JP2013256237A - 三輪車 - Google Patents

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Abstract

【課題】左右一対の前輪と後輪とを有する三輪車であって、シンプルでコンパクトな構造によって、旋回性を向上させることのできる三輪車を提供する。
【解決手段】ステアリング軸4から左右に延び、ステアリング軸4を中心に回動可能に取り付けられた上アームと、上アームよりも下方でステアリング軸4から左右に延び、ステアリング軸4を中心に回動可能に取り付けられた下アームと、上アーム及び下アームの右側端部及び左側端部とそれぞれ回動可能に取り付けられた右輪保持体13R及び左輪保持体とを備え、上アーム及び下アームが、右輪保持体13R及び左輪保持体と共にリンク機構を形成する。下アームが、ステアリング軸4から右側の部材12Rと、左側の部材とに分割されてなる。下アームの、右輪保持体13Rとの接続部から左輪保持体との接続部までの長さが、上アームの、該当長さよりも短い。
【選択図】図1

Description

本発明は、前二輪型の三輪車に関する。
前車輪を並列に二個備える前二輪型の三輪車がある。前二輪型の三輪車は、前一輪の通常の自転車に比べ、両前輪の間に積載スペースを設けることができ、また、前輪荷重に対し両前輪の2点で支持できるので静置状態や低速走行時でもふらつきや横転し難く、ハンドルに荷物かごや幼児シートを取り付けた場合でも操縦安定性が高い。したがって、前二輪型の三輪車は、近年、自転車のカテゴリー中で1つのジャンルとして確立している幼児同乗の用途や、荷物運搬の用途に好適である。しかし、三輪車は一般の自転車と比べて乗り心地や操作性、例えば旋回性がよくないと感じられる場合があった。
乗り心地を向上させた三輪車に関し、ステアリング軸の下部に、該ステアリング軸の軸線に平行な方向に沿って間隔をおいて上部リンク及び下部リンクが当該ステアリング軸を回転中心に回動可能に設けられ、この上部リンク及び下部リンクが平行リンク機構を構成して、この平行リンク機構に連結された第1の前輪及び第2の前輪が、ステアリング軸の地面に対する傾きに応じて、互いに平行なままステアリング軸と同方向に傾動するものがある(特許文献1)。この平行リンク機構により、地面の傾斜や歩道との段差を乗り越えるときのハンドル操作の安定性を確保し、また、乗り心地を向上させることができるとされている。
また、上方揺動フレームと左右の下方揺動フレームとが互いに離間してフレームの前端を回転中心に回動可能に設けられ、これらの揺動フレームが縦筒体と共にリンク機構を構成して、フレームの傾きに応じて左右の前輪が傾動し、また、左右のタイロッドとナックルアームが前輪に設けられ、アッカーマン・ジャント機構を構成したものがある(特許文献2)。このリンク機構により、走行中の旋回時に車体を傾斜したときは、車体の傾きに応じて車輪が旋回方向に傾くので、前輪の一方が地面から浮き上がるのを防止して傾斜時の車体の安定性を確保することができ、また、アッカーマン・ジャント機構により左右の前輪が横滑り等を生じさせることなく旋回することができるとされている。
特開2010−47050号公報 特開2011−42223号公報
特許文献1に記載の三輪車においては、上部リンクと下部リンクは、同じ長さを有し、互いに平行に配置されている。そのため、ステアリング軸が地面に対して傾けられた場合、第1及び第2の前輪は、互いに平行なままステアリング軸と同方向に傾けられる。このことは、旋回時に車体を傾けた場合に、第1及び第2の前輪が地面に対して傾く角度が同じであることを意味し、旋回性の向上について改良の余地があった。
この点、特許文献2に記載の三輪車においては、リンク機構を構成する右下方揺動フレームの揺動軸と左下方揺動フレームの揺動軸とが、一定の間隔を空けて離間している。このことにより、車体の傾斜時には旋回中心側(内側)の前輪が外側の前輪よりも大きな傾斜角度で傾くので、旋回時に車輪のスリップ等によるロスを低減することができる。したがって、効率よく円滑に旋回することができ、旋回性に優れている。
しかしながら、特許文献2に記載の三輪車は、前輪構造がアッカーマン・ジャント機構を含むので複雑であり、また、前輪近傍の機構が全体として大型化する。
