一部の実施形態では、本発明は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合されたエリスロポエチンなどの治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を有するベクターを含む遺伝子組換え組織利用微小器官を含む長期持続性治療製剤、およびそれらの使用方法に関する。
一実施形態では、本発明は、遺伝学的に改変された微小器官を含む長期持続性治療用製剤を提供する。微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を含み、核酸配列は治療用ポリペプチドをコードし、治療用製剤を投与することで、ヘモグロビン(「Hb」)の濃度を上昇させ、この上昇が少なくとも1ヶ月間持続される。別の実施形態では、上昇が1ヶ月間を超えて維持される。別の実施形態では、ヘモグロビン濃度が上昇し、その上昇が6ヶ月間を超えて維持される。
別の実施形態では、本発明は、遺伝学的に改変された微小器官を含む長期持続性治療用製剤を提供する。前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を含み、前記核酸配列は治療用ポリペプチドをコードし、製剤を投与することで、血中Hb濃度を基礎濃度以上に上昇させ、その上昇が少なくとも1ヶ月間持続され、ベクターはヘルパー依存性アデノウイルスベクターである。
本明細書中で使用されるように、用語「上昇したヘモグロビン濃度(increased hemoglobin levels)」は、必要としている対象への本発明の長期持続性治療用製剤の投与に反応した基礎濃度以上の血中Hb濃度の上昇を意味する。本明細書中で使用されるように、用語「上昇したヘモグロビン濃度」は、本願明細書で「ヘモグロビン応答(hemoglobin response)」と呼ばれることもある。
一実施形態では、Hb反応は、Hb濃度がFDA推奨範囲である10〜12gm/dLの範囲に及ぶようなHb濃度の上昇を意味する。一実施形態では、Hb濃度が9.5〜12.6gm/dLの範囲に及ぶ。一実施形態では、Hb濃度が9〜13.2gm/dLの範囲に及ぶ。一実施形態では、Hb濃度が8.5〜13.8gm/dLの範囲に及ぶ。一実施形態では、Hb濃度が8〜14.4gm/dLの範囲に及ぶ。
一部の実施形態では、上昇したHb濃度が、Hb濃度が上昇している時間の少なくとも90%の間、所定の範囲内に維持される。他の実施形態では、Hb濃度は時間の少なくとも80%の間、維持される。さらに他の実施形態では、Hb濃度は時間の少なくとも70%の間、維持される。
赤血球新生刺激因子製剤(ESA)による処置を以前受けていた患者の場合、ESA注入の代わりに「ヒトエリスロポエチン遺伝学的に改変された微小器官(human erythropoietin-genetically modified micro-organ)」(「hEPO−GMMO」)を投与することで、その自然な最低状態へのHb濃度の減少を防止する。一実施形態では、患者はESAによる処置を受けており、Hb反応は、患者の自然な最低状態と比較して、自然に生じるであろうHb濃度の減少の防止、および上昇したHb濃度の維持を意味する。一実施形態では、hEPO−GMMOを投与することで、Hb濃度の減少を防止する。このように、Hb濃度を治療濃度域内に維持できる。
本明細書中で使用されるように、用語「赤血球新生(erythropoiesis)」とは、赤血球の形成または生成の過程のことに言及している。エリスロポエチンは、赤血球新生、つまり赤血球生成の調節における必須要素である。Hb反応の指標は、赤血球生成、つまり赤血球新生の指標でもある。
本明細書中で使用されるように、持続的「ヘモグロビン応答(hemoglobin response)」は、Hb応答の質と特性をすべて有する持続的「赤血球新生」と呼ばれることもある。
別の実施形態では、本発明は、遺伝学的に改変された微小器官を含む長期持続性治療用製剤を提供する。前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を含み、前記核酸配列は治療用ポリペプチドをコードし、製剤を投与した後に血中Hb濃度は基礎濃度以上に上昇され、免疫応答性宿主でその上昇が1ヶ月間を超える間、持続される。
一実施形態では、免疫応答性宿主において核酸の発現量が基礎量の5%を超えて増加する。別の実施形態では、ベクターがヘルパー依存性アデノウイルスベクターである。
本発明は、長期持続性治療用製剤とその使用方法を提供するものであり、製剤は遺伝学的に改変された微小器官を含む。本明細書中で使用されるように、一実施形態では、用語「微小器官(micro-organ)」は、細胞生存および機能の助けとなる方法で調製した外植片から得られる、または同一である分離組織または器官の構造のことに言及している。一実施形態では、微小器官は少なくとも一部のインビボ構造を維持し、別の実施形態では、それが得られる組織または器官に類似している相互作用を維持する。一実施形態では、微小器官は損傷のない分離組織切片である。別の実施形態では、微小器官は、該微小器官が由来する組織または器官の微小構造と三次元構造とを保持し、微小器官内の細胞への十分な栄養素およびガスの受動拡散と、不十分な栄養素および/または廃棄物の蓄積による細胞毒性および同時細胞死を最小限に抑えるための微小器官の細胞から出た細胞廃棄物の拡散とを可能にするように選択された寸法を持つ。一実施形態では、微小器官は真皮組織の薄片である。
一実施形態では、微小器官は直径1〜2mm、長さ30〜40mmである。別の実施形態では微小器官の直径が、例えば1〜3mm、1〜4mm、2〜4mm、0.5〜3.5mm、または1.5〜10mmであってもよい。別の実施形態では微小器官の直径が、例えば約2mmまたは約1.5mmであってもよい。別の実施形態では微小器官の長さが、5〜100mm、10〜60mm、20〜60mm、20〜50mm、20〜40mm、20〜100mm、30〜100mm、40〜100mm、50〜100mm、60〜100mm、70〜100mm、80〜100mm、または90〜100mmであってもよい。別の実施形態では微小器官の長さが、約20mm、約30mm、約40mm、または約50mmであってもよい。一実施形態では微小器官が1.5cm2未満であり、別の実施形態では1cm2未満である。別の実施形態では直径が1.5cm未満であり、別の実施形態では長さが1.5cm未満である。
一実施形態では、微小器官は外植片である。一実施形態では、微小器官は組織由来である。別の実施形態では、微小器官は組織の切片または一部分またはパーツである。別の実施形態では、微小器官は器官の切片または一部分またはパーツである。微小器官は植皮片と区別することができ、その植皮片は、一実施形態では、インビボおよびインビトロで長期間生存するように特別に設計され、別の実施形態では、微小器官内の細胞への十分な栄養素およびガスの受動拡散と、一実施形態では不十分な栄養素および/または廃棄物の蓄積による細胞毒性および同時細胞死を最小限に抑える微小器官の細胞から出た細胞廃棄物の拡散とを可能にするようにその寸法が特別に選択されている。このように、一実施形態では、微小器官は植皮片ではない。別の実施形態では、微小器官は、分離細胞の一群と区別することができ、一実施形態では天然または人工の骨格上で成長し、微小器官は該微小器官が由来する組織または器官の微小構造および三次元構造を維持する。そのため、一実施形態では、微小器官は骨格上またはゲル内で成長した1種類以上の細胞ではない。
微小器官の詳細説明は米国公開番号2003/0152562に記載されており、参照により本明細書に援用される。
先行特許出願(参照によりその全てが本明細書中に援用されるWO03/006669、WO03/03585、WO04/099363)で、微小器官について述べている。対象遺伝子産物を発現するように微小器官を修飾でき、長期間、自律的に機能する状態で体外に維持することができ、その後、疾患または障害の処置のために皮下または体内の他の場所に移植できる。一実施形態では、対象遺伝子産物を発現するように修飾された微小器官は治療用微小器官である。本発明の治療用微小器官は、インビトロおよびインビボで対象遺伝子産物の長期発現プロファイルを予想外にも示した。
本明細書中で使用されるように、用語「外植片(explant)」とは、一実施形態では、生物の本来の成長部位を取り除き、一定の期間、培地に置いた組織または器官あるいはその一部のことに言及している。一実施形態では、組織または器官は生存しており、別の実施形態では代謝的に活性のあるもの、またはその組み合わせである。本明細書中で使用されるように、一部の実施形態では、用語「外植片(explant)」を「微小器官(micro-organ)」または「微小器官外植片(micro-organ explant)」と同じ意味で使用できる。
本明細書中で使用されるように、一実施形態では、用語「微小構造(microarchitecture)」は、外植片がインビボで物質的および/または機能的に接触していた少なくとも1つの細胞または非細胞物質とのインビトロの物質的および/または機能的接触を維持する組織の細胞の一部またはすべてにおける外植片の特性のことに言及している。
別の実施形態では、微小器官外植片は、該外植片が由来する組織または器官の三次元構造を維持する。一実施形態では、微小器官外植片は、細胞−細胞、細胞−基質、および細胞−間質の相互作用などの空間的相互作用と、該外移植片が由来する組織の方向とを保持する。一実施形態では、上述のような空間的相互作用を保存することで、自己分泌および傍分泌の分泌、および、一実施形態では外植片に対する長期刺激を与えるその他の細胞外刺激などの外植片の生物学的機能の維持を可能にする。一実施形態では、微小器官外植片の細胞の少なくとも一部は、移植後、インビトロまたはインビボで、インビボで物質的および/または機能的に接触していた少なくとも1つの細胞または非細胞物質との物質的および/または機能的接触を維持する。一実施形態では、細胞の一部とは、個体群の細胞の少なくとも約50%のことを言い、別の実施形態では少なくとも約60%、別の実施形態では少なくとも約70%、別の実施形態では少なくとも約80%、別の実施形態では少なくとも約90%以上のことに言及している。別の実施形態では、外植片の細胞は、分離元の器官または組織の少なくとも1つの生物学的活性を維持する。
一部の実施形態では、本発明の製剤はいずれも、本願明細書で述べられるような剤形または実施形態で遺伝学的に改変された微小器官(GMMO)を含む。一部の実施形態では、本発明の製剤はいずれも、本願明細書で述べられるような剤形または実施形態で遺伝学的に改変された微小器官から構成される。一部の実施形態では、本発明の組成物はいずれも、本願明細書で述べられるような剤形または実施形態で遺伝学的に改変された微小器官から本質的になる。一部の実施形態では、用語「含む(comprise)」とは、遺伝学的に改変された微小器官などの示された活性薬剤の含有のほか、製薬業界では公知のように、他の活性薬剤、および薬学的に許容される担体、賦形剤、皮膚軟化剤、安定化剤などの含有のことも言う。一部の実施形態では、用語「本質的に〜からなる(consist essentially of)」とは、唯一の有効成分が示された有効成分であるが、安定化、保存などのための他の化合物を含むことができるが、示された有効成分の治療効果に製剤が直接関与することはない組成物のことに言及している。一部の実施形態では、用語「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」とは、有効成分の放出を促進する成分のことに言及している場合がある。一部の実施形態では、用語「〜なる(consisting)」とは、有効成分および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物に言及している。
さらに、本明細書中で使用されるように、用語「含む(comprising)」は、系が列挙した要素を含むことを意味することを意図としているが、必要に応じたもの考えられるその他の要素を除外するものではない。句「本質的に〜からなる(consisting essentiallly of)」では、列挙した要素を含むが、方法の性能に不可欠な有意な影響を持つ可能性があるその他の要素を除外する方法を意味する。そのため、「〜からなる(consisting of)」は、その他のわずかな要素の以上のものを除外することを意味するものとする。これらの移行用語によって定義される実施形態が、本発明の範囲内である。
同様に、一部の実施形態では、本発明の方法のベクターまたは方法で使用するためのベクターは、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を含み、前記核酸配列は治療用ポリペプチドをコードする。別の実施形態では、ベクターは前記核酸配列から本質的になり、別の実施形態では、ベクターは前記核酸配列からなる。
微小器官を分離できる哺乳動物の例としては、ヒトおよびその他の霊長類、完全または部分的に交配した豚(例えば、小型豚および遺伝子組換え豚)などの豚、齧歯類などが挙げられる。微小器官はさまざまな器官の組織から処理でき、一実施形態では、その器官が皮膚、真皮、リンパ系、膵臓、肝臓、胆嚢、腎臓、消化管、気道、生殖器系、尿路、血液、膀胱、隔膜、前立腺、骨髄、胸腺、脾臓、またはその組み合わせである。これらの器官からの外植片は、ランゲルハンス島細胞、毛包、腺、上皮、および結合組織細胞、または取得元の器官の微小構造に似ている微小構造に配置されたその組み合わせを含むことができる。一実施形態では、外植片の取得元の器官の微小構造は、当技術分野で公知の材料、装置、および/または方法を用いた微小器官外植片で区別または識別できる。
一実施形態では、本発明は、製剤と、遺伝学的に改変された微小器官を含むその使用方法を提供する。一実施形態では、用語「遺伝学的に改変された微小器官(genetically modified micro-organ)」または「GMMO」とは、少なくとも1つの遺伝子組換え遺伝子産物を発現する微小器官のことに言及したものである。その他の実施形態では、微小器官への言及が、非遺伝学的改変微小器官のことを必ずしも言うものではないが、場合によっては、当業者にとって文脈から明白になるため、遺伝学的に改変された微小器官のことも言うことがある。一実施形態では、句「遺伝子産物」とは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、および機能性RNA分子に言及したものである。一実施形態では、核酸分子によってコードされた遺伝子産物が、対象に提供されるべき目的遺伝質産物である。前記遺伝子産物の例としては、移植対象の細胞によって通常は生成されるタンパク質、ペプチド、糖タンパク質、およびリポタンパク質が挙げられる。一実施形態では遺伝子産物が微小器官の採取元の生物、および/またはGMMOが移植される生物において天然に存在することはなく、別の実施形態では遺伝産物が天然に存在する。一実施形態では、GMMOの遺伝子産物は、微小器官の1つ以上の細胞によって内因性発現された遺伝子産物に似ているか、同一である。一実施形態では、遺伝学的改変を行うことで、非遺伝学的改変微小器官で生成される遺伝子産物の量を増加させる。別の実施形態では、GMMOによって発現される遺伝子産物は、微小器官の1つ以上の細胞によって内因性発現された遺伝子産物に似ていなく、同一でもない。別の実施形態では、核酸分子によってコードされた遺伝子産物が、対象遺伝子の発現を直接的または間接的に制御する分子をコードする。別の実施形態では、核酸分子によってコードされた遺伝子産物が、対象に提供されるべき目的遺伝質産物の発現量を上方調節または下方調節する。
別の実施形態では、微小器官の遺伝学的改変を行うことで、内在性遺伝子の発現プロファイルを修正できる。例えば、内在性遺伝子の発現を制御するためのエンハンサー、あるいは抑制または誘導調節エレメントを導入することで、このことを実現できる。
微小器官外植片を遺伝学的に改変するために、当該技術分野で公知のいずれの方法も使用できる。公知のとおり、ウイルスベクター、プラスミドベクター、線状DNAなどさまざまな異なるベクターのいずれか1つを使用して、治療薬をコードする外因性核酸フラグメントを標的細胞および/または組織に導入できる。例えば、感染、形質導入、トランスフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、遺伝子銃遺伝子導入、融合性およびアニオン性リポソーム(カチオン性リポソームの使用に代わるもの)を用いたリポソーム遺伝子導入、直接注入、受容体媒介摂取、マグネットポレーション、超音波、またはこれらの組み合わせのほか、当該技術分野で公知のその他の方法を用いて、これらのベクターを挿入できる(詳細については、例えば次の参考文献を参照:"Methods in Enzymology” Vol. 1-317, Academic Press, Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel F. M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989) and in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Sambrook et al. Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989), or other standard laboratory manuals)。対象の配列をコードするポリヌクレオチドセグメントを、哺乳類細胞を形質導入することと、組換え生産物の発現を形質導入された細胞内へ向かわせることとに適した発現ベクターに結合できる。外因性核酸フラグメントの導入は、ベクターを微小器官の近傍に導入することで行われる。上記または当該技術分野で公知の方法を用いて外因性核酸フラグメントが細胞に組み込まれると、核酸フラグメントによってコードされた治療薬の生成および/または分泌速度を定量できる。一実施形態では、用語「外因性(exogenous)」とは、外部に由来した物質のこと、例えば、細胞または組織の外に由来した核酸に言及したものである。
一実施形態では、本発明の製剤と方法の微小器官はベクターを含み、一実施形態で組換え遺伝子発現を促進する。一実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクター(例えば、DNAプラスミドまたは小環DNA)、「弱毒性」ウイルスベクター、つまり外因性遺伝子なし(一実施形態では欠失によるものであり、別の実施形態では、遺伝子発現を妨げる遺伝子における挿入、置換、または欠失によるものである)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)ベクター、またはアデノ関連ウイルスAAV(一実施形態では一本鎖であり、別の実施形態では二本鎖である)などの非免疫原性遺伝子導入剤である。別の実施形態では、組換え遺伝子発現によって、微小器官による遺伝子産物の毒性または免疫媒介性拒絶反応がなくなるように、前記製剤が選択される。一実施形態では、ベクターはウイルスによって生成され、別の実施形態では、ベクターはプラスミドである。一実施形態では、ウイルス由来ベクターはアデノウイルスから生成され、そのアデノウイルスは一実施形態ではヘルパー依存性アデノウイルスである。別の実施形態では、本願明細書の上記のように、ウイルス由来ベクターはアデノウイルス関連ベクターから生成される。
一実施形態では、用語「ベクター(vector)」または「発現ベクター(expression vector)」とは、複製できる場合に、細胞内への導入のために核酸配列を挿入できる担体分子に言及したものである。一実施形態では、核酸分子をRNAな転写し、そのRNAは、一部の実施形態では、その後にタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の事例では、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの生成において、RNA配列は翻訳されない。一実施形態では、発現ベクターは、特定の宿主細胞の機能可能に結合されたコード配列の転写および場合によっては翻訳に必要な核酸配列のことに言及している種々の「制御配列(regulatory sequence)」を含んでもよい。別の実施形態では、ベクターは複写源をさらに含む。本願明細書で使用される場合、用語「制御配列」は、「調節配列」と呼ばれることもある。一実施形態では、ベクターがシャトルベクターであってもよく、このシャトルベクターは、一実施形態では原核細胞と真核細胞の両方で増殖でき、別の実施形態では、ベクターを、選択される生物のゲノム内での融合を促進するように構成してもよい。他の実施形態では、ベクターは、例えばプラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルス、または人工染色体であってもよい。一実施形態では、ベクターはウイルスベクターであり、そのウイルスベクターは、一実施形態ではバクテリオファージ、哺乳類ウイルス、または植物ウイルスであってもよい。
一実施形態では、ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである。別の実施形態では、アデノウイルスはいかなる公知のセロタイプまたはサブグループであってもよい。
遺伝子導入ベクターとしてアデノウイルスベクターを用いる利点としては、その中規模のサイズのゲノム、操作しやすさ、高い力価、幅広い標的細胞範囲、および高い感染性である。アデノウイルスの両端は100〜200の塩基対逆方向反復(ITR)を含み、この塩基対逆方向反復はウイルスDNA複製およびパッケージングに必要なシスエレメントである。ゲノムの初期領域 (E)および後期領域(L)は、ウイルスDNA複製の開始によって分割されるさまざまな転写単位を含む。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムおよび少しの細胞遺伝子の転写の調節に関与するタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現によって、ウイルスDNA複写のためのタンパク質を合成する。これらのタンパク質は、DNA複写、後期遺伝子発現、および宿主細胞シャットオフに関与する。ウイルスカプシドタンパク質の大部分を含む後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる1つの一次転写産物を有意に処理した後にのみ発現される。MLP(16.8m.u.にある)は、感染の後期の間に特に効率的であり、このプロモーターにより生じるすべてのmRNAは、翻訳に好ましいmRNAにする5´−トリパ―タイトリーダー(TPL)配列を持つ。
