JP2013253125A - 導電性組成物および前記導電性組成物を用いた導電体 - Google Patents

導電性組成物および前記導電性組成物を用いた導電体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れたアニリン系導電性高分子を有する導電性組成物、導電体の提供。
【解決手段】 スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性高分子(A)、塩基性化合物(B)、並びに酸性基を含む化合物(C)を含む導電性組成物、前記導電性高分子(A)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子(A)である、導電性組成物。
【化1】

式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子である。またR〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基またはその塩である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性組成物および前記導電性組成物を用いた導電体に関する。
導電性高分子としては、ポリアニリン系、ポリチオフェン系、ポリパラフェニレンビニレン系等の導電性高分子がよく知られ、多様な用途で使われている。
しかし、これらの導電性高分子は、一部の非プロトン系極性溶媒を除くほとんどの一般溶剤に不溶であり、成形、加工面で問題があった。
また、これらの導電性高分子のうち、ポリチオフェン系、ポリパラフェニレンビニレン系の導電性高分子は、ポリアニリン系の導電性高分子に比べて高い導電性を示すものの、原料が高価、製造工程が煩雑等の問題を有している。
このような成形、加工面の問題を解決し、高い導電性を発現させる方法として、スルホン酸基置換アニリンまたはカルボキシ基置換アニリン等の酸性基置換アニリンを、塩基性化合物を含む溶液中で重合するアニリン系導電性高分子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
この方法により得られたアニリン系導電性高分子は、酸性からアルカリ性の広いpH範囲において、各種溶剤に優れた溶解性を示す。
前記アニリン系導電性高分子の導電性向上のため、従来より以下のような手法が提案されている。
(i)酸性基置換アニリンを、塩基性化合物を含む溶液中で重合する際に、重合触媒である酸化剤の溶液に前記酸性基置換アニリンと塩基性化合物を含む溶液を滴下することで、発生する不純物を抑制する、高純度かつ高導電性のアニリン系導電性高分子の製造方法。
また、前記アニリン系導電性高分子の耐熱性向上のため、従来より以下のような手法が提案されている。
(ii)アニリン系導電性高分子を含む導電性組成物に、塩基性化合物を添加することで、導電性組成物の耐熱性を向上させる方法(特許文献2)。
特開平7−196791号公報 特開2010−116441号公報
しかしながら、前記(i)、(ii)の方法によって得られた導電性組成物は、高温雰囲気下における導電性、耐熱性が、未だ不充分である。また、前記(ii)の方法によって得られた導電性組成物は、コンデンサ等へ適用するためには、さらなる導電性、耐熱性の向上が望まれている。
本発明は、導電性、耐熱性に優れた導電性組成物および前記導電性組成物を用いた導電体を提供することを目的とする。
本発明者らは、導電性高分子に、塩基性化合物、酸性基を含む化合物を添加することで、得られる組成物の耐熱性が大きく向上することを見出した。
すなわち、本発明の第一の観点は、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性高分子(A)、塩基性化合物(B)、並びに酸性基を含む化合物(C)を含む導電性組成物である。
本発明の第二の観点は、前記導電性高分子(A)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子である、前記導電性組成物である。
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子である。またR〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基またはその塩である。
また、発明の第三の観点は、前記化合物(C)が同一分子内に酸性基が2つ以上有する化合物である、前記導電性組成物である。
さらに、第四の観点は、前記導電性組成物を用いた導電体である。
本発明によれば、耐熱性、成膜性に優れた導電性組成物を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「可溶性」とは、水、塩基および塩基性塩を含む水、酸を含む水、またはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の溶媒、または、それらの混合物10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
また、「導電性」とは、10−9S/cm以上の電気伝導率を有することである。
<スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性高分子(A)>
前記導電性高分子(A)は、分子内にスルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する。以下、スルホン酸基、カルボキシル基を総称して「酸性基」という場合がある。
このような導電性高分子(A)としては特に限定されず、公知の導電性高分子を用いることができる。
具体的には、無置換または置換基を有するポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリイソチアナフテン、ポリフラン、ポリカルバゾール、ポリジアミノアントラキノン、ポリインドールからなる群より選ばれた少なくとも1種のπ共役系高分子中の骨格に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩、あるいはスルホン酸基および/またはカルボキシル基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩で置換されたアルキル基又はエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性高分子が挙げられる。
また、前記π共役系高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩、あるいはスルホン酸基および/またはカルボキシル基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩で置換されたアルキル基又はエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性高分子が挙げられる。
