(5.詳細な説明)
患者へのエフェクターRNAの送達のための方法及び組成物が本明細書に記載される。特に、患者における特定の標的遺伝子(複数可)の発現を妨げるエフェクターRNAの送達のための方法及び組成物が本明細書に記載される。標的遺伝子は、病原体の遺伝子、又は疾患促進遺伝子(例えば、オンコジーン)であることができる。標的遺伝子、及びそのような遺伝子をターゲッティングすることによって治療することができる疾患は、下の第5.7節に示されている。そのようなエフェクターRNAは、miRNA、mirtron、shRNA、siRNA、piRNA、svRNA、及びアンチセンスRNAであることができる。
一態様では、対象/患者へのエフェクターRNAの送達のための組換えRNAウイルスが本明細書に記載される。そのような組換えRNAウイルスは、宿主細胞内で転写され、任意にプロセシングされて、エフェクターRNAを生じ、それによりさらに、標的遺伝子の発現を妨げることができる、異種RNAを含む。本明細書に記載の組換えRNAウイルスは、RNAウイルスに由来することができる。ここに記載されている方法及び組成物で使用することができるRNAウイルスは、セグメント化された一本鎖マイナスセンスRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス);セグメント化されていない一本鎖マイナスセンスRNAウイルス(モノネガウイルス目);セグメント化されていない一本鎖プラスセンスRNAウイルス(例えば、コロナウイルス);アンビセンスRNAウイルス(例えば、ブンヤウイルス及びアレナウイルス);並びに二本鎖RNAウイルス(例えば、レオウイルス)である。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、レトロウイルスではないRNAゲノムを有するRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、セグメント化された一本鎖マイナスセンスRNAウイルス;セグメント化されていない一本鎖マイナスセンスRNAウイルス;セグメント化されていない一本鎖プラスセンスRNAウイルス;又は二本鎖RNAウイルス(例えば、レオウイルス)に由来する。
別の態様では、下記のような異種RNAを含むウイルスゲノム又はウイルスゲノムセグメントをコードする核酸、特にDNA分子が本明細書に記載される。
別の態様では、本明細書に記載の対象/患者へのエフェクターRNAの送達のための組換えRNAウイルスは、miRNA応答エレメント(MRE)及びエフェクターRNAを含むように改変することができる(例えば、Perezらの文献(2009, Nature Biotechnology 27:572-576);及びWO2010101663号を参照されたい)。MREのウイルスベクターへの組込みは、複数の目的を果たすことができる。まず、ウイルスによって発現されるエフェクターRNAに応答するMREの本明細書に記載の組換えウイルスへの組込みは、ウイルスそれ自体を調節する働きをすることができる(すなわち、自己調節目的)。これは、MREが関連しているmiRNAの存在下で(例えば、ウイルスによるエフェクターRNAの産生のために)ウイルスが弱毒化されるように、ウイルスゲノムに、ウイルスによって発現されるエフェクターRNAに応答するMREを挿入することによって達成することができる。組織特異的miRNA発現が記載されている(例えば、Landgrafらの文献(2007, Cell 129(7):1401-1414)を参照されたい)。したがって、MREの本明細書に記載の組換えウイルスへの組込みによって果たすことができる第二の目的は、特定の組織をターゲッティングするウイルスの能力を調節することである。これは、ウイルスゲノムに、対象の内在性miRNAに応答するMREを挿入することによって達成することができ、ここで、該対象の内在性miRNAは組織特異的である。したがって、ウイルスは、対象の特定の組織、すなわち、MREに特異的であるmiRNAを発現しない組織でしか増殖することができない。したがって、MREのそのような組込みは、例えば、望ましい場合又は状況が許す場合、ウイルスを弱毒化することによって、対象においてウイルスベクターを調節する働きをすること、及びウイルスの組織特異的miRNA発現を調節する働きをすることができる。さらに、既知の指向性を有するウイルスを、該ウイルスの既存の指向性を増強するために、該ウイルスによって産生されるエフェクターRNAの組織特異的発現のMREに基づく調節を有するように改変することができる。すなわち、組織ターゲッティングが増強されたウイルスを、組織特異的ターゲッティングを生じさせるMREを選択することによって生成させることができ、ここで、ターゲッティングされる組織は、既に、該ウイルスが天然の指向性を有する組織である。
(5.1 セグメント化された一本鎖マイナスセンス組換えRNAウイルス)
(5.1.1 キメラウイルスゲノムセグメント)
ある実施態様では、異種RNAを、セグメント化された一本鎖マイナスセンスRNAウイルス、例えば、オルトミクソウイルスのウイルスゲノムセグメントに含める。異種RNAを含むようなウイルスゲノムセグメントであって、組換えRNAウイルスが、セグメント化された一本鎖マイナスセンスRNAウイルスに由来する、ウイルスゲノムセグメントは、この節では、キメラウイルスゲノムセグメントと呼ばれる。キメラウイルスゲノムセグメントをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。
一態様では、スプライシングを用いて、ウイルス異種RNAをキメラウイルスゲノムセグメントから転写される転写産物から放出させる。より具体的な実施態様では、異種RNAを、天然でスプライシングを受けるウイルスセグメント、例えば、インフルエンザウイルスのM1/M2セグメント又はインフルエンザウイルスのNS1/NEPセグメントに含める。ある実施態様では、内在性スプライスアクセプター部位を破壊し、該ウイルスセグメントの第一のオープンリーディングフレームの終止コドンの後ろ(例えば、インフルエンザウイルスを用いるという条件で、NS1/NEPセグメントを用いる場合、NS1の終止コドンの後ろ、又はM1/M2セグメントを用いる場合、M1の終止コドンの後ろ)に再形成させ、図8Aに示すように、もとのスプライスアクセプター部位から新しいスプライスアクセプター部位の部位までの配列を、新しいスプライスアクセプター部位の後ろに複製し、それにより(第一のオープンリーディングフレームを維持したまま)遺伝子間領域、及びスプライスアクセプター部位の5'に位置する第二のオープンリーディングフレームを生成させる。異種RNAをその遺伝子間領域にクローニングすることができる。理論に束縛されるものではないが、該キメラウイルスゲノムセグメントの転写及びスプライシングによって、異種RNAを含むラリアットが形成される。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。
ある具体的な実施態様では、内在性スプライスアクセプター部位を、その位置でのアミノ酸置換をもたらすことなく破壊する。ある具体的な実施態様では、内在性スプライスアクセプター部位の破壊は、その位置での保存的アミノ酸置換をもたらす。ある実施態様では、該スプライスアクセプター部位のヌクレオチドを、フレームシフトを生成させることなく欠失させる。
したがって、ある実施態様では、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)スプライスドナー部位を含むオルトミクソウイルス遺伝子の第一のオープンリーディングフレーム;(c)異種RNA配列を有する遺伝子間領域;(d)スプライスアクセプター部位;(e)オルトミクソウイルス遺伝子の第二のオープンリーディングフレーム;及び(f)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナルを含む:キメラウイルスゲノムセグメントが本明細書で提供される。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
インフルエンザウイルス遺伝子セグメントパッケージングシグナルが公知である。さらに、オルトミクソウイルス遺伝子セグメントパッケージングシグナルを同定するための技術が周知である。例となるパッケージングアッセイとしては、Liangらの文献(2005, J Virol 79:10348-10355)に開示されているパッケージングアッセイ及びMuramotoらの文献(2006, J Virol 80:2318-2325)に開示されているパッケージングアッセイが挙げられる。Liangらの文献及びMuramotoらの文献に記載されているパッケージングアッセイの説明は、引用により本明細書中に組み込まれる。Liang及びMuramotoのプロトコルのいくつかのパラメータを修飾することができ;例えば、様々な宿主細胞を用いることができ、かつ様々なレポーター遺伝子を用いることができる。
別の態様では、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位をウイルスゲノムセグメントのオープンリーディングフレーム(ORF)に導入する。スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位の生成によって、遺伝子間領域の導入が可能になり、該遺伝子間領域がスプライスアウトされたときに、ラリアットが形成される。ある具体的な実施態様では、それぞれ、スプライスアクセプター部位又はスプライスドナー部位を形成する配列の置換によって、より少ないアミノ酸変化が生じるように、それぞれ、該スプライスアクセプター部位又はスプライスドナー部位と類似しているORF中の配列を、それぞれ、該スプライスアクセプター部位又はスプライスドナー部位に改変する。ある実施態様では、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位の導入によって生成されるアミノ酸置換はいずれも、保存的アミノ酸置換である。ある実施態様では、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位を、遺伝子の機能又はその遺伝子産物の機能に必須ではない遺伝子の部分に導入する。ある実施態様では、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位の導入によって、ウイルスが弱毒化される。
ある実施態様では、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第一のヌクレオチド配列;(c)スプライスドナー部位;(d)異種RNA配列;(e)スプライスアクセプター部位;(f)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第二のヌクレオチド配列;及び(g)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むキメラウイルスゲノムセグメントが本明細書で提供される。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
別の態様では、異種RNAを、天然ではスプライシングを受けないキメラウイルスゲノムセグメント、例えば、インフルエンザウイルスのPB2、PB1、PA、HA、NP、及びNAセグメントに含める。スプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位を該キメラウイルスゲノムセグメントの非翻訳領域に導入することができる。転写及びスプライシングによって、異種RNAがウイルスmRNAから放出されるように、異種RNAをスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位の間に導入することができる。
したがって、ある実施態様では、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレーム;(c)スプライスドナー部位;(d)異種RNA配列;(e)スプライスアクセプター部位;及び(f)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むキメラウイルスゲノムセグメントが本明細書で提供される。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
ある実施態様では、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)スプライスドナー部位;(c)異種RNA配列;(d)スプライスアクセプター部位;(e)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレーム;及び(f)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むキメラウイルスゲノムセグメントも本明細書で提供される。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
さらに他の態様では、リボザイムを用いて、異種RNAをキメラウイルスゲノムセグメントから転写されるウイルス転写産物から放出させることができる。そのような態様では、異種RNAが2つの隣接するリボザイムによって切断されるように、該異種RNAを2つのリボザイム認識モチーフ及び2つの自己切断型リボザイムに隣接させることができる。異種RNAをキメラウイルスゲノムセグメントから転写されるウイルス転写産物の5'又は3'非翻訳領域に配置することができる。異種RNAをウイルスmRNAのオープンリーディングフレームの3'に配置する場合、11個以上のウラシル塩基のストレッチを該mRNAのオープンリーディングフレームの3'に導入する。使用可能な自己切断型RNAとしては、ハンマーヘッド型RNA、デルタ肝炎ウイルス(HDV)リボザイム、細胞質ポリアデニル化エレメント結合タンパク質(CPEB3)リボザイム、リボヌクレアーゼP(RNアーゼP)、及びβ-グロビン共転写切断(CotC)リボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様では、スプライシングをリボザイムと組み合わせる。したがって、キメラウイルスゲノムセグメントは、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームを形成する第一のヌクレオチド配列;(c)11個以上のウラシル塩基のストレッチ;(d)スプライスドナー部位;(e)異種RNA配列;(e)リボザイム認識モチーフ;(f)自己触媒型RNA(例えば、デルタ肝炎リボザイム);(g)スプライスアクセプター部位;及び(h)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むことができる。理論に束縛されるものではないが、転写及びスプライシングによって、リボザイム及び異種RNAを含む、結果として生じるラリアットが切断されて、異種RNAを該ラリアットから放出させる(図8B参照)。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。
ある実施態様では、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第一のヌクレオチド配列;(c)リボザイム認識モチーフ;(d)異種RNA配列;(e)自己触媒型RNA(例えば、デルタ肝炎リボザイム);(f)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第二のヌクレオチド配列;及び(g)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むキメラウイルスゲノムセグメントが本明細書で提供される。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
ある実施態様では、異種RNAをキメラウイルスゲノムセグメントの5'非翻訳領域に配置し、リボザイムによって放出させる(例えば、図8B)。したがって、キメラウイルスゲノムセグメントは、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームを形成する第一のヌクレオチド配列;(c)11個以上のウラシル塩基のストレッチ;(d)リボザイム認識モチーフ;(e)異種RNA配列;(f)自己触媒型RNA(例えば、デルタ肝炎リボザイム);及び(g)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むことができる。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。
ある実施態様では、異種RNAをキメラウイルスゲノムセグメントの5'非翻訳領域に配置し、リボザイムによって放出させる。したがって、キメラウイルスゲノムセグメントは、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)自己触媒型RNA(例えば、デルタ肝炎リボザイム);(c)異種RNA配列;(d)リボザイム認識モチーフ;(e)オルトミクソウイルス遺伝子のオープンリーディングフレーム;及び(g)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むことができる。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。
ある実施態様では、リボザイム及びその標的配列を、それらがウイルスmRNA中でのみ活性があり、vRNA中では活性がないようにクローニングする。同様に、スプライスアクセプター及びドナー部位を、それらがウイルスmRNA中でのみ活性があり、vRNA中では活性がないように導入する。
ある実施態様では、インフルエンザウイルスなどの、セグメント化された一本鎖マイナスセンスRNAウイルスは、宿主細胞の核内で複製及び転写される。
ある他の実施態様では、ブンヤウイルスなどの、セグメント化された一本鎖マイナスセンスRNAウイルスは、宿主細胞の細胞質内で複製及び転写される。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスが細胞質ウイルスである場合、異種RNAが、スプライシングによってではなく、リボザイム活性を通じて放出されるように、該ウイルスを構築する。
ある実施態様では、異種RNAを有するウイルスゲノムセグメントは、それ自体、Droshaリボヌクレアーゼの基質でも、Dicerリボヌクレアーゼの基質でもない。その代わり、スプライス産物及び/又はリボザイム産物が、Droshaリボヌクレアーゼ又はDicerリボヌクレアーゼの基質である。
ある態様では、(a)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)異種RNA配列;及び(c)オルトミクソウイルス遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナルを含むキメラウイルスゲノムセグメントを構築する。ある具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメントは、オープンリーディングフレームを含まない。より具体的な実施態様では、スプライス部位を導入して、異種RNAを転写産物から放出させる。他のより具体的な実施態様では、リボザイム認識配列及び該リボザイム認識配列を切断するリボザイムを異種RNAの3'又は5'に導入して、異種RNAを転写産物から放出させる。他のより具体的な実施態様では、リボザイム認識配列及び該リボザイム認識配列を切断するリボザイムを異種RNAの3'及び5'に導入して、異種RNAを転写産物から放出させる。さらに他の実施態様では、スプライス部位及びリボザイムを組み合わせて、異種RNAを転写産物から放出させる。そのようなキメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子も本明細書に記載される。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は全て、同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントの非コード領域は、コード領域(複数可)と同じ株及び/又は同じ種及び/又は同じ型のRNAウイルスに由来する。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
(5.1.2 ウイルス)
キメラウイルスゲノムセグメントを含有及び発現するように改変することができるセグメント化されたマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの非限定的な例としては:オルトミクソウイルス(例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トゴトウイルス、及び伝染性サケ貧血ウイルス)、ブンヤウイルス(例えば、ブンヤムウェラウイルス、ハンターンウイルス、ジュグベウイルス、リフトバレー熱ウイルス、及びトマト黄化壊疽ウイルス)、並びにアレナウイルス(例えば、ラッサ熱ウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、及びリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)が挙げられる。該ウイルスは、オルトミクソウイルス、ブンヤウイルス、及びアレナウイルスの任意の型、種、及び/又は株であることができる。ある具体的な実施態様では、該ウイルスは、インフルエンザウイルスである。インフルエンザウイルスの任意の型、種、及び/又は株を本明細書に記載の方法及び組成物とともに用いることができる。特に、インフルエンザウイルスの任意の型、亜型、種、及び/又は株を用いて、エフェクターRNAの送達のための組換えRNAウイルスを作製することができる。
具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントを含有及び発現するように改変されるウイルスは、A型インフルエンザウイルスである。A型インフルエンザウイルスの非限定的な例としては、亜型H10N4、亜型H10N5、亜型H10N7、亜型H10N8、亜型H10N9、亜型H11N1、亜型H11N13、亜型H11N2、亜型H11N4、亜型H11N6、亜型H11N8、亜型H11N9、亜型H12N1、亜型H12N4、亜型H12N5、亜型H12N8、亜型H13N2、亜型H13N3、亜型H13N6、亜型H13N7、亜型H14N5、亜型H14N6、亜型H15N8、亜型H15N9、亜型H16N3、亜型H1N1、亜型H1N2、亜型H1N3、亜型H1N6、亜型H1N9、亜型H2N1、亜型H2N2、亜型H2N3、亜型H2N5、亜型H2N7、亜型H2N8、亜型H2N9、亜型H3N1、亜型H3N2、亜型H3N3、亜型H3N4、亜型H3N5、亜型H3N6、亜型H3N8、亜型H3N9、亜型H4N1、亜型H4N2、亜型H4N3、亜型H4N4、亜型H4N5、亜型H4N6、亜型H4N8、亜型H4N9、亜型H5N1、亜型H5N2、亜型H5N3、亜型H5N4、亜型H5N6、亜型H5N7、亜型H5N8、亜型H5N9、亜型H6N1、亜型H6N2、亜型H6N3、亜型H6N4、亜型H6N5、亜型H6N6、亜型H6N7、亜型H6N8、亜型H6N9、亜型H7N1、亜型H7N2、亜型H7N3、亜型H7N4、亜型H7N5、亜型H7N7、亜型H7N8、亜型H7N9、亜型H8N4、亜型H8N5、亜型H9N1、亜型H9N2、亜型H9N3、亜型H9N5、亜型H9N6、亜型H9N7、亜型H9N8、及び亜型H9N9が挙げられる。
A型インフルエンザウイルスの株の具体的な例としては、A/sw/アイオワ/15/30(H1N1);A/WSN/33(H1N1);A/eq/プラハ/1/56(H7N7);A/PR/8/34;A/マガモ/ポツダム/178-4/83(H2N2);A/セグロカモメ/DE/712/88(H16N3);A/sw/香港/168/1993(H1N1);A/マガモ/アルバータ/211/98(H1N1);A/水鳥/デラウェア/168/06(H16N3);A/sw/オランダ/25/80(H1N1);A/sw/ドイツ/2/81(H1N1);A/sw/ハノーバー/1/81(H1N1);A/sw/ポツダム/1/81(H1N1);A/sw/ポツダム/15/81(H1N1);A/sw/ポツダム/268/81(H1N1);A/sw/フィニステール/2899/82(H1N1);A/sw/ポツダム/35/82(H3N2);A/sw/コートダルモール/3633/84(H3N2);A/sw/ヘント/1/84(H3N2);A/sw/オランダ/12/85(H1N1);A/sw/カレンツァイ(Karrenzien)/2/87(H3N2);A/sw/シュウェリン/103/89(H1N1);A/七面鳥/ドイツ/3/91(H1N1);A/sw/ドイツ/8533/91(H1N1);A/sw/ベルギー/220/92(H3N2);A/sw/ヘント/V230/92(H1N1);A/sw/ライプチヒ/145/92(H3N2);A/sw/Re220/92hp(H3N2);A/sw/バークム/909/93(H3N2);A/sw/シュレースヴィヒ−ホルシュタイン/1/93(H1N1);A/sw/スコットランド/419440/94(H1N2);A/sw/バークム/5/95(H1N1);A/sw/ベスト(Best)/5C/96(H1N1);A/sw/イングランド/17394/96(H1N2);A/sw/イエナ/5/96(H3N2);A/sw/ウーデンローデ/7C/96(H3N2);A/sw/ローネ/1/97(H3N2);A/sw/コートダルモール/790/97(H1N2);A/sw/バークム/1362/98(H3N2);A/sw/イタリア/1521/98(H1N2);A/sw/イタリア/1553-2/98(H3N2);A/sw/イタリア/1566/98(H1N1);A/sw/イタリア/1589/98(H1N1);A/sw/バークム/8602/99(H3N2);A/sw/コートダルモール/604/99(H1N2);A/sw/コートダルモール/1482/99(H1N1);A/sw/ヘント/7625/99(H1N2);A/香港/1774/99(H3N2);A/sw/香港/5190/99(H3N2);A/sw/香港/5200/99(H3N2);A/sw/香港/5212/99(H3N2);A/sw/イル・エ・ヴィレーヌ/1455/99(H1N1);A/sw/イタリア/1654-1/99(H1N2);A/sw/イタリア/2034/99(H1N1);A/sw/イタリア/2064/99(H1N2);A/sw/ベルリン/1578/00(H3N2);A/sw/バークム/1832/00(H1N2);A/sw/バークム/1833/00(H1N2);A/sw/コートダルモール/800/00(H1N2);A/sw/香港/7982/00(H3N2);A/sw/イタリア/1081/00(H1N2);A/sw/ベルチヒ/2/01(H1N1);A/sw/ベルチヒ/54/01(H3N2);A/sw/香港/9296/01(H3N2);A/sw/香港/9745/01(H3N2);A/sw/スペイン/33601/01(H3N2);A/sw/香港/1144/02(H3N2);A/sw/香港/1197/02(H3N2);A/sw/スペイン/39139/02(H3N2);A/sw/スペイン/42386/02(H3N2);A/スイス/8808/2002(H1N1);A/sw/バークム/1769/03(H3N2);A/sw/ビッセンドルフ/IDT1864/03(H3N2);A/sw/エーレン(Ehren)/IDT2570/03(H1N2);A/sw/ゲッシャー/IDT2702/03(H1N2);A/sw/ハーゼリュンネ/2617/03hp(H1N1);A/sw/レーニンゲン/IDT2530/03(H1N2);A/sw/IVD/IDT2674/03(H1N2);A/sw/ノルドキルヒェン/IDT1993/03(H3N2);A/sw/ノルドヴァルデ/IDT2197/03(H1N2);A/sw/ノルデン/IDT2308/03(H1N2);A/sw/スペイン/50047/03(H1N1);A/sw/スペイン/51915/03(H1N1);A/sw/フェヒタ/2623/03(H1N1);A/sw/ヴィズベク/IDT2869/03(H1N2);A/sw/ヴァルタースドルフ/IDT2527/03(H1N2);A/sw/ダム(Damme)/IDT2890/04(H3N2);A/sw/ゲルダーン/IDT2888/04(H1N1);A/sw/グランステット(Granstedt)/IDT3475/04(H1N2);A/sw/グレーフェン/IDT2889/04(H1N1);A/sw/グーテンスベルク/IDT2930/04(H1N2);A/sw/グーテンスベルク/IDT2931/04(H1N2);A/sw/ローネ/IDT3357/04(H3N2);A/sw/ノルトルップ/IDT3685/04(H1N2);A/sw/ゼーセン/IDT3055/04(H3N2);A/sw/スペイン/53207/04(H1N1);A/sw/スペイン/54008/04(H3N2);A/sw/シュトルツェナウ/IDT3296/04(H1N2);A/sw/ヴェーデル/IDT2965/04(H1N1);A/sw/バートグリースバッハ/IDT4191/05(H3N2);A/sw/クロッペンブルク/IDT4777/05(H1N2);A/sw/デートリンゲン/IDT3780/05(H1N2);A/sw/デートリンゲン/IDT4735/05(H1N2);A/sw/エックルハム/IDT5250/05(H3N2);A/sw/ハーケンブレック(Harkenblek)/IDT4097/05(H3N2);A/sw/ヘルツェン(Hertzen)/IDT4317/05(H3N2);A/sw/クローゲル(Krogel)/IDT4192/05(H1N1);A/sw/ラエル/IDT3893/05(H1N1);A/sw/ラエル/IDT4126/05(H3N2);A/sw/メルツェン/IDT4114/05(H3N2);A/sw/ミュスラリンゲン(Muesleringen)-S./IDT4263/05(H3N2);A/sw/オスターホーフェン/IDT4004/05(H3N2);A/sw/シュプレンゲ(Sprenge)/IDT3805/05(H1N2);A/sw/シュタットローン/IDT3853/05(H1N2);A/sw/フォーグラルン(Voglarn)/IDT4096/05(H1N1);A/sw/ヴォーラーシュト(Wohlerst)/IDT4093/05(H1N1);A/sw/バートグリースバッハ/IDT5604/06(H1N1);A/sw/ヘルツラケ/IDT5335/06(H3N2);A/sw/ヘルツラケ/IDT5336/06(H3N2);A/sw/ヘルツラケ/IDT5337/06(H3N2);及びA/イノシシ/ドイツ/R169/2006(H3N2)が挙げられるが、これらに限定されない。
具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントを含有及び発現するように改変されるウイルスは、B型インフルエンザウイルスである。B型インフルエンザウイルスの具体的な例としては、愛知/5/88株、秋田/27/2001株、秋田/5/2001株、アラスカ/16/2000株、アラスカ/1777/2005株、アルゼンチン/69/2001株、アリゾナ/146/2005株、アリゾナ/148/2005株、バンコク/163/90株、バンコク/34/99株、バンコク/460/03株、バンコク/54/99株、バルセロナ/215/03株、北京/15/84株、北京/184/93株、北京/243/97株、北京/43/75株、北京/5/76株、北京/76/98株、ベルギー/WV106/2002株、ベルギー/WV107/2002株、ベルギー/WV109/2002株、ベルギー/WV114/2002株、ベルギー/WV122/2002株、ボン/43株、ブラジル/952/2001株、ブカレスト/795/03株、ブエノスアイレス/161/00株)、ブエノスアイレス/9/95株、ブエノスアイレス/SW16/97株、ブエノスアイレス/VL518/99株、カナダ/464/2001株、カナダ/464/2002株、チャコ/366/00株、チャコ/R113/00株、済州/303/03株、千葉/447/98株、重慶/3/2000株、SA1タイ/2002臨床分離株、SA10タイ/2002臨床分離株、SA100フィリピン/2002臨床分離株、SA101フィリピン/2002臨床分離株、SA110フィリピン/2002臨床分離株)、SA112フィリピン/2002臨床分離株、SA113フィリピン/2002臨床分離株、SA114フィリピン/2002臨床分離株、SA2タイ/2002臨床分離株、SA20タイ/2002臨床分離株、SA38フィリピン/2002臨床分離株、SA39タイ/2002臨床分離株、SA99フィリピン/2002臨床分離株、CNIC/27/2001株、コロラド/2597/2004株、コルドバ/VA418/99株、チェコスロバキア/16/89株、チェコスロバキア/69/90株、ダエク/10/97株、ダエク/45/97株、ダエク/47/97株、ダエク/9/97株、B/Du/4/78株、B/ダーバン/39/98株、ダーバン/43/98株、ダーバン/44/98株、B/ダーバン/52/98株、ダーバン/55/98株、ダーバン/56/98株、イングランド/1716/2005株、イングランド/2054/2005株)、イングランド/23/04株、フィンランド/154/2002株、フィンランド/159/2002株、フィンランド/160/2002株、フィンランド/161/2002株、フィンランド/162/03株、フィンランド/162/2002株、フィンランド/162/91株、フィンランド/164/2003株、フィンランド/172/91株、フィンランド/173/2003株、フィンランド/176/2003株、フィンランド/184/91株、フィンランド/188/2003株、フィンランド/190/2003株、フィンランド/220/2003株、フィンランド/WV5/2002株、福建/36/82株、ジュネーブ/5079/03株、ジェノバ/11/02株、ジェノバ/2/02株、ジェノバ/21/02株、ジェノバ/54/02株、ジェノバ/55/02株、広東/05/94株、広東/08/93株、広東/5/94株、広東/55/89株、広東/8/93株、広州/7/97株、広州/86/92株、広州/87/92株、京幾/592/2005株、ハノーバー/2/90株、ハルビン/07/94株、ハワイ/10/2001株、ハワイ/1990/2004株、ハワイ/38/2001株、ハワイ/9/2001株、河北/19/94株、河北/3/94株)、河南/22/97株、広島/23/2001株、香港/110/99株、香港/1115/2002株、香港/112/2001株、香港/123/2001株、香港/1351/2002株、香港/1434/2002株、香港/147/99株、香港/156/99株、香港/157/99株、香港/22/2001株、香港/22/89株、香港/336/2001株、香港/666/2001株、香港/9/89株、ヒューストン/1/91株、ヒューストン/1/96株、ヒューストン/2/96株、湖南/4/72株、茨城/2/85株、仁川(ncheon)/297/2005株、インド/3/89株、インド/77276/2001株、イスラエル/95/03株、イスラエル/WV187/2002株、日本/1224/2005株、江蘇/10/03株、ヨハネスブルク/1/99株、ヨハネスブルク/96/01株、門真/1076/99株、門真/122/99株、鹿児島/15/94株、カンザス/22992/99株、ハズコフ(Khazkov)/224/91株、神戸/1/2002株、高知/193/99株、ラツィオ/1/02株、リー/40株、レニングラード/129/91株、リスボン/2/90株)、ロサンゼルス/1/02株、ルサカ/270/99株、リヨン/1271/96株、マレーシア/83077/2001株、マプト/1/99株、マルデルプラタ/595/99株、メリーランド/1/01株、メンフィス/1/01株、メンフィス/12/97-MA株、ミシガン/22572/99株、三重/1/93株、ミラノ/1/01株、ミンスク/318/90株、モスクワ/3/03株、名古屋/20/99株、南昌/1/00株、ナッシュビル/107/93株、ナッシュビル/45/91株、ネブラスカ/2/01株、オランダ/801/90株、オランダ/429/98株、ニューヨーク/1/2002株、NIB/48/90株、寧夏/45/83株、ノルウェー/1/84株、オマーン/16299/2001株、大阪/1059/97株、大阪/983/97-V2株、オスロ/1329/2002株、オスロ/1846/2002株、パナマ/45/90株、パリ/329/90株、パルマ/23/02株、パース/211/2001株、ペルー/1364/2004株、フィリピン/5072/2001株、釜山/270/99株、ケベック/173/98株、ケベック/465/98株、ケベック/7/01株、ローマ/1/03株、佐賀/S172/99株、ソウル/13/95株、ソウル/37/91株、山東/7/97株、上海/361/2002株)、滋賀/T30/98株、四川/379/99株、シンガポール/222/79株、スペイン/WV27/2002株、ストックホルム/10/90株、スイス/5441/90株、台湾/0409/00株、台湾/0722/02株、台湾/97271/2001株、テヘラン/80/02株、東京/6/98株、トリエステ/28/02株、ウランウデ/4/02株、イギリス/34304/99株、USSR/100/83株、ビクトリア/103/89株、ウィーン/1/99株、武漢/356/2000株、WV194/2002株、玄武/23/82株、山形/1311/2003株、山形/K500/2001株、アラスカ/12/96株、GA/86株、長崎/1/87株、東京/942/96株、及びロチェスター/02/2001株が挙げられる。
