけるいずれの方向から釘などが刺さったとしても、正極活物質層と負極活物質層との間に絶縁性の被膜が介在するため、内部短絡しにくい。しかも、絶縁性の被膜を設けた場合においても巻回電極体の巻回数を増やすことができるため、電池容量が高くなる。したがって、電池容量を確保しつつ安全性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図5は、本発明の一実施の形態に係る電池の構成を表している。このうち、図1は全体の縦断面を示し、図2および図3は図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った横断面を示し、図4および図5は図2および図3に示した巻回電極体10の一部を拡大して示している。なお、図5では、(A)が負極30を示し、(B)が正極20を示している。
ここで説明する電池は、例えば、負極30の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池である。
この二次電池は、図1に示したように、主に、ほぼ円柱状の電池缶1の内部に、巻回電極体10と、一対の絶縁板2,3とが収納されたものである。この円柱状の電池缶1を含む電池構造は、円筒型と呼ばれている。
電池缶1は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、電極端子としての機能を有していてもよい。この電池缶1は、例えば、鉄、アルミニウム(Al)あるいはそれらの合金などの金属材料によって構成されている。なお、電池缶1が鉄によって構成される場合には、例えば、ニッケル(Ni)などの鍍金が施されていてもよい。一対の絶縁板2,3は、巻回電極体10を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶1の開放端部には、電池蓋4と、その内側に設けられた安全弁機構5および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)6とがガスケット7を介してかしめられて取り付けられている。これにより、電池缶1の内部は密閉されている。電池蓋4は、例えば、電池缶1と同様の金属材料によって構成されている。安全弁機構5は、熱感抵抗素子6を介して電池蓋4と電気的に接続されている。この安全弁機構5では、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板5Aが反転して電池蓋4と巻回電極体10との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子6は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより、電流を制限して大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット7は、例えば、絶縁材料によって構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体10は、図2〜図5に示したように、正極20と、セパレータ41と、負極30とを含み、これらが積層および巻回された構造を有している。この巻回数は、任意に設定可能である。ここでは、例えば、上記した正極20、セパレータ41および負極30と共に補助セパレータ42を含み、外周側より負極30、セパレータ41および正極20の順に位置するように巻回電極体10が構成されている。
巻回電極体10の中心(巻回軸C)には、センターピン50が挿入されていてもよい。この巻回電極体10では、アルミニウムなどの金属材料によって構成された正極リード8が正極20に接続されていると共に、ニッケルなどの金属材料によって構成された負極リード9が負極30に接続されている。正極リード8は、安全弁機構5に溶接されて電池蓋4と電気的に接続されており、負極リード9は、電池缶1に溶接されて電気的に接続されている。
正極20は、例えば、一対の面を有する正極集電体21と、その一方の面(内周側の面)に設けられた内周側正極活物質層22と、他方の面(外周側の面)に設けられた外周側正極活物質層23とを有している。内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23は、例えば、正極集電体21の長手方向における中央領域(被覆領域20X)に設けられており、それらが設けられていない端部領域(露出領域20Y)では、正極集電体21が露出している。この露出領域20Yにおける正極集電体21は、例えば、外周側および内周側の双方において、セパレータ41および補助セパレータ42と一緒に数周巻回されていてもよい。なお、正極集電体21の長手方向では、例えば、内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23の外周側の端部22TE,23TEの位置が互いに一致しており、内周側の端部22NE,23NEの位置が互いに一致している。
正極集電体21は、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23は、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は、充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などが挙げられる。
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、セレン化ニオブなどのカルコゲン化物や、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料を任意の組み合わせで2種以上混合してもよい。
負極30は、例えば、一対の面を有する負極集電体31と、その一方の面(内周側の面)に設けられた内周側負極活物質層32と、他方の面(外周側の面)に設けられた外周側負極活物質層33とを有している。内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33は、負極集電体31の長手方向における中央領域(被覆領域30X)に設けられており、それらが設けられていない端部領域(露出領域30Y)では、負極集電体31が露出している。この被覆領域30Xの長さ(内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33の形成長さ)は、例えば、被覆領域20Xの長さ(内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23の形成長さ)よりも、外周側および内周側の双方において大きくなっている。また、露出領域30Yにおける負極集電体31は、例えば、外周側および内周側の双方において、セパレータ41および補助セパレータ42と一緒に数周巻回されていてもよい。なお、負極集電体31の長手方向では、例えば、内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33の外周側の端部32TE,33TEの位置が互いに一致しており、内周側の端部32NE,33NEの位置が互いに一致している。
負極集電体31は、例えば、銅(Cu)、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33は、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。この負極30では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量が、正極20の放電容量よりも大きくなっているのが好ましい。
負極集電体31の表面は、粗面化されているのが好ましい。いわゆるアンカー効果によって負極集電体31と内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33との間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも内周側負極活物質層32等と対向する領域において、負極集電体31の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理によって微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法によって負極集電体31の表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法を使用して作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度が得られるので好ましい。このような負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