そこで本発明の目的は、シンプルでコンパクトな構造によって、旋回性を向上させることのできる三輪車を提供することにある。
本発明の三輪車は、左右一対の前輪と後輪とを有する三輪車であって、フレーム体と、フレーム体のヘッドパイプの下端から下方に延び、該ヘッドパイプにヘッド部品を介して回動可能に取り付けられたステアリング軸と、該ヘッドパイプの上端から上方に設けられ、ステアリング軸と連結するハンドルと、ステアリング軸から左右に延び、ステアリング軸を中心に回動可能に取り付けられた上アームと、該上アームよりも下方でステアリング軸から左右に延び、該ステアリング軸を中心に回動可能に取り付けられた下アームと、上アーム及び下アームの右側端部とそれぞれ回動可能に取り付けられた右輪保持体と、上アーム及び下アームの左側端部とそれぞれ回動可能に取り付けられた左輪保持体と、を備え、前記上アーム及び下アームが、右輪保持体及び左輪保持体と共にリンク機構を形成し、前記下アームが、ステアリング軸から右側に延びる部材と、左側に延びる部材とに分割されてなり、前記下アームの、右輪保持体との接続部から左輪保持体との接続部までの長さが、前記上アームの、右輪保持体との接続部から左輪保持体との接続部までの長さよりも短い、ことを特徴とする。
本発明の三輪車においては、下アームのステアリング軸から右側に延びる部材と、左側に延びる部材とは、ステアリング軸に対する回転軸が同一直線上にあることが好ましく、また、右輪保持体及び左輪保持体がホークであり、該ホークに上アーム及び下アームとの取付具がそれぞれ設けられ、かつ、該取付具のうち下アームを取り付ける取付具のホークへの取り付け位置が、上アームを取り付ける取付具のホークへの取り付け位置に比べて、ステアリング軸から見て近い位置に設けられていることが好ましい。さらに、上記ホークが、先端に向けて直線的に延びる形状を有することが、より好ましい。
本発明によれば、ステアリング軸に取り付けられてリンク機構を形成する上アーム及び下アームを介して右輪保持体と左輪保持体が取り付けられているので、旋回時にステアリングが地面に対して傾いたときに、同時に左右の前輪を傾けることを、シンプルでコンパクトな構造により実現できる。また、下アームが上アームよりも接続部の間の距離が短く、ステアリング軸から右側に延びる部材と、左側に延びる部材とに分割されてなることから、旋回時のステアリングが地面に対して傾いたときに、旋回内周側の車輪の傾斜角度を、旋回外周側の車輪の傾斜角度よりも大きくすることができ、よって旋回性を向上させることができる。
本発明の三輪車の一実施形態の側面図である。 図1の三輪車の正面図である。 図1の三輪車のステアリング軸及びその近傍を、斜め後方より見た斜視図である。 ステアリング軸の説明図である。 上アームの説明図である。 上アームの斜視図である。 下アームの分解図である。 下アームの組立図である。 右ホークの説明図である。 リンク機構の動作を説明する模式図である。
以下、本発明の三輪車の実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。なお、以下の説明で右又は右側とは、正常な乗車姿勢をとったとき、三輪車の基準中心面、すなわち、自転車のフレーム体の中心面、より具体的にはヘッドパイプ、上パイプ、立パイプ及び下パイプ、又はこれらに相当する部材の中心線によって作られる平面、に対する乗員の右手側をいい、左又は左側とは、正常な乗車姿勢をとったとき、三輪車の基準中心面に対する乗員の左手側をいう。
図1に側面図で示す、本実施形態の三輪車1は、フレーム体2を備えている。このフレーム体2は、図示した例では、フレーム体2の最も前方に位置するヘッドパイプ2aと、このヘッドパイプ2aと接続し下方向及び後方に延びるメインパイプ2bと、このメインパイプ2bの後端と接続して設けられ、上下方向に延びる立パイプ2c(メインパイプ2bの後端と立パイプ2cの下端とが接続している)と、この立パイプ2cの上端と接続し下方向及び後方に延びるバックホーク2dと、立パイプ2cの下端と接続して後方に延び、バックホーク2dの後端と接続するチェーンステー2eとを備えている。ヘッドパイプ2aには、ヘッド部品3aが取り付けられ、このヘッド部品3aにより、ヘッドパイプ2a内に挿入されるステアリング軸4が該ヘッドパイプ2aに、該ヘッドパイプの中心軸を回転中心にして回動可能に保持される。このステアリング軸4には、あとで詳しく説明する上アーム11及び下アーム12が該ステアリング軸4を回転中心にして回動可能に取り付けられる。この上アーム11及び下アーム12は、左右の前輪5aをステアリング軸4に対して相対的に昇降可能にするためのものである。
