図面において、同じ参照符号は同じ番号を示す。
図1は、本発明の実施形態による創傷被覆材100の断面図を示す。創傷被覆材100の上から見た平面図が図2に示されており、線A-Aは、図1に示す断面の位置を示す。図1が、装置100の概略図を示すことが理解されよう。本発明の各実施形態が局所陰圧(TNP)療法システムでの使用に一般的に適用可能であることが理解されよう。簡単に言えば、陰圧創傷閉鎖療法は、組織の浮腫を抑制し、血流を促進し、肉芽組織の形成を刺激し、余分な滲出液を除去することによって、多くの形態の「治癒するのが困難な」創傷の閉鎖および治癒を助け、細菌負荷を低減させ(したがって、感染リスクを低減させる)ことができる。さらに、この治療は、創傷がくずれるのを抑制するのを可能にし、創傷をより早く治癒させる。TNP療法システムは、流体を除去し、並置された閉鎖位置における組織を安定化させるのを助けることによって、外科的に閉鎖された創傷が治癒するのを助けることもできる。TNP療法のさらなる有効な用途としては、余分な流体を除去することが重要であり、かつ組織の生存能力を確保するうえで植皮を組織の極めて近くに配置する必要がある植弁および皮弁がある。
創傷被覆材100は、治療すべき創傷部位の上方に配置されてもよい。被覆材100は、創傷部位の上方に密封された空洞を形成する。本明細書全体にわたって創傷が参照されることが理解されよう。この意味において、「創傷」という用語は広義に解釈されるべきであり、皮膚が裂けるか、皮膚が切れるか、または皮膚に穴が開くか、あるいは外傷によって挫傷が生じる、開放され閉鎖される創傷を包含することを理解されたい。したがって、創傷は、流体が生じることも生じないこともある組織の傷ついた任意の領域として広義に定義される。そのような創傷の例には、切開、裂傷、磨耗傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、じょく瘡、瘻孔、外科的創傷、外傷、および静脈性潰瘍などが含まれるが、それらに限定されない。
いくつかの実施形態では、創傷部位に創傷充填材料を部分的にまたは完全に充填することが好ましい場合がある。この創傷充填材料は任意であるが、ある種の創傷、たとえばより深い創傷において望ましいことがある。創傷充填材料を創傷被覆材100とともに使用してもよい。創傷充填材料には概して、多孔性であり適合性の高い材料、たとえば発泡体(網状発泡体を含む)およびガーゼが含まれてもよい。創傷充填材料は、あらゆる空の空間を充填するように創傷部位に適合するようなサイズまたは形状を有することが好ましい。次に、創傷被覆材100を創傷部位および創傷部位を覆う創傷充填材料の上方に配置してもよい。創傷充填材料を使用すると、創傷被覆材100によって創傷部位を密閉した後、TNPがポンプから創傷被覆材100を通過し、創傷充填材料を通過して創傷部位まで送られる。この陰圧によって創傷滲出液および他の流体または分泌液が創傷部位から吸い出される。
本発明を具現化する装置の陰圧範囲は約-20mmHgから-200mmHgの間であってもよいと考えられる(これらの圧力が標準周囲大気圧に対する圧力であり、したがって、-200mmHgは実際的には約560mmHgであることに留意されたい)。適切な形態において、圧力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であってもよい。代替として、-75mmHg以下、-80mmHg以下、または-80mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。適切な形態において、-75mmHgよりも低い圧力範囲を使用してもよい。代替として、-100mmHgを超えるかまたは-150mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。
本発明のある実施形態によれば、ある期間にわたって事前に定められた1つまたは複数の所望の圧力プロファイルに従って発生する圧力を変調してもよいことが理解されよう。たとえば、そのようなプロファイルは、陰圧を2つの所定の陰圧P1とP2との間で変調し、圧力を所定の期間T1にわたってP1に実質的に一定に保持し、次いでポンプ動作を変化させることまたは流体の流れを制限することなどのような適切な手段によって、さらなる所定の期間T2にわたって実質的に一定に保持することのできる新しい所定の圧力P2に調整することを含んでもよい。場合によっては、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの所定の圧力値およびそれぞれの期間を利用してもよい。適切な形態では、正弦波、歯痛、心臓収縮-拡張に関する波形などのような圧力流プロファイルのより複雑な振幅/周波数波形を生成してもよい。
図1に示すように、創傷被覆材100の下面101は任意の創傷接触層102によって構成されている。創傷接触層102は、たとえば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、超音波プロセス、もしくは他の何らかの方法で穿孔されるか、または液体および気体を透過するようにされたポリウレタン層、ポリエチレン層、または他の可撓性の層であってもよい。創傷接触層は下面101と上面103とを有する。穿孔104は、流体が創傷接触層を通過するのを可能にする創傷接触層の貫通穴である。創傷接触層は、創傷被覆材の他の材料に組織内部成長するのを妨げるのを助ける。穿孔は、この要件を満たし、それにもかかわらず流体を通過させるのに十分な小さいサイズを有する。たとえば、サイズ範囲が0.025mmから1.2mmであるスリットまたは穴として形成される穿孔は、創傷被覆材に組織内部成長するのを妨げるのを助け、一方、創傷滲出液が被覆材に流入するのを可能にするのに十分な小さいサイズを有するとみなされる。創傷接触層は、創傷被覆材全体を保持するのを助け、吸収パッドの周り気密シールを形成して創傷の所に陰圧を維持するのを助ける。創傷接触層は、任意の下部接着層および上部接触層(図示せず)用の担体としても働く。たとえば、創傷被覆材の下側面101上に下部感圧接着剤を設けてもよく、一方、創傷被覆材の上側面103上に上部感圧接着剤を設けてもよい。感圧接着剤は、シリコーン、ホットメルト、親水コロイド、もしくはアクリル系の接着剤またはそのような他の接着剤であってもよく、創傷接触層の両側に形成しても、あるいは任意に選択された一方の側に形成してもよく、あるいはどちらの側にも形成しなくてもよい。下部感圧接着剤を利用すると、創傷被覆材を創傷部位の周りの皮膚に付着させる助けになる。