これらの中でも、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン骨格を有する導電性高分子が好ましい。
また、導電性、耐熱性、成膜性の観点から、ポリアニリン骨格を有する導電性高分子が好ましい。
本発明で用いる導電性高分子(A)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子(−F、−Cl、−Brまたは−I)であり、R〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基またはその塩である。
ここで、「酸性基」とは、カルボキシ基、スルホン酸基である。
また、カルボキシ基、スルホン酸基は、それぞれ酸の状態(−COOH、−SOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−COO、−SO )で含まれていてもよい。
また、「塩」とは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、および置換アンモニウム塩のうち、少なくとも一種を示す。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位としては、製造が容易な点で、R〜Rのうち、いずれか1つが炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つがスルホン酸基であり、残りが水素であるものが好ましい。
前記導電性高分子は、該導電性高分子を構成する全繰り返し単位(100mol%)のうち、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を10〜100mol%含有することが好ましく、50〜100mol%含有することがより好ましく、pHに関係なく水および有機溶剤への溶解性に優れる点で、100mol%含有することが特に好ましい。
また、前記導電性高分子は、導電性に優れる観点で、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
さらに、前記導電性高分子としては、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が好ましい。
式(2)中、R〜R20は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子(−F、−Cl、−Brまたは−I)であり、R〜R20のうち少なくとも一つは酸性基である。また、nは重合度を示す。
前記一般式(2)で表される構造を有する化合物の中でも、溶解性に優れる点で、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)が特に好ましい。
導電性高分子の質量平均分子量は、導電性、成膜性および膜強度の観点から、3000〜1000000が好ましく、5000〜100000がより好ましい。
ここで、導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
(導電性高分子(A)の製造方法)
導電性高分子(A)は、例えば、下記一般式(3)で表される酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(モノマー)を、塩基性化合物の存在下、酸化剤を用いて重合することで得られる。
式(3)中、R21〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子(−F、−Cl、−Brまたは−I)であり、R21〜R25のうちの少なくとも一つは酸性基またはその塩である。
一般式(3)で表される酸性基置換アニリンとしては、酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリン、酸性基としてカルボキシ基を有するカルボキシ基置換アニリンが挙げられる。
スルホン酸基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンスルホン酸、アニリン−2,6−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、アニリン−3,5−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−3,4−ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
アミノベンゼンスルホン酸類以外のスルホン酸基置換アニリンとしては、例えば、メチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t−ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類;メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類などを挙げることができる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性高分子が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、または、ハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
カルボキシ基置換アニリンとして代表的なものはアミノベンゼンカルボン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンカルボン酸、アニリン−2,6−ジカルボン酸、アニリン−2,5−ジカルボン酸、アニリン−3,5−ジカルボン酸、アニリン−2,4−ジカルボン酸、アニリン−3,4−ジカルボン酸などが好ましく用いられる。
アミノベンゼンカルボン酸類以外のカルボキシ基置換アニリンとしては、例えば、メチルアミノベンゼンカルボン酸、エチルアミノベンゼンカルボン酸,n−プロピルアミノベンゼンカルボン酸、iso−プロピルアミノベンゼンカルボン酸、n−ブチルアミノベンゼンカルボン酸、sec−ブチルアミノベンゼンカルボン酸、t−ブチルアミノベンゼンカルボン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類;メトキシアミノベンゼンカルボン酸、エトキシアミノベンゼンカルボン酸、プロポキシアミノベンゼンカルボン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;フルオロアミノベンゼンカルボン酸、クロロアミノベンゼンカルボン酸、ブロムアミノベンゼンカルボン酸等のハロゲン基置換アミノベンゼンカルボン酸類などが挙げられる。その他のカルボキシ基置換アニリンの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性高分子が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類またはハロゲン基置換アミノベンゼンカルボン酸類が実用上好ましい。
