JP2014003959A - 耐酸性液状栄養組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 蛋白質、糖質、乳化剤、油脂、及び水を含む液状栄養組成物であって、
蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)及び油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%であり、
蛋白質(A)として、コラーゲンペプチド、及び分解度が23〜35である乳ペプチドを少なくとも含有し、
糖質(B)として、数平均分子量が400〜900である澱粉分解物を少なくとも含有し、
乳化剤(C)として、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル並びに(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドを少なくとも含有し、
油脂(D)として、融点が−30℃〜45℃である油脂を少なくとも含有し、
pHが2.0〜5.0である耐酸性液状栄養組成物。
【選択図】なし
Description
蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)及び油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%であり、
蛋白質(A)として、コラーゲンペプチド、及び分解度が23〜35である乳ペプチドを少なくとも含有し、
糖質(B)として、数平均分子量が400〜900である澱粉分解物を少なくとも含有し、
乳化剤(C)として、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル並びに(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドを少なくとも含有し、
油脂(D)として、融点が−30℃〜45℃である油脂を少なくとも含有し、
pHが2.0〜5.0である耐酸性液状栄養組成物。
当該食物繊維(E)が、難消化性デキストリン、イヌリン、及びポリデキストロースからなる群より選ばれる、1種又は2種以上である、前記の<1>〜<7>のいずれかに記載の耐酸性液状栄養組成物。
本発明で蛋白質(A)として必須のコラーゲンペプチド及び分解度23〜35である乳ペプチドは、前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルとの疎水性相互作用による複合体を形成せず、前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルが乳化界面に吸着することを妨げない特徴を持つ。コラーゲンペプチドのアミノ酸組成は、疎水性アミノ酸が非常に少ないため、複合体を形成しない特徴を持つ。分解度23〜35である乳ペプチドは、加水分解前に有していた疎水性領域が充分に分解されているため、複合体を形成しない性質を持つ。また、分解度23〜35である乳ペプチドは、加水分解前に有していた乳化機能が残存していないため、乳化界面で前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルと競合しない特徴も持ち合わせる。さらには、後述する局所的濃度勾配による乳化粒子の凝集を引き起こさないメリットを持つ。
本発明で必須の数平均分子量400〜900の澱粉分解物もまた、前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルとの疎水性相互作用による複合体を形成せず、乳化機能を妨げない特徴を持つ。加水分解されていない澱粉はその分子が螺旋構造をとり、その螺旋で形成される内側は疎水性となるため、前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分が螺旋の内側に取り込まれる。しかし、平均分子量が小さい澱粉分解物は、前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルが取り込まれるほどの螺旋構造ができにくい性質を持つ。またペプチドとともに分子の占有体積が小さい成分は、局所的濃度勾配による乳化粒子の凝集を起こさないメリットも持つ。局所的濃度勾配とは、複数の乳化粒子間の距離が偶発的に近くなるとその間のスペースが狭くなり、占有体積が大きな分子は、その間の水相領域から必然的に排除されてできる濃度勾配を指す。その濃度勾配による浸透圧を解消するために、水分子も乳化粒子間から排除され濃度勾配が回復するが、水分子が排除されると2つの乳化粒子が接近し接触することになる。この現象が進めば、乳化粒子の凝集、つまり乳化不安定化に繋がる。
前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤の中でも親水性に大きく偏った性質を持ち、乳化界面でも比較的水相部に近い位置に偏在する。よって、疎水性に偏った性質を持つ乳化剤(モノグリセリド)を併用することが望まれる。前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルと前記(ii)モノグリセリドとの組み合わせによれば、乳化剤を均一に乳化界面に存在させることができる。また、本発明は栄養組成上の要求より多量の澱粉分解物を配合するため、わずかでも残存する澱粉分解物の螺旋構造による疎水性部分が無視できなくなる。前記(ii)モノグリセリドは、前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルよりも優先して澱粉分解物と複合体を形成するので、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが充分に乳化界面に吸着できるようになる。
