JP2013511032A - 較正試薬およびその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、リンカーを介してタンパク質担体に結合されているペプチドを含む較正試薬であって、該ペプチドが関心対象のエピトープを含む較正試薬、およびその使用を提供する。
Description
微量の生物試料(例えば、細胞溶解物、組織溶解物、または体液)中の様々なシグナル伝達カスケードの鍵となる分析物に相当する重点的に取り扱うタンパク質セットを解析するための簡便な方法として、逆相タンパク質アレイ(RPA)が近年開発され確立された。鍵となる特定のタンパク質だけでなく、そのような鍵となるタンパク質の活性化され翻訳後修飾された(例えばリン酸化された)形態の存在量を表すタンパク質発現の相対的差異によって、例えば、細胞培養物に与えられる薬学的化合物の特異的治療効果、例えば、キナーゼに対する薬物候補の阻害効果を説明および分類するか、または様々な疾患状態、例えば、様々な進行状態にある腫瘍の亜型を説明および分類することができる。RPAでは、多くの試料、例えば、異なる方法で処理した細胞培養物に由来する試料または様々な疾患集団に由来する試料の比較測定を同時に実施することができる。異なる試料コホートにおいて見出される、タンパク質発現またはタンパク質活性化パターンの顕著な変化を知ることによって、例えば、最も効率的な薬物候補の同定、治療によって引き起こされる作用様式スキームの解明、または新しい診断/予後疾患マーカーの発見が進展する。
逆相タンパク質アレイ(RPA)において使用されるようなイムノアフィニティーアッセイは、親和性試薬と関心対象のタンパク質との特異的相互作用に基づいている。このアッセイは、試料スポットを形成するアレイ上への生物試料の固定化を含む。試料を載せられたアレイは、親和性試薬、すなわち抗体と共にインキュベートされ、親和性試薬と関心対象のタンパク質とのその後に形成された複合体が、生成された検出シグナル、例えば発光シグナルに基づいて測定される。各アレイは、分析物に特異的な親和性試薬で染色され、この親和性試薬は、標識することができるか、または二次検出試薬と共にインキュベートされる。形成された複合体は、様々な手段(比色、蛍光、化学発光など)によって検出される。典型的には、RPAは、様々な試料間の発現シグナルまたは活性化シグナルの相対的変化を測定する。
試料の定量的解析は、較正試薬の使用を必要とする。現在、タンパク質分析物の場合、較正試薬は、分析物と同じアミノ配列を有する組換えタンパク質である。例えば、特許出願WO2007/048436A1(特許文献1)では、逆相タンパク質マイクロアレイの較正曲線を説明しており、その際、関心対象の様々な濃度の精製タンパク質(Akt)が、BSAまたはラット血清を含むスポット用緩衝液に添加された。しかしながら、正確なエピトープを提示する組換えタンパク質の作製は時間がかかり、成功しないことが多い。特に、リン酸化エピトープの場合、信頼性が高い較正試薬はこれまでのところ入手不可能である。
したがって、関心対象の様々な分析物エピトープに対して選択可能な特異性を有する普遍的適応性を提供するように設計された試薬が必要とされている。これがあれば、例えば、別々の時間に、異なる実験者(lab personal)によって、異なる装置を用いて、または異なるプリント作業(print run)で構築されたアレイを用いて実施された実験の結果を較正することが可能になると思われる。また、各親和性試薬によって生じさせるべきタンパク質特異的RPAシグナルの直線範囲をあらかじめ最適に定義することができる。
したがって、本発明は、リンカーを介してタンパク質担体に結合されているペプチドを含む較正試薬であって、該ペプチドが関心対象のエピトープを含む、較正試薬を提供する。好ましくは、前記関心対象のエピトープはリン酸化されている。
この較正試薬を用いて、RPAまたは別の親和性アッセイによってタンパク質を定量するための信頼性が高い検量線を作成することができる。RPAは、ロボット式マイクロアレイヤーをしばしば用いて、少ない試料体積の、例えば細胞溶解物または組織溶解物を結合力の強い(highly binding)基板表面に沈着させることによって構築される。基板上の各溶解物スポットは、細胞タンパク質および分析物の全必要量(full complement)を含む。何百もの試料を同時に1つのマイクロアレイ中にスポットすることができるので、同じアッセイにおいて試料をハイスループットに相互比較することが可能になる。スポット当たりの試料体積の消費は極めて少ないため、同じ試料セットを含む複製アレイを、同じ初期体積の試料材料から容易に作製することができる。
本発明の較正試薬は、関心対象のリン酸化エピトープを含むタンパク質を定量するために特に有用である。
「関心対象のエピトープ」という用語は、関心対象の親和性試薬によって認識されるポリペプチド部分を意味する。関心対象の親和性試薬は、好ましくは、関心対象のエピトープに対して特異的である。
本明細書において使用される「エピトープペプチド」という用語は、関心対象のエピトープを含むペプチドを意味する。エピトープペプチドは、好ましくは、12〜25の間のアミノ酸長である。より好ましくは、ペプチドの長さは、12〜20、最も好ましくは14〜17アミノ酸長である。
関心対象のエピトープは、修飾、例えばリン酸化されてよい。本明細書において使用される「リン酸化エピトープ」という用語は、リン酸基を有するアミノ酸を少なくとも1つ含むエピトープを意味する。好ましくは、関心対象のエピトープは、1〜5個のリン酸化アミノ酸を含む。好ましくは、修飾されるアミノ酸の位置は、エピトープペプチドのほぼ中央である。例えば、15アミノ酸長のペプチドにおいて、修飾されるアミノ酸は、好ましくは7番目、8番目、および/または9番目の位置にある(図2Cを参照されたい)。アミノ酸を修飾するための(例えば、リン酸化するための)方法は、当業者に周知である。
エピトープペプチドは、リンカーを介してタンパク質担体に共有結合しており(図1Aを参照されたい)、その際、エピトープペプチドがリンカーに共有結合し、リンカーがタンパク質担体に共有結合している。好ましい態様において、リンカーは、BSAの遊離N末端システイン(Cys)基に共有結合しており、遊離Cys基は、ジスルフィド架橋に関与していない残基である。
エピトープペプチドは、本質的に2つの段階でタンパク質担体に結合させることができる:
段階1)好ましくはタグで標識されたリンカーが、エピトープペプチドに結合される。リンカーは、ペプチドのN末端またはC末端に結合されてよい。好ましくは、リンカーは、ペプチドのN末端に結合される。
段階2)リンカーの遊離末端が、タンパク質担体に結合される。
段階1)好ましくはタグで標識されたリンカーが、エピトープペプチドに結合される。リンカーは、ペプチドのN末端またはC末端に結合されてよい。好ましくは、リンカーは、ペプチドのN末端に結合される。
段階2)リンカーの遊離末端が、タンパク質担体に結合される。
リンカーまたはスペーサーは、2〜10個の、好ましくは2〜5個の、より好ましくは3〜4個の天然アミノ酸または非天然アミノ酸を含むペプチドである。天然アミノ酸とは天然に存在するアミノ酸であり、具体的には(in particular)、アラニン、システイン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、メチオニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンなどである。非天然アミノ酸とは、天然に存在しないアミノ酸である。非天然アミノ酸の例は、8-アミノ-3,6ジオキサ-オクタン酸(Doa)およびアミノオキシ酢酸である。
リンカーは親水性であり、天然アミノ酸だけを含むか、もしくは非天然アミノ酸だけを含むか、または天然アミノ酸および非天然アミノ酸の両方の混合物を含んでよい。好ましくは、リンカーは、1つまたは複数の次の天然アミノ酸を含む:システイン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸。また、好ましくは、リンカーは、1つまたは複数のDoaを含む。より好ましくは、リンカーは、システイン-Doa-Doaである。
好ましくは、リンカーはDabsylで標識される。
特定のアミノ酸配列を有するペプチドを作製するための方法は、当業者に周知である。適切な方法は、例えば、Merrifield, Science 1986, 232:341-347 (方法)およびCarpino et al., J. Am. Chem. 1990, 112: 9651-52(試薬)において説明されている固相合成である。
タンパク質担体は、表面に非特異的に結合するタンパク質である。好ましくは、タンパク質担体は、少なくとも20kDaのタンパク質であり、親和性アッセイにおいて使用される親和性試薬との交差反応性を全く示さないか、または低い交差反応性を示す。タンパク質担体は、好ましくはアルブミン、より好ましくは、例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンである。好ましい血清アルブミンはBSAである。
「関心対象の親和性試薬」とは、関心対象のエピトープを認識し結合する試薬である。好ましくは、関心対象の親和性試薬は、関心対象のエピトープに対して特異的かつ選択的である。親和性試薬は、抗体、アプタマー、または設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)でよい。好ましくは、親和性試薬は抗体である。
「関心対象の抗体」は任意の抗体でよい。好ましくは、前記抗体はIgG抗体、より好ましくはモノクローナル抗体である。関心対象の抗体には、ヒト化抗体およびげっ歯動物抗体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。げっ歯動物抗体には、マウス抗体、ウサギ抗体、およびラット抗体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。好ましくは、抗体はウサギモノクローナル抗体である。
「関心対象のアプタマー」は、関心対象のエピトープに高い親和力で結合する、15〜60塩基長の一本鎖RNAオリゴヌクレオチドまたは一本鎖DNAオリゴヌクレオチドである。
「設計されたアンキリンリピートタンパク質」または「DARPin」は、少なくとも1つのアンキリンリピートを含む結合分子である。アンキリンリピートは、ループによって隔てられた2つのαヘリックスからなる、タンパク質中のモチーフであり、多種多様の標的タンパク質を特異的に認識するように選択され得る。アンキリンリピートの典型的な長さは、33アミノ酸である。抗体とは違って、これらはジスルフィド結合を1つも含まず、すべての細胞コンパートメント中に存在する。
さらに、本発明は、検量線を作成するための前述した較正試薬の使用を提供する。本発明は、以下の段階を含む、検量線を作成するため方法を提供する:
a)2種またはそれ以上の濃度の前述した較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、および
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階。
a)2種またはそれ以上の濃度の前述した較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、および
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階。
検量線または較正曲線は、定量調査の道具、つまりある物質の濃度、すなわち関心対象のエピトープの濃度を決定するために使用される、分析データをプロットする方法である。
「結合された親和性試薬」という用語は、関心対象のエピトープを含むタンパク質またはペプチドと複合体を形成する親和性試薬を意味する。形成された複合体は、例えば、比色、蛍光、または化学発光などの様々な手段によって検出される。
親和性試薬は、親和性試薬に結合させた検出可能な標識によって検出することができる。好ましくは、該標識は蛍光体であり、それによって、結合された抗体の量を蛍光強度に基づいて測定することが可能になる。他の適切な標識は、例えば、アルカリホスファターゼ(AP)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。
また、親和性試薬は、二次検出試薬によって検出することもできる。二次検出試薬は、親和性試薬に選択的に結合する、標識された分子である。マイクロアレイ上の結合された親和性試薬は、例えば、標識され、かつ親和性試薬の種特異的エピトープを認識する二次抗体またはFab断片を用いることによって検出することができる。適切な標識には、蛍光体、ビオチン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、および同位体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。好ましくは、二次検出試薬(例えば二次抗体)は、蛍光体で標識されている。
較正試薬に結合された親和性試薬の量は、好ましくは、蛍光シグナルのような光学的シグナルによって検出される。