具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントを含有及び発現するように改変されるウイルスは、C型インフルエンザウイルスである。C型インフルエンザウイルスの具体的な例としては、愛知/1/81株、アンアーバー/1/50株、青森/74株、カリフォルニア/78株、イングランド/83株、ギリシア/79株、広島/246/2000株、広島/252/2000株、兵庫/1/83株、ヨハネスブルク/66株、神奈川/1/76株、京都/1/79株、ミシシッピー/80株、宮城/1/97株、宮城/5/2000株、宮城/9/96株、奈良/2/85株、ニュージャージー/76株、ブタ/北京/115/81株、埼玉/3/2000株)、静岡/79株、山形/2/98株、山形/6/2000株、山形/9/96株、ベルリン/1/85株、イングランド/892/8株、五大湖/1167/54株、JJ/50株、ブタ/北京/10/81株、ブタ/北京/439/82)株、テーラー(TAYLOR)/1233/47株、及びC/山形/10/81株が挙げられる。
具体的な実施態様では、本明細書に記載のセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスは、第5節に記載のmiRNA応答エレメント(MRE)を含む(例えば、Perezらの文献(2009, Nature Biotechnology 27:572-576);及びWO2010101663号を参照されたい)。具体的な実施態様では、miRNA応答エレメント(MRE)を含む本明細書に記載のセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスは、インフルエンザウイルスである。
(5.1.3 組換えRNAウイルスの産生)
下記の第6節に記載されているものを含む、当業者に公知の任意の技術を用いて、第5.1節に記載のキメラウイルスゲノムセグメントを含む本明細書に記載の組換えRNAウイルスを人工的に作製することができる。リバースジェネティクス及びヘルパーフリープラスミドレスキューなどの技術を用いて、第5.1節に記載のキメラウイルスゲノムセグメントを有する組換えRNAウイルスを作製することができる。リバースジェネティクス技術は、ウイルスポリメラーゼによる認識、及び成熟ビリオンを生成させるのに必要なパッケージングシグナルに必須であるマイナス鎖ウイルスRNAの非コード領域を含む合成組換えウイルスRNAの調製を伴う。該組換えRNAを、組換えDNA鋳型から合成し、精製ウイルスポリメラーゼ複合体を用いてインビトロで再構成して、細胞をトランスフェクトするのに使用し得る組換えリボ核タンパク質(RNP)を形成させる。より効率的なトランスフェクションは、ウイルスポリメラーゼタンパク質が、インビトロ又はインビボのいずれかでの合成RNAの転写時に存在する場合に達成される。合成組換えRNPは、感染性ウイルス粒子中にレスキューすることができる。前述の技術は、1992年11月24日に発行された米国特許第5,166,057号;1998年12月29日に発行された米国特許第5,854,037号;1996年2月20日に公開された欧州特許公開EP 0702085A1号;米国特許出願第09/152,845号;1997年4月3日に公開された国際特許公開PCT WO97/12032号;1996年11月7日に公開されたWO96/34625号;欧州特許公開EP A780475号;1999年1月21日に公開されたWO 99/02657号;1998年11月26日に公開されたWO 98/53078号;1998年1月22日に公開されたWO 98/02530号;1999年4月1日に公開されたWO 99/15672号;1998年4月2日に公開されたWO 98/13501号;1997年2月20日に公開されたWO 97/06270号;及び1997年6月25日に公開されたEPO 780 475A1号に記載されており、これらの文献の各々は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは単離/精製される。
ヘルパーフリープラスミド技術を利用して、第5.1節に記載のキメラウイルスゲノムセグメントを含む組換えRNAウイルスを人工的に作製することもできる。例えば、プラスミドベクターへのPCR産物の挿入を可能にする、独特の制限部位を含むプライマーを用いるPCRを用いて、ウイルスセグメントの全長cDNAを増幅させる(例えば、Flandorferらの文献(2003, J. Virol. 77:9116-9123);及びNakayaらの文献(2001, J. Virol. 75:11868-11873)を参照されたく;これらの文献は両方とも、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる)。正確なマイナス(vRNAセンス)転写産物が、切断型のRNAポリメラーゼIプロモーターから産生されるように、該ポリメラーゼIプロモーターとデルタ肝炎ウイルスリボザイム配列の間にPCR産物を配置するよう、プラスミドベクターを設計する。各々のウイルスセグメント又は最小ウイルスセグメントを含む別々のプラスミドベクター、及びウイルスの複製に必要とされる必要なウイルスタンパク質を含む発現ベクターを細胞にトランスフェクトして、組換えウイルス粒子の産生をもたらす。ヘルパーフリープラスミド技術の詳細な説明については、例えば、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 01/04333号;米国特許第6,649,372号;Fodorらの文献(1999, J. Virol. 73:9679-9682);Hoffmannらの文献(2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6108-6113);及びNeumannらの文献(1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:9345-9350)を参照されたい。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスをレスキューするのに必要なウイルスタンパク質を発現するように改変されている細胞内でレスキューする。ある実施態様では、二方向転写系を用いて、組換えRNAウイルスレスキューする(例えば、Hoffmannらの文献(2002, PNAS 99:11411-11416)を参照されたい)。ある実施態様では、Vero細胞又はMDCKをレスキューに用いる。
第5.1節に記載のキメラウイルスゲノムセグメントを含むゲノムを有する組換えRNAウイルスは、該組換えRNAウイルスの単離を可能にする力価まで該組換えRNAウイルスを増殖させることができる任意の基体中で増殖させることができる。例えば、該組換えRNAウイルスは、該組換えRNAウイルスに感染しやすい細胞(例えば、鳥類細胞、ニワトリ細胞(例えば、初代ニワトリ胚細胞もしくはニワトリ腎臓細胞)、Vero細胞、MDCK細胞、ヒト呼吸上皮細胞(例えば、A549細胞)、ウシ腎臓細胞、ミンク肺細胞など)、孵化卵、又は動物(例えば、トリ)で増殖させることができる。該組換えRNAウイルスを細胞培養物から回収し、通常、例えば、勾配遠心分離及びカラムクロマトグラフィーなどの周知の浄化手順によって細胞成分から分離することができ、また、必要に応じて、当業者に周知の手順、例えば、プラークアッセイを用いてさらに精製することができる。
ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントを含有及び発現する組換えRNAウイルスを弱毒化する。ある実施態様では、弱毒化RNAウイルスを用いて、キメラウイルスゲノムセグメントを含有及び発現する組換えRNAウイルスを人工的に作製することができる。ある実施態様では、異種RNAの導入は、該RNAウイルスを弱毒化する。ある実施態様では、異種RNAは、該組換えRNAウイルスの遺伝子をターゲッティングし、それにより、該組換えRNAウイルスを弱毒化する。ある実施態様では、該弱毒化ウイルスは、低温適応弱毒株、ウイルス遺伝子、例えば、インフルエンザの場合:PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M1、M2、NS1、NEP、又はPBI-F2の欠失、切断、又は修飾を有する、天然又は遺伝子改変型の弱毒化ウイルス株である。そのような弱毒化ウイルスを異種RNAを含むように改変して、組換えRNAウイルスを生成させる。ある実施態様では、ウイルスを異種RNAを含むように改変して、組換えRNAウイルスを生成させ、これをさらに遺伝子修飾して、該ウイルスを弱毒化する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスの増殖を自由に終結させることができるように改変する。例えば、該組換えRNAウイルスは、抗ウイルス剤に感受性があることが知られているウイルスの株である。患者における該ウイルスのさらなる増殖がもはや望ましくない場合、抗ウイルス剤を投与して、該ウイルスの増殖を中止することができる。ある実施態様では、該ウイルスは、該ウイルスが全生活環を超えるサイクルを経るのを防ぎ、それにより、該ウイルスの患者へのさらなる感染を防ぐ自殺遺伝子を有する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが対象において限られた数の複製しか経ることができないように改変する。より具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスのゲノムは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回複製される。他のより具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回の複製サイクルを経る。
いくつかの実施態様では、弱毒化は、一つには、組換えRNAウイルスの効率的な複製に必要とされる遺伝子の突然変異に起因することができる。さらに、弱毒化は、一つには、他のウイルス遺伝子の1以上の突然変異の組合せに起因することができる。ある実施態様では、該組換えRNAウイルスは、例えば、発行済み特許である、2002年10月22日に発行された米国特許第6,468,544号、2005年3月15日に発行された米国特許第6,866,853号、及び2003年12月30日に発行された米国特許第6,669,943号、並びに2009年9月15日に発行された米国特許第7,588,768号に記載されている、切断型又は欠失型NS1遺伝子を有するインフルエンザウイルスである。組換えRNAウイルスは、自然変異体、例えば、A型インフルエンザの自然変異体A/七面鳥/オーレ(Ore)/71、又はB型インフルエンザの自然変異体である、B/201、及びB/AWBY-234から人工的に作製することもできる。
ある具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、インフルエンザウイルスに由来し、弱毒化は、インフルエンザウイルスのsvRNAを妨げることによって達成される(2010年6月1日にオンラインで公開された、Perezらの文献、「A型インフルエンザウイルスによって生成された低分子RNAは、転写から複製への切替えを調節する(Influenza A virus-generated small RNAs regulate the switch from transcription to replication)」, PNASを参照されたい)。
ある実施態様では、意図される対象に通常は感染しない組換えRNAウイルスを用いる。したがって、具体的な実施態様では、意図される対象はヒトであり、該組換えRNAウイルスは、通常はヒトに感染しないRNAウイルスに由来する。
ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されたマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の多くても5%、多くても10%、多くても20%、多くても30%、多くても40%、多くても50%、多くても75%、多くても80%、多くても90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されたマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されたマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の5%〜20%、10%〜40%、25%〜50%、40%〜75%、50%〜80%、又は75%〜90%である。
(5.1.4 ゲノムセグメントのつなぎ換え)
ある実施態様では、キメラウイルスゲノムセグメントを1以上の他のウイルスゲノムセグメントと「つなぎ換え」て、再集合によって媒介される異種RNA担持セグメントの損失を妨げる(Gao及びPaleseらの文献(2009, PNAS 106:15891-15896);及び国際出願公開WO11/014645号を参照されたい)。個々のインフルエンザウイルスRNAセグメントのための特定のパッケージングシグナルを、5'及び3'非コード領域に、並びにRNAセグメントのORFの末端領域に配置する。第一のウイルスゲノムセグメントのパッケージング配列を第二のウイルスゲノムセグメントのORF上に配置し、該第二のセグメントのORF中のもとのパッケージング領域を突然変異させることにより、該第一のセグメントのパッケージング個性を有する、キメラの第二のセグメントを生成させる。同じ戦略によって、該第一のセグメントを、該第二のセグメントのパッケージング個性を獲得するように改変することができる。そのようなつなぎ換えられたウイルスは、全てのゲノムセグメントのパッケージングシグナルを有することができるが、該ウイルスは、該第一のセグメントと該第二のセグメントを独立に再集合する能力を持たない。具体的な実施態様では、NSセグメント及びHAセグメントをつなぎ換える。
ある実施態様では、異種RNAを担持するゲノムセグメントを、ウイルスの指向性に関与する又は主に関与するタンパク質をコードするゲノムセグメントとつなぎ換える。ある他の実施態様では、異種RNAを担持するゲノムセグメントを、組換えRNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼをコードするゲノムセグメントとつなぎ換える。
例えば、異種RNAが、例えば、該異種RNAを担持するセグメントの発現の消失を防ぐsvRNA模倣体又は抗svRNAである場合、ゲノムセグメントをつなぎ換えることができる。
(5.1.5 指向性)
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが由来するRNAウイルスの自然な指向性、又は修飾された指向性を用いて、エフェクターRNAを所望の細胞型、組織、器官、又は身体部分にターゲッティングする。したがって、例えば、肺組織における、標的遺伝子の発現に影響を及ぼすことが望ましい場合、肺組織だけに感染する組換えRNAウイルスを用いる。ウイルスの指向性に関与するウイルスゲノムセグメントは異なるものであることができるか、又はそれは、異種RNAを担持するキメラウイルスゲノムセグメントと同じものであることができる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが、異なる指向性を有する第二のウイルスの指向性を獲得するように、該組換えRNAウイルスの指向性に関与するウイルス遺伝子を該第二のウイルス由来の遺伝子と置換する。例えば、インフルエンザのHA及び/又はNAを、(HAパッケージング配列及びNAパッケージング配列のいずれかをコードする)VSVのG遺伝子と置換して、その侵入がどの細胞にも限定されないウイルスを生じさせることができる(Watanabeらの文献(J. Virol. 77(19):10575.)を参照されたい)。別の具体的な実施態様では、HA及びNAのコード領域を、それぞれ、gp41及びgp120と交換して、その指向性がHIVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。さらに別の実施態様では、HA及び/又はNAをHCVのgpE1と置換して、HCVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、2007年6月6日に公開されたWO 2007/064802号に記載されているようなウイルスゲノムセグメントを含む。
(5.2 セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖組換えRNAウイルス)
(5.2.1 キメラウイルスゲノム)
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスに由来する。異種RNAは、セグメント化されていないマイナス鎖RNAウイルスのゲノムに導入される。得られるゲノムは、この節では、キメラウイルスゲノムと呼ばれる。ある実施態様では、転写された異種RNAがプロセシングされて、エフェクターRNAを生じる。ある実施態様では、異種RNAはエフェクターRNAである。
セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスゲノムへの異種RNAの挿入は、ウイルスコード領域と該異種RNAとの完全置換によるか、又はその部分置換によるか、又は該ウイルスゲノムの非コード領域に異種ヌクレオチド配列を付加することによるかのいずれかで達成することができる。得られるゲノムはキメラウイルスゲノムと呼ばれる。そのようなキメラウイルスゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。
ある実施態様では、セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスのウイルス生活環に必須ではない遺伝子を異種RNAと完全に又は部分的に置換する。
異種RNAを、ウイルスゲノムの非コード領域の様々な位置で付加又は挿入することができる。ある実施態様では、異種RNAを、ウイルスゲノムの2つの遺伝子の間に、すなわち、遺伝子間領域、3'リーダー配列、又は5'トレーラー配列に挿入する。一実施態様では、セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスは、パラインフルエンザウイルスであり、異種RNAを、転写されるべき第一のウイルス遺伝子と第二のウイルス遺伝子の間、転写されるべき第二のウイルス遺伝子と第三のウイルス遺伝子の間、転写されるべき第三のウイルス遺伝子と第四のウイルス遺伝子の間、転写されるべき第四のウイルス遺伝子と第五のウイルス遺伝子の間、又は転写されるべき第五のウイルス遺伝子と第六のウイルス遺伝子の間に挿入する。
ある実施態様では、異種RNAを、同じセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの遺伝子の3'末端の遺伝子開始点及び5'末端の遺伝子終結点に隣接させる。例えば、該セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスが呼吸器合胞体ウイルスである場合、N、P、M、SH、G、F、M2、もしくはL遺伝子、又はそれらの組合せ由来の遺伝子開始点及び遺伝子終結点を用いることができる。セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスを操作するための実例となる方法は、例えば、Hallerらの文献(2003, J Gen Vir 84:2153-2162)に記載されている(図1参照)。
ある実施態様では、転写勾配を有するセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスが用いられ、その場合、3'末端に位置する遺伝子は、5'末端に位置する遺伝子よりも高いレベルで転写される。理論に束縛されるものではないが、3'末端のより近くに異種RNAを挿入すると、ウイルスのゲノム全体に生じる転写勾配のために、5'末端のより近くへの挿入と比べて異種RNAのより強い発現をもたらすことができる。具体的な実施態様では、異種RNAの強い発現が望ましい場合、該異種RNAは、ウイルスゲノムの3'末端のより近くに見られる。
ある実施態様では、6の法則に従う(すなわち、ウイルスが効率的に増殖するために、該ウイルスのゲノムのヌクレオチドの数が6の倍数である)セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスを用いて、異種RNAを含有及び発現する組換えRNAウイルスを人工的に作製する。6の法則に従うウイルスを用いる場合、異種RNAは、セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖組換えRNAウイルスの組換えゲノムがやはり6の法則に従うような長さであることができる。他の実施態様では、異種RNAは、セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルス由来の組換えRNAウイルスの組換えゲノムが6の法則に従わず、該ウイルスが弱毒化されるような長さであることができる。
ある実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)該ゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)ウイルス複製に必要とされる任意の数のウイルス遺伝子;(c)異種RNA配列;及び(d)該ゲノムの5'非コード領域に見られる任意のポリメラーゼ複製部位:を含む。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)該ゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)ウイルス複製に必要とされる任意の数のウイルス遺伝子;(c)異種RNAがウイルス転写産物から切断されるようにリボザイム認識配列及び1以上のリボザイムに隣接する異種RNA配列;並びに(d)該ゲノムの5'非コード領域に見られる任意のポリメラーゼ複製部位:を含む。ある実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)該ゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)ウイルス複製に必要とされる任意の数のウイルス遺伝子;(c)リボザイム認識配列;(d)異種RNA配列;及び(e)(c)のリボザイム認識配列を切断するリボザイム:を含む。そのようなキメラウイルスゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノム、又は該キメラウイルスゲノムをコードするDNA分子は単離される。
ある実施態様では、キメララブドウイルス科(又はパラミクソウイルス科)ゲノムは、(a)該ゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)ウイルス複製に必要とされる任意の数のウイルス遺伝子;(c)その5'及び3'配列がポリメラーゼの開始及び終結の要件に従う異種RNA配列;(d)ウイルス複製に必要とされる任意の残りのウイルス遺伝子;並びに(e)該ゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ複製部位:を含む。そのようなキメラウイルスゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。
(5.2.2 ウイルス)
異種RNAを含有及び発現するように改変することができるセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの非限定的な例としては:ラブドウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、及び狂犬病関連ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、例えば、センダイウイルス、並びに肺炎ウイルス、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及びメタ肺炎ウイルス)、フィロウイルス(例えば、エボラウイルス及びマールブルグウイルス)、デルタ肝炎ウイルス、並びにボルナウイルスが挙げられる。具体的な実施態様では、該セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスは、キメラのウシ/ヒトパラインフルエンザウイルス3型である(例えば、Tangらの文献(2005, Vaccine 23:1657-1667)を参照されたい)。別の具体的な実施態様では、該セグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスは、速現性(velogenic)、亜病原性(mesogenic)、又は長潜伏期性(lentogenic)のNDV株である。NDV株の具体的な例としては、73-T株、NDV HUJ株、Ulster株、MTH-68株、Italien株、Hickman株、PV701株、Hitchner B1株、La Sota株(例えば、ジェンバンク番号AY845400を参照されたい)、YG97株、MET95株、Roakin株、及びF48E9株が挙げられるが、これらに限定されない。
(5.2.3 組換えウイルスの産生)
当業者に公知の任意の方法を用いて、異種RNAを担持するウイルスをレスキューすることができる。リバースジェネティクスを用いて、該ウイルスをレスキューすることができる。ヘルパーウイルスフリーレスキューを用いることができる。例えば、2004年7月22日に公開された、米国特許出願公開第20040142003号を参照されたい。具体的な実施態様では、組換えウイルスは単離/精製される。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが患者において弱毒化されるように修飾する。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスを産生させるために、パラインフルエンザウイルスを用い、ウイルス遺伝子のうちの1つ又は複数、すなわち、N、P、M、F、HN、又はL遺伝子を突然変異させて、該ウイルスを弱毒化する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスをレスキューするのに必要なウイルスタンパク質を発現するように改変されている細胞内でレスキューする。ある実施態様では、Vero細胞又はMDCKをレスキューに用いる。ある実施態様では、卵をウイルス増殖に用いる。
ある実施態様では、意図される対象に通常は感染しない組換えRNAウイルスを用いる。例えば、ウシパラインフルエンザウイルス、例えば、ウシパラインフルエンザウイルス3型はヒト対象において弱毒化される。したがって、具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、ウシパラインフルエンザウイルスに由来し、その場合、意図される対象はヒトである。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスの増殖を自由に終結させることができるように改変する。例えば、組換えRNAウイルスは、抗ウイルス剤に感受性があることが知られているウイルスの株である。患者における該ウイルスのさらなる増殖がもはや望ましくない場合、抗ウイルス剤を投与して、該ウイルスの増殖を中止することができる。ある実施態様では、該ウイルスは、該ウイルスが全生活環を超えるサイクルを経るのを防ぎ、それにより、該ウイルスの患者へのさらなる感染を防ぐ自殺遺伝子を有する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが対象において限られた数の複製しか経ることができないように改変する。より具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスのゲノムは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回複製される。他のより具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回の複製サイクルを経る。
いくつかの実施態様では、弱毒化は、一つには、該組換えRNAウイルスの効率的な複製に必要とされる遺伝子の突然変異に起因することができる。さらに、弱毒化は、一つには、他のウイルス遺伝子の1以上の突然変異の組合せに起因することができる。
ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の多くても5%、多くても10%、多くても20%、多くても30%、多くても40%、多くても50%、多くても75%、多くても80%、多くても90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の5%〜20%、10%〜40%、25%〜50%、40%〜75%、50%〜80%、又は75%〜90%である。
(5.2.4 指向性)
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが由来するRNAウイルスの自然な指向性、又は修飾された指向性を用いて、エフェクターRNAを所望の細胞型、組織、器官、又は身体部分にターゲッティングする。したがって、例えば、肺組織における、標的遺伝子の発現に影響を及ぼすことが望ましい場合、肺組織だけに感染する組換えRNAウイルスを用いる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが、異なる指向性を有する第二のウイルスの指向性を獲得するように、該組換えRNAウイルスの指向性に関与するウイルス遺伝子を該第二のウイルス由来の遺伝子と置換する。例えば、組換えRNAウイルスは、VSVに由来するものではないが、該組換えRNAウイルスの糖タンパク質は、(HAパッケージング配列及びNAパッケージング配列のいずれかをコードする)VSVのG遺伝子と置換されており、その侵入がどの細胞にも限定されないウイルスを生じさせる。別の具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスの糖タンパク質のコード領域を、それぞれ、gp41及びgp120と交換して、その指向性がHIVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。さらに別の実施態様では、組換えRNAウイルスの糖タンパク質をHCVのgpE1と置換して、HCVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。
ある具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスの糖タンパク質をボルナ病ウイルスの糖タンパク質と置換して、神経組織をターゲッティングする(Bajramovicの文献(2003, J Virol 77:12222-12231))。
(5.3 セグメント化されていないプラス鎖RNAウイルス)
(5.3.1 キメラウイルスゲノム)
ある実施態様では、セグメント化されていないプラス鎖RNAウイルスを用いて、異種RNAを含有及び発現する組換えRNAウイルスを人工的に作製することができる。得られる組換えRNAウイルスは、異種RNAを含有及び発現するキメラウイルスゲノムを有する。ある実施態様では、転写された異種RNAがプロセシングされて、エフェクターRNAを生じる。ある実施態様では、異種RNAはエフェクターRNAである。
ある態様では、異種RNAを、セグメント化されていないプラス鎖RNAウイルスのゲノムの3'非翻訳領域に導入して、キメラウイルスゲノムを人工的に作製する。該キメラウイルスゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。
ある態様では、異種RNAが、自己切断型リボザイムを介してウイルスゲノムから放出されるように、該異種RNAをリボザイム認識配列及びそのそれぞれのリボザイムに隣接させる。より具体的な実施態様では、リボザイムは、宿主細胞内でウイルス生活環の間に産生されるマイナスセンス鎖の中でのみ活性がある。さらにより具体的な実施態様では、リボザイムは100%効率的であるわけではなく、そのため、ウイルスのマイナスセンス鎖ゲノムの一部が無傷のまま残る。
ある実施態様では、異種RNAを、セグメント化されていないプラス鎖RNAウイルスのゲノムの転写される部分の3'領域に導入する。より具体的な実施態様では、異種RNAが、自己切断型リボザイムを介してウイルスゲノムから放出されるように、該異種RNAをリボザイム認識配列及びそのそれぞれのリボザイムに隣接させる。より具体的な実施態様では、リボザイムは、宿主細胞内でウイルス生活環の間に産生されるマイナスセンス鎖の中でのみ活性がある。さらにより具体的な実施態様では、リボザイムは100%効率的であるわけではなく、そのため、ウイルスのマイナスセンス鎖ゲノムの一部が無傷のまま残る。
ある実施態様では、サブゲノムRNAの生成を用いて、異種RNAをウイルスゲノムから放出させる。サブゲノムRNAの転写のための内部転写開始部位、すなわち、サブゲノムプロモーターと、それに続く異種RNAを、セグメント化されていないプラス鎖RNAウイルスのゲノムの5'末端の非翻訳領域に導入する。ある実施態様では、サブゲノムmRNAプロモーター配列をウイルスゲノムの非必須領域に導入する。ある実施態様では、人為的に導入されたサブゲノムmRNAプロモーターは、最も3'に位置するサブゲノムプロモーターである。ある実施態様では、どの翻訳領域も、人為的に導入されたサブゲノムmRNAプロモーターの3'には位置しない。
理論に束縛されるものではないが、コロナウイルス及びアルテリウイルスのサブゲノムRNA転写産物は、ゲノムの5'末端に由来する、共通の5'リーダー配列も含有する(Pasternakの文献(2006, J Gen Virol 87:1403-1421))。5'リーダーと、ゲノムの3'末端に位置するサブゲノムRNA転写産物の会合は、共転写融合を通じて起こると考えられる(Pasternakの文献(2006, J Gen Virol 87:1403-1421))。ある実施態様では、異種RNAの5'部分を5'リーダー配列に導入し、異種RNAの3'部分をサブゲノムRNAの5'部分、又は人為的に導入されたサブゲノムプロモーターを有する人工サブゲノムRNAの5'部分に導入する。サブゲノムRNAの転写によって、該5'リーダー配列及び該3'サブゲノムRNAが集結し、異種RNAが統合される。
ある実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)該ゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)非構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(c)サブゲノムRNA合成のための内部認識配列;(d)構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(e)異種RNA配列;(f)ポリA尾部:を含む。あるより具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)該ゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)非構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(c)サブゲノムRNA合成のための内部認識配列;(d)構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(e)リボザイム認識配列;(f)異種RNA配列;(g)該リボザイム認識配列(セグメント(e)参照)を切断する自己切断型リボザイム;及び(h)ポリA尾部:を含む。他のより具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)該ゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)非構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(c)サブゲノムRNA合成のための内部認識配列;(d)構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(e)自己切断型リボザイム及びそのリボザイム認識配列;(f)異種RNA配列;(g)自己切断型リボザイム及びそのリボザイム認識配列;並びに(h)ポリA尾部:を含む。そのようなキメラウイルスゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノム、又は該キメラウイルスゲノムをコードするDNA分子は単離される。