本発明で必須の、融点が−30℃〜45℃である油脂とは、融点が低い油脂を意味している。融点が低いことは油脂としての粘性が低いことといえるが、粘性が低いと乳化粒子を微細に分断しやすいメリットがある。融点が低い油脂の中でも、特に親水性の油脂が好ましく、親水性に大きく偏った前記(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルとの相性が良く、良好な乳化構造が得られる。親水性の油脂としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましいものとして挙げられる。
本発明の液状栄養組成物は、流動食、濃厚流動食、総合栄養食などとよばれる、液状で流動性のある栄養組成物が代表的なものであるが、これに限られるものではない。基本組成としては、水、蛋白質、脂質、及び糖質から構成され、通常は更に、食物繊維、ビタミン、及びミネラルが含まれる。そのバランスは、厚生労働省において策定された「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」などを参考にして、それぞれの目的に則して設定される。ただし、「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」は健常人を対象に設定されているため、1日あたりのエネルギー必要量は1350kcal〜2750kcalであるが、流動食を使用する人は寝たきりであり、基礎代謝量が低下している場合が多く、1日の必要熱量は800kcal〜1500kcalで設定されることが多い。
蛋白質(A)は栄養学的にいう蛋白質であり、ペプチド及び遊離アミノ酸を含む。蛋白質(A)の配合量は液状栄養組成物全体の2〜11質量%である。2質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、11質量%より多いと栄養学的に腎臓に負担をかけ、腎機能が衰えた使用者への悪影響が大きくなるばかりか、粘度が大きくなりすぎチューブを流下しにくくなる。コラーゲンペプチド及び分解度23〜35である乳ペプチドの含有量は、蛋白質(A)全体の50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることが特に好ましい。なお、蛋白質(A)は、実質的にペプチド及び必須アミノ酸としての遊離アミノ酸のみから構成されることが望ましい。アミノ酸としては例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、及びL−ヒスチジンなどが挙げられる。
本発明は、コラーゲンペプチドを用いることが必須である。コラーゲンペプチドはゼラチンの、酸、アルカリ、又は酵素による分解物であり、その重量平均分子量は2000〜50000が好ましく、最も好ましくは4000〜20000である。2000よりも小さいと遊離アミノ酸や低分子のペプチドにより浸透圧が高くなるおそれがあり、50000よりも大きいとゲル化性が充分に失われず、液状栄養組成物のゲル化又は高粘度化を生じるおそれがある。コラーゲンペプチドは容易に溶解し、酸性領域で熱殺菌を経る場合においても不溶化しにくいという利点を持つ。コラーゲンペプチドの由来としては、牛や豚や魚や鳥などの骨や皮や鱗や鶏冠などが挙げられる。
本発明は、分解度が23〜35である乳ペプチドを用いることが必須である。好ましくは乳ペプチドの分解度は23〜28である。分解度が35より大きいと浸透圧が上昇し不適である。逆に23より小さいと、加水分解前の蛋白質の性質(酸性で不溶又は加熱凝集しやすい性質)が残存し、ペプチド自身が不溶化し白濁沈澱する。また23より小さいと、微細な粒径が得られず乳化安定性が低下する。
本発明の乳ペプチドの分解度の測定方法は、一般的に用いられるOPA(o-Phthalaldehyde)法などを用いることができる。
前述のようにコラーゲンペプチドなどのアミノ酸スコアの低いペプチドを使用する場合は、最終製品として一定のアミノ酸スコアを保つために遊離のアミノ酸を配合することが好ましい。例えば、ホエイペプチドとコラーゲンペプチドを1:1で混合した場合は、L−トリプトファン、L−ロイシン、L−メチオニン又はL−システイン、L−ヒスチジン、L−バリン、及び、L−フェニルアラニン又はL−チロシンの配合が好ましい。アミノ酸スコアを90〜100にするためには、この中でもL−フェニルアラニン又はL−チロシンを多量に配合しなければならないが、酸性領域では、L−フェニルアラニンのほうが溶解性や保存安定性の観点から好ましい。
本発明の蛋白質(A)は、エネルギー比率で8〜32%が好ましく、より好ましくは12〜24%、最も好ましくは12〜20%である。臨床栄養的には、PEM(Protein Energy Malnutrition;蛋白質・エネルギー低栄養状態)と呼ばれる栄養状態を起こさないため、またこの栄養状態から回復させるため、単位容積又は単位熱量あたりに含まれる蛋白質成分の多いことが望まれている。PEM状態にあると、様々な疾病や術後の回復が遅れ、最近では、褥瘡を発症しやすく治癒し難い問題が指摘されている。しかし、蛋白質成分が多い場合には、蛋白質の老廃物を処理する腎臓に負担がかかり、特に腎臓の機能が低下している高齢者においては、血中尿素窒素が上昇するため好ましくない。また、蛋白質濃度が高いと、粘度や浸透圧が上昇したりする。蛋白質濃度が低い場合は、一定の熱量を確保するため相対的に糖質又は油脂を増量することが必要となり、糖質を増量した場合は後述するような食後血糖値の問題が、脂質を増量した場合は高脂血症などの問題が生じる。