上記した金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)あるいはLiSiOなどが挙げられる。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を有するものが挙げられ、スズに加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnSiO3 、LiSnO、Mg2 Snなどが挙げられる。
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を有するものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2および第3の構成元素を有することにより、サイクル特性が向上するからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として有し、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を有していてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を有していてもよい。より高い効果が得られるからである。
なお、SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質な相であるのが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、これによって優れたサイクル特性が得られるようになっている。この相のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質との反応性が低減されるからである。
X線回折によって得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することによって容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性あるいは非晶質な反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。この低結晶性あるいは非晶質な反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素によって低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
特に、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線か、Mg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用によって減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
XPSにおいて、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素よりも陽性な元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素などと結合している場合には、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。
なお、XPS測定を行う場合には、表面が表面汚染炭素で覆われている際に、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタするのが好ましい。また、測定対象のSnCoC含有材料が負極30中に存在する場合には、二次電池を解体して負極30を取り出したのち、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極30の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うのが望ましい。
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、例えば、各構成元素の原料を混合した混合物を電気炉、高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などで溶解させたのち、凝固させることによって形成可能である。また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法や、各種ロール法や、メカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法などを用いてもよい。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法が好ましい。SnCoC含有材料が低結晶性あるいは非晶質な構造になるからである。メカノケミカル反応を利用した方法では、例えば、遊星ボールミル装置やアトライタなどの製造装置を用いることができる。
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いるのが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法を利用した方法によって合成することにより、低結晶化あるいは非晶質な構造が得られ、反応時間も短縮されるからである。なお、原料の形態は、粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として有するSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるのが好ましい。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下、スズとコバルトと鉄との合計に対するコバルトと鉄との合計の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトと鉄との合計に対するコバルトの割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%以上79.5質量%以下であるのが好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の結晶性、元素の結合状態の測定方法、および形成方法などについては、上記したSnCoC含有材料と同様である。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料として、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料を用いた内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33は、例えば、気相法、液相法、溶射法、塗布法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成される。この場合には、負極集電体31と内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33とが界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、界面において、負極集電体31の構成元素が内周側負極活物質層32等に拡散していてもよいし、内周側負極活物質層32等の構成元素が負極集電体31に拡散していてもよいし、両者の構成元素が互いに拡散し合っていてもよい。充放電時における内周側負極活物質層32等の膨張および収縮に起因する破壊が抑制されると共に、負極集電体31と内周側負極活物質層32等との間の電子伝導性が向上するからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法によって塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
上記した他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、電極反応物質の吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物とは、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物とは、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどである。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の負極材料を任意の組み合わせで2種以上混合してもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
セパレータ41は、正極20と負極30とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ41は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの高分子材料によって構成されている。
補助セパレータ42は、セパレータ41を介して正極20と負極30とを積層および巻回させた場合に、巻回周間において正極20と負極30とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止するものである。この補助セパレータ42は、例えば、セパレータ41と同様の高分子材料によって構成されている。