これらのカルボキシ基置換アニリンはそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種(異性体を含む。)以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
これら一般式(3)で表される酸性基置換アニリンの中でも、製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が特に好ましい。
塩基性化合物としては、無機塩基、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが用いられる。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物の塩などが挙げられる。
脂式アミン類としては、下記一般式(4)で表される化合物、または下記一般式(5)で表されるアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
式(4)中、R26〜R28は、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。
式(5)中、R29〜R32は、各々独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジンおよびこれらの骨格を有する誘導体、ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリンおよびこれらの骨格を有する誘導体、ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
塩基性化合物としては、無機塩基が好ましい。また、無機塩基以外の塩基性化合物の中では、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン等が好ましく用いられる。
無機塩類やこれらの塩基性化合物を用いれば、高導電性で、かつ高純度な導電性高分子を得ることができる。
これらの塩基性化合物はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
塩基性化合物の濃度は、反応性や導電性の観点から、0.1mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0mol/Lであり、特に好ましくは0.2〜8.0mol/Lである。
前記モノマーと塩基性化合物の質量比は、反応性や導電性の観点から、モノマー:塩基性化合物=1:100〜100:1であることが好ましく、より好ましくは10:90〜90:10である。
酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素等を用いることが好ましい。
これらの酸化剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
酸化剤の使用量は、前記モノマー1molに対して1〜5molが好ましく、より好ましくは1〜3molである。
本発明においては、モノマーに対して酸化剤がmol比で等mol以上存在している系にて重合を行うことが重要である。また、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
重合の方法としては、例えば、酸化剤溶液中にモノマーと塩基性化合物の混合溶液を滴下する方法、モノマーと塩基性化合物の混合溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にモノマーと塩基性化合物の混合溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法などが挙げられる。
重合に使用する溶媒としては、水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、水と混合するものであれば限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
なお、溶媒として混合溶媒を用いる場合、水と水溶性有機溶媒との混合比は任意であるが、水:水溶性有機溶媒=1:100〜100:1が好ましい。
重合後は、通常、遠心分離器等の濾過器により溶媒を濾別する。さらに、必要に応じて濾過物を洗浄液により洗浄した後、乾燥させて、重合体(導電性高分子)を得る。
洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が、高純度のものが得られるため好ましい。特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルが効果的である。
前記製造方法により得られる導電性高分子(A)中の塩を形成している塩基性化合物は、後述するような精製等を行うことにより、前記塩基性化合物の含有量を低下させることができる。導電性および耐熱性の観点から、前記塩基性化合物の含有量は、0.1質量%以下が好ましい。
(精製工程)
前記製造方法により得られる導電性高分子(A)は未反応モノマー、低分子量物質および不純物質などを含んでいる場合があり、導電性を阻害する要因となっていることから、これら不純物質などを除去することが望ましい。
未反応モノマーや低分子量物質などの不純物質を除去するには、前記導電性高分子の分散液または溶解液を膜濾過する方法が好ましい。膜濾過する際に用いる溶媒としては、水、塩基性塩を含む水、酸を含む水、アルコールを含む水等の溶媒やそれらの混合物などを用いることができる。膜濾過に用いる分離膜としては、未反応モノマー、低分子量物質および不純物質の除去効率を考慮すると、限外濾過膜が好ましい。
分離膜の材質としてはセルロース、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン等の高分子を用いた有機膜やセラミックスに代表される無機材料を用いた無機膜を用いることができ、通常、限外濾過膜の材質として使用するものであれば、特に制限はない。
さらに、前記製造方法により得られる導電性高分子(A)は酸化剤由来などの陽イオンと塩を形成しており、導電性を阻害する要因となっている。これら陽イオンを除去することで導電性を向上させることができる。
