JP2013526938A - 創傷の保護 - Google Patents

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Abstract

創傷を被覆する方法および装置を開示する。この創傷被覆材は、第1の表面と、弛緩動作モードにおいて第1の表面から弛緩距離だけ離れた位置に位置するさらなる表面とを有する透過層を含む。複数のスペーサ要素が、第1の表面とさらなる表面との間を延びており、これらのスペーサ要素は、押付け動作モードにおいて、第1の表面とさらなる表面が、互いに弛緩距離よりも短い圧縮距離だけ離れた位置に位置するように配置可能である。

Description

本発明は、創傷部位を保護する方法および装置に関する。特に、本発明は、陰圧創傷閉鎖(TNP)療法の実施時に使用することができ、たとえば患者が動いたために加えられる圧縮力またはせん断力によって治癒しつつある創傷を傷つけるのを妨げるのを助ける緩衝体として働く創傷被覆材に関するが、それに限定されるわけではない。
陰圧創傷閉鎖(TNP)療法を、TNP療法の効果を増強することを目的とした他の治療プロセスと一緒に創傷に適用する装置およびその使用法を提供することに関する多数の従来技術が利用可能である。そのような従来技術の例には、以下に列挙し簡単に説明する従来技術が含まれる。
TNP療法は、組織の浮腫を抑制し、血流を促進し、肉芽組織の形成を刺激し、余分な滲出液を除去することによって創傷の閉鎖および治癒を助け、細菌負荷を低減させ、したがって、創傷の感染を抑制することができる。さらに、TNP療法では、創傷が外部からくずされることが少なく、創傷がより早く治癒する。
ある従来技術の装置および方法は、使用される装置が、複雑であり、装置の操作および維持に関する専門知識を有する人を必要とし、また、比較的大型で重く、たとえば患者によって病院環境の外部に容易に移動できるように構成されていないので、概して入院患者にしか適用できない。
たとえば、創傷が比較的軽度であり、連続的な入院を必要としないが、それにもかかわらず、TNP療法を長期間適用すると有益である一部の患者は、持ち運びおよび維持が容易なTNP治療装置を利用して家庭または職場で治療を行うことができる。このことを実現するために、患者が持ち運びベルトまたはハーネスに取り付けることのできる持ち運び可能なTNP治療ユニットを提供することが知られている。このようにして創傷部位に陰圧を加えることができる。
TNP療法の実施時には、持ち運び可能または持ち運び不能な治療ユニットが創傷部位で陰圧を発生させる。空気と創傷滲出液物質を含む流体を創傷部位から除去したときには、この流体を創傷部位から離れた場所に何らかの方法で収集しなければならない。従来の周知の治療ユニットでは、創傷滲出液物質の収集および格納は通常、治療ユニットのポンプユニットに連結された廃棄物キャニスタによって行われる。しかし、キャニスタを使用すると、治療ユニット装置自体がかなり重くなり、かつ製造費が高くなる可能性がある。また、創傷滲出液が収集されるキャニスタまたはキャニスタ内のバッグを交換するのは時間がかかりかつ比較的不衛生なプロセスである。
陰圧創傷療法を受けている患者にときどき事故が起こることがあることが理解されよう。そのような事故によって、創傷を覆っている被覆材に短期的または長期的な力が加えられることがある。あるいは、患者が動くことによって、患者自身および治癒しつつある創傷を覆っている任意の被覆材が外部の物体に接触することがある。そのような場合、圧縮力または横力が発生する可能性がある。そのような力は、創床をくずすことがあり、それによって創傷部位を傷つける恐れがある。懸念される特定の原因として、これは植皮創傷の治療時に起こる。そのような条件の下では、横力が、治癒しつつある植皮領域を全体的にくずすか裂く恐れがある。
本発明の目的は、上述の問題を少なくとも部分的に軽減することである。
本発明のある実施形態の一目的は、創傷部位において陰圧を発生させて創傷を閉鎖させ治癒させるのを助ける方法において、治療中に創傷部位から吸い出された創傷滲出液が収集され創傷被覆材に格納される方法を提供することである。
本発明のある実施形態の一目的は、創傷被覆材に加えられた圧縮力を吸収するための容量が増大された創傷被覆材を提供することである。
本発明のある実施形態の一目的は、創傷被覆材の外面からのせん断力が創傷部位における対応するせん断力に変換されるのを妨げるための容量が増大された創傷被覆材を提供することである。
本発明のある実施形態の一目的は、被覆材が陰圧を受けるときでも創傷部位表面に垂直な方向および平行な方向に「たわむ」ことのできる創傷被覆材を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、創傷部位を保護する創傷被覆材であって、
第1の表面および弛緩動作モードにおいて第1の表面から弛緩距離だけ離れた位置に位置するさらなる表面を備える透過層と、
第1の表面とさらなる表面との間を延び、押付け動作モードにおいて、第1の表面とさらなる表面が互いに弛緩距離よりも短い圧縮距離だけ離れた位置に位置するように配置可能である複数のスペーサ要素とを備える創傷被覆材が提供される。
本発明の第2の態様によれば、創傷部位を保護する方法であって、
透過層を備える創傷被覆材を創傷部位の上方に配置することと、
創傷被覆材に対する力に応答して、透過層の第1の表面とさらなる表面との間を延びる複数のスペーサ要素を変位させることとを含み、
スペーサ要素を変位させたときに第1の表面とさらなる表面との間の距離が短くなる方法が提供される。
ある実施形態は、陰圧条件の下で、さらなる「たわみ」を生じさせて圧縮力によって創傷が傷つくのを抑制する創傷被覆材を提供する。
本発明のある実施形態は、被覆材に加えられたせん断力を被覆材によって覆われた創傷部位から切り離すことのできる創傷被覆材を提供する。その結果、創傷が傷つくのが全体的にまたは少なくとも部分的に回避される。
ある実施形態は、創傷部位に対して陰圧創傷閉鎖療法を実施すること、滲出液を収集すること、および被覆材に作用する力から保護することを同時に実施することのできる創傷被覆材で創傷部位を覆うことができるという利点をもたらす。
本発明のある実施形態は、被覆材の上層上の比較的短い距離に作用する荷重を被覆材の下面上の比較的広い領域に散逸させることによって被覆材に作用する力をそらすことができるという利点をもたらす。したがって、力はより広い領域にわたって散逸し、したがって力の作用が低下する。
次に、本発明の各実施形態について一例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
創傷被覆材を示す図である。 創傷被覆材の上面図である。 バッフル要素を含む創傷被覆材の上面図である。 バッフル要素を含むさらなる創傷被覆材の上面図である。 一実施形態によるバッフル要素を示す図である。 単一のバッフル要素を含む創傷被覆材の上面図である。 空気流路を含む創傷被覆材の上面図である。 2つの空気流路を含む創傷被覆材の上面図である。 流体連通通路を介して結合されたカバー層を含む2つのオリフィスを含む創傷被覆材の上面図である。 流体連通通路の一実施形態を示す図である。 吸引ポートの上面図である。 フィルタ要素を含む吸引ポートを示す図である。 フィルタ要素を含むさらなる吸引ポートを示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。 創傷被覆材の透過層のビアの例示的な構成を示す図である。 カバー層に細長いオリフィスを含む創傷被覆材の上面図である。 弛緩動作モードにおける透過層を示す図である。 押付け動作モードにおける透過層を示す図である。 圧力オフセットを示す図である。 弛緩動作モードにおける透過層およびそれを覆う吸収剤層を示す図である。 圧縮力を受けている吸収剤層および透過層を示す図である。 せん断力を受けている吸収剤層および透過層を示す図である。 創傷治療システムの実施形態を示す図である。 創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。 創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。 創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。 創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。
図面において、同じ参照符号は同じ番号を示す。
図1は、本発明の実施形態による創傷被覆材100の断面図を示す。創傷被覆材100の上から見た平面図が図2に示されており、線A-Aは、図1に示す断面の位置を示す。図1が、装置100の概略図を示すことが理解されよう。本発明の各実施形態が陰圧創傷閉鎖(TNP)システムでの使用に一般的に適用可能であることが理解されよう。簡単に言えば、陰圧創傷閉鎖療法は、組織の浮腫を抑制し、血流を促進し、肉芽組織の形成を刺激し、余分な滲出液を除去することによって、多くの形態の「治癒するのが困難な」創傷の閉鎖および治癒を助け、細菌負荷を低減させ(したがって、感染リスクを低減させる)ことができる。さらに、この治療は、創傷がくずれるのを抑制するのを可能にし、創傷をより早く治癒させる。TNPシステムは、流体を除去し、並置された閉鎖位置における組織を安定化させるのを助けることによって、外科的に閉鎖された創傷が治癒するのを助けることもできる。TNPのさらなる有効な用途としては、余分な流体を除去することが重要であり、かつ組織の生存能力を確保するうえで植皮を組織の極めて近くに配置する必要がある植弁および皮弁がある。