ある実施態様では、キメラトガウイルス科ゲノムは、(a)該ゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)非構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(c)サブゲノムRNA合成のための内部認識配列;(d)構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(d)サブゲノムRNA合成のための第二の内部認識配列;(e)その5'及び3'配列がポリメラーゼの開始及び終結の要件に従う異種RNA配列;(f)3'保存配列エレメント(CSE)を含む該ゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ複製部位、並びにポリA尾部:を含む。そのようなキメラトガウイルス科ゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノム、又は該キメラウイルスゲノムをコードするDNA分子は単離される。
ある態様では、異種RNAを、非構造タンパク質をコードするゲノムの部分に組み込む。例えば、Liang及びLiの文献(2005, Gene Therapy and Molecular Biology 9:317-323)を参照されたい。より具体的な実施態様では、異種RNAを、該異種RNAが、非構造タンパク質をコードする転写産物の3'末端に位置するように、キメラウイルスゲノムに組み込む。ある具体的な実施態様では、リボザイムを用いて、異種RNAを転写産物から放出させる。そのようなキメラトガウイルス科ゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書に記載される。
(5.3.2 ウイルス)
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスは、以下のRNAウイルス:ピコルナウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルス)、フラビウイルス、及びコロナウイルスのうちの1つに由来する。該ウイルスは、ピコルナウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルス)、フラビウイルス、及びコロナウイルスの任意の型、種、及び/又は株であることができる。
例えば、キメラウイルスゲノムが、シンドビスウイルスゲノムに由来する場合、Levisらの文献(1990, J Virol 64:1726-1733)において同定されているサブゲノムプロモーターを用いることができる(Hahnらの文献(1992, PNAS 89:2679-2683)も参照されたい)。
(5.3.3 組換えウイルスの産生)
当業者に公知の任意の方法を用いて、異種RNAを担持するウイルスをレスキューすることができる。理論に束縛されるものではないが、セグメント化されていないプラス鎖RNAウイルスのゲノムRNAはそれ自体感染性である。したがって、ヘルパーウイルスフリーレスキューは、例えば、キメラウイルスゲノムをコードするcDNAを宿主細胞に導入することによって達成することができる。より具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムをコードするcDNAは、プラスミドから転写される。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは単離/精製される。
ある具体的な実施態様では、非細胞変性性シンドビスウイルスを用いて、組換えRNAウイルスを人工的に作製する(Agapovらの文献(1998, PNAS 95:12989-12994))。具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムは、nsP2遺伝子に突然変異を有するシンドビスウイルスに由来する。より具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムは、nsP2タンパク質の位置726でアミノ酸置換を生じさせる突然変異を有するシンドビスウイルスに由来する。さらにより具体的な実施態様では、キメラウイルスゲノムは、nsP2タンパク質の位置726でPからLへのアミノ酸置換を生じさせる突然変異を有するシンドビスウイルスに由来する(Agapovらの文献(1998, PNAS 95:12989-12994))。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが、意図される対象、例えば、ヒト患者において弱毒化されるように修飾する。具体的な実施態様では、非構造遺伝子又は構造遺伝子を突然変異させて、弱毒化を達成する。ある実施態様では、非コード配列、例えば、RNA依存性RNAポリメラーゼの5'リーダー配列又はプロモーターを突然変異させて、弱毒化を達成する。
ある実施態様では、意図される対象に通常は感染しない組換えRNAウイルスを用いる。したがって、具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、非ヒトRNAウイルスに由来し、その場合、意図される対象はヒトである。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスの増殖を自由に終結させることができるように改変する。例えば、組換えRNAウイルスは、抗ウイルス剤に感受性があることが知られているウイルスの株である。患者における該ウイルスのさらなる増殖がもはや望ましくない場合、抗ウイルス剤を投与して、該ウイルスの増殖を中止することができる。ある実施態様では、該ウイルスは、該ウイルスが全生活環を超えるサイクルを経るのを防ぎ、それにより、該ウイルスの患者へのさらなる感染を防ぐ自殺遺伝子を有する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが対象において限られた数の複製しか経ることができないように改変する。より具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスのゲノムは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回複製される。他のより具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回の複製サイクルを経る。
いくつかの実施態様では、弱毒化は、一つには、該組換えRNAウイルスの効率的な複製に必要とされる遺伝子の突然変異に起因することができる。さらに、弱毒化は、一つには、他のウイルス遺伝子の1以上の突然変異の組合せに起因することができる。
ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されていないプラスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の多くても5%、多くても10%、多くても20%、多くても30%、多くても40%、多くても50%、多くても75%、多くても80%、多くても90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されていないプラスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持するセグメント化されていないプラスセンス一本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の5%〜20%、10%〜40%、25%〜50%、40%〜75%、50%〜80%、又は75%〜90%である。
(5.3.4 指向性)
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが由来するRNAウイルスの自然な指向性、又は修飾された指向性を用いて、エフェクターRNAを所望の細胞型、組織、器官、又は身体部分にターゲッティングする。したがって、例えば、肺組織における、標的遺伝子の発現に影響を及ぼすことが望ましい場合、肺組織だけに感染する組換えRNAウイルスを用いる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが、異なる指向性を有する第二のウイルスの指向性を獲得するように、該組換えRNAウイルスの指向性に関与するウイルス遺伝子を該第二のウイルス由来の遺伝子と置換する。具体的な実施態様では、該第二のウイルスは、該組換えRNAウイルスと同じ型のものである。例えば、該組換えRNAウイルスの糖タンパク質をVSVのG遺伝子と置換し、その侵入がどの細胞にも限定されないウイルスを生じさせることができる。別の具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスの糖タンパク質のコード領域を、それぞれ、gp41及びgp120と交換して、その指向性がHIVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。さらに別の実施態様では、組換えRNAウイルスの糖タンパク質をHCVのgpE1と置換して、HCVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。
ある具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスの糖タンパク質をボルナ病ウイルスの糖タンパク質と置換して、神経組織をターゲッティングする(Bajramovicの文献(2003, J Virol 77:12222-12231))。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、該組換えRNAウイルスを腫瘍細胞にターゲッティングする上皮増殖因子(EGF)受容体ターゲッティング部分に融合された可溶性受容体(soR)に基づく発現コンストラクトを発現する(Verheijeらの文献(2009, J Virol 83:7507-7516))。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、コロナウイルスに由来し、該組換えRNAウイルスを腫瘍細胞にターゲッティングする上皮増殖因子(EGF)受容体ターゲッティング部分に融合された可溶性受容体(soR)に基づく発現コンストラクトを発現する(Verheijeらの文献(2009, J Virol 83:7507-7516))。
(5.4 二本鎖RNAウイルス)
(5.4.1 キメラウイルスゲノムセグメント)
ある実施態様では、二本鎖RNAウイルスを用いて、異種RNAを含有及び発現する組換えRNAウイルスを作製することができる。異種RNAをウイルスゲノムセグメントに導入し;得られるキメラウイルスゲノムセグメントは、異種RNAを含有及び発現する。ある実施態様では、異種RNAは、転写及びプロセシングされて、エフェクターRNAを生じる。他の実施態様では、異種RNAは、転写されると、エフェクターRNAとなる。
組換えRNAウイルスをコードする核酸の実例となる実施態様を図12に示す。例えば、レオウイルスのプラスミドに基づくレスキューを用いて、追加の非コードdsRNAセグメントを導入することができる。例えば、特定の3末端を生成させるようにHDVリボザイムが隣接したL1、L2、L3、M1、M2、M3、S1、S2、S3、及びS4をコードするT7ポリメラーゼ依存性プラスミドのトランスフェクションによって、T7ポリメラーゼの存在下で、複製可能なウイルスが生じる(Kobayashiらの文献(2007, Cell Host Microbe 1:147-157))。ウイルス放出によって、これら10個のセグメントが特異的にパッケージングされるとき、異種RNAの導入には、第二のセグメントが内部リボソーム侵入部位(IRES)によって制御される2つのセグメントの融合が必要となる。IRESの存在により、同じセグメント上にコードされる第二の3'産物の翻訳が可能になる。その後、これにより、もとのRNAセグメントが、効率的なパッケージング及びレオウイルスポリメラーゼ認識に必要とされる必要な5'及び3'配列に隣接する異種RNAをコードすることが可能になる。一実施態様では、それぞれ、σ1及びσ2をコードする、短いRNAセグメントである、S3及びS4を単一のセグメントとして1つに融合することができ、それにより、σ2がIRESから翻訳される(図12参照)。それゆえ、もとのS4 RNAを用いて、ウイルス複製時にもパッケージングする異種RNAを送達することができる。
ある実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)二本鎖RNA依存性RNAポリメラーゼの転写開始部位;(b)リボザイム切断部位;(c)異種RNA;及び(d)(b)項のリボザイム切断部位を切断するリボザイム:を含む。ある実施態様では、1つのウイルスゲノムセグメントが2つのオープンリーディングフレームを含むように、1つのウイルスゲノムセグメントの1つのオープンリーディングフレームを第二のウイルスゲノムセグメントに導入する。結果として、キメラウイルスゲノムセグメントを含むウイルスゲノムセグメントの総数は、野生型ウイルス中のものと同じである。そのようなキメラトガウイルス科ゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書で記載される。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
ある実施態様では、キメラウイルスゲノムは、(a)二本鎖RNA依存性RNAポリメラーゼの転写開始部位;(b)オープンリーディングフレーム;(c)リボザイム切断部位;(d)異種RNA;及び(e)(b)項のリボザイム切断部位を切断するリボザイム:を含む。ある実施態様では、1つのウイルスゲノムセグメントが2つのオープンリーディングフレームを含むように、1つのウイルスゲノムセグメントの1つのオープンリーディングフレームを第二のウイルスゲノムセグメントに導入する。そのようなキメラトガウイルス科ゲノムをコードする核酸、例えば、DNA分子も本明細書で記載される。具体的な実施態様では、該キメラウイルスゲノムセグメント又は該キメラウイルスゲノムセグメントをコードするDNA分子は単離される。
(5.4.2 ウイルス)
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、レオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、又はコロラドマダニ熱ウイルスに由来する。該ウイルスは、レオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、又はコロラドマダニ熱ウイルスの任意の型、種、及び/又は株であることができる。
(5.4.3 組換えRNAウイルスの産生)
当業者に公知の任意の方法を用いて、異種RNAを担持するウイルスをレスキューすることができる。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは単離/精製される。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが、意図される対象、例えば、ヒト患者において弱毒化されるように修飾する。具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスがレオウイルスに由来する場合、L1、L2、L3、M1、M2、M3、S1、S2、又はS3を突然変異させて、弱毒化を達成する。
ある実施態様では、意図される対象に通常は感染しない組換えRNAウイルスを用いる。したがって、具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは非ヒトRNAウイルスに由来し、その場合、意図される対象はヒトである。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスの増殖を自由に終結させることができるように改変する。例えば、組換えRNAウイルスは、抗ウイルス剤に感受性があることが知られているウイルスの株である。患者における該ウイルスのさらなる増殖がもはや望ましくない場合、抗ウイルス剤を投与して、該ウイルスの増殖を中止することができる。ある実施態様では、該ウイルスは、該ウイルスが全生活環を超えるサイクルを経るのを防ぎ、それにより、該ウイルスの患者へのさらなる感染を防ぐ自殺遺伝子を有する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスを、該ウイルスが対象において限られた数の複製しか経ることができないように改変する。より具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスのゲノムは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回複製される。他のより具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスは、対象において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回の複製サイクルを経る。
いくつかの実施態様では、弱毒化は、一つには、該組換えRNAウイルスの効率的な複製に必要とされる遺伝子の突然変異に起因することができる。さらに、弱毒化は、一つには、他のウイルス遺伝子の1以上の突然変異の組合せに起因することができる。
ある実施態様では、異種RNAを担持する二本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の多くても5%、多くても10%、多くても20%、多くても30%、多くても40%、多くても50%、多くても75%、多くても80%、多くても90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持する二本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%である。ある実施態様では、異種RNAを担持する二本鎖RNAウイルスの複製速度は、同じ条件下での、該組換えウイルスが由来する野生型ウイルスの複製速度の5%〜20%、10%〜40%、25%〜50%、40%〜75%、50%〜80%、又は75%〜90%である。
ある実施態様では、ウイルスの弱毒化を、セグメント切断、又はレスキューが1つもしくは必須の非構造遺伝子の非存在下で行なわれる欠損干渉(DI)粒子の生成によって媒介することができる。これにより、欠如している遺伝子産物がトランスで供給されない限り複製することができないウイルス様粒子が生成される。
(5.4.4 指向性)
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが由来するRNAウイルスの自然な指向性、又は修飾された指向性を用いて、エフェクターRNAを所望の細胞型、組織、器官、又は身体部分にターゲッティングする。したがって、例えば、肺組織における、標的遺伝子の発現に影響を及ぼすことが望ましい場合、肺組織だけに感染する組換えRNAウイルスを用いる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが、異なる指向性を有する第二のウイルスの指向性を獲得するように、該組換えRNAウイルスの指向性に関与するウイルス遺伝子を該第二のウイルス由来の遺伝子と置換する。具体的な実施態様では、該第二のウイルスは、該組換えRNAウイルスと同じ型のものである。例えば、該組換えRNAウイルスの糖タンパク質をVSVのG遺伝子と置換し、その侵入がどの細胞にも限定されないウイルスを生じさせることができる。別の具体的な実施態様では、該組換えRNAウイルスの糖タンパク質のコード領域を、それぞれ、gp41及びgp120と交換して、その指向性がHIVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。さらに別の実施態様では、組換えRNAウイルスの糖タンパク質をHCVのgpE1と置換して、HCVの指向性を模倣する組換えRNAウイルスを得ることができる。
ある具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスの糖タンパク質をボルナ病ウイルスの糖タンパク質と置換して、神経組織をターゲッティングする(Bajramovicの文献(2003, J Virol 77:12222-12231))。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは、該組換えRNAウイルスを腫瘍細胞にターゲッティングする上皮増殖因子(EGF)受容体ターゲッティング部分に融合された可溶性受容体(soR)に基づく発現コンストラクトを発現する(Verheijeらの文献(2009, J Virol 83:7507-7516))。
(5.5 異種RNA)
(5.5.1 マイクロRNA)
ある実施態様では、異種RNAは、マイクロRNA前駆体を含む一次転写産物をコードする。マイクロRNA(miRNA)は、mRNAの安定性と翻訳の両方に影響を及ぼすことによって多細胞生物における遺伝子発現の転写後調節に関与する短い非コードRNAである。miRNAは、キャッピングされ、かつポリアデニル化された一次転写産物(プリ-miRNA)の部分としてRNAポリメラーゼIIによって転写され、該一次転写産物は、タンパク質をコードするもの又はタンパク質をコードしないもののいずれかであることができる。該一次転写産物は、DroshaリボヌクレアーゼIII酵素によって切断されて、約70ヌクレオチドのステムループ前駆体miRNA(前駆体miRNA)を産生し、該前駆体miRNAは、タンパク質のエクスポーチン5(Exp5)によって、核から細胞質に輸送され、そこで、それは、細胞質Dicerリボヌクレアーゼによってさらに切断されて、成熟miRNA及びアンチセンスmiRNAスター(miRNA*)又はパッセンジャー鎖産物を生成させる。該成熟miRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれ、該複合体は、miRNAとの不完全な塩基対形成によって標的mRNAを認識し、最も一般的には、該標的mRNAの翻訳阻害又は不安定化をもたらす。
マイクロRNA前駆体は、5'から3'の方向に以下のエレメントを含むことができる:
5'miRNAフレーム - パッセンジャー鎖(センス鎖もしくはmiRNAスター) - 中心miRNAフレーム - 成熟miRNA(アンチセンス鎖もしくはガイド鎖) - 3'miRNAフレーム
又は
5'miRNAフレーム - 成熟miRNA(アンチセンス鎖もしくはガイド鎖) - 中心miRNAフレーム - パッセンジャー鎖(センス鎖もしくはmiRNAスター) - 3'miRNAフレーム
ある実施態様では、miRNAフレームワークは、ヒト前駆体miRNAのフレームワークを原型としており、ヒトmiRNA前駆体のmiRNAフレームワークと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%もしくは100%同一である。あるより具体的な実施態様では、該miRNAフレームワークは、ヒトマイクロRNA-30aの前駆体(配列番号:1)(例えば、Zengらの文献(2002, Molecular Cell 9:1327-1333)を参照されたい)、又はヒトマイクロRNA mir-585の前駆体(配列番号:2)、又はヒトマイクロRNA mir-55の前駆体、又はヒトマイクロRNA mir-142の前駆体(配列番号:4)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%もしくは100%同一である。
ある実施態様では、miRNAフレームワークは、カノニカルなイントロン性miRNAを原型としている(Kimらの文献(2009, Nature Reviews Molecular Cell Biology 10:126-139))。ある実施態様では、miRNAフレームワークは、非カノニカルなイントロン性低分子RNA(mirtron)を原型としている(Kimらの文献(2009, Nature Reviews Molecular Cell Biology 10:126-139))。
ある実施態様では、人工前駆体miRNAの予測される構造は、該人工前駆体miRNAが原型としているヒト前駆体miRNAに対して保存されており;該人工前駆体miRNAの周辺の5'及び3'配列は、該人工miRNAが原型としているヒトmiRNAの一次転写産物の5'及び3'隣接配列と同じであり;該前駆体miRNAのステムループ構造のステムの突出部は、該人工miRNAが原型としているヒト前駆体miRNA中と同じ位置及び同じ長さのものである。
ある実施態様では、miRNAフレームワークは、人工フレームワークである。miRNA前駆体がそれ自体に対して折り返し、それにより、ステムループを形成するように、人工フレームワークを生成させることができ、ここで、該ループは、中心miRNAフレームに位置する。ある実施態様では、該ループは、10ヌクレオチド以上であり、該ステムは、成熟miRNAよりも長い。ある実施態様では、前駆体RNAは、2ヌクレオチドの3'突出を有する。
ある実施態様では、5'miRNAフレームは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド長である。ある実施態様では、5'miRNAフレームは、1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40ヌクレオチド長である。ある実施態様では、5'miRNAフレーム中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドは、ステムループ構造中の3'miRNAフレーム中のヌクレオチドと相補的である。ある実施態様では、5'miRNAフレーム中の1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40個のヌクレオチドは、ステムループ構造中の3'miRNAフレーム中のヌクレオチドと相補的である。ある実施態様では、相補的ヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続するヌクレオチドの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのクラスターになっている。
ある実施態様では、3'miRNAフレームは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド長である。ある実施態様では、3'miRNAフレームは、1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40ヌクレオチド長である。ある実施態様では、3'miRNAフレーム中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドは、ステムループ構造中の5'miRNAフレーム中のヌクレオチドと相補的である。ある実施態様では、3'miRNAフレーム中の1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40個のヌクレオチドは、ステムループ構造中の5'miRNAフレーム中のヌクレオチドと相補的である。ある実施態様では、相補的ヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続するヌクレオチドの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのクラスターになっている。
ある実施態様では、5'miRNAフレームは、3'miRNAフレームと少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%相補的である。ある実施態様では、5'miRNAフレームは、3'miRNAフレームと10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、又は80%〜90%相補的である。
ある実施態様では、中心miRNAフレームは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド長である。ある実施態様では、中心miRNAフレームは、1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40ヌクレオチド長である。ある実施態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のヌクレオチドは、ループ構造中の中心miRNAフレーム中のヌクレオチドと相補的である。ある実施態様では、1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40ヌクレオチドは、ループ構造中の中心miRNAフレーム中のヌクレオチドと相補的である。ある実施態様では、相補的ヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続するヌクレオチドの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのクラスターになっている。
ある実施態様では、成熟miRNAは、ヒトmiRNAである。ある実施態様では、成熟miRNAは、人工成熟miRNAである。成熟miRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド長であることができる。あるより具体的な実施態様では、成熟miRNAは、20、21、22、23、又は24ヌクレオチド長である。成熟miRNAの配列の選択は、「成熟miRNAの配列」の節に記載されている。
ある実施態様では、miRNA前駆体はヒトmiRNA前駆体である。
ある実施態様では、パッセンジャー鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60ヌクレオチド長である。ある実施態様では、パッセンジャー鎖は、成熟miRNAと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%もしくは100%相補的である。ある実施態様では、相補的ヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60個の連続するヌクレオチドの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのクラスターになっている。ある実施態様では、パッセンジャー鎖は、成熟miRNAの80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、111%、112%、113%、114%、115%、116%、117%、118%、119%、又は120%の長さである。
ある実施態様では、パッセンジャー鎖と成熟miRNAのハイブリッドは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの突出部、すなわち、非相補的ヌクレオチドの領域を含む。突出部は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド長であることができる。
人工前駆体は、Dicerエンドリボヌクレアーゼの基質として働くその能力についてインビトロアッセイで試験することができる(第5.9.3.3節を参照されたい)。ある実施態様では、Dicerエンドリボヌクレアーゼは、野生型基質、すなわち、人工miRNA前駆体が原型としている野生型miRNA前駆体と同じぐらい効率的に、該人工前駆体を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%、95%、98%、99%、もしくは100%プロセシングする。理論に束縛されるものではないが、Dicer酵素反応の産物は、2塩基の3'突出と5'リン酸及び3'ヒドロキシル基とを有する21〜24ヌクレオチドの二本鎖RNAである。さらに、理論に限定されるものではないが、Dicer酵素反応の産物は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれ、パッセンジャー鎖は、Argonaute 2(AGO2)によって切断及び除去される。
ある実施態様では、一次転写産物は、前駆体miRNAである。正確な3'及び5'末端は、例えば、適切なスプライシング部位を用いることによるか、又はRNAザイムを組み込むことによって生成させることができる。
ある実施態様では、一次転写産物は、余分なRNA配列に囲まれた前駆体miRNAを含む。ある実施態様では、余分なRNA配列は、鋳型異種RNAの隣接配列から転写される。ある実施態様では、余分なRNA配列は、転写後に付加される。ある実施態様では、一次転写産物は、キャッピングされ、かつポリアデニル化される。理論に束縛されるものではないが、一次転写産物は、DroshaリボヌクレアーゼIII酵素によってプロセシングされて、miRNA前駆体を産生する。ある実施態様では、一次転写産物のループは、10ヌクレオチド以上であり;かつ/又は一次転写産物のステムは、成熟miRNAよりも長く;かつ/又は一次転写産物のステムは、前駆体miRNAのステムよりも長く;かつ/又は一次転写産物は、前駆体miRNAの各々の側に少なくとも40ヌクレオチドの追加配列を有し;かつ/又は前駆体RNAに隣接する余分なRNA配列の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%もしくは100%は、一本鎖RNAである。より具体的な実施態様では、余分なRNA配列の少なくとも3ヌクレオチドは、一本鎖である。ある実施態様では、一次転写産物は、50〜100、75〜150、100〜200、150〜250、200〜300、250〜350、300〜500、400〜600、500〜700、600〜800、700〜900、800〜1,000ヌクレオチド長である。
人工前駆体は、Droshaリボヌクレアーゼの基質として働くその能力についてインビトロアッセイで試験することができる(第5.9.3.1節を参照されたい)。ある実施態様では、Droshaリボヌクレアーゼは、野生型基質と同じぐらい効率的に、人工前駆体を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%もしくは100%プロセシングする。ある実施態様では、人工前駆体は、タンパク質Drosha及びディジョージ症候群重要領域遺伝子8(DGCR8)からなるマイクロプロセッサ複合体の基質として働く(第5.9.3.2節を参照されたい)。ある実施態様では、該マイクロプロセッサ複合体は、野生型基質と同じぐらい効率的に、人工前駆体を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%もしくは100%プロセシングする。
ある実施態様では、一次転写産物は、0.5〜1.5、1〜2、1.5〜2.5、2〜3、2.5〜3.5、3〜4、3.5〜4.5、4〜5、4.5〜5.5、5〜6、5.5〜6.5、6〜7、6.5〜7.5、7〜8、7.5〜8.5、8〜9、8.5〜9.5、9〜10、9.5〜10.5、10〜15、12.5〜17.5、15〜20、17.5〜22.5、20〜25、22.5〜27.5、25〜30キロヌクレオチド長である。ある実施態様では、一次転写産物は、以下のような成熟miRNAとパッセンジャー鎖のタンデム反復を含む(パッセンジャー鎖と成熟miRNAの後ろの数字は、反復の数を示し、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、又はそれより大きい数であることができる):
5'miRNAフレーム - パッセンジャー鎖-1 - . . . - パッセンジャー鎖-n - 中心miRNAフレーム - 成熟miRNA-n - . . . - 成熟miRNA-1 - 3'miRNAフレーム
又は
5'miRNAフレーム - 成熟miRNA-1 - . . . - 成熟miRNA-n - 中心miRNAフレーム - パッセンジャー鎖-n - . . . - パッセンジャー鎖-1 - 3'miRNAフレーム
ある実施態様では、異種RNA由来の一次転写産物を、DroshaリボヌクレアーゼIII酵素による切断についてインビトロアッセイで試験する(例えば、Zeng及びCullenの文献(2005, J Biol Chem 280:27595-27603)及び第5.9.3.1節を参照されたい)。
ある実施態様では、異種RNAは、スプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位に隣接する。転写されると、異種RNAを包含するラリアットが形成される。理論に束縛されるものではないが、該ラリアットは脱分岐し、折り返して、前駆体miRNAを形成する。ある他の実施態様では、異種RNAは、リボザイム及びそのリボザイム切断部位に隣接する。転写されると、該リボザイムは、異種RNAを転写産物から切断する。ある他の実施態様では、異種RNAは、2つのリボザイム及びそれらのリボザイム切断部位に隣接する。転写されると、該リボザイムは、異種RNAを転写産物から切断する。