また、ヘッドパイプ2aの上方には、ステアリング軸4と連結したハンドル6が取り付け固定される。ハンドル6は、ステアリング軸4と固着するステム6aと、このステム6aによって固定されたハンドルバー6bとよりなる。
立パイプ2cの上端には、シートポスト3bが取り付け固定され、このシートポスト3bの上端部にサドル7が取り付けられている。
メインパイプ2の後端と、立パイプ2cの下端と、チェーンステー2eの先端とが接続する部分には図に表れないハンガ部品が取り付けられる。このハンガ部品を介して駆動装置としてのギヤクランク8aが取り付けられ、このギヤクランク8aの先端にペダル8bが取り付けられる。
後輪5bは、バックホーク2dとチェーンステー2eとの接続部に形成された後爪(図に表れない)の溝に後輪5bのハブが取り付けられて固定される。この後輪5bのハブと同心に取り付けられたフリーホイール(図に表れない)を介して取り付けられた小ギヤ8cと、上記ギヤクランク8aのギヤ板とにチェーン8dを巻きかけて、ペダル8bに入力された駆動力がチェーン8dを介し後輪5bに伝達される。なお図示した三輪車1は、電動アシスト装置を有しないものであるが、本発明の三輪車は、電動アシスト装置を有する構造とすることもできる。
前輪5a、後輪5bにはそれぞれ泥除け9a、9bが取り付けられている。また、図示した三輪車の例では、ハンドル6に幼児シート9cが取り付けられており、後輪5bの上方には、リヤキャリア9dが取り付けられている。なお、幼児シート9c及びリヤキャリア9dは、本実施形態の三輪車に必須の部材ではない。
なお図示した三輪車1は、前照灯を含む照明装置、ベル等の警報装置、前後の制動装置、スタンド等を備えているが、本発明の特徴部分の理解を容易にするために、図示を省略している。
本実施形態の三輪車1は、図2の三輪車の正面図及び図3に示す三輪車1のステアリング軸4及びその近傍を、斜め後方より見た斜視図に示すように、ステアリング軸4の下方にて該ステアリング軸4から左右方向に延びる上アーム11と、この上アーム11の下方にて該ステアリング軸4から左右方向に延びる下アーム12とを備えている。
上アーム11は一体型のものであり、該ステアリング軸4に対し該ステアリング軸4を回転中心として回動可能に取り付けられている。換言すれば、上アーム11は、ステアリング軸4を支点として左右の端部が揺動可能となっている。
また、下アーム12は、ステアリング軸4から右側に延びる部材である、右アーム12Rと、ステアリング軸4から左側に延びる部材である、左アーム12Lとに分割されていて、これらの右アーム12Rと左アーム12Lとが、ステアリング軸4を回転中心として個別に回動可能に取り付けられている。換言すれば、下アーム12の右アーム12R及び左アーム12Lは、ステアリング軸4を支点として、このステアリング軸4から右側又は左側に延びる端部が揺動可能となっている。
上アーム11及び右アーム12Rの右側には、左右一対の前輪5aのうちの右側前輪5aRを、該右側前輪5aRのハブを回転中心として回動可能に支持する右輪保持体としての右ホーク13Rが、上アーム11の右側端部及び下アーム12の右アーム12Rの端部のそれぞれと該端部を回転中心に回動可能に取り付けられている。これにより右ホーク13Rにおける上アーム11及び下アーム12の取り付け箇所の間の部分がリンク機構のリンクに、当該上アーム11及び下アーム12の取り付け箇所がリンク機構のジョイントとなって、右ホーク13Rは、ステアリング軸4の延長方向とほぼ平行な方向に移動可能になっている。また、上アーム11及び左アーム12Lの左側には、前輪5aのうちの左側前輪5aLを、該左側前輪5aLのハブを回転中心として回動可能に支持する左輪保持体としての左ホーク13Lが、上アーム11の左側端部及び下アーム12の左アーム12Lの端部のそれぞれと、該端部を回転中心に回動可能に取り付けられている。これにより左ホーク13Lにおける上アーム11及び下アーム12の取り付け箇所の間の部分がリンク機構のリンクに、当該上アーム11及び下アーム12の取り付け箇所がリンク機構のジョイントとなって、左ホーク13Lは、ステアリング軸4の延長方向とほぼ平行な方向に移動可能になっている。
