以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態に係る電波腕時計1は、衛星が送信する時刻情報を含んだ衛星信号を受信し、当該受信した衛星信号を用いて時刻情報の修正を行う。図1は、本実施形態に係る電波腕時計1の外観を示す平面図であり、図2は、電波腕時計1の内部構成を示す構成ブロック図である。これらの図に示されるように、電波腕時計1は、胴2と、アンテナ10と、受信回路20と、制御回路30と、電源40と、太陽電池41と、発電量検出部43と、駆動機構50と、時刻表示部51と、操作部60と、を含んで構成される。
胴2は、電波腕時計1の外装(時計ケース)であって、図1に示すように、その内部に時刻表示部51を構成する文字板53が配置されている。また、文字板53の表側(指針52が配置されている側)を覆うように風防が胴2に取り付けられており、風防の反対側では、裏蓋が胴2に取り付けられている。風防の材質は、ガラス等の透明な材料であり、非磁性かつ非導電性である。また、胴2及び裏蓋の材質は、特に限定はされないが、本実施形態では金属である。なお、以下では、電波腕時計1の厚さ方向のうち、風防が配置されている側(すなわち、時刻が表示される側)を風防側、裏蓋が配置されている側(風防側の反対側)を裏蓋側という。
アンテナ10は、衛星から送信される衛星信号を受信する。本実施形態では、アンテナ10は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される周波数約1.6GHzの電波を受信するパッチアンテナである。GPSは、衛星測位システムの一種であって、地球の周囲を周回する複数のGPS衛星によって実現されている。これらのGPS衛星は、それぞれ高精度の原子時計を搭載しており、原子時計によって計時された時刻情報を含んだ衛星信号を周期的に送信している。なお、以下では、衛星信号に含まれる時刻情報によって示される時刻を、GPS時刻という。
アンテナ10は、文字板53の裏蓋側に配置されている。また、図1において破線で示すように、アンテナ10は、平面視において略矩形の形状をしており、文字板53の一部と重なるように配置されている。より具体的には、アンテナ10は、文字板53の中心位置(時針52aや分針52bの回転中心)とは重ならないように、文字板53の中心位置に対して一方の側(本実施形態では6時方向の側)にずれた場所に配置されている。
受信回路20は、アンテナ10によって受信された衛星信号を復号して、復号の結果得られる衛星信号の内容を示すビット列(受信データ)を出力する。具体的に、受信回路20は、高周波回路(RF回路)21及びデコード回路22を含んで構成されている。
高周波回路21は、高周波数で動作する集積回路であって、アンテナ10が受信したアナログ信号に対して増幅、検波を行って、ベースバンド信号に変換する。デコード回路22は、ベースバンド処理を行う集積回路であって、高周波回路21が出力するベースバンド信号を復号してGPS衛星から受信したデータの内容を示すビット列を生成し、制御回路30に対して出力する。
制御回路30は、マイクロコンピュータ等であって、演算部31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、RTC(Real Time Clock)34と、モータ駆動回路35と、を含んで構成される。
演算部31は、ROM32に格納されたプログラムに従って各種の情報処理を行う。本実施形態において演算部31が実行する処理の詳細については、後述する。RAM33は、演算部31のワークメモリとして機能し、演算部31の処理対象となるデータが書き込まれる。特に本実施形態では、受信回路20によって受信された衛星信号の内容を表すビット列(受信データ)が、RAM33内のバッファ領域に順次書き込まれる。RTC34は、電波腕時計1内部での計時に使用されるクロック信号を供給する。本実施形態に係る電波腕時計1では、演算部31が、RTC34から供給される信号によって計時された内部時刻を、受信回路20によって受信された衛星信号に基づいて修正して、時刻表示部51に表示すべき時刻(表示時刻)を決定する。さらに、モータ駆動回路35が、この決定された表示時刻に応じて、後述する駆動機構50に含まれるモータを駆動する駆動信号を出力する。これにより、制御回路30によって生成された表示時刻が時刻表示部51に表示される。
電源40は、二次電池等の蓄電デバイスを含んで構成され、太陽電池41によって発電された電力を蓄積する。そして、蓄積された電力を、受信回路20や制御回路30に対して供給する。特に電源40から受信回路20への電力供給路の途中にはスイッチ42が設けられており、このスイッチ42のオン/オフは制御回路30が出力する制御信号によって切り替えられる。すなわち、制御回路30は、スイッチ42のオン/オフを切り替えることで、受信回路20の動作タイミングを制御できる。受信回路20は、スイッチ42を介して電源40から電力が供給されている間だけ動作し、その間にアンテナ10が受信した衛星信号の復号を行う。
太陽電池41は、文字板53の裏蓋側に配置されており、風防側から電波腕時計1に入射する太陽光などの外光によって発電し、発電した電力を電源40に供給する。太陽電池41から電源40への電力供給路の途中には、スイッチ44が配置されている。このスイッチ44は、制御回路30からの制御信号に応じて、太陽電池41の接続先を電源40及び発電量検出部43の間で切り替える。通常、電源40の充電を行う際には太陽電池41と電源40との間がスイッチ44を介して接続されているが、制御回路30は、太陽電池41の発電量を検出する際には、スイッチ44を切り替えて太陽電池41を電源40から切り離し、発電量検出部43と接続する。発電量検出部43は、例えば抵抗器等を含んで構成される。制御回路30は、太陽電池41から発電量検出部43に流れる電流を計測するなどの方法で、太陽電池41の発電量Pを測定する。