多孔性材料の層105が創傷接触層の上方に配置されている。この多孔性層または透過層105は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上部層に透過させるのを可能にする。特に、透過層105は、吸収層が実質的な量の滲出液を吸収したときでも創傷領域の上方に陰圧を伝達するように開放された空気流路を維持できるようにする。透過層は、上述のように陰圧創傷閉鎖療法を実施するときに加えられる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層105は、三次元構造を有する材料で形成されている。たとえば、編まれるかまたは織られたスペーサ布(たとえば、Baltex7970横編みポリエステル)。もちろん、他の材料を使用してもよい。
適切な形態において、透過層は、84/144加工ポリエステルである頂部層(すなわち、使用時に創床に対して遠位に位置する層)、100デニールフラットポリエステルである底部層(すなわち、使用時に創床に対して近位に位置する層)と、編みポリエステルビスコース、セルロースなどのモノフィラメント繊維によって定義された領域である、この2つの層の間に挟まれた第3の層とを含む3Dポリエステルスペーサ布層を備える。もちろん、他の材料および他の線質量密度の繊維を使用してもよい。
本開示の全体にわたってモノフィラメント繊維を参照するが、もちろん、代わりに多重撚り線繊維を使用してもよいことが理解されよう。
したがって、頂部スペーサ布は、それを形成するのに使用される糸に、底部スペーサ布層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
間隔を置いて配置された層同士のフィラメント数のこの差は、透過層を横切る水分の流れを制御するのを助ける。特に、頂部層よりもフィラメント数を多くすることによって、底部層において使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から頂部層が形成され、底部層よりも多くの液体が頂部層に沿って移動する傾向がある。使用時には、この差によって、液体が創床から創傷被覆材の中央領域に吸い込まれ、吸収層が液体を保持するか、または液体層自体が液体をカバー層の方へ外側に移動させ、カバー層において液体を蒸散させることができる。
適切な形態では、透過層を横切る(すなわち、頂部スペーサ層と底部スペーサ層との間に形成された流路領域に垂直な)液体流を改善するために、3D布が、透過層の親水機能に干渉することがある、従来使用されている鉱物油、脂肪、および/またはろうのようなあらゆる工業製品を除去するのを助けるように乾燥洗浄剤(ペルクロロエチレンなどであるがそれに限定されない)によって処理される。適切な形態では、その後、3Dスペーサ布が親水化剤(Rudolph Groupから市販されているFeran Ice 30g/lなどであるがそれに限定されない)で洗浄される追加の製造ステップを実施してもよい。このプロセスは、各物質上の表面張力が、水などの液体が3Dニット生地に接触した直後に布に進入することができるほど低くなるようにするのを助ける。このことは、滲出液の液体障害成分の流れを制御するのも助ける。
透過層105の上方に吸収性材料の層110が設けられている。吸収性材料は、発泡体または不織天然材料もしくは不織合成材料であってもよく、任意に高吸収性材料を含むか、高吸収性材料であってもよく、創傷部位から除去された流体、特に液体を形成し、このような液体をカバー層140の方へ吸い込む。吸収層の材料は、創傷被覆材内に収集された液体が流れる際に跳ね回るのも妨げる。吸収層110は、ウィッキング動作を介して層全体にわたって流体を分散させ、それによって、流体は創傷部位から吸い出され、吸収層全体にわたって格納される。これによって吸収層の領域における凝集が防止される。吸収性材料の容量は、陰圧が加えられるときに創傷の滲出液流量を管理するのに十分な容量でなければならない。使用時には、吸収層が陰圧を受けるので、吸収層の材料としては、そのような状況の下で液体を吸収する吸収性材料の層が選択される。陰圧下で液体を吸収することのできるいくつかの材料、たとえば高吸収体材料が存在する。吸収層110は通常、ALLEVYN(商標)発泡体、Freudenberg114-224-4、および/またはChem-Posite(商標)11C-450から製造されてもよい。
適切な形態において、吸収層は、繊維全体にわたって分散された乾燥粒子の形をした高吸収性材料を有する不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維を使用すると、被覆材によって取り込まれた液体を高速にかつ均等に分散させるのを助ける高速ウィッキング要素が導入される。複数の撚り糸状繊維を並置すると繊維状パッド内で強力な毛管作用が生じ、液体を分散させる助けになる。このように、高吸収性材料に液体が効率的に供給される。また、吸収層の全ての領域に液体が供給される。
ウィッキング作用は液体を上部カバー層に接触させるのを助け、被覆材の蒸散率を高めるのも助ける。
ウィッキング作用は、滲出が減速または休止したときに液体を下方に創床の方へ送出するのも助ける。この送出プロセスは、透過層および下部創床領域を湿潤状態に維持するのを助け、被覆材内の痂皮形成(閉塞を生じさせる恐れがある)を妨げるのを助け、かつ環境を創傷の治癒に最適な状態に維持するのを助ける。
適切な形態において、吸収層は風成材料である。熱可溶繊維を任意に使用してパッドの構造を保持するのを助けてもよい。本発明のある実施形態によれば、高吸収性粒子を使用する代わりにまたはそのような使用に加えて、高吸収性繊維を利用してもよいことが諒解されよう。適切な材料の例には、米国のEmerging Technologies Inc (ETi)から市販されているProduct Chem-Posite(商標)11Cがある。
場合によっては、本発明のある実施形態によれば、吸収層は、合成安定繊維および/または二成分安定繊維および/または天然安定繊維および/または高吸収性繊維を含んでもよい。吸収層中の繊維は、ラテックス結合または熱結合または水素結合または任意の結合技術もしくは他の固定機構の組合せによって固定されてもよい。適切な形態において、吸収層は、高吸収性粒子を吸収層内にロックするように働く繊維によって形成される。このことは、高吸収性粒子が吸収剤層の外部の、下層の創床の方へ移動しなくなるようにするのを助ける。これは、陰圧が加えられたときに吸収パッドが下向きに潰れる傾向があり、この作用によって、高吸収性粒子状物質が吸収層の繊維状構造によって保持されない場合に高吸収性粒子状物質が創床の方へ押されるので特に有用である。