親和性試薬の検出可能なシグナルを測定し、各シグナルを関心対象のエピトープの濃度に帰することによって、関心対象の結合された親和性試薬の量と関心対象のエピトープの量との相関関係が示される。これらの結果は検量線中に表示される。検量線は、(X軸上の)関心対象のエピトープの濃度に対して(Y軸上の)各濃度の関心対象のエピトープに結合された関心対象の親和性試薬の測定量をプロットすることによって描くことができる。結合された親和性試薬の量は、通常、検出シグナルの強さ(シグナル強度)として表示される。好ましくは、前記シグナルは、光学的シグナル、より好ましくは蛍光強度である。典型的には、検量線を作成するために、アレイ上のスポットは、好ましくは系列希釈(例えば、2倍希釈の系列)として様々な濃度の較正試薬を含む。
濃度が公知である較正試薬中の関心対象のエピトープの濃度は、1つのタンパク質担体に結合されるペプチドの数である、ペプチド:担体の比を求めることによって得られる。
ペプチド:担体の比を求めるための方法は、当業者に周知である。適切な方法は、例えば、次の段階を含む方法である:段階1:例えば光度計による吸光度測定によって、結合されたペプチドの濃度を測定する段階であって、ペプチドまたはそれらのペプチドに結合されたリンカーが好ましくはタグ(例えばDabsyl)で標識されている段階;段階2:ブラッドフォード試験によって、結合産物の全タンパク質濃度を測定する段階、および段階3:ペプチド:タンパク質の比を計算する段階。好ましくは、リンカーは、ペプチド:タンパク質担体の比を求めるのを可能にする、例えばDabsylのようなタグで標識される。本発明の方法で使用するのに適した比は、最高10およびそれ以上でよい。好ましくは、比は3未満、より好ましくは、比は1以下、最も好ましくは、比は0.3〜1の間である。
関心対象の親和性試薬は、少なくとも30分間、好ましくは1時間より長い時間、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)、アレイ上でインキュベートされる。過剰な親和性試薬は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
アレイは、疎水性表面を有し、表面へのタンパク質の結合を可能にする固体支持体である。RPAおよび他の親和性アッセイのためのアレイは市販されており、当業者に周知である。較正試薬は、担体タンパク質とアレイ表面との相互作用によってアレイ上に固定される。疎水性表面への非特異的結合を避けるために、スポット型アレイは好ましくは、例えばBSAのような非特異的タンパク質で続いてコーティングされる。
較正試薬は、2種またはそれ以上の濃度でアレイ上に添加される。好ましくは、添加される濃度は、希釈系列(例えば、1:2、1:5、または1:10の希釈系列)を構成する。較正試薬は、好ましくは、少なくとも3種の異なる濃度で添加される。より好ましくは、較正試薬は、3〜20種の異なる濃度で添加され、さらにより好ましくは、5〜15種の異なる濃度である。
較正試薬は、スポットとしてアレイ上の所望の位置に添加され得る。較正試薬は典型的には緩衝液中に溶解される。緩衝溶液は、弱酸とその共役塩基または弱塩基とその共役酸の混合物からなる水溶液である。適切な緩衝液は、例えば、CSBLスポット用緩衝液(製品番号9020、Zeptosens, Witterswil, Switzerland)である。好ましい態様において、該緩衝液は、基質タンパク質を含む。好ましい基質タンパク質はBSAであり、より好ましくは、基質タンパク質はアセチル化BSAである。典型的には、添加される較正試薬溶液は、関心対象の親和性試薬と共にアレイをインキュベートする前に、乾燥させられる。
典型的には、アレイ上の較正試薬のスポットは、フィールド中に並べられる。アレイフィールドは、例えば、四角、長方形、円、および三角形などの幾何学的領域を形成し得る。アレイレイアウトの例が、図1Bおよび図12において示される。2つのフィールド中のスポットは、例えば、異なる希釈系列(異なる濃度範囲)を有してよい。典型的には、陽性対照および陰性対照が、較正試薬とは異なるフィールド中に並べられる。
検量線を用いて、較正試薬と同じ方法で処理された(proceeded)試料中の関心対象のタンパク質の濃度を逆算することができる。
したがって、本発明は、以下の段階を含む、生物試料中の関心対象のエピトープを含むタンパク質を定量するための方法を提供する:
a)i)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬と、
ii)1種または複数種の生物試料と
をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬および1種または複数種の各生物試料について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階、ならびに
e)1種または複数種の生物試料中の関心対象のエピトープを含むタンパク質を定量する段階。
a)i)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬と、
ii)1種または複数種の生物試料と
をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬および1種または複数種の各生物試料について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階、ならびに
e)1種または複数種の生物試料中の関心対象のエピトープを含むタンパク質を定量する段階。
生物試料は、生物由来のものであり、分子の複合混合物である。試料は、例えば、細胞溶解物、細胞抽出物、体液(例えば、全血、血清、血漿、尿、組織液、滑液、涙、尿、唾液、およびリンパ)によって形成され得る。試料は、分画されていても(fractioned)分画されていなくても(non-fractioned)よい。
生物試料は、較正試薬と同様に、アレイ上の所望の位置にスポットとして添加される。生物試料は、緩衝液で希釈しても希釈しなくてもよい。好ましい態様において、該緩衝液は、基質タンパク質を含む。好ましい基質タンパク質はBSAであり、より好ましくは、基質タンパク質はアセチル化BSAである。典型的には、添加される試料は、関心対象の親和性試薬と共にアレイをインキュベートする前に、乾燥させられる。
典型的には、アレイ上の生物試料および較正試薬のスポットは、フィールド中に並べられる。アレイフィールドは、例えば、四角、長方形、円、および三角形などの幾何学的領域を形成し得る。アレイレイアウトの例が、図1Bおよび図12において示される。好ましくは、生物試料のスポットは、較正試薬のスポットとは別のフィールドに並べられる。
好ましくは、較正試薬の添加濃度は、希釈系列を形成する(例えば、1:2、1:5、または1:10の希釈系列)。また、較正試薬は、少なくとも3種の異なる濃度で添加されることが好ましい。より好ましくは、較正試薬は、3〜20種の異なる濃度で添加され、5〜15種の異なる濃度が、さらにより好ましい。生物試料中の関心対象のペプチドの予想濃度に近く、かつ検出方法の機能範囲内で較正試薬の濃度範囲を選択する方法は、当業者に周知である。
関心対象の親和性試薬は、アレイ上で少なくとも30分間インキュベートされ、好ましくは、アレイ上で1時間より長く、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)インキュベートされる。過剰な親和性試薬は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
さらに、本発明は、関心対象の親和性試薬の検出下限値、感度、およびダイナミックレンジ(dynamic range)を決定することによって親和性試薬を特徴付けるための、前述の検量線の使用も提供する。
「検出下限値(LOD)」という用語は、親和性試薬を用いて検出できる関心対象のエピトープの最小量を意味する。親和性試薬の「ダイナミックレンジ」という用語は、測定可能な較正試薬の濃度範囲を意味する。典型的には、ダイナミックレンジは検量線を用いて決定され、その際、ダイナミックレンジは、測定されたシグナルに対して直線的相関またはほぼ直線的な相関がある較正試薬濃度の範囲である。「検出下限値」および「ダイナミックレンジ」という用語は、当業者に周知である。
したがって、本発明は、以下の段階を含む、関心対象の親和性試薬の検出下限値を決定するための方法を提供する:
a)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階、および
e)親和性試薬を用いて検出できる関心対象のエピトープの最小量を決定する段階。
a)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階、および
e)親和性試薬を用いて検出できる関心対象のエピトープの最小量を決定する段階。
好ましい態様において、検出可能な関心対象のエピトープの最小量は、ブランクで測定されたシグナル+ブランクの標準偏差の3倍に対応する濃度を逆算することによって決定することができる。ブランクのレベルとは、較正試薬を含まないが、較正試薬を含む試料とその他の点は同一である試料の検出シグナルである。
較正試薬は、前述したようにして添加される。好ましくは、添加される2種またはそれ以上の濃度は、希釈系列(例えば、1:2、1:5、または1:10の希釈系列)を形成する。また、較正試薬は、好ましくは、少なくとも3種の異なる濃度で添加される。より好ましくは、較正試薬は、3〜20種の異なる濃度で添加され、5〜15種の異なる濃度が、さらにより好ましい。
関心対象の親和性試薬は、アレイ上で少なくとも30分間インキュベートされ、好ましくは、アレイ上で1時間より長く、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)インキュベートされる。過剰な親和性試薬は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
本発明は、以下の段階を含む、関心対象の親和性試薬の感度を決定するための方法を提供する:
a)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにし、それによって検量線を作成する段階、
e)検量線の直線部分を決定する段階、および
f)検量線の直線部分の傾きを決定する段階。
a)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにし、それによって検量線を作成する段階、
e)検量線の直線部分を決定する段階、および
f)検量線の直線部分の傾きを決定する段階。
較正試薬は、前述したようにして添加される。好ましくは、添加される2種またはそれ以上の濃度は、希釈系列(例えば、1:2、1:5、または1:10の希釈系列)を形成する。また、較正試薬は、好ましくは、少なくとも3種の異なる濃度で添加される。より好ましくは、較正試薬は、3〜20種の異なる濃度で添加され、5〜15種の異なる濃度が、さらにより好ましい。
関心対象の親和性試薬は、アレイ上で少なくとも30分間インキュベートされ、好ましくは、アレイ上で1時間より長く、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)インキュベートされる。過剰な親和性試薬は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
本発明は、以下の段階を含む、関心対象の親和性試薬のダイナミックレンジを決定するための方法を提供する:
a)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにし、それによって検量線を作成する段階、
e)検量線の直線部分を決定する段階、および
f)検量線の直線部分に相当する関心対象の較正試薬の濃度範囲を決定する段階。
a)2種またはそれ以上の濃度の前述の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにし、それによって検量線を作成する段階、
e)検量線の直線部分を決定する段階、および
f)検量線の直線部分に相当する関心対象の較正試薬の濃度範囲を決定する段階。
較正試薬は、前述したようにして添加される。好ましくは、添加される2種またはそれ以上の濃度は、希釈系列(例えば、1:2、1:5、または1:10の希釈系列)を形成する。また、較正試薬は、好ましくは、少なくとも3種の異なる濃度で添加される。より好ましくは、較正試薬は、3〜20種の異なる濃度で添加され、5〜15種の異なる濃度が、さらにより好ましい。
関心対象の親和性試薬は、少なくとも30分間インキュベートされ、好ましくは、アレイ上で1時間より長く、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)インキュベートされる。過剰な親和性試薬は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
さらに、較正試薬は、親和性試薬の特異性を決定するためにも使用され得る。本明細書において使用される「特異性」という用語は、関心対象のエピトープに対する親和性試薬の選択性を意味する。特異性の低い親和性試薬は、関心対象のエピトープ以外のエピトープにも結合する。
したがって、本発明は、以下の段階を含む、親和性試薬の特異性を決定するための方法を提供する:
a)i)関心対象のエピトープを含む前述の較正試薬と、
ii)タンパク質担体に結合された対照ペプチドを含む少なくとも1種の試料であって、該対照ペプチドが関心対象のエピトープを含まない、少なくとも1種の試料と
をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共にアレイをインキュベートする段階、
c)アレイ上の結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、ならびに
d)較正試薬の関心対象のエピトープと相関関係にあるシグナル強度を、対照ペプチドと相関関係にあるシグナル強度と比較する段階。
a)i)関心対象のエピトープを含む前述の較正試薬と、
ii)タンパク質担体に結合された対照ペプチドを含む少なくとも1種の試料であって、該対照ペプチドが関心対象のエピトープを含まない、少なくとも1種の試料と
をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共にアレイをインキュベートする段階、
c)アレイ上の結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、ならびに
d)較正試薬の関心対象のエピトープと相関関係にあるシグナル強度を、対照ペプチドと相関関係にあるシグナル強度と比較する段階。
有意な(significant)シグナルの検出は、関心対象の抗体の特異性が低く、関心対象のエピトープ以外のエピトープも認識することを意味する。本明細書において使用される「有意なシグナル」という用語は、バックグラウンドシグナルより有意に強いシグナルである。ここで、バックグラウンドシグナルとは、試料の非存在下で検出されるシグナル(例えば、スポット間で検出されるシグナル)である。有意に強いとは、バックグラウンドシグナルとの差が統計学的に意味を持つことを意味する(p≦0.05、好ましくは、p≦0.01)。
好ましくは、アレイ上のスポットごとに添加される対照ペプチドの濃度は、エピトープペプチドの濃度に近い(±5%)。較正試薬のスポットおよび同様のペプチド濃度を有する対照ペプチドを含む試料のスポットは、好ましくは、フィールド中のアレイ上でグループ分けされ、その際、フィールドは、例えば、四角、長方形、円、および三角形のような幾何学的領域を形成し得る。2つのフィールド中の試料の合計タンパク質濃度は異なってよい(例えば、フィールド1中のエピトープ濃度が高く、フィールド2中のエピトープ濃度が低い)。
対照エピトープは関心対象のエピトープを含まないが、関心対象のエピトープとは異なるエピトープを含む。対照エピトープのこのエピトープ(対照エピトープ)は、例えば、関心対象のエピトープの修飾された等価物(例えば、関心対象のエピトープの非リン酸化等価物)でよい。好ましくは、タンパク質担体に結合された対照ペプチドを含む複数の試料が、アレイ上に添加される。これらの試料中の対照ペプチドは、異なる濃度でもよく、または、これらは異なるエピトープを含んでよい。1つの試料中の対照エピトープは、例えば、関心対象のエピトープの非リン酸化等価物でよく、別の試料において、対照エピトープは、関心対象のエピトープとは異なるアミノ酸配列を有する。
関心対象の親和性試薬は、アレイ上で少なくとも30分間、好ましくは、少なくとも1時間、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)インキュベートされる。過剰な混合物は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
あるいは、検出可能な関心対象の親和性試薬は、段階a)に先立って、関心対象の遊離エピトープペプチドと共にインキュベートされ、段階b)において、アレイは、親和性試薬および遊離ペプチドの混合物と共にインキュベートされる。
したがって、本発明はまた、以下の段階を含む、親和性試薬の特異性を決定するための方法を提供する:
a)検出可能な関心対象の親和性試薬を関心対象の遊離エピトープペプチドと共にインキュベートする段階、
b)i)関心対象のエピトープを含む前述の較正試薬と、
ii)タンパク質担体に結合された対照ペプチドを含む試料であって、該対照ペプチドが関心対象のエピトープを含まない試料と
をアレイ上に固定する段階、
c)段階a)の関心対象の親和性試薬と遊離エピトープペプチドの混合物と共にアレイをインキュベートする段階、
d)アレイ上の結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、ならびに
e)較正試薬の関心対象のエピトープと相関関係にあるシグナル強度を、対照ペプチドと相関関係にあるシグナル強度と比較する段階。
a)検出可能な関心対象の親和性試薬を関心対象の遊離エピトープペプチドと共にインキュベートする段階、
b)i)関心対象のエピトープを含む前述の較正試薬と、
ii)タンパク質担体に結合された対照ペプチドを含む試料であって、該対照ペプチドが関心対象のエピトープを含まない試料と
をアレイ上に固定する段階、
c)段階a)の関心対象の親和性試薬と遊離エピトープペプチドの混合物と共にアレイをインキュベートする段階、
d)アレイ上の結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、ならびに
e)較正試薬の関心対象のエピトープと相関関係にあるシグナル強度を、対照ペプチドと相関関係にあるシグナル強度と比較する段階。
「関心対象の遊離エピトープペプチド」とは、別の分子に結合していない、関心対象のエピトープペプチドである。特に、遊離ペプチドは、タンパク質担体に結合していない。
遊離ペプチドの濃度は、関心対象の親和性試薬が遊離ペプチドで飽和されるように選択される。この濃度は、例えば、次の方法によって決定することができる:a)検出可能な関心対象の親和性試薬を少なくとも2種の異なる濃度の遊離エピトープペプチドと共にインキュベートする段階、b)前述の較正試薬を少なくとも2つのアレイ上に固定する段階、c)段階a)の関心対象の親和性試薬と遊離エピトープペプチドの混合物と共にアレイをインキュベートする段階であって、各アレイを、異なる濃度の遊離エピトープペプチドを含む混合物と共にインキュベートする段階、d)アレイ上の結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、および親和性試薬が飽和され、その結果、親和性試薬がアレイに結合しなくなる遊離ペプチド濃度を決定する段階。
遊離ペプチドは、好ましくは、少なくとも30分間、好ましくは、少なくとも1時間、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)、関心対象の親和性試薬と共にインキュベートされる。
関心対象の親和性試薬と遊離ペプチドの混合物は、少なくとも30分間、好ましくは、少なくとも1時間、より好ましくは1〜16時間、最も好ましくは約12時間(12時間±30分)、アレイ上でインキュベートされる。過剰な混合物は除去され、好ましくは、シグナル強度を測定する前にアレイは洗浄される。
ここまで本発明をおおまかに説明してきたが、これは、以下の図面と共に具体例を参照することによって、さらに良く理解されるであろう。これらの具体例は、例証のためだけに本明細書に含まれ、別段の指定が無い限り、限定することを意図しない。
実施例において言及する市販の試薬は、別段の定めが無い限り、製造業者の取扱い説明書に従って使用した。
実施例1:材料および方法
溶解物試料
タンパク質濃度は、改良ブラッドフォード試験(クーマシーおよびタンパク質アッセイ試薬、23238番、Pierce)において測定した。溶解物試料は、使用するまで、冷凍器中-70℃で保存した。
溶解物試料
タンパク質濃度は、改良ブラッドフォード試験(クーマシーおよびタンパク質アッセイ試薬、23238番、Pierce)において測定した。溶解物試料は、使用するまで、冷凍器中-70℃で保存した。
様々な作業パッケージ(working package)におけるアレイプリンティングのために、溶解物試料をCLB1(溶解緩衝液)(Zeptosens)に溶かして所与のタンパク質濃度に調整し、最終的に、CSBLスポット用緩衝液(Zeptosens)中で1:10に希釈した。プリントされる最終タンパク質濃度は、各セクションで常に示す。
逆相タンパク質マイクロアレイアレイプリンティング
典型的なアレイレイアウトを図1Bに示す。各アレイは、19×20個(380個)のスポットを含んだ。それぞれを2つ1組のスポットでプリントするために、320個のスポットを160個の試料位置のために使用した。スポットの直径は約150μmであった。スポット間の距離は、横軸において280μm、縦軸において300μmであった。
典型的なアレイレイアウトを図1Bに示す。各アレイは、19×20個(380個)のスポットを含んだ。それぞれを2つ1組のスポットでプリントするために、320個のスポットを160個の試料位置のために使用した。スポットの直径は約150μmであった。スポット間の距離は、横軸において280μm、縦軸において300μmであった。
アレイは、12個のアレイフィールドに区分した。各フィールドは12個の試料位置を含み、各位置に2つ1組のスポットをプリントした。12個の試料位置は、それぞれ3列×4個の位置として並べられた。12個の希釈系列(2倍希釈)を、位置1(最高濃度=開始濃度)から位置12(最低濃度)の順にプリントした。図1Bを参照されたい。矢印は、濃度が低くなる方向を示す。隣接したアレイフィールドは、鏡の配置で並べた。これは、最高標準濃度のスポットが最低標準濃度のスポットと接触するのを避けるために実施した。溶解物を、対照フィールド中に対照として一緒に配列した(16個の位置に2つ1組のスポット)。
様々な作業パッケージに対するアレイを、全実験を実施するのに十分な数のレプリケート(replicate)の系列(1チップ当たり6個のアレイ)としてプリントした。各系列用のプリント溶液は、液体処理ロボット(Tecan Genesis RSP100)を用いて384ウェルプレート中で新しく調製した。各検量線のために、開始濃度(例えば50nM)の標準試薬原液を調製した。様々な試料(12×2倍希釈物)を、プレートウェル中で系列希釈として調製した。ウェル当たりの体積は25μlであった。対照溶解物試料をプリントするために、試料を同一の開始濃度(例えば、1.5mg/ml)に調整し、スポット用緩衝液CSBL中で1:10に希釈した(例えば、最終濃度=150μg/ml)。
各スポットは、市販の圧電アレイヤー(NanoPlotter NP2、GeSim GmbH、D-Groβerkmannsdorf)を用いて、体積約400ピコリットルの1つの液滴として配列した。希釈系列および溶解物試料と一緒に、蛍光標識タンパク質からなる参照材料を、ランディングマーク(landing mark)の3つの別々の列に一緒に配列した(図1Bを参照されたい)。これらの参照スポット(Ref)は、アレイ照度の最終的な局所的不均一、アレイ間およびチップ間の差異を相殺するために使用した。アレイは、クリーンルーム条件下で作製した。
希釈系列および溶解物対照用の試料は、常に凍結貯蔵物から新しく調製した。
スポット後、マイクロアレイをBSAでブロックし、ddH2Oで入念に洗浄し、窒素流下で乾燥させ、使用するまで、暗所、+4℃で保存した。測定にあたって、各アッセイ条件で、分析物に特異的な抗体溶液と共にチップの同一アレイ6個それぞれを個別に扱うために、流路構造(fluidic structure)がチップに取り付けられる(アレイ当たりのチャンバー体積は約15μLであった)。
抗体およびアッセイ試薬
表2では、本研究で使用するタンパク質および対応する抗体を列挙する。
表2では、本研究で使用するタンパク質および対応する抗体を列挙する。
NMI-TTが、逆相タンパク質アレイ(RPA)を用いてアッセイを実施するのに必要な他の試薬すべて、例えば、標識付き検出試薬、緩衝液を提供した。
抗種(anti-species)Fab断片を、マイクロアレイ上でアッセイシグナルを発生させるための検出試薬として使用した。
・各分析物に結合したウサギポリクローナル抗体を検出するための、Alexa Fluor 647で標識した抗ウサギIgG Fab分子(Z-25308、Molecular Probes)
・各分析物に結合したウサギポリクローナル抗体を検出するための、Alexa Fluor 647で標識した抗ウサギIgG Fab分子(Z-25308、Molecular Probes)
アッセイ用緩衝液(抗体)
RPA測定のためのアッセイ用緩衝液(アッセイ用緩衝液)は、50mMイミダゾール/HCl、150mM NaCl、0.1% Tween20、0.005%アジ化ナトリウム、pH7.4に5%(w/v)BSAを添加したものであった。
RPA測定のためのアッセイ用緩衝液(アッセイ用緩衝液)は、50mMイミダゾール/HCl、150mM NaCl、0.1% Tween20、0.005%アジ化ナトリウム、pH7.4に5%(w/v)BSAを添加したものであった。
プリント用緩衝液(較正試薬)
プリント用緩衝液は、CSBL(Zeptosens-Bayer Schweiz AGの一事業部)であった。研究を通じて、次の試薬を添加物として使用した:BSA(T844.2番、Roth)、アセチル化BSA(05491番、Fluka)。
プリント用緩衝液は、CSBL(Zeptosens-Bayer Schweiz AGの一事業部)であった。研究を通じて、次の試薬を添加物として使用した:BSA(T844.2番、Roth)、アセチル化BSA(05491番、Fluka)。
逆相タンパク質アレイ−アッセイ手順およびデータ解析
