JP2014001448A - 銅合金摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐焼き付き性に優れ、かつ効率よく高い精度で生産可能な摺動部材及び前記摺動部材の製造方法を提供する。
【解決手段】バックアップ部材12表面12aに銅合金11を摩擦圧接し、又は銅合金表面11aを摩擦攪拌により組織改質を行って摺動面11cの改質を行い良好な摩擦係数及び対焼付き性の改善を行う。前記銅合金は青銅系銅合金で、固体潤滑材を含有する。前記青銅系銅合金が鉄を0.15〜6.0質量%、鈴が3.0〜16.0質量%、硫黄が0.3〜3.0質量%、燐が0.01〜0.3質量%含有し、残分が、銅と不可避的不純物とからなる摺動部材。
【選択図】図1

Description

この発明は、摺動部材に関する。
軸受やブレーキディスクなどの摺動部分を有する摺動部材には、相手部材を損傷しにくく、摺動性が高い銅合金が用いられることが多い。この銅合金の摺動部材には、鋳造により得られた部材をそのまま加工して用いた鋳造品や、アトマイズ法などで作製した銅合金粉末に圧力をかけながら焼結した焼結品などが用いられている。具体的には、摩擦係数が小さいものが好適であり、また、高面圧における使用でも焼き付きしにくい耐焼き付き性のよいものが好適である。これらの性能をまとめて摺動性と呼ぶ。
これら摺動性を向上させるためには、従来は潤滑効果の高い素材を採用するといった改良がなされてきた。例えば、特許文献1には、鉄を0.3質量%以上6.0質量%以下、スズを3.0質量%以上16.0質量%以下、硫黄を0.3質量%以上3.0質量%以下、燐を0.01質量%以上0.3質量%以下含有し、残分が銅と不可避的不純物とからなる青銅系銅合金が、高い摺動性を示すものとして記載されている。
特許第4658269号公報
しかしながら、摺動性のうち特に耐焼き付き性は潤滑特性の向上だけでは限界に近づきつつあり、より耐焼き付き性に優れた摺動部材が求められていた。
そこでこの発明は、耐焼き付き性に優れた摺動部材を製造することを目的とする。
この発明は、摺動表面に、銅合金を摩擦圧接又は摩擦攪拌により改質した金属組織を有する摺動部材を用いることで、上記の課題を解決したのである。これら摩擦圧接又は摩擦攪拌による加熱、圧力などを受けて改質された銅合金は、元の材料よりも組織が改質されて、耐焼き付き性に優れたものとなる。
摩擦圧接の場合は、摺動表面に用いる銅合金と、それを圧接させるより融点の高い金属材料との接合体を、好適に用いることができる。
また、摺動表面に配する材料として銅合金の中でも特に青銅系銅合金を用いると、元々の摺動性の高さからより優れたものとなる。さらに、硫黄を含有しており、その硫黄の化合物で固体潤滑剤として作用する成分を有していると、より摺動性に優れた摺動部材となる。
この発明により、耐焼き付き性に優れた摺動部材を、効率良く高い精度で生産することができる。
(a)第一の実施形態で用いる銅合金部材とバックメタル部材の例を示す斜視図、(b)(a)の部材を摺動圧接させた圧接部材の側面図、(c)(b)の圧接部材から切り出した切出部材の斜視図 (a)第二の実施形態で用いる銅合金部材とバックメタル部材の例を示す斜視図、(b)(a)の部材を摺動圧接させた圧接部材の側面図、(c)(b)の圧接部材から切り出した切分母材の斜視図、(d)(c)から切り出した短冊状摺動部材の斜視図 第三の実施形態である摩擦攪拌の概念図 実施例で用いるリングオンディスク摩擦試験機の正面図及び平面図 実施例1の摺動試験結果を示すグラフ 比較例1の摺動試験結果を示すグラフ 実施例2の摺動試験結果を示すグラフ 比較例2の摺動試験結果を示すグラフ
以下、この発明について具体的に説明する。この発明は、銅合金からなる摺動表面を有する摺動部材であり、摩擦圧接又は摩擦攪拌によって、摺動表面を構成する部分について元の青銅系銅合金から金属組織を変質させる改質を行い、耐焼き付き性を向上させたものである。