吸収層は複数の繊維からなる層を備える。適切な形態において、繊維は、撚り糸状の繊維であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースなどで作られる。適切な形態では、乾燥した吸収粒子が、使用する準備の整った吸収層全体にわたって分散される。適切な形態において、吸収層は、セルロース繊維のパッドと複数の高吸収性粒子とを備える。適切な形態において、吸収層は、無作為の向きを有するセルロース繊維の不織層である。
高吸収体の粒子または繊維は、たとえばナトリウム材料、ポリアクリレート材料、またはカルボメトキシセルロース材料など、または材料自体の重量の何倍もの重量を有する液体を吸収することができる任意の材料であってもよい。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の5倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の15倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。この材料は、重量が材料自体の重量の20倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の30倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。
適切な形態において、高吸収体の粒子は、非常に親水性が高く、流体が被覆材に進入するときに流体を把持し、接触時に膨張する。被覆材コア内に均衡状態が確立され、それによって、水分が高吸収体からより乾燥した周囲領域に移り、水分が頂部の膜に衝突すると、膜が切り替わり、流体蒸気が蒸散を開始する。被覆材内に水分傾斜が確立され、創床から流体が連続的に除去され、被覆材が滲出液で重くなることはない。
適切な形態において、吸収層は、吸入ポートの下に位置するように配置された少なくとも1つの貫通穴を含む。図1に示すように、単一の貫通穴を使用して、ポート150の下に位置する開口部を形成してもよい。代替として、複数の開口部を利用してもよいことが諒解されよう。さらに、本発明のある実施形態によって複数のポートを利用する場合、高吸収性層にそれぞれの各ポートに位置合わせして1つまたは複数の開口部を形成してもよい。本発明のある実施形態に必須ではないが、高吸収性層に貫通穴を使用すると、特に抑制されない流体流路が構成され、このことはある状況において有用である。
吸収層に開口部を設けると、この層の厚さ自体が、透過層105の上面(すなわち、使用時に創傷から外方に向く表面)から、上方に位置する任意の層を分離するスタンドオフとして働く。この利点は、ポートのフィルタがこのように透過層の材料から分離されることである。このことは、フィルタが濡れ、したがってさらなる動作を妨害する可能性を低減させるのを助ける。
吸収層に1つまたは複数の貫通穴を使用することは、使用時に、吸収層が高吸収体などのゲル形成材料を含む場合、その材料が、膨張して液体を吸収するときに、さらなる液体の移動および流体の移動を概して不可能にするバリアを形成することがなくなるという利点も有する。このようにして、吸収層の各開口部は、透過層から直接、創傷に面するフィルタの表面に至り、次いで外側に延びてポート内に入る流体経路を構成する。
気体を透過させないが、水蒸気を透過させるカバー層140が、創傷被覆材の幅を横切って延びている。カバー層は、たとえば一方の側に感圧接着剤を有するポリウレタン膜(たとえば、Elastollan SP9109)であってもよく、気体を透過させず、したがって、この層は創傷を覆い、上方に創傷被覆材が配置された創腔を密封する。このようにして、陰圧が確立され得るカバー層と創傷部位との間に実際上のチャンバが形成される。カバー層140は、たとえば接着技術または溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域200内に創傷接触層102に対して密封され、境界領域に空気が吸い込まれないようにする。カバー層140は、外部細菌汚染から創傷を保護し(細菌バリア)、創傷滲出液からの液体がこの層を通過して膜の外面から蒸発するのを可能にする。カバー層140は通常、2つの層、すなわちポリウレタン膜とこの膜上に広げられた接着剤パターンとを備える。ポリウレタン膜は、水蒸気透過性であり、濡れたときに透水率が高くなる材料から製造されてもよい。
吸収層110は、透過層105よりも広い面積を有してもよく、したがって、吸収層は透過層105の縁部と重なり合い、それによって、透過層がカバー層140に接触することはなくなる。これによって、創傷接触層102と直接接触する吸収層110の外側流路115が構成され、滲出液をより高速に吸収層に吸収する助けになる。さらに、この外側流路115により、場合によっては被覆材の周縁のシールから滲み出して漏出物を形成する可能性のある液体が、創腔の周囲に溜まることはできなくなる。
創腔に真空を加えたときに空気流路が開放されたままになるように、透過層105は圧力差による力に抵抗するのに十分な強度および非柔軟性を有さなければならない。しかし、この層は、比較的繊細なカバー層140に接触した場合、空気が創腔内に漏れるのを可能にするピンホール開口部をカバー層140に形成する恐れがある。これは、濡れると強度が低くなる切替え可能なポリウレタン膜を使用するときに特に問題になることがある。吸収層110は概して、透過層105の材料と比較して比較的柔らかく摩擦を生じない材料で形成されており、したがって、カバー層にピンホール開口部を形成しない。したがって、透過層105よりも広い面積を有し、透過層105の縁部と重なり合う吸収層110を設けることによって、透過層とカバー層との接触が妨げられ、カバー層140にピンホール開口部が形成されるのが回避される。