なお、セパレータ41および補助セパレータ42は、巻回電極体10の内周側および外周側において一緒に数周巻回されていてもよい。ただし、外周側におけるセパレータ41および補助セパレータ42の巻回状況は、電池缶1が機能を果たす電極端子の種類に応じて設定されるのが好ましい。具体的には、電池缶1が外周側の電極(負極30)と同極の端子(負極端子)として機能する場合には、二次電池に釘などが刺さった場合などにおいて負極30と電池缶1とを積極的に接触させるために、図2に示したように、セパレータ41および補助セパレータ42は、露出領域30Yにおける負極集電体31よりも余分に巻回されていないのが好ましい。一方、電池缶1が外周側の電極(負極30)と異極の端子(正極端子)として機能する場合には、負極30と電池缶1とを積極的に接触させないようにするために、図3に示したように、セパレータ41および補助セパレータ42は、露出領域30Yにおける負極集電体31よりも余分に巻回されているのが好ましい。
このセパレータ41および補助セパレータ42には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、それに溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。この非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの炭酸エステル系溶媒が挙げられる。この他、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、あるいはジメチルスルホキシドなども挙げられる。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性が得られるからである。中でも、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度溶媒と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒とを混合したものが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
この溶媒は、ハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルおよびハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいるのが好ましい。負極30の表面に安定な保護膜(被膜)が形成されて電解液の分解反応が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。このハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。また、ハロゲンを有する環状炭酸エステルとしては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。なお、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含んでいるのが好ましい。サイクル特性が向上するからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸メチレンエチレン、炭酸カテコールあるいはそれらの誘導体などが挙げられる。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )あるいは六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )などが挙げられる。優れた容量、サイクル特性および保存特性が得られるからである。この他、例えば、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、あるいはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム(LiC(CF3 SO2 )3 )なども挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウムが好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であるのが好ましい。この範囲外では、イオン伝導性が極端に低下する可能性があるからである。
なお、電解液は、溶媒および電解質塩と共に、各種の添加剤を含んでいてもよい。サイクル特性などが向上するからである。
この添加剤としては、例えば、スルトン(環状スルホン酸エステル)が挙げられる。このスルトンは、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどであり、中でも、プロペンスルトンが好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。電解液中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
また、添加剤としては、例えば、酸無水物が挙げられる。この酸無水物は、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物あるいはマレイン酸無水物などのカルボン酸無水物や、エタンジスルホン酸無水物あるいはプロパンジスルホン酸無水物などのジスルホン酸無水物や、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物あるいはスルホ酪酸無水物などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などであり、中でも、コハク酸無水物あるいはスルホ安息香酸無水物が好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。電解液中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
負極30は、例えば、セパレータ41に近い側に位置する内周側負極活物質層32の表面の一部に、絶縁性の被膜34を有している。この被膜34は、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とがセパレータ41を介して対向する領域(対向領域10Z)のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている。
負極30に被膜34が設けられているのは、二次電池(巻回電極体10)に釘などが刺さって負極30、セパレータ41および正極20をこの順に貫通し、正極20と負極30とが接触し得る状況が生じた際に、被膜34が外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との間に介在し、それらが被膜34を介して電気的に分離されるため、直に短絡しにくくなるからである。また、釘などが刺さった際に被膜34が破損して内部短絡し、短絡反応熱が生じたとしても、吸熱性を有する被膜34によって短絡反応熱が吸収され、内部短絡後の発熱が緩和されるため、異常過熱に至ることも防止される。
対向領域10Zのうち、最外周端から1周以上の範囲に被膜34が設けられているのは、その最外周端から1周の範囲(最外周)において内部短絡した場合に電圧降下が最大となるため、多大な短絡反応熱が生じて異常過熱に至りやすいからである。しかも、少なくとも最外周に被膜34が設けられていれば、二次電池に対して巻回電極体10の半径方向におけるいずれの方向から釘などが刺さっても、その最外周において内部短絡しにくくなるからである。また、被膜34が1周を越えた範囲に設けられていれば、巻回電極体10の最外周だけでなく、それよりも内周側の周においても内部短絡しにくくなる。
さらに、内周側負極活物質層32の表面の一部、すなわち対向領域10Zのうちの全周未満の範囲に被膜34が設けられているのは、電池缶1の容積や正極20、セパレータ41および負極30の寸法(長さや厚さなど)を固定した場合に、被膜34の形成範囲が狭くなるほど巻回電極体10の巻回数が多くなるため、電池容量が増加するからである。
ここでは、例えば、内周側負極活物質層32の表面のうち、対向領域10Zのうちの最外周端から1周の範囲(最外周)に被膜34が設けられている。二次電池に対していかなる方向から釘などが刺さった場合においても巻回電極体10の最外周における内部短絡を防止しつつ、被膜34の形成範囲が最小になるため、電池容量を増やすことができるからである。この場合には、被膜34の形成長さDは、対向領域10Zのうちの最外周端から1周の範囲に相当する長さに等しい値となる。
上記した「対向領域10Zのうちの最外周端から1周の範囲」とは、巻回軸Cから巻回電極体10の半径方向に直線(基準線L)を引いた場合に、その基準線Lの位置から巻回して、再び基準線Lの位置に至るまでの範囲である。なお、上記したように、負極30における被覆領域30Xの長さが正極20における被覆領域20Xの長さよりも外周側において長くなっている場合には、その外周側に向かって被膜34の形成範囲が拡張されていてもよい。