創傷被覆材100は、治療すべき創傷部位の上方に配置されてもよい。被覆材100は、創傷部位の上方に密封された空洞を形成する。本明細書全体にわたって創傷が参照されることが理解されよう。この意味において、「創傷」という用語は広義に解釈されるべきであり、皮膚が避けるか、皮膚が切れるか、または皮膚に穴が開くか、あるいは外傷によって挫傷が生じる、開放され閉鎖される創傷を包含することを理解されたい。したがって、創傷は、流体が生じることも生じないこともある組織の傷ついた任意の領域として広義に定義される。そのような創傷の例には、切開、裂傷、磨耗傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、じょく瘡、瘻孔、外科的創傷、外傷、および静脈性潰瘍などが含まれるが、それらに限定されない。
いくつかの実施形態では、創傷部位に創傷充填材料を部分的にまたは完全に充填することが好ましい場合がある。この創傷充填材料は任意であるが、ある種の創傷、たとえばより深い創傷において望ましいことがある。創傷充填材料を創傷被覆材100とともに使用してもよい。創傷充填材料には概して、多孔性であり適合性の高い材料、たとえば発泡体(網状発泡体を含む)およびガーゼが含まれてもよい。創傷充填材料は、あらゆる空の空間を充填するように創傷部位に適合するようなサイズまたは形状を有することが好ましい。次に、創傷被覆材100を創傷部位および創傷部位を覆う創傷充填材料の上方に配置してもよい。創傷充填材料を使用すると、創傷被覆材100によって創傷部位を密閉した後、TNPがポンプから創傷被覆材100を通過し、創傷充填材料を通過して創傷部位まで送られる。この陰圧によって創傷滲出液および他の流体または分泌液が創傷部位から吸い出される。
本発明を具現化する装置の陰圧範囲は約-20mmHgから-200mmHgの間であってもよいと考えられる(これらの圧力が標準周囲大気圧に対する圧力であり、したがって、-200mmHgは実際的には約560mmHgであることに留意されたい)。適切な形態において、圧力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であってもよい。代替として、-75mmHg以下、-80mmHg以下、または-80mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。適切な形態において、-75mmHgよりも低い圧力範囲を使用してもよい。代替として、-100mmHgを超えるかまたは-150mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。
本発明のある実施形態によれば、ある期間にわたって事前に定められた1つまたは複数の所望の圧力プロファイルに従って発生する圧力を変調してもよいことが理解されよう。たとえば、そのようなプロファイルは、陰圧を2つの所定の陰圧P1とP2との間で変調し、圧力を所定の期間T1にわたってP1に実質的に一定に保持し、次いでポンプ動作を変化させることまたは流体の流れを制限することなどのような適切な手段によって、さらなる所定の期間T2にわたって実質的に一定に保持することのできる新しい所定の圧力P2に調整することを含んでもよい。場合によっては、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの所定の圧力値およびそれぞれの期間を利用してもよい。適切な形態では、正弦波、歯痛、心臓収縮-拡張に関する波形などのような圧力流プロファイルのより複雑な振幅/周波数波形を生成してもよい。
図1に示すように、創傷被覆材100の下面101は任意の創傷接触層102によって構成されている。創傷接触層102は、たとえば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、超音波プロセス、もしくは他の何らかの方法で穿孔されるか、または液体および気体を透過するようにされたポリウレタン層、ポリエチレン層、または他の可撓性の層であってもよい。創傷接触層は下面101と上面103とを有する。穿孔104は、流体が創傷接触層を通過するのを可能にする創傷接触層の貫通穴である。創傷接触層は、創傷被覆材の他の材料に組織内部成長するのを妨げるのを助ける。穿孔は、この要件を満たし、それにもかかわらず流体を通過させるのに十分な小さいサイズを有する。たとえば、サイズ範囲が0.025mmから1.2mmであるスリットまたは穴として形成される穿孔は、創傷被覆材に組織内部成長するのを妨げるのを助け、一方、創傷滲出液が被覆材に流入するのを可能にするのに十分な小さいサイズを有するとみなされる。創傷接触層は、創傷被覆材全体を保持するのを助け、吸収剤パッドの周り気密シールを形成して創傷の所に陰圧を維持するのを助ける。創傷接触層は、任意の下部接着層および上部接触層(図示せず)用の担体としても働く。たとえば、創傷被覆材の下側面101上に下部感圧接着剤を設けてもよく、一方、創傷被覆材の上側面103上に上部感圧接着剤を設けてもよい。感圧接着剤は、シリコーン、ホットメルト、親水コロイド、もしくはアクリル系の接着剤またはそのような他の接着剤であってもよく、創傷接触層の両側に形成しても、あるいは任意に選択された一方の側に形成してもよく、あるいはどちらの側にも形成しなくてもよい。下部感圧接着剤を利用すると、創傷被覆材を創傷部位の周りの皮膚に付着させる助けになる。
多孔性材料の層105が創傷接触層の上方に配置されている。この多孔性層または透過層105は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上部層に透過させるのを可能にする。特に、透過層105は、吸収剤層が実質的な量の滲出液を吸収したときでも創傷領域の上方に陰圧を伝達するように開放された空気流路を維持できるようにする。透過層は、上述のように陰圧創傷閉鎖療法を実施するときに加えられる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層105は、連続気泡発泡体、編まれるかまたは織られたスペーサ布(たとえば、Baltex7970横編みポリエステル)、または不織布を含んでもよい三次元構造を有する材料で形成されている。
適切な形態において、透過層は、84/144加工ポリエステルである頂部層(すなわち、使用時に創床に対して遠位に位置する層)、100デニールフラットポリエステルである底部層(すなわち、使用時に創床に対して近位に位置する層)と、編みポリエステルビスコース、セルロースなどのモノフィラメント繊維によって定義された領域である、この2つの層の間に挟まれた第3の層とを含む3Dポリエステルスペーサ布層を備える。もちろん、他の材料および他の線質量密度の繊維を使用してもよい。
本開示の全体にわたってモノフィラメント繊維を参照するが、もちろん、代わりに多重撚り線繊維を使用してもよいことが理解されよう。
したがって、頂部スペーサ布は、それを形成するのに使用される糸に、底部スペーサ布層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。間隔を置いて配置された層同士のフィラメント数のこの差は、透過層を横切る水分の流れを制御するのを助ける。特に、頂部層よりもフィラメント数を多くすることによって、底部層において使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から頂部層が形成され、底部層よりも多くの液体が頂部層に沿って移動する傾向がある。使用時には、この差によって、液体が創床から創傷被覆材の中央領域に吸い込まれ、吸収剤層が液体を保持するか、または液体層自体が液体をカバー層の方へ外側に移動させ、カバー層において液体を蒸散させることができる。
適切な形態では、透過層を横切る(すなわち、頂部スペーサ層と底部スペーサ層との間に形成された流路領域に垂直な)液体流を改善するために、3D布が、透過層の親水機能に干渉することがある、従来使用されている鉱物油、脂肪、および/またはろうのようなあらゆる工業製品を除去するのを助けるように乾燥洗浄剤(ペルクロロエチレンなどであるがそれに限定されない)によって処理される。適切な形態では、その後、3Dスペーサ布が親水化剤(Rudolph Groupから市販されているFeran Ice 30g/lなどであるがそれに限定されない)で洗浄される追加の製造ステップを実施してもよい。このプロセスは、各物質上の表面張力が、水などの液体が3Dニット生地に接触した直後に布に進入することができるほど低くなるようにするのを助ける。このことは、滲出液の液体障害成分の流れを制御するのも助ける。
透過層105の上方に吸収材料層110が設けられている。吸収材料は、発泡体または不織天然材料もしくは不織合成材料であってもよく、任意に高吸収性吸収剤材料を含むか、高吸収性吸収剤材料であってもよく、創傷部位から除去された流体、特に液体を形成し、このような液体をカバー層140の方へ吸い込む。吸収剤層の材料は、創傷被覆材内に収集された液体が流れる際に跳ね回るのも妨げる。吸収剤層110は、ウィッキング動作を介して層全体にわたって流体を分散させ、それによって、流体は創傷部位から吸い出され、吸収剤層全体にわたって格納される。これによって吸収剤層の領域における凝集が防止される。吸収材料の容量は、陰圧が加えられるときに創傷の滲出液流量を管理するのに十分な容量でなければならない。使用時には、吸収剤層が陰圧を受けるので、吸収剤層の材料としては、そのような状況の下で液体を吸収する吸収材料の層が選択される。陰圧下で液体を吸収することのできるいくつかの材料、たとえば高吸収性吸収体材料が存在する。吸収剤層110は通常、ALLEVYN(商標)発泡体、Freudenberg114-224-4、および/またはChem-Posite(商標)11C-450から製造されてもよい。