ここで、アンテナ10の受信面は太陽電池41の受光面と平行に設けられており、いずれも風防側を向いている。このため、アンテナ10の受信面と太陽電池41の受光面は、いずれも文字板53の裏面(裏蓋側の面)に直接対向している。本実施形態では、太陽電池41の発電量を電波腕時計1の受光量としている。この受光量は、電波腕時計1が屋外にあるか否か、またアンテナ10の受信面が天上方向を向いているか否かの判断基準として用いられる。
駆動機構50は、前述したモータ駆動回路35から出力される駆動信号に応じて動作するステップモータと、輪列と、を含んで構成され、ステップモータの回転を輪列が伝達することによって、指針52を回転させる。時刻表示部51は、指針52及び文字板53によって構成される。指針52は、時針52a、分針52b、及び秒針52cからなり、これらの指針52が文字板53上を回転することによって、現在時刻が表示される。なお、時針52a、分針52b、及び秒針52cは、いずれも金属製である。
図1に示すように、文字板53上には、通常の時刻表示に用いられる目盛(インデックス)のほか、アンテナ10による受信処理の実行中に時刻表示を行う際に利用される半円状の目盛(以下、受信時用インデックスI1という)が表示されている。この受信時用インデックスI1を利用した時刻表示の詳細については、後述する。また、文字板53の中心近傍においては、その中心位置の周囲に、アンテナ10による衛星信号の受信制御に関する情報を表示するためのマーカーが配置されている。このマーカーには、例えば衛星信号の受信中であることを示す「RX」や、アンテナ10による衛星信号の受信強度を示す「1」、「2」、「3」などの文字列が含まれる。
操作部60は、例えば竜頭や操作ボタン等であって、電波腕時計1の使用者による操作を受け付けて、その操作内容を制御回路30に対して出力する。制御回路30は、操作部60が受け付けた操作入力の内容に応じて、衛星信号の受信等の処理を実行する。
ここで、GPS衛星が送信する衛星信号の構成について、説明する。図3は、GPS衛星から送信される衛星信号(航法データ)の構成を示す概要図である。同図に示されるように、各GPS衛星は、計25フレーム(ページ)を1セットとする航法データを繰り返し送信している。各フレームは30秒分の信号を含んでおり、GPS衛星は、全25フレームの信号を12.5分周期で送信する。さらに、各フレームは、5個のサブフレームから構成される。1フレームが30秒なので、1個のサブフレームは6秒分の信号に相当する。さらに、1サブフレームは、10ワードから構成され、1ワード30ビット、1サブフレーム全体で300ビット分の情報を含んでいる。
各サブフレームの先頭ワード(第1ワード)は、TLM(TeLeMetry word)と呼ばれ、その先頭部分(すなわち、サブフレーム全体の先頭部分)には、当該サブフレームの開始位置を示すプリアンブルが含まれる。さらに各サブフレームの2番目のワード(第2ワード)は、HOW(HandOver Word)と呼ばれ、その先頭部分には、TOW(Time Of Week)と呼ばれる時刻情報が含まれている。このTOWは、週の始まり(日曜日の午前0:00)を起点としたGPS時刻を示す時刻情報である。電波腕時計1は、1又は複数のGPS衛星からこのTOWのデータを受信して、週番号WNの情報と組み合わせることで、GPS衛星によって計時されているGPS時刻を知ることができる。週番号WNは、TOWにより表される時刻が属する週の番号を示す情報であって、週に1度、日曜日の午前0:00になるごとにカウントアップされる。週番号WNの情報は、各フレームの第1サブフレーム内に格納されてGPS衛星から送信されている。
週番号WNとTOWのデータによって得られるGPS時刻は、協定世界時に対して、閏秒の累積によって生じた整数秒分のずれがある。そのため、このずれを補正するために用いられる閏秒補正値LSの情報も衛星から送信される。具体的に、閏秒補正値LSの情報は、航法データのうち、第18ページ目のフレームの第4サブフレームに格納されている。電波腕時計1は、この閏秒補正値LSの情報を受信し、GPS時刻に対して閏秒補正値LSを用いた補正を行うことで、協定世界時に準拠した時刻情報を取得する。なお、この第18ページ目のフレームの第4サブフレームには、閏秒補正値LSだけでなく、次回の閏秒更新予定日時を示す情報も含まれている。電波腕時計1は、閏秒補正値LSとともに、この閏秒更新予定日時に関する情報も受信する。
以下、本実施形態において制御回路30の演算部31が実行する処理の具体例について、説明する。演算部31は、ROM32に格納されたプログラムを実行することにより、機能的に、図4に示すように、衛星信号受信部31aと、指針制御部31bと、時刻修正部31cと、を実現する。
衛星信号受信部31aは、GPS衛星から送信される衛星信号を受信することにより、その中に含まれるTOW、週番号WN及び閏秒補正値LSのデータを取得する。なお、衛星信号受信部31aは、定期的にこのような時刻情報の取得処理を実行してもよいし、使用者の操作部60に対する指示操作に応じてこれらの処理を実行してもよい。