この被膜34は、例えば、無機酸化物を含んでいる。この無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタンあるいは酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。もちろん、無機酸化物は、酸化アルミニウム等以外の他の材料であってもよい。
無機酸化物は、複数の粒子状をなしていてもよい。無機酸化物が粒子状をなしている場合には、その無機酸化物の粒径(いわゆるメジアン径)は、特に限定されないが、被膜34による絶縁機能を効果的に発揮させるためには、20nm以上600nm以下であるのが好ましい。
なお、被膜34は、例えば、バインダを含んでいるのが好ましい。粒子状の無機酸化物を保持することが可能になると共に、塗布法によって被膜34を容易に形成可能になるからである。このバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。被膜34がバインダを含む場合には、その被膜34の面積密度や厚さは、特に限定されないが、被膜34による絶縁機能を効果的に発揮させるためには、面積密度は0.4mg/cm2 以上2.5mg/cm2 以下であるのが好ましく、厚さは3μm以上15μm以下であるのが好ましい。
この二次電池は、例えば、以下の手順によって製造される。
まず、正極20を作製する。最初に、正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどによって正極集電体21の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23を形成する。
次に、負極30を作製する。最初に、負極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して負極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどによって負極集電体31の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。続いて、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33を形成する。続いて、無機酸化物と、バインダとを混合したのち、有機溶剤に溶解させて、被膜34を形成するための塗布液を調製する。最後に、ダイヘッドコータなどによって内周側負極活物質層32の表面の一部に塗布液を塗布して乾燥させることにより、被膜34を形成する。この被膜34を形成する場合には、塗布液に各種の添加剤を加えてもよい。一例を挙げれば、塗布液と内周側負極活物質層32との間の表面張力の差を小さくし、その内周側負極活物質層32の表面において塗布液を濡れ広がりやすくするために、塗布液中に界面活性剤を加えてもよい。
続いて、正極20に正極リード8を溶接などして取り付けると共に、負極30に負極リード9を溶接などして取り付ける。続いて、負極30と、セパレータ41と、正極20と、補助セパレータ42とをこの順に積層および巻回させて巻回電極体10を作製する。この巻回電極体10を作製する場合には、負極30が正極20よりも外周側となるように巻回させることにより、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32の表面の一部に設けられた被膜34とがセパレータ41を介して対向するようにする。続いて、巻回電極体10の中心(巻回軸C)にセンターピン50を挿入したのち、その巻回電極体10を一対の絶縁板2,3で挟みながら電池缶1の内部に収納する。続いて、正極リード8の先端部を安全弁機構5に溶接などして接続し、負極リード9の先端部を電池缶1に溶接などして接続する。続いて、電池缶1の内部に電解液を注入してセパレータ41および補助セパレータ42に含浸させる。最後に、電池缶1の開口端部に、ガスケット7を介して電池蓋4、安全弁機構5および熱感抵抗素子6をかしめて固定する。これにより、図1〜図5に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極20からリチウムイオンが放出され、セパレータ41に含浸された電解液を介して負極30に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極30からリチウムイオンが放出され、セパレータ41に含浸された電解液を介して正極20に吸蔵される。
本実施の形態の二次電池によれば、外周側より負極30、セパレータ41および正極20がこの順に位置するように巻回された巻回電極体10を備えている。特に、セパレータ41に近い側に位置する内周側負極活物質層32の表面の一部、詳細には、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との対向領域10Zのうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に、絶縁性の被膜34を設けている。したがって、以下の理由により、電池容量を確保しつつ安全性を向上させることができる。
図6〜図8は比較例の二次電池に用いられる巻回電極体の構成を表しており、図2に対応する断面を示している。図6では第1の比較例の巻回電極体110、図7では第2の比較例の巻回電極体210、図8では第3の比較例の巻回電極体310をそれぞれ示している。また、図9は被膜34を設けない場合の問題点、図10は被膜34を設けた場合の利点をそれぞれ説明するためのものであり、いずれも図4に対応する断面を示している。
第1の比較例の巻回電極体110は、内周側負極活物質層32の表面に被膜34が設けられていない負極130を有している。第2の比較例の巻回電極体210は、内周側負極活物質層32の表面の全部に被膜34が設けられた負極230を有している。第3の比較例の巻回電極体310は、内周側負極活物質層32の表面の一部に被膜34が設けられているが、その被膜34の形成範囲が対向領域10Zのうちの最外周端から1周未満の範囲である負極330を有している。これらの巻回電極体110,210,310は、上記した構成を除き、本実施の形態の巻回電極体10と同様の構成を有している。
第1の比較例の巻回電極体110では、図6に示したように、内周側負極活物質層32の表面に被膜34が設けられていないため、電池缶1の容積や、正極20、セパレータ41および負極30の寸法(長さや厚さなど)を固定した場合に、巻回数を最大とすることができる。これにより、電池容量も増やすこともできる。しかしながら、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とがセパレータ41だけを介して対向しているため、図9に示したように、釘Nなどが巻回電極体110の最外周に刺さって貫通すると、セパレータ41が貫通箇所の周囲に向かって収縮し、そのセパレータ41の貫通箇所を通じて外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とが接触(内部短絡)するため、内部短絡熱が生じてしまう。この場合には、内部短絡熱の影響を受けてセパレータ41の収縮が加速され、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との接触範囲(内部短絡の範囲)が拡大するため、内部短絡熱が急激に増大して異常過熱に至る可能性が高くなる。
第2比較例の巻回電極体210では、図7に示したように、内周側負極活物質層32の表面の全部に被膜34が設けられているため、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とがセパレータ41だけでなく被膜34も介して対向している。この場合には、図10に示したように、釘Nなどが巻回電極体210の最外周に刺さって貫通したとしても、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との間に絶縁性の被膜34が介在するため、両者が接触(内部短絡)しにくい。これにより、内部短絡熱の発生が防止されるため、異常過熱に至ることも防止される。しかしながら、巻回電極体210の巻回数は、被膜34の占有体積分だけ第1の比較例よりも少なくなり、ここでは内周側負極活物質層32の表面の全部に被膜34が設けられていることに起因して著しく少なくなるため、電池容量が減少してしまう。