適切な形態において、吸収剤層は、繊維全体にわたって分散された乾燥粒子の形をした高吸収性吸収剤材料を有する不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維を使用すると、被覆材によって取り込まれた液体を高速にかつ均等に分散させるのを助ける高速ウィッキング要素が導入される。複数の撚り糸状繊維を並置すると繊維状パッド内で強力な毛管作用が生じ、液体を分散させる助けになる。このように、高吸収性吸収剤材料に液体が効率的に供給される。また、吸収剤層のすべての領域に液体が供給される。
ウィッキング作用は液体を上部カバー層に接触させるのを助け、被覆材の蒸散率を高めるのも助ける。
ウィッキング作用は、滲出が減速または休止したときに液体を下方に創床の方へ送出するのも助ける。この送出プロセスは、透過層および下部創床領域を湿潤状態に維持するのを助け、被覆材内の痂皮形成(閉塞を生じさせる恐れがある)を妨げるのを助け、かつ環境を創傷の治癒に最適な状態に維持するのを助ける。
適切な形態において、吸収剤層は風成材料である。熱可溶繊維を任意に使用してパッドの構造を保持するのを助けてもよい。本発明のある実施形態によれば、高吸収性粒子を使用する代わりにまたはそのような使用に加えて、高吸収性繊維を利用してもよいことが諒解されよう。適切な材料の例には、米国のEmerging Technologies Inc (ETi)から市販されているProduct Chem-Posite(商標)11Cがある。
場合によっては、本発明のある実施形態によれば、吸収剤層は、合成安定繊維および/または二成分安定繊維および/または天然安定繊維および/または高吸収性吸収剤繊維を含んでもよい。吸収剤層中の繊維は、ラテックス結合または熱結合または水素結合または任意の結合技術もしくは他の固定機構の組合せによって固定されてもよい。適切な形態において、吸収剤層は、高吸収性吸収剤粒子を吸収剤層内にロックするように働く繊維によって形成される。このことは、高吸収性吸収剤粒子が吸収剤層の外部の、下層の創床の方へ移動しなくなるようにするのを助ける。これは、陰圧が加えられたときに吸収剤パッドが下向きに潰れる傾向があり、この作用によって、高吸収性吸収剤粒子物質が吸収剤層の繊維状構造によって保持されない場合に高吸収性吸収剤粒子物質が創床の方へ押されるので特に有用である。
吸収剤層は複数の繊維からなる層を備える。適切な形態において、繊維は、撚り糸状の繊維であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースなどで作られる。適切な形態では、乾燥した吸収剤粒子が、使用する準備の整った吸収剤層全体にわたって分散される。適切な形態において、吸収剤層は、セルロース繊維のパッドと複数の高吸収性吸収剤粒子とを備える。適切な形態において、吸収剤層は、無作為の向きを有するセルロース繊維の不織層である。
高吸収性吸収剤粒子/繊維は、たとえばナトリウム材料、ポリアクリレート材料、またはカルボメトキシセルロース材料など、または材料自体の重量の何倍もの重量を有する液体を吸収することができる任意の材料であってもよい。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の5倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の15倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。この材料は、重量が材料自体の重量の20倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の30倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。
適切な形態において、高吸収体の粒子は、非常に親水性が高く、流体が被覆材に進入するときに流体を把持し、接触時に膨張する。被覆材コア内に均衡状態が確立され、それによって、水分が高吸収体からより乾燥した周囲領域に移り、水分が頂部の膜に衝突すると、膜が切り替わり、流体蒸気が蒸散を開始する。被覆材内に水分傾斜が確立され、創床から流体が連続的に除去され、被覆材が滲出液で重くなることはない。
適切な形態において、吸収剤層は、吸入ポートの下に位置するように配置された少なくとも1つの貫通穴を含む。図1に示すように、単一の貫通穴を使用して、ポート150の下に位置する開口部を形成してもよい。代替として、複数の開口部を利用してもよいことが諒解されよう。さらに、本発明のある実施形態によって複数のポートを利用する場合、高吸収性吸収剤層にそれぞれの各ポートに位置合わせして1つまたは複数の開口部を形成してもよい。本発明のある実施形態に必須ではないが、高吸収性吸収剤層に貫通穴を使用すると、特に抑制されない流体流路が構成され、このことはある状況において有用である。
吸収剤層に開口部を設けると、この層の厚さ自体が、透過層105の上面(すなわち、使用時に創傷から外方に向く表面)から、上方に位置する任意の層を分離するスタンドオフとして働く。この利点は、ポートのフィルタがこのように透過層の材料から分離されることである。このことは、フィルタが濡れ、したがってさらなる動作を妨害する可能性を低減させるのを助ける。
吸収層に1つまたは複数の貫通穴を使用することは、使用時に、吸収剤層が高吸収性吸収剤などのゲル形成材料を含む場合、その材料が、膨張して液体を吸収するときに、さらなる液体の移動および流体の移動を概して不可能にするバリアを形成することがなくなるという利点も有する。このようにして、吸収剤層の各開口部は、透過層から直接、創傷に面するフィルタの表面に至り、次いで外側に延びてポート内に入る流体経路を構成する。
気体を透過させないが、水蒸気を透過させるカバー層140が、創傷被覆材の幅を横切って延びている。カバー層は、たとえば一方の側に感圧接着剤を有するポリウレタン膜(たとえば、Elastollan SP9109)であってもよく、気体を透過させず、したがって、この層は創傷を覆い、上方に創傷被覆材が配置された創腔を密封する。このようにして、陰圧が確立され得るカバー層と創傷部位との間に実際上のチャンバが形成される。カバー層140は、たとえば接着技術または溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域200内に創傷接触層102に対して密封され、境界領域に空気が吸い込まれないようにする。カバー層140は、外部細菌汚染から創傷を保護し(細菌バリア)、創傷滲出液からの液体がこの層を通過して膜の外面から蒸発するのを可能にする。カバー層140は通常、2つの層、すなわちポリウレタン膜とこの膜上に広げられた接着剤パターンとを備える。ポリウレタン膜は、水蒸気透過性であり、濡れたときに透水率が高くなる材料から製造されてもよい。
吸収剤層110は、図1に示すように透過層105よりも広い面積を有してもよく、したがって、吸収剤層は透過層105の縁部と重なり合い、それによって、透過層がカバー層140に接触することはなくなる。これによって、創傷接触層102と直接接触する吸収剤層110の外側流路115が構成され、滲出液をより高速に吸収剤層に吸収する助けになる。さらに、この外側流路115により、場合によっては被覆材の周縁のシールから滲み出して漏出物を形成する可能性のある液体が、創腔の周囲に溜まることはできなくなる。
創腔に真空を加えたときに空気流路が開放されたままになるように、透過層105は圧力差による力に抵抗するのに十分な強度および非柔軟性を有さなければならない。しかし、この層は、比較的繊細なカバー層140に接触した場合、空気が創腔内に漏れるのを可能にするピンホール開口部をカバー層140に形成する恐れがある。これは、濡れると強度が低くなる切替え可能なポリウレタン膜を使用するときに特に問題になることがある。吸収剤層110は概して、透過層105の材料と比較して比較的柔らかく摩擦を生じない材料で形成されており、したがって、カバー層にピンホール開口部を形成しない。したがって、透過層105よりも広い面積を有し、透過層105の縁部と重なり合う吸収剤層110を設けることによって、透過層とカバー層との接触が妨げられ、カバー層140にピンホール開口部が形成されるのが回避される。
吸収剤層110は、カバー層140と接触するように位置している。吸収剤層が創傷滲出液を吸収すると、滲出液がカバー層140の方へ吸い込まれ、滲出液の水成分が水蒸気透過性カバー層と接触する。この水成分はカバー層自体の内部に吸い込まれ、次いで、被覆材の頂面から蒸発する。このようにして、創傷滲出液の含水量を被覆材から蒸散させることができ、吸収剤層110によって吸収すべき残りの創傷滲出液の体積が減り、被覆材が満杯になり交換しなければならなくなるまでの時間が延びる。この蒸散プロセスは、創腔に陰圧を加えられたときにも生じ、創腔に陰圧が加えられたときのカバー層の両端間の圧力差が、カバー層の両端間の水蒸気透過率に与える影響が無視できるものであることがわかっている。