まず、第一の実施形態として摩擦圧接により摺動部材として用いる金属の組織を改質する形態を、図1を用いて説明する。材料としては、摺動表面を構成することになる円筒形の銅合金部材11と、鋼鉄系材料などの銅よりも融点の高い金属材料からなる同じく円筒形のバックメタル部材12とを用いる。これらの部材の環状底面を構成する外径及び内径は同じである。バックメタル部材12を下に配置して固定し、銅合金部材11を上に配置して、銅合金部材11を環状底面の軸を中心に回転させながら、環状底面11a、12a同士を当接させ、下向きの圧力を掛ける(図1(a))。すると、銅合金部材11とバックメタル部材12との両方が摩擦熱で赤熱するが、銅合金部材11の方がより低温で軟化するため、下向きの圧力によって一部が外径方向にはみ出しながら、銅合金部材11の下方底面近傍は押し潰されていく。全体としてはこの圧縮によって徐々に高さが縮んでいく。適切なところまで圧縮したら銅合金部材11の回転を停止して圧力を加えたまま冷却する。この段階での側面図を図1(b)に示す。合体した圧接部材13の高さは銅合金部材11とバックメタル部材12との合計高さよりも小さいものとなる。
この圧接部材13の合体させた当接面の近傍で、元は銅合金部材11及びバックメタル部材12であったそれぞれの部分を輪切りにする。このうち銅合金部材11は、高熱により軟化、圧縮されてから冷却されて固まったことにより、当接面近傍の組織全体が元の組織から改質されている。ただしこの変化は、当接面から離れるほど起こりにくくなるので、できるだけ当接面に近いところで元は銅合金部材11であった部分を切断することが望ましい。また、バックメタル部材12の部分の割合が多い方が全体的な強度は高くなるという点でも、銅合金部材11由来である部分の厚みは小さいことが望ましい。摺動表面の摺動性を上げるために銅合金部材11を設けているので、表面さえ銅合金部材11由来の改質材料で覆われていればよいからである。具体的には、この銅合金部材11由来の部分の厚みLは5mm以下であると好ましく、3mm以下であるとより好ましい。ただし、1mm未満を残して切断することは精度上難しくなるので、1mm以上であることが望ましい。一方、バックメタル部材12であった部分の長さLは特に限定されず、全体として摺動部材として用いる際必要な大きさになるように調製すればよい。ただし、当接面に近すぎると切断精度上の要求が厳しくなるので、2mm以上離れていることが好ましい。
ここでは、図1(b)中一点破線のラインで切断したものとする。得られた切出部材14の斜視図を図1(c)に示す。なお、圧縮時にはみ出した部分(11b)も併せて除去している。銅合金部材11であった部分(銅合金層)の切断面11cが、摺動部材の表面となる。ただし、切断直後の状態では表面が粗いため、その後に摺動部材の表面となる切断面11cを摺動部材として一般的な機械加工で仕上げる。この切断面11cは、上記の摩擦圧接の際に圧縮変形されて改質されており、元の銅合金部材11をそのまま摺動部材として用いるよりも、耐焼き付き性が高い優れた材料となる。
こうして得られた摺動部材の改質された摺動表面は、摩擦熱で赤熱され、かつ冷却時にかけて圧力を加えられているため、面全体が好適に改質され、摺動性に優れたものとなると考えられる。
また、一旦バックメタルと接合した材料の、バックメタル側を切断、或いは研磨して除去した、銅合金由来の部分のみからなる摺動部材としてもよい。
ところで、図1では元々摺動部材として用いることができる円筒状の材料を使用したが、より大径の円盤状の材料同士を摩擦圧接した後、そこから切り出した材料を様々な摺動部材として用いてもよい。切り出した材料をすべり軸受に用いる第二の実施形態を、図2を用いて説明する。
銅合金部材21とバックメタル部材22とは、いずれも上記の銅合金部材11及びバックメタル部材12と同様の材料を用いており、円筒形ではなく円柱形をした部材である(図2(a))。上記と同様に底面同士を合わせて圧力を加えながら軸回転させて、銅合金部材21を一部はみ出させながら当接面近傍を圧縮して摩擦圧接する(図2(b))。同様に圧力を加えながら冷却し、得られた圧接部材23から当接面近傍を輪切りにして、円盤状の切分母材24を得る(図2(c))。この切分母材24の表面を平滑に処理した後、短冊状の摺動部材25を切り出す(図2(d))。摺動部材25の一方の面である摺動面21dは、改質された銅合金からなる。この摺動部材25を、摺動面21dが外周側または内周側に位置するようにして一周分巻いて端部同士を接合して、すべり軸受を製造すると、摺動表面が改質によって耐焼き付き性に優れたものとなる。