第3の比較例の巻回電極体310では、図8に示したように、内周側負極活物質層32の表面の極一部(対向領域10Zのうちの最外周端から1周未満の範囲)だけに被膜34が設けられているため、巻回電極体310の巻回数は、被膜34の占有体積分に相当する僅かだけしか第1の比較例よりも少なくならず、ここでは第1の比較例とほぼ同等になる。これにより、電池容量の減少を最低限に抑えることができる。しかも、被膜34の形成範囲内において釘Nなどが刺さった場合には、図10に示したように、第2の比較例と同様に、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32とが接触(内部短絡)しにくい。これにより、内部短絡熱の発生が防止されると共に、異常過熱に至ることも防止される。しかしながら、被膜34の形成範囲が巻回電極体310の最外周における一部であるため、その被膜34の形成範囲外において釘Nなどが刺さった場合には、図9に示したように、第1の比較例と同様に内部短絡してしまう。
これに対して、本実施の形態の巻回電極体10では、図4に示したように、内周側負極活物質層32の表面の一部(対向領域10Zのうちの最外周端から1周の範囲)に被膜34が設けられているため、第3の比較例と同様に、巻回電極体10の巻回数は、被膜34の占有体積分に相当する僅かだけしか第1の比較例よりも少なくならない。この場合の巻回数は、厳密には、第3の比較例よりも少なくなるが、第2の比較例よりは著しく多くなり、特に、巻回数の総数が増えるほど多くなる。これにより、電池容量を増やすことができる。しかも、釘Nなどが巻回電極体10の半径方向におけるいずれの方向から刺さっても、図10に示したように、第2および第3の比較例と同様に内部短絡しにくい。これにより、内部短絡熱の発生が防止されると共に、異常過熱に至ることも防止される。
なお、例えば、被膜34が対向領域10Zのうちの最外周端から1周の範囲だけに設けられている場合において、釘Nが巻回電極体10の最外周だけでなくそれよりも内側の周まで刺さった場合には、最外周で内部短絡しなかったとしても、それよりも内側の周で内部短絡する可能性はある。しかしながら、電圧降下が最大となる最外周において内部短絡しなければ、それよりも内周において内部短絡したとしても、二次電池全体としては発熱が十分に抑えられるため、異常過熱に至ることが効果的に防止される。
これらのことから、本実施の形態の二次電池では、巻回電極体10の巻回数を増やしつつ内部短絡が防止されるため、電池容量を確保しつつ安全性を向上させることができるのである。特に、内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33がケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料を含んでいれば、負極材料として炭素材料を含んでいる場合と比較して、高い電池容量が得られる一方で、異常過熱に至る可能性が高くなることから、安全性を効果的に向上させることができる。
また、負極30が絶縁性の被膜を有していれば、以下の点においても利点を有する。高容量を得るために内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33がケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料を含んでいる場合には、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な量を正極20と負極30との間で一致させるために、内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23の厚さを内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33の厚さに対して相対的に大きくしなければならない。この場合には、正極20が絶縁性の被膜を有するようにすると、その正極20の厚さがさらに大きくなるため、巻回電極体10を作製する場合において正極20を巻回させることが困難になる。これに対して、負極30が絶縁性の被膜を有する場合には、相対的に薄い内周側負極活物質層32に絶縁性の被膜を設ければよく、正極20の厚さが過度に大きくならないため、その正極20を容易に巻回させることができる。
なお、本実施の形態では、図4に示したように、セパレータ41に近い側に位置する外周側正極活物質層23および内周側負極活物質層32のうち、内周側負極活物質層32の表面に被膜34を設けるようにしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、図11に示したように、内周側負極活物質層32に代えて外周側正極活物質層23の表面に被膜24を設けるようにしてもよいし、あるいは図12に示したように、外周側正極活物質層23および内周側負極活物質層32の双方の表面に被膜24,34を設けるようにしてもよい。この被膜24に関する詳細は、被膜34と同様である。ただし、図12に示した場合には、被膜24の構成(無機酸化物の種類や形成範囲など)が被膜34と同一であってもよいし、異なってもよい。これらの場合においても、図10を参照して説明した場合と同様に、外周側正極活物質層23と内周側負極活物質層32との間に被膜24,34が介在することとなるため、図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、図4に対応する図13に示したように、セパレータ41から遠い側に位置する内周側正極活物質層22の表面に、絶縁性の他の被膜25を設けるようにしてもよい。この被膜25に関する詳細は、被膜34と同様である。すなわち、被膜25は、内周側正極活物質層22の表面の一部に設けられており、詳細には、内周側正極活物質層22と外周側負極活物質層33とが対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている。ただし、被膜25の構成(無機酸化物の種類や形成範囲など)は、被膜34と同一であってもよいし、異なってもよい。この場合には、巻回電極体10の最外周だけでなく、それよりも内側の周まで釘などが刺さったとしても、最外周の内周側正極活物質層22とそれよりも内側の周における外周側負極活物質層33との間に被膜25が介在するため、両者の間(巻回電極体10の巻回周間)において内部短絡しにくい。したがって、安全性をより向上させることができる。
また、本実施の形態では、図4に対応する図14に示したように、セパレータ41から遠い側に位置する外周側負極活物質層33の表面に、絶縁性の他の被膜35を設けるようにしてもよい。この被膜35に関する詳細は、被膜34と同様である。すなわち、被膜35は、外周側負極活物質層33の表面の一部に設けられており、詳細には、内周側正極活物質層22と外周側負極活物質層33とが対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている。ただし、被膜35の構成(無機酸化物の種類や形成範囲など)は、被膜34と同一であってもよいし、異なってもよい。この場合には、巻回電極体10の外周側において数周巻回されている露出領域20Y,30Yの正極集電体21および負極集電体31(図3および図5参照)と巻回電極体10との間に被膜35が介在するため、短絡しにくい。あるいは、露出領域20Y,30Yの正極集電体21および負極集電体31が数周巻回されていない場合には、電池缶1(図1参照)を貫通して釘などが巻回電極体10に刺さったとしても、電極缶1と巻回電極体10の最外周の外周側負極活物質層33との間に被膜35が介在するため、短絡しにくい。したがって、安全性をより向上させることができる。
また、本実施の形態では、図13および図14に対応する図15に示したように、セパレータ41から遠い側に位置する内周側正極活物質層22の表面の一部に被膜25を設けると共に、セパレータ41から遠い側に位置する外周側負極活物質層33の表面の一部に被膜35を設けるようにしてもよい。この場合には、安全性を著しく向上させることができる。
なお、図1〜図15では、負極30が正極20よりも外周側に位置するように巻回電極体10を構成した場合について説明したが、必ずしもこれに限られず、正極20が負極30よりも外周側に位置するように巻回電極体10を構成してもよい。この場合には、正極20と負極30との位置関係(内周側あるいは外周側)が逆転するため、絶縁性の被膜を設ける位置も同様に逆転する。図4および図11〜図15に示した一例の構成の中から、いくつかの構成を例に挙げておくと、正極20が負極30よりも外周側に位置するようにした場合の具体的な構成は、以下の通りである。
図4に示した構成を例に挙げると、正極20が負極30よりも外周側に位置する場合において、図4に示した構成を適用するためには、図16に示したように、内周側に位置する負極30のうち、セパレータ41に近い側に位置する外周側負極活物質層33の表面に、被膜36が設けられる。この場合においても、図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。
また、図13に示した構成を例に挙げると、正極20が負極30よりも外周側に位置する場合において、図13に示した構成を適用するためには、図17に示したように、内周側に位置する負極30のうち、セパレータ41から遠い側に位置する内周側負極活物質層32の表面に、被膜37が設けられる。この場合においても、図13に示した場合と同様の効果を得ることができる。