被覆材100に陰圧を加えることを可能にするカバー膜140がオリフィス145に設けられている。吸引ポート150が、オリフィス145の上方でカバー膜140の頂部に対して密封されており、オリフィス145を通して陰圧を伝達する。ある長さのチューブ220の第1の端部を吸引ポート150に結合し、第2の端部をポンプユニット(図示せず)に結合して流体を被覆材から汲み出すのを可能にしてもよい。このポートは、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化可能な接着剤、またはホットメルト接着剤のような接着剤を使用してカバー膜140に接着されカバー膜140に対して密封されている。ポート150は、硬度がショアAスケールで30〜90である柔らかいポリマー、たとえばポリエチレン、塩化ポリビニル、シリコーン、またはポリウレタンから形成されてもよい。
オリフィスが直接透過層105に連結されるようにオリフィス145の下方の吸収剤層110に開口が設けられている。これによって、ポート150に加えられた陰圧を吸収剤層110を通過せずに透過層105に伝達することができる。これによって、創傷部位に加えられた陰圧が、吸収剤層が創傷滲出液を吸収するときに吸収剤層によって抑制されることがなくなる。他の実施形態では、吸収剤層110に開口をまったく設けなくてもよく、あるいはオリフィス145の下方の複数の開口を設けてもよい。
図1に示すように、創傷被覆材100の一実施形態は、ポート150の下方に位置する吸収剤層100に開口を備える。使用時には、たとえば、被覆材100に陰圧を加えたときに、創傷に面するポート150の部分が透過層105に接触することができ、したがって、吸収剤層110に創傷流体が充填されたときでも創傷部位に陰圧を伝達するのを助けることができる。いくつかの実施形態は、カバー層140を透過層105に少なくとも部分的に接着させてもよい。いくつかの実施形態では、開口はポート150またはオリフィス145の直径よりも少なくとも1mm〜2mm大きくてもよい。
液体を透過させないが気体を透過させるフィルタ要素130が、液体バリアとして働き、かつ創傷被覆材から漏れることのできる液体をなくすように設けられている。このフィルタ要素は、細菌バリアとして働いてもよい。通常、細孔径は0.2μmである。フィルタ要素130のフィルタ材料の適切な材料には、MMTレンジの0.2ミクロンGore(商標) expanded PTFE、PALL Versapore(商標)200R、およびDonaldson(商標)TX6628が含まれる。これよりも大きい細孔径を使用してもよいが、その場合、バイオバーデンを完全に抑制するために二次フィルタ層が必要になり得る。創傷流体が脂質を含むときは、疎油性フィルタ膜、たとえば0.2ミクロンMMT-323よりも前の1.0ミクロンMMT-332を使用することが好ましいが、必須ではない。これによって、脂質が疎水性フィルタに詰まるのが妨げられる。フィルタ要素は、オリフィス145の上方でポートおよび/またはカバー膜140に取り付けられるかまたはポートおよび/またはカバー膜140に対して密封されてもよい。たとえば、フィルタ要素130は、ポート150内に成形されても、あるいはUV硬化接着剤などの接着剤を使用してカバー層140の頂部とポート150の底部の両方に取り付けられてもよい。
フィルタ要素130に他の種類の材料を使用してもよいことが理解されよう。より一般的には、高分子材料の薄く平坦なシートである微孔膜を使用してもよく、この膜は数十億個の微孔を含む。選択される膜に応じて、これらの孔のサイズは0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲であってもよい。親水性(水濾過)形態の微孔膜と疎水性(撥水)形態の微孔膜のどちらも利用可能である。本発明のいくつかの実施形態において、フィルタ要素130は、支持層と、支持層上に形成されたアクリルコポリマー膜とを備える。適切な形態において、本発明のある実施形態におる創傷被覆材100は、微孔性疎水性膜(MHM)を使用する。MHMを形成するのに多数のポリマーを使用してもよい。たとえば、PTFE、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびアクリルコポリマーを使用してもよい。これらの任意のポリマーはすべて、疎水性と疎油性の両方を有してもよい特定の表面特性が得られるように処理されてもよい。したがって、これらのポリマーは、複合ビタミン注射、脂質、界面活性剤、油、および有機溶剤のように、低い表面張力によって脂質をはじく。
MHMは、脂質を遮断し、一方、空気が膜を通過するのを可能にする。これらのMHMは、場合によっては潜在的に伝染性のエアロゾルおよび粒子を除去する非常に効率的なエアフィルタでもある。単一のMHMが、機械的な弁または排出口に置き換わるオプションとして周知である。したがって、MHMを組み込むと組立て費を削減することができ、患者の利益費用便益比が改善される。
フィルタ要素130は、臭吸収剤材料、たとえば活性炭、炭素繊維布、またはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体などを含んでもよい。たとえば、臭吸収剤材料は、フィルタ要素130の層を形成してもよく、あるいはフィルタ要素内の微孔性疎水性膜同士の間に挟まれてもよい。
したがって、フィルタ要素130は、気体をオリフィス145を通して排出するのを可能にする。ただし、脂質、微粒子、および病原体は被覆材に収容される。
特に、単一のポート150および貫通穴を有する実施形態の場合、図1および図2に示すようにポート150および貫通穴を偏心位置に配置することが好ましい場合がある。そのような配置は、ポート150が被覆材100の残りの部分に対して隆起するように被覆材100を患者上に位置させるのを可能にすることができる。そのように位置させると、ポート150およびフィルタ130が、フィルタ130を早い時期に閉塞させて創傷部位への陰圧の伝達を阻害する恐れがある創傷流体に接触する可能性が低くなる。
図11は、本発明のいくつかの実施形態による吸引ポート150の平面図を示す。この吸引ポートは、ポート自体を創傷被覆材に対して密封するための密封面152と、吸引ポート150を陰圧源に連結するためのコネクタ部154と、密封面152とコネクタ部154との間に配置された半球体部156とを備える。密封面152は、実質的に平坦な領域を構成し、ポート150がカバー層140に対して密封されるときに良好なシールを実現するフランジを備える。コネクタ部154は、ある長さのチューブ220を介して外部陰圧源に結合されるように配置されている。
いくつかの実施形態によれば、フィルタ要素130は、創傷部位の上方に細菌バリアの一部を形成し、したがって、フィルタ要素の周りに良好なシールが形成され維持されることが重要である。しかし、フィルタ要素130をカバー層140に付着させることによって形成されたシールは信頼性が不十分であることがわかっている。このことは、水蒸気透過性カバー層を使用する際、カバー層140から蒸散する水蒸気が接着剤に影響を与えることがあり、フィルタ要素とカバー層との間のシールが破損するときに特に問題になる。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、フィルタ要素130を密封して脂質がコネクタ部154に進入するのを妨げるための代替構成が使用される。
図12は、本発明のいくつかの実施形態による図11の吸引ポート150の断面図を示し、図11の線A-Aは断面の位置を示す。図12の吸引ポートにおいて、吸引ポート150は、吸引ポート150の体部156内に配置されたフィルタ要素130をさらに備える。吸引ポート150とフィルタ要素130との間のシールは、フィルタ要素を吸引ポート150の体部内に成形することによって実現される。
図13は、本発明のいくつかの実施形態による図11の吸引ポート150の断面図を示す。図13の吸引ポートにおいて、フィルタ要素130は吸引ポート150の密封面152に対して密封されている。フィルタ要素は、接着剤を使用するかまたはフィルタ要素を密封面に溶接することによって密封面に対して密封されてもよい。
図12および図13に示すように、フィルタ要素130を吸引ポート150の一部として設けることによって、フィルタ要素をカバー層に付着させることに伴う問題が解消され、信頼できるシールを設けることが可能になる。さらに、吸引ポート150の一部として含まれるフィルタ要素130を有する部分組立体を設けると、創傷被覆材100をより簡単にかつより効率的に製造することができる。
吸引ポート150について図1の創傷被覆材100の文脈で説明したが、図12および図13の実施形態が、創傷から吸い出された創傷滲出液が被覆材内に保持される、創傷に陰圧を加えるための任意の創傷被覆材に適用可能であることが理解されよう。本発明のいくつかの実施形態によれば、吸引ポート150を透明な材料から製造し、ユーザが、吸引ポート150に創傷滲出液が進入していないかを目視検査するのを可能にしてもよい。
動作時には、創傷被覆材100が創傷部位に対して密封され、創腔を形成する。ポンプユニット(図23に示し、以下にさらに詳しく説明する)がポート150の連結部154の所で陰圧を加え、この陰圧がオリフィス145を通して透過層105に伝達される。流体は、創傷接触層102の下方の創傷部位から創傷被覆材を通してオリフィスの方へ吸い込まれる。流体は、透過層105を通してオリフィスの方へ移動する。流体が透過層105を通過するにつれて、創傷滲出液が吸収剤層110に吸収される。