ある実施態様では、転写された異種RNAがDroshaによってプロセシングされると、Drosha産物は、14ヌクレオチドよりも長い二本鎖ステムを有し、かつ1〜8の3'突出を有する。理論に束縛されるものではないが、そのようなDrosha産物は、エクスポーチン5によって、核から細胞質に輸送されることができる。
理論に束縛されるものではないが、Dicer切断後、成熟miRNAと比べたパッセンジャー鎖の相対的な熱力学的安定性は、どちらの鎖がRISCに取り込まれるかを明らかにする。さらに、理論に限定されるものではないが、Dicer産物の鎖の5'末端における相対的な熱力学的不安定性は、RISCへのその積み込みに有利に働く。Schwarzらの文献(2003, Cell 115:199-208)。
ある実施態様では、一方の鎖の5'末端の熱力学的安定性が、もう一方と比べて減少し、その鎖のRISCへの積み込みに有利に働く。熱力学的安定性は、ステムの末端の一方を変化させることにより変化させることができる。例えば、GC対形成を、miRNAになるよう意図される鎖の3'末端で増加させる(すなわち、GC対形成を、パッセンジャー鎖になるよう意図される鎖の5'末端で増加させる)。理論に束縛されるものではないが、その5'末端におけるGC対形成がより少ない鎖は、RISCに積み込まれる可能性がより高い。さらに、理論に束縛されるものではないが、ステムは5'末端によって決定されるので、人工マイクロRNAの3'末端の1個又は2個の塩基を変化させることによって、RISCへのターゲッティングに悪影響が出る可能性は低い。ある実施態様では、パッセンジャー鎖がRISCに積み込まれるように、熱力学的安定性を逆転させる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスが細胞質で複製するウイルスに由来する場合、異種RNAは、転写されると、Dicerの基質となる。ある実施態様では、組換えRNAウイルスが、核で複製するウイルスに由来する場合、異種RNAは、転写されると、Droshaの基質となる。
(5.5.1.1 成熟miRNAの配列)
ある実施態様では、成熟miRNAはヒトmiRNAである。他の実施態様では、成熟miRNAは、その配列が所望の標的の配列に由来する人工miRNA(amiRNA)である。所望の標的は、患者のゲノムの遺伝子、病原体の遺伝子、及び/又は組換えRNAウイルスそれ自体の遺伝子であることができる(第5.7節を参照されたい)。ある実施態様では、成熟miRNAは、複数の標的を有するamiRNAであり、例えば、該miRNAは、ある遺伝子の複数のバリエーション、又は特定の病原体の複数のバリエーション、例えば、特定のウイルスの異なる分離株/株をターゲッティングすることができる(例えば、Israsenaらの文献(2009, Antiviral Research 84:76-83)を参照されたい)。miRNA標的を予測するためのソフトウェアツールを用いて、人工miRNAが所望の標的をターゲッティングすることを検証することができる(Bartelの文献(2009, Cell 136:215-233))。
ある実施態様では、成熟miRNAは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド長である。ある実施態様では、成熟miRNAは、10〜20、15〜25、20〜30、又は25〜35ヌクレオチド長である。より具体的な実施態様では、成熟miRNAは、20、21、22、23、又は24ヌクレオチド長である。
ある実施態様では、成熟miRNAのヌクレオチドの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%もしくは100%が標的配列と相補的であり、したがって、相補的ヌクレオチド間でのワトソン・クリック型対形成が可能になる。ある実施態様では、成熟miRNAの5'末端のヌクレオチド2〜7(「シード」)が標的と相補的であり、したがって、成熟miRNAと、該成熟miRNAのヌクレオチド2〜7にあるその標的との間での完全な塩基対形成が可能になる。
ある実施態様では、オフターゲット効果を回避するために、成熟miRNAのヌクレオチド配列を全トランスクリプトームと比較する。具体的な実施態様では、成熟miRNAに対する相補的配列は、ヒトトランスクリプトーム中の特有の配列である。具体的な実施態様では、該相補的配列は、病原体の遺伝子に特有のものであり、対象のトランスクリプトームに見出すことができない。
ある実施態様では、miRNAの標的配列は、標的遺伝子の3'非翻訳領域(UTR)に位置する。
(5.5.2 siRNA)
ある実施態様では、異種RNAはsiRNAを生じる。ある実施態様では、siRNAは、19〜25ヌクレオチド長の二本鎖RNAである。異種RNAからの転写は、関心対象の標的遺伝子に相補的である部分を含む二本鎖RNA分子を生じさせる。理論に束縛されるものではないが、該二本鎖RNAは、Dicer複合体によってsiRNAへとプロセシングされる。
理論に束縛されるものではないが、個々の標的に対するsiRNAの効力は、通常、様々な因子、例えば、熱力学的安定性、構造的特徴、標的mRNAの利用可能性、及びさらなる位置特異的決定因子によって決まる。Lpez-Fragaらの文献(2009, Biodrugs 23:305-332)を参照されたい。ある実施態様では、本方法及び組成物とともに用いられることになるsiRNAは、19〜25ヌクレオチド長であるべきであり、30の対称的なジヌクレオチド突出、低いグアニン-シトシン含有量(30%〜52%)、及びある位置における特定のヌクレオチドを有するべきである。例えば、siRNA効力を増大させる特徴は、位置1におけるアデニンもしくはウラシル、位置3におけるアデノシン、位置7及び11におけるウラシル、位置13におけるグアニン、位置10におけるウラシルもしくはアデニン(これは、RISC媒介性切断のための部位である)、位置21におけるグアニンの存在、並びに/又はセンス鎖の位置19におけるグアニンもしくはシトシンの不在である(Dykxhoorno及びLiebermanの文献(2006, Annu Rev Biomed Eng 8:377-402)を参照されたい)。
一般に、配列の始めの6〜7塩基対に沿ったアデノシン及びウラシルの集積、及びその結果として、弱い水素結合は、RISCが二本鎖の二重鎖を容易に解き、ガイド鎖を積み込むことを可能にする。siRNA二重鎖は、その30末端で、すなわち、センス鎖の位置15〜19で熱力学的に柔軟であるべきでもある。これは、そのサイレンシング効力と相関しており、そのため、この領域における少なくとも1つのアデノシン-ウラシル対の存在は、内部安定性を低下させ、サイレンシング効力を増大させる。対照的に、内部反復又はパリンドローム配列は、siRNAのサイレンシング能力を低下させる。
siRNA配列を設計するときに考慮に入れる必要がある別の検討事項は、標的配列の性質である。ある状況下では、siRNAの設計のために全てのスプライス変異体及びアイソフォームを含めることが好ましいが、他の場合には、それらを特に無視すべきである。同様に、遺伝子サイレンシングはもっぱら細胞質内のプロセスであるので、標的遺伝子配列のコード領域内の配列の選択に注意を払うべきである。
コンピュータに基づくアルゴリズムは、任意の所与の遺伝子についての最適なsiRNA配列の設計を助けることができ、また、RNA二重鎖の安定性に寄与する熱力学的値、配列非対称性、及び多型などの性質を考慮する。
理論に束縛されるものではないが、siRNAの生成は、Dicer活性にのみ依存し、Droshaには依存しない。したがって、異種RNAの一次転写産物は、Dicerの基質である(第5.9.3.3節を参照されたい)。
具体的な実施態様では、細胞質ウイルスを用いて、siRNAの送達のための組換えRNAウイルスを生成させることができる。
ある実施態様では、異種RNAは、長いヘアピン構造をコードする。ある他の実施態様では、組み合わさってセンス-アンチセンス対を提供し、dsRNAを形成する、2つの別々の異種RNAを組換えRNAウイルスに導入する。
ある実施態様では、組換えRNAウイルスは二本鎖RNAウイルスであり、異種RNAは、該RNAを反対方向に転写して、収束転写産物(convergent transcript)を生成させるプロモーターに隣接する。
(5.5.3 shRNA)
ある実施態様では、異種RNAは、短いヘアピンRNA(shRNA)をコードする。ある実施態様では、異種RNA由来の一次転写産物は折り返して、以下の性質を有するヘアピンループになる:3'UU-突出、ステム長は、25〜29ヌクレオチドであり、ループサイズは、4〜23ヌクレオチドである。ある実施態様では、標的mRNA(アンチセンス鎖)に結合するステムの部分とmRNAの間の相補性は100%である。
理論に束縛されるものではないが、異種RNA由来の一次転写産物は、エクスポーチン5の基質である(第5.9.3.4節を参照されたい)。ある実施態様では、組換えRNAウイルスが細胞質ウイルスである場合、異種RNA由来の一次転写産物は、Dicerの基質である(第5.9.3.3節を参照されたい)。
(5.5.4 RNAスポンジ)
ある実施態様では、異種RNAは、所望の標的遺伝子に対する相補的RNAのタンデム反復である。ある実施態様では、異種RNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個の反復を含む。ある実施態様では、異種RNAは、1〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、又は30〜40個の反復を含む。ある実施態様では、各々の反復は、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、30〜40、35〜45、又は40〜50ヌクレオチド長である。ある実施態様では、該反復間のセグメントは、0〜10、5〜15、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、30〜40、35〜45、又は40〜50ヌクレオチド長である。
(5.5.5 アンチセンスRNA)
ある実施態様では、異種RNAが転写されて、標的遺伝子のmRNAに相補的であるアンチセンスRNAを生じる。
(5.5.6 svRNA)
ある実施態様では、異種RNAが転写されて、svRNAを生じる。具体的な実施態様では、異種RNAが転写されて、svRNA、例えば、インフルエンザウイルスのsvRNAを模倣する(例えば、2010年6月1日にオンラインで公開された、Perezらの文献、「A型インフルエンザウイルスによって生成された低分子RNAは、転写から複製への切替えを調節する(Influenza A virus-generated small RNAs regulate the switch from transcription to replication)」, PNASを参照されたい)。
ある実施態様では、低分子ウイルスRNA(svRNA)は、オルトミクソウイルス、例えば、インフルエンザウイルスのsvRNAである。理論に束縛されるものではないが、インフルエンザウイルスによって発現されるsvRNAは、例えば、ウイルスゲノムの転写から複製への切替えを調節することによってウイルス複製を調節することに関与する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、そのような低分子ウイルスRNAの発現又は活性を調節する化合物は、ウイルスゲノムの転写と複製の切替えを調節することができ、したがって、ウイルス粒子の産生を調節することができる。一態様では、オルトミクソウイルスウイルスゲノムの転写と複製の切替えを調節する化合物を用いることができる。他の態様では、オルトミクソウイルスウイルスゲノムの転写と複製の切替えを調節する化合物を、オルトミクソウイルスに由来する組換えRNAウイルスとともに用いることができる。ある態様では、オルトミクソウイルスウイルスゲノムの転写と複製の切替えを調節する化合物を用いて、1以上のオルトミクソウイルスゲノムセグメント又はmRNA転写産物の産生を選択的に調節することができ、さらに、1以上のオルトミクソウイルスタンパク質又は異種RNAの産生を選択的に調節することができる。
具体的な実施態様では、svRNAは、ウイルスゲノムRNA(vRNA)の5'末端と同一で、かつ相補的ウイルスRNAゲノム(cRNA)の3'末端に相補的な一本鎖RNAである。一実施態様では、svRNAは、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)切断によって、オルトミクソウイルスゲノムRNA(これ以外に、本明細書では「vRNA」とも呼ばれる)の5'末端(複数可)から生成される。一実施態様では、svRNAは、RdRp機構によって、オルトミクソウイルスゲノムcRNAの3'末端(複数可)から生成される。一実施態様では、svRNAは、vRNAの3'末端と相互作用する。別の実施態様では、svRNAは、cRNAの3'末端と相互作用する。いくつかの実施態様では、svRNAは、オルトミクソウイルスのvRNAとcRNAの両方の3'末端と相互作用する。svRNAは、2010年4月23日に出願された米国仮特許出願第61/327,384号に記載されている。
(5.6 組成物)
本明細書で提供される組換えRNAウイルスを組成物に組み込むことができる。具体的な実施態様では、組成物は、免疫原性組成物(例えば、ワクチン製剤)を含む、医薬組成物である。本明細書で提供される医薬組成物は、組成物を対象に投与することができる任意の形態であることができる。具体的な実施態様では、医薬組成物は、獣医学的投与及び/又はヒトへの投与に好適である。組成物は、疾患を予防又は治療する方法で用いることができる。
一実施態様では、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、組換えRNAウイルスを含む。いくつかの実施態様では、医薬組成物は、組換えRNAウイルスの他に、1以上の他の療法を含むことができる。
本明細書で用いられるように、用語「医薬として許容し得る」は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。用語「担体」は、医薬組成物がそれとともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を指す。食塩水溶液及び水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液を、特に注射用溶液のための液体担体として利用することもできる。好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。好適な医薬担体の例は、E. W. Martin著「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。製剤は、投与様式に適するべきである。
具体的な実施態様では、医薬組成物は、対象への意図された投与経路に好適であるように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口、経口、皮内、経皮、結腸直腸、腹腔内、又は直腸投与に適するように製剤化することができる。具体的な実施態様では、医薬組成物は、静脈内、経口、腹腔内、鼻腔内、気管内、皮下、筋肉内、局所、皮内、経皮、又は肺投与用に製剤化することができる。
ある実施態様では、生体分解性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリエチレングリコール(PEG化)、ポリメタクリル酸メチルポリマー、ポリラクチド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を担体として用いることができる。いくつかの実施態様では、組換えRNAウイルスは、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、身体からの速やかな消失からの組換えRNAウイルスの保護を増大させる担体を用いて調製される。そのような製剤の調製方法は当業者には明らかであろう。リポソーム又はミセルを医薬として許容し得る担体として用いることもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に公知の方法によって調製することができる。ある実施態様では、医薬組成物は、1以上のアジュバントを含む。
具体的な実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は一価製剤である。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は多価製剤である。一例では、多価製剤は、1以上の組換えRNAウイルスを含む。
ある実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤、例えば、水銀誘導体のチメロサールをさらに含む。具体的な実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、0.001%〜0.01%のチメロサールを含む。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤を含まない。具体的な実施態様では、チメロサールは、本明細書に記載の医薬組成物の製造時に用いられ、チメロサールは、医薬組成物の生産後の精製工程を通して除去される、すなわち、医薬組成物は、微量のチメロサールを含む(精製後に、1用量当たり<0.3μgの水銀;そのような医薬組成物は、チメロサール不含製品とみなされる)。
ある実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、卵タンパク質(例えば、オボアルブミン又は他の卵タンパク質)をさらに含む。本明細書に記載の医薬組成物中の卵タンパク質の量は、1mlの医薬組成物に対して、約0.0005〜約1.2μgの卵タンパク質であることができる。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、卵タンパク質を含まない。
ある実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、限定するものではないが、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンB)及びカナマイシン、ストレプトマイシンを含む、1以上の抗微生物剤(例えば、抗生物質)をさらに含む。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、いかなる抗生物質も含まない。
ある実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、ゼラチンをさらに含む。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、ゼラチンを含まない。
ある実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、1以上の緩衝剤、例えば、リン酸緩衝剤及びスクロースホスフェートグルタメート緩衝剤をさらに含む。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、緩衝剤を含まない。
ある実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、1以上の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸一ナトリウム、及びアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)、又はそのようなアルミニウム塩の混合物)をさらに含む。他の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、塩を含まない。
具体的な実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、ワクチン製剤、例えば、インフルエンザウイルスワクチン製剤中に一般に見られる1以上の添加剤を含まない。そのようなワクチンは記載されている(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 09/001217号として公開された国際出願PCT/IB2008/002238号を参照されたい)。
本明細書に記載の医薬組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。
本明細書に記載の医薬組成物は、使用前に保存することができ、例えば、該医薬組成物は、冷凍して(例えば、約-20℃もしくは約-70℃で)保存するか;冷蔵条件で(例えば、約4℃で)保存するか;又は室温で保存することができる(インフルエンザワクチンを含む組成物を冷蔵しないで保存する方法については、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 07/110776号として公開された国際出願PCT/IB2007/001149号を参照されたい)。
具体的な実施態様では、組換え生RNAウイルスを含む組成物であって、該ウイルスがインフルエンザウイルスである、組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施態様では、組換え生RNAウイルスをを含む組成物であって、該ウイルスがインフルエンザウイルスである、組成物は、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。別の具体的な実施態様では、組換え生RNAウイルスを含む組成物であって、該ウイルスがシンドビスウイルスである、組成物が本明細書で提供される。
ある実施態様では、組換え生RNAウイルスを含む組成物は、改変された指向性を有するウイルスを含む、すなわち、組換えRNAウイルスの指向性は、ウイルスの自然な指向性(例えば、野生型ウイルスの指向性とは異なる。
ある実施態様では、組換え生RNAウイルスを含む組成物は、該組成物が投与される対象において弱毒化されるウイルスを含む。そのような弱毒化組換えRNAウイルスは、自然に弱毒化されたものであることができる(すなわち、該ウイルスは、本来は、対象において疾患を引き起こさない)か、又は弱毒化されたものとなるように改変されることができる(すなわち、該ウイルスは、それが対象において疾患を引き起こさないように遺伝子改変される)。
(5.6.1 アジュバント)
ある実施態様では、本明細書に記載の組成物(特に、免疫原性組成物)は、アジュバントを含むか、又はアジュバントと組み合わせて投与される。本明細書に記載の組成物との併用投与のためのアジュバントは、該組成物の投与前に、その投与と同時に、又その投与後に投与することができる。いくつかの実施態様では、用語「アジュバント」は、本明細書に記載の組成物とともに又は本明細書に記載の組成物の一部として投与されたときに、本明細書に記載の組成物に対する免疫応答を強化、増強、及び/又は促進する化合物を指す。アジュバントは、例えば、リンパ球動員、B細胞及び/又はT細胞の刺激、並びにマクロファージの刺激を含む、いくつかの機構によって免疫応答を増強することができる。
アジュバントの具体的な例としては、アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウム)、3 De-O-アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)(GB 2220211号参照)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポリソルベート80(Tween 80;ICL Americas社)、イミダゾピリジン化合物(国際公開WO2007/109812号として公開された、国際出願PCT/US2007/064857号参照)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開WO2007/109813号として公開された、国際出願PCT/US2007/064858号参照)、並びにサポニン、例えば、QS21(Kensilらの文献、ワクチン設計:サブユニット及びアジュバントアプローチ(Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach)(Powell及びNewman編, Plenum Press, NY, 1995);米国特許第5,057,540号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、アジュバントは、フロイントのアジュバント(完全又は不完全)である。他のアジュバントは、免疫刺激剤、例えば、モノホスホリル脂質Aと任意に組み合わせた、水中油エマルジョン(例えば、スクアレン又はピーナツ油)である(Stouteらの文献(N. Engl. J. Med. 336, 86-91(1997))を参照されたい)。別のアジュバントは、CpG(Bioworld Today, Nov. 15, 1998)である。そのようなアジュバントを、他の特定の免疫刺激剤、例えば、MPLもしくは3-DMP、QS21、ポリマーもしくはモノマーアミノ酸、例えば、ポリグルタミン酸もしくはポリリジン、又は他の免疫増強剤とともに、或いはこれらなしで用いることができる。
(5.7 組換えRNAウイルスの使用)
(5.7.1 遺伝子発現の調節及びmiRNAターゲッティング)
一態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを用いて、遺伝子発現を調節することができる。理論によって限定されるものではないが、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを改変して、標的遺伝子に特異的なエフェクターRNAを産生することができ、その結果、エフェクターRNAが、該標的遺伝子から転写されたmRNAと接触したときに、該標的遺伝子の発現が調節される。本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって発現されるエフェクターRNAによって調節される標的遺伝子は、限定するものではないが、対象の遺伝子、植物の遺伝子、病原体の遺伝子、又は細胞もしくは細胞株の遺伝子であることができる。したがって、対象における標的遺伝子の発現を、エフェクターRNAを送達する組換えRNAウイルスを該対象に投与することによって低下させる方法が本明細書に記載される。さらに、対象における病原体の力価を、該病原体をターゲッティングするエフェクターRNAを送達する組換えRNAウイルスを該対象に投与することによって低下させる方法が本明細書に提供される。
標的遺伝子の発現を調節するエフェクターRNAの能力は、当業者に公知の手法、及び本明細書に記載の手法、例えば、RNA発現(例えば、mRNA発現)又はタンパク質発現を測定するための技術を用いて評価することができる(下記の第5.9.4節を参照されたい)。当業者であれば、エフェクターRNAの存在下での標的遺伝子からのRNA発現(例えば、mRNA発現)のレベル及び/又はタンパク質発現のレベルが、エフェクターRNAの非存在下でのRNA発現のレベル及び/又はタンパク質発現のレベルと比べて低下する場合、該標的遺伝子が、エフェクターRNAによって調節されていることを認識するであろう。逆に、エフェクターRNAの存在下での標的遺伝子からのRNA発現(例えば、mRNA発現)のレベル及び/又はタンパク質発現のレベルが、エフェクターRNAの非存在下でのRNA発現のレベル及び/又はタンパク質発現のレベルと同じである場合、該標的遺伝子は、エフェクターRNAによって調節されていない。
いくつかの実施態様では、標的遺伝子によるRNA発現(例えば、mRNA発現)が完全に低下する、すなわち、該標的遺伝子によってRNAが産生されないように、該標的遺伝子をエフェクターRNAによって調節することができる。他の実施態様では、標的遺伝子によるRNA発現(例えば、mRNA発現)が完全には低下しないが、通常の条件下での(すなわち、エフェクターRNAの非存在下での)該標的遺伝子によるRNA発現のレベルと比べて低下するように、該標的遺伝子をエフェクターRNAによって調節することができ、例えば、該発現を、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、もしくは99%、或いは2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、もしくは100倍、又は100倍よりも大きく、低下させることができる。
いくつかの実施態様では、標的遺伝子によるタンパク質発現が完全に低下する、すなわち、該標的遺伝子によってタンパク質が産生されないように、該標的遺伝子をエフェクターRNAによって調節することができる。他の実施態様では、標的遺伝子によるタンパク質発現が完全には低下しないが、通常の条件下での(すなわち、エフェクターRNAの非存在下での)該標的遺伝子によるタンパク質発現のレベルと比べて低下するように、該標的遺伝子をエフェクターRNAによって調節することができ、例えば、該発現を、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、もしくは99%、或いは2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、もしくは100倍、又は100倍よりも大きく、低下させることができる。
別の態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを用いて、他のmiRNAをターゲッティングすることができる。理論によって限定されるものではないが、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを改変して、標的miRNAに特異的なエフェクターRNAを産生することができる。本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって発現されるエフェクターRNAによって調節される標的miRNAは、限定するものではないが、対象のmiRNA、植物のmiRNA、病原体のmiRNA、又は細胞もしくは細胞株のmiRNAであることができる。したがって、対象における標的miRNAの発現を、エフェクターRNAを送達する組換えRNAウイルスを該対象に投与することによって調節する(例えば、低下させる)方法が本明細書に記載される。さらに、対象における病原体の力価を、病原体のmiRNAをターゲッティングするエフェクターRNAを送達する組換えRNAウイルスを該対象に投与することによって低下させる方法が本明細書に提供される。
(5.7.2 疾患の予防又は治療)
一態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを用いて、対象の疾患を予防又は治療することができる。理論によって限定されるものではないが、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを改変して、遺伝子が過剰発現されるか又は異所的に発現されるという事実のために疾患の原因とされる対象の遺伝子をターゲッティングするエフェクターRNAを産生することができる。或いは、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを改変して、病原体(例えば、ウイルス又は細菌)の遺伝子をターゲッティングするエフェクターRNA分子を産生することができる、すなわち、エフェクターRNAは、病原体の増殖又は生存に必須である病原体の遺伝子をターゲッティングする。さらに、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを改変して、対象のmiRNA又は疾患の原因とされる病原体のmiRNAをターゲッティングするエフェクターRNAを産生することができる。したがって、組換えRNAウイルスを投与することによって利益を得ることができる任意の疾患が、本明細書に記載の疾患を予防又は治療する方法に包含される。ある実施態様では、病原体としては、細菌、ウイルス、酵母、真菌、古細菌、原核生物、原生動物、寄生虫、及び藻類が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は、呼吸器疾患である。呼吸器疾患としては、限定するものではないが、肺、胸腔、気管支、気管、上気道、並びに呼吸神経及び呼吸筋の疾患が挙げられる。本明細書に記載の方法に従って治療することができる例示的な呼吸器疾患としては、ウイルス感染、細菌感染、喘息、癌、慢性閉塞性肺障害(COPD)、肺気腫、肺炎、鼻炎、結核、気管支炎、喉頭炎、扁桃炎、及び嚢胞性線維症が挙げられる。
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は癌である。本明細書に記載の方法に従って治療することができる癌の非限定的な例としては:白血病、リンパ腫、骨髄腫、骨肉腫及び結合組織肉腫、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、咽喉癌、及び中皮腫)、並びに前立腺癌が挙げられる。
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は、個体のコレステロールのレベルを調節する必要と関連する疾患であり、例えば、該疾患は、高コレステロールと関連する疾患である。高コレステロールと関連する疾患の非限定的な例としては、心臓疾患、卒中、末梢血管疾患、糖尿病、及び高血圧が挙げられる。
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は、ウイルス感染によって引き起こされる疾患である。疾患を引き起こすウイルスの非限定的なリストとしては:呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、又はC型インフルエンザウイルス)、ヒトメタ肺炎ウイルス(HMPV)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス(A型、B型、C型)、エボラウイルス、ヘルペスウイルス、風疹、大痘瘡、及び小痘瘡が挙げられる。
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は、細菌感染よって引き起こされる疾患である。疾患を引き起こす細菌の非限定的なリストとしては:肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クラミジア肺炎菌(Chlamydia pneumoniae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、マイコプラズマ肺炎菌(Mycoplasma pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、カタラリス菌(Moraxella catarrhalis)、レジオネラ菌(Legionella)、ニューモシスチス・ジロヴェチ(Pneumocystis jiroveci)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、及び野兎病菌(Francisella tularensis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、サルモネラ菌(Salmonella)、ペスト菌(Yersinia pestis)、赤痢菌(Shigella)、大腸菌(E. coli)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、並びに梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が挙げられる。
具体的な実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAは、対象に感染する病原体の遺伝子をターゲッティングし、ここで、該エフェクターRNAは、該病原体の増殖又は生存に必須である該病原体の遺伝子をターゲッティングする。別の具体的な実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAは、植物に感染する病原体の遺伝子をターゲッティングし、ここで、該エフェクターRNAは、該病原体の増殖又は生存に必須である該病原体の遺伝子をターゲッティングする。
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は、自己免疫疾患である。本明細書に記載の方法によって治療することができる自己免疫疾患の例としては、アジソン病、ベーチェット病、慢性活動性肝炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー、重症筋無力症、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、及び全身性エリテマトーデスが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の方法に従って治療することができる他の疾患としては、限定するものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、心臓血管疾患、アレルギー性疾患、糖尿病、ハンチントン病、脆弱性X症候群、緑内障、及び乾癬が挙げられる。