吸収層110は、カバー層140と流体接触するように位置している。吸収層が創傷滲出液を吸収すると、滲出液がカバー層140の方へ吸い込まれ、滲出液の水成分が水蒸気透過性カバー層と接触する。この水成分はカバー層自体の内部に吸い込まれ、次いで、被覆材の頂面から蒸発する。このようにして、創傷滲出液の含水量を被覆材から蒸散させることができ、吸収層110によって吸収すべき残りの創傷滲出液の体積が減り、被覆材が満杯になり交換しなければならなくなるまでの時間が延びる。この蒸散プロセスは、創腔に陰圧を加えられたときにも生じ、創腔に陰圧が加えられたときのカバー層の両端間の圧力差が、カバー層の両端間の水蒸気透過率に与える影響が無視できるものであることがわかっている。
被覆材100に陰圧を加えることを可能にするカバー膜140がオリフィス145に設けられている。吸引ポート150が、オリフィス145の上方でカバー膜140の頂部に対して密封されており、オリフィス145を通して陰圧を伝達する。ある長さのチューブ220の第1の端部を吸引ポート150に結合し、第2の端部をポンプユニット(図示せず)に結合して流体を被覆材から汲み出すのを可能にしてもよい。このポートは、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化可能な接着剤、またはホットメルト接着剤のような接着剤を使用してカバー膜140に接着されカバー膜140に対して密封されている。ポート150は、硬度がショアAスケールで30〜90である柔らかいポリマー、たとえばポリエチレン、塩化ポリビニル、シリコーン、またはポリウレタンから形成されてもよい。
オリフィスが直接透過層105に連結されるようにオリフィス145の下方の吸収層110に開口が設けられている。これによって、ポート150に加えられた陰圧を吸収層110を通過せずに透過層105に伝達することができる。これによって、創傷部位に加えられた陰圧が、吸収層が創傷滲出液を吸収するときに吸収層によって抑制されることがなくなる。他の実施形態では、吸収層110に開口をまったく設けなくてもよく、あるいはオリフィス145の下方の複数の開口を設けてもよい。
液体を透過させないが気体を透過させるフィルタ要素130が、液体バリアとして働き、かつ創傷被覆材から漏れることのできる液体をなくすように設けられている。このフィルタ要素は、細菌バリアとして働いてもよい。通常、細孔径は0.2μmである。フィルタ要素130のフィルタ材料の適切な材料には、MMTレンジの0.2ミクロンGore(商標) expanded PTFE、PALL Versapore(商標)200R、およびDonaldson(商標)TX6628が含まれる。これよりも大きい細孔径を使用してもよいが、その場合、バイオバーデンを完全に抑制するために二次フィルタ層が必要になり得る。創傷流体が脂質を含むときは、疎油性フィルタ膜、たとえば0.2ミクロンMMT-323よりも前の1.0ミクロンMMT-332を使用することが好ましいが、必須ではない。これによって、脂質が疎水性フィルタに詰まるのが妨げられる。フィルタ要素は、オリフィス145の上方でポートおよび/またはカバー膜140に取り付けられるかまたはポートおよび/またはカバー膜140に対して密封されてもよい。たとえば、フィルタ要素130は、ポート150内に成形されても、あるいは限定されないがUV硬化接着剤などの接着剤を使用してカバー層140の頂部とポート150の底部の両方に取り付けられてもよい。
フィルタ要素130に他の種類の材料を使用してもよいことが理解されよう。より一般的には、高分子材料の薄く平坦なシートである微孔膜を使用してもよく、この膜は数十億個の微孔を含む。選択される膜に応じて、これらの孔のサイズは0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲であってもよい。親水性(水濾過)形態の微孔膜と疎水性(撥水)形態の微孔膜のどちらも利用可能である。本発明のいくつかの実施形態において、フィルタ要素130は、支持層と、支持層上に形成されたアクリルコポリマー膜とを備える。適切な形態において、本発明のある実施形態による創傷被覆材100は、微孔性疎水性膜(MHM)を使用する。MHMを形成するのに多数のポリマーを使用してもよい。たとえば、PTFE、ポリプロピレン、PVDF、およびアクリルコポリマーを使用してもよい。これらの任意のポリマーは全て、疎水性と疎油性の両方を有してもよい特定の表面特性が得られるように処理されてもよい。したがって、これらのポリマーは、複合ビタミン注射、脂質、界面活性剤、油、および有機溶剤のように、低い表面張力によって脂質をはじく。
MHMは、脂質を遮断し、一方、空気が膜を通過するのを可能にする。これらのMHMは、場合によっては潜在的に伝染性のエアロゾルおよび粒子を除去する非常に効率的なエアフィルタでもある。単一のMHMが、機械的な弁または排出口に置き換わるオプションとして周知である。したがって、MHMを組み込むと組立て費を削減することができ、患者の利益費用便益比が改善される。
フィルタ要素130は、臭吸収性材料、たとえば活性炭、炭素繊維布、またはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体などを含んでもよい。たとえば、臭吸収性材料は、フィルタ要素130の層を形成してもよく、あるいはフィルタ要素内の微孔性疎水性膜同士の間に挟まれてもよい。
したがって、フィルタ要素130は、気体をオリフィス145を通して排出するのを可能にする。ただし、脂質、微粒子、および病原体は被覆材に収容される。
図1では、ポート150およびフィルタ130に関連したスペーサ要素を備える、創傷被覆材100の実施形態が示されている。そのようなスペーサ要素に加えて、ポート150およびフィルタ130は、吸収層110および/または透過層105との直接接触によって支持されてもよい。吸収層110は、フィルタ130が透過層105に接触しないようにするために、追加的なスペーサ要素として働いてもよい。したがって、そのような構成によって、透過層105とのフィルタ130の接触、および、使用時の創傷流体が、最小限に抑えられ得る。
特に、単一のポート150および貫通穴を有する実施形態の場合、図1および図2に示すようにポート150および貫通穴を偏心位置に配置することが好ましい場合がある。そのような配置は、ポート150が被覆材100の残りの部分に対して隆起するように被覆材100を患者上に位置させるのを可能にすることができる。そのように位置させると、ポート150およびフィルタ130が、フィルタ130を早い時期に閉塞させて創傷部位への陰圧の伝達を阻害する恐れがある創傷流体に接触する可能性が低くなる。