本発明の一実施形態による創傷被覆材100を示す図2を参照すると、被覆材の中心から透過層105および吸収剤層110を覆う中央隆起領域201を囲む境界領域200内に外側に延びるカバー層140の上面が示されている。図2に示すように、創傷被覆材の概略図的な形状は丸い隅領域202を含む矩形である。本発明の他の実施形態による創傷被覆材が、方形、円形、または楕円形の被覆材のように異なる形状を有してよいことが諒解されよう。
創傷被覆材100は、それが使用される創傷のサイズおよび種類の必要に応じたサイズを有してもよい。いくつかの実施形態では、創傷被覆材100は、長軸が20cmから40cmの間であり、短軸が10cmから25cmの間であってもよい。たとえば、被覆材のサイズは10×20cm、10×30cm、10×40cm、15×20cm、および15×30cmであってもよい。いくつかの実施形態では、創傷被覆材100は、各辺が15cmから25cmの間である(たとえば、15×15cm、20×20cm、および25×25cm)方形の被覆材であってもよい。吸収剤層110は、被覆材全体よりも狭い面積を有してよく、いくつかの実施形態では、長さと幅がどちらも被覆材100全体の長さと幅よりも約3cm〜10cm短くてもよく、より好ましくは約5cm短くてもよい。いくつかの矩形の実施形態では、吸収剤層110は、長軸が15cmから35cmの間であり、短軸が5cmから10cmの間であってもよい。たとえば、吸収剤層のサイズは、5.6×15cm(10×20cmの被覆材の場合)、5.6×25cm(10×30cmの被覆材の場合)、5.6×35cm(10×40cmの被覆材の場合)、10×15cm(15×20cmの被覆材の場合)、および10×25cm(15×30cmの被覆材の場合)であってもよい。いくつかの方形の実施形態では、吸収剤層110は、各辺の長さが10cmから20cmの間(たとえば、15×15cmの被覆材の場合は10×10cm、20×20cmの被覆材の場合は15×15cm、または25×25cmの被覆材の場合は20×20cm)であってもよい。透過層105は、吸収剤層よりも小さいことが好ましく、いくつかの実施形態では、長さと幅がどちらも吸収剤層の長さと幅よりも約0.5cm〜2cm短くてもよく、より好ましくは約1cm短くてもよい。いくつかの矩形の実施形態では、透過層は、長軸が14cmから34cmの間であり、短軸が3cmから5cmの間であってもよい。たとえば、透過層のサイズは、4.6×14cm(10×20cmの被覆材の場合)、4.6×24cm(10×30cmの被覆材の場合)、4×34cm(10×40cmの被覆材の場合)、9×14cm(15×20cmの被覆材の場合)、および9×24cm(15×30cmの被覆材の場合)であってもよい。い
くつかの方形の実施形態では、透過層は、各辺の長さが9cmから19cmの間(たとえば、15×15cmの被覆材の場合は9×9cm、20×20cmの被覆材の場合は14×14cm、または25×25cmの被覆材の場合は19×19cm)であってもよい。
本発明の実施形態によれば創傷接触層が任意であることが理解されよう。この層は、使用される場合、多孔性であって水を透過させ、下方の創傷部位に面する。連続気泡発泡体または編みスペーサ布または織りスペーサ布のような透過層105を使用して、創傷のすべての領域が等しい圧力を受けるように気体および流体の除去を分散させる。カバー層は、フィルタ層と一緒に、創傷の上方に実質的に液密のシールを形成する。したがって、ポート150に陰圧が加えられると、陰圧はカバー層の下方の創腔に伝達される。したがって、この陰圧を目標創傷部位が受ける。空気および創傷滲出液を含む流体は、創傷接触層および透過層105を通過する。創傷被覆材の下層を通過した創傷滲出液は散逸して吸収剤層110に吸収され、そこに収集され格納される。空気および水蒸気は、フィルタ層を通して上方に移動して創傷被覆材を通過し、吸引ポートを通して被覆材から流出する。創傷滲出液の含水量の一部は、吸収剤層を通過してカバー層140に吸い込まれ、次いで被覆材の表面から蒸発する。
上述のように、創傷部位の上方に密封された創傷被覆材に陰圧が加えられると、創傷滲出液を含む流体が創傷部位から吸い出され、透過層105を通ってオリフィス145の方へ移動する。次いで、創傷滲出液は吸収剤層110に吸い込まれ、そこに吸収される。しかし、一部の創傷滲出液は、吸収されずにオリフィス145に移動することもある。フィルタ要素130は、創傷滲出液中の任意の液体が吸引ポート150の連結部154に進入するのを妨げるバリアを構成する。したがって、吸収されない創傷滲出液はフィルタ要素130の下方に収集されてもよい。十分な創傷滲出液がフィルタ要素の所に収集された場合、フィルタ要素130の表面上に液体層が形成され、液体がフィルタ要素130を通過できなくなり、かつ液体層によって気体がフィルタ要素に到達するのを妨げられるので、フィルタ要素が閉塞される。フィルタ要素が閉塞されると、もはや陰圧を創傷部位に伝達することはできず、吸収剤層の総容量に達していないにもかかわらず、創傷被覆材を新しい被覆材と交換しなければならない。
好ましい実施形態において、ポート150は、その下に位置する吸収剤層110の開口146と一緒に、図2に示す中央長手方向軸A-Aに概ね揃う。ポート150およびそのような任意の開口146は、中央位置ではなく被覆材の一方の端部のより近くに位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、ポートは被覆材100の隅部に配置されてもよい。たとえば、いくつかの矩形の実施形態において、ポート150は、被覆材の縁部から4cmから6cmの間だけ離して配置され、開口146は、吸収剤層の縁部から2cm〜3cm離して配置されてもよい。いくつかの方形の実施形態において、ポート150は、被覆材の縁部から5cmから8cmの間だけ離して配置され、開口146は、吸収剤層の縁部から3cm〜5cm離して配置されてもよい。
創傷被覆材をある向きに配置すると、創傷滲出液が透過層を通過するのを重力の作用によって助けることができるので、フィルタ要素130が上記のように閉塞される可能性が高くなることがある。したがって、創傷部位および創傷被覆材の向きによって、重力が、創傷滲出液がオリフィス145の方へ吸い込まれる速度を速くするように働く場合、フィルタが創傷滲出液によってより急速に閉塞されることがある。したがって、創傷滲出液をより頻繁に交換し、かつ吸収剤層110の吸収剤容量に達する前に交換することが必要になる。
オリフィス145の方へ吸い込まれる創傷滲出液によって創傷被覆材100が早い時期に閉塞されるのを避けるために、本発明のいくつかの実施形態は、創傷滲出液がオリフィス145の方へ移動する速度を遅くするように構成された少なくとも1つの要素を含む。この少なくとも1つの要素は、オリフィス145に達する前に吸収剤層に吸収される滲出液の量を増やすこと、および/または創傷滲出液がオリフィス145に達する前に辿る経路を長くし、それによって創傷滲出液が遮断されるまでの時間を延ばすことを実施してもよい。
図3は、本発明の一実施形態による、創傷滲出液がオリフィスの方へ移動する速度を遅くするバッフル要素を含む創傷被覆材の平面図を示す。図3に示す創傷被覆材は、図1および図2に示す創傷被覆材と同様であるが、中央隆起領域201を横切るように配設されたいくつかのバッフル要素310を含む。バッフル要素310は、オリフィスに向かう創傷滲出液の移動を拘束するバリアを被覆材の中央領域に形成している。
本明細書において説明する創傷被覆材において使用できるバッフル要素の実施形態は、少なくとも一部が可撓性であり、創傷被覆材がたわみ、創傷部位を囲む患者の皮膚に合うのを可能にすることが好ましい。バッフル要素は、創傷被覆材にそのように存在するとき、創傷被覆材ポートまたはオリフィスおよびそれに関連するフィルタが上記のように設けられる場合に液体がポートまたはオリフィスおよびフィルタまで直接流れるのを妨げることが好ましい。したがって、バッフル要素は、液体がポートに到達するのに必要になり得る距離を延ばし、このことは、創傷被覆材の吸収剤材料または高吸収性吸収剤層材料にこれらの流体を吸収するのを助けることができる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、バッフル要素は、吸収剤層110および透過層105が存在せず、かつカバー層140が創傷接触層101に対して密封される密封領域を備えてもよい。したがって、バッフル要素は、創傷滲出液の動きに対するバリアを構成し、したがって、創傷滲出液は、バッフル要素を迂回する経路を辿らなければならない。したがって、創傷滲出液がオリフィスに到達するのにかかる時間が延びる。
いくつかの実施形態において、バッフル要素は、被覆材内部に配置された、実質的に非多孔性の材料、たとえば独立気泡ポリエチレン発泡体のインサートであってもよい。場合によっては、吸収剤層110および/または透過層105のうちの1つまたは複数が存在しない密封領域にそのような挿入されたバッフル要素を配置することが好ましいことがある。封止材、たとえば、シリコーン封止材のような粘性を有する硬化封止材を、液体を実質的に透過させないバッフル要素を形成するように薄いストリップとして配置または射出成形してもよい。そのようなバッフル要素は、透過層105および/または吸収剤層110の領域に配置または射出成形され、あるいは同じく吸収剤層110および/または透過層105が存在しない密封領域にも配置または射出成形されてもよい。