上記上アーム11及び下アーム12が、右ホーク13R及び左ホーク13Lと共にリンク機構を形成し、右ホーク13R及び左ホーク13Lを相対的に昇降可能になる。また、下アーム12の、右ホーク13Rとの接続部から左ホーク13Lとの接続部までの長さ、具体的には、後述するように右アーム12R、左アーム12Lをステアリング軸4のピボット4eに回動可能に取り付けたときのホーク取付孔12R5、12L5の中心間の距離W2が、上アーム11の、右ホーク13Rとの接続部から左ホーク13Lとの接続部までの長さ、具体的には、後述するように上アーム11の左右のホーク取付孔115の中心間の距離W1よりも短く、下アーム12が、ステアリング軸から右側に延びる右アーム12Rと、左側に延びる左アーム12Lとに分割されている。
図4〜9を用いてステアリング軸4、上アーム11、下アーム12、右ホーク13R、左ホーク13Lの各部材を、より具体的に説明する。
ステアリング軸4は、図4(a)〜(d)に示すように直線的なパイプ形状を有してヘッドパイプ2aに挿入される部分であるステアリングステム4aと、このステアリングステム4aの下端に固着された逆J字形状のパイプにより形成されたレッグ部4bと、このレッグ部4bの背後に取り付けられるバックステー4c(図4(a)参照。)とを備えている。図示した例では、ステアリング軸4は、ステアリングステム4aの下端に、レッグ部4bの曲面部が、溶接やろう付け等によって固着されるとともに、レッグ部4bの曲面部の端部に、バックステー4cがボルト4fによって取り付けられてなる。
レッグ部4bの直線部分には、上アーム11を回動可能に取り付けるためのピボット4dが、溶接やろう付け等によって固着されている。また、レッグ部4bにおけるピボット4dよりも下方の位置には、下アーム12の右アーム12R及び左アーム12Lを回動可能に取り付けるためのピボット4eが、溶接やろう付け等によって固着されている。ピボット4d、4eの、レッグ部4bへの固着方法は、溶接やろう付けに限られず、例えばレッグ部4bの直線方向と交差して貫通するボルトを用いて、ピボット4d、4eをレッグ部4bに締結固定することもできる。これらのピボット4d、4eは、内面が中空の円筒形状を有しており、レッグ部4bと固着される側とは反対側の端部の内面には、バックステー4cを通じてボルト4fとネジ結合するためネジ溝が形成されている。
上アーム11は、図5に示す正面図(同図(a))及び平面図(同図(b))並びに、図6に示す斜視図のように、中央から両側に延びる第1アーム部111及び第2アーム部112が、互いに間隔L1を空けて設けられ、中央の接続部113によって接続されて形成された、概略H型の平面形状を有している。また、接続部113には、その接続方向に貫通孔114が形成されている。このように第1アーム部111及び第2アーム部112という、2本のアーム部を有しているのは、1本のアーム部を有している場合に比べて上アーム11の強度及び剛性を向上させるためである。もっとも、上アーム11に必要な強度及び剛性が確保されるのであれば、アーム部は1本であってもよい。これらの第1アーム部111及び第2アーム部112が接続部113によって接続されて概略H型の平面形状を有していることにより、上アーム11の強度及び剛性の向上と軽量化の両立を図っている。
上アーム11は、金属、例えばアルミニウムを材料としてダイキャスト成形等により一体成形することができ、また、他の製法としては第1アーム部111、第2アーム部112及び接続部113の各部材を用意し、これらの部材を接合して成形することもできる。貫通孔114は、ステアリング軸4のピボット4dの外径よりも大きな直径を有している。このピボット4dに貫通孔114が挿入されることで上アーム11がピボット4dの回りに回動可能となっている。また、第1アーム部111及び第2アーム部112の両端部には、これらの第1アーム部111及び第2アーム部112の端部を右ホーク13R又は左ホーク13Lに回動可能に取り付けるための、ホーク取付孔115がそれぞれ形成されている。