次に、第三の実施形態として、摩擦攪拌によって改質する場合について説明する。この実施形態では、元々摺動部材として利用可能な形状である銅合金部材31を使用する。これに、熱間ダイス鋼などからなる円柱状のツール32を回転させながら圧力をかけて押し当てる。なお、図3(a)に示したようにツール32の先端は平板ではなく、攪拌を進行させやすくするための突部が中央に設けてある。銅合金部材31のツール32と接している部分は回転による摩擦熱によって加熱され軟化し、表面の組織が攪拌されていく。この攪拌を銅合金部材31の全面に起こさせるように、ツール32を走査していく。走査が終わった部分33は、一旦圧力を掛けられて攪拌した後に冷却されるまでの過程で組織が改質される。これにより、銅合金部材31の全面を改質した耐焼き付き性の優れた材料を得ることができる。
このような摩擦攪拌による改質では、摩擦圧接による方法と比べて、元々の材料の表面を攪拌するだけでよいため、部材の切断やはみ出し部分の除去などの工程を経る必要がなく、材料の無駄なく改質された摺動表面を得ることができる。ただし、冷却時には圧力を加えられていないため、摩擦圧接に比べると改質効果が劣る場合がある。
いずれの実施形態においても、この発明で用いる銅合金部材の材料としては、青銅系銅合金が、改質による耐焼き付き性の向上が見込みやすく、元々高い摺動性をさらに向上できるので望ましい。具体的な青銅系銅合金の組成としては、一般的な青銅系銅合金に、摩擦係数を低下させる固体潤滑剤を含有させたものを用いてもよい。ここで固体潤滑剤とは例えば、硫化物(Fe−S系化合物、二硫化モリブデン等)やPb、Bi、カーボンなどである。固体潤滑剤を含有することにより低い摩擦係数を維持しながら、さらなる耐焼き付き性を付与し、摺動性を向上することができる。このような材料としては例えば、鉄を0.15質量%以上6.0質量%以下、スズを3.0質量%以上16.0質量%以下、硫黄を0.3質量%以上3.0質量%以下、燐を0.01質量%以上0.3質量%以下含有し、残分が銅と残余成分とからなる青銅系銅合金が挙げられる。なお、上記の残余成分とは、微少成分ながら合金の有益な性質を阻害することなく有益な効果を付与するために意図的に含めても良い成分や、不可避的に含まれてしまう不純物であって上記銅合金部材及び攪拌後の性質を阻害しない程度に含まれるものである。
以下、この発明にかかる摺動部材を具体的に製造した例を具体的に示す。まず、摩擦圧接により製造する例を示す。
(実施例1)
まず、鋳造によりスズ:9.85質量%、硫黄:0.58質量%、鉄:0.23質量%、リン:0.0165質量%、銅:残分の青銅系銅合金からなる、外径52mm、内径24mm、高さ60mmの円筒状銅合金部材を製造した。これ自体は通常の摺動部材として利用可能なものであり、後述する試験では同じものを比較例1として使用する。一方、バックメタル部材として、鋼鉄(S45C材)製で円筒形銅合金部材と形状及び大きさが同一の部材を製造した。円筒状銅合金部材とバックメタル部材とが接する当接面は、どちらも2000番の砥石で仕上げた上で当接させた。
これらを日東精機株式会社製FF−60IICM−K型摩擦圧接機にて摩擦圧接した。具体的な条件は次の通りである。バックメタル部材を固定し、その環状面に向けて、回転数600rpmで予め軸回転させた銅合金部材の環状面を当接させ、2.3kgf/cmの圧力を3秒間加えて、銅合金部材を軟化させた。銅合金部材の軟化後、7.0kgf/cm2の圧力をかけ、当接位置より5mm押し込むまで圧力付加を続けた。次に、回転停止後、7.0kgf/cmの圧力で銅合金部材を押付け、さらに、1mm押し込んだ。(当接面から6mm)なお、接合部分は外径方向に銅合金部材がはみ出していたが、その体積は押し込まれて減少した体積({26mm×26mm−12mm×12mm}×π×6mm)よりも小さいことが目視からも明らかであり、当接面付近で組織が圧縮されていることが確認された。
接合した当接面から銅合金側に7mmの位置と、バックメタル側に1mmの位置とで輪切りにし、接合した部材の外径側のはみ出し部分を削るとともに、バックメタル側から旋盤で機械加工してバックメタル部材を除去して銅合金由来の面を露出させて摺動面とし、接合前の部材と同じ外径及び内径を有し、厚さが5mmの環状摺動部材を得た。この銅合金側の表面を2000番の砥石で鏡面仕上げしたものを実施例1とする。この摺動面は、元の接合面から1mm未満の範囲であり、組織改質による影響を十分に受けた領域である。