さらに衛星信号受信部31aは、電波腕時計1の電波受信環境に関する情報(以下、環境情報という)を取得し、当該取得した環境情報に基づいて衛星信号の受信を行うタイミングを決定してもよい。この環境情報は、アンテナ10による衛星信号の受信強度に影響する、電波腕時計1の周囲の環境に関する情報である。
具体的に本実施形態では、衛星信号受信部31aは、環境情報として、太陽電池41の発電量Pの情報を取得する。すなわち、衛星信号受信部31aは、スイッチ44を切り替えて太陽電池41を発電量検出部43と接続することで、発電量検出部43が出力する発電量Pの情報を取得する。一般に、太陽電池の発電量は屋内外で大きく異なる。そのため、発電量Pが所定の閾値以上か否かを判定することで、衛星信号受信部31aは電波腕時計1が屋外にあるか否かを判定できる。電波腕時計1が屋外にあれば、屋内の場合と比較してより強い受信強度で衛星信号を受信できることが期待できる。そこで、衛星信号受信部31aは、例えば定期的に発電量Pの情報を取得し、発電量Pが所定の閾値以上になった場合に、衛星信号の受信を行う。なお、衛星信号受信部31aは、発電量P以外の情報を環境情報として取得してもよい。例えば、各GPS衛星から送信される衛星信号は、送信元のGPS衛星を識別するため、C/Aコードと呼ばれる符号により位相変調されている。そこで衛星信号受信部31aは、一時的に高周波回路21を動作させ、任意のGPS衛星を示すC/Aコードと受信電波との相関をとり、得られた相関値を環境情報として取得してもよい。
指針制御部31bは、衛星信号受信部31aが衛星信号を受信する際に、衛星信号受信部31aから当該受信処理の開始の通知を受けて、時針52a及び分針52bの少なくとも一方を平面視においてアンテナ10と重ならないよう移動させる制御を行う。例えば指針制御部31bは、衛星信号の受信が開始される際に、時針52a及び分針52bの少なくとも一方がアンテナ10と重なる位置にあるか否かを判定する。
具体例として、指針制御部31bは、衛星信号の受信開始時の表示時刻が所定の時間範囲に含まれるか否かを判定する。この時間範囲は、時針52a及び分針52bのいずれかがアンテナ10と重なるような時刻を含む範囲であり、当該時間範囲の情報は予めROM32に記憶されていることとする。指針制御部31bは、この時間範囲の情報と現在の表示時刻の情報とを用いて時針52aや分針52bがアンテナ10と重なっているかを判定する。あるいは指針制御部31bは、ハードウェア的に時針52aや分針52bがアンテナ10と重なる位置にあるか否かを判定してもよい。この場合、電波腕時計1は、時針52aや分針52bの現在位置を検出するために、これらの指針52の位置、又は指針52を駆動する駆動機構50の状態を検出するフォトセンサ等のセンサをその内部に備える。そして、指針制御部31bは、当該センサの検知結果を用いて、時針52aや分針52bがアンテナ10と重なる位置にあるか否かを判定する。
指針制御部31bは、時針52a及び分針52bの少なくとも一方がアンテナ10と重なっていると判定した場合、アンテナ10と重なっていると判断される指針52(時針52a及び分針52bの一方又は双方)を、アンテナ10と重ならない位置まで回転移動させる。本実施形態では、図1に示すように、アンテナ10は文字板53の中心位置から見て6時方向に配置されており、4時方向から6時方向を経由して8時方向までの範囲(後述する図5において破線の矢印で示した範囲。以下、重複範囲R1という)内を時針52aや分針52bが指し示している場合に、時針52a又は分針52bがアンテナ10と平面視において重なることになる。このような状態では、これらの指針52がアンテナ10の受信感度に悪影響を及ぼすおそれがあるので、指針制御部31bは、時針52aや分針52bを重複範囲R1外まで移動させる。
さらに、指針制御部31bは、衛星信号の受信時に、単に重複範囲R1の外まで時針52aや分針52bを移動させるだけでなく、文字板53の中心位置を囲む360度の範囲のうち、重複範囲R1を除いた範囲(すなわち、時針52a及び分針52bがアンテナ10と重ならない範囲)内で、時針52a及び分針52bによる時刻表示を行ってもよい。この場合、指針制御部31bは、アンテナ10による衛星信号の受信が行われている状態(受信状態)においては、アンテナ10による衛星信号の受信を行っていない状態(通常状態)とは異なる位置に時針52a及び分針52bを移動させることにより、通常状態とは異なる態様で時刻表示を行うことになる。これにつき、以下、具体的に説明する。
通常状態においては、時針52a及び分針52bは、文字板53の中心位置を回転中心として360度全方位にわたる回転移動を行って、その指し示す向きにより現在時刻を表示している。すなわち、通常状態では、時針52aの30°の回転により1時間が、分針52bの6°の回転により1分が、それぞれ表される。以下では、このような通常状態での時刻表示を通常時刻表示という。また、文字板53上において、このような時針52aや分針52bの回転量に対応した位置に、数字やドットなどの目盛(インデックス)が表示されている。具体的に、本実施形態では、図1に示すように、30°ごとに、通常状態における時刻表示のためのバーが配置されている。