本発明の蛋白質(A)の含有量は、ケルダール法などによって窒素含量を測定することによって算出される。よって、蛋白質の消化態である遊離アミノ酸であっても、蛋白質分解物(ペプチド)であっても、栄養学的には蛋白質に含まれる。栄養補給を目的とするために、栄養学的に良質であることが望ましい。例えば、アミノ酸スコアという指標がある。本発明の栄養組成物は、使用する蛋白質のアミノ酸スコアは限定しないが、栄養組成物としては、少なくとも70以上、好ましくは80以上、最も好ましくは100である。
本発明の糖質(B)は、数平均分子量400〜900の澱粉分解物を含有することが必須である。糖質(B)の配合量は液状栄養組成物全体の10〜35質量%であり、10質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、35質量%より多いと浸透圧や粘度が高くなり過ぎる。糖質(B)の配合量は、好ましくは15〜33質量%、より好ましくは20〜30質量%である。糖質(B)のうちの数平均分子量400〜900の澱粉分解物の割合は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。糖質(B)の全量を数平均分子量400〜900の澱粉分解物とすることもできる。糖質中の数平均分子量400〜900の澱粉分解物の割合が少ない場合は、良好なチューブ流動性や好ましい乳化安定性が得られ難い。
本発明の糖質(B)として用いられる澱粉分解物の数平均分子量は400〜900であり、好ましくは500〜900である。400より小さいと浸透圧が上昇し、逆に900より大きいと、乳化粒径の粗大化を引き起こし、乳化安定性に悪影響を及ぼす。澱粉分解物とは分子量によって、デキストリン、マルトデキストリン、水飴などと呼ばれるものであり、馬鈴薯、コーン、タピオカ、小麦などから得られる澱粉を、酸や酵素などで分解したものである。
本発明の糖質(B)は、エネルギー比率で33〜84%が好ましく、より好ましくは51〜78%、最も好ましくは60〜76%である。臨床栄養的には、糖質は比較的速やかにエネルギーに変換される源であるので、エネルギー源としては好ましいが、多量に配合すると食後血糖値の上昇を誘発し、糖尿病などの疾病に悪い影響を与える。また糖質濃度が高いと、粘度や浸透圧が高くなるばかりか、澱粉分解物の濃度が高い場合は、前述した局所的濃度勾配による乳化不安定化や、澱粉分解物による乳化剤の取り込みにより、乳化安定性に与える悪い影響が大きくなる。糖質濃度が低い場合は、一定の熱量を確保するため、相対的に蛋白質又は油脂を増量することが必要となり、蛋白質を増量した場合は前述したような血中尿素窒素の問題や、脂質を増量した場合は後述するように高脂血症などの問題が生じる。
本発明の乳化剤(C)は、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル、並びに(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリド を含有することが必須である。これら乳化剤(i)及び(ii)の合計量は、乳化剤(C)全体の70質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることが特に好ましい。乳化剤(C)の全量を前記(i)及び前記(ii)とすることもできる。前記(i)及び(ii)の合計量が、乳化剤(C)全体の70質量%より少ないと、微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られない。
本発明は、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが必須である。ポリグリセリンの平均重合度はより好ましくは10〜20である。ポリグリセリンの平均重合度が6より小さいと、微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られない。またエステルの原料とする脂肪酸は、パルミチン酸やステアリン酸などの長鎖飽和脂肪酸では微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られず、ラウリン酸などの中鎖脂肪酸では泡立ちが強くなるため製造や使用する場面で不都合となる。そのため、ミリスチン酸及び/又はオレイン酸を主たる脂肪酸とすることが必須である。また泡立ちについては、ミリスチン酸よりもオレイン酸のほうが良好である。ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の割合では、オレイン酸及び/又はミリスチン酸の合計量が50質量%以上、より好ましくは70%重量以上、最も好ましくは80質量%以上である。ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるオレイン酸及び/又はミリスチン酸の合計量の割合が50質量%より少ないと、微細な乳化粒子と乳化安定性が得られない。