(実施例2)
まず、鋳造によりスズ:10.15質量%、鉛:9.61質量%、ニッケル:0.58質量%、リン:0.20質量%、銅:残分の、固体潤滑剤として鉛を含有する銅合金からなる、実施例1と同じ形状の円筒状銅合金部材を製造した。これ自体はそのまま比較例2として使用する。一方、実施例1と同じバックメタル部材を用いて、同様に当接面を研磨した上で、実施例1と同じ摩擦圧接機にて同条件で摩擦圧接した。同様に、当接面から銅合金側に7mmの位置と、バックメタル側に1mmの位置とで輪切りにして、はみ出し部分を削って、同様の仕上げを行ったものを実施例2とする。
<摺動試験>
試験機として、リングオンディスク摩擦試験機を用いた。実施例1,2(表面研磨)で得られた試料、及びその一部のみである比較例1,2の試料を切削して得た外径50mm、内径26mm、厚み7mmのディスク41面上に、鋼(S45C。硬度:Hv700相当)のリング42(外径40mm、内径30mm、高さ15mm)を当接させ、リングを333rpmの速度で回転させた。このリング42とディスク41の関係を図4に示す。リング上面42a側から荷重を付加し、リング下面42bの接触面において、2.5kg(面圧:0.45kgf/cm)、7.83kg(面圧1.42kgf/cm)、9.89kg(面圧1.80kgf/cm)となるよう調整し、30秒ごとに、段階的に増加させながら、摩擦係数の変化を測定した。その結果を図5〜図8に示す。
硫化物系化合物を固体潤滑成分として含む合金を摺動により改質した実施例1(図5)は、一旦荷重を増加させた後は安定して推移しており、90秒経過まで試験を続けても大きな変動は無く、摺動材として良好な結果を示した。これに対して、改質していない材料そのままの試料である比較例1(図6)では、60秒経過後(三段階目)から摩擦係数が徐々に増加し始めるのに合わせて試料ががたつき始め、グラフには現れていないが、90秒経過のその瞬間に試料の焼き付きが生じた。
Pbを固体潤滑成分として含む合金を摺動により改質した実施例2(図7)は、一旦加重を増加させた後は安定して推移しており、90秒経過まで試験を続けても大きな変動は無く、摺動材として良好な結果を示した。これに対して、改質していない材料そのままの試料である比較例2(図8)では、荷重の増加とともに摩擦係数が上昇していき、75秒経過時点で焼き付いてしまった。
いずれの例においても、試料は表面が焼き付いているのに対して、改質した実施例の試料はより高い摺動性、耐焼き付き性を発揮することが示された。
11、21 銅合金部材
11a 環状底面
11b はみ出し部分
11c 切断面
12、22 バックメタル部材
12a 環状底面
13、23 圧接部材
14 切出部材
21d 面(摺動面)
24 切分母材
25 摺動部材
29 軸受
31 銅合金部材
32 ツール
33 走査が終わった部分
41 ディスク
42 リング
42a リング上面
43b リング下面

Claims (5)

  1. 銅合金を摩擦圧接又は摩擦攪拌により改質した金属組織からなる摺動表面を有する摺動部材。
  2. 板状のバックメタル部材と、前記バックメタル部材に接合された銅合金層との少なくとも2層からなり、前記接合は、前記バックメタルに前記銅合金層となる銅合金部材を摩擦圧接することで行われ、上記摺動表面は、前記銅合金部材であった部分のうち、摩擦圧接の際に改質された部分である部材同士の当接面近傍で切断したものである請求項1に記載の摺動部材。
  3. 上記銅合金が青銅系銅合金である請求項1又は2に記載の摺動部材。
  4. 上記青銅系銅合金が固体潤滑剤を含有する請求項3に記載の摺動部材。
  5. 上記青銅系銅合金が、鉄を0.15質量%以上6.0質量%以下、スズを3.0質量%以上16.0質量%以下、硫黄を0.3質量%以上3.0質量%以下、燐を0.01質量%以上0.3質量%以下含有し、残分が銅と不可避的不純物とからなる請求項4に記載の摺動部材。
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