別の実施形態では、アデノウイルスベクターはヘルパー依存性アデノウイルスベクター(「HDAD」、「HD」または「HDAd」または「HD−Ad」)であり、このヘルパー依存性アデノウイルスベクターは、別の実施形態では、弱毒性、除去、ミニ、完全欠失、大容量、Δ、または疑似アデノウイルスと同義であり、別の実施形態では、DNA複製をサポートする配列を除くすべてのウイルスコード配列が欠失しており、一実施形態ではアデノウイルス逆方向末端反復およびパッケージング配列(Ψ)を含む。別の実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスはウイルスタンパク質を発現しない。一実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターは、ベクターDNAを複製およびパッケージするために必要なアデノウイルスのシス作用エレメントのみを含む。一実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターは約500bpの野生型アデノウイルス配列を有する。別の実施形態では、アデノウイルスベクターは、27.7kbのゲノムサイズに対する最低必要条件を満たすためのスタッファーDNAをさらに含み、このスタッファーDNAは、一実施形態では、アデノウイルスカプシドへの効率的なパッケージングのために必要である。一実施形態では、最小限の反復配列を持つ非コード化哺乳類DNAが、スタッファーDNAとして使用される。別の実施形態では、スタッファーDNAは非哺乳類DNAを含み、この非哺乳類DNAは、一実施形態ではHPRTおよび/またはC346コスミッド配列である。
一実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスは、高効率インビボ形質導入、一実施形態ではウイルスタンパク質の残留発現による慢性毒性を避けることで長期導入遺伝子発現を維持することが可能である高濃度導入遺伝子発現、またはその組み合わせを示す。別の実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスは高力価生成能力、幅広い種類の細胞の効率的な感染能力、分裂および非分裂細胞に影響を及ぼす能力、またはその組み合わせを持つ。さらに別の実施形態では、本発明の方法用のヘルパー依存性アデノウイルスは、移植微小器官に対する強力な適応免疫反応を引き起こさず、この反応は、免疫応答性宿主での一実施形態では、アデノ特有MHCクラスI制限CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の作成を特徴として、一実施形態では導入遺伝子発現期間を制限することになり、別の実施形態では数週間以内にアデノウイルスベクターを一掃することになる。さらに別の実施形態では、本発明の方法用のヘルパー依存性アデノウイルスは高濃度の細胞傷害性T細胞を生じず(一実施形態では、当該技術分野で公知のようにポジティブCD8染色によって測定できる)、別の実施形態では高濃度のヘルパーT細胞を生じない(一実施形態では、当該技術分野で公知のようにポジティブCD4染色法によって測定できる)。
別の実施形態では、ベクターゲノムは宿主細胞染色体に組み込まれないため、ヘルパー依存性アデノウイルスは、発癌性形質変換を引き起こす可能性がある生殖細胞系列移行および挿入突然変異のリスクが低い。一実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスのクローン能力は非常に大きく(一実施形態では約37kb、別の実施形態では約34kb)、ゲノム遺伝子座全体、複数の導入遺伝子、および導入遺伝子発現を強化、延長、調節する大きなシス作用エレメントの提供を可能にする。
一実施形態では、本発明の組成物および方法用のヘルパー依存性アデノウイルス系は、PalmerとNg、2003 Mol Ther 8:846と、PalmerとNg、2004 Mol Ther 10:792とで述べられているものと同様であり、その全体が引用により援用される。一実施形態では、複製可能なアデノウイルスを生成するようにヘルパーアデノウイルスとヘルパー依存性アデノウイルスとの間の組換えを最小限に抑えるために、ヘルパー依存性アデノウイルス系のヘルパーウイルスコンポーネントのE3領域に挿入されるスタッファー配列がある。
一実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターを含む本発明の製剤は、EPOおよびIFN−アルファの長期で高いインビトロ(図1、図2、および図6B)およびインビボ(図6A)発現量を示す。別の実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターを含む本発明の製剤は、アデノウイルス−5を含む微小器官と比較して、形質導入後の少なくとも100日間、ピークEPO発現量の割合の増加を示す(図3)。理論で制限されずに、本発明の微小器官からの長期持続性、高濃度の遺伝子産物に寄与する要因の1つは、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターの使用であり、そのヘルパー依存性アデノウイルスベクターは組織に対して毒性を示さず、本発明の製剤内で非免疫原性である。
さらに別の実施形態では、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターを含む本発明の製剤は、少なくとも1ヶ月未満の間、インビボでのピークEPO発現量の割合の増加を示す(図16)。さらに別の実施形態では、少なくとも2週間未満の間、インビボでのピークEPO発現量が増加する(図10C)。
別の実施形態ではアデノウイルスベクターはE1欠失であり、さらに別の実施形態ではアデノウイルスベクターはE2、E3、E4、またはその組み合わせをさらに含む。
別の実施形態では、ウイルスベクターはアデノ関連ウイルスベクター(AAV)である。一実施形態では、AAVはパルボウイルスであり、アデノウイルスストックの汚染として発見される。いずれの疾患にも関係していない普遍的ウイルス(抗体が米国ヒト個体群の85%に存在する)である。その複写がアデノウイルスなどのヘルパーウイルスの存在度に左右されるため、ディペンドウイルスとしても分類される。少なくとも9種類のセロタイプが分離されており、そのうちAAV−2が最も特徴付けられている。AAVは、直径20〜24nmの20面体ウイルス粒を形成するようにカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3にカプシドで包まれる一本鎖線状DNAを有する。
一実施形態では、AAV DNAは約4.7キロベースの長さである。一実施形態では、2つのオープンリーディングフレームを含み、2つのITRで両側に配置されている。AAVゲノムには2つの主要な遺伝子、repとcapがある。cap遺伝子はカプシドタンパク質VP1〜3をコードし、rep遺伝子はウイルス複製に関与するタンパク質をコードする。各ITRは、T字形ヘアピン構造を形成する。これらの末端反復は、染色体への組み込みのためのAAVの唯一の必須シスコンポーネントである。そのため一実施形態では、AAVは、送達のために遺伝子のカセットによって除去および置換されるすべてのウイルスコード配列にベクターとして使用できる。
一実施形態では、発現ベクターとして組換えAAV(rAAV)を使用する場合、ベクターは145−bpのITRを含み、当該ITRはAAVゲノムのほんの6%であり、一実施形態では、4.5−kbのDNA挿入を行うためにベクターに空間を空ける。
一実施形態では、AAVは、病原性と考えられないし、疾患にも関係していないため安全である。ウイルスコード配列を除去することで、ウイルス遺伝子発現に対する免疫反応を最小限に抑える。そのため、rAAVは、炎症反応が有る場合でも最低限の炎症反応のみを引き起こす。別の実施形態ではAAVベクターが二本鎖であり、さらに別の実施形態ではAAVが自己相補的であり、一実施形態ではウイルス第二鎖DNA合成の要求事項をバイパスし、一実施形態では初期導入遺伝子発現を生じる。
別の実施形態では、ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである。レトロウイルスは、逆転写のプロセスによって感染細胞でそのRNAを二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする一群の一本鎖RNAウイルスである。その後、結果として生じるDNAはプロウイルスとして細胞染色体に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を管理する。組み込みによって、受容細胞およびその子孫細胞でウイルス遺伝子配列を保持する。レトロウイルスゲノムは、カプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、およびエンベロープ成分をそれぞれコードする3つの遺伝子、gag、pol、およびenvを含む。gag遺伝子からの上流に見られる配列は、ウイルス粒子にゲノムをパッケージングするための信号を含む。2つの長い末端反復(LTR)配列が、ウイルスゲノムの5´および3´末端に存在する。これらは強力なプロモーターおよびエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムでの組み込みにも必要である。
一実施形態では、レトロウイルスベクターを作るために、1つ以上の対象オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列をコードする核酸が、複製に欠陥があるウイルスを生成する特定ウイルス配列の代わりに、ウイルスゲノムに挿入される。ウイルス粒子を生成するために、gag、pol、およびenv遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株が作られる。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と一緒にcDNAを含む組換えプラスミドがこの細胞株に導入される場合(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)、パッケージング配列によって、組換えプラスミドのRNA転写をウイルス粒子にパッケージできるようにして、その後、培地中に分泌する。その後、組換えレトロウイルスを含む培地を採取し、必要に応じて濃縮し、遺伝子導入に使用する。レトロウイルスベクターは、幅広い種類の細胞を感染させることができる。しかし、組み込みと安定した発現には、宿主細胞の分割が必要である。
他の実施形態では、ウイルスベクターは ワクシニアウイルス、レンチウイルス、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、シミアンウイルス、または単純ヘルペスウイルスなどのウイルスに由来する。
本発明の特定の実施形態では、核酸配列を有するベクターは、裸の組換えDNAまたはプラスミドを含んでもよい。細胞膜を物理的または化学的に透過処理する方法で、構造物の導入を行うことができる。一実施形態ではベクターが小環DNAであり、当該小環DNAは、一実施形態では、非ウイルス遺伝子導入のための超螺旋DNA分子であり、複写の細胞起源でも、抗生物質耐性マーカーでもない。別の実施形態では、小環DNAは、プラスミド生成プロセス中の遺伝子導入ベクターからの細胞制御領域を含まない。そのため、遺伝子治療で使用される他のプラスミドよりも小さく、潜在的に安全性が高い。一実施形態では、小環DNAは高収量で生成し、精製が簡単で、堅固で持続的な導入遺伝子の発現を行う。
標準的な組換え方法を用いたベクターの構造は当該技術分野で公知である(例えば、次の参考文献を参照:Maniatis, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, 1990) and Ausubel, et al., 1994, Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, 1996)、両方とも参照することにより本書に援用される)。
別の実施形態では、ベクターは、マーカーポリペプチドをコードする異種核酸配列をさらに含む。マーカーポリペプチドは、例えばyECitrine、緑色蛍光タンパク質(GFP)、DS−Red(赤色蛍光タンパク質)、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、GFP/EGFP、ヒト成長ホルモン、または当該技術分野で公知のいくつかの他の受容タンパク質を含んでもよい。
別の実施形態では、ベクターは1つ以上の対象遺伝子を含んでもよい。そのため、一実施形態では、本発明のベクターは対象遺伝子を含んでもよく、一実施形態ではエリスロポエチンまたはインターフェロンアルファ2bであり、一実施形態ではマーカーを発現し、別の実施形態ではフレーム内でマーカーに結合され、一実施形態では対象遺伝子産物の識別を可能にし、別の実施形態では微小器官によって生成された対象遺伝子産物と微小器官外の宿主細胞によって内因的に生成された類似の遺伝子産物との区別を可能にする。
一実施形態では、本発明の治療用ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターが微小器官に導入される。当該技術分野で公知であり、カセットおよび/またはベクターを細胞に導入するための、そして本発明の方法に影響を及ぼすための方法が多くあり、以下のものを含むがこれに限定されるものでない:直接DNA取り込み法、ならびに導入、エレクトロポレーション、またはリポソーム媒介トランスフェクションのリン酸カルシウム媒介およびDEAE−デキストラン媒介方法を採用するウイルス、プラスミド、線状DNA、またはリポソーム媒介導入、受容体媒介取り込み、およびマグネットポレーション方法(さらに詳細については、例えば次の参考文献を参照: "Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press, Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel F.M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989) and in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Sambrook et al. Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)、または他の標準実習マニュアル)。
一実施形態では、核酸をコートした粒子による衝撃が、裸のDNA発現構造物を細胞に導入する方法であってもよい。この方法は、細胞を死滅させずに細胞膜に穴を開け、DNA被覆微小発射物を高速に加速さて細胞が入ることを可能にする能力に左右される。小さな粒子を加速させる装置がいくつか開発されている。そのような装置の1つは高圧放電に依存して電流を発生させることで原動力を生ずる。使用される微小発射物は、タングステンまたは金のビーズのような生物学的に不活性または生体適合性物質が含まれるものであった。理解すべき点は、これらの方法のいずれも所望の配列を細胞に導入するために用いられ、それによって生じた細胞がこの発明の方法を達成するために用いられることから発明の一部として考えられる、ということである。
一実施形態では、本発明の製剤および方法のベクターは、核酸配列を有する。本明細書中で使用されるように、用語「核酸(nucleic acid)」は、デオキシリボ核酸(DNA)、そして該当する場合にはリボ核酸(RNA)またはその類似物などのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのことに言及している。また、この用語は、同等物として、ヌクレオチド類似物から作られたRNAまたはDNAの類似物と、説明される実施形態に当てはまる場合には、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドを包含するものと考えられる必要もある。この用語には、天然存在核酸塩基、糖、および共有結合インターヌクレオチド(骨格)連鎖のほか、同様に機能する非天然存在部分を有するオリゴヌクレオチドからも成るオリゴヌクレオチドが包含される。例えば、細胞取り込み強化、核酸標的のアフィニティー強化、ヌクレアーゼの存在下での安定性向上などの望ましい特性のため、多くの場合、前記修飾または置換オリゴヌクレオチドが天然型よりも望ましい。
一実施形態では、用語「核酸(nucleic acid)」または「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」は分子のことを言い、これには、原核生物配列、真核生物mRNA、真核生物mRNAからのcDNA、真核生物(哺乳類など)DNAからのゲノムDNA配列、そして合成DNA配列さえも含まれるが、これに限定されるものではない。当該用語は、DNAおよびRNAの公知の塩基類似体のいずれかを含む配列のことも言う。
当該技術分野で公知のどの合成または組換えプロセスでも核酸を生成できる。当該技術分野で公知の方法を用いて、生物物理的または生物学的な特性をするために、核酸をさらに修飾できる。例えば、ヌクレアーゼに対するその安定性を向上させる(例えば、「エンドキャッピング(end-capping)」)、その溶解性、または相補配列に対する結合親和性を変更するように、核酸を修飾できる。これらの核酸は、ベクター、発現カセット、プロモーター配列、対象遺伝子、またはその組み合わせを含んでもよい。別の実施形態では、その親油性を変更でき、そしてその導入のために用いられるシステムでの変動に影響を及ぼし、一実施形態では、当該配列が、皮膚またはその層のいずれかの中での保持、またはそれらからの浸透に求められているかどうかによる影響をさらに受ける場合がある。当該検討事項が、本発明で、そして記載された方法およびシステムで使用される化合物に影響を及ぼすことがある。
一実施形態では、当該技術分野で公知の方法によって、全体的または部分的にDNAを4つのヌクレオチドから化学的に合成できる。前記方法は、Caruthers(1985; Science 230:281-285)で述べられたものを含む。DNAの合成は、オーバーラッピング二本鎖オリゴヌクレオチドを調製し、隙間を埋め、そして末端同士を結合することによっても行うことができる(一般的に次の参考文献を参照:Sambrook et al. (1989; Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 2nd Edition. Cold Spring Habour Laboratory Press, New York))。別の実施形態では、部位特異的突然変異生成によって、突然変異の不活性化を野生型DNAから行ってもよい(例えば、次の参考文献を参照: Zoller et al. (1982; DNA. 1984 Dec;3(6):479-88); Zoller (1983); and Zoller (1984; DNA. 1984 Dec;3(6):479-88); McPherson (1991; Directed Mutagenesis: A Practical Approach. Oxford University Press, NY)。当該技術分野で公知の方法で、得られたDNAを増幅できる。1つの適した方法が、Saiki等が発表したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法である((1988; Science. 1988 Jan 29;239(4839):487-491), Mullis et al., U.S. Pat. No.4,683,195, and Sambrook et al. (1989))。
当該技術分野では、特定の目的を達成するために核酸を修正する方法は、例えばSambrook等(1989)で開示されている。さらに、本発明の核酸配列は、対象タンパク質のための非コードであるヌクレオチド配列の1つ以上の部分を含むことができる。DNA配列に変異(点突然変異によって生ずるものあるいは挿入、欠失、および置換等の誘導修飾によって生ずるもの)を起こさせ、該DNA配列によってコードされるポリペプチドの活性、半減期、または生産を高めることも、本明細書に包含される。
一実施形態では、本発明の製剤は核酸を含んでもよく、または別の実施形態では、本発明の方法が核酸の導入を含んでもよく、別の実施形態では核酸がベクターの一部である。
特定の発現ベクター系と、細胞に核酸を導入する方法との有効性を、後述のような当該技術分野で日常的に使用される標準的な手法で評価できる。
当業者によって評価されるように、タンパク質またはペプチドをコードする核酸配列または遺伝子のフラグメントまたは誘導体は、完全な野生型遺伝子または配列と同様にまだ機能できる。同様に、核酸配列の構造は野生型配列と比較して変異を有し、それでも、これらの変異にもかかわらず、対象のタンパク質またはペプチド、またはそのフラグメントをコードし、同じ生物学的効果を示す野生型機能を保持する。これらの各々は、本発明の個別の実施形態を表す。
一実施形態では、遺伝子サイレンシングアプリケーションに本発明の製剤および方法を使用してもよい。一実施形態では、キメラ分子であり、2つ以上の化学的に異なる領域を含み、各々が少なくとも1つのヌクレオチドから作られるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を通じて、特定遺伝子の活性または機能が抑制または軽減される。
一実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ分解に対する高い耐性、高い細胞取り込み、および/または標的ポリヌクレオチドに対する高い結合親和性をオリゴヌクレオチドに与えるためにオリゴヌクレオチドが修飾される少なくとも1つの領域を含む。オリゴヌクレオチドの追加領域が RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂させる能力がある酵素の基質として機能することができ、本発明の本態様に従って、特定配列の分解を通じた遺伝子サイレンシングの手段として機能する。ゲル電気泳動によって、必要に応じて、当該技術分野で公知の関連する核酸ハイブリダイゼーションによって、RNA標的の開裂を普通に検出できる。
一実施形態では、当該技術分野で発表されているように(例えば、次の特許を参照:米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号)、2つ以上のオリゴヌクレオチドおよび/または修飾オリゴヌクレオチドの複合構造としてキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドを形成でき、別の実施形態ではリボザイム配列を含んでもよい。
別の実施形態では、遺伝子発現を配列特異的に抑制する低分子干渉RNAの使用を通じて、遺伝子発現、活性、または機能の抑制が達成される。生物の1つの遺伝子に二本鎖(double stranded/duplex)RNA(dsRNA)を投与すると、影響を受けた細胞でのmRNAの急速分解によって特定遺伝子の発現を沈黙させることができる。このプロセスは、特異的RNA阻害剤(RNAi)として機能するdsRNAとともに、遺伝子サイレンシングと呼ばれる。RNAiは、内在性ウイルスおよびトランスポゾン活性などの自然源に由来することがある。また、マイクロインジェクション(Fire et al. (1998) Nature 391: 806-11)を通じて、あるいは相補的RNAまたは折り曲げRNAを作りながら遺伝子構造物による形質転換、あるいはその他ベクター(Waterhouse, P.M., et al. (1998). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 13959-13964 and Wang, Z., et al. (2000). J. Biol. Chem. 275, 40174-40179)によって、細胞に人為的に導入することができる(Elbashir SM, et al (2001). Nature 411:494-498)。一実施形態では、RNAi媒介mRNA分解は二本鎖RNAを含み、他の実施形態では一本鎖RNA、分離RNA(部分的に精製したRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えによって生成したRMA)のほか、1つ以上のヌクレオチドの追加、削除、および/または変更による天然存在RNAとは異なる改変RNAも含む。