図6は、本発明のさらなる実施形態によるバッフル要素を含む創傷被覆材を示す。単一のバッフル要素610が、吸収剤層110の大部分とオリフィス145との間にコップ状のバリアを構成している。したがって、最初にバッフル要素610によって形成される領域内の創傷部位から吸い込まれた創傷滲出液がオリフィス145に到達するには、コップ状のバリアの外側の周りの経路を辿らなければならない。認識されるように、バッフル要素610は、創傷被覆材の大部分の向きについて、創傷滲出液が辿る経路の一部が重力に反する経路であるので、創傷滲出液がオリフィス145まで移動するのにかかる時間の短縮に対する重力の作用を低下させる。
図3および図6の実施形態について、図1に示すような構造を有する創傷被覆材に関して説明した。しかし、透過層105が存在しない創傷被覆材にバッフル要素を同様に適用することができることが理解されよう。
図4は、創傷被覆材の中央領域201の幅を横切って延びるいくつかのバッフル要素410が設けられ、さらなるバッフル要素412がオリフィス145の周りの半円形経路に形成された本発明の一実施形態による少なくとも1つの要素を含む創傷被覆材の平面図を示す。
図5は、本発明のいくつかの実施形態によるバッフル要素410の構成を示す。このバッフル要素は、透過層105の下方に位置する吸収剤材料510の流路を備える。吸収剤層110内の流路は、バッフル要素410の上方に配置されており、それによって、透過層は、バッフル要素410の領域においてカバー層140に接触している。したがって、透過層105の下面に沿って移動し、したがって、吸収剤層110に吸い込まれなかった創傷滲出液は、吸収剤材料510の流路に接触し、この流路によって吸収される。
上記の代わりにまたは上記に加えて、バッフル要素は、吸収剤層110の下方に位置し吸収剤層110に当接する透過層105の表面に設けられた1つまたは複数の流路を備えてもよい。使用時には、創傷被覆材に陰圧を加えると、吸収剤層110が流路に吸い込まれる。透過層内の流路は、透過層の深さに実質的に等しい深さを有しても、あるいは透過層の深さよりも浅い深さを有してもよい。流路の寸法としては、創傷被覆材に陰圧が加えられたときに流路が吸収剤層110によって充填されるような寸法が選択されてもよい。いくつかの実施形態によれば、透過層内の流路は、透過層105内の吸収剤材料の流路を備える。
バッフル要素は、一連の形状およびパターンに形成されてもよく、たとえば図14A〜図14Lは、バッフル要素の例示的ないくつかの異なる構成を有する創傷被覆材を示す。図14Aは、ポートまたはオリフィスの方向に揃えられた垂直構成の直線状バッフル要素を示す。図14Bは、X字形バッフル要素を示す。図14C〜図14Eは、概ね対角方向、水平方向、または垂直方向に揃えられた複数のバッフル要素を含む創傷被覆材の実施形態を示す。
図14Fは、6アーム星形構成に配置され、中央部分が開放されたままであるバッフル要素を示す。図14Gは、ポートまたはオリフィスに対して遠位位置における創傷被覆材上のW字形バッフル要素を示す。図14Hでは、創傷被覆材上にX字形バッフル要素の3×3アレイが設けられている。ただし、使用されるX字形バッフル要素の数がこれよりも多くてもあるいは少なくてもよいことが理解されよう。図14Iは、複数の矩形バッフル要素を有し、創傷被覆材のポートの下方に1つまたは複数のバッフル要素が配置された実施形態を示す。図14J〜図14Kは、より長い対角バッフル要素および水平バッフル要素を含む創傷被覆材実施形態を示す。図14Lでは、この実施形態の創傷被覆材上に矩形バッフル要素が存在しており、各バッフル要素は異なるサイズを有する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの要素は、透過層105にビアまたはトラフのアレイを備える。図15は、ダイアモンド形のビア210が穿孔された透過層105を示す。各ビア210は、ビアのパターンを通るどの直線経路も、1つまたは複数のビア210と交差しないように配置されている。
創傷被覆材に陰圧を加えると、吸収剤層110がビア210に吸い込まれ、透過層105を通過する創傷滲出液と接触する吸収剤層の面積が広くなる。代替として、透過層105を通過する創傷滲出液を吸収するためのさらなる吸収剤材料をビア210に充填してもよい。ビアは、透過層105の深さにわたって延びても、あるいは透過層の一部のみを貫通してもよい。
重力の作用で透過層105を通過する創傷滲出液は、実質的に直線的に透過層内を落下する。したがって、そのようなあらゆる直線経路が、ある点において1つのビア210と交差し、したがって、滲出液はビア210内の材料と接触させられる。吸収剤材料と接触した創傷滲出液は吸収され、透過層105を通過する創傷滲出液の流れが停止し、場合によってはオリフィスの周りに溜まることがある未吸収の創傷滲出液の量が減る。ビアはダイアモンド形に限定されず、ビアの任意のパターンを使用してもよいことが諒解されよう。ビアは、透過層105内部のすべての直線経路が少なくとも1つのビアと交差するように配置されることが好ましい。ビアのパターンとしては、創傷滲出液がビアに到達して吸収されないうちに透過層を通過することができる距離を最小限に抑えるようなパターンが選択されてもよい。
図7は、少なくとも1つの要素が、創傷被覆材の中央領域201をオリフィス145に連結する空気流路710を備える、本発明のいくつかの実施形態による創傷被覆材を示す。図7の実施形態において、空気流路710は、透過層105の縁部領域から延び、透過層をオリフィス145に連結している。
使用時には、吸引ポート150に陰圧を加えることによって創傷滲出液がオリフィス145の方へ吸い込まれる。しかし、空気流路710は、オリフィス145に到達する前に創傷滲出液が辿るべき比較的長い蛇行状経路を構成する。この長い経路は、創傷滲出液が透過層とオリフィスとの間の距離を横切ってフィルタ要素130を閉塞させるまでに被覆材に陰圧を加えることのできる時間を延ばし、被覆材を交換しなければならなくなるまでに使用可能な時間を延長する。
図8は、少なくとも1つの要素が、創傷被覆材の中央領域201をオリフィス145に連結する空気流路810および812を備える、本発明の一実施形態による創傷被覆材を示す。流路810および812は、実質的に互いに向かい合う中央領域201の隅部の所で透過層に結合されている。
図8に示す創傷被覆材は、オリフィスが閉塞されるのにかかる時間に対する重力の作用を低下させる。創傷滲出液が、重力の影響下で、空気流路810に連結された透過層の縁部領域の方へ移動する向きに、創傷被覆材が位置する場合、重力の作用によって、空気流路812に結合された透過層の縁部領域から離れる方向へ創傷滲出液が移動し、この逆についても同様である。したがって、図8の実施形態では、透過層に陰圧を結合する代替空気流路を設け、それによって、1つの空気流路が閉塞された場合に、残りの空気流路が開放されたままになり、陰圧を透過層105に伝達することができ、それによって、創傷被覆材にもはや陰圧を加えることができなくなり、被覆材を交換しなければならなくなるまでの時間が延びる。
本発明のさらなる実施形態は、透過層105をオリフィスに連結する空気流路としてより多くの空気流路を備えてもよい。
本発明のいくつかの実施形態によれば、カバー層140に2つ以上のオリフィスを設けて創傷被覆材に陰圧を加えてもよい。創傷被覆材が特定の向きであることに起因して1つのオリフィスが創傷滲出液によって閉塞された場合に、少なくとも1つの残りのオリフィスは閉塞されていないことが予期されるように、2つ以上のオリフィスをカバー層140上で分散させてもよい。各オリフィスは、創傷被覆材によって形成される創傷チャンバと流体連通し、したがって、創傷部位に陰圧を伝達することができる。
図9は、本発明のさらなる実施形態による創傷被覆材を示す。図9の創傷被覆材は、図1の創傷被覆材と同様であるが、カバー層140に2つのオリフィス145および845が設けられている。流体連通通路が2つのオリフィスを連結しており、それによって、一方のオリフィスに加えられた陰圧が流体連通通路を介して残りのオリフィスに伝達される。オリフィス145、845は、カバー層140の互いに向かい合う隅部領域に配置されている。流体連通通路は、可撓性の成形品910を使用してカバー層140の上面上に形成されている。可撓性の成形品が、他の適切な手段、たとえばカバー層140上のオリフィス145とオリフィス845の間に配置された透過層または連続気泡多孔性発泡体層のストリップおよびストリップの上方に溶接されるかまたは付着させられ、したがって、カバー層に対して密封され、発泡体を通過する通路を形成するさらなる膜から形成されてもよいことが諒解されよう。その場合、密封膜に導管を周知のように取り付けて陰圧を加えてもよい。
使用時には、2つのオリフィスを有する創傷被覆材が創傷部位の上方に密封されて創腔を形成し、オリフィス145、845の一方に外部陰圧源が加えられ、陰圧が流体連通通路を介して残りのオリフィスに伝達される。したがって、陰圧は、2つのオリフィス145、845を介して透過層105に伝達され、それによって創傷部位に伝達される。重力の影響下でオリフィスに創傷滲出液が収集されることに起因してオリフィス145、845の一方が閉塞された場合、残りのオリフィスを空けておき、陰圧が引き続き創傷部位に伝達されるようにすべきである。いくつかの実施形態によれば、透過層105を省略してもよく、2つのオリフィスは、陰圧を吸収剤層110を介して創傷部位に伝達する。