上アーム11の、ステアリング軸4への取り付けは、図示した例では、ステアリング軸4のレッグ部4bに固着されたピボット4dに、上アーム11の貫通孔114を挿入した後、バックステー4cを介してボルト4fとピボット4dとを、ねじ結合することにより行う。
下アーム12は、前述したように右アーム12Rと左アーム12Lとにより構成される。図7(a)〜(d)に正面図及び平面図を、また、図8に組立図を示すように、右アーム12Rは、互いに間隔L2を空けて設けられた第1アーム部12R1と第2アーム部12R2とを、接続部12R3により接続した形状を有している。また、左アーム12Lは、互いに間隔L2を空けて設けられた第1アーム部12L1と第2アーム部12L2とを、接続部12L3により接続した形状を有している。これにより、左右のアームがそれぞれ1本の場合に比べて右アーム12R、左アーム12Lの強度及び剛性を向上させつつ、軽量化を図っている。
右アーム12Rの一方の端部には、ステアリング軸4のピボット4eが挿入可能な直径を有する貫通孔12R4が形成され、当該貫通孔12R4の軸方向に平行な方向に沿って部分的に凹部が形成されている。左アーム12Lも同様に、一方の端部は、ピボット4eを挿入可能な直径を有する貫通孔12L4が形成され、当該貫通孔の軸方向に平行な方向に沿って部分的に凹部が形成されている。図8に示すように、右アーム12Rと左アーム12Lとを、それぞれの貫通孔12R4、12L4が形成された端部を対向させて突き合わせたとき、右アーム12Rの端部が、左アーム12Lの端部の部分的な凹部に入り込むとともに、左アーム12Lの端部が、右アーム12Rの端部の部分的な凹部に入り込む。これにより、右アーム12Rの貫通孔12R4及び左アーム12Lの貫通孔12L4は、同一直線上に揃う。
下アーム12の右アーム12R、左アーム12Lのステアリング軸4への取り付けは、このように右アーム12Rと左アーム12Lとが組み合わされた状態で、ステアリング軸4のレッグ部4bに固着されたピボット4eに、右アーム12Rの貫通孔12R4及び左アーム12Lの貫通孔12L4を挿入した後、バックステー4cを介してボルト4fとピボット4eとを、ねじ結合することにより行う。これにより、ステアリング軸4のピボット4eを回転軸として右アーム12Rと左アーム12Lとが個別にピボット4eの回りに回動可能に取り付けられる。
右アーム12R、左アーム12Lは、上アーム11と同様に、金属、例えばアルミニウムを材料としてダイキャスト成形等によりそれぞれ一体成形することができる。その他の製法としては、右アーム12Rの第1アーム部12R1、第2アーム部12R2及び接続部12R3、左アーム12Lの第1アーム部12L1、第2アーム部12L2及び接続部12L3の各部材を用意し、これらの部材を接合して成形することもできる。また、右アーム12R、左アーム12Lの各アーム部の端部には、これらの端部を右ホーク13R又は左ホーク13Lに回動可能に取り付けるためのホーク取付孔12R5、12L5がそれぞれ形成されている。
下アーム12の、右ホーク13Rとの接続部から左ホーク13Lとの接続部までの長さ、すなわち、本実施形態における右アーム12R、左アーム12Lをステアリング軸4のピボット4eに回動可能に取り付けたときのホーク取付孔12R5、12L5の中心間の距離W2は、上アーム11の、右ホーク13Rとの接続部から左ホーク13Lとの接続部までの長さ、すなわち、本実施形態における上アーム11の左右のホーク取付孔115の中心間の距離W1よりも短くなっている。これは、後述するが三輪車1の旋回時にステアリング軸4を地面に対して傾けたときに、旋回の内輪側の前輪の、地面に対する傾きを、外輪側の前輪の地面に対する傾きよりも大きくするためである。