陽イオンなどの不純物を除去するには、導電性高分子の分散液または溶解液を陽イオン交換樹脂に接触させる方法が好ましい。
導電性高分子(A)を陽イオン交換樹脂により不純物除去する場合、溶媒に分散または溶解させた状態で用いる。
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類、およびこれらを混合したものが好ましい。
導電性高分子を前記溶媒に分散または溶解させる際の濃度としては、工業性や精製効率の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
陽イオン交換樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、オルガノ株式会社製の「アンバーライト」などの強酸型の陽イオン交換樹脂が好ましい。
陽イオン交換樹脂の形態については特に限定されることなく、種々の形態のものを使用でき、例えば球状細粒、膜状や繊維状などが挙げられる。
導電性高分子に対する陽イオン交換樹脂の量は、導電性高分子100質量部に対して100〜2000質量部が好ましく、500〜1500質量部がより好ましい。陽イオン交換樹脂の量が1質量部未満であると、陽イオンなどの不純物が十分に除去されにくい。一方、陽イオン交換樹脂の量が1500質量部を超えると、導電性高分子の分散液または溶解液に対し過剰量となるため、陽イオン交換樹脂に接触させて陽イオン交換処理した後の、分離液または溶離液の回収が困難となる。
導電性高分子の分散液または溶解液と、陽イオン交換樹脂の接触方法としては、容器に導電性高分子の分散液または溶解液と陽イオン交換樹脂を入れ、攪拌または回転させることで、陽イオン交換樹脂と接触させる方法が挙げられる。
また、陽イオン交換樹脂をカラムに充填し、導電性高分子の分散液または溶解液を、好ましくはSV=0.01〜20、より好ましくはSV=0.2〜10の流量で通過させて、陽イオン交換処理を行う方法でもよい。
ここで、空間速度SV(1/hr)=流量(m/hr)/濾材量(体積:m)である。
導電性高分子の分散液または溶解液と、陽イオン交換樹脂を接触させる時間は、精製効率の観点から、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。
なお、接触時間の上限値については特に制限されず、導電性高分子の分散液または溶離液の濃度、陽イオン交換樹脂の量、後述する接触温度などの条件に併せて、適宜設定すればよい。
導電性高分子の分散液または溶解液と、陽イオン交換樹脂を接触させる際の温度は、工業的観点から、10〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
このようにして精製された導電性高分子は、オリゴマーやモノマーなどの低分子量体や、陽イオンなどの不純物が十分に除去されているので、より優れた導電性を示す。
精製して得られた前記導電性高分子(A)に、塩塩基性化合物(B)、酸性基を含む化合物(C)を添加することで加熱処理後の導電性の低下を抑制することができる。
その理由として、導電性高分子(A)の側鎖が加熱によって脱離するのを、塩基性化合物(B)が抑制し、酸性基を含む化合物の酸性基がドーパントとして働くためと考えられる。
<塩基性化合物(B)>
塩基性化合物(B)としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属類、またはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属類などからなる無機塩基が好ましい。
無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどの酢酸塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウムなどの硝酸塩;リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウムなどのハロゲン化物などが好ましい。
また、無機塩基以外の塩基性化合物の中では、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン等が好ましい。
前記化合物(B)を添加することで加熱処理後の導電性の低下を抑制することができる。
その理由として、導電性高分子(A)の側鎖が加熱によって脱離するのを、前記化合物(B)が抑制するためと考えられる。
これらの塩基性化合物はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
また、塩基性化合物(B)の含有量は、前記導電性高分子(A)のモノマー繰り返し単位(モノマーユニット)1molに対して、導電性や耐熱性の観点から、0.01〜2.0molが好ましく、0.1〜1.5molがより好ましく、0.2〜1.0molが特に好ましい。
<酸性基を含む化合物(C)>
前記酸性基を含む化合物(C)としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基を酸性基として用いられる化合物から選択される。
カルボキシ基を含む化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの飽和脂肪族カルボン酸類;アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸類;安息香酸、トルイル酸などの炭素環カルボン酸;グリコール酸、乳酸、ロイシン酸などのヒドロキシカルボン酸類などが挙げられる。
また、分子内に2つ以上の酸性基を含んでいても良く、ジカルボン酸を含む化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸などの脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類;ジグリコール酸、イミノ二酢酸、2,2’−チオグリコール酸などのヘテロ原子を含むジカルボン酸類;クエン酸などのポリカルボン酸類;2−メチルマロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、2−アミノアジピン酸などのアミノ基置換ジカルボン酸類などが挙げられる。
スルホン酸基を含む化合物としては、例えば、硫酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸;塩化スルホン酸、臭化スルホン酸などのハロゲンスルホン酸類;タウリンなどのアミノ基置換スルホン酸類;ベンゼンスルホン酸類、トルエンスルホン酸などのアルキル基置換ベンゼンスルホン酸類;ハロゲン置換ベンゼンスルホン酸類、アミノ基置換ベンゼンスルホン酸類;ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸などのナフタレンスルホン酸類;ベンジジンジスルホン酸などを挙げることができる。