動作時には、創傷被覆材100が創傷部位に対して密封され、創腔を形成する。ポンプユニット(図8に示し、以下にさらに詳しく説明する)がポート150の連結部154の所で陰圧を加え、この陰圧がオリフィス145を通して透過層105に伝達される。流体は、創傷接触層102の下方の創傷部位から創傷被覆材を通してオリフィスの方へ吸い込まれる。流体は、透過層105を通してオリフィスの方へ移動する。流体が透過層105を通過するにつれて、創傷滲出液が吸収層110に吸収される。
本発明の一実施形態による創傷被覆材100を示す図2を参照すると、被覆材の中心から透過層105および吸収層110を覆う中央隆起領域201を囲む境界領域200内に外側に延びるカバー層140の上面が示されている。図2に示すように、創傷被覆材の概略図的な形状は丸い隅領域202を含む矩形である。本発明の他の実施形態による創傷被覆材が、方形、円形、または楕円形の被覆材のように異なる形状を有してよいことが諒解されよう。
創傷被覆材100は、それが使用される創傷のサイズおよび種類の必要に応じたサイズを有してもよい。いくつかの実施形態では、創傷被覆材100は、長軸が20cmから40cmの間であり、短軸が10cmから25cmの間であってもよい。たとえば、被覆材のサイズは10×20cm、10×30cm、10×40cm、15×20cm、および15×30cmであってもよい。いくつかの実施形態では、創傷被覆材100は、各辺が15cmから25cmの間である(たとえば、15×15cm、20×20cm、および25×25cm)方形の被覆材であってもよい。吸収層110は、被覆材全体よりも狭い面積を有してよく、いくつかの実施形態では、長さと幅がどちらも被覆材100全体の長さと幅よりも約3cm〜10cm短くてもよく、より好ましくは約5cm短くてもよい。いくつかの矩形の実施形態では、吸収層110は、長軸が15cmから35cmの間であり、短軸が5cmから10cmの間であってもよい。たとえば、吸収層のサイズは、5.6×15cm(10×20cmの被覆材の場合)、5.6×25cm(10×30cmの被覆材の場合)、5.6×35cm(10×40cmの被覆材の場合)、10×15cm(15×20cmの被覆材の場合)、および10×25cm(15×30cmの被覆材の場合)であってもよい。いくつかの方形の実施形態では、吸収層110は、各辺の長さが10cmから20cmの間(たとえば、15×15cmの被覆材の場合は10×10cm、20×20cmの被覆材の場合は15×15cm、または25×25cmの被覆材の場合は20×20cm)であってもよい。透過層105は、吸収層よりも小さいことが好ましく、いくつかの実施形態では、長さと幅がどちらも吸収層の長さと幅よりも約0.5cm〜2cm短くてもよく、より好ましくは約1cm短くてもよい。いくつかの矩形の実施形態では、透過層は、長軸が14cmから34cmの間であり、短軸が3cmから5cmの間であってもよい。たとえば、透過層のサイズは、4.6×14cm(10×20cmの被覆材の場合)、4.6×24cm(10×30cmの被覆材の場合)、4×34cm(10×40cmの被覆材の場合)、9×14cm(15×20cmの被覆材の場合)、および9×24cm(15×30cmの被覆材の場合)であってもよい。いくつかの方形
の実施形態では、透過層は、各辺の長さが9cmから19cmの間(たとえば、15×15cmの被覆材の場合は9×9cm、20×20cmの被覆材の場合は14×14cm、または25×25cmの被覆材の場合は19×19cm)であってもよい。
本発明の実施形態によれば創傷接触層が任意であることが理解されよう。この層は、使用される場合、多孔性であって水を透過させ、下方の創傷部位に面する。編みスペーサ布または織りスペーサ布のような透過層105を使用して、創傷の全ての領域が等しい圧力を受けるように気体および流体の除去を分散させる。カバー層は、フィルタ層と一緒に、創傷の上方に実質的に液密のシールを形成する。したがって、ポート150に陰圧が加えられると、陰圧はカバー層の下方の創腔に伝達される。したがって、この陰圧を目標創傷部位が受ける。空気および創傷滲出液を含む流体は、創傷接触層および透過層105を通過する。創傷被覆材の下層を通過した創傷滲出液は散逸して吸収層110に吸収され、そこに収集され格納される。空気および水蒸気は、フィルタ層を通して上方に移動して創傷被覆材を通過し、吸引ポートを通して被覆材から流出する。創傷滲出液の含水量の一部は、吸収層を通過してカバー層140に吸い込まれ、次いで被覆材の表面から蒸発する。
上述のように、創傷部位の上方に密封された創傷被覆材に陰圧が加えられると、創傷滲出液を含む流体が創傷部位から吸い出され、透過層105を通ってオリフィス145の方へ移動する。次いで、創傷滲出液は吸収層110に吸い込まれ、そこに吸収される。しかし、一部の創傷滲出液は、吸収されずにオリフィス145に移動することもある。フィルタ要素130は、創傷滲出液中の任意の液体が吸引ポート150の連結部154に進入するのを妨げるバリアを構成する。したがって、吸収されない創傷滲出液はフィルタ要素130の下方に収集されてもよい。十分な創傷滲出液がフィルタ要素の所に収集された場合、フィルタ要素130の表面上に液体層が形成され、液体がフィルタ要素130を通過できなくなり、かつ液体層によって気体がフィルタ要素に到達するのを妨げられるので、フィルタ要素が閉塞される。フィルタ要素が閉塞されると、もはや陰圧を創傷部位に伝達することはできず、吸収層の総容量に達していないにもかかわらず、創傷被覆材を新しい被覆材と交換しなければならない。
好ましい実施形態において、ポート150は、その下に位置する吸収層110の開口146と一緒に、図2に示す中央長手方向軸A-Aに概ね揃う。ポート150およびそのような任意の開口146は、中央位置ではなく被覆材の一方の端部のより近くに位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、ポートは被覆材100の隅部に配置されてもよい。たとえば、いくつかの矩形の実施形態において、ポート150は、被覆材の縁部から4cmから6cmの間だけ離して配置され、開口146は、吸収層の縁部から2cm〜3cm離して配置されてもよい。いくつかの方形の実施形態において、ポート150は、被覆材の縁部から5cmから8cmの間だけ離して配置され、開口146は、吸収層の縁部から3cm〜5cm離して配置されてもよい。