上アーム11及び下アーム12と接続する右ホーク13R及び左ホーク13Lについて、図9に正面図(同図(a))及びA−A断面図(同図(b))で示した右ホーク13Rで代表させて説明する。なお、左ホーク13Lは、右ホーク13Rとはステアリング軸4を対称軸とする線対称の構成になる。図9に示した右ホーク13Rは、右側前輪の半径部分を囲む逆U字型のパイプよりなるホーク本体131と、このホーク本体131において右側前輪のハブの軸方向長さに対応する間隔を開けた2本の直線部分131a、131bのうち、ステアリング軸4に近い側の直線部分131aのステアリング軸4から見た外側表面近傍に固着され、上アーム11の右側端部に回動可能に接続するアームカラー132と、このアームカラー132の下方で131aのステアリング軸4から見た外側表面近傍に固着され、右アーム1Lの端部に回動可能に接続するアームカラー133と、ホーク本体131の下端に固着され右側前輪のハブが挿入されて支持可能な溝134aを有する爪134とを備えている。ホーク本体131が、2本の直線部分131a、131bを有するのは、当該ホーク本体131が右側前輪のハブを支持する側の先端に向けて直線的に延びる形状を有することにより、ホーク本体131は、リンク機構を構成し、ステアリング軸4に取り付けられる上アーム11及び下アーム12と、ホーク本体131の先端寄りで接続することが可能になるためである。
アームカラー132は、上アーム11の第1アーム部111の先端と第2アーム部112の先端との間隔L1にほぼ等しい長さを有する円筒形のパイプである。また、アームカラー133は、下アーム12における左右のアーム12R、12Lの第1アーム部12R1、12L1の先端と第2アーム部12R2、12L2の先端との間隔L2にほぼ等しい長さを有する円筒形のパイプである。
アームカラー132、133は、ホーク本体131の直線部分131aに溶接又はロウ付け等により固着される。接合面積を大きくして接合強度を高めるために、当該直線部分131aには、アームカラー132、133を接合する箇所の表面を、アームカラー132、133の円筒外形に合わせて部分的に除去する加工が施され、この表面除去加工した箇所にアームカラー132、133が接合されている。
右ホーク13Rと上アーム11との取り付けは、右ホーク13Rのアームカラー132を、上アーム11の第1アーム部111の先端と第2アーム部112の先端との間に置き、アームカラー132の中空部と第1アーム部111及び第2アーム部112のホーク取付孔115とが同一直線上に位置するように位置決めしてから、これらのホーク取付孔115及びアームカラー132を貫通するボルト135を、第1アーム部111の外側から挿入し、アームカラー132の内部を通して第2アーム部112の外側にその先端部を突出させ、その突出させたボルト135の先端をナット136によりネジ結合することにより行う。
右ホーク13Rと、下アーム11の右アーム12Rとの取り付けは、上述した上アームとの取り付けと同様であって、右ホーク13Rのアームカラー133を、右アーム12Rの第1アーム部12R1の先端と第2アーム部12R2の先端との間に置き、アームカラー133の中空部と、第1アーム部12R1、第2アーム部12R2の先端に形成されたホーク取付孔12R5とが同一直線上に位置するように位置決めしてから、第1アーム部12R1のホーク取付孔12R5、アームカラー133及び第2アーム部12R2のホーク取付孔12R5を貫通するボルトを、第1アーム部12R1の外側から挿入し、アームカラー132の内部を通して第2アーム部12R2の外側にその先端部を突出させ、その突出させたボルト先端をナットによりネジ結合することにより行う。
ホーク本体131は、図示した本実施形態では、三輪車が正立状態であるときに三輪車の正面から見て車輪の直径方向が地面に対して、ほぼ垂直方向になるように車輪を保持するようにする。そのために本実施形態のホーク本体131の2本の直線部分もまた、地面に対して、ほぼ垂直方向になるように取り付けられる。ここに、先に述べたように下アーム12における右アーム12R及び左アーム12Lのホーク取付孔12R5、12L5間の距離W2は、上アーム11の左右のホーク取付孔115間の距離W1よりも短い。そのために図示した例では、ホーク本体131の直線部分131aは、下アーム11のホーク取付孔115と同心に位置するアームカラー133を取り付ける箇所の表面除去加工量を、上アーム11のホーク取付孔115と同心に位置するアームカラー132を取り付ける箇所の表面除去加工量よりも大きくしている。これにより、右ホーク13Rが上アーム11及び下アーム12に取り付けられたとき、アームカラー133は、アームカラー132よりも所定量D=(W1−W2)/2だけステアリング軸4に近い位置に設けられていることになり、よって正立時に車輪を垂直に保持することができる。すなわち、車輪間の間隔は、車輪の上下にわたって変わらない。