本発明は、主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドを用いることが必須である。重合度2以上のグリセリンでは微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られない。またエステルの原料とする脂肪酸は、主として炭素数12〜22の飽和脂肪酸が使用される。そのような飽和脂肪酸としては、パルミチン酸及びステアリン酸等が好ましいものとして挙げられる。オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びパルミトオレイン酸などの不飽和脂肪酸では、微細な乳化粒子と乳化安定性が得られない。この(ii)モノグリセリドにおける脂肪酸の割合は、炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸が50質量%以上、より好ましくは70%重量以上、最も好ましくは80質量%以上である。モノグリセリドにおける炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸が50質量%より少ないと、微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られない。
本発明の油脂(D)は、融点が−30℃〜45℃である油脂を含有することが必須である。融点が−30℃〜45℃である油脂は、油脂(D)全体の70質量%以上とするのが好ましく、90質量%以上とするのが特に好ましい。油脂(D)の全量を融点が−30℃〜45℃である油脂とすることもできる。融点が−30℃〜45℃である油脂が、油脂(D)全体の70質量%より少ないと、微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られない。
本発明で油脂(D)として使用される融点が−30℃〜45℃である油脂は、融点が30℃以下である油脂がより好ましく、融点が10℃以下である油脂が特に好ましく、融点が10℃以下である特に中鎖脂肪やMCTなどとも呼ばれる中鎖脂肪酸トリグリセリドが最も好ましい。融点が45℃より高い油脂では、微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られない。MCTは、栄養学的にみても消化機能が衰えた患者や高齢者においても効率よく吸収され、またエネルギーに速やかに変換される特徴があり、望ましい。融点が−30℃〜45℃である油脂としては、例えば、大豆油、ナタネ油、綿実油、コメ油、コーン油、ゴマ油、落花生油、ヒマワリ油、サフラワー油、椿油、オリーブ油、ヤシ油、一部のパーム油、パーム核油、カカオ脂、豚脂、牛脂、及び魚油などが挙げられる。なお、融点は、常圧における融点を示し、示差走査熱量測定法(DSC)などにより測定することができる。
本発明の油脂(D)は、エネルギー比率で8〜35%が好ましく、より好ましくは10〜25%、最も好ましくは12〜20%である。臨床栄養的には、油脂は重量あたりに含まれる熱量が蛋白質や糖質と比べ高い方が好ましいが、多量に配合すると血清脂質濃度の上昇を誘発し、動脈硬化症などの疾病に悪い影響を与える。油脂濃度が低い場合には、一定の熱量を確保するため、相対的に蛋白質もしくは糖質を増量することが必要となり、蛋白質を増量した場合は前述したような血中尿素窒素の問題や、糖質を増量した場合には前述した食後血糖値の問題が生じる。
本発明の油脂(D)の含有量は、エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液法、酸分解法、レーゼゴットリーブ法、ゲルベル法などによって測定されるが、極性の高い脂質も充分に回収するためには、クロロホルム・メタノール混液法及びレーゼゴットリーブ法が好ましく、これらの測定法であれば、測定値はほぼ同値が得られる。
本発明の食物繊維(E)は、栄養組成物の生理効果を高めるため、本発明の目的を逸脱しない範囲で一般に食用として利用されているものを使用してもよい。食物繊維としては例えば、タマリンドシードガム、グァーガム、グァーガム酵素分解物、小麦胚芽、難消化性デキストリン、大豆食物繊維、プルラン、アラビアガム、難消化性デキストリン、ビートファイバー、低分子化アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、サイリウム種皮、セルロース、ポリデキストロース、コーンファイバー、及び小麦ふすまなどが挙げられる。ただし、本発明の目的である長期の安定性を確保するためには水溶性食物繊維が望ましく、その中でも難消化性デキストリン、イヌリン、及びポリデキストロースにおいて、微細な乳化粒子が得られやすい。
本発明の蛋白質(A)は、実質的にペプチド及びアミノ酸のみからなることが好ましい。また、アミノ酸はアミノ酸スコアを高くするために補助的に添加されるものであるため、遊離アミノ酸として配合されることになる。そのため、ペプチド及びアミノ酸の配合量は蛋白質(A)の配合量と同等で栄養組成物全体の2〜11質量%であり、好ましくは3〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%である。2質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、11質量%より多いと腎臓等への負担が増し、前述したように栄養学的な不利益が大きくなるばかりか浸透圧が高くなる。前述のように、コラーゲンペプチドは容易に溶解し、酸性領域でミネラルを含み、熱殺菌を経る場合においても安定的に溶解する有用性がある一方で、栄養学的には良質でなくアミノ酸スコアが0であることから、コラーゲンペプチドの比率を大きくすることは好ましくない。よって栄養組成物として一定のアミノ酸スコアを保つためには、乳ペプチドなどのアミノ酸スコアが良好なペプチドや遊離のアミノ酸と併用することが必要である。本発明においては、アミノ酸スコアが良好なペプチドとして、前述のように、分解度が23〜35である乳ペプチドを含む必要がある。コラーゲンペプチドと分解度が23〜35である乳ペプチドの比率は、5:1〜1:5が好ましい。より好ましくは3:1〜1:3であり、最も好ましくは2:1〜1:2である。コラーゲンペプチドの割合が多いと、アミノ酸スコアを補うための遊離アミノ酸により浸透圧が高くなり、分解度が23〜35である乳ペプチドの割合が多いと、微細な乳化粒子及び乳化安定性が得られなくなる。なお、ここで、分解度が23〜35である乳ペプチドは、その一部を別のアミノ酸スコアが良好なペプチドに置き換えることができる。アミノ酸スコアが良好なペプチドとは、アミノ酸スコア50以上が望ましい。より好ましくは80以上であり、最も好ましくは100以上である。