なお、正極20が負極30よりも外周側に位置するようにした場合における上記以外の巻回電極体10の詳細な構成は、負極30が正極20よりも外周側に位置するようにした場合と同様である。
もちろん、図4および図11〜図17に示した巻回電極体10の一連の構成については、任意の組み合わせとなるように2種以上組み合わせてもよい。
本発明の実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
以下の手順により、図1に示した円筒型の二次電池を製造した。この際、負極30の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
以下の手順により、図1に示した円筒型の二次電池を製造した。この際、負極30の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
まず、正極20を作製した。最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃×5時間の条件で焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、バーコータによって帯状のアルミニウム箔(厚さ=12μm)からなる正極集電体21の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させたのち、ロールプレス機によって塗膜を圧縮成型して内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23を形成した。この際、内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23の厚さをそれぞれ93μmとした。
次に、負極30を作製した。最初に、コバルト粉末とスズ粉末とを合金化してコバルト・スズ合金粉末としたのち、炭素粉末を加えて乾式混合した。続いて、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中に、上記した混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと一緒にセットした。続いて、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換したのち、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。続いて、反応容器を室温まで冷却してSnCoC含有材料を取り出したのち、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
得られたSnCoC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は48質量%、コバルトの含有量は23質量%、炭素の含有量は20質量%、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))は32.4質量%であった。この際、スズおよびコバルトの含有量については誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分析で測定し、炭素の含有量については炭素・硫黄分析装置で測定した。また、X線回折法によってSnCoC含有材料を分析したところ、2θ=20°〜50°の範囲に半値幅を有する回折ピークが観察された。さらに、XPSによってSnCoC含有材料を分析したところ、図18に示したように、ピークP1が得られた。このピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、それよりも低エネルギー側(284.5eVよりも低い領域)にSnCoC含有材料中におけるC1sのピークP3とが得られた。この結果から、SnCoC含有材料中の炭素は他の元素と結合していることが確認された。
SnCoC含有材料を得たのち、負極活物質としてSnCoC含有材料80質量部と、導電剤としてグラファイト11質量部およびアセチレンブラック1質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、バーコータによって帯状の電解銅箔(厚さ=12μm)からなる負極集電体31の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させたのち、ロールプレス機によって塗膜を圧縮成型して内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33を形成した。この際、内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33の厚さをそれぞれ33.5μmとした。最後に、無機酸化物として酸化アルミニウム(Al2 O3 :メジアン径=350nm)100gと、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)400gと、N−メチル−2−ピロリドン490gとを混合し、ホモジナイザによって攪拌したのち、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(CH12H25OSO3 Na)を加えて塗布液を調製した。最後に、ダイヘッドコータによって内周側負極活物質層32および外周側負極活物質層33の表面の一部に塗布液を塗布してから乾燥させて、絶縁性の被膜34,35を形成した。この被膜34,35を形成する場合には、厚さを10.57μm、面積密度を1.7mg/cm2 、内周側負極活物質層32の外周側の端部32TE,33TEからの塗布長さを12mmとした。この塗布長さは、後工程において負極30を巻回して巻回電極体10(総巻回層数=19層)を作製した際に、被膜34の形成範囲が対向領域10Z(図5参照)のうちの最外周端から1周の範囲(巻回電極体10の巻回層数で1層分)に相当することとなる長さである。
次に、溶媒として炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジメチル(DMC)とを混合したのち、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムを溶解させて電解液を調製した。この際、溶媒の組成(EC:PC:DMC)を質量比で30:10:60とし、電解質塩の濃度を1mol/dm3 とした。
最後に、正極20、負極30および電解液を用いて、二次電池を組み立てた。最初に、正極20にアルミニウム製の正極リード8を溶接すると共に、負極30にニッケル製の負極リード9を溶接した。続いて、負極30と、微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ41(厚さ=21μm)と、正極20と、セパレータ41と同様の構成を有する補助セパレータ42とをこの順に積層したのち、負極30が正極20よりも外周側となるように巻回させて巻回電極体10を作製した。この際、巻回電極体10の巻回数を19回とした。続いて、巻回電極体10の中心にセンターピン50を挿入し、その巻回電極体10を一対の絶縁板2,3で挟みながら、ニッケル鍍金された鉄製の円柱状の電池缶1(直径18mm×高さ65mm)の内部に収納した。続いて、正極リード8を安全弁機構5に溶接し、負極リード9を電池缶1に溶接した。最後に、減圧方式によって電池缶1の内部に電解液を注入してセパレータ41に含浸させ、ガスケット7を介して電池蓋4を電池缶1にかしめることにより、円筒型の二次電池が完成した。なお、この二次電池については、負極30の充放電容量が正極20の充放電容量よりも大きくなるように内周側正極活物質層22および外周側正極活物質層23の厚さを調節することにより、満充電時において負極30にリチウム金属が析出しないようにした。
(比較例1−1)
被膜34,35を形成しなかったことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
被膜34,35を形成しなかったことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
(比較例1−2)
塗布液に黒鉛を加え、絶縁性の被膜34,35に代えて導電性の被膜を形成したことを除き、実施例1と同様の手順を経た。この際、黒鉛の添加割合を5.66重量%とした。この黒鉛の添加割合は、無機酸化物とバインダとを併せて100重量%とした場合に、5.66重量%に相当する分だけ黒鉛を加えるという意味である。
塗布液に黒鉛を加え、絶縁性の被膜34,35に代えて導電性の被膜を形成したことを除き、実施例1と同様の手順を経た。この際、黒鉛の添加割合を5.66重量%とした。この黒鉛の添加割合は、無機酸化物とバインダとを併せて100重量%とした場合に、5.66重量%に相当する分だけ黒鉛を加えるという意味である。
(比較例1−3)
被膜34,35の形成範囲を対向領域10Zのうちの最外周端から1周未満の範囲(巻回電極体10の巻回層数で1層未満分)に絞ったことを除き、実施例1と同様の手順を経た。この際、塗布長さを6mmとした。