ホーク本体131の両先端部に設けられた爪134は、前輪のハブを挿入して支持する溝がホーク本体131の直線部分131a、131bの延長方向から所定の距離だけ離れて設けられている。爪134の溝134aが、ホーク本体131の直線部分131a、131bから所定の距離だけ離れて設けられ、換言すればステアリング軸に対して前輪のハブが爪134を介してオフセットして設けられていることにより、ホークを、先端に行くに連れて湾曲させてオフセットを設けた場合に比べて、ステアリング軸4に対する上アーム11や下アーム12の取り付け位置を下方に下げることができる。その理由を次に説明する。ホークを、先端に行くに連れて湾曲させてオフセットを設けた場合は、アームカラー132、133は、ステアリング軸に取り付けられた上アーム11及び下アーム12との接続の関係上、ホークの湾曲していない部分に取り付ける必要があるために、当該アームカラー132、133を、ホークの先端部に近い湾曲した部分には取り付けることができず、よって上アーム11や下アーム12の取り付け位置を下方に下げることが難しい。これに対して、湾曲しないで直線的なホーク本体131、換言すればホークの先端部に近い部分までが直線状であるホーク本体131に前輪のハブが爪134を介してオフセットして設けられている場合は、アームカラー132、133の取り付け位置の自由度が上がり、ホーク本体131の下方に取りつけることができ、よって上アーム11や下アーム12の取り付け位置を下方に下げることができる。
直線的なホーク本体131に前輪のハブが爪134を介してオフセットして設けられ、これによりアーム11や下アーム12の取り付け位置を下方に下げることができることから、これにより前輪には従来よりも小径のものを用いることが可能になる。したがって、前輪の上部やハンドル上に幼児シートや荷物かごを取り付けるのが容易になり、また、三輪車の低重心化を図ることができる。また、前輪のジオメトリ、例えばキャスタートレールの長さを爪134のサイズの調整により決定することができ、更に、路面からの衝撃を和らげることができる。なお、右ホーク13Rの別の構成として、ホーク本体131の両先端部に平坦化加工をし、その平坦化加工をした部分にホーク本体131の延長線に沿って溝を設けて、そのホーク本体131に設けられた溝に右側前輪5aRのハブを挿入して回動可動に支持する構成としてもよい。かかる構成を有する三輪車では、オフセットはないか、別の手段によりオフセットを設けることができる。
次に、本実施形態の三輪車の、ステアリング軸4に取り付けられたリンク機構の動作について図10を用いて説明する。図10(a)は、正立状態を示している。右旋回時に車体を旋回方向に傾けることでステアリング軸4を旋回方向に傾けると図10(b)に示すように、右側前輪5aR及び左側前輪5aLは、地面に接地しつつ右ホーク13R及び左ホーク13Lに回動可能に連結した上アーム11及び下アーム12の、ステアリング軸4を支点としたリンク機構により、右側前輪5aRはステアリング軸4に対して相対的に上昇し、左側前輪5aLはステアリング軸に対して相対的に下降して、右側前輪5aR及び左側前輪5aLが地面に対して傾くことになる。このとき、下アーム12のステアリング軸からのリンク長W2が、上アーム11のステアリング軸からのリンク長W1よりも短いため、旋回の内周側に相当する右側前輪5aRの地面に対する傾斜角θRは、旋回の外周側に相当する左側前輪5aLの地面に対する傾斜角θLよりも大きくなる。このため、θR=θLの場合に比較して右前輪と左前輪の旋回中心が近づき、旋回性が向上する。