一実施形態では、本発明の製剤および方法の核酸は、治療用ポリペプチドをコードする。一実施形態では、用語「ポリペプチド」は、ペプチド(すなわち、アミド)結合によって結合されるアミノ酸残基を含む分子のことを言い、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を含む。したがって、一実施形態では、本発明のポリペプチドは共有結合アミノ酸の単独または複数の鎖を有してもよく、ジスルフィド結合を含む鎖内または鎖間結合をさらに含んでもよい。一実施形態では、一部のポリペプチドは複合高分子錯体のサブユニットも形成してもよい。一実施形態では、ポリペプチドは配座優先を有し、三次元構造を示すと期待できる。配座優先と三次元構造の両方は、ポリペプチドの一次(すなわち、アミノ酸)配列および/またはジスルフィド結合または他の共有結合または非共有結合鎖内または鎖間相互作用の存在(または欠如)によって通常定義される。
一実施形態では、用語「ペプチド」は、ペプチド類似体であるペプトイドおよびセミペプトイドなどのネガティブペプチド(分解物、合成的に合成したペプチド、または組換えペプチドのいずれか)および/またはペプチド模倣物(典型的には、合成的に合成したペプチド)のことを言い、例えば、ペプチドを体内にある間はより安定するように、あるいは細胞への浸透する能力がより高い状態にする修飾を有してもよい。そのような修飾としては、限定されるものではないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾(限定されるものではないが、CH2−NH、CH2−S、CH2−S=O、O=C−NH、CH2−O、CH2−CH2、S=C−NH、CH=CH、またはCF=CHが含まれる)、主鎖修飾、および残基修飾が挙げられる。ペプチド模倣化合物を調製する方法は当該技術分野で公知であり、例えば次の文献で規定されており:Quantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992)、ここで示されるように、参照することにより本書に援用される。
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)を、例えば、N−メチル化(−N(CH3)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH2−)、アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(Rはアルキル、例えばメチルである)、カルバ結合(−CH2−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH2−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH2−CO−)(Rは「通常(normal)」側鎖であり、炭素原子上にもともと存在する。)によって置換してもよい。これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った任意の結合で起こり得るもので、また同時に複数(2〜3)の場所でも起こり得る。
天然芳香族アミノ酸、Trp、Tyr、およびPheは、TIC、ナフチルアラニン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成非天然酸に代替してもよい。上記に加え、本発明のペプチドは、1つ以上の修飾アミノ酸または1つ以上の非アミノ酸モノマー(例えば、脂肪酸、複合糖質など)も含んでもよい。
一実施形態では、用語「アミノ酸(amino acid or amino acids)」は、20種類の天然に存在するアミノ酸;例えばヒドロキシプロリン、ホスホセリン、およびホスホトレオニンを含み、多くの場合、インビボで翻訳後に修飾される前記アミノ酸;および2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン、およびオルニチンを含むが、これに限定されるものではない他の異常アミノ酸を含むと考えられる。さらに、用語「アミノ酸(amino acid)」はD−およびL−アミノ酸を包含するものであってもよい。
本明細書中で使用されるように、用語「アミノ酸(amino acid)」は、別段の指定がある場合を除き、アミノ酸のDまたはL立体異性体のことに言及している。さらに本発明の範囲内に含まれるものとしては、例えば精製野生型腫瘍抑制タンパク質の生物活性を有する同等のタンパク質または同等のペプチドがある。「同等のタンパク質(equivalent protein)」および「同等のポリペプチド(equivalent polypeptide)」は、天然に存在するタンパク質またはポリペプチドの線状配列から逸脱するが、その生物活性を変更しないアミノ酸置換を有する化合物のことに言及している。これらの同等物は、関連アミノ酸、例えば同様に変更したアミノ酸との1つ以上のアミノ酸の置き換え、または側鎖または官能基の置換または修飾によって、自然の配列と違う可能性がある。
ペプチドまたはポリペプチド、またはこれらをコードするDNA配列を、原核細胞または真核細胞などのさまざまな天然源または非天然源から得ることができる。一実施形態では、ソース細胞は野生型、組換え、または突然変異体であってもよい。別の実施形態では、多数のペプチドまたはポリペプチドは、細菌、酵母、または菌類などの微生物に対して、ウイルスに対して、動物(哺乳類、無脊椎動物類、は虫類、鳥類、および昆虫類を含む)に対して、あるいは植物細胞に対して内因性であってもよい。
別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは、ビリオン粒子の表面コート、特定の細胞溶解物、組織抽出物などのより特定の供給源から得てもよく、細胞膜上に発現されたそれらのポリペプチドに限られることもある。
別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは、特定の細胞または組織の種類、成長段階、または病状または病期から得られる。一実施形態では、病状または病期が癌であり、別の実施形態では病状が感染症であり、別の実施形態ではHIV感染症である。別の実施形態では病状が発育障害であり、さらに別の実施形態では病状が代謝障害である。
本発明のポリペプチドはどんな大きさであってもよい。予想されるように、ポリペプチドはさまざまな分子量を示すことができ、一部は150〜200キロダルトン(kD)を超える。典型的には、ポリペプチドは約5,000〜約100,000ダルトンの分子量を有してもよい。さらに他の物は、例えば、約10,000〜約75,000ダルトン、または約20,000〜約50,000ダルトンの狭い範囲に入ってもよい。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは1〜250の長さのアミン酸残基であってもよい。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは10〜200の長さのアミン酸残基であってもよい。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは50〜100の長さのアミン酸残基であってもよい。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは1〜250の長さのアミン酸残基であってもよい。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは1〜250の長さのアミン酸残基であってもよい。一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドの最大サイズは、発現されるベクターによって決まり、一実施形態では約20〜37kD、20〜25kD、25〜30kD、30〜37kD、または35〜37kDである。別の実施形態では、ポリペプチドが34kDの糖タンパク質である。
別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドがアゴニストである。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドがアンタゴニストである。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが抗原である。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが酵素である。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが酵素または他の基質の活性剤である。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが酵素または他の基質の阻害剤である。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドがホルモンである。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが調節タンパク質である。調節タンパク質は、遺伝子の発現および複製、酵素の能力、細胞とその環境の間の相互作用、およびその他多くの兆候を管理する多数の相互作用を命令する。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが細胞骨格タンパク質である。細胞骨格タンパク質は細胞の柔軟な骨格を形成し、細胞小器官および形成された物体の付着点を提供し、細胞の構成要素間のコミュニケーションを可能にする。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが毒素である。別の実施形態では、本発明の治療用核酸は1つ以上の自殺遺伝子をコードする。
別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは、アゴニスト、アンタゴニスト、抗原、酵素、酵素活性剤、酵素阻害剤、酵素基質、ホルモン、調節タンパク質、細胞骨格タンパク質、または毒素の機能性フラグメントである。「機能性フラグメント」は、ペプチドまたはポリペプチドの残りがない場合にでも、ペプチドまたはポリペプチドの機能の1つ以上を行う能力があるペプチドまたはポリペプチドの一部を示すように意図されている。一実施形態では、機能性フラグメントは、対象の標的との分子間相互作用を仲介するのに十分である。
別の実施形態では、ペプチドはDNAまたはRNAまたはそのフラグメントを結合させる。一実施形態では、RNAまたはRNAが結合しているペプチドは、以下を含むがこれに限定されるものではない、公知の多くのうちのいずれであってもよい。すなわち、ベータ―ベータ―アルファ亜鉛フィンガータンパク質、核内受容体タンパク質、ループシートヘリックスタイプタンパク質、およびGAL4タイプタンパク質などの亜鉛フィンガータンパク質と;Croおよびリプレッサータンパク質、LacIプリンリプレッサータンパク質(PurR)、FokI制限エンドヌクレアーゼ(DNA認識領域)、ガンマ−デルタリコンビナーゼタンパク質(C−末端領域)、Hinリコンビナーゼタンパク質、Trpリプレッサータンパク質、ジフテリアtoxリプレッサー、カタボライト遺伝子活性化タンパク質(CAP)、ホメオドメイトタンパク質、RAP1タンパク質、Prd対タンパク質、Tc3トランスポザーゼタンパク質、TFIIBファミリー、インターフェロン調節因子、転写因子ファミリー、およびETS領域ファミリーバクテリオファージなどのヘリックスターンヘリックスタンパク質と;ベーシックジッパータンパク質およびジッパータイプタンパク質などのロイシンジッパータンパク質とが挙げられる。別の実施形態では、DNAまたはRNA結合ペプチドは、Creリコンビナーゼファミリー、パピローマウイルス−1 E2タンパク質、ヒストンファミリー、Ebna1核タンパク質ファミリー、Skn−1転写因子、高移動度群ファミリー、およびMADSボックスファミリーなどの他のアルファヘリックスタンパク質と;TATAボックス結合タンパク質などのベータシートタンパク質と;Metリプレッサータンパク質、Tus複製終結タンパク質、組込み宿主因子タンパク質、超好熱菌DNA結合タンパク質、Arcレプレッサー、転写因子Tドメインなどのベータヘアピン/リボンタンパク質と;Relホモロジー領域およびStatファミリーなどのその他のタンパク質ファミリーであってもよい。別の実施形態では、DNAまたはRNA結合ペプチドは、メチルトランスフェラーゼタンパク質、PvuIIエンドヌクレアーゼタンパク質、エンドヌクレアーゼVタンパク質、EcoRVエンドヌクレアーゼファミリー、BamHIエンドヌクレアーゼファミリー、EcoRIエンドヌクレアーゼファミリー、DNAミスマッチエンドヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼIタンパク質、DNAポリメラーゼT7、DNアーゼIタンパク質、DNAポリメラーゼベータタンパク質、ウラシル−DNAグリコシラーゼ、メチルアデニン−DNAグリコシラーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、およびHIV逆転写酵素などのトポイソメラーゼIまたはウイルスタンパク質などの酵素であってもよい。
別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは、転写または翻訳活性化因子またはそのフラグメントである。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは、転写または翻訳レプレッサーまたはそのフラグメントである。別の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドが受容体またはそのフラグメントである。
一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは、本願明細書に記載のペプチドまたはポリペプチドのいずれかの同族ペプチドを意味してもよい。「同族(cognate)」ペプチドは、別の分子と相互作用および/または結合するペプチドである。
本発明の他の実施形態にしたがって、組換え遺伝子産物を、対応する天然ポリヌクレオチドと比較して修飾ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドでコードしてもよい。
タンパク質に加えて、組換え遺伝子産物は、機能性RNA分子も含んでもよい。
本発明の別の実施形態にしたがって、本発明の製剤および方法は、機能性RNA分子を生成する微小器官を提供してもよい。機能性RNA分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列、本願明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むリボザイム、およびこれらと結合したリボザイム配列を有してもよい。前記リボザイムは、固相オリゴヌクレオチド合成を用いて簡単に合成できる。
リボザイムは、対象mRNAコード化タンパク質の開裂による遺伝子発現の配列特有の阻害のために使用が増えている[Welch et al., “Expression of ribozymes in gene transfer systems to modulate target RNA levels.” Curr Opin Biotechnol. 1998 October; 9(5):486-96]。特定の標的RNAを開裂させるリボザイムを設計することの可能性によって、基礎研究と治療への応用の両方で貴重なツールを提供してきた。治療領域では、リボザイムは、感染症の標的RNA、癌の癌遺伝子、および遺伝性疾患での特定体細胞変異に利用されてきた[Welch et al., “Ribozyme gene therapy for hepatitis C virus infection.” Clin Diagn Virol. Jul. 15, 1998; 10(2-3):163-71]。中でも注目すべきは、HIV患者のためのいくつかのリボザイム遺伝子治療プロトコルは既に第I相臨床試験中である。最近になって、リボザイムは、遺伝子組換え動物研究、遺伝子標的検証、および経路教育に使用されている。いくつかのリボザイムは、臨床試験のさまざまな段階中である。ANGIOZYMEは、ヒト臨床試験で研究された最初の化学合成リボザイムだった。ANGIOZYMEは、血管新生経路での重要成分であるVEGF−r(血管内皮成長因子受容体)の形成を特に阻害する。Ribozyme Pharmaceuticals, Inc.のほかにその他の会社も、動物モデルでの抗血管新生治療の重要性を示してきた。C型肝炎ウイルスを選択的に破壊するように設計されたリボザイムであるHEPTAZYMEは、細胞培養試験でC型ウイルスRNAの削減に有効であることが分かった。
前述のように、一実施形態では、本発明の製剤および方法の核酸は、治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を有する治療用製剤を提供する。一実施形態では、用語「治療用(therapeutic)」とは、必要としている対象に提供された時に有益な効果を提供する分子のことに言及している。場合によっては、分子は、対象での当該分子の欠如または存在の減少を元に戻すように機能するという点において効果的である。一実施形態では、治療用タンパク質は、必要なタンパク質の内因性ヌルまたはミスセンス変異を持つ対象の場合などで、対象中に欠如しているタンパク質である。他の実施形態では、内因性タンパク質は突然変異され、機能性タンパク質の提供によって補正される非機能性タンパク質を生成する。他の実施形態では、異種タンパク質の発現は低内因性発現量の付加的なものであり、所定のタンパク質の発現を累積的に増加させる。他の実施形態では、分子は、細胞または宿主を機能するための重要な要素の発現または分泌またはその他を提供するシグナル伝達カスケードを刺激する。
一実施形態では、用語「治療用製剤(therapeutic formulation)」は、診断に、別の実施形態では治療に、あるいは別の実施形態では緩和に、あるいは別の実施形態では処置に、あるいは別の実施形態では疾患、障害、病状、または感染の予防に使用できる物質のことに言及している。一実施形態では、本発明の「治療用製剤」は、適用される標的の構造または機能に影響を与える物質のことに言及している。
別の実施形態では、本発明の「治療用製剤(therapeutic formulation)」は、疾患または障害を患う対象に投与されるとその症状を緩和する分子である。一実施形態では本発明の「治療用製剤」が合成分子であり、また別の実施形態では自然界で発見された源から分離された天然に存在する化合物である。
一実施形態では、治療用ポリペプチドがエリスロポエチンである。一実施形態では、エリスロポエチンによって示される有益な効果はHb濃度増加である。一実施形態では、エリスロポエチンによって示される有益な効果は貧血症の処置である。
別の実施形態では、治療用ポリペプチドがインターフェロンアルファであり、一実施形態ではインターフェロンアルファ2bである。一実施形態では、前記治療用ポリペプチドがその他の治療用ポリペプチドである。
一実施形態では、「処置(treatment)」とは、治療的処置と予防対策の両方を意味し、その目的は上述のような標的とされる病状または障害を防止または低下させることである。そのため、一実施形態では、処置することには、疾患、障害、または病状に関連した症状に直接的に影響を与えるまたは治療すること、抑制すること、阻害すること、予防すること、重症度を下げること、発病を遅らせること、軽減すること、またはその組み合わせを含む。そのため、一実施形態では、「処置する(treating)」とは、特に進行を遅らせること、寛解を早めること、寛解を誘導すること、寛解を増進すること、回復を加速すること、効果を高めること、代替の治療法に対する耐性を軽減すること、またはその組み合わせのことに言及している。一実施形態では、「予防する(preventing)」とは、特に発症を遅らせること、疾患の再発を防止すること、再発の回数または頻度を減らすこと、発症の潜伏間隔を長くすること、またはその組み合わせのことに言及している。一実施形態では、「抑制する(suppressing)」または「阻害する(inhibition)」とは、特に症状の重症度を軽減すること、急性発症の重症度を軽減すること、症状の回数を減らすこと、疾患に関連した症状の発生率を下げること、症状の潜伏期間を短縮すること、症状を改善すること、二次的症状を軽減すること、二次感染を減らすこと、患者生存期間を延ばすこと、またはその組み合わせのことに言及している。
一実施形態では、症状とは一次症状のことであり、別の実施形態では二次症状である。一実施形態では、「一次(primary)」とは、特定の疾患の直接的な結果である症状のことに言及している。また、一実施形態では、「二次(secondary)」とは、主因に由来する、またはその結果生じる症状のことに言及している。一実施形態では、本発明で用いる化合物は、疾患に関連した一次症状または二次症状または二次性合併症を処置する。別の実施形態では、「症状(symptoms)」は、疾患または病状の兆候であってもよい。
一実施形態では、治療用核酸が治療用ペプチドをコードしてもよく、一実施形態では酵素、酵素補助因子、細胞毒性タンパク質、抗体、チャネルタンパク質、輸送タンパク質、成長因子、ホルモン、サイトカイン、受容体、ムチン、界面活性剤、アプタマー、またはホルモンを含んでもよい。別の実施形態では、治療用ポリペプチドが上述の分類の1つ以上であってもよい。別の実施形態では、治療用核酸は、後述のように機能性RNAをコードしてもよい。
一実施形態では、用語「抗体(antibody)または抗体フラグメント(antibody fragment)」とは、インタクトな抗体分子のほか、エピトープに結合できるFab、F(ab´)2、およびFvなどのその機能性フラグメントのことに言及している。一実施形態では、Fabフラグメントとは、インタクトな軽鎖、および重鎖の一部を得るために酵素パパインによる全抗体の消化によって生成できる抗体分子の一価抗原結合フラグメントを含むフラグメントのことに言及している。一実施形態では、Fab´フラグメントとは、インタクトな軽鎖、および重鎖の一部を得るためにペプシンによる全抗体の処置、続いて還元によって得ることが可能な抗体分子の一部のことに言及している。抗体分子あたり2つのFab´フラグメントを得てもよい。一実施形態では、(Fab´)2とは、続いて還元を行わずに酵素ペプシンによって全抗体を処置することで得ることが可能な抗体のフラグメントのことに言及している。別の実施形態では、F(ab´)2は、2つのジスルフィド結合によって結合している2つのFab´フラグメントである。一実施形態では、Fvは、軽鎖の可変領域と、2つの鎖として発現される重鎖の可変領域とを含む遺伝子組換えフラグメントのことを言ってもよい。一実施形態では、抗体フラグメントは、軽鎖の可変領域と、重鎖の可変領域とを含み、遺伝子的に結合した一本鎖分子としての適切なポリペプチドリンカーによって結合された遺伝子組換え分子である一本鎖抗体(「SCA」)であってもよい。