創傷被覆材をある向きに配置すると、創傷滲出液が透過層を通過するのを重力の作用によって助けることができるので、フィルタ要素130が上記のように閉塞される可能性が高くなることがある。したがって、創傷部位および創傷被覆材の向きによって、重力が、創傷滲出液がオリフィス145の方へ吸い込まれる速度を速くするように働く場合、フィルタが創傷滲出液によってより急速に閉塞されることがある。したがって、創傷滲出液をより頻繁に交換し、かつ吸収層110の吸収容量に達する前に交換することが必要になる。
オリフィス145の方へ吸い込まれる創傷滲出液によって創傷被覆材100が早い時期に閉塞されるのを避けるために、本発明のいくつかの実施形態は、創傷滲出液がオリフィス145の方へ移動する速度を遅くするように構成された少なくとも1つの要素を含む。この少なくとも1つの要素は、オリフィス145に達する前に吸収層に吸収される滲出液の量を増やすこと、および/または創傷滲出液がオリフィス145に達する前に辿る経路を長くし、それによって創傷滲出液が遮断されるまでの時間を延ばすことを実施してもよい。
図3は、図1および図2に示す被覆材の一部の断面図を示している。特に、図3は、下面101と、貫通穴として形成された複数の穿孔104とを含む、創傷接触層102の拡大図を示している。創傷接触層の上面103は、透過層105の第1の層300に当接している。透過層105のさらなる上部層301が、第1の層から離れた位置に位置している。透過層の第1の層およびさらなる層は、透過層の2つの層を分離する弾力のある可撓性の柱状物として働く複数のモノフィラメント繊維スペーサ302によって、離れた位置関係で、離れた状態に維持されている。透過層の上部層301は、吸収層110の下面に隣接しており、吸収層110は、たとえば、高吸収性粒子状物質によって空間を占められた繊維状セルロース材料のパッドとして形成されている。
図4は、より詳細に、3D布透過層の下部層を示している。3D布層105は、編み構造によってロフト(loft)が与えられた下部および上部編み層として形成されている。編みステッチ(stitches)の列は、ステッチのコースと称されてもよい。ステッチの行は、ホエール(whale)と称されてもよい。単一のモノフィラメント繊維は、3D布へと編まれ、複数の分離する撚り糸を形成する。
図4に示すように、透過層105の下部層の中において、連結されたステッチ同士の間に形成された開口または開口部が存在する。使用時に、液体材料および半固体材料(たとえば、粘性を有するスラリー、生物学的破片の懸濁など)、ならびに固体材料を含む創傷滲出液が、創傷接触層の中の穿孔104を通って、および、透過層の第1の層300の内部編み構造の中の開口部を通って上方に通過する。相互接続されたステッチ同士の間の開口部は、約250ミクロンから450ミクロンの範囲にある平均開口面積を有する。透過層の第1の層の中の特定の開口面積は、下部層の製造の材料および方法によって決定されることとなる。図5は、第1の層の上方(すなわち、創傷からさらに離れている)のさらなる層の中の開口部の開口面積が、どのように、下部層の中の開口部よりも大きい開口面積を有する開口部を含むことが可能であるかについて示している。このようにして、半固体物質および固体物質を含む創傷滲出液が、創傷部位における創床から、創傷被覆材の中へ上方に移動するときに、下部層の中の相対的に小さい開口部400を通過するのに十分に小さいサイズの任意の粒子状物質は、確実に、上部領域の中のより大きい面積の開口部501を通過することが可能となる。このことは、上部層と下部層との間のモノフィラメント繊維同士の間の間質領域(interstitial region)に、固体材料の形態の破片が収集されることを避けるのを助ける。図5に示すように、上部層301は、下部層300の開口部400と同様の開口部500を含んでもよい。しかし、編みプロセスの間に、より大きい開口面積の開口部501が上部層の表面全体にわたって散在されるように、上面が編まれる。図5に示すように、より大きい開口面積の開口部501は、かなり大きい開口範囲(700ミクロンと800ミクロンの間で示されている)を有することができる。したがって、下部層300は、ある程度、開口部400を有するフィルタリング層として働き、開口部400は、気体および液体がそれを自由に通過することを可能にするが、大き過ぎる固体および半固体粒子状物質が透過層105の間質領域の中へ移ることを妨げること可能にする。このことは、透過層に沿う流路を開放した状態に維持するのを助ける。
下部領域の任意の開口部よりも大きい開口面積を有する、透過層の上部層の開口部を設けることによって、透過層の上部層と下部層との間の間質領域における固体粒子状物質の蓄積が避けられる。何故なら、任意の固体物質または半固体物質が、流路に沿って流れることとなり、かつ、最終的に、材料が高吸収性材料によって取り込まれる、より大きい開口部を上方へ通過することが可能となるからである。
吸収層110は、陰圧療法の適用時に収集された液体を保持する。この層を透過層の層に流体連通させ、および、好ましくは、接触させることによって、透過層105の領域は、湿潤環境に維持される。このことは、使用時の滲出液の蓄積および痂皮形成を避けるのを助ける。
図6は、創傷被覆材の透過層として利用され得る代替材料を示している。特に、図6は、透過層として利用されてもよい3Dニット材料の下面を示している。開口部600が、表面に形成されており、それは、創傷滲出液および空気が、創傷から、図6に示す表面上に位置付けられる創傷接触層を通過し、かつ、それらの開口部を通過することを可能にする。図7は、図6に示す材料の上面を示しており、どれほど大きな開口部700が、上面に形成されてもよいかということについて示している。