これに対して、受信状態においては、時針52a及び分針52bは、重複範囲R1と重ならない所定の範囲(以下、受信時表示範囲R2という)内のいずれかの方位を指し示すことにより、現在時刻を表示する。以下では、受信状態における受信時表示範囲R2内での時刻表示を受信時時刻表示という。図5は、受信時時刻表示の一例を示す図である。本実施形態では、受信時表示範囲R2は、図5において二点差線の矢印で示すように、3時方向から12時方向を経由して9時方向までの範囲としている。ここで、指針制御部31bは、時針52a及び分針52bの一方だけがアンテナ10と重なる場合にも、受信時時刻表示を実現するために時針52a及び分針52bの双方を通常時刻表示の位置から移動させる。なお、時針52a及び分針52bのいずれもアンテナ10と重なっていない場合でも、指針制御部31bは、アンテナ10による衛星信号の受信時には常に時針52a及び分針52bを通常時刻表示の位置から移動させて受信時時刻表示を行ってもよい。
前述した受信時用インデックスI1は、この受信時時刻表示のために用いられる目盛であり、受信時表示範囲R2内に配置されている。受信時表示範囲R2は半円状の範囲(すなわち、360°の半分の範囲)を占めているので、受信時用インデックスI1に含まれる各数字の間隔も、通常時刻表示用の目盛の半分(15°間隔)になっている。すなわち、受信時時刻表示における12時方向から3時方向までの90°の範囲は、通常時刻表示における12時方向から3時方向を経由して6時方向までの180°の範囲を半分に縮小した範囲に相当し、受信時時刻表示における12時方向から9時方向までの90°の範囲は、通常時刻表示における12時方向から9時方向を経由して6時方向までの180°の範囲を半分に縮小した範囲に相当する。このことから、図5は、受信時時刻表示により6時20分を表示している状態を示している。この受信時時刻表示では、通常時刻表示と受信時時刻表示とで12時の向きは変わらないので、この向きを基準方向として、時針52a及び分針52bのいずれも、基準方向との間でなす角が通常時刻表示の際の角度の1/2になる位置を指し示すことになる。
時刻修正部31cは、衛星信号受信部31aがGPS衛星から受信した情報を用いて、電波腕時計1の内部で計時されている内部時刻の修正を行う。具体的に、時刻修正部31cは、まず週番号WNとTOWのデータからGPS時刻を算出し、このGPS時刻に閏秒補正値LSを加算することにより、協定世界時に基づく時刻情報を算出する。そして、制御回路30内で計時された内部時刻を、この協定世界時の時刻に一致するよう修正する。
以下、本実施形態に係る電波腕時計1において演算部31が実行する衛星信号受信処理の流れの一例について、図6及び図7のフロー図と、図8の表示遷移図を用いて説明する。
まず、衛星信号受信部31aが、使用者の指示を受け付けたり、環境情報が所定の条件を満たすことを検知したりして、衛星信号の受信を行うことを決定する(S1)。すると、指針制御部31bは、当該受信開始の通知を受けて、時針52a及び分針52bがアンテナ10と重なる位置にあるか否かを判定する指針位置判定処理を実行する(S2)。この指針位置判定処理では、時針52aがアンテナ10と重なる位置にあるか否かを示す第1フラグF1、及び分針52bがアンテナ10と重なる位置にあるか否かを示す第2フラグF2のそれぞれに値が設定される。
具体的には、図7に示すように、まず指針制御部31bは、第1フラグF1及び第2フラグF2の双方を0で初期化する(S21)。次に指針制御部31bは、現在の表示時刻が第1の時間範囲に含まれるか否かを判定する(S22)。ここで、第1の時間範囲は、時針52aが重複範囲R1内に存在するような時間範囲であって、具体的には、午前4時〜8時、及び午後4時〜8時である。現在時刻がこれらの時間範囲に含まれる場合、指針制御部31bは、第1フラグF1の値を1に更新する(S23)。逆に現在時刻が第1の時間範囲に含まれない場合、指針制御部31bは第1フラグF1の値を更新せずに後続の処理を実行する。
続いて指針制御部31bは、現在の表示時刻が第2の時間範囲に含まれるか否かを判定する(S24)。ここで、第2の時間範囲は、分針52bが重複範囲R1内に存在するような時間範囲であって、具体的には、毎時20分〜40分である。現在時刻がこの時間範囲に含まれる場合、指針制御部31bは、第2フラグF2の値を1に更新する(S25)。逆に現在時刻が第2の時間範囲に含まれない場合、指針制御部31bは第2フラグF2の値を更新せずに、指針位置判定処理を終了する。例えば図8(a)では、通常時刻表示で6時20分が表示されており、この時刻は第1の時間範囲にも第2の時間範囲にも含まれる。したがって、第1フラグF1及び第2フラグF2の双方が1に設定される。
図6に戻って、指針制御部31bは、S2の指針位置判定処理が終了すると、その処理結果を参照して時針52a及び分針52bを移動させる必要があるか否か判定する。具体的に、まず指針制御部31bは、第1フラグF1及び第2フラグF2のいずれか少なくとも一方が1であるか否かを判定する(S3)。すなわち、F1=1 OR F2=1の条件式を満たすか否かを判定する。この条件式を満たさないと判定した場合、時針52a及び分針52bのいずれもアンテナ10とは重なっていないことになるので、指針制御部31bは、時針52a及び分針52bを移動させる必要はないと判断し、S6の処理に進む。
一方、S3で条件式を満たすと判定した場合、指針制御部31bは、電波腕時計1の現在時点における環境情報を取得する(S4)。そして、取得した環境情報に基づいて、アンテナ10の受信強度が十分か否かを判定する(S5)。ここでは指針制御部31bは、太陽電池41の発電量Pの情報を取得し、取得した発電量Pを第1閾値Th1及び第2閾値Th2(Th1>Th2)と比較することで、現在の受信強度が3段階のいずれであるかを判定する。すなわち、発電量P>Th1であれば受信強度「3」(強)と、Th1≧P>Th2であれば受信強度「2」(中)と、P≦Th2であれば受信強度「1」(弱)と、それぞれ判断する。そして、受信強度が十分と判定した場合(ここでは受信強度「3」と判断した場合)、指針制御部31bは、時針52a及び分針52bを移動させる必要はないと判断し、S6の処理に進む。