アレイ上のタンパク質分析物の検出は、直接2段階連続イムノアッセイにおいて実施した。第1のステップは、アッセイ用緩衝液に溶かした分析物特異的抗体のマイクロアレイへの添加および25℃で一晩のインキュベーションを含んだ。アッセイ用緩衝液で洗浄することによって過剰な抗体を除去した後、暗所、25℃で1時間、蛍光標識した抗種Fab断片と共にマイクロアレイをインキュベートした。本研究で添加したウサギ抗体を検出するために、アッセイ用緩衝液中で500倍希釈したFab断片を使用した。最後に、アレイを洗浄し、ZeptoREADER(登録商標)画像化(imager)機器(Zeptosens)を用いて、溶液(アッセイ用緩衝液)中で画像化した。
アレイ上のタンパク質分析物の検出は、直接2段階連続イムノアッセイにおいて実施した。第1のステップは、アッセイ用緩衝液に溶かした分析物特異的抗体のマイクロアレイへの添加および25℃で一晩のインキュベーションを含んだ。アッセイ用緩衝液で洗浄することによって過剰な抗体を除去した後、暗所、25℃で1時間、蛍光標識した抗種Fab断片と共にマイクロアレイをインキュベートした。本研究で添加したウサギ抗体を検出するために、アッセイ用緩衝液中で500倍希釈したFab断片を使用した。最後に、アレイを洗浄し、ZeptoREADER(登録商標)画像化(imager)機器(Zeptosens)を用いて、溶液(アッセイ用緩衝液)中で画像化した。
溶液中およびアレイスポット上での抗体-抗原結合の特異性を試験するために、追加の競合実験を実施した。このために、遊離の合成ペプチド産物(それぞれ添加された抗体に対する特異的結合エピトープ配列)を、アッセイ用緩衝溶液に溶かした一次抗体と混合し、反応混合物をアレイ上でインキュベートする前に室温で30分間インキュベートした。アッセイの他の段階はすべて、前述した通常アッセイに類似した条件下で実施した。遊離ペプチドの濃度は、添加される抗体濃度のモル過剰となるように選択した(表2も参照されたい)。典型的には、競合させるためのペプチド濃度は、別段の記載が無い限り、1000nM、100nM、および10nMから選択した。
ZeptoREADER(登録商標)は、マイクロアレイを自動的にハイスループットで読み取るためのベンチトップソリューションである。手短に述べると、最高36個のマイクロアレイ(6チップ)を1つのキャリアに載せることができる(MTPフットプリント(footprint)フォーマット)。内蔵型のスタッカーにより、1回の運転で最高360個のマイクロアレイ(満載にした10個のキャリア)を無人で読み取ることが可能になる。マイクロアレイは、532nm (緑)および635nm(赤)で励起させることができる;蛍光発光は、547〜597nm(緑)および650〜700nm(赤)の間を通過する発光フィルターを用いて検出する。この研究のために、各アレイについて典型的には9個の連続した蛍光画像を、0.5〜16秒の範囲の露光時間で赤色検出チャンネルにおいて撮影し、ZeptoVIEW(商標)PROソフトウェア(Zeptosens)を用いてさらに解析するために、16bit tifフォーマットで保存した。
マイクロアレイ解析
ソフトウェアZeptoVIEW(商標)Pro 2.0(Zeptosens)を用いて、マイクロアレイ画像を解析した。マイクロアレイに位置合わせしたアレイ解析グリッドのスポット直径は、一定の160μmに設定した。
ソフトウェアZeptoVIEW(商標)Pro 2.0(Zeptosens)を用いて、マイクロアレイ画像を解析した。マイクロアレイに位置合わせしたアレイ解析グリッドのスポット直径は、一定の160μmに設定した。
各測定のデータ解析は、以下のようにして実施した:
・適切な露光時間(すべてのスポットシグナルの画像が飽和していない(below saturation of the image))の1つの分析物画像の選択。
・各個別スポットのバックグラウンド補正された基準とされる平均シグナル強度の計算(単位はRFI=基準とされる蛍光強度単位(Referenced Fluorescence Intensity unit))。基準とされるシグナルは、各位置の(local)試料スポットシグナルと参照スポットシグナルの比として算出する。
・1種類のプリント条件に関する全複製スポット(たいていの場合は2つ1組のスポット)について、2つ1組の各スポットペアのバックグラウンド補正された基準とされる平均強度(RFI)を平均した。図および表中のシグナルは各平均シグナルに相当し、誤差棒は標準偏差に相当する。平均するために添加した複製スポットの数(N)を表示している。
・適切な露光時間(すべてのスポットシグナルの画像が飽和していない(below saturation of the image))の1つの分析物画像の選択。
・各個別スポットのバックグラウンド補正された基準とされる平均シグナル強度の計算(単位はRFI=基準とされる蛍光強度単位(Referenced Fluorescence Intensity unit))。基準とされるシグナルは、各位置の(local)試料スポットシグナルと参照スポットシグナルの比として算出する。
・1種類のプリント条件に関する全複製スポット(たいていの場合は2つ1組のスポット)について、2つ1組の各スポットペアのバックグラウンド補正された基準とされる平均強度(RFI)を平均した。図および表中のシグナルは各平均シグナルに相当し、誤差棒は標準偏差に相当する。平均するために添加した複製スポットの数(N)を表示している。
さらに、分析物に特異的な一次抗体の非存在下でのブランクアッセイ実験を実施して、起こり得る二次検出試薬の非特異的結合寄与を確かめた。いずれのブランク画像のRFIシグナルも、(標準物質ならびに溶解物試料に対して)無視できる程の低さで、したがって、データ解析プロセスにおいて考慮に入れなかった。
希釈曲線のデータポイント(2つ1組のスポットの平均シグナル)を、ExcelアドインソフトウェアパッケージXLfit v4.3.0(IDBS, Guildford UK)を用いてフィッティングした。フィッティングのために、1部位結合部位モデルを選択した(フィット関数251番:y=D+((Vmax*(x^n))/((x^n)+(Km^n)))(D=シグナルのオフセット、Vmax=飽和シグナル、Km=親和性定数、n=1結合部位))。
検出限界(LOD)は、フィットから逆算した、平均ブランクシグナル(最も低いデータポイント4つ)+3倍標準偏差の標準濃度とした。
実施例2:較正試薬(ペプチド-タンパク質複合体)の作製
ペプチド配列
調査するために4種の抗原を選択した。これらの抗原は、ヒストンH3、リン酸化Rb、リン酸化Erk1/2、およびErk1であった。これら4種のペプチド配列は、それぞれ選択された抗体に対する、4種の選択された抗原の直鎖状結合エピトープに相当する。エピトープ配列の情報は、抗体ベンダーから入手した。抗原、エピトープアミノ酸配列、長さ、抗原のエピトープ位置、および各抗体情報を表3に要約する。
ペプチド配列
調査するために4種の抗原を選択した。これらの抗原は、ヒストンH3、リン酸化Rb、リン酸化Erk1/2、およびErk1であった。これら4種のペプチド配列は、それぞれ選択された抗体に対する、4種の選択された抗原の直鎖状結合エピトープに相当する。エピトープ配列の情報は、抗体ベンダーから入手した。抗原、エピトープアミノ酸配列、長さ、抗原のエピトープ位置、および各抗体情報を表3に要約する。
タンパク質の中央に位置する、ヒトErk1(p44 MAPK)およびErk2(p42 MAPK)のリン酸化部位に対する抗体は、アミノ酸位置Thr202およびTyr204の周囲の同じエピトープアミノ酸配列を共有する。本明細書においてBioSourceより選択される完全型(total form)Erk1 MAPKに対する抗体は、タンパク質のC末端に位置する異なる直鎖状配列領域に対して産生させた。この配列領域は、他のベンダーの抗体に対してもしばしば使用される。2種のタンパク質Erk1(SEQ ID NO: 5)およびErk2(SEQ ID NO: 6)の全ペプチド配列を図2Aおよび図2Bに示す。Erk1タンパク質に関して本研究で使用した選択されたエピトープ配列(位置317〜339)は、3つの位置のアミノ酸が違うことを除いて、対応するC末端Erk2配列と相同である。
ペプチド合成
4種の選択された抗原のそれぞれに対して、2種のペプチドがNMI-TTにおいてNMI-TTによって合成されている。これら2種のペプチドは、(i)イムノアッセイにおいて競合試薬として使用するための遊離ペプチド型、および(ii)RPAチップ上の標準試薬分子としてのBSAタンパク質への結合のために使用するための官能化型を含んだ。官能化ペプチドは、キャッピングサイクルによって血清アルブミンタンパク質に共有結合させるためのN末端Cys−スペーサー官能基を用いて合成した。Doa-Doa(Doa=8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸)を長さがC18と同等の(PEG様)親水性スペーサーとして選択した。キャッピングサイクルは、タンパク質結合のための正しい標的配列の優れた特異性および最終的な濃縮を実現するために、合成において使用した。合成後、良好な純度を得るためのHPLCおよび正確な分子量を得るための質量分析(MS)によって、ペプチドの品質を管理した。合成したペプチド産物の配列情報を、対応する質量情報および達成された純度と共に表4に要約する。
4種の選択された抗原のそれぞれに対して、2種のペプチドがNMI-TTにおいてNMI-TTによって合成されている。これら2種のペプチドは、(i)イムノアッセイにおいて競合試薬として使用するための遊離ペプチド型、および(ii)RPAチップ上の標準試薬分子としてのBSAタンパク質への結合のために使用するための官能化型を含んだ。官能化ペプチドは、キャッピングサイクルによって血清アルブミンタンパク質に共有結合させるためのN末端Cys−スペーサー官能基を用いて合成した。Doa-Doa(Doa=8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸)を長さがC18と同等の(PEG様)親水性スペーサーとして選択した。キャッピングサイクルは、タンパク質結合のための正しい標的配列の優れた特異性および最終的な濃縮を実現するために、合成において使用した。合成後、良好な純度を得るためのHPLCおよび正確な分子量を得るための質量分析(MS)によって、ペプチドの品質を管理した。合成したペプチド産物の配列情報を、対応する質量情報および達成された純度と共に表4に要約する。
ペプチドはすべて、明記したように95%を超える高純度(大半は99%超)および正確な分子量に達した。これらのペプチドの合成中に、大きな困難は生じなかった。
ペプチド-タンパク質結合
最終的な標準試薬は、各ペプチド-タンパク質結合体として作製した。このために、ペプチドの各官能化型を、そのN末端遊離Cys基への共有結合を介して、予め活性化した(マレイミド活性化)ウシ血清アルブミン(BSA)に3種類の異なる比の(比は表5に示す)モル過剰で結合させた。各結合反応のために、2mgのタンパク質を使用した。このペプチド結合は、Poetz el al., Proteomics 5, 2402-2411 (2005)において以前に説明された。手短に述べると、固体ペプチドを100%DMSO中濃縮ストックとして溶解し、続いて、最大20%のDMSOを含むPBS緩衝(pH7.4)中で使用濃度まで希釈した。ペプチド溶液および活性化BSA溶液を混合し、室温で2時間、暗所でインキュベートした。スピンカラム (サイズ排除)を用いて、結合されなかったペプチドを除去し、結合体タンパク質の画分をPBS(pH7.4)中に採取した。続いて、ペプチド-タンパク質画分の(結合した)ペプチド濃度を、466nmで分光光度的に吸光度を測定することによって測定した(Dabsyl吸光スペクトルの最大値、消衰係数33000M-1cm-1、ペプチド1つ当たり1標識)。ペプチド-タンパク質画分の吸光色は、眼ではっきりと視認できた(図2を参照されたい)。
最終的な標準試薬は、各ペプチド-タンパク質結合体として作製した。このために、ペプチドの各官能化型を、そのN末端遊離Cys基への共有結合を介して、予め活性化した(マレイミド活性化)ウシ血清アルブミン(BSA)に3種類の異なる比の(比は表5に示す)モル過剰で結合させた。各結合反応のために、2mgのタンパク質を使用した。このペプチド結合は、Poetz el al., Proteomics 5, 2402-2411 (2005)において以前に説明された。手短に述べると、固体ペプチドを100%DMSO中濃縮ストックとして溶解し、続いて、最大20%のDMSOを含むPBS緩衝(pH7.4)中で使用濃度まで希釈した。ペプチド溶液および活性化BSA溶液を混合し、室温で2時間、暗所でインキュベートした。スピンカラム (サイズ排除)を用いて、結合されなかったペプチドを除去し、結合体タンパク質の画分をPBS(pH7.4)中に採取した。続いて、ペプチド-タンパク質画分の(結合した)ペプチド濃度を、466nmで分光光度的に吸光度を測定することによって測定した(Dabsyl吸光スペクトルの最大値、消衰係数33000M-1cm-1、ペプチド1つ当たり1標識)。ペプチド-タンパク質画分の吸光色は、眼ではっきりと視認できた(図2を参照されたい)。