リン酸基を含む化合物としては、例えば、オルトリン酸やピロリン酸などのリン酸類が挙げられる。
また、ホスホン酸基を含む化合物としては、例えば、ホスホン酸、フェニルホスホン酸、ビスホスホネート、ポリリン酸などが挙げられる。
これらの酸性基を含む化合物(C)はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
酸性基を含む化合物(C)の含有量は、導電性や耐熱性の観点から、前記導電性高分子(A)のモノマー繰り返し単位(モノマーユニット)1molに対して、0.01〜2.0molが好ましく、0.1〜1.5molがより好ましく、0.2〜1.0molが特に好ましい。
また、酸性基を含む化合物(C)は、導電性や耐熱性の観点から、同一分子内に2つ以上の酸性基を含む化合物であることが好ましい。
<溶剤(D)>
溶剤(D)としては、導電性高分子(A)、塩基性化合物(B)、酸性基を含む化合物(C)を溶解するものであればよく、例えば、水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。
混合溶媒を用いる場合、水と水溶性有機溶剤との混合比は特に限定されないが、水:水溶性有機溶剤=1:100〜100:1の混合溶媒が好ましい。
水溶性有機溶剤は、水と混合するものであれば特に限定はない。水溶性有機溶剤として、具体的には、水またはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール類、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が好ましく、特にアルコール類が好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が好ましい。
溶剤(D)としては、溶解性および成膜性の観点から、特に水または水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。また、該混合溶媒は、水を50質量%以上含有することが好ましい。
なお、前記陽イオン交換後の導電性高分子は、水などの溶媒に分散または溶解した状態であるので、エバポレータなどで溶媒を除去すれば固体状の導電性高分子が得られるが、溶媒に分散または溶解した状態のまま用いてもよい。
導電性組成物中、導電性高分子(A)の含有量は、導電性や加工性の観点から、溶剤100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
<導電体製造>
本発明においては、前記導電性組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、必要であれば前記塗膜に対し、加熱処理を行う工程とを順次行うことにより導電体を製造することができる。
導電性組成物を塗工する基材としては、特に限定されず、高分子化合物、木材、紙材、金属、金属酸化物、セラミックスおよびそれらフィルムまたはガラス板などが用いられる。
例えば、高分子化合物からなる基材としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート等のいずれか1種または2種以上を含有する高分子フィルムなどが挙げられる。
これらの高分子フィルムは、少なくともその一つの面上に、前記導電性組成物からなる導電膜を形成させるため、該導電膜の密着性を向上させる目的で前記フィルム表面にコロナ表面処理またはプラズマ処理、あるいは紫外線オゾン処理が施されていることが好ましい。
導電性組成物の塗工方法としては、一般に塗料の塗工に用いられる方法が利用できる。例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法、スプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等が用いられる。
前記導電体はコンデンサ用途にも用いることができる。適用できるコンデンサには、アルミ電解コンデンサ、タンタルコンデンサ、固体電解コンデンサ等がある。例えば、固体電解コンデンサ用の固体電解質として導電性高分子を用いる巻回形コンデンサを製造する場合について説明する。
まず、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極箔とエッチング処理あるいはエッチング後化成処理された陰極箔とをその間にセパレーターを介在させて巻回することによりコンデンサ素子を形成する。その後、この素子に前記導電性高分子からなる導電性高分子層を形成する。
導電性高分子層を形成する方法としては、導電性高分子の分散水溶液を陽極箔にまたはコンデンサ素子に含浸させる方法が挙げられる。
次に、導電性高分子層上にカーボンペーストを塗布することにより、導電性高分子層上にカーボン層を形成する。さらに、カーボン層上に銀ペーストを塗布し、所定の温度で乾燥させることによりカーボン層上に銀ペイント層を形成する。銀ペイント層に導電性接着剤を介して陰極端子を接続する。また、陽極箔に陽極端子を接続する。
その後、陽極端子および陰極端子の端部が外部に引き出されるようにモールド外装樹脂を形成する。
以上の方法により、固体電解コンデンサが作製される。
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における評価方法は以下の通りである。
導電性高分子中の塩の含有量
導電性高分子中の塩を形成している塩基性化合物の含有量は、陽イオンクロマトグラフィーにより以下の条件で測定した。濃度は、検出されたピーク面積と既知濃度のトリエチルアミンおよびアンモニア溶液のピーク面積とを比較して計算された。
カラム:TSKgel IC−Cation I/IIカラム(東ソー製)
溶離液:1.0mmol/Lの硝酸溶液と10質量%のアセトニトリル溶液との混合溶液
導電性高分子濃度:1000質量ppm
流速:0.5mL/min
注入量30μL
温度40℃
導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)[mol]
導電性高分子の粉末に対し、粉末の重量を高分子の繰り返し単位の分子量で除して、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)[mol]を求めた。
導電性高分子の分散液または溶解液の場合、溶解液または分散液を100℃で1時間乾燥し、残存した固形分を導電性高分子の粉末として、同様に導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)[mol]を求めた。