被膜34,35の形成範囲を対向領域10Zのうちの最外周端から1周未満の範囲(巻回電極体10の巻回層数で1層未満分)に絞ったことを除き、実施例1と同様の手順を経た。この際、塗布長さを6mmとした。
(比較例1−4)
負極活物質層32の表面の全部に被膜34,35を形成したことを除き、実施例1と同様の手順を経た。この際、塗布長さは625mmであり、その塗布長さは、被膜34,35の形成範囲が対向領域10Zのうちの最外周端から全周の範囲(巻回電極体10の巻回層数で19層分)に相当することとなる長さである。
負極活物質層32の表面の全部に被膜34,35を形成したことを除き、実施例1と同様の手順を経た。この際、塗布長さは625mmであり、その塗布長さは、被膜34,35の形成範囲が対向領域10Zのうちの最外周端から全周の範囲(巻回電極体10の巻回層数で19層分)に相当することとなる長さである。
これらの実施例1および比較例1−1〜1−4の二次電池について限界電圧、表面抵抗、降下電圧、直流抵抗および最高温度を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
限界電圧(V)は、以下の手順によって内部短絡試験(釘刺し試験)を行い、異常過熱に起因する不具合が発生しない電池電圧として求めた。ここで、内部短絡試験は、まず、充電電流を1750mAに固定する一方、電池電圧が3.85V,3.90V,3.95V,4.00V,4.05V,4.10V,4.15V,4.20V,4.25Vとなるようにして9種類の二次電池を充電した。そののち、各二次電池の長手方向における中心部に、巻回電極体10の半径方向から100mm/秒の速度で釘(直径=2.5mm)を突き刺して貫通させ、異常過熱に起因する電池缶1の裂け、発火およびガス噴出などが生じなかった場合を良好、それらが生じた場合を不良と判断し、良好な結果が得られた電圧の上限値を限界電圧とした。なお、限界電圧を調べる際の手順および条件は、以降の実施例および比較例についても同様である。
表面抵抗(Ω)を調べる際には、テスタによって負極30の表面の抵抗を測定した。この際、任意の15箇所において抵抗を測定したのち、その平均値を求めた。
降下電圧(V)を調べる際には、上記した内部短絡試験を行いながら、内周側負極活物質層32の外周側の端部32TE近傍(比較例1−3において被膜34が設けられている領域内)における電圧の降下量を測定した。
直流抵抗(mΩ)を調べる際には、テスタによって二次電池の内部抵抗を測定した。
最高温度(℃)を調べる際には、正極20および負極30に熱電対を接続し、上記した内部短絡試験を行いながら温度を測定し、その最大値を求めた。
表1に示したように、内周側負極活物質層32の表面の一部(巻回層数=1層)に絶縁性の被膜34を形成した実施例1では、それを形成しなかった比較例1−1よりも限界電圧が上昇した。この限界電圧の上昇は、内周側負極活物質層32の表面の一部(巻回層数=1層)に導電性の被膜を形成した比較例1−2、内周側負極活物質層32の表面の一部(巻回層数=1層未満)に絶縁性の被膜34を形成した比較例1−3、あるいは内周側負極活物質層32の表面の全部(巻回層数=19層)に絶縁性の被膜34を形成した比較例1−4と比較した場合においても、同様であった。
この場合には、被膜の有無や、その導電性の有無に伴い、実施例1および比較例1−1〜1−4の間において表面抵抗等に差が生じた。詳細には、表面抵抗および直流抵抗は、比較例1−1よりも比較例1−2において高くなり、さらに実施例1および比較例1−3,1−4において高くなった。また、降下電圧および最高温度は、比較例1−1よりも比較例1−2において低くなり、さらに実施例1および比較例1−4において低くなった。
これらの結果から、以下のことが推察される。降下電圧=直流抵抗×短絡電流であることから、直流抵抗が低い比較例1−1では、実施例1等よりも降下電圧が低くなるはずである。しかしながら、比較例1−1では、実施例1等よりも降下電圧が高くなった。この原因は、比較例1−1では、直流抵抗が低くなる一方で、短絡電流が高くなっているからであると考えられる。このため、比較例1−1では、発熱量=(短絡電流)2 ×直流抵抗であることから、発熱量(短絡反応熱量)が大きくなる。このことは、最高温度の違いに明確に現れている。すなわち、被膜が設けられていない比較例1−1や、被膜が十分な絶縁性を発揮していない比較例1−2では、最高温度が700℃以上に達し、異常過熱に至っている。これに対して、被膜が十分な絶縁性を発揮している実施例1および比較例1−4では、最高温度が100℃程度に抑えられ、異常過熱に至っていない。
なお、内周側負極活物質層32の表面の一部(巻回層数=1層未満)に絶縁性の被膜34が設けられている比較例1−3では、被膜34の形成範囲内で内部短絡試験を行った場合には、実施例1および比較例1−4と同様に内部短絡しなかったが、その形成範囲外で内部短絡試験を行った場合には、当然ながら、比較例1−1と同様に内部短絡した。
これらのことから、内周側負極活物質層32の表面のうち、対向領域10Zのうちの最外周端から1周以上全周未満の範囲に絶縁性の被膜34を設けることにより、内部短絡に起因する不具合の発生が防止されることが確認された。
(実施例2−1〜2−4)
塗布長さ(巻回層数)を12mm(1層:実施例2−1)、86mm(5層:実施例2−2)、229mm(10層:実施例2−3)、あるいは430mm(15層:実施例2−4)としたことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
塗布長さ(巻回層数)を12mm(1層:実施例2−1)、86mm(5層:実施例2−2)、229mm(10層:実施例2−3)、あるいは430mm(15層:実施例2−4)としたことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
(比較例2)
塗布長さ(巻回層数)を625mm(19層)とし、内周側負極活物質層32の表面の全部に被膜34を形成したことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
塗布長さ(巻回層数)を625mm(19層)とし、内周側負極活物質層32の表面の全部に被膜34を形成したことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−4および比較例2の二次電池について限界電圧および放電容量を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
放電容量(mAh/g)は、電池電圧が4.2Vになるまで充電したのち、電池電圧が2.5Vになるまで放電し、その時の放電容量から算出した。なお、放電容量を調べる際の条件は、以降の実施例についても同様である。
表2に示したように、限界電圧は、被膜34の形成範囲が内周側負極活物質層32の表面の一部である実施例2−1〜2−4と、その形成範囲が内周側負極活物質層32の表面の全部である比較例2との間において、塗布長さ(巻回層数)に依存せずに一致した。これに対して、放電容量は、塗布長さが長くなるにしたがって低下し、比較例2よりも実施例2−1〜2−4において大幅に高くなった。この場合には、巻回層数が5層以下であると、それを越える場合よりも放電容量がより高くなる傾向を示した。
これらのことから、内周側負極活物質層32の表面のうち、対向領域10Zのうちの最外周端から1周以上全周未満の範囲に絶縁性の被膜34を設ける場合には、その表面の一部に被膜34を設けることにより、放電容量が高くなることが確認された。
(実施例3−1,3−2)
無機酸化物のメジアン径を20μm(実施例3−1)あるいは600μm(実施例3−2)としたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
無機酸化物のメジアン径を20μm(実施例3−1)あるいは600μm(実施例3−2)としたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
(実施例4−1,4−2)
無機酸化物として酸化チタン(TiO2 :実施例4−1)あるいは酸化ジルコニウム(ZrO2 :実施例4−2)を用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
無機酸化物として酸化チタン(TiO2 :実施例4−1)あるいは酸化ジルコニウム(ZrO2 :実施例4−2)を用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
これらの実施例3−1,3−2,4−1,4−2の二次電池について限界電圧および放電容量を調べたところ、表3および表4に示した結果が得られた。
表3および表4に示したように、無機酸化物のメジアン径を変更した実施例3−1,3−2や、無機酸化物の種類を変更した実施例4−1,4−2においても、実施例2−1と同様に、限界電圧が比較例2と同等になり、放電容量が比較例2よりも高くなった。