本発明の乳化剤(C)のうち、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドと、の質量比率は、99:1〜25:75が好ましく、より好ましくは90:10〜35:65、最も好ましくは75:25〜40:60であり、微細な乳化粒子と乳化安定性が得られやすい。
本発明において小さい乳化粒径を得るためには、油脂(D)と乳化剤(C)との質量比率が重要であり、1:6〜3:1が好ましく、より好ましくは1:4〜1.7:1、最も好ましくは1:3〜1.2:1である。油脂が多い場合は乳化剤特有の味が抑えられ、乳化剤が多い場合は微細な乳化粒子を得ることができる。
本発明の栄養組成物は、上記の必須成分以外に、ミネラル、ビタミン、酸味料、高甘味度甘味料、果汁、香料、色素を使用してもよい。
本発明の栄養組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、及びヨウ素などのミネラルを含むことができる。ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの提供源は、塩化物、水酸化物、リン酸塩、縮合リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、及び有機酸塩などが挙げられるが、本発明のpH範囲において水溶性であることが望ましい。これらのミネラル供給源が難溶性若しくは不溶性の場合は、ミネラルの沈降物を発生しやすくなり、分散剤などで液中に分散させた場合でも、安定性の低下が起こり好ましくない。鉄はクエン酸第一鉄Naやピロリン酸第二鉄、亜鉛や銅はグルコン酸塩、また、鉄、亜鉛、銅、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、及びヨウ素は、酵母由来のものが用いられる。
本発明の栄養組成物は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸Ca、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、及びビオチンなどのビタミンを含むことができる。
本発明においては、液状栄養組成物を予め酸性としておくために酸性成分を用いることができる。食品で用いられる種々の酸性成分として、リン酸、塩酸、硫酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、及び乳酸などがある。所望のpHとした場合の浸透圧や、製造上の取扱いの安全性を加味すると、クエン酸、酒石酸、及びフマル酸が好ましい。なお、本発明の栄養組成物は、ペプチド、アミノ酸、糖質、ミネラル、及びビタミンなど、通常の飲料よりも非常に多い原材料の種類と量を配合するため、pH緩衝作用が顕著に強く、多量の酸性成分を添加する必要がある。
本発明において、静菌性を目的として液状栄養組成物を予め酸性とする場合は、pH2.0〜5.0である。pH2.0より小さくするには非常に多くの量の酸性成分が必要となり過剰品質となる。pH5.0より大きいと静菌性の効果が得られなくなる。pH4.6以下であると殺菌条件を緩和することが可能であり、含有成分の熱変性の防止及び殺菌コストの低減などによる経済上のメリットが得られることから、pH3.0〜4.6とすることが好ましい。
本発明の栄養組成物は、糖質として甘味度が15〜30程度の澱粉分解物が好ましいことから、全体の甘味が少なくなりやすい。高甘味度甘味料で甘味を補うことができる。高甘味度甘味料として、例えば、ネオテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、及びソーマチンが好ましいものとして挙げられる。さらに本発明に特有のペプチド、アミノ酸、ビタミン、及びミネラルからくる総合的な苦味やえぐ味のマスキングを目的とすると、ネオテーム、スクラロース、ステビア、及びソーマチンが好ましく、中でもネオテーム及びスクラロースが最も好ましい。一方、高甘味度甘味料であるアスパルテームは熱や酸に弱いため好ましくない。
本発明の液状栄養組成物の熱量は流動食1mlあたり1.2kcal以上が好ましく、より好ましくは1.4kcal以上、最も好ましくは1.6kcal以上である。臨床栄養的には、単位体積あたりの熱量を多くすることは、投与時間の短縮だけでなく、肺炎の原因として問題となっている胃食道逆流を誘発する胃への容量負荷が少ない利点がある。更には、単位容積あたりに含まれる水が少ないため、摂取水分を制限する必要がある患者にも利便性が高いなど、付加価値の高い流動食として評価されている。
本発明の栄養組成物は、調合工程、均質化工程、充填工程、及び殺菌工程を行うことにより製造することができる。
調合工程は水にそれぞれの原材料を溶解する工程であり、タンクの上部から原材料を投入しプロペラ攪拌により溶解させるか、溶けにくい原材料の場合は高速攪拌機もしくはパウブレンダーのような溶解ポンプで溶解させる。ただしモノグリセリドは融点が高いため、事前に油脂に分散させ70℃以上の温度で融解させておく必要がある。それぞれの原材料を溶解する工程の水温は、25℃〜80℃が好ましく、より好ましくは40℃〜75℃、最も好ましくは50〜70℃である。水温が低すぎると原材料が効率的に溶解しないばかりか、そのあとの均質化工程に送液する際に加温工程がない場合には、均質化機で乳化粒子が効率的に微細化されない。また水温が高すぎると原材料は効率的に溶解できるものの、ビタミンや魚油などの熱分解しやすい成分に劣化が起こり、栄養成分などの品質において好ましくない影響がでる。