多くの遺伝子は、ヒト対象と非ヒト対象の両方の疾患の原因とされている。例えば、アポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子(遺伝子ID NO:348)のE4アレルは、アルツハイマー病と関連付けられている(例えば、Kimらの文献(2009, Neuron 63(3):287-303)を参照されたい)。遺伝子は癌にも関係があるとされており:上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子及びKRAS遺伝子(遺伝子ID NO:3845)は、複数の癌タイプの原因とされており(例えば、Lynchらの文献(2004, N. Engl. J. Med. 350(21):2129-39);及びKranenburgの文献(2005, Biochim. Biophys. Acta 1756(2):812)を参照されたい)、また、下垂体形質転換遺伝子(PTTG;遺伝子ID NO:9232)は、肺癌で過剰発現されることが分かっている。実際、PTTGをターゲッティングするsiRNAは、肺癌腫瘍細胞をトランスフェクトしたマウスにおける腫瘍増殖を予防するための有効な機構であることが示されている(Kakar及びMalikの文献(2006, Int. J. Oncology 29(2):387-395)を参照されたい)。別のヒト遺伝子、ELANE(遺伝子ID NO:1991)は、肺気腫及び慢性閉塞性肺障害の原因とされている。したがって、本明細書に記載の疾患を予防又は治療するための方法に従って、前述の遺伝子、及び疾患の原因とされる任意の他の遺伝子を、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAを用いてターゲッティングすることができる。
ウイルス及び細菌などの病原体の特定の遺伝子は、対象における該病原体の複製及び/又は生存に必須であり、したがって、該病原体の病原性に必要である。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAは、対象における病原体の遺伝子(例えば、ウイルス遺伝子又は細菌遺伝子)をターゲッティングし、ここで、該病原体の遺伝子のターゲッティングは、該対象における疾患の予防又は治療をもたらす。より具体的には、エフェクターRNAは、該病原体の複製又は生存に必須である病原体の遺伝子をターゲッティングすることができる。例えば、エフェクターRNAは、細菌のhepA遺伝子、例えば、フレキシナ赤痢菌のhepA遺伝子(例えば、アクセッション番号NC_008258.1)をターゲッティングし、該細菌の弱毒化をもたらすことができる。別の例として、エフェクターRNAは、ウイルスの核タンパク質(NP)、例えば、SARSコロナウイルスNP(例えば、アクセッション番号AY291315.1)又はA型インフルエンザウイルスNP(例えば、アクセッション番号EF190975.1)をターゲッティングし、該ウイルスの弱毒化をもたらすことができる。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、インフルエンザウイルスをターゲッティングするエフェクターRNAを提供する。ウイルス、例えば、SARSコロナウイルス、エボラウイルス、H.I.V.、RSV、C型肝炎ウイルス、及びA型インフルエンザウイルスのターゲッティングに用いられるmiRNAの能力が示されており(例えば、Yokotaらの文献(2007, Biochem. Biophys. Res. Commun. 361:294-300);Kumarらの文献(2008, Cell 134:577-586);Bitkoらの文献(2005, Nature Med. 11:50-55);Liらの文献(2005, Nature Med. 11:944-951);及びTompkinsらの文献(2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:8682-8686)を参照されたい)、具体的な実施態様では、これらの例に記載されているそのようなmiRNAを本明細書に記載の方法に従って用いて、そのようなウイルスをターゲッティングすることができる。
マイクロRNA miR-33は、SREBP遺伝子とともに、コレステロール恒常性を制御するように働く(例えば、Raynerらの文献(2010, Science 328:1570-1573);及びNajafi-Shoushtariらの文献(2010, Science 328:1566-1569)を参照されたい)。したがって、本明細書に記載の疾患を予防又は治療するための方法に従って、miR-33、及びSREBP遺伝子を、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAを手段として用いてターゲッティングし、そのような調節を必要とする個体におけるコレステロールのレベルを調節することができる。
ウイルスによるmiRNAの産生、及びウイルス生活環における特定のmiRNAの役割が記載されている(例えば、Cullenの文献(2010, PLoS Pathog. 6(2):e1000787)を参照されたい)。したがって、ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAを改変して、対象においてウイルスのmiRNAをターゲッティングすることができ、その結果、該ウイルスのmiRNAのターゲッティングによって、該対象におけるウイルス感染と関連する疾患の予防又は治療がもたらされる。
ある種のmiRNAは、癌の発病において役割を果たすことが示されている(例えば、Kawasaki及びTairaの文献(2003, Nature 423:838-843);Heらの文献(2005, Nature 435(7043):828833);及びMrazらの文献(2009, Leuk Lymphoma 50(3):506509)を参照されたい)。したがって、ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAを改変して、対象において癌に関与するmiRNAをターゲッティングすることができ、その結果、該miRNAのターゲッティングによって、該対象の癌の予防又は治療がもたらされる。
具体的な実施態様では、異種RNAが転写されて、svRNA、例えば、インフルエンザウイルスのsvRNA(例えば、Perezらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 11525-11530(2010))を参照されたい)をターゲッティングし、該svRNAを発現するウイルスの感染を治療又は予防する。
別の具体的な実施態様では、ターゲッティングされるウイルスは、本明細書に記載の組換えRNAウイルスである、すなわち、エフェクターRNAは、ウイルスベクターを弱毒化及び/又は自己調節するように、そのベクターをターゲッティングする。具体的な実施態様では、そのような自己調節は、ウイルスゲノムに、該ウイルスによって発現されるエフェクターRNAに応答するMREを組み込むことによって達成される。これは、MREが関連しているmiRNAの存在下で(例えば、ウイルスによるエフェクターRNAの産生のために)ウイルスが弱毒化されるように、ウイルスゲノムに、該ウイルスによって発現されるエフェクターRNAに応答するMREを挿入することによって達成することができる。
(5.7.3 免疫応答の誘導又は増強)
一態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを用いて、対象における免疫応答を誘導又は増強することができる。一実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスをワクチンとして用いることができる。
ワクチンとして用いる場合、別のウイルスに特異的であり、かつ免疫応答を発生させることが知られている異種核酸配列を発現させることにより、組換えRNAウイルスそれ自体及び/又は1以上のさらなるウイルスに対して、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを対象にワクチンとして接種することができる。例えば、ウイルスが、関心対象の特定のmiRNAを受け入れるようにそれ自体が改変される一方で、関心対象のウイルス標的(例えば、インフルエンザウイルス又は異なるウイルス)に対する人工マイクロRNAを産生するように、弱毒化ウイルス(例えば、ワクチン株)、例えば、インフルエンザウイルスを構築することができる(例えば、Perezらの文献(Nat Biotechnol 27, 572-576(2009))を参照されたい)。そのようなウイルスは、ワクチンとウイルス予防薬の両方の役割を果たすことができる(例えば、Varbleらの文献(2011, RNA Biology 8:190-194)を参照されたい)。いくつかの実施態様では、本明細書に包含される組換えRNAウイルスワクチンは、宿主免疫応答に関与することが知られている対象の遺伝子をターゲッティングすることによって該ワクチンに対する宿主免疫応答を増強するエフェクターRNAを含む。いくつかの実施態様では、本明細書に包含される組換えRNAウイルスワクチンは、病原体の遺伝子をターゲッティングするエフェクターRNAを含む。
別の実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを用いて、ワクチンに対する宿主免疫応答を増強することができ、例えば、本明細書に記載の組換えRNAウイルスをワクチンとともに対象に投与することができる。そのような実施態様によれば、組換えRNAウイルスは、宿主免疫応答に関与することが知られている対象の遺伝子をターゲッティングすることによって該ワクチンに対する宿主免疫応答を増強するエフェクターRNAを含む。
それとともに本明細書に記載の組換えRNAウイルスを投与することができる例示的なワクチンとしては、限定するものではないが:炭疽病ワクチン、吸着BCGワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、B型肝炎ワクチン、ポリオウイルスワクチン、A型肝炎ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、インフルエンザウイルスワクチン(例えば、(例えば、Fluarix(登録商標)、FluMist(登録商標)、Fluvirin(登録商標)、及びFluzone(登録商標))、日本脳炎ウイルスワクチン、麻疹ウイルスワクチン、MMR(麻疹、流行性耳下腺炎、及び風疹)ワクチン、ロタウイルスワクチン、風疹ウイルスワクチン、天然痘(ワクシニア)ワクチン、腸チフスワクチン、水痘ウイルスワクチン、黄熱病ワクチン、並びに帯状疱疹ワクチンが挙げられる。
多くの遺伝子は、宿主免疫応答に関与することが知られている。対象が受ける別の療法(例えば、ワクチン)の利益の増大をもたらすように、又は対象における所望の応答を達成するように、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを、そのような遺伝子をターゲッティングするエフェクターRNAを含むように改変することができる。例えば、限定するものではないが、転写のシグナル伝達物質及び活性化因子1(STAT1)の機能を負に調節するように機能するSOCS1遺伝子(遺伝子ID NO:8651)をターゲッティングするエフェクターRNAを産生するように;NFκBの機能を負に調節するように機能するNFKBIA遺伝子(IκBα遺伝子ID NO:4792)をターゲッティングするエフェクターRNAを産生するように;又はインターフェロンα及びβの転写活性化を負に調節するように機能するIRF2遺伝子(遺伝子ID NO:3660)をターゲッティングするエフェクターRNAを産生するように、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを改変することができる。そのような遺伝子のターゲッティングの例示的な結果は、投与されたワクチンに対するインターフェロン応答を延長すること、サイトカイン発現を増大させること、及び/又は主要組織適合性複合体(MHC)発現を上昇させることによって、対象のワクチンに対する応答を増強することである。そのような組換えRNAウイルスを単独でワクチンとして用いることができる(すなわち、該組換えRNAウイルスは、エフェクターRNAを含まないワクチンよりも大きい宿主免疫応答を誘導するワクチンに相当する)か、又は別のワクチン(例えば、インフルエンザワクチン)の投与前に、その投与と同時に、もしくはその投与後に、投与することができる。
(5.7.4 併用療法)
様々な実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスは、1以上の他の療法との併用で対象に投与することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを含む医薬組成物は、1以上の療法との併用で対象に投与することができる。1以上の他の療法は、疾患の治療もしくは予防に有益であることができるか、又は疾患と関連する症状もしくは状態を改善することができる。ある実施態様では、療法は、5分未満の間隔、30分未満の間隔、1時間の間隔、約1時間の間隔、約1〜約2時間の間隔、約2時間〜約3時間の間隔、約3時間〜約4時間の間隔、約4時間〜約5時間の間隔、約5時間〜約6時間の間隔、約6時間〜約7時間の間隔、約7時間〜約8時間の間隔、約8時間〜約9時間の間隔、約9時間〜約10時間の間隔、約10時間〜約11時間の間隔、約11時間〜約12時間の間隔、約12時間〜18時間の間隔、18時間〜24時間の間隔、24時間〜36時間の間隔、36時間〜48時間の間隔、48時間〜52時間の間隔、52時間〜60時間の間隔、60時間〜72時間の間隔、72時間〜84時間の間隔、84時間〜96時間の間隔、又は96時間〜120時間の間隔で投与される。具体的な実施態様では、2種以上の療法が、同じ患者(patent)診察時に投与される。
ある実施態様では、該1以上の療法は、抗ウイルス剤である。当業者に周知の任意の抗ウイルス剤を、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は医薬組成物と併用することができる。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、その受容体へのウイルスの付着、細胞内へのウイルスの内在化、ウイルスの複製、又は細胞からのウイルスの放出を阻害及び/又は低減する、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質抗体、核酸分子、有機分子、無機分子、及び小分子が挙げられる。特に、抗ウイルス剤としては、ヌクレオシド類似体(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、及びリバビリン)、フォスカーネット、アマンタジン、ペラミビル、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、α-インターフェロン及び他のインターフェロン、AZT、ザナミビル(Relenza(登録商標))、並びにオセルタミビル(Tamiflu(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗ウイルス剤としては、インフルエンザウイルスワクチン、例えば、Fluarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)、FluMist(登録商標)(MedImmune Vaccines)、Fluvirin(登録商標)(Chiron社)、Flulaval(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Afluria(登録商標)(CSL Biotherapies社)、Agriflu(登録商標)(Novartis)、又はFluzone(登録商標)(Aventis Pasteur)が挙げられる。
具体的な実施態様では、抗ウイルス剤は、ウイルス抗原、例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに特異的である免疫調節剤である。
ある実施態様では、該1以上の療法は、抗細菌剤である。当業者に公知の任意の抗細菌剤を、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は医薬組成物と併用することができる。抗細菌剤の非限定的な例としては、アモキシシリン、アンホテリシン-B、アンピシリン、アジスロマイシン、バシトラシン、セファクロル、セファレキシン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、コリスチン、ダプトマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、ゲンタマイシン、イトラコナゾール、カナマイシン、ケトコナゾール、リンコマイシン、メトロニダゾール、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ムピロシン、ネオマイシン、オフロキサシン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、リファンピシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、スルバクタム、スルファメトキサゾール、テリスロマイシン、テモシリン、タイロシン、バンコマイシン、及びボリコナゾールが挙げられる。
ある実施態様では、該1以上の療法は、抗癌剤である。当業者に公知の任意の抗癌剤を、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は医薬組成物と併用することができる。例示的な抗癌剤としては:アシビシン;アントラサイクリン;アントラマイシン;アザシチジン(Vidaza);ビスホスホネート(例えば、パミドロネート(Aredria)、クロドロン酸ナトリウム(sodium clondronate) (Bonefos)、ゾレドロン酸(Zometa)、アレンドロネート(Fosamax)、エチドロネート、イバンドロン酸(ibandornate)、シマドロネート、リゼドロン酸(resedromate)、及びチルドロン酸(tiludromate));カルボプラチン;クロラムブシル;シスプラチン;シタラビン(Ara-C);塩酸ダウノルビシン;デシタビン(Dacogen);脱メチル化剤、ドセタキセル;ドキソルビシン;EphA2阻害剤;エトポシド;ファザラビン;フルオロウラシル;ゲムシタビン;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDAC);インターロイキンII(組換えインターロイキンII、又はrIL2を含む)、インターフェロンα;インターフェロンβ;インターフェロンγ;レナリドミド(Revlimid);抗CD2抗体(例えば、シプリズマブ(MedImmune社;その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 02/098370号));メルファラン;メトトレキサート;マイトマイシン;オキサリプラチン;パクリタキセル;ピューロマイシン;リボプリン;スピロプラチン;テガフール;テニポシド;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;並びに塩酸ゾルビシンが挙げられる。
癌療法の他の例としては、血管形成阻害剤;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節物質;BCR/ABLアンタゴニスト;βラクタム誘導体;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;グルタチオン阻害剤;HMG CoAレダクターゼ阻害剤;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;脂溶性白金化合物;マトリリシン阻害剤;マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤;ミスマッチのある二本鎖RNA;酸化窒素モジュレーター;オリゴヌクレオチド;白金化合物;タンパク質キナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;rafアンタゴニスト;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;翻訳阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;及びウロキナーゼ受容体アンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は医薬組成物と併用される療法(複数可)は、抗血管形成剤である。抗血管形成剤の非限定的な例としては、血管形成を低減又は阻害する、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、コンジュゲート、抗体(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fv、ScFv、Fab断片、F(ab)2断片、及びそれらの抗原結合断片)、例えば、TNF-αに特異的に結合する抗体、核酸分子(例えば、アンチセンス分子又は三重らせん)、有機分子、無機分子、並びに小分子が挙げられる。抗血管形成剤の他の例は、例えば、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、米国公報第2005/0002934 A1号、段落277〜282に見出すことができる。他の実施態様では、本発明に従って用いられる療法(複数可)は、抗血管形成剤ではない。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は医薬組成物と併用される療法(複数可)は、抗炎症剤である。抗炎症剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、セレコキシブ(CELEBREX(商標))、ジクロフェナク(VOLTAREN(商標))、エトドラク(LODINE(商標))、フェノプロフェン(NALFON(商標))、インドメタシン(INDOCIN(商標))、ケトロラック(ketoralac)(TORADOL(商標))、オキサプロジン(DAYPRO(商標))、ナブメトン(nabumentone)(RELAFEN(商標))、スリンダク(CLINORIL(商標))、トルメチン(tolmentin)(TOLECTIN(商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(商標))、ナプロキセン(ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標))、ケトプロフェン(ACTRON(商標))、及びナブメトン(RELAFEN(商標)))、ステロイド性抗炎症薬(例えば、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON(商標))、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MEDROL(商標)))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(PREDNISONE(商標)及びDELTASONE(商標))、並びにプレドニゾロン(PRELONE(商標)及びPEDIAPRED(商標)))、抗コリン作用薬(例えば、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン、及び臭化イプラトロピウム(ATROVENT(商標)))、β2-アゴニスト(例えば、アルブテロール(abuterol) (VENTOLIN(商標)及びPROVENTIL(商標))、ビトルテロール(TORNALATE(商標))、レバルブテロール(XOPONEX(商標))、メタプロテレノール(ALUPENT(商標))、ピルブテロール(MAXAIR(商標))、テルブタリン(terbutlaine)(BRETHAIRE(商標)及びBRETHINE(商標))、アルブテロール (PROVENTIL(商標)、REPETABS(商標)、及びVOLMAX(商標))、ホルモテロール(FORADIL AEROLIZER(商標))、並びにサルメテロール(SEREVENT(商標)及びSEREVENT DISKUS(商標)))、並びにメチルキサンチン(例えば、テオフィリン(UNIPHYL(商標)、THEO-DUR(商標)、SLO-BID(商標)、及びTEHO-42(商標)))が挙げられる。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は医薬組成物と併用される療法(複数可)は、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、又は有糸分裂阻害剤である。アルキル化剤としては、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル(cholormbucil)、シクロホスファミド、イフォスファミド、ダカルバジン(decarbazine)、メクロレタミン、メルファラン、及びテモゾロミド(themozolomide)が挙げられるが、これらに限定されない。ニトロソウレアとしては、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)が挙げられるが、これらに限定されない。代謝拮抗物質としては、5-フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、及びフルダラビンが挙げられるが、これらに限定されない。アントラサイクリンとしては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びミトキサントロンが挙げられるが、これらに限定されない。トポイソメラーゼII阻害剤としては、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、及びテニポシドが挙げられるが、これらに限定されない。有糸分裂阻害剤としては、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、並びにビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様では、併用療法は、本明細書に記載の2以上の異なる組換えRNAウイルスの投与を含む。
(5.7.5 患者集団)
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、未感作の対象、すなわち、疾患を有していない対象に投与することができる。一実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、疾患を獲得する危険のある未感作の対象に投与される。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、癌と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、骨肉腫及び結合組織肉腫、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、咽喉癌、及び中皮腫)、並びに/又は前立腺癌と診断されている。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、呼吸器疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、呼吸器系に影響を及ぼすウイルス感染、呼吸器系に影響を及ぼす細菌感染、喘息、癌、慢性閉塞性肺障害(COPD)、肺気腫、肺炎、鼻炎、結核、気管支炎、喉頭炎、扁桃炎、及び/又は嚢胞性線維症と診断されている。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、自己免疫疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、アジソン病、ベーチェット病、慢性活動性肝炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー、重症筋無力症、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、及び/又は全身性エリテマトーデスと診断されている。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、高コレステロールと関連する疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、心臓疾患、卒中、末梢血管疾患、糖尿病、及び/又は高血圧と診断されている。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、ウイルスの感染によって引き起こされる疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、もしくはC型インフルエンザウイルス)、ヒトメタ肺炎ウイルス(HMPV)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス(A型、B型、C型)、エボラウイルス、ヘルペスウイルス、風疹、大痘瘡、及び/又は小痘瘡に感染している。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、細菌の感染によって引き起こされる疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、肺炎連鎖球菌、ヒト結核菌、クラミジア肺炎菌、百日咳菌、マイコプラズマ肺炎菌、インフルエンザ菌、カタラリス菌、レジオネラ菌、ニューモシスチス・ジロヴェチ、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチス、炭疽菌、及び野兎病菌、ライム病ボレリア、サルモネラ菌、ペスト菌、赤痢菌、大腸菌、ジフテリア菌、並びに/又は梅毒トレポネーマに感染している。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、真菌の感染によって引き起こされる疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、ブラストミケス属(Blastomyces)、パラコクシディオイデス属(Paracoccidiodes)、スポロトリクス属(Sporothrix)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、カンディダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ヒストプラスマ属(Histoplasma)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、ビポラリス属(Bipolaris)、クラドフィアロフォラ属(Cladophialophora)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、ドレクスレラ属(Drechslera)、エクソフィアラ属(Exophiala)、フォンセカエア属(Fonsecaea)、フィアロフォラ属(Phialophora)、クシロヒファ属(Xylohypha)、オクロコニス属(Ochroconis)、リノクラディエラ属(Rhinocladiella)、スコレコバシディウム属(Scolecobasidium)、及び/又はワンギエラ属(Wangiella)に感染している。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、酵母の感染によって引き起こされる疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、アキクロコニディウム属(Aciculoconidium)、ボトリオアスクス属(Botryoascus)、ブレッタノミケス(Brettanomyces)、ブレラ属(Bullera)、ブレロミケス属(Bulleromyces)、カンディダ属(Candida)、キテロミケス属(Citeromyces)、クラウィスポラ属(Clavispora)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、キストフィロバシディウム属(Cystofilobasidium)、デバロミケス属(Debaromyces)、デバリオミケス属(Debaryomyces)、デクケラ属(Dekkera)、ディポダスクス属(Dipodascus)、エンドミケス属(Endomyces)、エンドミコプシス属(Endomycopsis)、エリトロバシディウム属(Erythrobasidium)、フェロミケス属(Fellomyces)、フィロバシディウム属(Filobasidium)、グイリエルモンデラ属(Guilliermondella)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ハセガワエア属(Hasegawaea)、ヒフォピキア属(Hyphopichia)、イッサトケンキア属(Issatchenkia)、クロエクケラ属(Kloeckera)、クルイウェロミケス属(Kluyveromyces)、コマガタエラ属(Komagataella)、レウコスポリディウム属(Leucosporidium)、リポミケス属(Lipomyces)、ロッデロミケス属(Lodderomyces)、マラッセジア−マスティゴミケス属(Malassezia - Mastigomyces)、メチニコウィア属(Metschnikowia)、ムラキア属(Mrakia)、ナドソニア属(Nadsonia)、オクトスポロミケス属(Octosporomyces)、オオスポリディウム属(Oosporidium)、パキソレン属(Pachysolen)、ペタソスポラ属(Petasospora)、ファッフィア属(Phaffia)、ピキア属(Pichia)、プセウドジマ属(Pseudozyma)、ロドスポリディウム属(Rhodosporidium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、サッカロミコデス属(Saccharomycodes)、サッカロミコプシス属(Saccharomycopsis)、スキゾブラストスポリオン属(Schizoblastosporion)、スキゾサッカロミケス属(Schizosaccharomyces)、シュワンニオミケス属(Schwanniomyces)、セレノティラ属(Selenotila)、シロバシディウム属(Sirobasidium)、スポリディオボルス属(Sporidiobolus)、スポロボロミケス属(Sporobolomyces)、ステファノアスクス属(Stephanoascus)、ステリグマトミケス属(Sterigmatomyces)、シリンゴスポラ属(Syringospora)、トルラスポラ属(Torulaspora)、トルロプシス属(Torulopsis)、トレメロイド属(Tremelloid)、トリコスポロン属(Trichosporon)、トリゴノプシス属(Trigonopsis)、ウデニオミケス属(Udeniomyces)、ワルトミケス属(Waltomyces)、ウィクケラミア属(Wickerhamia)、ウィリオプシス属(Williopsis)、ウィンゲア属(Wingea)、ヤロウィア属(Yarrowia)、ジゴファボスポラ属(Zygofabospora)、ジゴリポミケス属(Zygolipomyces)、及び/又はジゴサッカロミケス属(Zygosaccharomyces)に感染している。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、寄生虫の感染によって引き起こされる疾患と診断された患者に投与され、例えば、該患者は、バベシア属(Babesia)、クリプトスポリディウム(Cryptosporidium)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、リューシマニア属(Leishmania)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、マラリア原虫属(Plasmodium)、トキソプラスマ属(Toxoplasma)、トリコモナス属(Trichomonas)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、回虫属(Ascaris)、条虫綱(Cestoda)、鉤虫属(Ancylostoma)、ブルギア属(Brugia)、ファスキオラ属(Fasciola)、トリキネラ属(Trichinella)、住血吸虫属(Schistosoma)、タエニア属(Taenia)、トコジラミ科(Cimicidae)、シラミ属(Pediculus)、及び/又はヒゼンダニ属(Sarcoptes)に感染している。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、疾患(例えば、癌又は呼吸器疾患)を有する患者に対して、該疾患の症状が現われる前に、又は該疾患の症状が重くなる前に(例えば、該患者に入院が必要になる前に)投与される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、疾患を有する患者に対して、該疾患の症状が現われた後に、又は該疾患の症状が重くなった後に(例えば、該患者に入院が必要となった後に)投与される。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は動物である。ある実施態様では、該動物はトリである。ある実施態様では、該動物はイヌである。ある実施態様では、該動物はネコである。ある実施態様では、該動物はウマである。ある実施態様では、該動物はウシである。ある実施態様では、該動物は、哺乳動物、例えば、ウマ、ブタ、マウス、又は霊長類、好ましくは、ヒトである。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト成人である。ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、50歳を超えるヒト成人である。ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、高齢のヒト対象である。
ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト早産児である。ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト幼児である。ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト小児である。ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト乳児である。ある実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与される対象は、月齢6カ月未満の乳児ではない。具体的な実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物が投与されるべき対象は、2歳以下である。
いくつかの実施態様では、以下の患者集団の1つ又は複数に生ウイルス(例えば、組換え生RNAウイルス)を投与しないことが望ましい場合がある:高齢者;生後6カ月未満の乳児;妊娠個体;1歳未満の乳児;2歳未満の小児;3歳未満の小児;4歳未満の小児;5歳未満の小児;20歳未満の成人;25歳未満の成人;30歳未満の成人;35歳未満の成人;40歳未満の成人;45歳未満の成人;50歳未満の成人;70歳を超える高齢者;75歳を超える高齢者;80歳を超える高齢者;85歳を超える高齢者;90歳を超える高齢者;95歳を超える高齢者;喘息又は他の反応性気道疾患の病歴がある個体;重度のウイルス感染の素因となり得る慢性の医学的基礎疾患を有する個体;ギランバレー症候群の病歴がある個体;発熱を伴う急性の重篤な疾患を有する個体;又は中程度もしくは重度の病気である個体。
(5.7.6 植物適用)
ある態様では、組換えRNAウイルスは植物RNAウイルスに由来し、植物遺伝子をターゲッティングして、該植物の形質を調節するエフェクターRNAを生じる異種RNAを含有及び発現する。ある実施態様では、該植物は、小麦、タバコ、茶、コーヒー、ココア、トウモロコシ、大豆、サトウキビ、及びイネである。ある実施態様では、該植物の形質は、不利な生育条件、例えば、干ばつ、洪水、寒さ、暑さ、日光の少なさもしくは欠如、長時間の暗がり、栄養枯渇、又は砂質土壌、岩混じりの酸性土壌、もしくは塩基性土壌を含む、悪い土壌質に対する耐性である。ある実施態様では、植物遺伝子のターゲッティングは、より速く生育する植物、より多くの種子を生み出す植物、害虫及び微生物に対する耐性が増大した植物、又は食料として使用するために味もしくは硬さが改善された植物をもたらす。
(5.8 投与様式)
(5.8.1 送達経路)
本明細書に記載の組換えRNAウイルス又は組成物は、種々の経路によって対象に送達することができる。これらには、鼻腔内、気管内、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、結膜内、及び皮下経路が含まれるが、これらに限定されない。具体的な実施態様では、投与経路は、例えば、鼻スプレーの一部として、鼻腔内へのものである。ある実施態様では、組成物は、筋肉内投与用に製剤化される。いくつかの実施態様では、組成物は、皮下投与用に製剤化される。ある実施態様では、組成物は、注射による投与用には製剤化されない。具体的な実施態様では、組成物は、注射以外の経路による投与用に製剤化される。
(5.8.2 投薬量及び投与頻度)
本明細書に記載の方法の1つ又は複数で有効である組換えRNAウイルス又は組成物の量は、使用される方法によって決まり、また、標準的な実験及び/又は臨床技術で決定することができる。
製剤で使用すべき正確な用量は、投与経路及び他の条件によっても決まり、臨床医の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態(年齢、体重、健康を含む)、患者がヒトであるか動物であるかということ、投与される他の医薬品、及び治療が予防的であるか治療的であるかということによって異なってもよい。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物(例えば、トランスジェニックマウス)を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に調節される。
ある実施態様では、最適な投薬量範囲の特定を助けるために、インビトロアッセイが用いられる。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られる、用量応答曲線から推定することができる。
組換えRNAウイルスの用量は、1用量当たり、ビリオン数が10〜100個、又はそれより多くまで様々であることができる。いくつかの実施態様では、組換えRNAウイルスの好適な投薬量は、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、又は1012pfuであり、必要とされるだけの間隔で、1回、2回、3回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。
ある実施態様では、組換えRNAウイルス又は組成物は、単一用量として1回、対象に投与される。ある実施態様では、組換えRNAウイルス又は組成物は、単一用量として、次いで、1日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、1カ月後、2カ月後、3カ月後、4カ月後、5カ月後、6カ月後、又は1年後に2回目の用量として、対象に投与される。いくつかの実施態様では、組換えRNAウイルス又は組成物の投与を、所定の時間、繰り返すことができ、投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月の間隔を空けることができる。ある実施態様では、組換えRNAウイルス又は組成物は、単一用量として1年に1回、2回、又は3回対象に投与される。
(5.9 アッセイ)
(5.9.1 ウイルス複製を試験するためのアッセイ)
エフェクターRNAを発現しながら、効率的に複製する本明細書に記載の組換えRNAウイルスの能力を、当業者に公知かつ下記の第6節に記載の方法を用いて評価することができる。例えば、マルチサイクル増殖曲線などの方法を用いて、エフェクターRNAを発現する組換えRNAウイルスの複製能を決定することができる。簡潔に述べると、細胞を、エフェクターRNAを発現する組換えRNAウイルスに感染させ、その後、様々な時点でウイルス含有上清を除去する。その後、該上清をプラークアッセイで用いて、存在する組換えRNAウイルスの数を示すプラークをカウントする。
本明細書に記載の組換えウイルスの複製速度を、当業者に公知の任意の標準的な技術によって決定することができる。複製の速度をウイルスの増殖速度によって表し、感染後の時間に対してウイルス力価をプロットすることによって決定することができる。ウイルス力価を、当業者に公知の任意の技術によって測定することができる。ある実施態様では、ウイルス力価を測定するために、組換えRNAウイルスを含む懸濁液を該ウイルスに感染しやすい細胞とともにインキュベートする。本発明の方法とともに使用することができる細胞型としては、Vero細胞、LLC-MK-2細胞、Hep-2細胞、LF 1043(HEL)細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、293 T細胞、QT 6細胞、QT 35細胞、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)、又はtMK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。組換えRNAウイルスと該細胞とのインキュベーション後、感染した細胞の数を決定する。ある具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、レポーター遺伝子を含む。したがって、レポーター遺伝子を発現する細胞の数は、感染した細胞の数を示す。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルスは、eGFPをコードする異種ヌクレオチド配列を含み、eGFPを発現する細胞の数、すなわち、該組換えRNAウイルスに感染した細胞の数を、FACSを用いて決定する。
(5.9.2 エフェクターRNAプロセシングを試験するためのアッセイ)
(5.9.2.1 Droshaアッセイ)
異種RNAをプロセシングするDroshaの能力を、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて評価することができる。Droshaプロセシングを評価するための例示的なアッセイは、Zeng及びCullenの文献(2005, J. Biol. Chem. 280(30):27595-27603)に記載されている。ある実施態様では、酵素アッセイを行なって、異種RNAのDroshaプロセシングを評価することができる。簡潔に述べると、精製Droshaを、エフェクターを含む放射性標識異種RNAと混合し、37℃で60〜90分間インキュベートする。次に、酵素反応を停止させた後、該異種RNAをプロセシングし、それにより、前駆体エフェクターRNA(例えば、プリ-miRNA)の生成をもたらすDroshaの能力をノーザンブロット解析で評価することができる(Zeng及びCullenの文献(2005, J. Biol. Chem. 280(30):27595-27603)を参照されたい)。
(5.9.2.2 Drosha/DGCR8複合体アッセイ)
異種RNAをプロセシングするDrosha/DGCR8複合体の能力を、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて評価することができる。ある実施態様では、免疫沈降アッセイを行なって、Drosha/DGCR8プロセシングを試験することができる。例えば、Drosha又はDGCR8のいずれかを免疫沈降して、(例えば、αP32 UTPで)放射性標識された、T7により転写されるプレ-マイクロRNAとともにインキュベートすることができる。その後、免疫沈降した抽出物を合成RNAヘアピンとともに37℃で1時間インキュベートすることができる。その後、インビトロプロセシングを、標準的なゲル電気泳動によって測定することができる(例えば、Zeng及びCullenの文献(2005, J. Biol. Chem. 280(30):27595-27603);及びLeeらの文献(Methods Enzymol. 2007, 427:89-106)を参照されたい)。
(5.9.2.3 Dicerアッセイ)
異種RNAをプロセシングするDicerの能力を、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて評価することができる。Dicerプロセシングを、Drosha RNAプロセシングを評価するための、第5.10.3.1節に記載されているアッセイと同様のアッセイを用いて評価することができ、例えば、酵素アッセイを行なって、異種RNAをプロセシングする精製Dicerの能力を試験することができる。Dicerプロセシングを評価するためのさらなるアッセイは、DiNittoらの文献(2010, BioTechniques 48(4):303-311)に記載されている。ある実施態様では、異種RNAをプロセシングするDicerの能力を、蛍光Dicerアッセイを用いて評価することができる。簡潔に述べると、クエンチャー部分(例えば、Iowa Black RQ;IDT, Coralville, IA)を有する、Dicer基質として使用すべき蛍光標識異種RNAを作製する。該クエンチャー部分は、該異種RNAがDicerによってプロセシングされていないとき、該異種RNAの蛍光をクエンチする。該蛍光標識異種RNAを、増加濃度の精製Dicerとともに30℃でインキュベートし、蛍光の変化を、Dicer濃度が増加するのにつれて経時的に測定する。Dicerによる異種RNAのプロセシングは、クエンチャー部分の放出及び蛍光強度の測定可能な増加をもたらす(例えば、DiNittoらの文献(2010, BioTechniques 48(4):303-311)を参照されたい)。
(5.9.2.4 エクスポーチン5アッセイ)
(例えば、Droshaプロセシング後の)異種RNA由来の一次転写産物に結合するエクスポーチン5の能力を、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて評価することができる。エクスポーチン5結合を評価するための例示的な手法は、Brownawellらの文献(2002, J. Cell Biol. 156(1):53-64)に記載されている。簡潔に述べると、異種RNA由来の標識一次転写産物をビーズ(例えば、プロテインAセファロース又はGSHビーズ)に結合させ、標識(例えば、HIS-タグ)エクスポーチン5とともにインキュベートする。インキュベーション後、ビーズをLaemmliサンプルバッファーに懸濁し、SDS-PAGEで分離し、ウェスタンブロットで解析する。化学発光によって明らかにされるエクスポーチン5と異種RNA由来の一次転写産物の両方の存在は、エクスポーチン5結合を示すものである(Brownawellらの文献(2002, J. Cell Biol. 156(1):53-64)を参照されたい)。
異種RNA由来の一次転写産物を核から細胞質に輸送するエクスポーチン5の能力を、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて評価することができる(例えば、Brownawellらの文献(2002, J. Cell Biol. 156(1):53-64)を参照されたい)。
(5.9.2.5 Dicer/TRBP/PACT複合体アッセイ)
異種RNAをプロセシングするDicer/TRBP/PACT複合体の能力を、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて評価することができる。ある実施態様では、異種RNAをプロセシングするDicer/TRBP/PACT複合体の能力を、第5.9.2.2節に記載の手法を用いて評価することができる。
(5.9.3 エフェクターRNAの発現を試験するためのアッセイ)
エフェクターRNAを発現する本明細書に記載の組換えRNAウイルスの能力を、当業者に公知かつ下記の第6節に記載の方法を用いて評価することができる。エフェクターRNAの発現を評価するための例示的な手法としては、ノーザンブロット解析(例えば、Pall及びHamiltonの文献(2008, Nat. Protoc. 3(6):1077-1084)を参照されたい);ステムループ特異的な定量的PCR(例えば、Chenらの文献(2005, Nucleic Acids Res. 33(20):e179)を参照されたい);並びにRNアーゼ保護アッセイ(RPA)(例えば、Gillmanらの文献(Curr Protoc Mol Biol 2001, Unit 4.7)を参照されたい)が挙げられる。
(5.9.4 標的遺伝子に対する効果を試験するためのアッセイ)
標的遺伝子発現を調節する本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAの能力を、当業者に公知かつ下記の第6節に記載の方法を用いて評価することができる。ある実施態様では、標的遺伝子発現を調節する本明細書に記載の組換えRNAウイルスによって産生されるエフェクターRNAの能力を、RNA発現を検出するアッセイを用いて、又はタンパク質発現を検出するアッセイを用いることによって評価することができる。RNAの発現を評価するための例示的な手法としては、ノーザンブロット解析(例えば、Pall及びHamiltonの文献(2008, Nat. Protoc. 3(6):1077-1084)を参照されたい);ステムループ特異的な定量的PCR(例えば、Chenらの文献(2005, Nucleic Acids Res. 33(20):e179)を参照されたい);並びにRNアーゼ保護アッセイ(RPA)(例えば、Gillmanらの文献(Curr Protoc Mol Biol 2001, Unit 4.7)を参照されたい)が挙げられる。タンパク質の発現を評価するための例示的な手法としては、ウェスタンブロット及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられる。
ウェスタンブロット解析は、通常、タンパク質試料を調製すること、ポリアクリルアミドゲル中での該タンパク質試料の電気泳動(例えば、抗原の分子量に応じて、8%〜20%SDS-PAGE)、該タンパク質試料を該ポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDF、又はナイロンなどの膜に転写すること、該膜をブロッキング溶液(例えば、3%BSA又は無脂肪乳を含むPBS)中でブロッキングすること、該膜を洗浄バッファー(例えば、PBS-Tween 20)中で洗浄すること、該膜を、ブロッキングバッファーに希釈した一次抗体(関心対象の抗体)とともにインキュベートすること、該膜を洗浄バッファー中で洗浄すること、該膜を、ブロッキングバッファーに希釈した、酵素基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)又は放射性同位体(例えば、32Pもしくは125I)標識分子にコンジュゲートされた(該一次抗体、例えば、抗ヒト抗体を認識する)二次抗体とともにインキュベートすること、該膜を洗浄バッファー中で洗浄すること、及び該抗原の存在を検出することを含む。当業者であれば、検出されるシグナルを増大させ、バックグラウンドシグナルを低下させるように変更することができる実験的変数に精通しているであろう。
ELISAは、通常、抗原の溶液(例えば、関心対象の抗原を含む細胞ライセート又は関心対象の精製抗原の緩衝化溶液)を調製すること、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに該抗原をコーティングすること、該ウェルを不活性なバッファー溶液で洗浄すること、酵素レポーター(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)などのレポーター化合物にコンジュゲートされた抗原認識抗体を該ウェルに添加すること、しばらくの間インキュベートすること、余分なコンジュゲート抗体を除去すること、該ウェルを不活性なバッファー溶液で徹底的に洗浄すること、及び保持されたレポーターの量又は活性を測定することを含む。ELISAでは、関心対象の抗体をレポーター化合物にコンジュゲートさせる必要はなく;代わりに、レポーター化合物にコンジュゲートされた(抗原認識抗体に特異的に結合する)二次抗体をウェルに添加することができる。さらに、ウェルに抗原をコーティングする代わりに、抗体を最初にウェルにコーティングすることができる。この場合、コーティングされたウェルに関心対象の抗原を添加した後、レポーター化合物にコンジュゲートされた二次抗体を添加することができる。関心対象の抗体をレポーター化合物にコンジュゲートさせる必要はなく;代わりに、レポーター化合物にコンジュゲートされた(抗原認識抗体に特異的に結合する)二次抗体をウェルに添加することができる。当業者であれば、検出されるシグナルを増大させるように変更することができる実験的変数及び当技術分野で公知のELISAの他の変数に精通しているであろう。
(5.9.5 抗ウイルス活性アッセイ)
本明細書に記載の組換えRNAウイルス又はその組成物によって発現されるエフェクターRNAを、抗ウイルス活性についてインビトロで評価することができる。一実施態様では、エフェクターRNAを、ウイルス、例えば、インフルエンザウイルスの増殖に対するその効果についてインビトロで試験する。ウイルスの増殖を、当技術分野で公知の又は本明細書に記載の任意の方法で評価することができる(例えば、第5.10.2節を参照されたい)。具体的な実施態様では、細胞を、組換えRNAウイルスに、0.0005〜0.001、0.001〜0.01、0.01〜0.1、0.1〜1、もしくは1〜10のMOI、又は0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、もしくは10のMOIで感染させる。ウイルス力価を、プラークアッセイ又は本明細書に記載の任意の他のウイルスアッセイによって上清中で決定する。インビトロアッセイは、当技術分野で周知であるか又は本明細書に記載されている方法を用いて、インビトロで培養細胞中で、ウイルス複製の変化(例えば、プラーク形成によって決定される)又はウイルスタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット解析によって決定される)もしくはウイルスRNAの産生を測定するものを含む。
(5.9.6 細胞傷害性アッセイ)
当技術分野で周知の多くのアッセイを用いて、組換えRNAウイルス又はその組成物への曝露後の細胞(感染もしくは未感染)又は細胞株の生存率を評価し、それにより、該組換えRNAウイルス又は組成物の細胞傷害性を決定することができる。例えば、細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込み(例えば、Hoshinoらの文献(1986, Int. J. Cancer 38, 369);Campanaらの文献(1988, J. Immunol. Meth. 107:79)を参照されたい)、(3H)チミジンの取込み(例えば、Chen, J.の文献(1996, Oncogene 13:1395-403);Jeoung, J.の文献(1995, J. Biol. Chem. 270:18367 73)を参照されたい)を測定することによるか、直接的な細胞カウントによるか、又は既知の遺伝子、例えば、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)の転写、翻訳、もしくは活性の変化を検出することによって検定することができる。細胞生存率は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞生死マーカーを用いて評価することもできる。具体的な実施態様では、細胞のATPレベルを測定して、細胞生存率を決定する。
具体的な実施態様では、細胞生存率は、細胞内ATPレベルを測定する、当技術分野で標準的なアッセイ、例えば、CellTiter-Gloアッセイキット(Promega)を用いて、3日及び7日の期間で測定される。細胞ATPの低下は細胞傷害効果を示す。別の具体的な実施態様では、細胞生存率は、ニュートラルレッド取込みアッセイで測定することができる。他の実施態様では、形態変化の目視観察には、肥大、粒状度、ギザギザの縁を有する細胞、薄膜状の外観、円形化、ウェル表面からの剥離、又は他の変化が含まれ得る。こうした変化には、観察された細胞傷害性の程度に従って、T(100%毒性)、PVH(部分的毒性-非常に強い-80%)、PH(部分的毒性-強い-60%)、P(部分的毒性-40%)、Ps(部分的毒性-わずか-20%)、又は0(毒性なし-0%)という呼称が与えられる。50%細胞阻害(細胞傷害)濃度(IC50)は、これらのデータの回帰分析により決定される。
具体的な実施態様では、細胞傷害性アッセイで用いられる細胞は、初代細胞及び細胞株を含む動物細胞である。いくつかの実施態様では、細胞はヒト細胞である。ある実施態様では、細胞傷害性は、以下の細胞株のうちの1つ又は複数で評価される:U937、ヒト単球細胞株;初代末梢血単核細胞(PBMC);Huh7、ヒト肝芽細胞腫細胞株;293T、ヒト胚性腎細胞株;及びTHP-1、単球細胞。ある実施態様では、細胞傷害性は、以下の細胞株のうちの1つ又は複数で評価される:MDCK、MEF、Huh 7.5、Detroit、又はヒト気管気管支上皮(HTBE)細胞。
組換えRNAウイルス又はその組成物は、動物モデルでインビボ毒性について試験することができる。例えば、ウイルスの活性を試験するために用いられる、本明細書に記載の動物モデル及び/又は当技術分野で公知の他のものを用いて、本明細書に記載の組換えRNAウイルスのインビボ毒性を測定することもできる。例えば、動物に様々な濃度の組換えRNAウイルスを投与する。その後、この動物を、致死率、体重減少もしくは体重増加失敗、及び/又は組織損傷を示し得る血清マーカーのレベル(例えば、全般的な組織障害の指標としてのクレアチンホスホキナーゼレベル、肝障害の可能性の指標としてのグルタミン酸シュウ酸トランスアミナーゼもしくはピルビン酸トランスアミナーゼのレベル)について経時的にモニタリングする。これらのインビボアッセイは、投薬量の他に、様々な投与様式及び/又はレジメンの毒性を試験するように適合させることができる。
組換えRNAウイルスの毒性及び/又は効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、それは、比LD50/ED50と表すことができる。大きい治療指数を示す組換えRNAウイルスが好ましい。毒性のある副作用を示す組換えRNAウイルスを用いてもよいが、感染していない細胞に対する潜在的な障害を最小限に抑え、それにより、副作用を低下させるために、そのような薬剤を罹患組織の部位にターゲッティングする送達系を設計するよう、注意を払うべきである。
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトで用いるための組換えRNAウイルスの投薬量の範囲を定める際に用いることができる。そのような組換えRNAウイルスの投薬量は、ほとんど又は全く毒性のない範囲内にあることが好ましい。投薬量は、利用される剤形及び利用される投与経路によって、この範囲内で異なり得る。本明細書に記載の方法で用いられるどの組換えRNAウイルスについても、有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。投薬量の決定に関するさらなる情報が本明細書で提供される。
さらに、当業者に公知の任意のアッセイを用いて、本明細書に記載の組換えRNAウイルス及び組成物の予防的及び/又は治療的有用性を評価することができる。
(5.9.7 非ヒト動物でのインビボ活性)
組換えRNAウイルス及びその組成物は、ヒトで用いる前に所望の治療的又は予防的活性についてインビボで検定することが好ましい。例えば、非ヒト動物をモデルとして用いるインビボアッセイを用いて、組換えRNAウイルスもしくはその組成物及び/又は別の療法を投与することが好ましいかどうかを決定することができる。
組換えRNAウイルス及びその組成物は、限定するものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、モルモットなどを含む動物モデル系で、活性について試験することができる。具体的な実施態様では、組換えRNAウイルス及びその組成物は、マウスモデル系で試験される。そのようなモデル系は広く用いられており、かつ当業者に周知である。
一般に、疾患のモデルとして役立つ非ヒト動物を、組換えRNAウイルスもしくはその組成物、又は偽薬で処置する。その後、該動物を疾患の状況及び進行についてモニタリングすることができ、かつ該疾患を予防及び/又は治療する組換えRNAウイルスの能力を評価することができる。ある実施態様では、組織病理学的評価を行なって、該組換えRNAウイルスの効果を評価する。組換えRNAウイルスで処置した動物の組織及び器官を、当業者に公知の手法を用いて評価することができる。
(5.9.7.1 抗癌研究)
本明細書に記載の組換えRNAウイルス又はその医薬組成物を、癌の動物モデルを用いて、生物学的活性について試験することができる。そのような動物モデル系としては、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様では、本明細書に記載の組換えRNAウイルスの抗癌活性をマウスモデル系で試験する。そのようなモデル系は広く用いられ、当業者に周知であり、例えば、SCIDマウスモデル又はトランスジェニックマウスがある。
本明細書に記載の組換えRNAウイルス又はその医薬組成物の抗癌活性は、該組換えRNAウイルス又はその医薬組成物を動物モデルに投与し、該組換えRNAウイルス又はその医薬組成物が該動物モデルの癌の重症度を軽減するのに有効であることを立証することによって明らかにすることができる。一般的な癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、コンパニオン動物の自然発症腫瘍が挙げられる(例えば、Vail及びMacEwenの文献(2000, Cancer Invest 18(8):781-92)を参照されたい)。肺癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、Zhang及びRothの文献(1994, In-vivo 8(5):755-69)に記載されている肺癌動物モデル、及びp53機能が破壊されているトランスジェニックマウスモデル(例えば、Morrisらの文献(1998, J La State Med Soc 150(4):179-85)を参照されたい)が挙げられる。乳癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、サイクリンD1を過剰発現するトランスジェニックマウスが挙げられる(例えば、Hosokawaらの文献(2001, Transgenic Res 10(5):471-8)を参照されたい)。結腸癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、TCR b及びp53二重ノックアウトマウスが挙げられる(例えば、Kadoらの文献(2001, Cancer Res. 61(6):2395-8)を参照されたい)。膵癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、PancO2マウス膵腺癌の転移モデル(例えば、Wangらの文献(2001, Int. J. Pancreatol. 29(1):37-46)を参照されたい)及びnu-nuマウスで発生した皮下膵腫瘍(例えば、Ghanehらの文献(2001, Gene Ther. 8(3):199-208)を参照されたい)が挙げられる。非ホジキンリンパ腫の動物モデルの例としては、限定するものではないが、重症複合免疫不全(「SCID」)マウス(例えば、Bryantらの文献(2000, Lab Invest 80(4):553-73)を参照されたい)及びIgHmu-HOX11トランスジェニックマウス(例えば、Houghらの文献(1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(23):13853-8)を参照されたい)が挙げられる。食道癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、ヒトパピローマウイルスタイプ16 E7オンコジーンのトランスジェニックマウスが挙げられる(例えば、Herberらの文献(1996, J. Virol. 70(3):1873-81)を参照されたい)。結腸直腸癌の動物モデルの例としては、限定するものではないが、Apcマウスモデルが挙げられる(例えば、Fodde及びSmitsの文献(2001, Trends Mol Med 7(8):369 73)、並びにKuraguchiらの文献(2000)を参照されたい)。
(5.9.8 ヒトでのアッセイ)
一実施態様では、疾患を予防又は治療する組換えRNAウイルス又はその組成物の能力を、疾患を有するヒト対象で評価する。この実施態様に従って、組換えRNAウイルス又はその組成物を該ヒト対象に投与し、疾患に対する該組換えRNAウイルス又は組成物の効果を決定する。
別の実施態様では、疾患と関連する1以上の症状の重症度を軽減する組換えRNAウイルス又はその組成物の能力を、疾患を有するヒト対象で評価する。この実施態様に従って、組換えRNAウイルスもしくはその組成物又は対照を、疾患に罹患しているヒト対象に投与し、該疾患の1以上の症状に対する該組換えRNAウイルス又は組成物の効果を決定する。1以上の症状を軽減する組換えRNAウイルス又はその組成物は、対照で処置した対象を該組換えRNAウイルス又は組成物で処置した対象と比較することによって特定することができる。該疾患に詳しい医師に公知の技術を用いて、組換えRNAウイルス又はその組成物が該疾患と関連する1以上の症状を軽減するかどうかを決定することができる。
別の実施態様では、組換えRNAウイルス又はその組成物を健康なヒト対象に投与し、ワクチンとしての有効性についてモニタリングする。感染性疾患に詳しい医師に公知の技術を用いて、組換えRNAウイルス又はその組成物がワクチンとして有効であるかどうかを決定することができる。
(5.10 キット)
本明細書に記載の医薬組成物の1以上の成分、例えば、本明細書で提供される1以上の組換えRNAウイルスを充填した1以上の容器を含む医薬パック又はキットが本明細書で提供される。本明細書で提供されるキットは、本明細書で提供される1以上の組換えRNAウイルスを含むこともできる、すなわち、該キット中の組換えRNAウイルスは、医薬組成物として製剤化されるのではなく、むしろ、実験目的で製剤化される。本明細書に記載のキメラウイルスゲノムセグメント又はキメラ遺伝子のうちの1つ又は複数を含むキットも本明細書で提供される。医薬又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する行政機関によって規定された形式での通知を、そのような容器(複数可)に任意で関連付けることができ、その通知は、この機関による、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の承認を示している。
本明細書に包含されるキットは、上記の方法で用いることができる。一実施態様では、キットは、本明細書に記載の組換えRNAウイルスを含む。具体的な実施態様では、キットは、組換えインフルエンザウイルスを含む。別の具体的な実施態様では、キットは、組換えシンドビスウイルスを含む。別の具体的な実施態様では、キットは、本明細書に記載のキメラウイルスゲノムセグメント又はキメラ遺伝子のうちの1つ又は複数を含む。
(6.実施例)
(6.1 実施例1)
この実施例は、ウイルス増殖を消失させずに機能的miRNAを産生するようにインフルエンザウイルスを改変することができることを示す。
(6.1.1 材料及び方法)
(6.1.1.1 細胞培養)
HEK293、MDCK、CAD、及びマウス線維芽細胞を、10%胎仔ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM(Mediatech)培地中で培養した。Dicer欠損線維芽細胞は、A. Tarakhovsky(Rockefeller University, NYC)及びDonal O'Carrol(EMBL, Monterotondo)により提供され、CAD細胞は、T. Maniatis(Columbia University, NYC)により提供された。
(6.1.1.2 ウイルス設計及びレスキュー)
修飾NSセグメント(A/PR/8/34)を、PCRと、それに続く3方向へのライゲーションにより作製した。NS1 ORF
中のスプライスアクセプター部位を、この部位でのNS mRNAのスプライシング
を防ぐために、プライマー
を用いる部位特異的突然変異生成により突然変異させた。vRNAのNS1 ORFと3'非コード領域に対応する断片(1〜716ヌクレオチド)を、SapI部位及びXhoI部位を有するプライマー