結合体画分のタンパク質濃度は、ブラッドフォード法によって決定した。タンパク質総濃度は約1.5mg/mlであった。測定したペプチド濃度、タンパク質総濃度、および形成された産物の最終的に算出されたペプチド:タンパク質(色素:タンパク質)比を表5に要約する。
表5 ペプチド-タンパク質結合体として作製した12種の標準試薬。各抗原に対して、異なるペプチド:タンパク質モル比を含む3種のペプチド-タンパク質結合体変種を調製した。結合されたペプチド濃度は、非標識の活性化タンパク質(BSA)を対照として用いて、ペプチドに組込まれたDabsyl標識を光度計で吸光度測定することによって測定した。結合された産物のタンパク質総濃度をブラッドフォード試験によって決定した。ペプチド:タンパク質比は、色素:タンパク質のモル比として算出し、結合されたペプチドの質量付加に関して補正した。
ペプチド結合体の品質管理は、予め活性化した純粋なBSAを参照として用いて、SDS-PAGE(4〜12%ゲル)によって実施した。ゲルを60分間クーマシー染色した。ゲル画像は、予想された通り、算出された異なるペプチド:タンパク質結合比に対応する質量シフトを伴う単一の(pure)生成物バンドを示した。典型的には、最終的に決定された結合比は、最初に調製したモル過剰比のペプチド:タンパク質の17〜40%に達し、これは他のペプチドを用いた本発明者らの以前の経験の通りであった。差異は、添加される高い開始濃度における溶解度が異なること、および/または例えば、水性カップリング緩衝液中でのペプチドのペプチド立体配座構造が異なることに起因する可能性がある。
4種のペプチド-タンパク質結合体標準試薬はすべて、PAGEによれば純粋であった。
最終的に、ペプチド試薬はすべて凍結乾燥した:最低5mgの各遊離ペプチド(4種の競合試薬)および最低1mgの各ペプチド-タンパク質結合体(選択されたペプチド:タンパク質比の4種の標準試薬)。
組換えタンパク質およびSDS-PAGE対照(ヒストン、Erk)
異なるベンダーから入手した8種の組換えタンパク質を、ペプチド標準物質の完全長(full)タンパク質代替として相互に選択した(表6)。BSAを参照タンパク質として用いたSDS-PAGEによって、7種のタンパク質(2×ヒストンH3、5×Erk)の品質を管理した。
異なるベンダーから入手した8種の組換えタンパク質を、ペプチド標準物質の完全長(full)タンパク質代替として相互に選択した(表6)。BSAを参照タンパク質として用いたSDS-PAGEによって、7種のタンパク質(2×ヒストンH3、5×Erk)の品質を管理した。
タンパク質の純度は、ゲル電気泳動後の単一のバンドから明らかなように、良好であった。しかしながら、単一のバンドのシグナル強度は大きな差を示したことから、参照として添加された同量のBSAと比較した場合、タンパク質の濃度が異なることが示唆された。ベンダーのデータシートにおいて与えられた濃度の値は信頼できないことは明白であった。したがって、タンパク質バンドの複合的なシグナル強度を解析して、一緒に添加されたBSAと比べて正しい濃度を推定するのが関の山であった。したがって、結果として得られた補正率(表6を参照されたい)を、以下でプリントする全標準希釈系列の試料調製物において考慮に入れた。
アッセイ条件およびプリント条件の最適化−第1の検量線
第1の実験において、様々な組成および条件における様々なペプチド-BSA試薬の検量線と共にプリントされる様々なアレイセットにおいてアッセイを実施して、続いて試験するイムノアッセイパフォーマンスに対するそれらの影響を検査した。以下の条件を検討した:
・様々なペプチド-タンパク質結合比のペプチド-BSA試薬の検量線(ヒストンH3-BSA、pRb-BSA、およびpErk-BSAについて試験)
・付加的なタンパク質マトリックス添加(BSA)の非存在下および存在下でプリントされたペプチド-BSA試薬の検量線
第1の実験において、様々な組成および条件における様々なペプチド-BSA試薬の検量線と共にプリントされる様々なアレイセットにおいてアッセイを実施して、続いて試験するイムノアッセイパフォーマンスに対するそれらの影響を検査した。以下の条件を検討した:
・様々なペプチド-タンパク質結合比のペプチド-BSA試薬の検量線(ヒストンH3-BSA、pRb-BSA、およびpErk-BSAについて試験)
・付加的なタンパク質マトリックス添加(BSA)の非存在下および存在下でプリントされたペプチド-BSA試薬の検量線
検量線は、(実施例1の材料および方法において説明したように)12個の系列希釈の曲線(2倍希釈物)(各希釈物は2つ1組のスポット)としてプリントした。プリンティングのための様々な試薬の開始濃度は、同一のエピトープ濃度50nMに調整した。さらに、陽性対照溶解物および陰性対照溶解物を同じアレイ中に一緒にプリントした。溶解物試料は、タンパク質総濃度0.25mg/mlで配列した。記載した抗体条件で、イムノアッセイを実施した。観察されたアッセイパフォーマンスの差を定性的に評価し、これらの結果およびこれらのタイプの試薬を用いた以前の経験に基づいて、最も優れたプリント条件およびアッセイ条件を選択した。
様々なペプチド-タンパク質結合比を含むペプチド試薬の検量線
一般に、様々なペプチド-タンパク質比のプリントされたペプチド標準試薬の検量線は、アッセイにおいてほぼ同じシグナルを与えた。アッセイ画像を図3に示す。しかしながら、ペプチド-タンパク質結合比が最低の(1よりずっと低い)ペプチド標準試薬は、よりドーナツ似のスポット形態を示す傾向があったのに対し、結合比が最も高い試薬は、より低いアッセイシグナル応答を与える傾向があった(特にpErk1/2アッセイの場合を参照されたい)。後者の傾向は、BSA分子1個当たり複数のエピトープ配列(本明細書において、最も高い比の場合、典型的には3〜6個)を含む固定されたペプチド-BSA分子へのアッセイ用抗体の結合接近容易性が低いこと(比例を下回る(less than linear))として解釈することができる。したがって、さらなる実験のために、本発明者らは中程度の結合比の試薬を選択した:ヒストンH3-BSA 2.7倍(0.41ペプチド:タンパク質)、pRb-BSA 1倍(0.41ペプチド:タンパク質)、およびpErk-BSA 2.7倍(0.89ペプチド:タンパク質)。
一般に、様々なペプチド-タンパク質比のプリントされたペプチド標準試薬の検量線は、アッセイにおいてほぼ同じシグナルを与えた。アッセイ画像を図3に示す。しかしながら、ペプチド-タンパク質結合比が最低の(1よりずっと低い)ペプチド標準試薬は、よりドーナツ似のスポット形態を示す傾向があったのに対し、結合比が最も高い試薬は、より低いアッセイシグナル応答を与える傾向があった(特にpErk1/2アッセイの場合を参照されたい)。後者の傾向は、BSA分子1個当たり複数のエピトープ配列(本明細書において、最も高い比の場合、典型的には3〜6個)を含む固定されたペプチド-BSA分子へのアッセイ用抗体の結合接近容易性が低いこと(比例を下回る(less than linear))として解釈することができる。したがって、さらなる実験のために、本発明者らは中程度の結合比の試薬を選択した:ヒストンH3-BSA 2.7倍(0.41ペプチド:タンパク質)、pRb-BSA 1倍(0.41ペプチド:タンパク質)、およびpErk-BSA 2.7倍(0.89ペプチド:タンパク質)。
シグナルおよび濃度のダイナミックレンジ
プリントされた検量線におけるアッセイでは、1つの画像中の全く同一の測定から得ることができる、非常に目立つシグナルおよびシグナルの高いダイナミックレンジが実証された。図4は、ヒストンH3-BSA 2.7倍およびpErk-BSA 2.7倍の場合を代表して分析した定量的シグナルを示す。これらのシグナルは、1部位結合モデルの下端の曲線に完璧にフィットし(r2>0.99)、良好な直線性を示した。シグナルのダイナミックレンジは、1つの画像(1回の露光時間)範囲内で4桁の濃度を網羅する桁数4に及んだ。リーダーにより、様々な露光時間での画像記録および加えて様々な灰色フィルターの使用が可能になるため、アッセイのダイナミックレンジは、(本発明者らの経験によれば)1〜2桁さらにもっと広げることができる。
プリントされた検量線におけるアッセイでは、1つの画像中の全く同一の測定から得ることができる、非常に目立つシグナルおよびシグナルの高いダイナミックレンジが実証された。図4は、ヒストンH3-BSA 2.7倍およびpErk-BSA 2.7倍の場合を代表して分析した定量的シグナルを示す。これらのシグナルは、1部位結合モデルの下端の曲線に完璧にフィットし(r2>0.99)、良好な直線性を示した。シグナルのダイナミックレンジは、1つの画像(1回の露光時間)範囲内で4桁の濃度を網羅する桁数4に及んだ。リーダーにより、様々な露光時間での画像記録および加えて様々な灰色フィルターの使用が可能になるため、アッセイのダイナミックレンジは、(本発明者らの経験によれば)1〜2桁さらにもっと広げることができる。
これらのプリントされた第1の検量線の開始濃度は、50nMを選択した。一緒にプリントされた対照溶解物試料とシグナルを比較したところ、検量線のアッセイシグナル、したがって、標準物質の最も高い開始濃度が、特にリン酸化(phophorylated)タンパク質分析物の場合、個々の対照溶解物の固有値(レベル)よりずっと高いことが分かった。したがって、検量線の開始濃度をそれぞれ調整しなければならなかった。また、陰性対照溶解物および陽性対照溶解物、それぞれ発現レベルのシグナルの差は、特にリン酸化分析物pErkおよびpRbの場合、非常に低かった(調製した細胞株の陽性処理が最適とは言えなかったことが明らかであった)。したがって、新しい対照溶解物を調製し提供した(表1を参照されたい)。
基質タンパク質添加の非存在下/存在下におけるペプチド-BSA試薬の検量線
アレイの別のセットにおいて、ペプチド標準試薬および第1の組み換えタンパク質の検量線を3種の異なる緩衝液条件でプリントした:図5Aに示すように、(i)付加的なタンパク質添加を全く行わない場合、(ii)50μg/ml基質タンパク質(アセチル化BSA=acBSA)の存在下、および(iii)100μg/ml基質タンパク質(アセチル化BSA=acBSA)の存在下。これを実施して、スポットの形態に対する基質タンパク質添加の影響を検証した。続いて実施したアッセイにおいて生じさせた検量線シグナルから、一般に、基質タンパク質を添加すると、(他の適用(applications)から予想されたとおり)基質タンパク質を添加しない場合と比較して、より優れたより均質なシグナル分布につながることが示された。この効果は、ペプチド試薬ならびに組換えタンパク質の標準スポットについて観察された。同時に、平均スポットシグナルはほとんど変わらないままであったことから、タンパク質添加は、スポット内の一定数の標準分子の再編成を主にもたらすことが示唆された。添加された基質タンパク質は、典型的には、溶解物試料のスポット直径に良く類似した、より大きなスポット直径を生じさせた。このことによっても、標準試料スポットおよび溶解物試料スポットのその後のデータ解析が、より安定したものとなった。より高濃度のacBSA基質タンパク質(100μg/ml)を添加すると、ペプチド試薬に対して、ドーナツ形状のシグナルスポット形態が生じた。基質タンパク質のタイプの影響を調査するために、別の実験を実施した:未修飾型のBSAおよびアセチル化型BSAの添加を検量線において直接比較した。この結果を図5Bに示し(ヒストンH3について示す)、acBSAの方が、特に組換えタンパク質の標準スポットに関して、均質なスポットシグナルを生成させる能力が高いことが明らかになった。スポットの平均シグナルは同程度であった。これまでの本発明者らの調査の結論として、本発明者らは、ペプチド標準試薬ならびに組換えタンパク質の検量線をプリントするための最も優れた一律の条件(CSBL緩衝液+50μg/ml acBSA)を選択した。
アレイの別のセットにおいて、ペプチド標準試薬および第1の組み換えタンパク質の検量線を3種の異なる緩衝液条件でプリントした:図5Aに示すように、(i)付加的なタンパク質添加を全く行わない場合、(ii)50μg/ml基質タンパク質(アセチル化BSA=acBSA)の存在下、および(iii)100μg/ml基質タンパク質(アセチル化BSA=acBSA)の存在下。これを実施して、スポットの形態に対する基質タンパク質添加の影響を検証した。続いて実施したアッセイにおいて生じさせた検量線シグナルから、一般に、基質タンパク質を添加すると、(他の適用(applications)から予想されたとおり)基質タンパク質を添加しない場合と比較して、より優れたより均質なシグナル分布につながることが示された。この効果は、ペプチド試薬ならびに組換えタンパク質の標準スポットについて観察された。同時に、平均スポットシグナルはほとんど変わらないままであったことから、タンパク質添加は、スポット内の一定数の標準分子の再編成を主にもたらすことが示唆された。添加された基質タンパク質は、典型的には、溶解物試料のスポット直径に良く類似した、より大きなスポット直径を生じさせた。このことによっても、標準試料スポットおよび溶解物試料スポットのその後のデータ解析が、より安定したものとなった。より高濃度のacBSA基質タンパク質(100μg/ml)を添加すると、ペプチド試薬に対して、ドーナツ形状のシグナルスポット形態が生じた。基質タンパク質のタイプの影響を調査するために、別の実験を実施した:未修飾型のBSAおよびアセチル化型BSAの添加を検量線において直接比較した。この結果を図5Bに示し(ヒストンH3について示す)、acBSAの方が、特に組換えタンパク質の標準スポットに関して、均質なスポットシグナルを生成させる能力が高いことが明らかになった。スポットの平均シグナルは同程度であった。これまでの本発明者らの調査の結論として、本発明者らは、ペプチド標準試薬ならびに組換えタンパク質の検量線をプリントするための最も優れた一律の条件(CSBL緩衝液+50μg/ml acBSA)を選択した。