均質化工程は、乳化粒子の微細化を行うために、高速ホモミキサー、マントンゴーリン式ホモジナイザー(低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー)、マイクロフルイダイザーなどが用いられるが、均質化能力や処理流量や製造コストから、高圧ホモジナイザーが好ましく用いられる。均質化圧力は10MPa〜150MPaが好ましく、より好ましくは30MPa〜100MPa、最も好ましくは40MPa〜80MPaである。しかし、均質化圧力を上げるよりも均質化の処理回数を増やす方が、本発明の栄養組成物には有効である。均質化の処理回数は、2回以上が好ましく、より好ましくは3回以上、最も好ましくは4回以上である。
殺菌工程は、ボイル殺菌、レトルト殺菌、及びUHT殺菌などの加熱殺菌が用いられる。pHが4.6以下の場合は90℃15分などのボイル殺菌が用いられ、簡易な装置での殺菌が可能である。しかし、栄養成分の劣化を考慮するとUHT殺菌が好ましい。UHT殺菌には直接方式と間接方式があり、間接方式にはプレート式とチューブラー式がある。直接方式は風味や栄養成分の劣化に対し特に効果を発揮するが、乳化粒子の粗大化が起き乳化安定性が低下するので、UHT殺菌間接方式が最も好ましい。pHが4.6以下の場合はUHT殺菌では、110℃1〜30秒などの殺菌条件が可能であるが、好熱好酸菌を配慮し140℃1〜10秒の処理をすることが好ましい。
充填工程は、ボイル殺菌やレトルト殺菌の場合は殺菌前に密封容器に充填し、UHT殺菌の場合は殺菌後に無菌的に密封容器に充填する。密封容器は、ボイル殺菌やレトルト殺菌の場合は、缶、アルミパウチ、及びソフトバッグ容器などの軟包材が挙げられ、UHT殺菌の場合はテトラパックなどが挙げられる。本発明の栄養組成物の酸化を抑制するために、ソフトバッグ容器などの軟包材の場合は、ポリ塩化ビニリデンコート、酸化アルミ(アルミナ)系透明蒸着、及びシリカ系透明蒸着フィルムが好ましい。またテトラパックの場合はストリップテープからの酸素透過があるため、MPMストリップテープよりもMSEストリップテープが好ましい。
本発明の栄養組成物の熱量は、栄養組成物に含まれる蛋白質、脂質、糖質、食物繊維から算出されるものである。蛋白質、脂質、糖質の算出方法は、Atwaterのエネルギー換算係数を用いた。食物繊維については、厚生労働省の平成15年2月17日付の通知に従って計算した。
本発明の栄養組成物のpHの好ましい範囲は前述したとおりである。この測定は、製造1日後に栄養組成物を20〜30℃に調温し、(株)堀場製作所製pHメーターM−13により測定した。
本発明の栄養組成物の粘度は、良好なチューブ流動性とするため低い粘度とすることが好ましく、品温が20℃において15mPa・s以下が好ましく、より好ましくは10mPa・s以下である。本発明の栄養組成物の粘度は、製造1日後にブルックフィールドエンジニアリングラボラトリーズ社製B型粘度計を使用し、ローターBLアダプター・回転数30で測定した。
本発明の栄養組成物の浸透圧は、浸透圧性下痢などを考慮し低い方が好ましい。200mOsm/kg〜1200mOsm/kgが好ましく、より好ましくは200mOsm/kg〜1000mOsm/kgである。本発明の浸透圧の測定は、製造1日後にアドバンスインストロメンツ社製3D3を用いて測定した。
本発明の栄養組成物の乳化安定性は、主に脂質粒子が均一に分散している狭義の乳化を指すが、それだけではなく蛋白質等の凝集がないなど全ての成分が均一に分散している広義の乳化安定性も含む。本発明の乳化安定性の評価は、製造1日後に性状(クリーミングや凝集や沈澱)を目視確認することで評価した。また長期にわたる乳化安定性は、40℃・1ヶ月間の静置保存を行ったあとに性状(クリーミングや凝集や沈澱)を目視確認することで評価した。クリーミングや凝集や沈澱が全くないものは「○」、凝集や沈澱はなくクリーミングはあるが軽く振ると再分散し均一に戻るものは「△」、凝集や沈澱があり軽く振っても再分散せず使用に値しないものは「×」とした。
本発明の栄養組成物の粒径は、主に脂質粒子が分散した乳化粒子径を指すが、それだけでなく蛋白質等の凝集などによる粒子径も含む。乳化安定性と粒径は明確な関係があることが知られており、粒径が小さいほど乳化安定性に優れ、大きいほど不安定であることは、ストークスの法則によって一般的に知られている(食品コロイド入門(西成勝好監訳)幸書房p93)。乳化安定性から判断すると、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.20μm以下、最も好ましくは0.15μm以下である。また、視覚的な透明感の観点から判断しても、乳化安定性と同様小さいほど好ましい。本発明の栄養組成物の粒径は、製造1日後に(株)堀場製作所社製レーザー回折式粒度分布計LA−950を用いて測定した。
総合評価は、以下のようにした。粘度は11〜15mPa・sのものは「△」、15mPa・sより大きいものは「×」とした。浸透圧は1001〜1200mOsm/kgのものは「△」、1200mOsm/kg以上のものは「×」とした。粒径は1μmより大きいものは「×」、0.2〜1μmのものは「△」、乳化安定性は前記のとおりとし、以上の基準において「×」が1つでもあれば総合評価は「×」、「×」が1つもなく「△」が1つでもあれば総合評価は「△」、「×」も「△」もなければ総合評価は「○」とした。