透過層が3Dニット層として形成されており、すなわち、2つの層がモノフィラメント層によって離れた位置に位置する、本発明の特定の実施形態がこれまで説明されてきたが、本発明の特定の実施形態は、そのような材料の使用に制限されないということが諒解されよう。適切な形態において、そのような3Dニット材料の代替として、多種多様の材料の1つまたは複数の層が利用され得る。それぞれの場合では、本発明の実施形態によれば、透過層の層によって提供された開口部は、使用時に創傷に近位に位置付けられることとなる被覆材の側から離れる方向に移動するにしたがって、益々幅広になる。適切な形態において、透過層は、複数の連続気泡発泡体の層によって設けられてもよい。適切な形態において、発泡体は、網状の連続気泡発泡体である。適切な形態において、発泡体は、親水性であり、または、水性流体を移動させることが可能である。それぞれの層の孔サイズは、使用時に創傷側に最も近位である発泡体層において、孔が最小のサイズを有するように選択される。第1の層の孔サイズよりも大きい孔サイズを含む、1つのさらなる発泡体層が利用されればよい。このことは、固体微粒子が下部層に捕らえられることを避けるのを助け、それは、したがって、下部層を開放構成の状態に維持することを助け、開放構成の状態では、したがって、被覆材にわたって空気を送ることができる。適切な形態において、2つ、3つ、4つ以上の発泡体層が含まれてもよい。たとえば、大きい孔サイズを有する発泡体を選択することによって、および、次いで、これを、孔を詰まらせることとなる材料の中へ益々少ない程度に繰り返し浸すことによって、発泡体層は、一体的に形成されてもよく、あるいは、代替的に、異なる種類の発泡体を層状構成に積層することによって、または、発泡体のそのような層を周知のように適切な位置に固定することによって、複数の発泡体層によって形成された透過層が設けられてもよい。
適切な形態において、本発明の特定の実施形態によれば、透過層は、発泡体または3Dニット材料の代わりに、複数のメッシュの層によって形成される。たとえば、創傷に対して、透過層の側に面して、細かいガーゼメッシュが、利用されてもよく、かつ、ガーゼメッシュの遠位側に、使用時に創傷から離れる方向に面して、より大きい孔サイズを有するヘシアンメッシュが位置付けられてもよい。1つ、2つ、または、3つ以上のメッシュの層が、縫い合わせられるか、または、接着されるなどのように、適切な方法で固定され得る。結果として生じる繊維のマットは、伝達層を設け、それを通って、空気が、被覆材の中に伝達されることが可能であるが、メッシュの開口部サイズを選択することによって、空気が創傷の接触側から離れる方向に被覆材を通って移動するときに、下部層の中の固体粒子状物質の蓄積を避けることができる。
図8は、ポンプ800と組み合わされた創傷被覆材100を備えるTNP創傷治療の実施形態を示す。ここで、被覆材100は、前述のように創傷の上方に配置されてもよく、次いで、ポート150に導管220が連結されてもよい。ただし、いくつかの実施形態において、被覆材100には、少なくとも導管220の一部がポート150に事前に取り付けられていてもよい。被覆材100は、全ての創傷被覆材要素(ポート150を含む)が事前に取り付けられ、単一のユニットとして一体化された単一の物品として設けられることが好ましい。次に、創傷被覆材100は、導管220を介して、ポンプ800などの陰圧源に連結されてもよい。ポンプ800は小形化され持ち運び可能であることが好ましい。ただし、より大きな従来のポンプを被覆材100と一緒に使用してもよい。いくつかの実施形態において、ポンプ800は、被覆材100上に取り付けられるかまたは搭載されてもあるいは被覆材100に隣接する位置に取り付けられるかまたは搭載されてもよい。たとえば被覆材の交換時に有用である場合がある、創傷被覆材100に至る導管220のポンプからの切り離しを可能にするようにコネクタ221が設けられてもよい。
図9A〜図9Dは、患者の創傷部位を治療するのに使用されているTNP創傷治療システムの一実施形態の使用法を示す。図9Aは、創傷部位190が洗浄され治療の準備が行われている状態を示す。ここで、創傷部位190を囲む正常な皮膚を洗浄し、余分な毛を除去するかまたは剃ることが好ましい。必要に応じて、滅菌生理食塩水によって創傷部位190を潅注してもよい。場合によっては、創傷部位190を囲む皮膚に皮膚保護剤を塗ってもよい。必要に応じて、発泡体またはガーゼのような創傷充填材料を創傷部位190に配置してもよい。このことは、創傷部位190がより深い創傷である場合に好ましいことがある。
創傷部位190を囲む皮膚が乾燥した後、次に図24Bを参照して、創傷被覆材100を創傷部位190の上方に位置させ配置してもよい。創傷接触層102が創傷部位190の上方に位置しならびに/または創傷部位190に接触するように創傷被覆材100を配置することが好ましい。いくつかの実施形態では、場合によっては、創傷部位190の上方に創傷被覆材100を配置する前に除去すべき任意の剥離層によって保護されてもよい接着剤層が、創傷接触層102の下面101上に設けられる。被覆材100は、ポート150が被覆材100の残りの部分に対して隆起した位置に配置されて流体がポートの周りに溜まるのを避けるように位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、被覆材100は、ポート150が創傷を直接覆わず、創傷と同じ高さまたは創傷よりも高い点に配置されるように位置する。TNPが適切に密封されるのを助けるために、被覆材100の縁部は、折り目をつけられたり折り畳まれたりしないように平滑にされることが好ましい。
次に、図9Cを参照する。被覆材100がポンプ800に連結されている。ポンプ800は、被覆材100を介し、通常は導管を通して創傷部位に陰圧を加えるように構成されている。いくつかの実施形態では、上記に図8において説明したように、コネクタを使用して被覆材100からの導管をポンプ800に接合してもよい。ポンプ800によって陰圧が加えられると、被覆材100は、いくつかの実施形態において、部分的に潰れ、被覆材100の下方の空気の一部または全てが真空排気される結果としてしわの寄った外観を呈する。いくつかの実施形態において、ポンプ800は、被覆材100と創傷部位190を囲む皮膚との間の界面など被覆材100に漏れがあるかどうかを検出するように構成されてもよい。漏れが見つかった場合、治療を続ける前にそのような漏れを解消しておくことが好ましい。
図9Dを参照する。被覆材100の縁部の周りに追加の固定ストリップ195が取り付けられてもよい。そのような固定ストリップ195は、状況によっては、創傷部位190を囲む患者の皮膚に対して追加的な密封を実現するうえで有利である場合がある。たとえば、固定ストライプ195は、患者の動きがより激しいときのためにさらなる密封を実現してもよい。場合によっては、特に、到達するのが困難であるかまたは起伏のある領域の上方に被覆材100を配置する場合、ポンプ800を作動させる前に固定ストリップ195を使用してもよい。