S3又はS5の処理で時針52a及び分針52bを移動させる必要がないと判定した場合、指針制御部31bは、時針52a及び分針52bを移動させずに通常時刻表示の状態を保ったまま、秒針52cだけを移動させて、受信中であることを示す表示を行う(S6)。具体的には、文字板53の中央近傍に配置された衛星信号の受信制御に関するマーカーのうち、「RX」を指し示す位置に秒針52cを移動させてから停止させる。これにより、衛星信号を受信中であることが使用者に提示される。図8(b)は、このように秒針52cが「RX」を指し示した状態を表している。
一方、S5で受信強度が十分でないと判定した場合、指針制御部31bは、秒針52cを移動させて、アンテナ10の受信強度を示す表示を行う(S7)。具体的には、S5の判断結果に応じて、文字板53の中央近傍に配置された衛星信号の受信制御に関するマーカーのうち、受信強度「2」又は「1」のいずれかを指し示す位置まで秒針52cを回転させる。具体例として、図8(c)は、秒針52cが「2」を指し示している状態を表している。さらに指針制御部31bは、時針52a及び分針52bを受信時表示範囲R2内に移動させて、受信時時刻表示を行う(S8)。図8(d)は、表示時刻6時20分の場合に、このような受信時時刻表示が行われた状態を表している。
S6又はS8の処理が実行されると、衛星信号受信部31aが衛星信号の受信処理を開始し(S9)、指針制御部31bは衛星信号の受信処理の終了を待つ(S10)。受信処理が終了したと判定されると、指針制御部31bは、受信時時刻表示を行っていれば時針52a、分針52b、及び秒針52cを、行っていない場合には秒針52cだけを、通常時刻表示における位置に移動させて、図8(a)に示すような元の通常時刻表示の状態に復帰する(S11)。
以上の処理により、電波腕時計1は、アンテナ10と時針52a及び分針52bが重なる状態を避け、かつ、時刻表示自体は継続しながら、アンテナ10による衛星信号の受信処理を実行することができる。
さらに、以上のフローにおいては、受信処理の実行中、秒針52cを移動させて受信処理を実行中であることを示しているが、通常時刻表示を継続している場合と、受信時時刻表示に移行した場合とで、秒針52cの位置を変化させている。すなわち、上記フローの例では、通常時刻表示を継続する場合(時針52a及び分針52bの重複範囲R1からの待避を行わない場合)、秒針52cを「RX」を指し示す位置に移動させ、受信時時刻表示を行う場合(時針52a及び分針52bを重複範囲R1から待避させる場合)、秒針52cを「2」又は「1」を指し示す位置に移動させている。これにより、使用者は、秒針52cの位置を確認することで、現在通常時刻表示が行われているのか、受信時時刻表示が行われているのか、を判別できる。さらに、通常時刻表示を継続するか受信時時刻表示に移行するかに関わらず、受信中であることを示す秒針52cの位置は、重複範囲R1の外側になっている。そのため、秒針2cも衛星信号の受信処理中にアンテナ10と重ならないようになっている。
また、上記フローでは、アンテナ10の受信強度に関する環境情報を取得し、その結果に基づいて時針52a及び分針52bを移動させるか否かの判定を行っている。これにより、時針52a及び分針52bがアンテナ10と重なっていても、十分な受信強度が得られると想定されるときには通常時刻表示を継続したまま受信を行うことができる。なお、指針制御部31bは、このような環境情報の取得及び判定を行わずに、時針52a又は分針52bがアンテナ10と重なるときには常に受信時時刻表示を行うこととしてもよい。
また、上記フローでは、そもそも時針52a及び分針52bがいずれもアンテナ10と重ならない場合は、環境情報の取得及び判定を行わずに、通常時刻表示を継続したまま受信処理を実行している。これにより、時間や電力を要する環境情報の取得を不必要に実行しないようにすることができる。ただし、指針制御部31bは、アンテナ10による衛星信号の受信が行われる際には、以上説明したような時針52aや分針52bの位置に関する判定処理を行わずに、常に受信時時刻表示を行うこととしてもよい。
なお、上記フローでは、通常時刻表示を継続したまま受信処理を行う場合は「RX」を指し示す位置に秒針52cを移動させることとしたが、受信強度が「3」と判定された場合には「3」を指し示す位置に秒針52cを移動させても構わない。いずれにせよ、通常時刻表示を行いながら受信処理を実行する場合と、受信時時刻表示を行いながら受信処理を実行する場合とで、互いに異なる位置に秒針52cを移動させることで、どちらの態様で時刻表示を行っているかを使用者に提示することができる。また、通常時刻表示を継続している場合、秒針52cも受信処理を実行していない状態と同様に運針する(すなわち、1秒ごとに6°ずつ回転する)よう制御し、受信時時刻表示を行う場合には、いずれかの位置で秒針52cを停止させたり、あるいは2秒運針させたりするなど、通常時刻表示とは異なる状態で運針するよう秒針52cを制御してもよい。この場合にも、使用者は秒針52cの状態で通常時刻表示が行われているか、あるいは受信時時刻表示が行われているかを判別できる。