これらのフラグメントを作成する方法は当該技術分野で公知である(例えば、参照することにより本書に援用される次の参考文献を参照:Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988)。
一実施形態では、抗体はエピトープを認識し、当該エピトープとは、別の実施形態において、抗体のパラトープが結合する抗原上の抗原決定基のことに言及している。他の実施形態では、エピトープ決定基は、アミノ酸または炭水化物側鎖などの化学的に活性な分子の表面基群から成ってもよく、他の実施形態では、特定の三次元構造特性を示してもよく、および/または他の実施形態では、特定の電荷特性を示してもよい。
一実施形態では、認識されるエピトープが病原体に由来するものであり、別の実施形態では病原性細胞、または別の実施形態では異常に発現されたタンパク質に由来するものであり、当該異常発現とは、別の実施形態において、発現の場所、数、またはその組み合わせのことを言ってもよい。
抗体フラグメントの別の形態は、1つの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。対象抗体のCDRをコードする遺伝子を作成することで、CDRペプチド(「最小認識単位(minimal recognition unit)」)を入手可能である。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することで、前記遺伝子を調製する。例えば、次の参考文献を参照:Larrick and Fry, Methods, 2: 106-10, 1991。
一実施形態では、抗体には殺腫瘍性があり、したがって特定の癌に効果的である。殺腫瘍活性を持つ抗体も当該技術分野では公知であり、そのいずれかを使用することが本発明の実施形態を表してもよく、IMC−C225、EMD72000、OvaRex Mab B43.13、抗ガングリオシドG(D2)抗体ch14.18、CO17−1A、トラスツズマブ、rhuMAb VEGF、sc−321、AF349、BAF349、AF743、BAF743、MAB743、AB1875、抗Flt−4AB3127、FLT41−A、リツキシマブ、2C3、CAMPATH 1H、2G7、アルファIR−3、ABX−EGF、MDX−447、抗p75 IL−2R、抗p64 IL−2R、および2A11を含む。
一実施形態では、本発明の「治療用核酸(therapeutic nucleic acid)」は、抗高血圧剤、抗鬱薬、抗不安薬、抗凝固薬、 抗痙攣薬、血糖降下薬、充血除去薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗炎症薬、抗精神病薬、向知性薬、コレステロール降下薬、抗肥満薬、自己免疫疾患治療薬、性的不能治療薬、抗菌および抗真菌薬、催眠薬、抗パーキンソン病薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗腫瘍薬、精神安定剤、鎮静薬、栄養剤、βブロッカー、吐剤、鎮吐薬、利尿剤、抗凝固薬、強心剤、アンドロゲン、コルチコイド、同化剤、成長ホルモン分泌促進剤、抗感染薬、冠拡張薬、炭酸脱水酵素阻害薬、抗原虫薬、胃腸薬、セロトニン拮抗薬、麻酔薬、血糖降下薬、ドーパミン作動薬、抗アルツハイマー病治療薬、抗腫瘍薬、抗血小板薬、およびグリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬として機能する分子をコードしてもよく、あるいは「治療用ポリペプチド」が当該分子であってもよい。
一実施形態では、本発明の「治療用製剤」には抗菌性、抗ウイルス性、抗真菌性、または寄生虫性がある。別の実施形態では、治療用製剤は細胞毒性または抗癌活性を示す。別の実施形態では、治療用製剤が免疫賦活性である。別の実施形態では、治療用製剤は炎症または免疫反応を阻害する。
一実施形態では、治療用核酸は、インターフェロンまたはインターロイキンまたはそれらの受容体などのサイトカインをコードしてもよく、あるいは治療用ポリペプチドが当該サイトカインであってもよい。サイトカインまたは適切なものの発現の欠如が、疾患に対する感受性に関与してきた。そして、発現を増大させることが、さまざまな感染症に対する耐性につながることがある。例えば、感染症、または自己免疫疾患でTh1タイプ発現パターンまたはTh2パターンになるように免疫反応にバイアスをかけることなどの有益な効果を生じるように、サイトカインの発現パターンを変更してもよく、変更された発現パターンは宿主にとって有益であることを示すことがある。
別の実施形態では、治療用核酸は、グリコーゲン貯蔵または分解に関与するものなどの酵素をコードしてもよく、あるいは治療用ポリペプチドが当該酵素であってもよい。別の実施形態では、治療用タンパク質は、例えばCFTRなどのイオン輸送体、またはグルコース輸送体、または発現が不足または不適切であるとさまざまな疾患を生じる他の輸送体などの輸送体を含む。
別の実施形態では、治療用核酸は、癌関連事象の進行を変える腫瘍抑制化合物またはアポトーシス促進化合物を復号化し、あるいは治療用ポリペプチドは当該化合物である。
別の実施形態では、本発明の治療用核酸が免疫調節タンパク質をコードしてもよく、あるいは治療用ポリペプチドが免疫調節タンパク質であってもよい。一実施形態では、免疫調節タンパク質は、サイトカイン、ケモカイン、補体、あるいは成分、例えばインターロイキン1〜15、インターフェロンアルファ、ベータ、もしくはガンマ、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン(例えば、好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ化学誘引活性化因子(MCAF)、RANTES、マクロファージ炎症性ペプチドMIP−1aおよびMIP−1b)、または補体成分を含む。
別の実施形態では、本発明の治療用核酸が成長因子または組織促進因子をコードしてもよく、あるいは治療用ポリペプチドが成長因子または組織促進因子であってもよい。一実施形態では、治療用化合物は骨形成タンパク質、OP−1、OP−2、BMP−5、BMP−6、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−9、DPP、Vg−1、60A、またはVgr−1である。別の実施形態では、治療用核酸は、RNAを、または神経再生または修復を促進するペプチドをコードする。そして、NGFまたは他の成長因子を含んでもよい。別の実施形態では、治療用ポリペプチドは神経再生または修復を促進する。そして、NGFまたは他の成長因子を含んでもよい。
別の実施形態では、治療用核酸は以下の物質をコードしてもよく、また治療用ポリペプチドは以下の物質であってもよい。すなわち、天然または非天然インスリン、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、カルボキシペプチダーゼ、ホルモン、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、エラスターゼ、アミラーゼ、血液凝固因子、UDPグルクロン酸転移酵素、オルニチントランスカルバモイラーゼ、シトクロムp450酵素、アブノシンデアミナーゼ、血清胸腺因子、胸腺液性因子、チモポエチン、成長ホルモン、ソマトメジン、共刺激因子、抗体、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮成長因子、肝臓赤血球生成因子(ヘパトポイエチン)、肝細胞成長因子、インターロイキン、インターフェロン、負の成長因子、線維芽細胞増殖因子、αファミリーの形質転換成長因子、βファミリーの形質転換成長因子、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、ソマトスタチン、セロチニン、サブスタンスP、転写因子、またはその組み合わせ。
別の実施形態では、遺伝子はレポーター遺伝子を含む。一実施形態では、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質をコードする。一実施形態では、蛍光タンパク質はyECitrineまたは黄色蛍光タンパク質である。一実施形態では、蛍光タンパク質は クラゲ緑色蛍光タンパク質またはその突然変異体または変異形である。別の実施形態では、GMMOはレポーター遺伝子以外の遺伝子またはレポータータンパク質をコードする遺伝子を含んでもよい。
別の実施形態では、レポーター遺伝子は薬剤耐性を与える。一実施形態では、当業者によって評価されるように、レポーター遺伝子は例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、またはその他などの抗体に対する耐性を与える。別の実施形態では、抗生物質抵抗性遺伝子は、ネオマシン(neo)、ブラストサイジン、スペクチノマイシン、エリスロマイシン、フレオマイシン、Tn917、ゲンタマイシン、およびブレオマイシンに対する耐性を与える遺伝子を含んでもよい。ネオマシン耐性遺伝子の例としては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ11をコードするトランスボゾンTn5のネオマシン耐性遺伝子であり、G418およびカナマイシンを含むさまざまな抗体に対する耐性を与える。別の実施形態では、レポーターはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cat)であり、クロラムフェニコールに対する耐性を与える。
一実施形態では、本発明の製剤および方法は、ウイルス感染症の予防または治療介入用であり、また別の実施形態では細菌性、寄生性、または真菌性感染症またはその組み合わせの予防または治療介入用である。
本発明の本態様に従って、本発明の製剤および方法は疾患の予防または治療介入用である。一実施形態では、そのために対象が処置される疾患は以下のものを含んでもよいが、これに限定されるものではない。すなわち、筋ジストロフィー;癌;心血管疾患;高血圧;感染症;腎疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルトヤコブ病などの神経変性疾患;狼瘡、関節リウマチなどの自己免疫疾患;心内膜炎;グレーブス病;ALD;喘息または?胞性線維症などの呼吸器疾患;骨粗鬆症、関節疾患などの骨疾患;肝疾患;乾癬または湿疹などの皮膚疾患;眼疾患;耳鼻咽喉疾患;トゥレット症候群、統合失調症、鬱病、自閉症、または脳卒中などの他の神経疾患;またはグリコーゲン貯蔵症または糖尿病などの代謝性疾患。当然のことながら、本発明の製剤を通じて、そして本発明の方法に従って達成できる、特定タンパク質の発現による疾患、治療用タンパク質の提供、薬剤の提供、特定タンパク質の発現の阻害などは、本発明の一部と考えることである。
一実施形態では、本発明の製剤および方法のベクターは、1つ以上の調節配列に機能可能に結合される核酸配列を有する。一実施形態では、微小器官の細胞に導入される細胞核酸分子は、核酸によってコードされる遺伝子産物の細胞内での発現に適した形態である。その結果、一実施形態では、核酸分子は、遺伝子(またはその一部)の転写に必要なコード化調節配列を有する。遺伝子産物がタンパク質またはペプチドである場合、核酸分子の転写に必要な核酸分子コード化調節配列を有する核酸分子は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル信号、コードしたタンパク質またはペプチドの運搬に必要な配列、例えば一実施形態では細胞または分泌物の表面にタンパク質またはペプチドを輸送するためのN末端シグナル配列を有する。
遺伝子産物(例えば、プロモーターおよびエンハンサー配列)の発現を調節するヌクレオチド配列は、遺伝子産物が発現される細胞の種類と、遺伝子産物の目標発現量とに基づいて選択される。例えば、プロモーターに結合された遺伝子の細胞種特定発現を与えることが公知であるプロモーターを使用できる。筋芽細胞発現に対して特異的なプロモーターを、対象遺伝子に結合し、その遺伝子産物の筋肉特有発現を与えることができる。当該技術分野で公知である筋肉特有調節エレメントは、ジストロフィン遺伝子から上流の領域を含む(Klamut et al., (1989) Mol. Cell Biol.9:2396), the creatine kinase gene (Buskin and Hauschka, (1989) Mol. Cell Biol. 9:2627) and the troponin gene (Mar and Ordahl, (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85:6404)。ケラチン遺伝子における負の応答エレメントは、転写抑制を仲介する(Jho Sh et al, (2001). J. Biol Chem)。他の種類の細胞に特異的な調節エレメントは当該技術分野で公知である(例えば、肝臓特異的発現に対するアルブミンエンハンサー;膵島細胞特異的発現に対するインスリン調節エレメント;神経ジストロフィン、神経エノラーゼ、およびA4アミロイドプロモーターを含むさまざまな神経細胞特異的調節エレメント)。あるいは、ウイルス性調節エレメントなど、さまざまな異なる種類の細胞における遺伝子の構成的発現を指示する調節エレメントを使用できる。遺伝子発現を推進するために一般的に使用されるウイルス性プロモーターの例としては、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス(CMV)、およびシミアンウイルス40由来のもの、ならびにレトロウイルスLTRが挙げられる。あるいは、それに結合された遺伝子の誘導発現を行う調節エレメントを使用できる。誘導調節エレメント(例えば、誘導プロモーター)を使用することによって、細胞における遺伝子産物の生成の調節が可能になる。真核細胞で用いる潜在的に有益な誘導調節系の例としては、ホルモン調節エレメント(例えば、Mader, S. and White, J. H. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5603-5607を参照)、合成リガンド調節エレメント(例えば、Spencer, D. M. et al 1993) Science 262:1019-1024を参照)、およびイオン照射調節エレメント(例えば、Manome, Y. Et al. (1993) Biochemistry 32:10607-10613; Datta, R. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA89:1014-10153を参照)が挙げられる。本発明に従って、作成してもよい追加の組織特異的または誘導調節系も使用できる。
一実施形態では本発明の調節配列がCMVプロモーターを含んでもよい。また、別の実施形態では調節配列がCAGプロモーターを含んでもよい。一実施形態では、CAGプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス即時型初期エンハンサーと組換えトリベータアクチンプロモーターと第1イントロンを組み合わせた複合プロモーターである。一実施形態では、調節配列は、シミアンウイルス(SV)−40ポリアデニル配列を含んでもよく、一実施形態では、大部分のメッセンジャーRNA分子が真核生物のその3´末端で終端とされる機構である。一実施形態では、ポリアデノシン(poly−A)テールはエクソヌクレアーゼからmRNA分子を保護し、転写終結、核からのmRNAの輸送、および転写にとって重要である。別の実施形態では、本発明の製剤は1つ以上の調節配列を含んでもよい。
一実施形態では、SV40ポリアデニル化配列とともにCMVまたはCAGプロモーターを含む本発明の製剤は、EPOおよびIFN−アルファの長期にわたり高いインビトロ発現量(図1、図5、および図6B)およびインビボ発現量(図6A)を示す。理論に制限されることになく、本発明の微小器官からの長期持続性、高濃度の遺伝子産物に寄与する要因の1つは、プロモーターとしてCMV、あるいはCAGを使用することであり、構成遺伝子発現の促進において、微小器官外植片で特に効果的である。
一実施形態では、用語「プロモーター(promoter)」とは、一実施形態にてコード配列のすぐ上流であり、遺伝子の基底転写および/または調節された転写にとって重要であるDNA配列のことに言及している。一実施形態では、本発明のプロモーターは、対象遺伝子に機能可能に結合される。別の実施形態では、プロモーターは、内在性プロモーターの突然変異体であり、通常、適切な環境の下で対象遺伝子の発現に関係がある。
一実施形態では、組成物のプロモーター、および本発明の方法で用いるプロモーターは、調節可能なプロモーターである。別の実施形態では、調節可能なプロモーターとは、遺伝子下流の発現が、特定プロモーターからの発現を刺激する特定条件の発生または提供に応じて生じることによるプロモーターのことに言及している。一部の実施形態では、前記条件が発現を直接オンにする。あるいは、他の実施形態では、発現に対する障害を取り除く。一部の実施形態では、前記条件が発現をオフにするか、減少させる。
一実施形態では、前記条件は、特定の温度、栄養素、栄養素の欠如、金属の存在、または当業者には公知であるような刺激または環境因子を含んでもよい。一実施形態では、調節可能なプロモーターはガラクトース(例えば、UDP−ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、ガラクトキナーゼ(GAL1))、グルコース(例えば、アルコール脱水素酵素II(ADH2))、リン酸塩(例えば、酸性ホスファターゼ(PHO5))によって調節されてもよい。別の実施形態では、当業者には公知であるように、調節可能なプロモーターをヒートショック(ヒートショックプロモーター)、またはIPTGまたはテトラサイクリンなどの化学薬品、またはその他によって活性化させてもよい。当然のことながら、調節可能なプロモーターおよび前記調節の条件は、本発明のベクター、核酸、および方法によって含まれ、その実施形態を意味する。
一実施形態では、本発明の製剤および方法の核酸は、治療用ポリペプチドまたは核酸の濃度を基礎濃度よりも少なくとも5%増加させる。別の実施形態では、治療用ポリペプチドまたは核酸の濃度は、基礎濃度よりも少なくとも7%、別の実施形態では少なくも10%、別の実施形態では少なくも15%、別の実施形態では少なくも20%、別の実施形態では少なくも25%、別の実施形態では少なくも30%、別の実施形態では少なくも40%、別の実施形態では少なくも50%、別の実施形態では少なくも60%、別の実施形態では少なくも75%、別の実施形態では少なくも100%、別の実施形態では少なくも125%、別の実施形態では少なくも150%、別の実施形態では少なくも200%増加される。さらに別の実施形態では、本発明の製剤および方法は、投与時に治療用ポリペプチドまたは核酸の濃度を増加させ、その後、治療用ポリペプチドまたは核酸の濃度は基礎濃度またはそれに近い濃度に戻る。一実施形態では、基礎濃度またはそれに近い濃度に戻るのは、治療用ポリペプチドまたは核酸の投与1ヶ月以内である。
一実施形態では、本発明の製剤による治療用ポリペプチドまたは核酸の発現は、一実施形態において本発明の治療用製剤が投与または接触されていない宿主または細胞培養で発現される濃度である「基礎濃度(basal level)」と比較して増加する。
別の実施形態では、本発明の製剤および方法は、治療用ポリペプチドまたは核酸の濃度を約2000ng/日に、別の実施形態では約1500ng/日に、別の実施形態では約1000ng/日に、別の実施形態では約750ng/日に、別の実施形態では約500ng/日に、別の実施形態では約250ng/日に、別の実施形態では約150ng/日に、別の実施形態では約100ng/日に、別の実施形態では約75ng/日に、別の実施形態では約50ng/日に、別の実施形態では約25ng/日に増加させる。別の実施形態では、本発明の製剤および方法は、治療用ポリペプチドの濃度を20〜70mU/mLに、別の実施形態では50〜100mU/mLに、別の実施形態では5〜20mU/mLに、別の実施形態では100〜200mU/mLに、別の実施形態では10〜70mU/mLに、別の実施形態では5〜80mU/mLに増加させる。別の実施形態では、本発明の製剤および方法は、治療用ポリペプチドの濃度を500〜1000mU/mLに、別の実施形態では250〜750mU/mLに、別の実施形態では500〜5000mU/mLに増加させる。
一実施形態では、本発明の製剤および方法の核酸は、一実施形態ではヘマトクリット値である機能性マーカーの濃度を基礎濃度よりも少なくとも5%増加させる。別の実施形態では、機能性マーカーの濃度は、基礎濃度よりも少なくとも7%、別の実施形態では少なくも10%、別の実施形態では少なくも15%、別の実施形態では少なくも20%、別の実施形態では少なくも25%、別の実施形態では少なくも30%、別の実施形態では少なくも40%、別の実施形態では少なくも50%、別の実施形態では少なくも60%、別の実施形態では少なくも75%、別の実施形態では少なくも100%、別の実施形態では少なくも125%、別の実施形態では少なくも150%、別の実施形態では少なくも200%増加される。
一実施形態では、本発明の製剤は、「長期持続性(long-lasting)」であり、このことは、一実施形態において治療用ポリペプチドまたは核酸の分泌、発現、生成、循環、または持続を増加させることが可能な製剤のことに言及している。一実施形態では、治療用ポリペプチドまたは核酸の発現量が、少なくとも1ヶ月間、別の実施形態では少なくとも6ヶ月間、基礎量よりも増加される。
本発明の別の実施形態では、本発明の治療用製剤は、「長期持続性(long-lasting)」であり、このことは、機能性マーカーの分泌、発現、生成、循環、または持続を増加させることが可能な製剤のことに言及している。一実施形態では、機能性マーカーがヘマトクリットである。別の実施形態では、機能性マーカーがHbである。さらに別の実施形態では、例えばヘマトクリットまたはHbである機能性マーカーの濃度は、少なくとも2週間、別の実施形態では少なくとも3週間、別の実施形態では少なくとも4週間、別の実施形態では少なくとも5週間、別の実施形態では少なくとも6週間、別の実施形態では少なくとも8週間、別の実施形態では少なくとも2ヶ月間、別の実施形態では少なくとも2ヶ月間、別の実施形態では少なくとも2ヶ月間、別の実施形態では少なくとも3ヶ月間、別の実施形態では少なくとも4ヶ月間、別の実施形態では少なくとも5ヶ月間、別の実施形態では少なくとも7ヶ月間、別の実施形態では少なくとも8ヶ月間、別の実施形態では少なくとも9ヶ月間、別の実施形態では少なくとも10ヶ月間、別の実施形態では少なくとも11ヶ月間、別の実施形態では少なくとも1年間、増加される。別の実施形態では、治療用ポリペプチドまたは核酸の濃度は、少なくとも4〜6ヶ月間増加される。
一実施形態では、治療用ポリペプチドまたは核酸をコードする核酸配列は、治療用ポリペプチドまたは核酸の発現量を増加させるために最適化され、別の実施形態では、治療用ポリペプチドまたは核酸の発現期間を延長するために、あるいは別の実施形態ではその組み合わせの発現期間を延長するために、最適化される。