本発明の栄養組成物の代表例を示す。表1および2のように、モノグリセリドであるモノグリセリンステアリン酸エステル0.6質量%、融点−10℃のMCT(構成脂肪酸比;カプリル酸:カプリン酸=8:2)1.7質量%、融点−15℃の精製イワシ油0.1質量%を混合し、80℃に加熱し溶融混合した。その後、前記モノグリセリドと油脂との溶融混合物、重量平均分子量5200のコラーゲンペプチド3.0質量%、分解度27のカゼインペプチド3.0質量%、L−トリプトファン0.1質量%、L−ロイシン0.2質量%、L−メチオニン0.1質量%、L−ヒスチジン0.1質量%、L−バリン0.1質量%、L−フェニルアラニン0.3質量%、数平均分子量560の澱粉分解物(デキストリン)22.0質量%、デカグリセリンモノオレイン酸エステル1.2質量%、難消化性デキストリン1.0質量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1質量%、クエン酸カリウム0.1質量%、塩化カルシウム0.15質量%、硫酸マグネシウム0.25質量%、クエン酸結晶0.55質量%、ブドウ6倍濃縮透明果汁0.5質量%、スクラロース製剤0.05質量%、微量ミネラルミックス0.05質量%、ビタミンミックス0.126質量%、グレープ香料0.1質量%、及びクチナシ赤色素0.1質量%を、総質量2000gとなるように60℃の温水に溶解させた。これを60℃保持のまま、均質化圧70MPaで2回処理した。常温まで冷却したのちに100gずつアルミパウチに密封充填し、90℃15分でボイル殺菌した。
実施例1−1の油脂と乳化剤を表1のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。油脂を融点−10℃のナタネ白絞め油に置き換えた実施例1−2は、実施例1−1と同様の好ましい物性値を示した。一方、乳化剤としてモノグリセリドを含まなかった比較例1は、微細な粒径が得られず、製造1日後の乳化安定性では再分散可能なクリーミングが発生し、40℃1ヶ月後の乳化安定性では再分散しないクリーミングが発生した。このことから、乳化剤(C)は、(i)ポリグリセリン脂肪酸エステルと(ii)モノグリセリドとの組み合わせにより優れた乳化安定性を示すという結論に至った。
実施例1−1の分解度27のカゼインペプチドを表4のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。結果を表5に示す。分解度10の乳ペプチドを含む比較例2−4は、製造1日後に沈澱が生じていた。分解度15〜20の乳ペプチドを含む比較例2−1〜比較例2−3はいずれも、40℃1ヵ月後に沈澱が生じていた。このことから、コラーゲンペプチド及び分解度23以上の乳ペプチドであれば、乳化安定性が向上するという結論に至った。
実施例1−1の澱粉分解物を表6のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表7に示す。数平均分子量342の澱粉分解物(麦芽糖)を含む比較例3−3は、浸透圧が1440mOsm/kgと高かった。数平均分子量が1000〜1900の澱粉分解物を含む比較例3−1〜比較例3−2は、乳化粒子の粒径が著しく大きく乳化安定性に劣っていた。このことから、数平均分子量400〜900の澱粉分解物であれば、優れた物性値を示すという結論に至った。
実施例1−1のデカグリセリンモノオレイン酸エステルを表8のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表9に示す。主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルであれば、微細な粒径が得られ乳化安定性も良好であった。主たる脂肪酸がラウリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はグリセリンの平均重合度が5であるポリグリセリン脂肪酸エステルでは、微細な粒径が得られず、製造1日後の乳化安定性では再分散可能なクリーミングが発生し、40℃1ヶ月後の乳化安定性では再分散しないクリーミングが発生した。グリセリンの平均重合度が4以下であるポリグリセリン脂肪酸エステル、主たる脂肪酸がステアリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤は、均質化直後に油水分離を起こしたため物性分析さえも不可能であった。このことから、ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルであれば、乳化安定性が向上するという結論に至った。
実施例1−1のモノグリセリンステアリン酸エステルを表10のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表11に示す。構成する脂肪酸がステアリン酸、パルミチン酸、又はラウリン酸のような飽和脂肪酸であるモノグリセリドであれば、微細な粒径が得られ乳化安定性も良好であった。構成する脂肪酸がオレイン酸又はリノール酸であるモノグリセリドでは、微細な粒径が得られず、製造1日後の乳化安定性では再分散可能なクリーミングが発生し、40℃1ヵ月後の乳化安定性では再分散しないクリーミングが発生した。このことから、主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドであれば、乳化安定性が向上するという結論に至った。