以上説明したような受信時時刻表示を行う場合、衛星信号の受信処理の開始タイミングによっては、指針制御部31bは、受信処理の実行中に表示時刻を更新するために時針52aや分針52bの運針を行う必要が生じる。また、受信処理の実行中に継続して環境情報のモニタを行い、受信強度が変化した場合に、秒針52cが指し示す受信強度(「1」、「2」、「3」のいずれか)を変化させたい場合もある。しかしながら、受信処理中にこのような各指針52の運針を実行すると、この運針に起因して生じるノイズの影響により、受信エラーを引き起こすおそれがある。そこで指針制御部31bは、現在受信中のデータの種類に関する情報を衛星信号受信部31aから受け取り、この情報に基づいて運針を行うか否かの制御を行ってもよい。本実施形態では、電波腕時計1が必要とする情報は、既に述べたように、衛星信号に含まれる各種の情報のうち、プリアンブル、TOW、週番号WN、及び閏秒に関する情報である。そこで、これら取得対象の情報が受信されているタイミングでは、指針制御部31bは、指針52の運針を制限することとし、取得対象でない情報(例えば、エフェメリス・データやアルマナック・データなどのGPS衛星の位置に関する情報)を受信するタイミングになってから指針52の位置を変更する運針制御を行う。逆に、指針52の運針タイミングと取得対象の情報の受信タイミングが競合する場合、当該情報の受信を制限してもよい。この場合、指針制御部31bは、指針52を運針する際にそのタイミングを衛星信号受信部31aに通知する。そして、衛星信号受信部31aは、指針52の運針が行われるタイミングと、プリアンブル、TOW、週番号WN、又は閏秒に関する情報の受信タイミングが重なる場合には、当該タイミングで受信される情報を使用せずに、次のタイミングで再度取得対象の情報の受信を試みる。
以上説明した本実施形態に係る電波腕時計1によれば、衛星信号の受信時に時針52a及び分針52bの少なくとも一方をアンテナ10と重ならない位置に移動させることで、現在の表示時刻に関わらず、任意のタイミングで時針52aや分針52bの影響を受けないようにしながらアンテナ10による受信処理を実行することができる。そのため、特定のタイミングでGPS衛星から送信される閏秒補正値LSなどの情報を受信する場合や、環境情報が所定の条件を満たすタイミングで衛星信号を受信する場合などであっても、時針52aや分針52bの影響を回避しつつ受信処理を実行できる。なお、以上の説明では、アンテナ10が文字板53の中心位置に対して6時方向に配置されることとしたが、アンテナ10の位置はこのようなものに限られない。例えばアンテナ10は、12時方向に配置されてもよい。この場合、重複範囲R1は以上の説明とは上下対称になり、10時方向から12時方向を経由して2時方向までの範囲になる。この例では、受信時表示範囲R2も以上の説明とは上下対称の位置(すなわち、3時方向から6時方向を経由して9時方向までの範囲)とし、この範囲に受信時用インデックスI1を配置すればよい。
[変形例]
本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。以下、本発明の実施の形態に係る電波腕時計の変形例について、説明する。
まず、受信時時刻表示の各種の変形例について、説明する。受信時時刻表示の態様は、図1に示す受信時用インデックスI1を用いたものに限られない。図9は、受信時時刻表示の第1変形例を示す図である。この第1変形例では、受信時用インデックスI2により受信時時刻表示が行われる。この受信時用インデックスI2は、受信時用インデックスI1と同じ範囲を占めているが、通常時刻表示における9時方向及び3時方向が12時に、通常時刻表示における12時方向が6時に、それぞれ対応している。なお、図9では6時20分が表示されている。また、この第1変形例でも、アンテナ10の位置は6時方向に限らず、例えば12時方向にアンテナ10を配置し、受信時用インデックスI2も図9とは上下対称の位置に配置してもよい。
図10は、受信時時刻表示の第2変形例を示す図である。この第2変形例では、図1と異なり、アンテナ10が文字板53の中心位置に対して9時方向に配置されている。これに伴い、第2変形例における受信時用インデックスI3は、通常時刻表示における12時方向から3時方向を経由して6時方向までの範囲に表示されている。なお、この受信時用インデックスI3は、受信時用インデックスI2を時計回りに90°回転させたものになっている。また、図10では、9時05分が表示されている。この第2変形例でも、アンテナ10を例えば9時方向ではなく3時方向に配置し、受信時用インデックスI3を12時方向から9時方向を経由して6時方向までの範囲に配置してもよい。
図11は、受信時時刻表示の第3変形例を示す図である。なお、この図11でも、図10の例と同様にアンテナ10は9時方向に配置されている。この第3変形例では、これまでのものとは異なり、受信時用インデックスI4a及びI4bの二つに分かれたインデックスにより時刻表示が行われる。具体的に、受信時用インデックスI4aは1時方向から12時方向を経由して11時方向までの範囲に表示されており、この範囲内のいずれかの位置を時針52aが指し示すことで、時(Hour)が表示される。一方、受信時用インデックスI4bは、5時方向から7時方向までの範囲に表示されており、この範囲内のいずれかの位置を分針52bが指し示すことで、分(Minute)が表示される。なお、図11では、図10と同様に9時05分が表示されている。この第3変形例では、仮にアンテナ10を3時方向に配置したとしても、図11と同様の位置に配置した受信時用インデックスI4a及びI4bを用いて、アンテナ10と重ならないような受信時時刻表示を実現できる。なお、アンテナ10を12時方向又は6時方向に配置する場合、受信時用インデックスI4a及びI4bを、図11に示すものとは90°回転させて、3時方向及び6時方向に配置すればよい。