一実施形態では、用語「最適化(optimized)」とは、一実施形態にて遺伝子発現での変化であり、別の実施形態ではタンパク質発現の変化である求められる変化のことに言及している。一実施形態では、最適化された遺伝子発現は、遺伝子発現の最適化された調節である。別の実施形態では、最適化された遺伝子発現は、遺伝子発現の増加である。本態様に従って、そして一実施形態では、野生型と比較して遺伝子発現の2倍〜1000倍の増加が期待される。別の実施形態では、遺伝子発現の2倍〜500倍の増加、別の実施形態では遺伝子発現の2倍〜100倍の増加、別の実施形態では遺伝子発現の2倍〜50倍の増加、別の実施形態では遺伝子発現の2倍〜20倍の増加、別の実施形態では遺伝子発現の2倍〜10倍の増加、別の実施形態では遺伝子発現の3倍〜5倍の増加が期待される。
別の実施形態では、最適化された遺伝子発現は、特定の環境条件での遺伝子発現の増加であってもよい。別の実施形態では、最適化された遺伝子発現は、遺伝子発現の減少をふくんでもよく、一実施形態では特定の環境条件下に限ってもよい。
別の実施形態では、最適化された遺伝子発現は、遺伝子発現の期間延長である。本態様に従って、そして一実施形態では、野生型と比較して遺伝子発現の期間の2倍〜1000倍の延長が期待される。別の実施形態では、遺伝子発現の期間の2倍〜500倍の延長、別の実施形態では遺伝子発現の期間の2倍〜100倍の延長、別の実施形態では遺伝子発現の期間の2倍〜50倍の延長、別の実施形態では遺伝子発現の期間の2倍〜20倍の延長、別の実施形態では遺伝子発現の期間の2倍〜10倍の延長、別の実施形態では遺伝子発現の期間の3倍〜5倍の延長が期待される。別の実施形態では、遺伝子発現の期間延長は非ベクター発現対照における遺伝子発現と比較され、あるいは野生型ベクター発現対照における遺伝子発現と比較される。
一実施形態では、哺乳類細胞の発現は、転写サイレンシング、短いmRNA半減期、選択的スプライシング現象、早期ポリアデニル化、非効率的な核翻訳、希少tRNAプールの状態によって妨げられる。哺乳類発現の多くの問題の原因は、多くの重要な哺乳類遺伝子の自家発現も含む導入遺伝子をコードしているメッセージの中に見いだされる。哺乳類RNAの最適化としては、シス作用エレメントの修飾、そのGCコンテンツの適応、哺乳類細胞の非制限tRNAプールに対するコドンバイアスの修正、内部相同領域の回避、およびRNAiの除外が挙げられる。
そのため、一実施形態では、注意深く設計した合成遺伝子を頼りにする場合、半減期が延長された安定したメッセージ、構造的核外輸送、および哺乳類宿主内での高濃度タンパク質産生が期待できる。
したがって、一実施形態において、遺伝子を最適化することは、コドンの利用を宿主遺伝子のコドンバイアスに適応させること(ここで、宿主遺伝子は、一実施形態では、ヒト(Homo sapiens)遺伝子である);GC含有量が非常に高い(>80%)または非常に低い(<30%)の領域を調整すること;以下のシス活性配列のモチーフの一つ以上を回避することを、必然的に伴う。すなわち、内部TATA−ボックス、Chi部位およびレボソーム浸入部位;AT−リッチまたはGC−リッチ配列伸長;ARE、INS、CRS配列エレメント;反復配列およびRNA二次構造;潜在性スプライスドナーおよびアクセプター部位、分岐点;あるいはそれらの組み合わせである。一実施形態では、遺伝子は、ヒト細胞での発現のために最適化される。別の実施形態では、遺伝子は微小器官での発現のために最適化される。さらに別の実施形態では、遺伝子は真皮細胞での発現のために最適化される。さらに別の実施形態では、遺伝子発現の最適化には、発現ベクターにおける遺伝子の隣接領域および/または他の領域に配列エレメントを追加することを必要とする。遺伝子発現を最適化するために追加してもよい配列エレメントとしては、例えばマトリックス結合領域(MAR)、特殊クロマチン構造(SCS)、およびウッドチャック肝炎転写後調節エレメント(WPRE)が挙げられる。
一実施形態では、本願明細書で示したように、EPOなどの最適化遺伝子は、弱毒性アデノウイルスから発現された非最適化EPOまたはアデノウイルス5ベクターから発現された非最適化EPOの両方と比較して長期間、ピーク発現量の割合が高い状態を維持する(図3および4)。
一実施形態では、用語「遺伝子(gene)」は、コード配列に前(5´非コード配列)または後(3´非コード配列)の調節配列を有する特定タンパク質として発現することが可能な核酸フラグメントのことに言及している。「天然遺伝子(native gene)」は、独自の調節配列とともに自然界で見られるような遺伝子のことに言及している。「キメラ遺伝子(chineric gene)」は、自然界でともに見られない調節配列およびコード配列を含み、天然遺伝子ではない遺伝子のことに言及している。その結果、キメラ遺伝子は、さまざまな源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ源であるが、自然界で見つかるものとは異なるように配置された調節配列およびコード配列を含んでもよい。「内在性遺伝子(endogenous gene)」は、生物のゲノムにおける自然な位置にある天然遺伝子のことに言及している。「外来(foreign)」遺伝子は、宿主生物では通常見つからないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入される遺伝子のことに言及している。外来遺伝子は、非天然生物に挿入される天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでもよい。「導入遺伝子(transgene)」は、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
一実施形態では、治療用核酸は、RNA分子(センスまたはアンチセンス)、ペプチド、ポリペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、その組み合わせ、または他の後で修飾されたポリペプチドをコードする遺伝子であってもよい。本発明の一実施形態では、対象遺伝子は組織試料で自然に発現されてもよい。本発明の別の実施形態では、組織試料は、少なくとも1つの細胞が、細胞によって自然に発現されていないか、細胞内に変更された発現プロファイルを有する対象遺伝子を発現するように遺伝子組換えされてもよい。一実施形態では、本発明の治療用核酸は米国特許出願第10/376,506号に記載のタンパク質をコードしてもよく、あるいは治療用ポリペプチドが当該タンパク質であってもよく、その特許のすべての全体の内容が引用により援用される。
一実施形態では、遺伝子学的改変微小器官は遺伝子組換え真皮微小器官である。「真皮(dermal)」微小器官(「DMO」)は複数の真皮構成要素を含んでもよく、一実施形態では、真皮は表皮の下にある皮膚の一部である。これらの構成要素は、皮膚線維芽細胞、上皮細胞、他の種類の細胞、毛包の基底部、神経終末部、汗腺および皮脂腺、ならびに血管およびリンパ管を含んでもよい。一実施形態では真皮微小器官が脂肪組織を含んでもよく、別の実施形態では真皮微小器官が脂肪組織を含まなくてもよい。
本発明の一部の実施形態では真皮微小器官が表皮基底層の組織を含んでもよく、必要に応じて皮膚の他の表皮層を含んでもよい。他の実施形態では、真皮微小器官が基底層組織を含まない。本発明の別の実施形態では、真皮微小器官が表皮層を含まない。さらに別の実施形態では、真皮微小器官が不完全な基底層組織を含む。さらに別の実施形態では、真皮微小器官が数層の表皮組織を含んでもよい。さらに別の実施形態では、真皮微小器官が真皮への表皮の陥入を含んでもよい。さらに別の実施形態では、真皮微小器官が汗腺および/または毛包などの追加の構成要素を含んでもよい。
本発明の一実施形態では、DMOが真皮の断面全体を含む。本発明の別の実施形態では、真皮微小器官が真皮の断面の一部を含む。別の実施形態では、DMOが真皮の断面の大部分、すなわち真皮乳頭層および真皮網状層を含む真皮の層および構成要素の大部分を含む。別の実施形態では、DMOが一次真皮組織を含むが、脂肪組織も含んでもよい。本発明の一部の実施形態では、DMOがケラチンを生成しないか、またはごく少量のケラチンしか生成しない。その結果、移植者への移植の後、例えば皮下または皮内移植の後の角質?腫の形成を防止する。前記微小器官の摘出、培養下での維持、移植を含む真皮微小器官に関する詳細はPCT特許出願番号WO2004/099363に記載されており、その全体が引用により援用される。
別の実施形態では、本発明は、1つ以上の遺伝学的に改変された微小器官を提供することを含む、持続時間以上、必要としている対象に治療用ポリペプチドを提供する方法を示し、前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有する。また、前記遺伝学的に改変された微小器官を前記対象に移植する方法を示し、前記核酸配列は治療用ポリペプチドをコードし、それによって、治療用核酸またはポリペプチドの発現量は基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記増加は1ヶ月間を超えて維持される。別の実施形態では、本発明は、1つ以上の遺伝学的に改変された微小器官を提供することを含む、持続時間以上、必要としている対象に治療用ポリペプチドを提供する方法を示し、前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有する。また、前記遺伝学的に改変された微小器官を前記対象に移植する方法を示し、前記核酸配列は治療用ポリペプチドをコードし、前記ベクターはヘルパー依存性アデノウイルスベクターである。別の実施形態では、本発明は、1つ以上の遺伝学的に改変された微小器官を提供することを含む、持続時間以上、必要としている対象に治療用ポリペプチドを提供する方法を示し、前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有する。また、前記遺伝学的に改変された微小器官を前記対象に移植する方法を示し、前記核酸配列は治療用ポリペプチドをコードし、前記ベクターはヘルパー依存性アデノウイルスベクターである。
別の実施形態では、本願明細書で前述した方法は、必要としている対象に治療用核酸を提供し、治療用核酸またはペプチドの発現量は基礎量よりも5%を上回って増加し、前記増加は1時間、3時間、6時間、9時間、12時間、18時間、1日間、または2日間を超えて維持され、前記ベクターはヘルパー依存性アデノウイルスベクターまたはその組み合わせである。
一実施形態では、本発明は本願明細書にて前述したように治療用製剤を提供し、治療用ポリペプチドがエリスロポエチンであるか、治療用核酸がエリスロポエチンをコードする。別の実施形態では、本発明は、遺伝学的に改変された微小器官を含む長期持続性エリスロポエチン製剤を提供する。前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有するベクターを含み、前記核酸配列はエリスロポエチンをコードし、それによって前記製剤はエリスロポエチン濃度を基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記エリスロポエチン濃度の増加が1ヶ月間を超えて持続する。別の実施形態では、製剤はエリスロポエチン濃度を基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記エリスロポエチン濃度の増加が1ヶ月未満の間継続する。さらに別の実施形態では、本発明は、必要としている対象に治療用製剤を提供する方法を示し、治療用ポリペプチドがエリスロポエチンであるか、治療用核酸がエリスロポエチンをコードする。さらに別の実施形態では、本発明は、必要としている対象にエリスロポエチンを提供する方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、以下を含み、持続期間にわたり必要としている対象にエリスロポエチンを送達する方法を提供する。つまり、1つ以上の遺伝学的に改変された微小器官を提供することと、ここで前記微小器官は1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有するベクターを含み;ならびに前記対象に前記遺伝学的に改変された微小器官を移植することと、ここで上記核酸配列はエリスロポエチンをコードし、それによってエリスロポエチン濃度は基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記エリスロポエチンの増加が1ヶ月間を超えて継続する。別の実施形態では、エリスロポエチン濃度は基礎濃度よりも5%以上増加させられ、前記エリスロポエチン濃度の増加は1ヶ月未満の間継続する。
さらに別の実施形態では、本発明は、以下を含み、持続期間にわたり必要としている対象での新しい血球の形成を誘導する方法を提供する。つまり、1つ以上の遺伝学的に改変された微小器官を提供することと、ここで前記微小器官は1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有するベクターを含み;ならびに前記対象に前記遺伝学的に改変された微小器官を移植することと、ここで上記核酸配列はエリスロポエチンをコードし、それによってエリスロポエチン濃度は基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記エリスロポエチンの増加が1ヶ月間を超えて継続する。さらに別の実施形態では、エリスロポエチン濃度は基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記エリスロポエチン濃度の増加は1ヶ月未満の間継続する。
一実施形態では、エリスロポエチン(EPO)が、赤血球への赤血球前駆細胞の成熟で必要とされる糖タンパク質ホルモンである。一実施形態では、エリスロポエチンが、循環している赤血球の量の調節において不可欠である。天然に存在するエリスロポエチンは、腎臓および肝臓によって生成され、血液中を循環し、一実施形態では低酸素症に応えて骨髄での赤血球細胞の生成を促進する。
一実施形態では、本発明の組成および方法のEPOは、ヒトまたは動物の尿から抽出されるEPOと同様の糖鎖負荷パターンを含んでもよく、別の実施形態では血漿から抽出されるEPOと同様の糖鎖負荷パターンを含んでもよい。
エリスロポエチンをコードする遺伝子の同定、クローニング、および発現は、米国特許出願第5,756,349号;第5,955,422号;第5,618,698号;第5,547,933号;第5,621,080号;第5,441,868号;および第4,703,008号に記載されており、参照することにより本書に援用される。組換えエリスロポエチンプラスミドを含む哺乳類細胞の増殖を支えた細胞培地からの組換えエリスロポエチンの精製についての詳細は、Lai等によって米国特許出願第4,667.016号に記載されており、参照することにより本書に援用される。エリスロポエチンをコードする遺伝子によって形質転換された宿主細胞からインビトロでのタンパク質産物の発現を伴う遺伝子組換え技術によって精製された組換えエリスロポエチンを、慢性腎不全を引き起こす貧血症の処置に使用してきた。最近、EPOは、腎不全の貧血、ジドブジン(AZT)処置を受けた患者でのHIV感染症に関連した貧血、および癌化学治療に関連した貧血の処置に使用されている。腎不全に続発する貧血の処置においてrhu−EPOの投与が日常的になっており、週3回投与で50〜75u/kgの用量を用いて、ヘマトクリット値を徐々に回復させ、輸血依存を排除する。
多くの細胞表面および真核細胞によって生成される分泌タンパク質は、グリコシル化と呼ばれる1つ以上のオリゴ糖群によって修飾され、このことがタンパク質の安定性、分泌、および細胞内局在化のほかに生物活性にも著しく影響を及ぼす可能性がある。一実施形態では、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列番号1〜165を有するヒトの尿由来のエリスロポエチンと組換えエリスロポエチン(哺乳類細胞で発現される)の両方とも、糖タンパク質の総分子量の約40%をともに構成する3つのN−結合型および1つのO−結合型のオリゴ糖鎖を含む。一実施形態では、非グリコシル化エリスロポエチンが、グリコシル化形態と比較してインビボの活性を大きく低下させたが、インビトロの活性は維持した。一実施形態では、組成物のものであり、本発明の方法で用いるEPOは完全にグリコシル化され、別の実施形態では一部のグリコシル化残基を含み、さらに別の実施形態ではグリコシル化されない。
一実施形態では、EPO遺伝子は野生型EPO遺伝子であってもよく、別の実施形態ではEPO遺伝子が修飾されてもよい。一実施形態では、修飾EPO遺伝子を最適化してもよい。
一実施形態では、EPO遺伝子は、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応する核酸配列を有する。すなわち、X02158;AF202312;AF202311;AF202309;AF202310;AF053356;AF202306;AF202307;またはAF202308。あるいは、以下のGenBank受託番号に記載のものに対応するタンパク質配列をコードする。すなわち、CAA26095;AAF23134;AAF17572;AAF23133;AAC78791;またはAAF23132。別の実施形態では、EPO前駆遺伝子は、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応する核酸配列を有する。すなわち、NM_000799;M11319;BC093628;またはBC111937。あるいは、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応するタンパク質配列をコードする。すなわち、NP_000790;AAA52400;AAH93628;またはAAI11938。別の実施形態ではEPO遺伝子が配列番号:7で示されるような核酸配列を有し、さらに別の実施形態ではEPO遺伝子が配列番号:8で示されるようなアミノ酸配列を有する。別の実施形態ではEPO遺伝子が配列番号:7で示されるようなものに相同である核酸配列を有し、さらに別の実施形態ではEPO遺伝子が配列番号:8で示されるようなものに相同であるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、貧血を患う対象の処置に本発明を使用してもよい。一実施形態では、貧血が「赤血球中の酸素運搬Hb量の病的欠如(a pathologic deficiency in the amount of oxygen-carrying Hb in the red blood cells)」と定義される。貧血の症状としては、疲労、日常機能を果たす能力低下、認知機能の障害、頭痛、目まい、胸痛および息切れ、吐き気、鬱、痛み、またはその組み合わせが挙げられる。一実施形態では、貧血が予後不良または死亡率上昇に関連している。
多くの場合、貧血は腎臓からのエリスロポエチンの生成減少による腎不全の結果である。別の実施形態では、貧血は、癌浸潤、リンパ腫または白血病、または骨髄置換のための骨髄による赤血球(エリスロイド)生成低下によって引き起こされる。貧血の他の原因としては、大出血または異常月経などの過剰出血による失血;外科手術、放射線治療、化学療法、免疫療法、またはその組み合わせなどの癌治療;癌性骨髄の浸潤または置換;一実施形態では赤血球の分解または破壊である溶血の増加;エリスロポエチンの濃度低下、またはその組み合わせを含む。一実施形態では、貧血とはファンコニ貧血のことを言い、ファンコニ貧血は、一実施形態では骨髄不全(再生不良性貧血)および多くの場合に急性骨髄性白血病(AML)を引き起こす遺伝性貧血である。別の実施形態では、貧血は、ダイアモンドブラックファン貧血、正球性貧血、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、慢性疾患の貧血、腎不全および透析での貧血、またはその組み合わせのことに言及している。別の実施形態では、糖尿病対象の処置に本発明の長期持続性EPO製剤が用いられる。本態様および一実施形態にしたがって、特にインスリン投与、一実施形態ではスルホニル尿素薬であり、一実施形態では特にグルコトロール、グリブリド、グリナーゼ、およびアマリール;グルコファージ、特にレズリン、アクトス、およびアバンディアを含むチアゾリジンジオン;その組み合わせを含む、経口血糖降下薬を含む当該技術分野で公知の糖尿病の他の処置と併用して本発明のEPO製剤を使用してもよい。別の実施形態では、慢性腎疾患を患う対象の処置に本発明の長期持続性EPO製剤が使用され、さらに別の実施形態では、末期腎不全を患う対象の処置に使用される。別の実施形態では、前記疾患または病状の影響を受けやすい対象に本発明の製剤が使用される。
当然のことながら、貧血の原因、ならびに貧血の原因が分かっているかどうかにかかわらず、貧血の処置に本発明の製剤および方法を使用してもよい。
一実施形態では、その製剤および方法は効果的なEPO治療を提供する。
用語「効果的なEPO治療(effective EPO therapy)」は、患者のHb濃度を治療濃度域内にするのに十分なEPOの量を意味する。一実施形態では、「効果的なEPO治療」とは、必要としている対象での赤血球新生の増加のことに言及している。一実施形態では、「効果的なEPO治療」とは、必要としている対象での赤血球新生の減少の防止のことに言及している。本明細書中で使用されるように、用語「効果的なEPO治療」は、本願明細書でエリスロポエチンの「効果的な用量(effective dosage)」または「効果的な投与量(effective dose)」と呼ばれることもある。
本発明の一実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも1つのヒトEPO−GMMO(hEPO−GMMO)を移植することで達成される。別の実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも2つのhEPO−GMMOを移植することで達成される。一実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも3つのhEPO−GMMOを移植することで達成される。一実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも4つのhEPO−GMMOを移植することで達成される。一実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも5つのhEPO−GMMOを移植することで達成される。一実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも6つのhEPO−GMMOを移植することで達成される。一実施形態では、効果的なEPO治療は患者に少なくとも7つ以上のhEPO−GMMOを移植することで達成される。
本明細書中で使用されるように、用語「治療濃度域(therapeutic window)」とは、必要としている対象でのHbの目標とする濃度を意味する。一実施形態では、治療濃度域とは、10gm/dL〜12gm/dLの範囲内のHb濃度のことに言及している。一実施形態では、Hb濃度が9.5〜12.6gm/dLの範囲内である。一実施形態では、Hb濃度が9〜13.2gm/dLの範囲内である。一実施形態では、Hb濃度が8.5〜13.8gm/dLの範囲内である。一実施形態では、Hb濃度が8〜14.4gm/dLの範囲内である。