図10は、図9の実施形態の流体連通通路の側面図を示す。成形品910がカバー層140の頂面ならびにそれを覆うオリフィス145および845に対して密封されている。気体透過性で液体不透過性のフィルタ要素130が各オリフィスに設けられている。成形品910は、チューブ要素220を介して外部陰圧源に結合されている。
いくつかの実施形態によれば、流体連通通路および2つのオリフィスの長さの下方を延びる単一のフィルタ要素を使用してもよい。上記の例示的な実施形態については2つのオリフィスを有する実施形態として説明したが、2つよりも多くのオリフィスを使用し、流体連通通路がこれらのオリフィス同士の間で陰圧を伝達するのを可能にしてもよいことが理解されよう。
図16は、カバー層140に細長い単一のオリフィス350が設けられた代替構成を示す。オリフィス350の第1の端部355および第2の端部356が、互いに向かい合うカバー層140の隅部領域に配置されている。可撓性の成形品360が、オリフィス350の周りに密封されており、陰圧をカバー層140内をオリフィス350の長さに沿って伝達するのを可能にする。可撓性の成形品360は、上記に可撓性の成形品910に関して説明したような任意の適切な手段によって形成されてもよい。
使用時には、創傷被覆材が創傷部位の上方に密封されて創腔を形成し、オリフィスに外部陰圧源が加えられる。創傷被覆材の向きに起因して、創傷滲出液が重力の影響下でオリフィス350の一方の端部355の周りに収集された場合、端部355に近いオリフィス350の部分が閉塞される。しかし、残りの端部356に近いオリフィスの部分を空けておき、創傷部位に引き続き陰圧が加えられるようにすべきである。
さらなるオプションとして、被覆材は、創傷接触層上の抗菌剤、たとえばナノ結晶銀剤および/または吸収剤層内の硫化銀ジアジンを含んでもよい。これらは別々に使用されてもあるいはまとめて使用されてもよい。これらはそれぞれ、創傷中の微生物および吸収マトリックス中の微生物を殺す。さらなるオプションとして、他の活性成分、たとえばイブプロフェンのような鎮痛剤を含めてもよい。成長因子のような細胞活動を強化する薬剤、または組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMPS)もしくは亜鉛キレート剤のようなマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤のような酵素を阻害する薬剤を利用してもよい。さらなるオプションとして、活性炭、シクロデキストリン、ゼオライトのような臭トラッピング要素を吸収剤層に含めてもあるいはフィルタ層の上方にさらなる層として含めてもよい。
図17は、本発明の一実施形態による透過層105の第1の上面1700およびさらなる下面1702を示す。図17に示す実施形態では、織物層の繊維1703が第1の表面1700とさらなる表面1702との間を延びている。本発明のさらなる実施形態によれば、発泡体層を透過層105として使用する場合、発泡体を形成する連結された撚り糸がスペーサ要素として働くことが諒解されよう。図17に示すように、弛緩動作モード、すなわち使用時には、創傷被覆材に陰圧が加えられないか、あるいは創傷被覆材に陰圧が加えられるが、創傷被覆材に外力が作用することはなく、繊維1703は上面および下面に実質的に垂直に延び、各表面が間隔を置いて配置された実質的に平行な構成に維持される。
図18は、被覆材の外側に外力が加えられるときの透過層105を示す。この外力は、図18に矢印Aによって示される圧縮力および/または図18に矢印Bによって示される横力であってもよい。図示のように、圧縮力または横力のいずれかが作用して繊維1703が一方の側に傾斜している。この場合、上面と下面が互いに対して横方向にずれるとともに、層の厚さが、弛緩動作モードにおける図17に示されている離隔距離rから図18に示されている圧縮距離cへと薄くなる。このように厚さを薄くすると、被覆材が陰圧を受けたときでも被覆材を効果的にある程度「たわませる」ことができる。被覆材に作用する力が被覆材の表面積全体にわたって生じる場合もあれば、1つまたは複数の特定の領域にのみ生じる場合もあることが諒解されよう。そのような状況では、被覆材のある領域が弛緩動作モードであり、他の領域が圧縮動作モードであってもよい。図18に示すように、透過層に力が加えられると、上面と下面を分離する繊維は、一方の側に傾斜し共通の傾斜角を有する傾向がある。
本明細書全体にわたって弛緩動作モードおよび押付け動作モードを参照する。弛緩動作モードが、陰圧が加えられないときまたは陰圧が加えられるときのいずれでも材料の自然な状態に対応することを理解されたい。いずれの状況でも、たとえば患者の動きまたは衝撃によって生じる外力がないことが明らかである。これに対して、押付け動作モードは、圧縮力であるか、横力であるか、その他の力であるかを問わず外力が創傷被覆材に加わるときに生じる。そのような力は、重度の傷を生じさせるか、あるいは創傷の治癒を妨げることがある。
図19は、本発明のある実施形態がどのように負荷力を相殺するように働くこともできるかを示す。図19に示すように、透過層105の上面1700の接触領域1900に対して力が加えられた場合、この力は、透過層を横切り通過して、下方の創傷部位に対してより広い散逸領域1901にわたって加えられる。3Dニットを透過層として使用する場合、このような力の散逸は、比較的剛性の高いスペーサ要素が少なくともある程度の横方向剛性を透過層にもたらすために生じる。
図20は、透過層105および吸収剤層110をより詳しく示す。本発明のある実施形態によれば、吸収剤層110は、透過層105の上面1700の近位に配置され、上面1700には結合されない。吸収剤層110が上面1700に結合されないとき、吸収剤層110は、横力またはせん断力が創傷被覆材に加えられたときに下方の透過層に対して横方向に移動することもできる。また、図21に示す圧縮力が創傷被覆材に作用するときに、吸収剤層をさらに圧縮することができる。図21に示すように、圧縮力下で、吸収剤層110の厚さは、図20に示す非圧縮時厚さxから図21に示す圧縮時距離yへと薄くなる。この圧縮力は、上述のように透過層の上面と下面をずらす働きもし、したがって、被覆材の「たわみ」を強化する。上面2201が、創傷被覆材に横力またはせん断力が加えられた状態で吸収剤層の下面2202に対して横方向に並進できることが、図22により詳しく示されている。この横方向の動きによって、吸収剤層110の厚さxが薄くなり、吸収剤層の上面と下面が互いに対してずれる。この作用は、それ自体が、創傷被覆材の全体または一部に加えられるせん断力が下方の創床に伝達されるのを十分に妨げることができる。透過層における対応する作用もこのような伝達を十分に妨げることができる。しかし、組合せによってこの緩衝効果が強化される。創床が植皮領域を備える場合、せん断力を低下させると特に有利であることがある。
図23は、ポンプ800と組み合わされた創傷被覆材100を備えるTNP創傷治療の実施形態を示す。ここで、被覆材100は、前述のように創傷の上方に配置されてもよく、次いで、ポート150に導管220が連結されてもよい。ただし、いくつかの実施形態において、被覆材100には、少なくとも導管220の一部がポート150に事前に取り付けられていてもよい。被覆材100は、すべての創傷被覆材要素(ポート150を含む)が事前に取り付けられ、単一のユニットとして一体化された単一の物品として設けられることが好ましい。次に、創傷被覆材100は、導管220を介して、ポンプ800などの陰圧源に連結されてもよい。ポンプ800は小形化され持ち運び可能であることが好ましい。ただし、より大きな従来のポンプを被覆材100と一緒に使用してもよい。いくつかの実施形態において、ポンプ800は、被覆材100上に取り付けられるかまたは搭載されてもあるいは被覆材100に隣接する位置に取り付けられるかまたは搭載されてもよい。たとえば被覆材の交換時に有用である場合がある、創傷被覆材100に至る導管220のポンプからの切り離しを可能にするようにコネクタ221が設けられてもよい。
図24A〜図24Dは、患者の創傷部位を治療するのに使用されているTNP創傷治療システムの一実施形態の使用法を示す。図24Aは、創傷部位190が洗浄され治療の準備が行われている状態を示す。ここで、創傷部位190を囲む正常な皮膚を洗浄し、余分な毛を除去するかまたは剃ることが好ましい。必要に応じて、滅菌生理食塩水によって創傷部位190を潅注してもよい。場合によっては、創傷部位190を囲む皮膚に皮膚保護剤を塗ってもよい。必要に応じて、発泡体またはガーゼのような創傷充填材料を創傷部位190に配置してもよい。このことは、創傷部位190がより深い創傷である場合に好ましいことがある。
創傷部位190を囲む皮膚が乾燥した後、次に図24Bを参照して、創傷被覆材100を創傷部位190の上方に位置させ配置してもよい。創傷接触層102が創傷部位190の上方に位置しならびに/または創傷部位190に接触するように創傷被覆材100を配置することが好ましい。いくつかの実施形態では、場合によっては、創傷部位190の上方に創傷被覆材100を配置する前に除去すべき任意の剥離層によって保護されてもよい接着剤層が、創傷接触層102の下面101上に設けられる。被覆材100は、ポート150が被覆材100の残りの部分に対して隆起した位置に配置されて流体がポートの周りに溜まるのを避けるように位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、被覆材100は、ポート150が創傷を直接覆わず、創傷と同じ高さまたは創傷よりも高い点に配置されるように位置する。TNPが適切に密封されるのを助けるために、被覆材100の縁部は、折り目をつけられたり折り畳まれたりしないように平滑にされることが好ましい。