次に、電波腕時計1が受信時時刻表示を行わない変形例について、説明する。本発明の実施の形態に係る電波腕時計1は、時針52aや分針52bがアンテナ10と重なっている状態で衛星信号の受信を行う場合に、受信時時刻表示を行わずに、単に時針52aや分針52bをアンテナ10と重ならない位置に移動させてもよい。この場合、時刻の確認はできなくなるが、アンテナ10と時針52a及び分針52bが重なる状態を避けつつ、衛星信号の受信処理を行うことができる。この場合、電波腕時計1は、衛星信号の受信中であり、時針52a及び分針52bを通常時刻表示における位置から移動させていることを何らかの手段で表示することが望ましい。そうでないと、通常時刻表示が行われているのか、あるいはアンテナ10と重なる状態を避けるために時針52a及び分針52bが移動しており、時刻表示は行われていないのか、を使用者が判別できないからである。
具体的に、電波腕時計1は、例えばデジタル表示部や、指針52とは別の状態表示針など、時針52aや分針52bが移動中であることを使用者に提示するための表示手段を指針52以外に備えてもよい。あるいは、秒針52cを所定の位置に移動させて停止させたり、通常時刻表示とは異なる速度で回転移動させたりすることで、時針52aや分針52bを移動中であることを使用者に提示してもよい。
また、電波腕時計1は、時針52aや分針52bを重複範囲R1外に移動させ、かつ、時針52aや分針52bが通常時刻表示とは異なる状態になるよう制御することで、衛星信号の受信中であることを使用者に表示してもよい。具体的に、例えば電波腕時計1は、時針52a及び分針52bの少なくとも一方を所定の範囲内で往復運動させることにより、衛星信号の受信中であることを表示してもよい。図12は、このような表示態様の一例を示す図である。この図の例では、矢印により示されるように、分針52bが2時方向から12時方向を経由して10時方向までの範囲を往復運動することとしている。このとき、通常時刻表示における回転速度より速い速度で分針52bを移動させれば、使用者は、時刻表示が行われておらず、衛星信号を受信中の状態であることを直ちに把握できる。
また、電波腕時計1は、受信処理に要する時間に応じた速度で、時針52a及び分針52bを回転運動させることとしてもよい。具体的には、受信処理に要すると想定される時間をかけて重複範囲R1外を回転移動するように、時針52a及び分針52bを制御する。図13は、このような表示態様の一例を示す図である。この図の例では、矢印により示されるように、時針52a及び分針52bの双方が、受信処理の開始時に8時方向をスタートして、受信処理の終了時には4時方向まで到達するような速度で、時計回りに文字板53上を回転する。この場合にも、時針52a及び分針52bは、通常時刻表示における回転速度より速い速度で回転移動を行うことになる。これにより、受信処理中には時針52a及び分針52bがアンテナ10と重ならないようにしつつ、時刻表示が行われていることを使用者に明確に提示できる。なお、ここでは時針52a及び分針52bの双方を回転移動させることとしたが、時針52a及び分針52bのうち、受信開始時にアンテナ10と重なっていると判定されるものだけを回転移動させることとしてもよい。この場合、どの指針52を移動させるかは、前述した図7のフローによる指針位置判定処理の結果得られる第1フラグF1及び第2フラグF2を参照することで決定できる。
また、電波腕時計1は、受信処理の実行時には、重複範囲R1外であって、かつ通常時刻表示の状態では存在し得ない位置(すなわち、どの時刻をも表示しない位置)に時針52a及び分針52bを移動させてもよい。あるいは、電波腕時計1は、受信処理の実行時には、重複範囲R1外であって、かつ実際の現在時刻とは大きく異なる時刻を表示する位置に時針52a及び分針52bを移動させてもよい。具体的には、例えば現在時刻から6時間進んだ時刻を表示する位置に時針52aを移動させる。このような方法によっても、使用者は、現在時刻が表示されておらず、受信処理の実行中であることを容易に把握できる。
次に、処理内容の変形例として、時針52aや分針52bの位置がアンテナ10と重なっているか否かに応じて、受信処理の内容を変化させる例について、説明する。この変形例では、演算部31は、前述した図7のフローによる指針位置判定処理を実行し、その結果に基づいて、衛星信号の受信処理の内容を変化させる。
図14は、当該変形例における処理の流れを示すフロー図である。この図の処理では、まず演算部31は、使用者の指示を受け付けたり、環境情報が所定の条件を満たすことを検知したりして、衛星信号の受信を行うことを決定する(S31)と、図7に示す指針位置判定処理を実行する(S32)。