創傷部位190の治療は、創傷が所望の治癒レベルに達するまで継続することが好ましい。いくつかの実施形態では、ある期間が経過した後、または被覆材が創傷流体で満杯になった場合に、被覆材100を交換することが望ましいことがある。そのような交換時には、ポンプ800を維持し、被覆材100のみを交換してもよい。
本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、「comprise(備える)」および「contain(含む)」ならびにこれらの語の変形形態は、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味し、他の部分、添加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図したものではない(かつ実際に除外しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、単数形は、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて複数形を包含する。特に、本明細書では、不定冠詞が使用されている場合、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて、単数形だけではなく複数形も考慮されていることを理解されたい。
本発明の特定の態様、実施形態、または例に関連して説明した要素、整数、特徴、化合物、化学的部分、または化学基は、本明細書で説明した実施形態または例の他のいずれかの態様に、適合不能でないかぎり適用可能であることを理解されたい。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された全ての特徴、および/または、同様に開示された任意の方法もしくはプロセスの全てのステップは、そのような特徴および/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された全ての特徴のうちの任意の新規のもの、または、任意の新規な組合せに拡張されるか、または、同様に開示された任意の方法もしくはプロセスのうちの任意の新規のもの、または、任意の新規な組合せに拡張される。
本出願と関連して、本明細書と同時に、または、本明細書の以前に提出され、かつ、本明細書とともに公衆の閲覧に付される全ての論文および文献に、読者の注目が向けられ、全てのそのような論文および文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
さらに、本願発明においては、以下の実施形態を好しく含む。
[項目1]
局所陰圧(TNP)療法を創傷部位に適用する装置であって、
第1の開口面積をそれぞれ有する複数の開口部を備える第1の層と、
第1の層から離れたさらなる層であって、さらなる開口面積をそれぞれ有する複数のさらなる開口部を備えるさらなる層と、
前記第1の層および前記さらなる層の上方にあるカバー層であって、空気不透過性及び水蒸気透過性のあるカバー層と、を備え、
前記第1の層と前記さらなる層との間の領域が、創傷部位から流れる空気若しくは創傷滲出液、又はその両方のための流路の一部を備え、前記第1の開口面積が、前記さらなる開口面積よりも小さい、装置。
[項目2]
前記さらなる層と前記カバー層との間に吸収性材料を備える吸収層をさらに備える、項目1に記載の装置。
[項目3]
前記吸収層が、高吸収性粒子が散在された不織層を備える、項目2に記載の装置。
[項目4]
穿孔された支持層および少なくとも1つの接着層を備える創傷接触層をさらに備える、項目1から3のいずれか一項に記載の装置。
[項目5]
前記第1の層およびさらなる層が、流路層の下部層および上部層を備える、項目1から4のいずれか一項に記載の装置。
[項目6]
前記流路層が、編みモノフィラメントによって離れた位置に位置された前記第1の層およびさらなる層を備える3-Dニット層を備える、項目5に記載の装置。
[項目7]
前記第1の層の前記開口部が、隣接する前記3-Dニットのステッチ同士の間に形成された開口部を備え、前記さらなる開口部が、前記3-Dニットのそれぞれのステッチがひっくり返された場所に形成された開口部を備える、項目6に記載の装置。
[項目8]
前記3-Dニット層が、1.5mm以上の大きさのロフトを有する、項目6または項目7に記載の装置。
[項目9]
前記3-Dニット層が、2mm以上の大きさのロフトを有する、項目6または項目7に記載の装置。
[項目10]
前記カバー層に固定された吸引ポートをさらに備える、項目1から9のいずれか一項に記載の装置。
[項目11]
前記創傷部位から真空ポンプへ液体が移動することを妨げるように位置付けられたフィルタ要素をさらに備える、項目1から10のいずれか一項に記載の装置。
[項目12]
さらなる穴の開口面積は、任意の固体材料が、第1の穴の開口面積を通過し、前記さらなる穴を前記カバー層に向かって通過することを可能にする、項目1から11のいずれか一項に記載の装置。
[項目13]
項目1から12のいずれか一項に記載の装置を備える、創傷被覆材。
[項目14]
局所陰圧(TNP)療法を創傷部位に適用する方法であって、
創傷部位の上方に位置付けられた創傷被覆材に流体連通する真空ポンプによって、前記創傷部位に陰圧を加えるステップと、
前記被覆材のカバー層を通って液体が蒸発するときに、前記創傷被覆材の流体流路領域の閉塞を妨げるステップとを含む方法。
[項目15]
所定の最大断面と等しいか、または、所定の最大断面よりも小さい第1の開口面積をそれぞれ有する複数の開口部を備える第1の層によって、前記所定の最大断面よりも大きいサイズを有する固体材料が、前記流路領域に進入するのを妨げるステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
[項目16]
前記創傷被覆材のさらなる層のさらなる開口部によって、前記流路領域における固体材料の蓄積を妨げるステップであって、前記さらなる開口部が、前記第1の開口面積よりも大きいそれぞれのさらなる開口面積をそれぞれ有する、ステップを含む、項目15に記載の方法。
[項目17]
前記流路領域の近位にある前記創傷被覆材の吸収層の中に液体を格納することによって、前記流路領域における固体材料の蓄積を妨げるステップを含む、項目14から16のいずれか一項に記載の方法。
[項目18]
実質的に、本明細書において添付の図面を参照して説明したような方法。
[項目19]
実質的に、上記に添付の図面を参照して説明したように構成され配置される装置。