本研究のために選択した最も優れたプリント条件およびアッセイ条件の要約:
すべての検量線に対して選択する一律のプリント条件:スポット用緩衝液CSBLに加えて50μg/mlアセチル化BSA(acBSA)を添加
希釈系列(ペプチド標準物質)のために選択した開始濃度:
10nMヒストンH3
1nM pRb
2.5nM pERk1/2
5nM ERk1/2
選択したアッセイ用条件(抗体希釈率):
ヒストンH3アッセイの場合は1:10000
pRbアッセイの場合は1:250
pErk1/2アッセイの場合は1:500
Erk1/2アッセイの場合は1:1000(3種類の抗体)
すべての検量線に対して選択する一律のプリント条件:スポット用緩衝液CSBLに加えて50μg/mlアセチル化BSA(acBSA)を添加
希釈系列(ペプチド標準物質)のために選択した開始濃度:
10nMヒストンH3
1nM pRb
2.5nM pERk1/2
5nM ERk1/2
選択したアッセイ用条件(抗体希釈率):
ヒストンH3アッセイの場合は1:10000
pRbアッセイの場合は1:250
pErk1/2アッセイの場合は1:500
Erk1/2アッセイの場合は1:1000(3種類の抗体)
典型的には、プリントされた参照スポットのシグナルを、4秒の画像露光時間で15000グレーレベルに調整した。
実施例3:溶液中の遊離ペプチドを用いた競合実験から推論した、較正試薬の特異性
4種のペプチド標準試薬(ヒストンH3-BSA 2.7倍、pRb-BSA 1倍、pErk-BSA 2.7倍、およびErk1-BSA 2.7倍)ならびに比較用の入手可能な組換えタンパク質すべての検量線と共に、アレイをプリントした(12点をつないだ希釈曲線を用いた12個の検量線)。対照溶解物試料の対照(陰性対照および陽性対照、新しく送達された試料)を、タンパク質総濃度400μg/mlおよび250μg/mlで同時にプリントした。標準物質および対照溶解物はスポット用緩衝液CSBL中で調製し、標準物質に50μg/ml acBSAを添加した。検量線試料の開始濃度は、陽性対照溶解物のアッセイシグナルの最小値(minimum)に到達するように調整した。アレイレイアウトおよび条件を表7に要約する。
4種のペプチド標準試薬(ヒストンH3-BSA 2.7倍、pRb-BSA 1倍、pErk-BSA 2.7倍、およびErk1-BSA 2.7倍)ならびに比較用の入手可能な組換えタンパク質すべての検量線と共に、アレイをプリントした(12点をつないだ希釈曲線を用いた12個の検量線)。対照溶解物試料の対照(陰性対照および陽性対照、新しく送達された試料)を、タンパク質総濃度400μg/mlおよび250μg/mlで同時にプリントした。標準物質および対照溶解物はスポット用緩衝液CSBL中で調製し、標準物質に50μg/ml acBSAを添加した。検量線試料の開始濃度は、陽性対照溶解物のアッセイシグナルの最小値(minimum)に到達するように調整した。アレイレイアウトおよび条件を表7に要約する。
アレイ上でインキュベーションする前に個々の抗体溶液と予め混合しておいた漸増濃度の対応する遊離ペプチドの非存在下(通常アッセイ)および存在下(競合アッセイ)における、4種のタンパク質分析物のそれぞれのためのアレイにおいてアッセイを実施した。典型的には、3種の異なる濃度の遊離ペプチド(別段の指示が無い限り、1000nM、100nM、および10nM)が、各抗体と複合体を形成して、アレイスポット上での特異的抗体−タンパク質分析物複合体の形成を抑制する効率を調査した。さらに、対応する組換えタンパク質と予めインキュベートした抗体溶液を用いて競合アッセイを実施して、それらの競合効率および特異性を遊離ペプチド試薬のものと比較した。(一次抗体の非存在下での)ブランクアッセイをさらなる対照として実施したが、それらのシグナルは、無視できるほど低く、したがって、定量的データ解析において考慮に入れなかった。
表8〜11では、最大検量線シグナルの観点から定量的結果を要約する。
Erk1/2アッセイの結果から、Biosource製のErk1/2抗体だけでなく、追加で選択された2種のCST抗体(4695番rbモノクローナルおよび9102番rbポリクローナル)も、特異的にErk1-BSA標準物質スポットのみを(かつ、同程度のシグナル強度で)認識したが、pErk-BSA標準物質スポットは認識しないことが十分に実証された。このことから、本プロジェクトで使用した3つの異なるベンダーから入手した3種の抗体はすべて、明らかに、タンパク質のC末端の極めて類似したペプチドモチーフに対して産生させられたことが暗示される。このことは、別の以前の競合実験(追加実験)によってさらに裏付けられた。この競合実験は、(本プロジェクトで使用した)Erk1/2リン酸化部位のアミノ酸配列に相当するが、リン酸化されていない(脱リン酸ペプチド、NMIから入手可能)遊離エピトープペプチドの存在下で、CST製のErk1/2抗体(9102番)を用いて実施された。以前に示したとおり他の点は類似した条件下で実施した競合アッセイにおいて、この脱リン酸ペプチドは、各Erk1/2通常アッセイで観察された標準物質スポットおよび溶解物スポットの特異的シグナルを抑制することができなかった(データ不掲載)。したがって、CSTから購入したErk抗体が、Erk1/2タンパク質の完全型とリン酸化型を区別するために、異なるタンパク質エピトープ配列を使用していることが示される。
表11 希釈率1:1000の3種の異なる抗体を用いて行ったErk1/2アッセイの場合の全アレイフィールドの検量線シグナルのシグナル値(最大値)の表:(上)Biosource製44-654G抗体、(中央)CST製4695番rbモノクローナル抗体、および(下)CST製9102番rbポリクローナル抗体。具体的な検量線の最大シグナルをボールド体で表示している。
実施例4:較正試薬の感度−検出限界(LOD)
アッセイはすべて、図1Bおよび表7に示すのと同じレイアウトのアレイ上で実施した。アレイは、4種のペプチド標準試薬(ヒストンH3-BSA 2.7倍、pRb-BSA 1倍、pErk-BSA 2.7倍、およびErk1-BSA 2.7倍)すべてならびに比較用の入手可能な組換えタンパク質すべての検量線を含んだ(12点をつないだ希釈曲線を用いた12個の検量線)。ペプチド検量線の最高濃度は、ヒストンH3標準物質の場合は10nM、pRb標準物質の場合は1nM、pErk標準物質の場合は2.5nM、Erk標準物質の場合は5nMに調整した。これらの開始濃度は、陽性対照溶解物によって生じる最も高い内因性シグナルに応じて選択した。タンパク質標準物質の濃度は、それに応じて準備し、SDS-PAGE補正率を適用して調整した。対照溶解物試料(陰性対照および陽性対照、新しい送達を含む)を、タンパク質総濃度400μg/ml(4mg/ml以上のタンパク質濃度で入手可能なストックの場合)および250μg/mlで同時にプリントした。標準物質および対照溶解物はスポット用緩衝液CSBL中で調製し、標準物質に50μg/ml acBSAを添加した。
アッセイはすべて、図1Bおよび表7に示すのと同じレイアウトのアレイ上で実施した。アレイは、4種のペプチド標準試薬(ヒストンH3-BSA 2.7倍、pRb-BSA 1倍、pErk-BSA 2.7倍、およびErk1-BSA 2.7倍)すべてならびに比較用の入手可能な組換えタンパク質すべての検量線を含んだ(12点をつないだ希釈曲線を用いた12個の検量線)。ペプチド検量線の最高濃度は、ヒストンH3標準物質の場合は10nM、pRb標準物質の場合は1nM、pErk標準物質の場合は2.5nM、Erk標準物質の場合は5nMに調整した。これらの開始濃度は、陽性対照溶解物によって生じる最も高い内因性シグナルに応じて選択した。タンパク質標準物質の濃度は、それに応じて準備し、SDS-PAGE補正率を適用して調整した。対照溶解物試料(陰性対照および陽性対照、新しい送達を含む)を、タンパク質総濃度400μg/ml(4mg/ml以上のタンパク質濃度で入手可能なストックの場合)および250μg/mlで同時にプリントした。標準物質および対照溶解物はスポット用緩衝液CSBL中で調製し、標準物質に50μg/ml acBSAを添加した。
完全な競合のために効果的な最高濃度の遊離ペプチドの非存在下(通常アッセイ)および存在下(競合アッセイ)において、4種のタンパク質分析物のそれぞれについてアッセイを実施した。各条件(通常アッセイ、競合アッセイ)は、2つ1組のアッセイ(一条件当たり2つのアレイ)において測定した。(一次抗体の非存在下での)ブランクアッセイを、対照としてさらに測定した。すべてのアレイ画像を定量的に解析した。各アッセイについて、各アレイの12個のアレイフィールドのそれぞれに対するシグナル検量線を、プリントされた12個の希釈系列のそれぞれから得たデータポイントに1部位結合モデルをフィッティングすることによって作成した。ブランクレベルの平均シグナル(最も低い4つのデータポイント)+それぞれの標準偏差の3倍に対応する逆算された濃度として、フィット曲線から検出限界(LOD)を決定した。
2つ1組のアッセイに関して作成した通常アッセイおよび競合アッセイの検量線(データポイントおよびフィッティング曲線、ならびに逆算したLOD値)を図7〜11に示す。LODは、各検量線のグラフ中に示す。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた。
Abcam抗体はヒストンH3-BSAペプチド標準物質に特異的に結合し、また、Abcam抗体はヒストンH3組換えタンパク質、最も顕著にはUpstate製のヒトタンパク質にも特異的に結合した。ペプチド標準物質および組み換えタンパク質(Upstate)の検量線のシグナル強度は、良く似ていた。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。典型的には、シグナルCVは、ペプチド標準物質の場合は約12%であり、ヒストンH3タンパク質(Upsate)の場合は約13%であった。平均LODは、ペプチド標準物質の場合は0.123±0.019nMであり、組み換えタンパク質(Upsate)の場合は0.156±0.023nMであった。LOD値は、2つ1組のアッセイにおいて再現性が十分であり、ペプチド標準物質およびタンパク質において類似していた(図7)。
CST抗体はpRb-BSAペプチド標準物質に特異的に結合し、また、CST抗体は、Active Motif製のpRb組換えタンパク質にも特異的に結合した。しかしながら、タンパク質検量線のシグナル強度の方が明らかに低く、ペプチド検量線の約10%にしか及ばなかった。本発明者らは、タンパク質はリン酸化されていないか、または部分的にしかリン酸化されていないと推定する(注意:公的データバンクにおけるアノテーションpRbおよびRbは、同じタンパク質に対して同時に使用されていることは明らかであり、本明細書において使用するpRbがリン酸化タンパク質を示すかどうかは本発明者らにとって明瞭ではなかった)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。典型的には、シグナルCVは、ペプチド標準物質の場合は約7%であり、pRbタンパク質の場合は約12%で若干高かった。LOD値は、2つ1組のアッセイにおいて再現性が十分であった。平均LODは、ペプチド標準物質の場合は0.025±0.001nMであり、組み換えタンパク質の場合は0.097±0.020nMであった(図8)。
CST抗体はpErk1/2-BSAペプチド標準物質にのみ特異的に結合し、Erk1-BSA標準物質には特異的に結合しなかった。また、CST抗体は、顕著にpErk1組換えタンパク質 (Invitrogen)にも特異的に結合し、各pErk1/2-BSAペプチド標準物質シグナルの約25%のシグナル強度に達する。また、CST抗体は、Active Motif製のpErk(約12%)≧CST製Erk1(約11%)>Invitrogen製Erk1タンパク質(約3%)にも少し結合した。シグナルは、pErk1タンパク質(Invitrogen)のシグナルを基準として%の単位で示している。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。典型的には、シグナルCVは、ペプチド標準物質の場合は約2%であり、pErk1タンパク質(Invitrogen)の場合は約6%で若干高かった。LOD値は、2つ1組のアッセイにおいて再現性が十分であった。平均LODは、ペプチド標準物質の場合は0.030±0.002nMであり、pErk1タンパク質(Invitrogen)の場合は0.055±0.003nMであった(図9)。
相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた。