実施例1−1のデカグリセリンオレイン酸エステルとモノグリセリンステアリン酸エステルの総量1.80質量%を一定とし、その比率を表12のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表13に示す。デカグリセリンオレイン酸エステルに対するモノグリセリンステアリン酸エステルの量が2.5以下であれば、製造1日後の乳化安定性も良好であり、1.4以下であれば、微細な粒径が得られ40℃1ヵ月後の乳化安定性までも良好であった。
実施例1−1のMCT(C8:C10=8:2)と精製イワシ油の総量1.8質量%を、表14のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表14に示す。融点が50℃である油脂は、粒径がやや大きく、製造1日後の乳化安定性で再分散性はあるもののクリーミングが認められ、40℃1ヵ月後の乳化安定性では再分散しないクリーミングが発生した。融点−30℃以上45℃以下である油脂であれば、比較的小さな粒径が得られ40℃1ヵ月後の乳化安定性までも良好であった。特に、融点が10℃以下である油脂であれば、微細な粒径が得られ、40℃1ヵ月後の乳化安定性までも良好であった。
実施例1−1のMCT(構成脂肪酸比;カプリル酸:カプリン酸=8:2)と精製イワシ油の総量1.8質量%を全てMCTに置き換え、MCT1.8質量%に対する乳化剤の質量比率を表16のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表17に示す。油脂:乳化剤の質量比率が1:3〜1.5:1で、粘度や浸透圧も充分低く、微細な粒径が得られ40℃1ヵ月後の乳化安定性までも良好であった。
実施例1−1の難消化性デキストリンを表18のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。その結果を表19に示す。いずれも微細な乳化粒子が得られ、グァーガム分解物以外では製造1日後の乳化安定性も良好であった。実施例9−2および3の製造1日後の乳化安定性で認められたクリーミングは量として非常に多いものだったが、軽度な攪拌で再分散し、使用に値しないレベルには達しなかった。
実施例1−1と同じ配合率で総質量を2000kgとなるように60℃の温水に溶解した。これを60℃保持のまま、均質化圧45MPaで2回処理した。そして一旦10℃まで冷却したあと、UHT殺菌間接方式(チューブラー式)にて142℃2秒で殺菌を行い、その後に更に均質圧25MPaで1回処理し、無菌的に125mlのテトラパックに充填した(表20)。その結果は表21のように、実施例1−1とほぼ同じ品質が得られた。
Claims (8)
- 蛋白質、糖質、乳化剤、油脂、及び水を含む液状栄養組成物であって、
蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)及び油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%であり、
蛋白質(A)として、コラーゲンペプチド、及び分解度が23〜35である乳ペプチドを少なくとも含有し、
糖質(B)として、数平均分子量が400〜900である澱粉分解物を少なくとも含有し、
乳化剤(C)として、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル並びに(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドを少なくとも含有し、
油脂(D)として、融点が−30℃〜45℃である油脂を少なくとも含有し、
pHが2.0〜5.0である耐酸性液状栄養組成物。 - 前記乳化剤(C)において、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドとの含有比率が、1:0.1〜1:2.5である、請求項1に記載の耐酸性液状栄養組成物。
- コラーゲンペプチド及び分解度23〜35である乳ペプチドを蛋白質(A)全体の50質量%以上、数平均分子量400〜900の澱粉分解物を糖質(B)全体の50質量%以上、(i)ポリグリセリンの平均重合度が6〜20であり且つ主たる脂肪酸がオレイン酸及び/又はミリスチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル並びに(ii)主たる脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であるモノグリセリドを乳化剤(C)全体の70質量%以上、融点が−30℃〜45℃である油脂を油脂(D)全体の70質量%以上含む、請求項1又は2に記載の耐酸性液状栄養組成物。
- 油脂(D)と乳化剤(C)との質量比率が1:6〜3:1である、請求項1〜3のいずれかに記載の耐酸性液状栄養組成物。
- 融点が−30℃〜45℃である油脂として中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の耐酸性液状栄養組成物。
- 蛋白質(A)が、コラーゲンペプチド、分解度が23〜35である乳ペプチド、及びアミノ酸からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の耐酸性液状栄養組成物。
- コラーゲンペプチドの重量平均分子量が2000〜50000である、請求項1〜6のいずれかに記載の耐酸性液状栄養組成物。
- さらに食物繊維(E)を0.1〜5質量%含有し、
当該食物繊維(E)が、難消化性デキストリン、イヌリン、及びポリデキストロースからなる群より選ばれる、1種又は2種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の耐酸性液状栄養組成物。
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