次に、図24Cを参照する。被覆材100がポンプ800に連結されている。ポンプ800は、被覆材100を介し、通常は導管を通して創傷部位に陰圧を加えるように構成されている。いくつかの実施形態では、上記に図23において説明したように、コネクタを使用して被覆材100からの導管をポンプ800に接合してもよい。ポンプ800によって陰圧が加えられると、被覆材100は、いくつかの実施形態において、部分的に潰れ、被覆材100の下方の空気の一部またはすべてが真空排気される結果としてしわの寄った外観を呈する。いくつかの実施形態において、ポンプ800は、被覆材100と創傷部位190を囲む皮膚との間の界面など被覆材100に漏れがあるかどうかを検出するように構成されてもよい。漏れが見つかった場合、治療を続ける前にそのような漏れを解消しておくことが好ましい。
図24Dを参照する。被覆材100の縁部の周りに追加の固定ストリップ195が取り付けられてもよい。そのような固定ストリップ195は、状況によっては、創傷部位190を囲む患者の皮膚に対して追加的な密封を実現するうえで有利である場合がある。たとえば、固定ストライプ195は、患者の動きがより激しいときのためにさらなる密封を実現してもよい。場合によっては、特に、到達するのが困難であるかまたは起伏のある領域の上方に被覆材100を配置する場合、ポンプ800を作動させる前に固定ストリップ195を使用してもよい。
創傷部位190の治療は、創傷が所望の治癒レベルに達するまで継続することが好ましい。いくつかの実施形態では、ある期間が経過した後、または被覆材が創傷流体で満杯になった場合に、被覆材100を交換することが望ましいことがある。そのような交換時には、ポンプ800を維持し、被覆材100のみを交換してもよい。
使用時には、被覆材を「さかさまに」使用しても、斜めに使用しても、あるいは垂直に使用してもよいことに留意されたい。したがって、上部と下部の参照は、説明のためのみに使用されている。
本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、「comprise(備える)」および「contain(含む)」ならびにこれらの語の変形形態、たとえば「comprising(備えている)」および「comprises(備える)」は、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味し、他の部分、添加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図したものではない(かつ実際に除外しない)。
本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、単数形は、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて複数形を包含する。特に、本明細書では、不定冠詞が使用されている場合、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて、単数形だけではなく複数形も考慮されていることを理解されたい。
本発明の特定の態様、実施形態、または例に関連して説明した要素、整数、特徴、化合物、化学的部分、または化学基は、本明細書で説明した実施形態または例の他のいずれかの態様に、適合不能でないかぎり適用可能であることを理解されたい。
100 創傷被覆材
101 下面
102 創傷接触層
103 上面
104 穿孔
105 透過層
110 吸収剤層
130 フィルタ要素
140 カバー層
145、350、845 オリフィス
146 孔
150 吸引ポート
152 密封面
154 コネクタ部
156 半球体部
190 創傷部位
195 固定ストリップ
200 境界領域
201 中央隆起領域
202 隅部領域
210 ビア
220 導管
221 コネクタ
310 バッフル領域
355 第1の端部
356 第2の端部
360、910 成形品
610 バッフル要素
710、810、812 空気流路
800 ポンプ
1700、2201 上面
1702、2202 下面
1703 繊維
P1、P2 圧力
T1、T2 期間

Claims (20)

  1. 創傷部位を保護する創傷被覆材であって、
    第1の表面および弛緩動作モードにおいて前記第1の表面から弛緩距離だけ離れた位置に位置するさらなる表面を備える透過層と、
    前記第1の表面と前記さらなる表面との間を延び、押付け動作モードにおいて、前記第1の表面と前記さらなる表面が、互いに前記弛緩距離よりも短い圧縮距離だけ離れた位置に位置するように配置可能である複数のスペーサ要素とを備える創傷被覆材。
  2. 各スペーサ要素は、前記弛緩動作モードにおいて前記第1の表面と前記さらなる表面の間を前記第1の表面および前記さらなる表面に実質的に垂直に延びる繊維要素を備える、請求項1に記載の創傷被覆材。
  3. 前記押付け動作モードにおいて、前記第1の表面と前記さらなる表面は、互いに対して横方向にずれる、請求項1または請求項2に記載の創傷被覆材。
  4. 前記押付け動作モードにおいて、各繊維要素は、前記第1の表面および前記さらなる表面に対して前記垂直位置から離れる方向に少なくとも部分的に傾斜している、請求項2に記載の創傷被覆材。
  5. 押付け動作モードにおける前記透過層の領域内の各繊維は、実質的に共通の方向に実質的に共通の傾斜角度に傾斜している、請求項4に記載の創傷被覆材。
  6. 前記第1の表面に近接して配設され、前記第1の表面に結合されない吸収剤層をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
  7. 前記吸収剤層は、パッド自体のそれぞれの領域を圧縮し横方向に並進させるのを可能にする不織材料のパッドを備える、請求項6に記載の創傷被覆材。
  8. 前記パッドは、場合によっては高吸収性吸収剤材料を含む発泡体または不織天然材料もしくは不織合成材料である、請求項6または7に記載の創傷被覆材。
  9. 前記透過層は、少なくとも部分的に弾性を有する材料の編物層を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
  10. 前記弾性材料はポリエステル材料である、請求項9に記載の創傷被覆材。
  11. 前記第1の表面および前記さらなる表面ならびに前記スペーサ要素は、接触領域を備える、前記第1の表面の第1の領域から、前記接触領域よりも広い散逸領域を備える、前記さらなる表面のさらなる領域に、力を散逸させるように配設される、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
  12. 前記スペーサ要素の前記材料は、力を散逸させるのに十分な横方向剛性を有する、請求項11に記載の創傷被覆材。
  13. 前記透過層の上方の水蒸気透過性ドレープと、
    陰圧源に連結可能な吸引ポートとをさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
  14. 前記力は、前記第1の表面および前記さらなる表面に実質的に垂直に作用する圧縮力および/または前記第1の表面および前記さらなる表面に実質的に平行に作用する横力であり、前記第1の表面と前記さらなる表面との間にせん断力を生じさせる、請求項1から13のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
  15. 創傷部位が傷つくのを妨げる方法であって、
    透過層を備える創傷被覆材を創傷部位の上方に配置するステップと、
    前記創傷被覆材に対する力に応答して、前記透過層の第1の表面とさらなる表面との間を延びる複数のスペーサ要素を変位させるステップとを含み、
    前記スペーサ要素を変位させたときに前記第1の表面と前記さらなる表面との間の距離が短くなる方法。
  16. 前記創傷被覆材に力が加えられる押付け動作モードにおいて、前記透過層の前記第1の表面と前記さらなる表面を互いに対して横方向にずらすステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
  17. 各スペーサ要素は繊維要素を備え、前記方法は、
    前記押付け動作モードにおいて、弛緩動作モードにおいて自然にとられ、繊維が前記第1の表面および前記さらなる表面に実質的に垂直になる向きから離れる方向に、前記各繊維要素を少なくとも部分的に傾斜させるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記透過層の前記第1の表面の近位に配設され前記第1の表面に結合されない吸収剤層を、前記力に応答して前記第1の表面に対して変位させるステップをさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 実質的に、本明細書において添付の図面を参照して説明したような方法。
  20. 実質的に、上記に添付の図面を参照して説明したように構成され配置される装置。
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