Biosource抗体はErk1-BSAペプチド標準物質にのみ特異的に結合し、pErk1-BSA標準物質には特異的に結合しなかった。Biosource抗体は、(入手可能である様々なタンパク質の中で最も顕著に)Erk1組換えタンパク質およびpErk1組換えタンパク質に特異的に結合し、これらのタンパク質およびErk1-BSAペプチド標準物質に対して、良く似たシグナル強度を生じさせた。また、Biosource抗体は、Erk2タンパク質(Biosource)>pErk(Active Motif)>Erk1 (CST)にも、より低い程度で結合した。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。典型的には、シグナルCVは、ペプチド標準物質の場合は約3%であり、Erk1タンパク質の場合は約8%、pErk1タンパク質の場合は約5%で若干高かった。LOD値は、2つ1組のアッセイにおいて再現性が十分であった。平均LODは、ペプチド標準物質の場合は0.046±0.001nMであり、組換えErk1タンパク質(Invitrogen)の場合は0.072±0.013nM、組換えpErk1タンパク質(Invitrogen)の場合は0.044±0.004nMであった(図10および図11)。
相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた。
実施例5:溶解物中にスパイクした検量線(5個および10個の複製スポット)
絶対的タンパク質分析物濃度の決定
アッセイを、以下の図12に示すレイアウトのアレイ上で実施した。アレイは、3種のペプチド標準試薬(ヒストンH3-BSA 2.7倍、pRb-BSA 1倍、およびpErk-BSA 2.7倍)の希釈系列を含んだ。希釈系列は、2倍希釈物を用いた8個の系列としてプリントした。各ペプチド試薬について、2つのタイプの希釈系列をプリントした:一方の系列は、実施例4と同様にスポット用緩衝液(CSBL+50μg/ml acBSA)において、実施例4で使用したのと同じ開始濃度を適用してプリントした。もう一方の系列は、各タンパク質について陰性である溶解物中にスパイクした7個の希釈系列としてプリントした。スパイクした希釈系列中の溶解物の添加タンパク質総濃度は、150μg/mlで一定に保った。溶解物中にスパイクした最も高い開始濃度は、緩衝液中の各系列の開始濃度の半分として選択した。各スパイクイン系列の最後の試料として、純粋な陰性溶解物(いかなるスパイク濃度もない場合)をブランク対照としてプリントした。
絶対的タンパク質分析物濃度の決定
アッセイを、以下の図12に示すレイアウトのアレイ上で実施した。アレイは、3種のペプチド標準試薬(ヒストンH3-BSA 2.7倍、pRb-BSA 1倍、およびpErk-BSA 2.7倍)の希釈系列を含んだ。希釈系列は、2倍希釈物を用いた8個の系列としてプリントした。各ペプチド試薬について、2つのタイプの希釈系列をプリントした:一方の系列は、実施例4と同様にスポット用緩衝液(CSBL+50μg/ml acBSA)において、実施例4で使用したのと同じ開始濃度を適用してプリントした。もう一方の系列は、各タンパク質について陰性である溶解物中にスパイクした7個の希釈系列としてプリントした。スパイクした希釈系列中の溶解物の添加タンパク質総濃度は、150μg/mlで一定に保った。溶解物中にスパイクした最も高い開始濃度は、緩衝液中の各系列の開始濃度の半分として選択した。各スパイクイン系列の最後の試料として、純粋な陰性溶解物(いかなるスパイク濃度もない場合)をブランク対照としてプリントした。
4種のタンパク質分析物のそれぞれについて、2つ1組のアッセイ(2つのアレイ上)を実施した。(一次抗体の非存在下での)ブランクアッセイを、対照としてさらに測定した。すべてのアレイ画像を定量的に解析した。各アッセイについて、各アレイの6個のアレイフィールドのそれぞれに対するシグナル検量線を、プリントされた8個の希釈系列のそれぞれから得たデータポイントに1部位結合モデルをフィッティングすることによって作成した。データポイントは、各系列において入手可能な最大数の複製スポット(N=5またはN=10)について平均した。比較のために、2つ1組のスポット(各フィールドの中央の列)について、平均シグナルも計算した。検出限界(LOD)は、先に説明したようにフィット曲線から決定した。さらに、スパイクイン系列のシグナルを、内因性(ブランク)シグナルに関して補正し、補正したシグナルを、緩衝液における検量線に投影した(projected)。
結果を図13〜20に示す。
ヒストンH3ペプチド:
アッセイにより、ヒストンH3ペプチド標準物質の希釈曲線において特異的シグナル応答が明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。ヒストンH3をスパイクした溶解物のシグナルは、類似しているがわずかに低いオフセット強度で、緩衝液における検量線のシグナルの後に続いた(純粋な溶解物の内因性ヒストンH3シグナルレベルを引いた後)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。検量線フィッティングから溶解物のブランクシグナルを逆算することによって、純粋な溶解物中のヒストンH3タンパク質の内因濃度を決定した。平均濃度は0.063±0.005nMであった。他の溶解物スポットは、わずかに低いシグナルを示した(図13および14)。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた。
アッセイにより、ヒストンH3ペプチド標準物質の希釈曲線において特異的シグナル応答が明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。ヒストンH3をスパイクした溶解物のシグナルは、類似しているがわずかに低いオフセット強度で、緩衝液における検量線のシグナルの後に続いた(純粋な溶解物の内因性ヒストンH3シグナルレベルを引いた後)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。検量線フィッティングから溶解物のブランクシグナルを逆算することによって、純粋な溶解物中のヒストンH3タンパク質の内因濃度を決定した。平均濃度は0.063±0.005nMであった。他の溶解物スポットは、わずかに低いシグナルを示した(図13および14)。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた。
pRBアッセイ:
アッセイにより、pRbペプチド標準物質の希釈曲線において特異的シグナル応答が明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。pRbをスパイクした溶解物のシグナルは、類似しているがわずかに低いオフセット強度で、緩衝液における検量線のシグナルの後に続いた(純粋な溶解物の内因性pRbシグナルレベルを引いた後)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。検量線フィッティングから溶解物のブランクシグナルを逆算することによって、純粋な溶解物中のpRbタンパク質の内因濃度を決定した。内因性タンパク質の平均濃度は0.066±0.010nMであった。溶解物6(ヒストンH3について陰性)および溶解物13(pErk1/2について陰性)を含む他のスポットは、異なる強度で一定のシグナルを示した。これらは、これらの溶解物中のpRbタンパク質の内因性レベルを表すことが明らかである。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた(図15および図16)。
アッセイにより、pRbペプチド標準物質の希釈曲線において特異的シグナル応答が明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。pRbをスパイクした溶解物のシグナルは、類似しているがわずかに低いオフセット強度で、緩衝液における検量線のシグナルの後に続いた(純粋な溶解物の内因性pRbシグナルレベルを引いた後)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。検量線フィッティングから溶解物のブランクシグナルを逆算することによって、純粋な溶解物中のpRbタンパク質の内因濃度を決定した。内因性タンパク質の平均濃度は0.066±0.010nMであった。溶解物6(ヒストンH3について陰性)および溶解物13(pErk1/2について陰性)を含む他のスポットは、異なる強度で一定のシグナルを示した。これらは、これらの溶解物中のpRbタンパク質の内因性レベルを表すことが明らかである。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた(図15および図16)。
pERK1/2アッセイ(CST 9101番):
アッセイにより、pErk1/2ペプチド標準物質の希釈曲線において特異的シグナル応答が明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。pErk1/2をスパイクした溶解物のシグナルは、類似しているがわずかに高いオフセット強度で、緩衝液における検量線のシグナルの後に続いた(純粋な溶解物の内因性pErkシグナルレベルを引いた後)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。検量線フィッティングから溶解物のブランクシグナルを逆算することによって、純粋な溶解物中のpErk1/2タンパク質の内因濃度を決定した。内因性タンパク質の平均濃度は0.149±0.005nMであった。溶解物6(ヒストンH3について陰性)および溶解物12(pRbについて陰性)を含む他のスポットは、異なる強度で一定のシグナルを示した。これらは、これらの溶解物中のpErk1/2タンパク質の内因性レベルを表すことが明らかである。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた(図17および図18)。
アッセイにより、pErk1/2ペプチド標準物質の希釈曲線において特異的シグナル応答が明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。pErk1/2をスパイクした溶解物のシグナルは、類似しているがわずかに高いオフセット強度で、緩衝液における検量線のシグナルの後に続いた(純粋な溶解物の内因性pErkシグナルレベルを引いた後)。2つのアッセイの再現性は非常に良好であった。検量線フィッティングから溶解物のブランクシグナルを逆算することによって、純粋な溶解物中のpErk1/2タンパク質の内因濃度を決定した。内因性タンパク質の平均濃度は0.149±0.005nMであった。溶解物6(ヒストンH3について陰性)および溶解物12(pRbについて陰性)を含む他のスポットは、異なる強度で一定のシグナルを示した。これらは、これらの溶解物中のpErk1/2タンパク質の内因性レベルを表すことが明らかである。相関係数r2>0.99を有する質の高いフィット曲線が得られた(図17および図18)。
pERK1/2アッセイ(BioSource 44-654G):
予想した通り、アッセイにより、添加したペプチド標準物質すべての希釈曲線においてシグナル応答が無いことが明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。溶解物を含むスポットはすべて、異なる強度で一定のシグナルを示した。これらは、これらの溶解物中のErk1/2タンパク質の内因性レベルを表すことが明らかである。
予想した通り、アッセイにより、添加したペプチド標準物質すべての希釈曲線においてシグナル応答が無いことが明らかになった。ブランクアッセイは応答を示さなかった。溶解物を含むスポットはすべて、異なる強度で一定のシグナルを示した。これらは、これらの溶解物中のErk1/2タンパク質の内因性レベルを表すことが明らかである。
複製スポットの数を増やす影響についての概論:
4つのアッセイすべてについて、複製スポットの数が変動係数(CV)に与える影響について、分析データを比較した。すべての分析物特異的シグナルの平均シグナルは、入手可能な数の複製スポットシグナルすべて(1条件当たりN=5またはN=10)から、および(各アレイフィールドの中央の列から選択した)2個(N=2)の複製スポットシグナルから、形成された。ほぼすべての場合において、2つ1組のスポット解析のCVは、N=5またはN=10の複製スポット解析の場合と同程度であるか、または少し小さかった(全実験を通して持続的に低レベルのCVでこれが観察されたことを言及するため)。
4つのアッセイすべてについて、複製スポットの数が変動係数(CV)に与える影響について、分析データを比較した。すべての分析物特異的シグナルの平均シグナルは、入手可能な数の複製スポットシグナルすべて(1条件当たりN=5またはN=10)から、および(各アレイフィールドの中央の列から選択した)2個(N=2)の複製スポットシグナルから、形成された。ほぼすべての場合において、2つ1組のスポット解析のCVは、N=5またはN=10の複製スポット解析の場合と同程度であるか、または少し小さかった(全実験を通して持続的に低レベルのCVでこれが観察されたことを言及するため)。
実施例6:概論
ペプチド標準試薬の利点:
分子の組成(ペプチドとタンパク質の比)は、再現可能な様式で十分に準備することができる−1分子当たりのエピトープ配列の濃度/数は、各ペプチド配列に小さな吸光標識(Dabsyl)を導入することによって、良好に測定することができた。RPAアッセイにおいて、標識による悪影響は観察されなかった。合成ペプチド標準物質のリン酸化の程度は、良好に測定され、100%である。反対に、市販の組換えタンパク質調製物のリン酸化の程度は、おそらく定まらない可能性が高く、測定するのは容易ではない(Erk/pErkの場合について、様々なベンダーのいくつかのタンパク質候補物を用いた本発明者らの結果を参照されたい)。ペプチド-タンパク結合体は、BSAを共通の担体タンパク質として使用する(BSAは、タンパク質アレイ用途のための十分に特徴付けられた分子である)。本発明者らは、様々なエピトープペプチド標準物質のシグナル応答は、(同じ)担体タンパク質の特性によって大きくは影響されないと予想する。反対に、本発明者らは、様々なベンダーの組換えタンパク質(例えば、Erkの場合)に由来するアッセイシグナル応答の顕著な差異を測定した。これもまた、異なるタンパク質調整物および特徴(異なる発現系、±GSTタグ、±Hisタグなど)に起因する可能性がある。
ペプチド標準試薬の利点:
分子の組成(ペプチドとタンパク質の比)は、再現可能な様式で十分に準備することができる−1分子当たりのエピトープ配列の濃度/数は、各ペプチド配列に小さな吸光標識(Dabsyl)を導入することによって、良好に測定することができた。RPAアッセイにおいて、標識による悪影響は観察されなかった。合成ペプチド標準物質のリン酸化の程度は、良好に測定され、100%である。反対に、市販の組換えタンパク質調製物のリン酸化の程度は、おそらく定まらない可能性が高く、測定するのは容易ではない(Erk/pErkの場合について、様々なベンダーのいくつかのタンパク質候補物を用いた本発明者らの結果を参照されたい)。ペプチド-タンパク結合体は、BSAを共通の担体タンパク質として使用する(BSAは、タンパク質アレイ用途のための十分に特徴付けられた分子である)。本発明者らは、様々なエピトープペプチド標準物質のシグナル応答は、(同じ)担体タンパク質の特性によって大きくは影響されないと予想する。反対に、本発明者らは、様々なベンダーの組換えタンパク質(例えば、Erkの場合)に由来するアッセイシグナル応答の顕著な差異を測定した。これもまた、異なるタンパク質調整物および特徴(異なる発現系、±GSTタグ、±Hisタグなど)に起因する可能性がある。
競合
−4種の遊離型の合成ペプチドすべてが、ペプチド標準シグナルの完全な競合を実現した。ホスホペプチドの方が、低濃度で完全な競合に到達するという傾向があった。これは、添加された抗体がホスホエピトープに対してより高い親和性を有することを暗示している可能性がある。本発明者らは、アッセイ応答またはアレイ品質に対する競合ペプチドのいかなる重大な影響も悪影響も認めなかった。
−反対に、競合物として使用された組換えタンパク質は、(例えば、ヒストンH3タンパク質の場合、一部には、個々のスポットシグナルよりも高い倍率の(partly by factors))追加のシグナルバックグラウンドをアレイ上に生じさせ、このことによって、アレイ解析は困難に、または不可能にさえなった。それでもなお、組換えタンパク質はまた、元の検量線のシグナルを抑制するように見えた。しかしながら、組換えタンパク質は、対照溶解物のシグナルを抑制することができなかったが、溶解物スポット上で付加的なシグナルを発生させさえした。これは、溶解物中の他のタンパク質に非特異的に結合することが原因であり得る。これは、ペプチドが競合試薬として明らかに好ましいことを意味する。
−溶解物スポット上で、ペプチドとの競合により、溶解物シグナルが完全に抑制される場合があった(例えば、ヒストンH3溶解物の場合)が、最高濃度の競合物が添加された時でさえ、部分的に(完全ではない)抑制されて基礎シグナルを残す場合もあった(例えば、pRb溶解物、pErk溶解物の場合)。これは、添加された抗体が、非特異的結合にある程度寄与することに起因し得る。したがって、競合アッセイと通常アッセイを並行して用いることを、今後の関心対象の分析物すべてを測定するための一般的概念として提案することができる。
−4種の遊離型の合成ペプチドすべてが、ペプチド標準シグナルの完全な競合を実現した。ホスホペプチドの方が、低濃度で完全な競合に到達するという傾向があった。これは、添加された抗体がホスホエピトープに対してより高い親和性を有することを暗示している可能性がある。本発明者らは、アッセイ応答またはアレイ品質に対する競合ペプチドのいかなる重大な影響も悪影響も認めなかった。
−反対に、競合物として使用された組換えタンパク質は、(例えば、ヒストンH3タンパク質の場合、一部には、個々のスポットシグナルよりも高い倍率の(partly by factors))追加のシグナルバックグラウンドをアレイ上に生じさせ、このことによって、アレイ解析は困難に、または不可能にさえなった。それでもなお、組換えタンパク質はまた、元の検量線のシグナルを抑制するように見えた。しかしながら、組換えタンパク質は、対照溶解物のシグナルを抑制することができなかったが、溶解物スポット上で付加的なシグナルを発生させさえした。これは、溶解物中の他のタンパク質に非特異的に結合することが原因であり得る。これは、ペプチドが競合試薬として明らかに好ましいことを意味する。
−溶解物スポット上で、ペプチドとの競合により、溶解物シグナルが完全に抑制される場合があった(例えば、ヒストンH3溶解物の場合)が、最高濃度の競合物が添加された時でさえ、部分的に(完全ではない)抑制されて基礎シグナルを残す場合もあった(例えば、pRb溶解物、pErk溶解物の場合)。これは、添加された抗体が、非特異的結合にある程度寄与することに起因し得る。したがって、競合アッセイと通常アッセイを並行して用いることを、今後の関心対象の分析物すべてを測定するための一般的概念として提案することができる。
検量線およびアッセイの質
−RPA上にプリントした希釈系列から作成した検量線は、一般に質が高く、複製スポットシグナルの低いCV、およびデータポイントへの良好なフィッティング(いずれの場合も相関係数r2>0.99)として表れた。ペプチド試薬の検量線は、組換えタンパク質の検量線よりもフィッティング相関が優れている(r2値が小さい)傾向を示した。
−2つ1組のスポット(N=2)および数を増やした複製スポット(N=5、N=10)のシグナルCVは同程度であったことから、プリントされた2つ1組のスポットに由来する検量線が最適な結果を既に提供していることが示された。
−また、2つ1組のアッセイの再現性も、数パーセント〜10パーセントの範囲にある平均標準シグナルの低CV(アレイ間)として表れたように、非常に良好であった。ペプチド試薬の検量線は、組換えタンパク質の場合(平均CV=9%)よりもCVが低い(平均CV=6%)傾向を示した。
−2種の全タンパク質分析物(ヒストンH3およびErk1)の検量線のシグナル強度は、極めて良好に一致した。2種のリン酸化タンパク質分析物(pRbおよびpErk)の検量線は、組換えタンパク質の場合に低いシグナルを示し、これは、リン酸化(phopshorylation)の程度が低く、顕著ではない(less defined)ことに起因する可能性が高い。
−RPA上にプリントした希釈系列から作成した検量線は、一般に質が高く、複製スポットシグナルの低いCV、およびデータポイントへの良好なフィッティング(いずれの場合も相関係数r2>0.99)として表れた。ペプチド試薬の検量線は、組換えタンパク質の検量線よりもフィッティング相関が優れている(r2値が小さい)傾向を示した。
−2つ1組のスポット(N=2)および数を増やした複製スポット(N=5、N=10)のシグナルCVは同程度であったことから、プリントされた2つ1組のスポットに由来する検量線が最適な結果を既に提供していることが示された。
−また、2つ1組のアッセイの再現性も、数パーセント〜10パーセントの範囲にある平均標準シグナルの低CV(アレイ間)として表れたように、非常に良好であった。ペプチド試薬の検量線は、組換えタンパク質の場合(平均CV=9%)よりもCVが低い(平均CV=6%)傾向を示した。
−2種の全タンパク質分析物(ヒストンH3およびErk1)の検量線のシグナル強度は、極めて良好に一致した。2種のリン酸化タンパク質分析物(pRbおよびpErk)の検量線は、組換えタンパク質の場合に低いシグナルを示し、これは、リン酸化(phopshorylation)の程度が低く、顕著ではない(less defined)ことに起因する可能性が高い。
図面は、2つ1組のアッセイのアレイ画像、ならびに緩衝液におけるペプチド検量線のグラフ、各溶解物中にスパイクされたペプチド標準物質の曲線、および緩衝液に溶かしたペプチド標準物質と純粋な溶解物の内因性タンパク質濃度の補正後の溶解物中にスパイクされたペプチド標準物質とを一緒に表した(combined)曲線を示す。
Claims (16)
- リンカーを介してタンパク質担体に結合されているペプチドを含む較正試薬であって、該ペプチドが関心対象のエピトープを含む、較正試薬。
- 関心対象のエピトープが、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸を含む、請求項1記載の較正試薬。
- 前記ペプチドが12〜25アミノ酸長である、請求項1または2記載の較正試薬。
- タンパク質担体がウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項1〜3のいずれか一項記載の較正試薬。
- リンカーが、システインおよび8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の較正試薬。
- ペプチド:タンパク質担体の比が0.3〜1の間である、請求項1〜5のいずれか一項記載の較正試薬。
- a)2種またはそれ以上の濃度で請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、および
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階
を含む、検量線を作成するため方法。 - a)i)2種またはそれ以上の濃度の請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬と、
ii)1種または複数種の生物試料と
をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬および1種または複数種の各生物試料について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階、ならびに
e)1種または複数種の生物試料中の関心対象のエピトープを含むタンパク質を定量する段階
を含む、試料中の関心対象のエピトープを含むタンパク質の濃度を定量するための方法。 - a)2種またはそれ以上の濃度で請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにする段階、および
e)親和性試薬を用いて検出できる関心対象のエピトープの最小量を決定する段階
を含む、関心対象の親和性試薬の検出下限値を決定するための方法。 - a)2種またはそれ以上の濃度で請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにし、それによって検量線を作成する段階、
e)検量線の直線部分を決定する段階、および
f)検量線の直線部分の傾きを決定する段階
を含む、関心対象の親和性試薬の感度を決定するための方法。 - a)2種またはそれ以上の濃度で請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共に該アレイをインキュベートする段階、
c)2種またはそれ以上の濃度の各較正試薬について、結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、
d)シグナル強度と関心対象のエピトープの量との相関関係を明らかにし、それによって検量線を作成する段階、
e)検量線の直線部分を決定する段階、および
f)検量線の直線部分に相当する関心対象の較正試薬の濃度範囲を決定する段階
を含む、関心対象の親和性試薬のダイナミックレンジを決定するための方法。 - a)i)請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬と、
ii)タンパク質担体に結合された対照ペプチドを含む少なくとも1種の試料であって、該対照ペプチドが関心対象のエピトープを含まない、少なくとも1種の試料と
をアレイ上に固定する段階、
b)検出可能な関心対象の親和性試薬と共にアレイをインキュベートする段階、
c)アレイ上の結合された親和性試薬のシグナル強度を測定する段階、ならびに
d)較正試薬の関心対象のエピトープと相関関係にあるシグナル強度を、対照ペプチドと相関関係にあるシグナル強度と比較する段階
を含む、関心対象の親和性試薬の特異性を決定するための方法。 - 検出可能な関心対象の親和性試薬が、段階a)に先立って、関心対象の遊離エピトープペプチドと共にインキュベートされ、かつ段階b)において、アレイが、親和性試薬と遊離ペプチドとの混合物と共にインキュベートされる、請求項12記載の方法。
- 較正試薬が、基質タンパクの存在下で固定される、請求項7〜13のいずれか一項記載の方法。
- 検量線を作成するための、請求項1〜6のいずれか一項記載の較正試薬の使用。
- 前述の実施例を特に参照して本明細書において先に実質的に説明した、タンパク質、ペプチド、方法、および使用。
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