一実施形態では、必要としている対象がヒトである。一実施形態では、必要としている対象が腎臓病患者である。別の実施形態では、必要としている対象が末期腎不全を患っている。さらに別の実施形態では、必要としている対象が慢性腎疾患(CKD)を患っている。さらに別の実施形態では、必要としている対象が透析前CKDを患っている。別の実施形態では、必要としている対象が糖尿病患者である。
本発明の一実施形態では、効果的なEPO治療によって患者のHb濃度(「Hb」)を治療濃度域にする。本発明の別の実施形態では、効果的なEPO治療によって患者のHb濃度を治療濃度域の±10%の範囲内にする。本発明の別の実施形態では、効果的なEPO治療によって患者のHb濃度を治療濃度域の±20%の範囲内にする。
本明細書中で使用されるように、用語「効果的な用量」または「効果的な投与量」は、1日あたり少なくとも1回のGMMOによって発現される治療用ポリペプチドの有効量のことに言及している。
一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、18〜150UI/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、20〜40UI/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、40〜60UI/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、60〜80UI/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、80〜100UI/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、100〜120UI/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、120〜150UI/患者のKg体重/日である。
別の実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、18〜25UI/患者のKg体重/日(低用量)である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、35〜45UI/患者のKg体重/日(中用量)である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、55〜65UI/患者のKg体重/日(高用量)である。
一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、20IU/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、40IU/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、60IU/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、80IU/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、100IU/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、120IU/患者のKg体重/日である。一実施形態では、効果的なEPO治療のための用量は、150IU/患者のKg体重/日である。
一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、少なくとも1ヶ月間、Hb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、少なくとも2ヶ月間、Hb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、少なくとも3ヶ月間、Hb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、少なくとも4ヶ月間、Hb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、少なくとも5ヶ月間、Hb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、少なくとも6ヶ月間、Hb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、6ヶ月間を超えてHb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、9ヶ月間を超えてHb濃度の上昇が持続される。一実施形態では、少なくとも1つのhEPO−GMMOの移植の反応によって、1年間以上、Hb濃度の上昇が持続される。
一実施形態では、本発明の製剤および方法を、貧血の処置に有効な他の処置と併用して投与してもよい。一実施形態では、他の処置としては、鉄分サプリメント、ビタミンB12サプリメント、エリスロポエチンの追加供給源、アンドロゲン、G−CSFなどの成長因子、またはその組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、本発明の製剤および方法を、血液および骨髄細胞移植などの他の処置と併用して投与してもよい。
一実施形態では、本発明は本願明細書にて前述したように治療用製剤を提供し、治療用ポリペプチドがインターフェロンであるか、治療用核酸がインターフェロンをコードし、一実施形態では当該インターフェロンがインターフェロンアルファであり、一実施形態ではインターフェロンアルファ2aである。別の実施形態では、本発明は、遺伝学的に改変された微小器官を含む長期持続性インターフェロン−アルファ製剤を提供する。前記微小器官は、1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有するベクターを含み、前記核酸配列はインターフェロン−アルファをコードし、それによって前記製剤はインターフェロン−アルファ濃度を基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記インターフェロン−アルファ濃度の増加が1ヶ月間以上持続する。別の実施形態では、本発明は、必要としている対象に治療用製剤を提供する方法を示し、治療用ポリペプチドがインターフェロンであるか、治療用核酸がインターフェロンをコードし、一実施形態では当該インターフェロンがインターフェロンアルファであり、一実施形態ではインターフェロンアルファ2aである。別の実施形態では、本発明は、必要としている対象に治療用ポリペプチドを提供する方法を示し、治療用ポリペプチドがインターフェロンであり、一実施形態では当該インターフェロンがインターフェロンアルファであり、一実施形態ではインターフェロンアルファ2aである。
一実施形態では、インターフェロンは、抗ウイルス、抗増殖および抗炎症効果などの細胞に多面発現効果を生じさせることができる多機能サイトカインである。インターフェロンに対するこれらの細胞反応のために、インターフェロン−アルファおよびインターフェロン−ベータは、多発性硬化症、B型肝炎、C型肝炎、およびいくつかの種類の癌などのウイルス性、増殖性、および炎症性疾患の処置において臨床的に有用であることが分かった。インターフェロン治療には、その他の炎症性疾患、ウイルス性疾患および増殖性疾患の処置に使用できる可能性があってもよい。そのため、インターフェロンを必要としている対象は、上記疾患または病状の1つまたはすべてを持ってもよい。
インターフェロンには、アルファ(α)、ベータ(β)、およびガンマ(γ)の3つの主要な分類がある。それらの抗ウイルスおよび抗腫瘍形成特性に加えて、インターフェロンはマクロファージおよびナチュラルキラーリンパ球を活性化し、主要組織適合性複合体糖タンパク質クラスIおよびIIを強化する。インターフェロン−αは、白血球(B−細胞およびT−細胞)によって分泌される。インターフェロン−βは線維芽細胞によって分泌され、インターフェロン−γはT−細胞およびナチュラルキラーリンパ球によって分泌される。
一実施形態では、治療用ポリペプチドがインターフェロンアルファであり、別の実施形態ではインターフェロンベータであり、また別の実施形態ではインターフェロンガンマである。別の実施形態では、治療用ポリペプチドが、以下を含むがこれに限定されるものではない、インターフェロンアルファのサブタイプである。つまり、1、2、4、5、6、7、8、10、13、14、16、17、または21。別の実施形態では、治療用ポリペプチドが、インターフェロンオメガ、イプシロン、カッパ、またはその同族体である。別の実施形態では、治療用ポリペプチドが、インターフェロンラムダまたはその同族体である。別の実施形態では、治療用ポリペプチドが、以下を含むがこれに限定されるものではない、インターフェロンアルファのサブタイプである。つまり、インターロイキン(IL)28A、IL28B、またはIL29。別の実施形態では、治療用ポリペプチドが、インターフェロンゼータ、ニュー、タウ、またはその同族体である。
一実施形態では、IFNは特定の細胞表面受容体複合体に結合し、一実施形態ではそれが、IFNAR1およびIFNAR2鎖を含むインターフェロンアルファ受容体(IFNAR)であり、別の実施形態ではそれがインターフェロンガンマ受容体(IFNGR)複合体であり、IFNGR1およびIFNGR2サブユニットを含み、別の実施形態では、IL10R2およびIFNLR1を含む受容体複合体である。一実施形態では、インターフェロンはJAK−STATシグナル伝達経路を通って信号を送る。
一実施形態では、本発明の製剤および方法のインターフェロンがインターフェロンアルファである。別の実施形態では、本発明の製剤および方法のインターフェロンがインターフェロンアルファ2bである。一実施形態では、IFN−アルファ−2bが、ヒト白血球からのINF−アルファ−2bのための遺伝子を含む組換え非グリコシル化165−アミノ酸アルファインターフェロンタンパク質である。IFN−アルファ−2bは、19,271ダルトン(19.271kDa)の分子量を持つタイプI、水溶性インターフェロンである一実施形態では、IFN−アルファ−2bは、HPLC分析で測定して約2.6x108(2億6000万)国際単位/mgの比活性度を有する。
一実施形態では、IFN−アルファ−2bはタイプIインターフェロンの1つであり、これは大型ヘリカルサイトカインスーパーファミリーに属し、成長ホルモン、インターロイキン、いくつかのコロニー刺激因子、およびその他いくつかの調節分子を含む。すべてが、IFNAR1およびIFNAR2として公知である細胞表面受容体複合体と相互作用して、さまざまなシグナル伝達経路を活性化することで細胞活性のレギュレータとして機能する。インターフェロンは、細胞での抗ウイルスおよび抗増殖反応を引き起こす。
一実施形態では、有毛細胞白血病、性病イボ、カポジ肉腫、慢性非A型肝炎、非B型肝炎、B型肝炎、またはその組み合わせの予防または処置に、本発明の長期持続性IFN−アルファ製剤を使用してもよい。別の実施形態では、上記疾患または病状の1つの影響を受けやすい、または本願明細書に記載のような感染性病原体にさらされた、またはさらされるであろう対象に本発明の長期持続性IFN−アルファ製剤を投与してもよい。別の実施形態では、C型肝炎の予防または処置に本発明の長期持続性IFN−アルファ製剤を使用してもよい。本態様に従って、そして一実施形態では、特にリバビリン、インターフェロン、ペグインターフェロン、またはその組み合わせを含む他のC型肝炎処置と同時または交互に、本発明の製剤を投与してもよい。
別の実施形態では、長期持続性IFN−アルファ製剤を、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、表在性膀胱癌、皮膚癌(特に基底細胞癌および悪性黒色腫を含む)、腎細胞癌、卵巣癌、低悪性度リンパ球および皮膚T細胞リンパ腫、および神経膠腫を含む他のさまざまな細胞増殖障害に、単独または化学療法薬との併用で、使用または評価してもよい。別の実施形態では、肺癌、結腸直腸癌、および乳癌から生じる固形腫瘍の予防または処置に、単独または他の化学療法薬との併用で、長期持続性IFN−アルファ製剤を使用してもよい。別の実施形態では、多発性硬化症の予防または処置に長期持続性IFN−アルファ製剤を使用してもよい。別の実施形態では、組織球性疾患の予防または処置に、長期持続性IFN−アルファ製剤を使用してもよく、一実施形態ではその組織球性疾患がエルドハイムチェスター病(ECD)であり、一実施形態では、体の結合組織を攻撃する死に至る可能性があり、一実施形態では組織球の過剰生産によって生じる障害であり、一実施形態では、疎性結合組織に集積し、それを厚く、高密度にする。別の実施形態では、重度眼性ベーチェット病の予防または処置に長期持続性IFN−アルファ製剤を使用してもよい。
一実施形態では、インターフェロンアルファ遺伝子は、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応する核酸配列を有する。すなわち、K01900;M11003;またはM71246。あるいは、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応するタンパク質配列をコードする。すなわち、AAA52716;AAA52724;またはAAA52713。一実施形態では、インターフェロンベータ遺伝子は、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応する核酸配列を有する。すなわち、M25460;AL390882;またはCH236948。あるいは、以下のGenBankアクセッション番号で記載のものに対応するタンパク質配列をコードする。すなわち、AAC41702;CAH70160;またはEAL24265。一実施形態では、インターフェロンガンマ遺伝子は、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応する核酸配列を有する。すなわち、J00219;AF506749;NM_000619;またはX62468。あるいは、以下のGenBank受託番号で記載のものに対応するタンパク質配列をコードする。すなわち、AAB59534;AAM28885;NP_000610;またはCAA44325。別の実施形態ではインターフェロンアルファ遺伝子がSEQ ID番号:9で示されるような核酸配列を有し、さらに別の実施形態ではインターフェロンアルファ遺伝子がSEQ ID番号:10で示されるようなアミノ酸配列を有する。別の実施形態ではインターフェロンアルファ遺伝子が配列番号:9で示されるようなものに相同である核酸配列を有し、さらに別の実施形態ではインターフェロンアルファ遺伝子が配列番号:10で示されるようなものに相同であるアミノ酸配列を有する。
別の実施形態では、本発明は、以下を含み、持続期間にわたり必要としている対象にインターフェロン−アルファを送達する方法を提供する。つまり、1つ以上の遺伝学的に改変された微小器官を提供することと、ここで前記微小器官は1つ以上の調節配列に機能可能に結合された核酸配列を有するベクターを含み;ならびに前記対象に前記遺伝学的に改変された微小器官を移植することと、ここで上記核酸配列はインターフェロン−アルファをコードし、それによってインターフェロン−アルファ濃度は基礎濃度よりも5%を上回って増加し、前記インターフェロン−アルファの増加が1ヶ月間を超えて継続する。
一実施形態では、本発明の製剤および方法は、当該核酸によってコードされる治療用ポリペプチドの発現量、期間、またはその組み合わせを高めるように最適化された核酸を提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号:1に対して85%を上回る相同性を有する核酸配列、当該核酸配列を有するベクター、および当該ベクターを含む細胞を提供する。
別の実施形態では、本発明は、配列番号:2に対して85%を上回る相同性を有する核酸配列、当該核酸配列を有するベクター、および当該ベクターを含む細胞を提供する。
本明細書中で使用されるように、用語「相同性(homology)」は、核酸配列に関連する場合に、対応する天然核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列におけるヌクレオチドの割合を示す。
一実施形態では、「相同性(homology)」、「同族体(homologue)」、または「同族の(homologous)」は、どんな場合にでも、一実施形態では、言及される配列が示された配列と少なくとも70%の一致を示すことを意味する。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも72%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも75%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも77%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも80%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも82%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも85%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも87%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも90%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも92%の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも95%以上の一致を示す。別の実施形態では、核酸配列が、示された配列と少なくとも95%〜100%の一致を示す。同様に、特定の配列との一致についての言及には、本願明細書で定義されるようなものとの直接的な一致のほか、相同性も含む。
相同性は、配列アライメントに関するコンピュータアルゴリズムによって、当該技術分野で公知である方法によって決定してもよい。例えば、核酸配列相同性のコンピュータアルゴリズム分析には、例えばBLAST、DOMAIN、BEAUTY(BLAST強化アライメントユーティリティ)、GENPEPT、およびTREMBLパッケージなどのいくつものソフトウェアパッケージの利用を含んでもよい。
相同性を決定する他の方法としては、当該技術分野で公知である方法の核酸配列ハイブリダイゼーションの決定を通じたものである(例えば次の参考文献を参照:“Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1985); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, (Volumes 1-3) Cold Spring Harbor Press, N.Y.; and Ausubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y)。一実施形態では、適度な条件から厳しい条件の下でハイブリダイゼーションの方法を行ってもよい。例えば、ハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液中、42℃で一晩中インキュベーションを行うものである。つまり、10〜20%ホルムアミド、5X SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5X デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mL変性剪断サケ精子DNA。
一実施形態では、本発明は、微小器官を含む治療用製剤とその使用方法を提供する。一実施形態では、治療用微小器官の調製は、(a)ドナー対象からの複数の微小器官外植片、一群の細胞を含む複数の微小器官外植片のそれぞれ、取得元の器官の微小構造を維持し、微小器官外植片の細胞への十分な栄養素とガスの拡散と、微小器官外植片中の栄養の不足と廃棄物の蓄積ための細胞毒性と付随の死とを最小限に抑えるための、微小器官外植片から出る細胞廃棄物の拡散とを可能にするために選択された寸法を同時に持つ複数の微小器官外植片のそれぞれを得ること;(b)複数の遺伝学的に改変された微小器官外植片を得るために複数の微小器官外植片の遺伝子を組換えること、当該微小器官は少なくとも1つのアミノ酸で異なるタンパク質を含み、分泌する;(c)複数の受容対象に多量の遺伝学的に改変された微小器官外植片を移植することを含む。
微小器官の調製方法と遺伝学的に改変された微小器官に処理する方法は特許番号WO2004/099363で開示されており、その全体が引用により援用される。微小器官は、三次元微小器官においてすべての細胞への栄養素とガスの拡散と、外植片からの細胞廃棄物の十分な拡散とを確実に行うように定義される組織寸法を含む。ウイルスまたは非ウイルスベクターを用いて、したがって遺伝学的に改変された微小器官を作成して微小器官の細胞内に目的遺伝子候補を組み込む制御生体外形質導入が起こるとすぐ、微小器官の生体外での維持を長期間継続でき、一実施形態では最小限の培地中で維持される。
一実施形態では、微小器官は、本願明細書で後述されるようにドリルおよびコアリング針を用いて採取される。別の実施形態では、微小器官は、皮膚をピンと張った状態に保ち、コアリングドリルの挿入中にスリットを空けるために真空を利用する採取システムを用いて採取される。別の実施形態では、PCT特許出願番号WO04/099363記載のツールおよび方法を含むが、これに限定されるものではない、真皮層を採取するために使用できるツールを使用して、適切な大きさの微小器官を採取してもよい。
遺伝学的に改変された微小器官またはバイオポンプを作成するための微小器官内への組換え拡散の組み込みを、当該技術分野で公知のさまざまな方法を通じて達成できる。核酸構造を利用して、微小器官細胞を安定的、一時的に形質導入できる。安定した形質導入では、核酸分子が微小器官細胞ゲノムに組み込まれる。そのため安定した遺伝形質を示す。一時的な形質導入では、核酸分子はエピソームとして形質導入した細胞内で維持され、細胞によって発現されるが、ゲノムには組み込まれない。前記エピソームは、エピソームの減少によって形質導入した細胞が細胞を迅速に分割する場合に一時的な発現に至る、あるいは形質導入した細胞が非分割細胞である場合に長期発現に至る可能性がある。
典型的には、核酸配列は、本願明細書で上述されるように微小器官に配列を導入する推奨方法によって、特定ベクター内でサブクローンされる。希望する核酸セグメントが特定のベクターにサブクローンされると、それによって組換えベクターになる。
一実施形態では、微小器官は遺伝学的改変の前後に32℃でインキュベートされ、別の実施形態では37℃でインキュベートされる。別の実施形態では、微小器官は33℃、34℃、35℃、36℃、38℃、39℃、40℃、28℃、30℃、31℃、25℃、42℃、または45℃でインキュベートされる。
一実施形態では、微小器官は遺伝学的改変の前後にCO210%の雰囲気下でインキュベートされ、別の実施形態ではCO25%の雰囲気下でインキュベートされる。別の実施形態では、微小器官はCO212%、CO215%、CO217%、またはCO220%の雰囲気下でインキュベートされる。別の実施形態では、微小器官はCO22%、CO26%、CO27%、CO28%、またはCO29%の雰囲気下でインキュベートされる。