逆に、左旋回時にステアリング軸4を旋回方向に傾けると図10(c)に示すように、右ホーク13R及び左ホーク13Lに回動可能に連結した上アーム11及び下アーム12のリンク機構により、右側前輪5aR及び左側前輪5aLが地面に対して傾き、このとき、旋回の内周側に相当する左側前輪5aLの地面に対する傾斜角θLは、旋回の外周側に相当する右側前輪5aRの地面に対する傾斜角θRよりも大きくなる。このため、旋回性が向上する。
なお、旋回時には、上アーム11及び下アーム12を含むリンク機構とは独立して、ハンドル6を用いて自由に舵角を得ることができる。
以上のことから、本実施形態の三輪車は、自転車と比べても違和感のないスムーズな旋回を行うことができ,従来の三輪車よりも旋回性が向上しているという効果を有する。
また、上述の旋回性の向上を、ステアリング軸4に取り付けた上アーム11及び下アーム12により実現しているので、シンプルかつコンパクトな構成により旋回性の向上が可能になる。
更に、下アーム12は、右アーム12R及び左アーム12Lとの二分割構造になることにより、下アーム12のステアリング軸4への組み付け性も向上する。これを詳述すると、仮に上下のアームが、それぞれ一体物よりなる場合は、製造誤差がある程度大きくなると6箇所のリンクの連結部のうち、1箇所は誤差による位置のずれによって連結するのが困難になる。これに対し本実施形態では、下アーム12を左アーム12Lと右アーム12Rとに分割していることから、多少の製造誤差は十分吸収できるようになり、よって、使用目的に対して必要以上の精度が要求されず、組付け性を向上させることができる。
また、右アーム12Rとステアリング軸4との連結部や、左アーム12Lとステアリング軸4との連結部が、共に同一直線上に位置することから、これらの連結部を離間配置した場合に比べて、よりコンパクトな構成とすることができる。
1 三輪車
2 フレーム体
2a ヘッドパイプ
3a ヘッド部品
4 ステアリング軸
5a 前輪
6 ハンドル
11 上アーム
12 下アーム
12R 右アーム
12L 左アーム
13R 右ホーク(右輪保持体)
13L 左ホーク(左輪保持体)
132、133 アームカラー(取付具)

Claims (4)

  1. 左右一対の前輪と後輪とを有する三輪車であって、
    フレーム体と、
    フレーム体のヘッドパイプの下端から下方に延び、該ヘッドパイプにヘッド部品を介して回動可能に取り付けられたステアリング軸と、
    該ヘッドパイプの上端から上方に設けられ、ステアリング軸と連結するハンドルと、
    ステアリング軸から左右に延び、ステアリング軸を中心に回動可能に取り付けられた上アームと、
    該上アームよりも下方でステアリング軸から左右に延び、該ステアリング軸を中心に回動可能に取り付けられた下アームと、
    上アーム及び下アームの右側端部とそれぞれ回動可能に取り付けられた右輪保持体と、
    上アーム及び下アームの左側端部とそれぞれ回動可能に取り付けられた左輪保持体と、
    を備え、
    前記上アーム及び下アームが、右輪保持体及び左輪保持体と共にリンク機構を形成し、
    前記下アームが、ステアリング軸から右側に延びる部材と、左側に延びる部材とに分割されてなり、
    前記下アームの、右輪保持体との接続部から左輪保持体1の接続部までの長さが、前記上アームの、右輪保持体との接続部から左輪保持体との接続部までの長さよりも短い、
    ことを特徴とする三輪車。
  2. 前記下アームのステアリング軸から右側に延びる部材と、左側に延びる部材とは、ステアリング軸に対する回転軸が同一直線上にある請求項1記載の三輪車。
  3. 前記右輪保持体及び左輪保持体がホークであり、該ホークに上アーム及び下アームとの取付具がそれぞれ設けられ、かつ、該取付具のうち下アームを取り付ける取付具のホークへの取り付け位置が、上アームを取り付ける取付具のホークへの取り付け位置に比べて、ステアリング軸から見て近い位置に設けられている請求項1又は2記載の三輪車。
  4. 前記ホークが、先端に向けて直線的に延びる形状を有する請求項3記載の三輪車。
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