を用いて、このスプライスアクセプター部位突然変異体NSセグメントから増幅させた。vRNAのNEP/NS2及び5'非コード領域に対応する断片(Wt NSセグメントのヌクレオチド508〜890)を、XhoI部位及びSapI部位を有するプライマー
を用いて、NSプラスミドから増幅させた。NS1断片及びNEP/NS2断片をSapI及びXhoIで消化し、SapIで切断されたpDZレスキューベクターに連結した。これらの組換えウイルスを、以前に記載されたリバースジェネティクス技術を用いてレスキューした(例えば、Hoffmannらの文献(2000) Proc Natl Acad Sci U S A 97(11):6108-6113;及びFodorらの文献(1999) J Virol 73(11):9679-9682を参照されたい)。簡潔に述べると、0.5μgのIAVゲノムの8つのセグメントに相当する8つのpDZプラスミドの各々を293T細胞にトランスフェクトした。24時間後、該293T細胞を上清とともに8日齢の卵に注入した。組換えウイルスを感染48時間後に尿膜腔液から回収した。プラーク精製の後、修飾NSセグメントを、vRNAのRT-PCR産物をシークエンシングすることによって確認した。標準的な部位特異的突然変異生成を行なうことにより、ClaI制限部位をNS vRNAの遺伝子間領域にさらに導入した。該ClaI挿入部位を用いて、miR-124-2マウス遺伝子座(chr3:17,695,454-17,696,037)、又は以前に記載されているような4コピーのmiR-142-3p標的を連結した(例えば、Brownらの文献(2007) Nat Biotechnol 25(12):1457-1467を参照されたい)。
(6.1.1.3 ウイルス感染)
ウイルス感染を規定の感染多重度(MOI)で行なった。ウイルスを、表示された細胞株を含む、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA、MP Biomedicals)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)培地中に1時間接種した。その後、接種物を吸引除去し、表示された時間、新鮮な完全培地に置き換えたか、又は0.5もしくは5%BSA及びL-(トシルアミド-2-フェニル)エチルクロロメチルケトン(TPCK)トリプシンを補充した最小必須培地中に置き換えた。
(6.1.1.4 ノーザンブロット解析)
ノーザンブロット及びプローブ標識を以前に記載されているように行なった(例えば、Pall及びHamiltonの文献(2008) Nat Protoc 3(6):1077-1084を参照されたい)。使用したプローブには、以下のものが含まれた:
(6.1.1.5 ウェスタンブロット解析)
ウェスタンブロットを15%SDS-PAGEゲル上で分離した全タンパク質から作製した。分離したタンパク質をニトロセルロース(Bio-Rad)に転写し、5%スキムミルクで25℃で1時間ブロッキングし、その後、表示された抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。アクチン(Abcam)、NS1、NEP/NS2、及びNP(P. Palese, MSSM, NYCにより提供された)抗体を全て、5%スキムミルク中、1μg/mlの濃度で用いた。マウス及びウサギ二次抗体(GE Healthcare)を1:5000希釈で25℃で1時間用いた。Immobilon Western Chemiluminescent HRP Substrate(Millipore)を指示通り用いた。
(6.1.1.6 免疫蛍光)
4%ホルムアルデヒドとともに4℃で一晩インキュベートすることにより、細胞をガラスカバースリップ上に固定した。PBSによる2回の洗浄の後、細胞をPBS中の0.5%NP40洗浄剤で10分間透過処理し、すぐにもう2回洗浄した。その後、細胞をPBS中の0.5%ウシアルブミン溶液(BSA)で室温で30分間ブロッキングした。一次抗体を、室温で2時間、1:500濃度でインキュベートした。モノクローナル抗体(E7-β-チューブリン)は、Developmental Studies Hybridoma Bankから入手した。PBS中の0.5%BSAで4回洗浄した後、細胞を、1:750の二次抗体Rhodamine Red-X(Fisher)とともに1時間インキュベートし、残りの15分でHoechst 33342色素(Invitrogen)を添加した。4回洗浄した後、カバースリップをProlong Gold Antifade(Invitrogen)を用いてガラススライドに載せた。Leica TCS SP5 DMI顕微鏡を用いて60倍の倍率で画像を取り込んだ。
(6.1.1.7 定量的PCR)
KAPA SYBR(登録商標)FAST qPCRマスターミックス(KAPA Biosystems)を用いて、表示されたcDNA試料に対して従来の定量的PCRを行ない、TaqMan(登録商標)マイクロRNAアッセイ(Applied Biosystems)を用いて、マイクロRNA定量的PCRを行なった。実験は、Mastercycler ep realplex(Eppendorf)で行なった。それぞれの実験でチューブリン又はsnoRNA 202 を内在性ハウスキーピング遺伝子として、及び模擬感染させた又は模擬トランスフェクトした試料をキャリブレーターとして用いて、複製物に対してΔΔCT値を計算した。値は、模擬感染させた又は模擬トランスフェクトした試料と比較したときの、各々の条件についての倍率差を表す。エラーバーは、誘導倍率の+/-標準偏差を示す。QRT-PCRに使用したプライマーは、下に記載されている。
(6.1.1.8 5'RACE)
cDNA末端の迅速増幅のための5'RACEシステム、バージョン2.0(Invitrogen)を用いて、ウイルス感染した試料に対して5'RACEを行なった。手順は、製造業者の指示に従って行なわれた。簡潔に述べると、ウイルスcRNA特異的プライマー
を用いて、第一鎖cDNA合成を行なった。S.N.A.P.精製カラムを用いてcDNAを精製し、その後、TdTを用いてdCTPのテールを付けた。その後、提供されているAbridged Anchorプライマー及びネステッドNEPプライマー
とともにEconoTaq(VWR)を用いて、cDNAを増幅させた。その後、QIAquick(登録商標)ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて断片をゲル精製し、シークエンシング用にTOPO TA Cloning(登録商標)キット(Invitrogen)を用いてクローニングした。
(6.1.1.9 マルチサイクル増殖曲線)
MDCK細胞を、表示されたウイルスにMOI 0.01で感染させた。225μlの上清を表示された時点で取り除いた。その後、上清により、0.01%DEAE-デキストラン(Sigma)及び0.1%NaHCO3(Sigma)を補充したMEM-寒天オーバーレイ中の3つ1組の連続希釈したMDCK細胞中でプラークを形成させた。感染2日後にプラークをカウントした。
(6.1.1.10 FACS)
4つの完全に相補的なmiR-124によってターゲッティングされる部位を合成し、それらをHindIII制限酵素及びBamH1制限酵素を用いてpEGFPC1プラスミド(ジェンバンクアクセッション# U55763)に挿入することによって、GFP_miR-124tを作製した。2%FBSを含むPBSに再懸濁した2×10e6細胞/mlに対してFACS解析を行なった。Cytomics Fc 500(Beckman)装置を用いて、FL1チャンネルを通してGFP発現を定量した。
(6.1.1.11 qPCRプライマー)
使用したqPCRプライマー及びRTプライマーには、以下のものが含まれた:
(6.1.2 結果)
既知のマイクロRNA遺伝子座をコードするようにA型インフルエンザウイルスを改変し、miRNAプロセシング、PTGS活性、及びウイルス複製に対する影響を確認した。A型インフルエンザウイルスのゲノムを構成する8つのマイナス鎖セグメントのうちの2つは、感染中にスプライシングを受けるので(例えば、Palese及びShaw(2007)の文献、フィールズのウイルス学(Fields Virology) 第5版, Knipe, DM及びHowley, PM編(Raven, Philadelphia), 1648-1698頁を参照されたい)、該ウイルスが、ウイルスイントロン中への哺乳動物プリ-miRNAの挿入を可能にし、それにより、いくつかの十分に特徴付けられた内在性miRNA(例えば、Kim及びKimの文献(2007) EMBO J 26(3):775-783を参照されたい)を模倣するかどうかを調べた。これらの検討を行なうために、セグメント8を選んだ。なぜなら、セグメント8は、スプライシングを受ける2つのウイルス転写産物の中でより短く、したがって、それは、遺伝子材料の付加により適していると考えられたからである。セグメント8は、細胞の抗ウイルス活性に対する阻止を付与する非構造タンパク質1(NS1)(例えば、Salvatoreらの文献(2002) J Virol 76(3):1206-1212を参照されたい)、並びにウイルス放出前の成熟RNP複合体の細胞質への輸送に関与し、かつウイルス複製の制御に関係があるとされている核外輸送タンパク質(NEP、NS2とも呼ばれる)(例えば、O'Neillらの文献(1998) EMBO J 17(1):288-296;及びRobbらの文献(2009) J Gen Virol 90(Pt 6):1398-1407を参照されたい)という2つのタンパク質をコードしている。NEP/NS2のN-末端をコードするmRNAは、NS1のC-末端転写産物と重複するので、内在性スプライスアクセプター部位は破壊され、NS1の終止コドンを越えたところに再形成された(図1A)。この重複しないスプリットORFの合成によって、NS1の3'UTRとNEP/NS2のスプライシングされるラリアットとを延長するセグメント8内の遺伝子間領域が作り出された。このウイルスが細胞性プリ-miRNAの挿入を可能にするかどうかを明らかにするために、スクランブル(scbl)ゲノム配列又はマウスmiR-124-2遺伝子座(5'から3'の向き(miR-124)と3'から5'の向き(miR-124(R))の両方)のいずれかをセグメント8の遺伝子間領域にクローニングし、プラスミドに基づくレスキューシステムを用いてウイルスを生成させた(例えば、Hoffmannらの文献(2000) Proc Natl Acad Sci U S A 97(11):6108-6113;及びFodorらの文献(1999)J Virol 73(11):9679-9682を参照されたい)。精製したウイルスを10日齢の孵化鶏卵中で増殖させ、1ミリリットル当たり約10e8〜10e9プラーク形成単位(pfu)(pfu/mL)の力価まで増殖させた。Scbl、miR-124、及びmiR-124(R)断片を、以前に記載されているように、赤色蛍光タンパク質(RFP)発現プラスミド(pRFP)の遺伝子間領域にさらにクローニングした(例えば、Makeyevらの文献(2007) Mol Cell 27(3):435-448を参照されたい)。トランスフェクトされたプラスミドに基づくmiR-124産生と同程度のレベルでウイルス依存的miR-124合成が観察された(図1B)。さらに、miR-124発現は、プレ-miRNAの向きによって制限され、その内在性の5'から3'の向きのみでの発現が示された。さらに、3'UTR中にmiR-124ヘアピンを含むNS1しか発現しないコンストラクトは、低分子RNAを産生しなかったので、miR-124発現には、NEP/NS2のスプライシングが必要とされた(図6)。さらに、NS1 3'UTRの延長とNEP/NS2のイントロン長の延長にもかかわらず、セグメント5上にコードされる核タンパク質(NP)、及び両方ともセグメント8上にコードされるNS1又はNEP/NS2の強いレベルによって示されるように、スクランブル配列の挿入も、プリ-miR-124の挿入も、ウイルスタンパク質発現に影響を及ぼさなかった(図1C)。NS組換えウイルスの複製能を明らかにするために、マルチサイクル増殖曲線を作成した(図1D)。組換えNSウイルスの複製は、強い増殖を示し、かつ野生型(wt)インフルエンザA/PR/8/34ウイルスと比べてウイルス力価の有意な減少を示さなかった。
NEP/NS2の合成中に生成されるプリ-miRNAを含むラリアットが、内在性細胞機構によって連続的にプロセシングされるかどうかを明らかにするために、miR-124含有A型インフルエンザウイルスへの感染をMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞で行ない、複数の時点で回収した。ウイルスによって産生されたmiR-124の低分子RNAノーザンブロットにより、miRNAの実質的な発現が早くも感染4時間後に示された(図2A)。ウイルス-miR-124の強い発現は、感染期間中、内在性miR-93について観察されるレベルと同程度のレベルで持続した。さらに、プレ-miR-124は感染4時間後に認められたが、後の時点でのその不在は、ウイルスによるmiRNA産生が細胞の輸送機構を圧倒するものではなかったことを示す。この現象は、アデノウイルスによるmiRNA送達について以前に報告されている現象である(例えば、Grimmらの文献(2006) Nature 441(7092):537-541を参照されたい)。プレ-miR-124のプロセシングが内在性Dicer最終産物を模倣することを保証するために、ステムループ特異的RT-PCRによるmiR-124のリアルタイム定量を行なった(例えば、Chenらの文献(2005) Nucleic Acids Res 33(20):e179を参照されたい)。このアッセイは、成熟miRNAの3'末端に特異的であり、わずか1ヌクレオチドだけ異なる関連miRNA同士を識別するので、改変型miR-124含有ウイルスに応答して観察された25倍の強い誘導は、この成熟産物が、内在性miR-124の完全な模倣物である可能性が高いことを示している(図2B)。miR-124の産生は、PB2合成によって測定されるウイルス複製とも相関した(図2C)。A型インフルエンザウイルスからのmiR-124の産生が内在性細胞機構によって処理されることを保証するために、野生型線維芽細胞及びDicer欠損線維芽細胞におけるスクランブル対照及びmiR-124産生ウイルスの感染を行なった。全RNAを低分子RNAノーザンブロットで解析し、miR-124をコードするA型インフルエンザウイルスに感染させた野生型細胞のみでのmiR-124産生が示された(図2D)。Dicer欠損の結果としてのmiRNA産生の消失は、miR-93発現の欠如によって確認された。これらの結果は、ステムループ特異的RT-PCRによってさらに裏付けられた(図2E)。総合すると、これらの結果は、A型インフルエンザウイルスを、デノボウイルス感染の状況下で高レベルのmiR-124を送達するように改変することができることを示している。
miRNAをコードするRNAウイルスの制約の1つは、ゲノムスプライシングを引き起こして、2つの異なる断片とmiRNAヘアピンとを産生するウイルス複製の間に、ヘアピンそれ自体がDrosha基質を形成し得ることである。この現象は、明白に、ウイルス子孫産出量に影響を及ぼし、場合によっては、欠損干渉(DI)粒子の形成を誘導する。A型インフルエンザウイルスの場合、miR-124ヘアピンの切断は、miR-124ステムの付け根でのウイルスcRNAの断片化を引き起こし得る(図3A)。切断活性についてcRNAレベルをモニタリングするために、オリゴdTプライマー、又はNS1 mRNAとNEP/NS2 mRNAの両方に存在しない、3'cRNA非コード領域(NCR)に特異的なプライマーを用いる、スクランブル対照又はmiR-124含有ウイルスに感染させた線維芽細胞由来のRNAに対する逆転写(RT)(例えば、Palese及びShaw(2007)の文献、フィールズのウイルス学(Fields Virology) 第5版, Knipe, DM及びHowley, PM編(Raven, Philadelphia), 1648-1698頁を参照されたい)を行なった。オリゴdT RTは、NS1 mRNAとNEP/NS2 mRNAの両方(及びNS cRNA)を合成したが、3'cRNA RTは、NEP/NS2の欠如から明らかなように、NS cRNAを選択的に増幅させ、mRNAを排除した(図3B)。Droshaがゲノムから直接miRNAヘアピンをプロセシングすることができるかどうかを明らかにするために、この識別RT反応を用いて、デノボでのウイルス感染の間、cRNAの5'、3'、及びヘアピン領域をモニタリングした。NSセグメントの定量的PCR(qPCR)は、5'末端と3'末端が、スクランブル対照を産生するA型インフルエンザウイルスとmiR-124を産生するA型インフルエンザウイルスの間で同程度に示されることを示した(図3C及び3D)。5'セグメント末端と3'セグメント末端の同程度の表示は、これら2つのウイルス間のNS合成のレベルが同程度であったことを示唆する。qPCRデータが、ウイルス復帰変異体の出現を反映するものではないことを保証するために、miR-124 NSループに特異的なプライマーを用いて、ゲノムヘアピンが依然として存在していることを示した(図3E)。cRNAの切断は、さらなるvRNA/cRNA合成の阻害をもたらすので、同程度のcRNAレベルは、ウイルスゲノムRNAがDrosha媒介性切断の好ましい基質ではないことを強く示唆する。ゲノムRNAが、どのレベルにおいても、Droshaによってプロセシングされるかどうかを明らかにするために、cRNAに対して5'RACE(5'相補末端の迅速増幅)を行なった(図3F)。全長cRNA産物に加えて、この解析は、miR-124産生ウイルスから第二の異常なcRNA種を増幅させた。シークエンシングにより、この〜500ヌクレオチドの産物は、不均一なcRNA集団と確認された。単離されたいくつかの種には、大きい内部欠失を有する5'cRNA末端及び3'cRNA末端が含まれたが、miR-124ヘアピンの付け根で終わっている断片はなく;これは、Drosha媒介性活性というよりも、ランダムな複製中間体を示唆している。まとめると、NS cRNAに対しても(図3)、NS1の3'UTRに対しても(図6)、Drosha活性がないことから、miR-124の唯一の供給源が、NEP/NS2の合成中に産生されるラリアットであることが示される。
RNAウイルスゲノム上にmiRNAをコードすることの第二の障害は、イントロン性のヘアピンをコードするゲノム鎖が、産生されるmiRNAに対する完全な逆相補体になり、そのため、潜在的なmiRNA標的として働くということである。インフルエンザとの関連において、mRNAから産生されるヘアピンは、vRNA上でのmiRNA標的の形成をもたらす。これは、miRNAステムループに沿った不完全な結合のために、cRNA又はmRNA上では起こらない。この現象が、RNAウイルスによって産生されるmiRNAに対する重大な制限をもたらすかどうかを明らかにするために、さらなるウイルスを改変して、vRNAがmiRNA媒介性阻害を受け得るかどうかを明らかにした。これらの検討のために、遺伝子間領域をコードするセグメント8を用いて、NS1の3'UTR中、又はvRNA上のいずれかにmiR-142標的部位を導入した(図4A)。miR-142の外因性発現をmiR-142ヘアピンのプラスミド送達によって達成し、低分子RNAノーザンブロットで確認した(図4B)。このmiRNAは、miR-142標的の転写阻害を強く誘導することが既に示されているので(例えば、Brownらの文献(2007) Nat Biotechnol 25(12):1457-1467を参照されたい)、mRNA(mRNAt)及び/又はvRNA(vRNAt)をターゲッティングしたときに、NS1のレベルが影響を受けるかどうかを調べた。MDCK細胞、又はmiR-142を安定に発現するMDCK細胞を、スクランブル対照、mRNAt、又はvRNAt組換えウイルスに、0.1のMOIで18時間感染させた(図4C)。全タンパク質解析により、miR-142発現にもかかわらず、対照(ctrl)及びvRNAt組換えウイルスにおけるNS1レベルが有意差を示さないことが示された。対照的に、miR-142によるmRNA(mRNAt)のターゲッティングは、miR-142依存的な様式で、NS1の劇的な損失をもたらしたが、ウイルスNPレベルは影響を受けないままである。総合すると、これらの結果は、miRNA/RISC複合体へのゲノムRNAの接近可能性が、ウイルスの全体的な転写産物レベルに影響を及ぼすのに十分ではないことを示唆している。
最後に、ウイルスによって産生されるmiRNAがRISC複合体に積み込まれ、PTGSを媒介することができるかどうかを評価するために、miR-124によってターゲッティングされるエレメントのタンデム反復をコードする緑色蛍光タンパク質(GFP)(GFP_124)がサイレンシングされ得るかどうかを明らかにした。組換えウイルス感染及びその後のGFP_124トランスフェクションにより、miR-124発現A型インフルエンザウイルスとの関連でのみ緑色蛍光細胞の数の47.4%の減少が示された(図5A)。さらに、ウイルス感染が内在性細胞転写産物に対するPTGSを誘導し得ることを保証するために、ニューロン前駆体細胞株(CAD)を用いて、miR-124発現が以前に記載されているようなニューロン様分化を刺激し得るかどうかを明らかにした(例えば、Makeyevらの文献(2007) Mol Cell 27(3):435-448を参照されたい)。この目的のために、CAD細胞を、処理しなかったか、血清飢餓状態にしたか、又はスクランブルもしくはmiR-124産生A型インフルエンザウイルス株に感染させた(図5B)。感染の24時間後、又は血清飢餓の48時間後、細胞を固定し、共焦点顕微鏡観察で調べ、血清飢餓、又はウイルスによって産生されるmiR-124の発現が、ニューロン様形態を誘導するのに十分であることを示した。総合すると、これらの結果は、A型インフルエンザウイルスを、内在性の、完全に機能的なmiRNAをコードするように改変することができることを示している。
(6.1.3 結論)
A型インフルエンザウイルス株を、極めて大量の細胞miRNAと同程度のレベルまで合成される機能的miRNAをコードするように改変した。ウイルスによって生成されるmiRNAは、標的mRNAに対するPTGSを付与するその能力の点でその内在性対応物を模倣した。
(6.2 実施例2)
この実施例は、プラスの一本鎖細胞質ウイルスであるシンドビスウイルスを、機能的miRNAを産生するように改変することができることを示す。
mmu-プリ-miR-124-2遺伝子座(chr3:17,695,454-17,696,037)が、シンドビスウイルス(s51株)の構造遺伝子の下流の独特なBstEII制限部位に挿入され、二連の(duplicate)サブゲノムプロモーターを含んだ(図7A)。この組換え株(シンドビス-124)は、CAD細胞に感染することができ(図7B)、1.0のMOIでの感染の4〜36時間後に、ヒト線維芽細胞でプレ-miR-124とmiR-124の両方を産生する(図7C)。
(6.2.1 シンドビスによって産生されるmiR-124は、Dicerを必要とするが、エクスポーチン-5非依存的である)
エクスポーチン-5陽性293線維芽細胞、エクスポーチン-5陰性293線維芽細胞、dicer陽性不死化マウス線維芽細胞、及びdicer陰性不死化マウス線維芽細胞を、模擬対照、シンドビス-124、又はスクランブル(scbl)RNA遺伝子座をコードするシンドビスウイルス(s51株)に感染させ、プレ-miR-124をプロセシングし、miR-124を産生するこれらの細胞の能力を評価した。シンドビス-124に感染させたエクスポーチン-5陽性細胞及びエクスポーチン-5陰性細胞は、miR-124を産生した(図13、レーン9及び12)。対照的に、シンドビス-124に感染させたdicer陽性細胞のみがmiR-124を産生し、シンドビス-124に感染させたdicer陰性細胞は、miR-124を産生しなかった(図13、レーン3及び6)。したがって、シンドビスによって産生されるmiR-124は、プロセシングにDicerを必要とするが、プロセシングにエクスポーチン-5を必要とせず、これにより、シンドビスウイルスによるmiR-124の産生が核非依存的であることが示された(図13)。
(6.3 実施例3)
モデルmiRNAを用いて関心対象の遺伝子をターゲッティングするマイクロRNAを作製することができる。モデルRNAから関心対象の遺伝子をターゲッティングするような人工miRNAを作製するために、特定のパラメータに従うことができ、これには、(i)該モデルmiRNAの全体的な予測された構造を該人工miRNAにおいて保存することができること;(ii)該人工miRNAは、モデルプレ-miRNAの5'及び3'隣接配列を含むことができること;(iii)ヘアピンの突出部は、該人工miRNAと該モデルmiRNAの間で同一であることができること;並びに(iv)該人工miRNAのステムに沿った相補性は、該モデルmiRNAのステムに沿った相補性と一致することができることなどがある。
(6.3.1 ヒトNFKBIA遺伝子)
ヒトNFKBIA遺伝子(アクセッション番号NG_007571.1;遺伝子ID 番号:4792)をターゲッティングするために、図10Aに示すように、miR-30a(遺伝子ID 番号:407029)を原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.3.2 インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子)
インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子(アクセッション番号EF190975.1)をターゲッティングするために、図10Bに示すように、miR-30aを原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.3.3 ヒトEGFR遺伝子)
ヒトEGFR遺伝子(遺伝子ID:1956)をターゲッティングするために、図10Cに示すように、has-miR-585(遺伝子ID 693170)を原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.3.4 ヒトKRAS遺伝子)
ヒトKRAS遺伝子(遺伝子ID:3845)をターゲッティングするために、図10Dに示すように、has-miR-585(遺伝子ID 693170)を原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.3.5 ヒトELANE遺伝子)
ヒトELANE遺伝子(遺伝子ID:1991)をターゲッティングするために、図10Eに示すように、has-miR-585(遺伝子ID 693170)を原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.3.6 赤痢菌HepA遺伝子)
赤痢菌HepA遺伝子(アクセッション番号NC_008258.1)をターゲッティングするために、図10Fに示すように、has-miR-585(遺伝子ID 693170)を原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.3.7 SARSコロナウイルス核タンパク質遺伝子)
SARSコロナウイルス核タンパク質遺伝子(アクセッション番号AY291315.1)をターゲッティングするために、図10Gに示すように、has-miR-585(遺伝子ID 693170)を原型とした、異種RNAを設計することができる。
(6.4 実施例4)
関心対象の遺伝子をターゲッティングするエフェクターRNAを含む組換えRNAウイルスを作製することができる。
(6.4.1 セグメント化されたマイナス鎖RNAウイルス)
エフェクターRNAを産生するセグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス)を作製することができる。
(6.4.1.1 ラリアット-古典的)
古典的ラリアットを形成するエフェクターRNAを含む遺伝子セグメントを含む、セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス)を作製することができる。該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスは、(a)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第一のヌクレオチド配列;(c)スプライスドナー部位;(d)異種RNA配列;(e)スプライスアクセプター部位;(f)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第二のヌクレオチド配列;及び/又は(g)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含む遺伝子セグメントを含むことができる。
インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子(アクセッション番号EF190975.1)をターゲッティングするために、図11Aに示すように、古典的ラリアットとして機能する異種RNAを設計することができる。
(6.4.1.2 ラリアット-細胞質パッセンジャー鎖送達)
細胞質パッセンジャー鎖送達のためのラリアットを形成するエフェクターRNAを含む遺伝子セグメントを含む、セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス)を作製することができる。該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスは、(a)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第一のヌクレオチド配列;(c)スプライスドナー部位;(d)RISCから排除される関心対象の配列を有するヘアピンを形成するように設計された異種RNA配列;(e)スプライスアクセプター部位;(f)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第二のヌクレオチド配列;及び/又は(g)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含む遺伝子セグメントを含むことができる。
インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子(アクセッション番号EF190975.1)をターゲッティングするために、図11Bに示すように、細胞質パッセンジャー鎖送達のためのラリアットとして機能する異種RNAを設計することができる。
(6.4.1.3 ラリアット-核スポンジ)
核スポンジとして働くラリアットを形成するエフェクターRNAを含む遺伝子セグメントを含む、セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス)を作製することができる。該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスは、(a)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第一のヌクレオチド配列;(c)スプライスドナー部位;(d)所望のRNA標的に対する相補的RNAのタンデム反復をコードするイントロン;(e)スプライスアクセプター部位;(f)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を形成する第二のヌクレオチド配列;及び/又は(g)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含む遺伝子セグメントを含むことができる。
インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子(アクセッション番号EF190975.1)をターゲッティングするために、図11Cに示すように、核スポンジとして働くラリアットとして機能する異種RNAを設計することができる。
(6.4.1.4 リボザイム放出型)
リボザイムによって放出されるエフェクターRNAを含む遺伝子セグメントを含む、セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルス(例えば、オルトミクソウイルス)を作製することができる。該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスのゲノムは、(a)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの3'非コード領域に見られるパッケージングシグナル;(b)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子のオープンリーディングフレームを形成する第一のヌクレオチド配列;(c)11個以上のウラシル塩基のストレッチ;(d)スプライスドナー部位;(e)異種RNA配列;(e)リボザイム認識モチーフ;(f)自己触媒型RNA(例えば、デルタ肝炎リボザイム);(g)スプライスアクセプター部位;及び/又は(h)該セグメント化されたマイナス鎖の組換えRNAウイルスの遺伝子セグメントの5'非コード領域に見られるパッケージングシグナル:を含むことができる。
インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子(アクセッション番号EF190975.1)をターゲッティングするために、図11Dに示すように、リボザイムによって放出されるエフェクターRNAを含む異種RNAを設計することができる。
(6.4.2 一本鎖マイナスセンスRNAウイルス)
エフェクターRNAを産生する組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルス(例えば、ラブドウイルス科又はパラミクソウイルス科のファミリー由来のウイルス)を作製することができる。該組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルスのゲノムは、(a)該組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルスのゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)該組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルスのウイルス複製に必要とされる任意の数のウイルスセグメント;(c)その5'及び3'配列がポリメラーゼの開始及び終結の要件に従う異種RNA配列;(d)ウイルス複製に必要とされる任意の残りのウイルスセグメント;並びに/又は(e)該組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルスのゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ複製部位:を含むことができる。
ラブドウイルス科ファミリーのウイルス由来の遺伝子をターゲッティングするために、図11Eに示すように、ゲノム領域を設計することができる。
(6.4.3 一本鎖プラスセンスRNAウイルス)
エフェクターRNAを産生する組換え一本鎖プラスセンスRNAウイルス(例えば、トガウイルス科ファミリー由来のウイルス)を作製することができる。該組換え一本鎖プラスセンスRNAウイルスのゲノムは、(a)該組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルスのゲノムの5'非コード領域に見られるポリメラーゼ開始部位;(b)非構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(c)サブゲノムRNA合成のための内部認識配列;(d)構造ウイルスタンパク質のオープンリーディングフレーム;(d)サブゲノムRNA合成のための第二の内部認識配列;(e)その5'及び3'配列がポリメラーゼの開始及び終結の要件に従う異種RNA配列;並びに/又は(f)3'保存配列エレメント(CSE)及びポリA尾部を含む該組換え一本鎖マイナスセンスRNAウイルスのゲノムの3'非コード領域に見られるポリメラーゼ複製部位:を含むことができる。
トガウイルス科ファミリーのウイルス由来の遺伝子をターゲッティングするために、図11Fに示すように、ゲノム領域を設計することができる。
本明細書で引用されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物又は特許出願が引用により組み込まれていることが具体的にかつ個別に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれている。上の発明は理解の明快さの目的のために図及び実施例によって少し詳細に記載されているが、本発明の教示に照らし、添付の請求項の精神又は範囲を逸脱することなく、一定の変更及び修正をそれに加えることができることが、当業者には容易に明らかであろう。
(6.5 実施例5)
この実施例は、シンドビスウイルス由来miR-124がDGCR8非依存的な機能的マイクロRNAであること、及びシンドビス由来miR-124がDicerによって生成され、脊椎動物細胞の抗ウイルス能に利用され得ることを示す。