別の実施形態では、インキュベーション温度、CO2濃度、またはその組み合わせを、遺伝学的改変の前、間、および後で1種類の温度または濃度に維持してもよく、別の実施形態では、インキュベーション温度、CO2濃度、またはその組み合わせを、微小器官の遺伝学的改変の前、間、および後で調節してもよい。
別の実施形態では、微小器官は湿度85〜100%でインキュベートされ、一実施形態では湿度95%であり、別の実施形態では湿度90%であり、また別の実施形態では湿度98%である。
一実施形態では、当該技術分野で公知の方法を用いて、治療用核酸またはポリペプチドの濃度を検出してもよい。特定の発現ベクター系と、細胞に核酸を導入する方法との有効性を、当該技術分野で日常的に使用される標準的な手法で評価できる。例えば、細胞に導入されたDNAをフィルターハイブリダイゼーション法(サザンブロット法)によって検出でき、導入されたDNAの転写によって生成されるRNAを、例えばノーザンブロット法、リボヌクレアーゼプロテクション法、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)によって検出できる。遺伝子産物は、適切な分析法、例えば、特定抗体などによる生成されたタンパク質の免疫学的検出、または酵素的分析などの遺伝子産物の機能活性を検出する機能分析によって、検出できる。一実施形態では、ELISA、ウエスタンブロット法、またはラジオイムノアッセイを用いて、タンパク質を検出してもよい。細胞によって発現される対象遺伝子産物を簡単に分析できない場合、使用される調節エレメントおよびベクターに結合されたレポーター遺伝子を用いて、発現系を先ず最適化できる。レポーター遺伝子は、簡単に検出可能な遺伝子産物をコードしている。そのため、系の有効性を評価するために使用できる。当該技術分野で使用される標準レポーター遺伝子として、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、およびヒト成長ホルモンをコードする遺伝子が挙げられる。
そのため、一実施形態では、治療用ポリペプチドまたは核酸発現量がインビトロで測定され、別の実施形態では治療用ポリペプチドまたは核酸発現量がインビボで測定される。一実施形態では、ポリペプチドまたは核酸発現量(一実施形態ではEPO濃度であり、別の実施形態ではIFN−アルファ濃度である)をインビトロで測定することで、インビトロでの微小器官による治療薬の分泌量の測定を通じた、患者に移植される微小器官の数を測定すること;治療薬のインビトロでの生成量と分泌量とインビボの血清中濃度の関係を推定すること;測定した分泌量と推定した関係に基づいて移植される治療用製剤の量を測定することを可能にする。
本発明の好適な実施形態では、ポリヌクレオチドは、微小器官の細胞内で発現される内在性遺伝子、または微小器官に導入される追加組換え遺伝子を転写または翻訳を調節するトランス作用またはシス作用エンハンサーまたはサプレッサーエレメントを含むことができる。哺乳類細胞に利用できる好適な翻訳または転写調節エレメントの多数の例が、当該技術分野で公知である。
例えば、転写調節エレメントは、特定のプロモーターからの転写の活性化に必要なシス作用またはトランス作用エレメントを含む[(Carey et al., (1989), J. Mol. Biol. 209:423-432; Cress et al., (1991), Science 251:87-90; and Sadowski et al., (1988), Nature 335:5631-564)]。
カリフラワーモザイクウイルス転写アクティベーター(TAV)が転写アクティベーターを裏付ける[例えば、次の最高文献を参照: Futterer and Hohn, (1991), EMBO J. 10:3887-3896]。この系で、ビシストロニックmRNAが生成される。すなわち、同じプロモーターから同じmRNAに2つのコード化領域が転写される。TAVが存在しないと、リボソームによって最初のシストロンのみが翻訳されるが、TAVを発現する細胞では両方のシストロンが翻訳される。
一般的に実践されている遺伝子ノックイン法を通じて、シス作用調節エレメントのポリヌクレオチド配列を、微小器官の細胞に導入できる。遺伝子ノックイン/アウト法の検討については、例えば次の参考文献も情報を提供する。米国特許第5,487,992号、第5,464,764号、第5,387,742号、第5,360,735号、第5,347,075号、第5,298,422号、第5,288,846号、第5,221,778号、第5,175,385号、第5,175,384号、第5,175,383、第4,736,866号、ならびに、Burke and Olson, Methods in Enzymology, 194:251-270, 1991; Capecchi, Science 244:1288-1292, 1989; Davies et al., Nucleic Acids Research, 20 (11) 2693-2698, 1992; Dickinson et al., Human Molecular Genetics, 2(8):1299-1302, 1993; Duff and Lincoln, “Insertion of a pathogenic mutation into a yeast artificial chromosome containing the human APP gene and expression in ES cells”, Research Advances in Alzheimer´s Disease and Related Disorders, 1995; Huxley et al., Genomics, 9:742-750 1991; Jakobovits et al., Nature, 362:255-261 1993; Lamb et al., Nature Genetics, 5: 22-29, 1993; Pearson and Choi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90:10578-82; Rothstein, Methods in Enzymology, 194:281-301, 1991; Schedl et al., Nature, 362: 258-261, 1993; Strauss et al., Science, 259:1904-1907, 1993, WO94/23049、WO93/14200、WO94/06908、およびWO94/28123。
組換え産物の生成だけを評価するためには、内在性配列のダウンレギュレーションも必要な場合がある。このような目的で、内在性配列不活性化の方法としてアンチセンスRNAを利用してもよい。内在性mRNA配列に補完的な配列をコードする外来性ポリヌクレオチドは、微小器官の細胞内で転写される。当該技術分野で公知の実践方法で遺伝子ノックアウト技術を通じて、ダウンレギュレーションに影響を与えることもできる(“Molecular Cloning: A laboratory Manual” Sambrook et al., (1989); “Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994); Ausubel et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1989); Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988))
組換え産物の過剰発現も必要な場合がある。過剰発現は、それぞれのベクターで1つ以上のコード配列の大量コピーを行うことで実現してもよい。これらの外来性ポリヌクレオチド配列を、発現を調節する哺乳類発現ベクターの適切なプロモーターの転写制御下に置くことができる。別の実施形態では、同じ遺伝子または複数の関連遺伝子の複数コピーを、ポリヌクレオチドまたは核酸発現を増やす手段として使用してもよい。一実施形態では、一実施形態でマトリックス付着領域(MAR)またはスキャツフォールド付着領域(SAR)であるDNAエレメントによって発現が安定化される。
一実施形態では、アデノウイルスベクターが、本発明の組成物のベクター、および本発明の方法で用いるベクターである。アデノウイルスベクターがベクターとして使用される実施形態では、一実施形態で、ヘルパー依存性アデノウイルス系を使用して、微小器官を形質転換するための治療用ポリペプチドまたは核酸発現ヘルパー依存性アデノウイルスベクターを調製してもよい。一実施形態では、前記ヘルパー依存性アデノウイルス系は、PalmerとNg、2003 Mol Ther 8:846と、PalmerとNg、2004 Mol Ther 10:792とで述べられている通りであり、その全体が引用により援用される、本発明の製剤の調製に使用されるヘルパー依存性アデノウイルス、ヘルパーウイルス、および産生細胞株を含む。
一実施形態では、Ad5 DNAフラグメントによりヒト胎児腎臓細胞から形質導入され、E1タンパク質を構造的に発現する293と称されるヘルパー細胞株を使用して、複製欠損アデノウイルスベクターを作成し、増殖させる。別の実施形態では、ヘルパー細胞株が、ヒト筋細胞、造血細胞、または他のヒト胎児間葉または上皮細胞に由来してもよい。あるいは、ヘルパー細胞が、ヒトアデノウイルスに対して許容状態である他の哺乳類種の細胞に由来してもよい。前記細胞としては、例えばベロ細胞または他のサル胎児間葉または上皮細胞が挙げられる。
一実施形態では、微小器官は、数時間から数ヶ月に及ぶことがある一定期間、体外で維持される。一実施形態では、体外での維持は、ウイルスベクターを用いて体外での遺伝子操作後の微小器官の維持、すなわちGMMOの維持のことに言及している。別の実施形態では、体外での維持は、その遺伝子操作の前の微小器官の維持のことに言及している。
一実施形態では、遺伝学的に改変された微小器官が移植前の数日間維持され、別の実施形態では数週間維持される。一実施形態では、微小器官が移植前の9〜14日間維持される。一実施形態では、微小器官が移植前の2〜4週間維持される。一実施形態では、微小器官が移植前の3週間維持される。一実施形態では、微小器官が移植前の4週間以上維持される。さらに他の実施形態では、微小器官が少なくとも9日間維持される。
理論によって制限されることなく、一実施形態では、前記インキュベーションによって、細胞を処理して、ウイルスベクター形質導入の結果として現れる、一実施形態ではウイルスカプシドであるウイルスタンパク質を破壊できる。一実施形態では、前記カプシドタンパク質の代謝回転が2〜3日以内に生じる。そのため、一実施形態では、ウイルスカプシドタンパク質は10日目まで体外でほとんど残らない。一実施形態では、ウイルスカプシドが破壊されることで、本発明の製剤の免疫原性をさらに下げ、対象遺伝子の発現量および発現期間を上げる。別の実施形態では、前記インキュベーションによって、インビトロで初期HD−Adベクター誘導先天性免疫応答が生じることが可能である。一実施形態では、アデノ遺伝子転写がない状態では24時間を超えて継続しない。別の実施形態では、一実施形態ではリンパ球浸潤、別の実施形態ではAd特異CTLの導入を主に特徴とする、通常、転写能力のある第一世代Adベクターに続く後期適応反応は、HD−Adベクターでは誘発されない。
一実施形態では、感染粒子(ip)1.6〜3x109/mL、3〜4x1012ウイルス粒子/mL、または2x1011ウイルス粒子/mLの用量で体外微小器官がウイルスベクターにさらされる。別の実施形態では、1x103〜1x1012ウイルス粒子/mL、別の実施形態では1x103〜1x109ウイルス粒子/mL、別の実施形態では1x106〜1x109ウイルス粒子、別の実施形態では1x106〜1x1012ウイルス粒子/mLの用量で、体外微小器官がウイルスベクターにさらされる。一実施形態では、微小器管内の対象に投与されるウイルス粒子/対象の体重1gの投与量は1x103未満であり、別の実施形態では1x102未満ウイルス粒子/対象の体重1gであり、また別の実施形態では1x101未満ウイルス粒子/対象の体重1gである。
一実施形態では、成長因子を使用して、微小器官の細胞の数を増やす。一実施形態では、移植前にインビトロ発現を評価でき、発現した組換えタンパク質のインビトロ−インビボ相関研究の可能性を有効にする。
本発明の一部の実施形態では、移植される遺伝子組換え細胞を含む組織試料の量は、以下のうちの1つ以上から測定される。すなわち、規制指針、特定臨床プロトコル、または類似対象の人口統計に基づき前記対象に日常的に投与される対象治療薬の対応量;注入または他の経路を通じて以前に摂取した場合には同じ対象に対して特異的な対象タンパク質などの治療薬の対応量;体重、年齢、健康状態、臨床状態、他の同様の対象への遺伝子組換え細胞の投与を含む前の組織細胞からの薬物動態データ、その対象への遺伝子組換え細胞の投与を含む前の組織試料に対する反応、またはその組み合わせなどの対象データ。そのため、一実施形態では、1つ以上の微小器官による遺伝子産物の発現量がインビトロで測定され、インビトロとインビボの治療用ポリペプチドまたは核酸発現量の関係が測定、推定され、計算または推定した関係に基づいて特定の患者に移植される微小器官の数が測定される。前述のように治療薬の用量を調節してもよい(WO2004/099363)。
一実施形態では、微小器官または遺伝学的に改変された微小器官を、宿主への移植が必要になるまでの指定期間、インビトロで維持してもよい。一実施形態では、微小器官または遺伝学的に改変された微小器官を、1〜7日間、1〜8週間、または1〜4ヶ月間、培地で維持または保存してもよい。別の実施形態では、組織試料を取り囲む培地上澄みに残った治療薬を分離し、同じまたは異なる対象に注入または塗布できる。
あるいは、またはさらに、遺伝学的に改変された微小器官を当該技術分野で公知の方法で冷凍保存(0℃、−20℃、−80℃、−196℃)できる。例えば、限定されるものではないが、組織試料からの作成直後または遺伝子変化直後に、DMEM含有10%DMSO中で徐々に凍らせる。
本発明の製剤の投与は、必要とする対象への移植によってもよい。一実施形態では、本発明の製剤を、希望部位での微小器官の局在化をもたらす方法または経路で治療または予防する疾患または障害の影響を受けている器官または系に移植してもよい。別の実施形態では、移植した製剤の位置は、疾患または障害の影響を受けている器官または系から遠位であってもよい。そのため、一実施形態では組換えタンパク質が局所的に解放され、別の実施形態では組換えタンパク質がリンパ系に拡散し、一実施形態では、組換えタンパク質が最終的に全身に分布することもある。そのため、本発明は、必要としている対象の一部に現れる疾患または障害を処置するためのさまざまな濃度での治療用製剤の使用法を提供する。
本態様にしたがって、そして一実施形態では、本発明の製剤を腫瘍内に移植してもよい。別の実施形態では、腫瘍から遠位の部位に製剤を移植してもよく、一実施形態では特定の種類の腫瘍の転移と関連がある。別の実施形態では、本発明の製剤を対象の腎臓に移植してもよく、一実施形態では被膜下移植である。別の実施形態では、本発明の製剤は腹腔鏡下で移植される。
一実施形態では、本発明の製剤を、一時的な病状の急性処置のために1回移植してもよく、あるいは特に疾病が進行、再発、または悪化する場合に、2回以上移植してもよい。一実施形態では、本発明の製剤を1つ以上同時に投与してもよく、あるいは別の実施形態では交互に投与してもよい。一実施形態では、交互の方法を疾患の段階または期によって決定してもよい。
一実施形態では、微小器官が、微小器官の細胞の少なくとも一部が生き残る方法で対象の希望する場所に移植される。本発明の一実施形態では、細胞の少なくとも約5%、本発明の別の実施形態では少なくとも約10%、本発明の別の実施形態では少なくとも約20%、本発明の別の実施形態では少なくとも約30%、本発明の別の実施形態では少なくとも約40%、本発明の別の実施形態では少なくとも約50%以上が、対象への投与後に生き残る。対象への投与後の細胞の生存期間が、数時間、例えば24時間〜数日ほどの短時間、数週間から数ヶ月または数年ほどの長期間になる可能性がある。
受容対象に微小器官を移植することで、組換え産物の継続的な投与量を提供する。例えば移植した組織内での血管の形成を促進する宿主内での効率的な組み込みのために、移植前に微小器官を調製してもよい。そのため、製造後、すぐに組換え産物を抹消受容者循環に送ってもよい。あるいは、細胞付着を防止し、宿主内に効果的に組み込まれるように、移植前に微小器官を調製してもよい。血管形成を防止する方法の例としては、絹またはナイロン、あるいは例えばGORE−TEXバッグ(Terrill P J, Kedwards S M, and Lawrence J C. (1991) The use of GORE-TEX bags for hand bums. Burns 17(2): 161-5)などの他の材質、あるいは例えばテフロン(登録商標)などの細胞付着を防止する材質でコートされた他の多孔質膜の市販細胞非透過性直径制限生物学的メッシュバッグ内への微小器官の包装が上げられる。
微小器官によって生成される遺伝子産物をその後、例えば、タンパク質性生物医薬品などの薬物などの化合物の制御された送達を行うための高分子デバイスを通じて送達できる。生分解性と非生物分解性の両方のポリマーを含むさまざまな生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用し、特定の目的部位で本発明に即して微小器官の遺伝子産物の持続放出のための移植片を形成できる。前記移植片の作成は、一般的に当該技術分野で公知である(例えば、次の参考文献を参照: Concise Encyclopedia of Medical & Dental Materials, ed. By David Williams (MIT Press: Cambridge, Mass., 1990); Sabel et al. U.S. Pat. No. 4,883,666; Aebischer et al. U.S. Pat. No. 4,892,538; Aebischer et al. U.S. Pat. No. 5,106,627; Lim U.S. Pat. No. 4,391,909; and Sefton U.S. Pat. No. 4,353,888)。一実施形態では、GMMOはカプセル化される。別の実施形態では、GMMOはカプセル化されない。
本発明にしたがった遺伝学的に改変された微小器官の移植は、標準的な外科的法を通じて、または微小器官の投与に適したゲージの針を採用する特別に適応されたシリンジを利用する哺乳類の目的とする組織部位への微小器官調合液の注入を通じて、達成できる。別の実施形態では、移植される微小器官のためにカテーテルが採用される。一実施形態では、PCT国際特許出願番号WO204/099363に記載の移植方法のいずれかを使用してもよく、本発明の実施形態と考えられる。
一実施形態では、微小器官は、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、または胃内に移植される。一実施形態では、用語「移植される(implanted)」とは、分層または全層皮膚移植として移植されることを除く。移植片拒絶および/または移植片対宿主病(GVHD)を避けるために移植前または移植中に取られる措置を提供する微小器官の調製に同種異系および異種組織も利用できるが、本発明の一実施形態では、移植に利用されるドナー微小器官を、好適には受容動物の器官組織(すなわち自己移植)、または同系動物から調製される。本明細書中で使用されるように、GVHDとは、受容宿主に対する移植免疫反応によって生じる組織移植(移植片)の結果である移植片対宿主病のこと言う。さらに具体的には、移植片対宿主病は、受容者を異物と認識して、受容者の細胞を攻撃するドナーT−リンパ球(T細胞)によって引き起こされる。移植片の拒絶反応またはGVHDを防止または緩和する多数の方法は当該技術分野で公知であり、本発明の方法で使用してもよい。一実施形態では、豚−ヒト移植などの異種移植が用いられる場合など、宿主による免疫的攻撃を受ける組織内での細胞群の移植を促進するため、微小器官を挿入するか、または再補充可能、非生分解性、または生分解性デバイスなどの免疫保護材質でカプセル化し、その後、受容対象に移植してもよい。
別の実施形態では、移植に利用されるドナー微小器官は、好適には受容者とヒト白血球抗原(HLA)が一致しているドナーから調製され、一実施形態では、HLAがヒトでの主要組織適合複合体である。一実施形態では、ドナーと受容者が、クラスI主要組織適合複合体(MHC)遺伝子、クラスII MHC遺伝子、またはその組み合わせで一致する。一実施形態では、クラスI MHC遺伝子はHLA−A、HLA−B、およびHLA−Cを含み、一実施形態ではクラスI MHC遺伝子が不一致だと移植片注入のリスクを高める。また、一実施形態では、クラスII MHC遺伝子はHLA−DPA1、HLA−DPB1、HLA−DQA1、HLA−DQB1、HLA−DRA、HLA−DRB1を含み、一実施形態ではクラスII遺伝子が不一致だとGVHDのリスクを高める。別の実施形態では、ドナーと受容者が、HLD−DMとHLA−DO遺伝子で一致する。
一実施形態では、一実施形態では加熱、抗ウイルス薬、細胞によるウイルス代謝回転を促進する薬剤などの使用である物理的方法などの当該技術分野で公知の方法を通じて、体外での細胞からのウイルス代謝回転または排出が高められる。
一実施形態では、本発明の長期持続性製剤が核酸またはペプチド発現の濃度および期間を高め、核酸またはポリペプチドの濃度は無期限に上昇したままではない。
細胞の一時的形質導入、または迅速に代謝回転する細胞を必要とする他の方法とは対照的に、本発明の長期持続性EPO製剤は、これ以上複製しない細胞を含む。そのため、EPO製剤は安定した構造物から安定したタンパク質を生成し、既に特徴付けられたタンパク質を生成し続けることが期待される。
実験材料および方法
材料および機器リスト
産生培地を使用して微小器官を増殖させた。当該培地は、1%グルタミンを含み、50μg/mLゲンタマイシン(RAFA labs,注射用)および0.1%アンフォテリシンB(BMS,Fungizone I.V.)(培地中最終濃度2.5μg/mLのアンフォテリシンB)が添加されたDMEM−HEPES培地(高グルコース4,500mg/Lおよび25mM HEPES;Hi-Clone Cat# SH3A1448.02)を含む。一部の実験では、10%血清代替物添加物(SSS,Irvine Scientific,Cat # 99193)、10%自己移植ヒト血清、または10%ウシ胎仔血清(FBSまたはFCS)を産生培地に添加した。
真皮微小器官の採取-同心針法
ヒト真皮微小器官を、ドナーの下腹部の領域の皮膚部分から採取した。上皮の採取を防止するため、微小器官を採取する皮膚領域の片側で皮膚角質層を通って真皮に入る浅い切り込み(深さ1〜2mm)を直線に沿って切開し、最初の切り込みから30mm離れて平行な同様の切り込みを切開した。切り込みの距離で微小器官の長さを決定し、実験中は一貫してその距離とした。
無菌食塩水を充填した1mL注射器に取り付けられた小ゲージ(通常、22GA)の皮下注射針を、最初の切り込みにある剥き出しにされた真皮に挿入し、反対側の切り込みで真皮から出るように必要に応じて針に角度を付けた状態で、反対側の切り込みに向けて採取部位の真皮に沿って移動させた。