これらのことから、内周側負極活物質層32の表面の一部(対向領域10Zのうちの最外周端から1周以上全周未満の範囲)に絶縁性の被膜34を設けた場合には、無機酸化物のメジアン径や種類を変更した場合においても、内部短絡に起因する不具合の発生が防止されると共に、放電容量が高くなることが確認された。
なお、ここでは、負極30が正極20よりも外周側に位置するように巻回電極体10を構成した場合の結果だけを示しており、正極20が負極30よりも外周側に位置するように巻回電極体10を構成した場合の結果を示していない。しかしながら、図16等を参照して説明したように、正極20と負極30との位置関係(内周側あるいは外周側)を逆転させた場合においても同様の作用および効果が得られることは論理的に明らかである。よって、正極20を外周側にした場合においても負極30を外周側にした場合と同様の結果が得られることは、明らかである。
上記した表1〜表4の結果から明らかなように、本発明の二次電池では、正極と、セパレータと、負極とを含み、これらが巻回および積層された構造を有する巻回電極体を備える場合に、セパレータを介して対向する正極活物質層および負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部(正極活物質層と負極活物質層とがセパレータを介して対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲)に絶縁性の被膜を設けることにより、無機酸化物のメジアン径や種類に依存せずに、電池容量が確保されつつ安全性が向上することが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電池の電解質として、電解液を用いる場合について説明したが、他の種類の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質や、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したものや、他の無機化合物と電解液とを混合したものや、それらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電池として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の電池は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量を正極の放電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量とリチウムの析出および溶解に基づく容量とを含み、かつ、それらの容量の和によって表される二次電池についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、長周期型周期表(IUPAC(国際純正・応用化学連合)が提唱する無機化学命名法改訂版によって表されるもの)におけるナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。この場合においても、上記実施の形態で説明した負極材料を用いることが可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電池について、電池構造が円筒型である場合を例に挙げて説明したが、本発明の電池は、角型、ラミネートフィルム型、コイン型あるいはボタン型などの他の電池構造を有する場合についても、同様に適用可能である。
1…電池缶、2,3…絶縁板、4…電池蓋、5…安全弁機構、5A…ディスク板、6…熱感抵抗素子、7…ガスケット、8…正極リード、9…負極リード、10…巻回電極体、20…正極、21…正極集電体、22…内周側正極活物質層、23…外周側正極活物質層、22NE,22TE,23NE,23TE,32NE,32TE,33NE,33TE…端部、24,25,34〜37…被膜、30…負極、30X…被覆領域、30Y…露出領域、31…負極集電体、32…内周側負極活物質層、33…外周側負極活物質層、41…セパレータ、42…補助セパレータ、50…センターピン、C…巻回軸、L…基準線、N…釘。
Claims (16)
- 正極集電体に内周側正極活物質層および外周側正極活物質層が設けられた正極と、セパレータと、負極集電体に内周側負極活物質層および外周側負極活物質層が設けられた負極とを含み、これらが外周側より前記負極、前記セパレータおよび前記正極の順に位置するように積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備え、
前記外周側正極活物質層および前記内周側負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の被膜を有し、
前記被膜は、前記外周側正極活物質層と前記内周側負極活物質層とが前記セパレータを介して対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている
ことを特徴とする電池。 - 前記被膜は、前記外周側正極活物質層と前記内周側負極活物質層との対向領域のうち、最外周端から1周の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記被膜は、前記内周側負極活物質層に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記被膜は、無機酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記無機酸化物は、酸化アルミニウム(Al2 O3 )、酸化チタン(TiO2 )あるいは酸化ジルコニウム(ZrO2 )であることを特徴とする請求項4記載の電池。
- 前記内周側正極活物質層および前記外周側負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の他の被膜を有し、
前記他の被膜は、前記内周側正極活物質層と前記外周側負極活物質層とが対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電池。 - 前記内周側正極活物質層および前記外周側正極活物質層は、電極反応物質と同種類の金属元素と遷移金属元素とを含む複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記内周側負極活物質層および前記外周側正極活物質層は、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも一方を有する材料を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
- 正極集電体に内周側正極活物質層および外周側正極活物質層が設けられた正極と、セパレータと、負極集電体に内周側負極活物質層および外周側負極活物質層が設けられた負極とを含み、これらが外周側より前記正極、前記セパレータおよび前記負極の順に位置するように積層および巻回された構造を有する巻回電極体を備え、
前記内周側正極活物質層および前記外周側負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の被膜を有し、
前記被膜は、前記内周側正極活物質層と前記外周側負極活物質層とが前記セパレータを介して対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている
ことを特徴とする電池。 - 前記被膜は、前記内周側正極活物質層と前記外周側負極活物質層との対向領域のうち、最外周端から1周の範囲に設けられていることを特徴とする請求項9記載の電池。
- 前記被膜は、前記外周側負極活物質層に設けられていることを特徴とする請求項9記載の電池。
- 前記被膜は、無機酸化物を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
- 前記無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化チタンあるいは酸化ジルコニウムであることを特徴とする請求項12記載の電池。
- 前記外周側正極活物質層および前記内周側負極活物質層のうちの少なくとも一方の表面の一部に、絶縁性の他の被膜を有し、
前記他の被膜は、前記外周側正極活物質層と前記内周側負極活物質層とが対向する領域のうち、最外周端から1周以上全周未満の範囲に設けられている
ことを特徴とする請求項9記載の電池。 - 前記内周側正極活物質層および前記外周側正極活物質層は、電極反応物質と同種類の金属元素と遷移金属元素とを含む複合酸化物を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
- 前記内周側負極活物質層および前記外周側正極活物質層は、ケイ素およびスズのうちの少なくとも一方を有する材料を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
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