(6.5.1 シンドビス由来miR-124はDGCR8非依存的な機能的マイクロRNAである)
miR-124を産生するシンドビスウイルス(シンドビス-124)を実施例2に記載の通りに人工的に作製した。シンドビス由来miR-124の分子的性状を検討するために、野生型マウス線維芽細胞をこの改変ウイルスに感染させ、この感染に由来するRNAを、Dicer、DGCR8、又はIFN-I受容体成分IFNAR1のいずれかを欠く線維芽細胞を用いて行なった同一の実験に由来するRNAと比較した(図16A)。感染24時間後に、野生型マウス線維芽細胞は、特にシンドビス-124感染に由来するmiR-124の強い合成を示した。実施例2に示したように、シンドビスによって生成されるmiR-124はDicer活性に依存的であるが、シンドビス由来miR-124の合成は、マイクロプロセッサの不可欠なRNA結合成分であるDGCR8に依存的ではなかった。これは、Dicerを欠く細胞と同様に、DGCR8の欠失が内在性miRNAの完全な消失をもたらす、内在性miR-93とは対照的である。DGCR8及びエクスポーチン-5非依存的なシンドビス由来miR-124の生成が抗ウイルス特異的成分を必要とするかどうかも明らかにした。そうするために、機能的IFN-I受容体を欠く細胞をシンドビス-124に感染させた。これらの細胞は、DGCR8又はエクスポーチン-5を喪失した細胞と同様に、強いmiR-124合成を示し、観察された非カノニカルなプロセシングと細胞の自律的抗ウイルス防御との間にクロストークの形跡は見られない。
シンドビス由来miR-124が機能的であるかどうかを明らかにするために、緑色蛍光タンパク質(GFP)が、miR-124の逆相補体のタンデム反復を有する3'UTRを含み(GFP_miR-124t)、それにより、それがPTGS活性の影響を受けやすくなっている人工コンストラクトを構築した(図16B)。GFP_miR-124tのトランスフェクションは、任意の他の処理の非存在下で強いGFP発現をもたらした。対照的に、p124は、GFP_miR-124tのPTGSをウェスタンブロット検出未満のレベルにまで誘導した。さらに、シンドビスウイルスによる処理が、アルファウイルスの一般的な属性である、宿主タンパク質合成の全般的な減少をもたらしたのに対し、この効果は、シンドビス由来miR-124の産生によって有意に増強され、これにより、ウイルスによって産生されるmiR-124がPTGSを誘導することができることが示唆された。
したがって、シンドビス由来miR-124はDGCR8非依存的な機能的マイクロRNAであり、これは、A型インフルエンザウイルスによって産生されるmiR-124とは対照的である。該A型インフルエンザウイルスによって産生されるmiR-124はDGCR8に依存するが、それは、A型インフルエンザウイルスが核型であるという事実の結果である(例えば、Varbleらの文献(2011, RNA Biology 8:190-194)を参照されたい)。
(6.5.2 シンドビス由来miR-124は抗ウイルス能に利用され得る)
多くの方法でシンドビスウイルスによって産生されるDgcr8非依存的、Dicer依存的低分子RNAのプロセシングは、無脊椎動物の抗ウイルス応答を模倣するので、シンドビス由来miR-124がDicerによって生成され、脊椎動物細胞の抗ウイルス能に利用され得るかどうかを調べた。不死化ヒト線維芽細胞における弱毒化の形跡は認められなかったが、高いMOIで行なわれた感染に応答したこれらの細胞における迅速な複製が、この表現型を目立たなくした可能性がある。したがって、低いMOIでの野生型(WT)、Dcr1-/-、及びIfnar1-/-線維芽細胞におけるSV及びシンドビス-124のウイルス複製特性(図33A)を比較した。SV感染とシンドビス-124感染は両方とも、感染48時間後までに、WT細胞で高い力価にまで増幅されたが、シンドビス-124は、〜2logの弱毒化を示した(p=0.008)。SVとシンドビス-124の間のレベルは、Dicerノックアウト細胞では有意差がなかったが(p=0.164)、それでも、IFN-Iシグナリングの非存在下で1logの差を維持したので(p=0.015)、この弱毒化は、RdRpに対する立体障害の結果でも、PAMP産生の増加の結果でもなかった。
miR-124を用いてウイルスを直接ターゲッティングすることができることを示すために、線維芽細胞を、ベクターのみ又はp124でトランスフェクトし、その後、これらの細胞を模擬処理したか、又はSVもしくはシンドビス-124に感染させた(図33B)。プラスミド由来miR-124の発現は、SVのコアレベルに影響を及ぼさなかったが、シンドビス-124のタンパク質は5.8倍減少した。ゲノム上のmiR-124標的の平均自由エネルギー(mfe)は、わずか-24.9kcal/molであり、かつ7-nt以上のシード配列を含まないので、miR-124によるシンドビス-124のターゲッティングは、マイナス鎖(-)ゲノムのレベルで生じると見られる(図33C)。これは、完全なmiR-124標的及び-45.1kcal/molのmfeを有する(-)ゲノムと対照的である。
(6.6 実施例6)
この実施例は、人工マイクロRNA産生ベクターが、標準的なsiRNAトランスフェクションと比較して同程度のレベルのmiRNAを生成させることができるという事実に基づいて、人工マイクロRNAが、特異的遺伝子発現を中断するのに従来型のsiRNAと同じぐらい効果的であることを示す。
実施例3に示したように、以下の特定のパラメータに従ってモデルmiRNAを用いて、関心対象の遺伝子をターゲッティングするマイクロRNAを作製することができる。別の例として、ヒトSTAT1遺伝子(遺伝子ID:6772;アクセッション番号GU211348.1)をターゲッティングするために、図17A〜Bに示すように、miR-124を原型とした、異種RNAを設計することができる。図17A(配列番号:45)に示す成熟amiRNAは、ヒトSTAT1の位置478〜497に結合する。
STAT1 siRNAを産生するように改変されたヘアピン(STAT1 amiRNAと呼ぶ)を細胞レベルで発現させることができるかどうかを明らかにするために、ヒト肺胞細胞(A549)を模擬トランスフェクトするか、又はSTAT1 siRNAもしくはSTAT1 amiRNAのいずれかでトランスフェクトし、その後、ノーザンブロット解析を行なって、STAT1 siRNA(又は対照としてのU6 RNA)について調べた。図17Cに示すように、STAT1 siRNA又はSTAT1 amiRNAの両方の発現が検出され、各々の場合におけるSTAT1 siRNAの発現が示された。
次に、人工STAT1 siRNA(STAT1 amiRNA)がSTAT1遺伝子発現を中断するのに効率的であるかどうかを明らかにするために、ヒト肺胞細胞(A549)を、STAT1 amiRNAを発現するプラスミド又は野生型miR-24を発現するプラスミドで形質転換し、100ユニット/mLの濃度のユニバーサルインターフェロンβ(PBL Biomedical)の存在下及び非存在下で12時間培養した。その後、ウェスタンブロット解析を行ない、STAT1タンパク質発現(又は対照としてのβ-アクチン)について調べた。図17Dに示すように、人工STAT1 siRNA(STAT1 amiRNA)は、IFN-Iの存在下と非存在下の両方でのSTAT1タンパク質発現の不在によって示されるように、STAT1遺伝子発現を効率的にノックダウンした。
(6.7 実施例7)
この実施例では、ウイルスにおけるmiRNAの核非依存的合成のインビボの証拠を示し、また、この核非依存的経路の分子成分はカノニカルなmiRNA合成と比較できるので、それらを検証している。
(6.7.1 材料及び方法)
(6.7.1.1 低分子RNAノーザンブロット解析及び大規模シークエンシング)
低分子RNAノーザンブロット及びプローブ標識を以前に記載されているように行なった(Perezらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 11525-11530(2010));並びにPall及びHamiltonの文献(Nat Protoc 3, 1077-1084(2008))を参照されたい)。使用したプローブには、以下のものが含まれた:
大規模シークエンシング解析のために、miR-124特異的低分子RNAライブラリーを、以前に記載されているように作製した(Pfefferらの文献(Nat Methods 2, 269-276(2005))を参照されたい)。miR-124を発現するシンドビスウイルス(SV)、VSV、及びA型インフルエンザウイルス(IAV)に感染した試料由来の全RNAを感染16時間後に抽出し、低分子RNA種を12%変性トリス-尿素ゲル上で分離した。その後、低分子RNA種を、以前に記載されているように単離し、精製し、及び増幅させた(Shapiroらの文献(RNA 16, 2068-2074(2010))を参照されたい)。その後、試料をIllumina GA llx hiseq 2000シークエンシング装置にかけて、プリ-miR-124-2遺伝子座にマッピングした。
(6.7.1.2 細胞質miR-124合成のためのベクター設計)
miR-124を発現するシンドビス及びA型インフルエンザウイルスの作製は別所に記載されている(Varbleらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 11519-11524(2010));Shapiroらの文献(RNA 16, 2068-2074(2010))を参照されたい)。プリ-miR-124ゲノムセグメント(chr3:17,695,454-17,696,037)を発現するVSV を作製し、以前に記載されているようにレスキューした(Stojdlらの文献(Cancer Cell 4, 263-275(2003))を参照されたい)。同様に、プリ-miR-122(ゲノム座標)を、以前に記載されているような人工サブゲノムプロモーターにクローニングすることによって、SV122を作製した(Shapiroらの文献(RNA 16, 2068-2074(2010))を参照されたい)。GFPmiR-124をプラスミドpEGFP-C1(ジェンバンクアクセッション# U55763)から作製した。プリ-miR-124の3'非翻訳領域を、mmu-miR-124-2マウス遺伝子座(chr3:17,695,454-17,696,037)を用いて作製し、それを、pCR TOPO 2.1(Invitrogen)に連結し、XhoI及びBamH1を用いてサブクローニングした。プリ-miR-124のpCR TOPO 2.1クローンを、T7プライマーとM13Rプライマーを用いてPCR増幅し、PCR断片としてpCAGGs T7ポリメラーゼとともにトランスフェクトした。
(6.7.1.3 細胞培養)
Dicer1-/-線維芽細胞及びArgonaute2-/-線維芽細胞は、Alexander Tarakhovsky(Rockefeller University)及びDonal O'Carroll(EMBL, Monterotondo, Italy)から入手した(Perezらの文献(Nat Biotechnol 27, 572-576(2009));及びO'Carrollらの文献(Genes Dev 21, 1999-2004(2007))を参照されたい)。RNasenfl/fl線維芽細胞は、Dan Littman(NYU)から入手し(Chongらの文献(Genes Dev 24, 1951-1960(2010)を参照されたい)、ピルビン酸塩を補充した培地中で培養した。Dgcr8fl/fl線維芽細胞は、Robert Blelloch(UCSF)から入手した。TRBP2-/-線維芽細胞は、記載の通りにAnne Gatignol(McGill University)から入手した(Zhongらの文献(Nat Genet 22, 171-174(1999))を参照されたい)。PACT-/-線維芽細胞は、Ganes C. Sen(Cleveland Clinic)から入手した(Patelらの文献(EMBO J 17, 4379-4390(1998))を参照されたい)。特に示さない限り、細胞は全て、10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中で培養された。Flox化された細胞を、GFP又はGFP_Cre(それぞれ、Vector biolabs #1060及び#1700)を発現するアデノウイルスに、300及び500のMOIで感染させ、その後、アデノウイルス感染5日後に、記載の通りに処理した。細胞を洗浄し、それらを無血清培地とともにインキュベートすることによって、血清飢餓実験を行なった。細胞分裂の消失を確認するために、細胞を10um CFSE(molecular probes)とともに37℃で10分間インキュベートした。CFSEを25%BSAでクエンチし、洗浄し、10%血清を含むDMEM、又は10%血清を含まないDMEMのいずれかの中に再プレーティングした。CFSE標識の24及び48時間後に、細胞を固定し(BD FACS溶解溶液)、FACS Calibur(BD)で操作し、Flojo(Treestar)を用いて解析した。ルシフェラーゼによって測定される、mIR-124の転写後サイレンシングを、以前に記載されているように、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞で行なった(Perezらの文献(Nat Biotechnol 27, 572-576(2009))を参照されたい)。簡潔に述べると、細胞を、3'UTR内にscp1を含むルシフェラーゼでトランスフェクトし、WT又はmiR-124発現型のいずれかのSV、VSV、及びIAVに、それぞれ、3、0.5、及び5のMOIで感染させた。感染12時間後、細胞を溶解させ、製造業者の指示通りに解析した。全てのルシフェラーゼ値をウミシイタケに対して正規化し、3つ1組で行なった。124発現ウイルスからのルシフェラーゼ発現をWTウイルス感染と比較した。GFPの転写後サイレンシングのために、BHK細胞を、以前に記載されているような、miR-124によってターゲッティングされるGFP(GFP_124t-3'UTR)(Varbleらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 11519-11524(2010))を参照されたい)でトランスフェクトし、トランスフェクションの2時間後に、miR-124を発現するプラスミド(p124)でコトランスフェクトするか、又はそれぞれ1、3、5のMOIで、SV124、VSV124、及びIAV124に感染させるかのいずれかにした。感染16時間後、タンパク質を抽出し、ウェスタンブロットで解析した。
(6.7.1.4 インビボ感染)
IFNαR1-/-マウスにイソフルラン(isofluorane)で麻酔をかけ、2×105pfuのSV124に静脈内(i.v)感染させたか、又は2×107pfuのVSV124もしくは1×107pfuのIAV124に鼻腔内(i.n.)感染させた。VSVについては感染後(p.i.)1日目に、また、SV及びIAVについては感染後2日目に、肺を摘出した。
(6.7.1.5 ウェスタンブロット解析、免疫沈降、及びqPCR)
ウェスタンブロット解析を以前に記載されているように行なった(Perezらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 11525-11530(2010))を参照されたい)。使用した抗体は、以下のものを含んでいた:抗汎アクチン(NeoMarkers, Freemont CA)、抗GFPポリクローナル(Santa Cruz Biotechnologies sc-73556sc)、抗SVコア(ATCC, VR-1248AF)、抗VSV G(Genscript A00199)、抗Flag(sigma)、及び抗IAV NP(BEI Resources)。ブロットを、1:5000のウサギ又はマウス二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。Immunobilon Western Chemiluminescent HRP Substraight(Millipore)を製造業者の指示通りに用いた。免疫沈降を293細胞で行なった。細胞を12μgのflagタグ化Ago2又はflagタグ化GFPのいずれかでトランスフェクトし、その後、野生型又はmiR-124発現型のいずれかのSV、VSV、又はIAVに感染させた。感染12時間後にタンパク質抽出物を回収し、プロテイン-G-PLUSアガロース(Santa Cruz Biotechnologies)及び10μgの抗Flag(Sigma)を用いて4℃で12時間免疫沈降した。ビーズを洗浄し、RNAをTRIzol(Invitrogen)で抽出した。KAPA SYBR FAST qPRCマスターミックス(KAPA Biosystems)を用いて、cDNA試料のqPCRを行なった。PCR反応をMastercycler ep realplex(Eppendorf)で行なった。アクチンを内在性ハウスキーピング遺伝子として用い、デルタデルタサイクル閾値(ΔΔCT)値をアクチンと比べて反復して計算した。値は、模擬感染試料と比べた倍率変化を表す。
(6.7.1.6 統計解析)
両側独立スチューデントのT検定を用いて、表示した試料に対して統計解析を行なった。p値が0.05未満である場合、データを有意とみなす。
(6.7.2 結果)
(6.7.2.1 細胞質媒介性のmiRNA合成)
実施例1及び2は、核型マイナスセンスRNAウイルスであるA型インフルエンザウイルス(IAV)、及び細胞質型プラスセンスRNAウイルスであるシンドビスウイルス(SV)の、成熟した機能的miRNAを産生する能力を示している。両方の実施例において、ウイルスの非コード領域へのmmu-miR-124-2遺伝子座の挿入(図19A)は、ウイルス複製と合致する、miR-124合成をもたらした(図18A及び図19B)。核マイクロプロセッサに接近できないにもかかわらず、細胞質型プラスセンスRNAウイルスがmiRNAを産生することができたことを考慮して、これらの結果をマイナス極性の別の細胞質型RNAウイルスにまで拡大することができるかどうかを明らかにしようとした。この目的のために、糖タンパク質(G)遺伝子とラージポリメラーゼ(L)遺伝子の間に挿入された独立のウイルス転写産物としてmmu-mir124-2遺伝子座をコードするように、水疱性口内炎ウイルス(VSV)を改変した(VSV124)(図19A)。miRNA遺伝子座の挿入は、組換えウイルスのレスキューを妨げず、IAV124及びSV124と同様に、VSV124感染は、強いmiR-124合成をもたらした(図18A)。ノーザンブロット解析から、検出可能なレベルのプレ-miR-124及び成熟miR-124が明らかになり、両産物とも、プラスミド媒介性のmiR-124の核発現から観察される同じ〜60nt産物及び20nt産物へと移動した(図19C)。SV及びVSVに由来するプリ-miR-124転写産物は、それぞれのウイルスポリメラーゼによって媒介される5'キャップと3'ポリA尾部の両方を含むので(Lichtyらの文献(Trends Mol Med 10, 210-216(2004));及びJoseらの文献(Future Microbiol 4, 837-856(2009))を参照されたい)、これらの修飾が成熟miRNAの生成に必要であるかどうかを調べた。この目的のために、mmu-miR-124-2遺伝子座をT7プロモーターの上流に挿入し、miR-124発現を観察することができるかどうかを明らかにした(図18B)。T7ポリメラーゼは、キャッピング活性もポリA活性も持たないので、miR-124のプロセシングはいずれも、これらの修飾とは無関係である。驚くことに、これらの解析から、細胞質のT7によって生成される一次転写産物に由来するプレ-miR-124とmiR-124の両方の証拠が明らかになった。さらに、このプロセシングは、VSV124及びSV124に由来するmiR-124と同様に、プラスミド由来miR-124(p124)と区別不可能であった(図18B)。これらの結果は、一次miRNAの細胞質プロセシングが、ウイルス感染に特有のものではなく、また、それが、5'キャップも3'ポリA尾部も必要としないことを示唆している。
(6.7.2.2 細胞質由来miRNAのインビボ産生)
多様なRNA源からのインビトロでのプリ-miRNA細胞質プロセシングの証拠を考慮して、この活性をインビボで再現することができるかどうかを調べた。先天的な抗ウイルス応答とは独立に、ウイルスによって誘導されるmiRNA合成を直接比較するために、I型インターフェロン(IFN-I)シグナリングが欠損したマウスを用いた(Mullerらの文献(Science 264, 1918-1921(1994))を参照されたい)。この目的のために、IFNα受容体I(IfnαR1)ノックアウトマウスをSV124、VSV124、又はIAV124に感染させ、感染後、miR-124のレベルを測定した。組換えウイルスは、感染動物の肺内で高レベルのmiR-124を産生した(図20)。総合すると、このインビボデータは、細胞質miRNA合成が正真正銘の生物学的過程であり、形質転換細胞に限定される属性ではないことを裏付けている。
(6.7.2.3 細胞質由来miRNAはスター鎖蓄積を示す)
細胞質由来miR-124のシークエンシング特性を規定するために、野生型(WT)マウス線維芽細胞を第6.7.2.2節に記載の3つのウイルスベクターの各々に感染させ、低分子RNA画分を大規模シークエンシングで解析した(図21A)。捕捉した低分子RNAを583ntのウイルス由来プリ-miR-124と整列させると、この転写産物に対応する〜400,000個の特異的読取物が示された。驚くほどのことではないが、各々の感染について、最も豊富な種は成熟miR-124産物に対応し、細胞でプロファイリングされた全miRNAの4%ものレベルを示した。miR-124発現は、脳に限定されているので(Makeyevらの文献(Mol Cell 27, 435-448(2007))を参照されたい)、模擬感染細胞からのレベルは、プロファイリングされた全miRNAの0.001%未満に相当した。ウイルス由来miR-124の全体的な豊富さに加えて、低分子RNAプロファイリングの別の注目すべき特徴は、スター鎖RNA(「miR-124*」;図21A)の蓄積であった。細胞質ウイルスにのみ限定されるが、大規模シークエンシングによって捕捉されるスター鎖の量は、プレ-miR-124に対応する全RNAの40%にも相当した(図21B)。この数は、核由来miRNAから観察される数と全く対照的であり、該核由来miRNAでは、(miR-124が大量に発現されている)小脳由来の内在性レベルが、全プレ-miR-124読取物の0.2%にしか相当しない。スター鎖RNAのこの低いレベルは、核由来IAV124によっても示された。miR-124及びmiR-124*の蓄積はノーザンブロットでも示され、これにより、本発明者らの大規模シークエンシング解析が裏付けられ、また、細胞質プリ-miR-124プロセシングに由来するスター鎖の顕著な産生及び安定性がさらに立証された(図22)。最後に、これらの条件の各々から得られたmiR-124配列を比較すると、細胞質プロセシングが、驚くほど高い精度で生じ、5'不均一性をほとんど示さないことが示された(図21B)。総合すると、スター鎖の蓄積が、細胞質由来ウイルスmiR-124合成の高レベル産生に独特な属性を提供するのに対し、プロセシングの精度は、低分子RNAプロセシング機構の一定レベルの冗長性を強く示唆する。
(6.7.2.4 細胞質由来miR-124はAgo2と関連してPTSを媒介する)
細胞質miRNAプロセシング時のmiRNAスター鎖の存在の増加は、RISCへの積み込み及びその後の二重鎖分離の欠如を示し得るので、ウイルス由来細胞質miRNAがAgo2と関連するかどうかを調べた。模擬処理したか、又はmiR-124発現ウイルスに感染させた、エピトープタグ化したAgo2又は緑色蛍光タンパク質(-GFP)を発現する細胞を免疫沈降に用い、関連するRNAをノーザンブロットで解析した(図23A及び24)。ウイルスによって産生されるmiR-124は、感染したエピトープタグ化GFP発現細胞の免疫沈降からは検出されなかったが、Ago2は、細胞内起源とは無関係に、miR-124と関連していた(図23A)。ウイルスによって産生されるmiR-124のPTS活性を調べるために、内在性miR-124標的をコードするScp1の3'UTRを含むホタルルシフェラーゼを発現する細胞(Makeyevらの文献(Mol Cell 27, 435-448(2007));及びVisvanathanらの文献(Genes Dev 21, 744-749(2007))を参照されたい)を組換えmiR-124産生ウイルスに感染させ、そのもとの対応物と比較した。SV124及びVSV124の感染は、ルシフェラーゼ転写産物の有意な抑制を付与し、両方とも〜60%の抑制を示した(図23B)。驚くことに、IAV媒介性のmiR-124送達だけは標的発現の減少傾向を示したが、統計的有意性には達せず、IAV感染とルシフェラーゼコンストラクトの発現の複雑な動力学を反映する結果となった(図23B)。IAV124がルシフェラーゼ発現を有意に抑制することができないことを考慮して、機能性を試験する第二のアッセイを行なった。(3'UTR に4つの完全な標的部位を含む)miR-124によってターゲッティングされるGFPを発現する細胞をmiR-124産生ウイルスに感染させ、模擬感染又はプラスミド由来miR-124と比較した。ルシフェラーゼに基づくデータと一致して、SV124とVSV124は両方ともGFPの劇的なサイレンシングを誘導したのに対し、IAV124は、プラスミド由来miRNAと同様に、GFPレベルの〜50%低下を示した(図23C)。総合すると、これらの結果は、細胞質由来miRNAが、PTSを媒介する効果的な戦略であることを示唆している。
(6.7.2.5 細胞質miRNAプロセシングはmiRNA特異的ではない)
細胞質miRNAプロセシングの解析は、mmu-miR-124-2に限定されるものであったので、mmu-miR-122を発現する第二の組換えシンドビスウイルス(SV122)を、以前に記載されているように人工的に作製した(Shapiroらの文献(RNA 16, 2068-2074(2010))を参照されたい)。ウイルスレスキュー及びその後のヒト線維芽細胞での感染から、通常肝細胞に限定されているmiRNAであるmiR-122の強い発現が明らかになり(Joplingらの文献(Science 309, 1577-1581(2005))を参照されたい)、肝細胞に由来する内在性プロセシングとの明らかな違いは示されなかった(図25A)。mmu-miR-124及びmmu-miR-122の合成は、細胞質miRNAプロセシングが前駆体miRNAのサブセットに特有のものではないことを強く示唆している。
(6.7.2.6 細胞質miRNAプロセシングは細胞周期非依存的である)
miR-124とmiR-122の両方の細胞質合成を示するためにシンドビスウイルスを用いたので、また、全種類のmiRNA種(すなわち、プリ-、プレ-、及び成熟miR-124)は、SV124感染細胞からしか検出することができないことを考慮して、このモデルをさらなる生化学的研究のために選んだ。不死化細胞でのSV媒介性miR-124プロセシングの正確さを考慮して、迅速な分裂が、細胞質プリ-miR-124に核マイクロプロセッサへのアクセスを提供し、プレ-miR-124の生成をもたらし得るという仮説が立てられた。このモデルについて取り組むために、細胞周期を血清飢餓により停止させ、これがmiR-124産生を終わらせるかどうかを確かめた。完全な停止を保証するために、細胞をカルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル(CFSE)で処理し、処理の24及び48時間後(hpt)に、フローサイトメトリーでモニタリングし、分裂の完全な阻止を示した(図26A)。非分裂細胞へのSV124感染は、接種サイズの増加にもかかわらず、ウイルス複製レベルの低下を確かにもたらしたが(図26B)、miR-124種の相対的レベルは影響を受けなかった(図25B)。これらのデータは、細胞分裂が細胞質媒介性miRNA合成に必要ではないことを示唆する。
(6.7.2.7 シンドビスによって産生される低分子RNAは、dicer依存的あるが、TRBP2-、PACT-、及びAgo2-非依存的である)
カノニカルなmiRNAプロセシング機構の細胞質成分がシンドビスによって産生される低分子RNAの合成に必要であるかどうかを明らかにするために、(それぞれ、Dicer、TRBP2、PACT、及びAgo2をコードする)Dicer1、Tarbp、Prkra、及びEif2c2が破壊された細胞を感染させて、感染後にmiR-124レベルが影響を受けるかどうかを明らかにした(図27A〜D)。Dicerの発現がSVによって生成されるプレ-miR-124の形成に影響を及ぼすかどうかを明らかにするために、Dicer1欠損細胞を高い感染多重度(MOI)で感染させて、合成時に蓄積する目に見えるRNA副産物を調べた。SV124感染Dicer1ノックアウト細胞のノーザンブロット解析から、十分なレベルのプリ-miR-124及び60ntのプレ-miRNAが示され、WT細胞と比較してmiR-124だけが存在しなかった(図28A)。プレ-miR-124のレベル及びサイズは、SV124感染WT細胞で産生されるものと同程度であり、これにより、Dicerが、シンドビスによって産生される低分子RNAのプリ-miRNA切断に関与しないことが示唆された(図28A)。細胞質miRNAプロセシングのTRBP2依存性を評価するために、Tarbpノックアウト細胞をSV124に感染させた。ウイルス複製の減少に対応して、SV124感染時のプリ-miR-124のレベルは低下したが(図27B)、このプリ-miR-124とmiR-124の相対比は、感染WT細胞と類似しており、TRBP2非依存性が示唆された(図28B)。同様に、別のdsRNA結合タンパク質であるPACTを欠く細胞におけるSV124感染からも、miR-124産生が消失しないことが示された(図28C)。
Dicer非依存的なmiR-451生成におけるAgo2の役割を示す以前の結果(Chendrimadaらの文献(Nature 436, 740-744(2005));Cheloufiらの文献(Nature 465, 584-589(2010));及びYangらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 15163-15168(2010))を参照されたい)、並びにその細胞質局在を考慮して、miR-124が切断のための構造的要件に適合しないという事実にもかかわらず、Ago2がシンドビスによって産生される低分子RNAの産生に役割を果たすかどうかを調べた(Cheloufiらの文献(Nature 465, 584-589(2010));Cifuentesらの文献(Science 328, 1694-1698(2010));及びYangらの文献(Proc Natl Acad Sci USA 107, 15163-15168(2010))を参照されたい)。この目的のために、Ago2が欠損している細胞を感染させて、ウイルス誘導性の細胞質miR-124合成を野生型細胞の細胞質miR-124合成と比較した。これらのデータは、ウイルス複製のレベルが等しいにもかかわらず、プロセシングに変化がないことを示した(図28D及び図27D)。総合すると、これらの結果は、Dicerが細胞質miRNAプロセシングの重要な成分であり、dsRNA結合タンパク質PACTとTARBPの間で重複する役割があり得ることを示唆する。
(6.7.2.8 Droshaの、細胞質での、マイクロプロセッサ様機能の証拠)
SV124の細胞質局在を、Dicer非依存的な様式で産生されるプレ-miRNAの存在と併せて考慮して(図25A)、60ntのプレ-miRNAの産生に関与するヌクレアーゼを調べた。そうするために、Dgcr8欠損細胞及びDrosha欠損(Rnasen-/-)細胞におけるSV124低分子RNA合成を特徴付けた(図29)。これらの線維芽細胞由来細胞株は両方とも条件的ノックアウトであるので、細胞をまず、GFP又はGFP-Creのどちらかを発現する組換え複製欠損アデノウイルスベクター(それぞれ、AdV_GFP及びAdV_Cre)で処理した。Rnasenfl/fl細胞及びDGCR8fl/fl細胞の処理の6日後、ベクター依存的GFP発現の消失に加えて、内在性miR-93の完全な消失が確認され、Dgcr8及びDrosha機能の完全な消失が示唆された(図29A)。さらに、miRNAの半減期を考慮すると、このデータは、Drosha機能とDGCR8機能の両方が、早くも感染2日後に失われたことを示唆する。SV124接種の時点での完全な消失を保証するために、細胞をベクター処理の5日後に感染させた。Dgcr8の消失にもかかわらず、SV124低分子RNA合成は維持されたが、Droshaの消失はヴィトロン(vitron)合成の阻害をもたらした(図29A〜B)。しかしながら、qPCR解析及びプリ-miR-124レベルから、Dgcr8欠失はSV124転写産物レベルに影響を及ぼさないが、Droshaの欠失は複製の有意な消失をもたらし、nsP1レベルは、2桁を上回る減少を示すことが示された(図29B及び図30)。したがって、これらの複製レベルが検出可能なmiRNAを産生するのに十分であるかどうかを明らかにするために、野生型線維芽細胞を模擬処理するか、又は同じMOIでSV124に感染させ、感染の0、2、4、8、12、及び24時間後にmiRNA種を定量した(図29C)。シンドビス由来のプリ-、プレ-、及び成熟miR-124の産生は、早くも感染4時間後に検出され、感染24時間後に最大レベルに達した。プリ-miR-124及び成熟産物の定量から、検出可能なmiR-124のレベルをプリ-miR-124レベルに基づいて予測し得ることが明らかになった(図29D)。この標準曲線は、Droshaの非存在下で検出されるプリ-miR-124レベルが、検出可能なレベルのmiR-124を生じさせるのに十二分であり、したがって、プレ-miR-124又はmiR-124のいずれかの不在によって、シンドビス低分子RNA産生はDrosha依存的であるという結論が導かれることも示している。これらのデータは、siRNAによって媒介されるDroshaのノックダウンが、不完全ではあるが、組換えダニ媒介性脳炎ウイルスによって産生されるmiRNAの機能性に影響を及ぼすことを見出した報告と一致する(Rouhaらの文献, Nucleic Acids Res 38, 8328-8337(2010)を参照されたい)。総合すると、これらのデータは、Droshaが、独特なdsRNA結合タンパク質とともにではあるが、細胞質内で機能して、細胞質プリ-miRNAを切断することができることを示唆している。
(6.7.3 結論)
この実施例は、成熟miRNAの生成のための新規の細胞質プロセシング機構を検証しており、かつ低分子RNA媒介性治療薬のベクターに基づく送達戦略を示している。
(6.8 実施例8)
この実施例は、マイクロRNAを、ウイルスベクターを用いて、関心対象の特定の組織に送達することができることを示す。
(6.8.1 A型インフルエンザウイルス)
実施例1に記載の通りに、A型インフルエンザウイルス(IAV)を改変して、miR-124を発現させた(IAV124)。Balb/Cマウスを(IAV対照で)模擬処理するか又は1×104プラーク形成単位のIAV124に鼻腔内感染させるかのいずれかにした。感染1、3、及び5日後に、全肺を該マウスから摘出し、摘出した肺からの全RNAをノーザンブロットで解析し、miR-124発現、及び対照としてのmiR-93発現を調べた。
図31に示すように、IAVは、miR-124をマウスの肺に送達し、マイクロRNAは、IAVの指向性と一致して、感染の時間経過とともに肺に蓄積し続けた。
(6.8.2 水疱性口内炎ウイルス)
実施例7に記載の通りに、水疱性口内炎ウイルス(VSV)を改変して、miR-124を発現させた(VSV124)。Balb/Cマウスを(VSV対照で)模擬処理するか又は1×104プラーク形成単位のVSV124に鼻腔内感染させるかのいずれかにした。感染2日後に、心臓、脾臓、及び肝臓を該マウスから摘出し、摘出した器官からの全RNAをノーザンブロットで解析し、miR-124発現、及び対照としてのmiR-93発現を調べた。
図32に示すように、検出されたmiRNAレベルは、低分子RNA合成とVSV複製の相関を示している。
(6.8.3 結論)
この実施例は、ウイルスベクターを用いて、マイクロRNAを複数の組織にインビボで送達することができることを示す。
本明細書で引用されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物又は特許出願が引用により組み込まれていることが具体的にかつ個別に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれている。上の発明は理解の明快さの目的のために図及び実施例によって少し詳細に記載されているが、本発明の教示に照らし、添付の請求項の精神又は範囲を逸脱することなく、一定の変更及び修正をそれに加えることができることが、当業者には容易に明らかであろう。