次に、ガイド針の長さに沿った外皮を、外科クランプで挟んだ。真皮に埋め込まれた針をわずかに持ち上げ、その周囲の皮膚部分を引き上げ、挿入した皮下注射針の先端の下のフック形デバイスを使用して、挟む前に皮膚の持ち上げを支援する。出口の部分から突き出るガイド針の先端を、市販のドリル(Aesculap Micro Speed GD 650,GD 657など)で支えられるコアリング針(直径1〜3mm、Point Technologies,CO USA)の鋭利な先端に挿入する。少量の無菌食塩水を注射器からコアリング針に注入する。ドリルを作動させ、高速(通常、3000〜7000RPM)でコアリング針を回転させ、回転中、ドリルとコアリング針をガイド入りの軸に沿って手動で前に進め、コアリング針の内径とおおよそ同じ外径を持つ長さ30〜40mmの円筒状真皮コア(真皮微小器官)を切開する。通常、真皮微小器官はガイド針に取り付けられたままで、コアリング針内から引き抜き、産生培地(本願明細書で上述のように)に置き、コアリング針を皮膚から取り外す。
ピンセットを用いて、1000μLの産生培地を含む24ウェルプレートのラベルの付いた1つのウェルに各微小器官を移す。破片を取り除くため、各微小器官に対して1000μLの追加培地交換を2回行う。その後、24時間、32℃、10%CO2、湿度95%以下に平衡化されたインキュベーターへ1000μLの産生培地に微小器官を含むプレートを移す。
ウイルス形質導入
ウイルスを保存するため、必要とする総液量が少ない小さなウェルを持つ48ウェルプレートのウェルに、形質導入のために各微小器官を移した。内部の微小器官をかき乱さずに、各ウェルから培地を注意深く取り除いた。前臨床実験中、以下の3種類の異なるベクターを試験した。すなわち、1.6〜3x109感染粒子(ip)/mLの第一世代アデノウイルス(Molecular Medicine)、約3〜4x1012ウイルス粒子/mLのヘルパー依存性アデノウイルス(Baylor)、または約2x1011ウイルス粒子/mLのアデノ関連ウイルス(ペンシルベニア大学)、組換えヒトEPO遺伝子、最適化組換えヒトEPO遺伝子、または最適化IFN−アルファ遺伝子を含むそれぞれを、FCSを含むか含まないDMEM−HEPES(Gibco Cat#42430-025)で1:10、1:25、1:50、1:100、1:500、または1:1000にそれぞれ希釈した。48ウェルプレートの各ウェルを、ウイルスの希釈液の1つ100μLで満たした。CO2インキュベーターの中にプレートを置き、2時間、300rpmのデジタルマイクロタイターシェーカーで撹拌し、さらに振とうせずに16〜22時間インキュベーションを行って形質導入を促進させた。
形質導入後、形質導入した微小器官を24ウェルプレートに移し、その後、産生培地(FCSなし)1mLで3回洗浄し、形質導入されなかったウイルス粒子を取り除いた。洗浄後、標準高湿度CO2インキュベーターの中の1mLの産生培地に、湿度95%、10%CO2、32℃でバイオポンプを維持した。ウイルスベクターの除去72時間後、産生培地を新鮮な培地と置き換え、分泌組換えタンパク質濃度に関して使用済み培地の一定分量を分析した。
体外(ex vivo)微小器官維持
3〜4日ごとに、使用済み産生培地を回収し、分泌組換えタンパク質の濃度とグルコース濃度を、バイオポンプの生存能力とともに評価した。24ウェルプレートに新鮮な産生培地を添加した。
分泌タンパク質測定
酵素結合免疫測定法(ELISA)キット(Quantikineヒトエリスロポエチン;R&D Systems;ヒトインターフェロンアルファELISAキット、PBL Biomedical Laboratories)を用い、メーカーの指示に従って、ヒトEPO(hEPO)およびIFNα濃度および分泌量を分析した。
グルコース測定
Sigma-Aldrich Corporation GAGO20グルコース(GO)分析キットを用い、メーカーの指示に従って、組織グルコース消費を評価した。
ヘマトクリット測定
当該技術分野で公知のように、National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)で推奨される参照方法を用いた遠心分離を用いて、ヘマトクリット濃度を分析した。ヘマトクリットを測定するため、試験管に入れた全血を5分間、10〜15,000×gで遠心分離し、赤色細胞(充填赤血球と呼ばれる)をペレット状にし、毛細管中の試料の全長に対する充填赤血球の柱の比率を、10分以内の遠心分離で、グラフィックリーディングデバイスを用いて測定した。
ヘモグロビン測定
Hb、ヘマトクリット、白血球、赤血球、MCV、MCH、網状赤血球、および血小板の数を測定する全般的な血液評価の一部としてHb濃度を測定した。例えば、自動化されたSeimens ADVIAプラットフォームを使用して完全な血球数を測定してもよい。2種類の方法、標準シアンメトヘモグロビン比色法とフローサイトメトリーでHbを評価した。
微小器官移植−SCID
一部の実験では、微小器官が生存できるかを解明するために組織グルコース消費を評価した後、遺伝子組換えまたは対照微小器官を、重症複合型免疫不全症(SCID)マウスに皮下移植した。体重約25グラムのオスとメスのSCIDマウスに、希釈ケタセット(ケタミンHCl)(400μLケタセットと600μL食塩水)で麻酔をかけ、対照またはEPO−発現微小器官を、微小器官形質導入10日後に皮下移植した。
微小器官移植−ヒト
臨床試験中、インフォームドコンセントの署名、臨床検査、病歴、健康診断、ECG、および併用薬付属資料を含む患者スクリーニング期間の後に、遺伝子組換えまたは対照微小器官を患者に皮下または皮内移植した。ヒト臨床試験に関して本願明細書で示される結果では、第「0」日目は移植の日である。さらに、微小器官が生存可能かを解明するために、組織グルコース消費に関してGMMOおよび対照微小器官を分析した。対照またはEPO−発現微小器官を皮下または皮内移植した。
実施例1 GMMOによってインビトロで生成されるEPOおよびIFNα濃度
上記のように微小器官を調製し、上記のようにCAGプロモーターに結合された最適化IFNα遺伝子を発現するヘルパー依存性アデノウイルスベクターで形質導入した。その後、培地でGMMOを維持し、生成したIFNαの濃度をELISAで評価した。最適化されたIFNα−発現微小器官は採取後の少なくとも40日間、1000ng/日を上回るIFNαをインビトロで生成し(図1)、組換えhEPO−発現微小器官は採取後の少なくとも142日間、1000ng/日以上のhEPOをインビトロで生成した(図2A−B)。
最適化されたhEPOをコードする弱毒性アデノウイルスベクターを含むGMMOは、hEPOをコードするアデノウイルス−5ベクターを含む微小器官と比較して、200日間を超えて、高い割合のピーク発現を維持した(図3)。最適化されたhEPOをコードする弱毒性アデノウイルスベクターを含む微小器官も、最適化されていないhEPOをコードする弱毒性アデノウイルスベクターを含む微小器官よりも長い期間、高い割合のピーク発現を維持した(図4)。最終的に、CAGプロモーターのhEPO下流をコードする弱毒性アデノウイルスベクターを含む微小器官は、CMVプロモーターのhEPO下流をコードする弱毒性アデノウイルスベクターを含む微小器官と比較して、形質導入後の日数の関数としてより顕著に高まる高いhEPO発現量を示した(図5)。
実施例2 インビトロおよび移植SCIDマウス血清中で維持されたヒトEPO発現GMMOにより産生されるEPO濃度
EPO−発現微小器官を上記のように調製した。培地での計9日間の後、微小器官あたりで生成されるEPOの量を測定し、この値を使用して、同等量のEPOを発現する微小器官で各マウスに移植することを決定した。第10日目に、2つの微小器官を各SCIDマウスに皮下移植し、第10日目の後に行われる最初の測定では、SCIDマウスの血清中で測定されるhEPOの量は基礎量よりも有意に高かった。量は移植後少なくとも216日の時点で高いままであり、少なくとも157日間、SCIDマウスでヘマトクリット値を有意に高めた(図6A)。移植したEPO−発現微小器官と同時に同じドナーから生成された移植していないEPO−発現微小器官は、インビトロで高いEPO生成量を継続的に維持した(図6B)。インビボ(図6A)とインビトロ(図6B)の両方で、最適化されたhEPO遺伝子を含むベクターで形質導入された微小器官は、組換えhEPOで形質導入されたものよりも高濃度のEPOを生成した。非EPO−生成微小器官が移植された対照SCIDマウスは、移植前と比較して微小器官移植後、血清EPO濃度の増加を示さず、ヘマトクリット値の有意な変化を示さなかった(図6A)。陽性対照として使用されるEPO−発現アデノウイルス−5を含む微小器官は、EPO−発現最適化または非最適化弱毒性アデノウイルスを含む微小器官に対する1:100の力価と比較して、1:10の力価で使用した。
実施例3 ヒトEPO−発現GMMOの移植によって生成されるヘモグロビン(Hb)濃度増加−ヒト臨床試験
臨床試験概要
下記臨床試験では貧血、透析前慢性腎疾患(CKD病期3〜4)患者に協力を求めた。CKD病期は、[血清クレアチニンから糸球体濾過量(GFR)を推定するための腎疾患における食事の見直し(MDRD)研究方程式]MDRD−GFRに基づく。基準としてトランスフェリン飽和率%(TSAT%)とフェリチン(ng/mL)の測定値を用いて、参加患者は鉄欠乏性ではなかった。患者は、EPO−依存状態に対して未経験であるか、あるいはEPO−依存性の場合、赤血球生成促進薬(ESA)の使用を少なくとも4週間にわたり停止する。本明細書中で使用されるように、用語「患者(patient)」は、「対象(subject)」と呼ばれることもある。
Hb基礎値の測定のために、未経験参加者の事前の30日の値から基礎Hbの平均値を測定するか、基礎値を、最後のESA注入後100日の推定最低値から、そして可能な場合には過去のHb値と比較して、決定した。図11Aおよび11Bは、移植前のHb値と推定最低値を示す。移植後のHb値も示される。第−30日目、第−9日目、および移植の日(第0日目)の基礎測定値、すなわち、赤血球数、Hb、Hct(%)、絶対網状赤血球数、血清中EPO濃度(mU/mL)、鉄状態を収集した。
有効性の評価は、EPO濃度、Hb、およびヘマトクリットを測定し、網状赤血球を、最初の2週間は週に3回計数し、その後、第6週まで週に2回計数し、さらにその後は毎週1回計数した。評価基準には、Hb応答および効果持続期間を含んだ。
図15は、上記試験の参加者の人口統計データを示す。
臨床試験の安全性結果は、臨床の場での遺伝学的に改変された微小器官の使用の利点を支援する。特に、安全性結果は以下の内容を示した。すなわち、(a)処置を受けた患者に有害事象がない;(b)治療が簡潔で、良好な忍容性を示した;(c)抗EPO抗体形成の証拠がない(処置の前、間、および後に血液試料を試験し、処置の結果としてのEPO抗体の増加は観察されなかった);および(d)今まで血清EPO濃度は60mU/mLを超えなかった。
臨床試験−単回投与
第I相臨床試験をイスラエルで行い、慢性腎疾患(CKD)を患い、III期およびIV期の透析前貧血患者に、本発明の持続型(長期持続性治療用製剤)の自己移植hEPO−GMMOを移植した。GMMO−hEPOによる単回移植処置によって、3〜16ヶ月を上回る効果的なEPO治療を行った。第I/II相GMMO hEPO臨床試験の承認は、イスラエルの保健省によって承認され、Hadassah MedicalCenterとSourasky Tel Aviv Medical Centerで実施された。後の米国での臨床試験を容易にするため、FDAの規制基準および臨床規格に従って臨床試験を実施した。
患者を、18〜25IU/kg/日(低用量)または35〜45IU/kg/日(中容量)または55〜65IU/kg/日(高用量)で処置した。図7は、投与されたEPO用量(IU/kg/日)に対する基礎値を上回る血清EPO上昇の正味のピークの相関関係を示す。
結果からは、18〜25IU/kg/日の低用量投与、35〜45IU/kg/日の中用量投与、55〜65IU/kg/日の高用量投与を用いた患者の大部分でHb濃度(Hb)が10〜12g/dLの範囲(治療濃度域)で維持されることが示された。図8A、8B、および8Cは、治療濃度域内の持続的Hb応答が1〜24ヶ月間継続したことを示す。この持続的Hb応答結果は、EPOの注入と無関係である。
試験には年齢21〜82歳の男性および女性の患者を含めた。
患者1はEPO未経験患者だった。患者1に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、82歳男性;4期CKD患者;GFR 21mL/min、適切な鉄貯蔵(トランスフェリン飽和率33%、フェリチン340ng/mL);および低用量EPO(18〜25IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを2回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象なし;良好なHb応答;試験プロトコルに則った頻繁な血液サンプリングと追跡調査来院に疲れるが満足した−4.5ヶ月後に早期終了を要請した。
図9は、131日間の患者1での持続的Hb応答を示す。
患者2はEPO依存性患者だった。患者2に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、71歳男性;3期CKD患者;18ヶ月間EPO依存性、10日ごとに6000IUを投与、EPO処置の少なくとも40日前に最終投与;GFR 57mL/min、適切な鉄貯蔵(トランスフェリン飽和率26%、フェリチン105ng/mL);および低用量EPO(18〜25IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを2回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象なし;治療に満足した;良好なHb応答;12ヶ月の追跡調査にわたって良好に完了。患者は身体機能が活発で、現在の処置の後、さらに高い用量への再登録を依頼した。
図10Aは、2年間、患者2で治療濃度域内に維持された継続的Hb応答を示す。図10Bおよび10Cはそれぞれ、患者2の200日間以上にわたる網状赤血球数およびEPO濃度を示す。
患者3はEPO依存性患者だった。患者3に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、58歳男性;4期CKD患者;16ヶ月間EPO依存性、週に1回、5000IUを投与、EPO処置の少なくとも39日前に最終投与;GFR 26mL/min、適切な鉄貯蔵(トランスフェリン飽和率23%、フェリチン243ng/mL);および低用量EPO(18〜25IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを4回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象なし;良好なHb応答;基礎Hb濃度よりも最大2gm/dLの上昇。現在の用量では目標濃度が維持されなかった。追加EPO注入を受けるために、患者が介在する試験を終了した。
図11Aは、92日間、患者3で目標治療濃度域のすぐ下に維持された継続的Hb応答を示す。
患者4はEPO未経験患者だった。患者4に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、57歳女性;3期CKD患者;EPO未経験;GFR 32mL/min、適切な鉄貯蔵;および低用量EPO(18〜25IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを5回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象はなく、良好なHb応答。
図12は、224日間の患者4での治療濃度域内の持続的Hb応答を示す。
患者5はEPO依存性患者だった。患者5に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、51歳女性;4期CKD患者;多発性嚢胞腎;EPO依存性、3週間あたり1回、60μgのアラネスプを投与、EPO処置の少なくとも113日前に最終投与;GFR 18mL/min、適切な鉄貯蔵(トランスフェリン飽和率39%、フェリチン371ng/mL);および低用量EPO(18〜25IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを6回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象なし;一時的なHb応答、不十分;および第35日目に臨床試験を中止。
患者6はEPO依存性患者だった。患者6に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、40歳女性;4期CKD患者;多発性嚢胞腎−移植の候補者;6週間EPO依存性、週に2回、2000IUを投与、EPO処置の少なくとも29日前に最終投与;GFR 25mL/分、適切な鉄貯蔵(トランスフェリン飽和率33%);および低用量EPO(18〜25IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを4回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象なし;良好なHb応答;腎機能が悪化;追加EPO注入を実施。患者の臨床試験を中止し、透析に移行した。
図13は、89日間の患者6での治療濃度域内の持続的Hb応答を示す。
患者7はEPO未経験患者だった。患者7に対するEPO臨床試験の臨床的統計および詳細には以下の内容を含む。すなわち、77歳男性;4期CKD患者;EPO未経験;GFR 19mL/min、適切な鉄貯蔵;および中用量EPO(35〜45IU/kg/日)を投与−hEPO−GMMOを8回投与。
処置に関するコメントとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、有害事象はなく、低応答者だった。
図14は、172日間の患者7での大部分は治療濃度域内の持続的Hb応答を示す。
本試験の結果から、低用量および中用量のhEPO−GMMOを投与された患者の血液が長期間、治療濃度域内の持続的Hb濃度を示すことが示される。さらに、患者に有害事象はなく、処置中または処置後に不快症状は報告されなかった。
臨床試験−2回目の投与で増加された用量
患者10は、2回の低用量投与による処置を受けたEPO依存性患者だった。初回投与は第0日目に行われ、続いて2回目投与が第70日目に行われた。図16は、初回投与によって、10mU/mLの基礎値よりも2〜5mU/mLのEPO濃度の上昇を持続し、Hbは8.8g/dLの最低値に対して10.2g/dLだったことを示す。2回目用量の投与後、Hbの明らかな増加とともに、EPO血清中濃度および網状赤血球で同様のピーク応答が観察された。
2回目投与による結果からは、再処置は実行可能で、安全で、効果的であることが示された。
要約
示された臨床試験からは、約18〜25IU/kg/日、34〜45IU/kg/日、および55〜65IU/kg/日の用量で示された実行可能性とともに、hEPO−GMMOが安全であり、処置は変動する用量の影響を受けやすいことが示される。意外にも、hEPO−GMMOの単回投与によって、大部分の患者に対して少なくとも3ヶ月〜24ヶ月以上の間、治療濃度域(10〜12g/dL血中Hb)内の継続的Hb応答を示した。
繰り返し投与は安全で有効であることが示されている。同時に、hEPO−GMMOの皮下移植によって、その治療を必要とする対象にEPOの継続的供給源を提供することが示されている。そのため、hEPO−GMMOの皮下移植は、ESAの頻繁なボーラス注入の方法と比較して、必要とする患者への有効な継続的処置の代替案の提供で有意に進歩している。
実施例4 SCIDマウスでの前臨床毒性試験
Harlan Biotech Israelで医薬品安全性試験実施基準(GLP)毒性試験を行った。本試験の目的は、慢性腎疾患での長期薬物送達のための持続性供給源としての使用目的に関して、NOD−SCIDマウスでの単回皮下移植後の試験製品Biopump HDAd−hEPOの潜在的な毒性作用を評価することだった。
毒性試験の設計を詳細に見直し、FDAの前臨床部門の代表の同意を受け、その結果実施した。
SCIDマウスの比較的に短い寿命(およそ18ヶ月)を考慮して、表1に示した継続期間が、提案された臨床試験を支援するための毒性学的安全性を試験するのに妥当だと判断した。
最初の群では、各動物が、300〜450IU EPO/日の範囲で分泌されるBiopump(GMMO)の一部を投与された。
2番目の群は移植された対照群だった。各動物は、真皮非形質導入微小器官の同様のサイズの一部を投与された。
「微小器官なし(no micro-organ)」対照群としての3番目の群では、各動物は、対照群として同一の皮下関連処置による処置を受けたが、移植は受けなかった。
臨床兆候:観察期間全体を通じて、注意深い臨床検査を行い、少なくとも毎日1回、試験中のすべての動物について記録した。観察としては、皮膚、毛皮、眼、粘膜の変化、分泌および排泄(例えば下痢)の発生、および自律神経活動が挙げられる。歩きぶり、姿勢、および処理に対する反応の変化のほか、突飛な振る舞い、体の震え、痙攣、睡眠、および昏睡の存在も観察し、記録した。
体重:無作為化手順で試験のすべての動物の個々の体重測定を行い、続いて、皮下移植/疑似手術の前、2日後、およびその後、週1回の頻度で体重測定を行った。
食物消費:試験のすべての動物に対して、順化期間中に食物消費量の測定を行い、その後、週1回の頻度で、観察期間全体を通して測定した。
血液試料の採取(暫定出血セッション):すべての動物が血液学および生化学パラメーターに関する暫定出血セッションを受け、単回皮下移植の日から13〜15日ごとに行った。試験内の均一性を維持するために、試験のすべての動物は暫定出血セッションを受けた。血液試料は、数ある中でもヘマトクリット(HCT)値を測定する目的に役立った。
剖検および肉眼検査:最初に毒性評価に登録されたすべての動物は、詳細な剖検および肉眼的病理検査を受けた。
器官/組織収集、体重、および固定:予定された剖検セッション中にすべての器官/組織を収集した。
結果:
試験製品の処置を受けたメスマウスは、試験の第7日目にケージ内で死亡しているのが見つかった。さらに、試験製品の処置を受けたオスマウスは、第52日目に死亡しているが見つかった。試験製品、対照製品、または疑似手術を受けた群のいずれにもさらなる死亡は起きなかった(予備を含み)。
観察期間全体を通じて、試験製品、対照製品、または疑似手術を受けた生き残った動物の間には、処置に関連する明らかな反応は観察されなかった。
試験製品自体によるhEPOの継続的分泌を考慮して、試験製品処置を受けた動物で、観察期間全体を通じたHCT値の上昇が記録された。それぞれの疑似手術を受けた平均群の値に対して第15日目、第28日目、第43日目、第57日目、および第70日目に、試験製品の処置を受けた群で、統計上有意に増加した(p,0.05およびp,0.01)HCT値が明らかになった。
本試験の条件の下で得られた組織病理学的所見を考慮して、12週の最長暴露期間のために300〜450IU/動物/日の用量で長期薬物送達のための持続性供給源としてNOD−SCIDマウスに皮下移植される、試験製品Biopump HDAd−hEPOは、3つの予定終了時点すべてで観察された薬理学的に関連した変化のみと関連しているという結論を出すことができる。
当業者にとっては当然ながら、本発明は上記で特に示され、述べられた内容に限定されるものではない。もっと正確に言えば、本発明の範囲は以下に続く請求項によって定義される。