その後の処理は、S32の結果得られる第1フラグF1及び第2フラグF2の値の組み合わせにより、4パターンの処理に分岐する(S33)。具体的に、演算部31は、S32の結果に応じて、受信処理のリトライ回数を決定する。すなわち、F1=1、かつF2=1のときには、時針52a及び分針52bの双方がアンテナ10と重なっており、受信条件は比較的悪いので、リトライ回数を少ない値(ここでは1回)に設定する(S34)。またF1=0、F2=1の場合(分針52bのみアンテナ10と重なっている場合)、リトライ回数を2回に設定する(S35)。逆にF1=1、F2=0の場合(時針52aのみアンテナ10と重なっている場合)、リトライ回数を3回に設定する(S36)。なお、分針52bがアンテナ10と重なっている場合のリトライ回数を時針52aがアンテナ10と重なっている場合のリトライ回数より少なくしているのは、時針52aと比較して分針52bの方が長く、アンテナ10に対する影響が大きいからである。さらに、F1=0、かつF2=0の場合(時針52a及び分針52bの双方がアンテナ10と重なっていない場合)、受信成功が期待できるので、リトライ回数を大きな値(4回)に設定する(S37)。その後、演算部31は受信回路20を動作させて受信処理を開始する(S38)。受信処理が終了すると、受信に成功したか否か判定し(S39)、受信に成功していれば処理を終了する。一方、受信に失敗した場合、リトライ回数の値を1減らし(S40)、リトライ回数が0になったか否かを判定する(S41)。リトライ回数が0になっていない間は、S38に戻って受信処理を再試行し、リトライ回数が0になった場合には、現時点での受信は困難と判断し、処理を終了する。
以上説明した処理によれば、時針52a及び分針52bの現在位置とアンテナ10との位置関係に応じて受信処理の内容を変化させることで、時針52aや分針52bがアンテナ10に及ぼす影響を考慮した内容で受信処理を実行することができる。なお、以上の例では、受信成功が期待できない場合ほどリトライ回数を少なくすることで、成功の見込みが少ない受信処理を繰り返して電力を消費してしまう事態を避けることとしている。しかしながら、確実な受信処理の実行が要請される場合においては、逆に時針52aや分針52bがアンテナ10の受信感度に影響を及ぼすと想定される場合ほどリトライ回数を多くして、受信処理の試行を繰り返すこととしてもよい。
また、時針52aや分針52bの位置に応じて受信処理の内容を変化させる別の例として、電波腕時計1は、受信するデータ内容を時針52aや分針52bの位置に応じて変化させてもよい。この変形例について、図15のフロー図を用いて説明する。
この図15の処理では、まず演算部31は、図14の場合と同様に、衛星信号の受信を行うことが決定される(S51)と、指針位置判定処理を実行する(S52)。
その後の処理は、S42の結果得られる第1フラグF1及び第2フラグF2の値により、3パターンの処理に分岐する(S53)。具体的に、演算部31は、F2=1の場合には、時針52aより長い分針52bがアンテナ10と重なっており、受信条件は比較的悪いので、衛星信号に含まれる時刻に関する情報のうち、TOWのデータだけを受信することとする(S54)。前述したように、TOWのデータは全てのサブフレームに含まれており、6秒に1回は受信できる見込みがある。一方、F1=1、かつF2=0の場合(時針52aのみアンテナ10と重なっている場合)、TOWのデータに加えて、30秒に1回GPS衛星から送信される週番号WNのデータを受信する(S55)。さらに、F1=0、かつF2=0の場合(時針52a及び分針52bの双方がアンテナ10と重なっていない場合)、受信条件は比較的よいので、TOW、週番号WNのデータに加えて、12.5分に1回GPS衛星から送信される閏秒補正値LSのデータも受信する(S56)。
このような処理によれば、受信成功の可能性が高いときほど、より多くのデータをGPS衛星から取得することができ、受信失敗の可能性を減らすことができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波腕時計1は、時針52a及び分針52bの少なくとも一方がアンテナ10と重なる位置にあるか否かに応じて、受信処理の実行そのものを制限してもよい。具体的に、例えば電波腕時計1は、時針52a及び分針52bの双方がアンテナ10と重なっていると判定した場合、あるいは時針52a及び分針52bのいずれか少なくとも一方がアンテナ10と重なっていると判定した場合、衛星信号の受信処理を中止してもよい。こうすれば、時針52aや分針52bの影響で受信に失敗してしまうおそれがあるときには、受信処理を中止することで、無駄な電力消費を避けることができる。なお、電波腕時計1は、時針52aや分針52bがアンテナ10と重なっているか否かだけでなく、環境情報を取得し、その内容を組み合わせることで、受信処理を制限するか否か判定してもよい。
また、電波腕時計1は、このような受信処理の制限を行う制御と、図14や図15で示した受信処理の内容を変化させる制御とを、組み合わせて実行してもよい。具体例として、例えば電波腕時計1は、時針52a及び分針52bの双方がアンテナ10と重なっている場合、衛星信号の受信処理を中止し、それ以外の場合には、時針52a及び分針52bのどちらがアンテナ10と重なっているか、又はいずれもアンテナ10と重なっていないか、の判定結果に応じて、受信処理のリトライ回数を変化させたり、受信するデータの内容を変化させたりしてもよい。また、電波腕時計1は、時針52a及び分針52bの双方が重なっていれば時針52a及び分針52bをアンテナ10と重ならない位置まで移動させて受信処理を実行することとし、それ以外の場合には、時針52a及び分針52bを移動させずに受信処理を実行することとし、さらにその場合に時針52a及び分針52bのどちらがアンテナ10と重なっているか、又はいずれもアンテナ10と重なっていないか、の判定結果に応じて受信処理の内容を変化させてもよい。