導電率の評価
導電性組成物をマニュアルスピンナーASC−4000(Actes inc.製)によりガラス基板上に塗布し、表1に示す各温度に設置したホットプレートに、各時間静地して乾燥することで、膜厚が0.1μm程度の導電体(塗膜)を作製した。
得られた導電体の表面抵抗値を、抵抗率計ロレスタGP(三菱化学社製)に直列四探針プローブを装着して、室温で測定した。膜厚はナノスケールハイブリッド顕微鏡VN−8000(キーエンス製)を用いて測定し、これに表面抵抗値を乗じて体積抵抗率を求め、この体積抵抗率の逆数を計算し、導電率を求めた。
[製造例1]
<導電性高分子(A)の重合>
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを0℃で、4mol/Lのトリエチルアミン水溶液(水:アセトニトリル=3:7)300mlに溶解し、モノマー溶液を得た。
別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを水/アセトニトリル=3:7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。
続いて、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、酸化剤溶液中にモノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後、反応生成物を遠心濾過器にて濾別した。
さらに、反応生成物をメタノールにて洗浄した後、乾燥させ、前記式(1)で表される繰り返し単位(式(1)中、Rがスルホン酸基であり、R〜Rが水素原子であり、Rがメトキシ基である。)を有する導電性高分子の粉末185gを得た。
得られた導電性高分子中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミンおよびアンモニア)の含有量は16.7質量%であった。
<導電性組成物の調製>
得られた導電性高分子5質量部を水95質量部に室温で溶解させ、導電性高分子溶液(A−1)を得た。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
得られた導電性高分子水溶液(A−1)100質量部に対して、50質量部となるように酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)をカラムに充填し、該カラムに導電性高分子溶液(A−1)をSV=8の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子溶液(A−2)を得た。
得られた導電性高分子溶液(A−2)において、導電性高分子の割合は4.5質量%であった(溶剤100質量部に対して、4.7質量部)。また導電性高分子(A−2)中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミンおよびアンモニア)の含有量は0.1質量%以下であった。
[実施例1〜17]
導電性高分子溶液(A−2)を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1molに対して、表1に示す量の塩基性化合物(B)、酸性基を含む化合物(C)を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、180℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表1に示す。
[比較例1]
導電性高分子溶液(A−2)をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、180℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表1に示す。
[比較例2〜12]
導電性高分子溶液(A−2)を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1molに対して、表1に示す量の塩基性化合物または酸性基を含む化合物を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、180℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表1に示す。
表1中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。なお、導電率評価において、導電性高分子(A)及び塩基性化合物(B)のみ含んでなる組成物(比較例1〜6)を基準とする相対的な評価を行った。
◎:基準となる[比較例1]の導電率に比べ、導電率が100倍以上である。
○:基準となる[比較例1]の導電率に比べ、導電率が50倍以上かつ100倍未満である。
×:基準となる[比較例1]の導電率に比べ、導電率が50倍未満である。
表1より、塩基性化合物(B)と酸性基を含む化合物(C)を含有する導電性組成物を用いた実施例1〜17は、180℃で60分間加熱した場合でも、高い導電率を維持することができ、導電性、耐熱性に優れることが示された。
一方、塩基性化合物(B)と酸性基を含む化合物(C)を含有しない導電性組成物を用いた比較例1、塩基性化合物(B)のみを含む導電性組成物を用いた比較例2〜3および比較例10〜12、酸性基を含む化合物(C)のみを含む導電性組成物を用いた比較例4〜9は、180℃で60分間加熱すると、実施例と比べて導電率が低く、耐熱性が低いことが示された。

Claims (4)

  1. スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性高分子(A)、塩基性化合物(B)、並びに酸性基を含む化合物(C)を含む導電性組成物。
  2. 前記導電性高分子(A)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子である、請求項1記載の導電性組成物。
    式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子である。またR〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基またはその塩である。
  3. 前記酸性基を含む化合物(C)が同一分子内に酸性基が2つ以上有する化合物である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の導電性組成物より形成される塗膜を有する導電体。
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