JP2014231540A - 導電性ポリマー前駆体、および導電性ポリマーとその製造方法 - Google Patents

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智博 亘
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Abstract

【課題】高い導電性を有する導電性ポリマーの前駆体として好適な導電性ポリマー前駆体、および高い導電性を有する導電性ポリマーとその製造方法の提供。【解決手段】下記一般式(1)で表される導電性ポリマー前駆体、該導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合させて得られる導電性ポリマーとその製造方法。[化1]式(1)中、R1〜R5は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、アミノ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R1〜R5のうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性ポリマーの前駆体として好適な導電性ポリマー前駆体、およびこれを重合させて得られる導電性ポリマーとその製造方法に関する。
多様な用途で用いられる導電性ポリマーとしては、ポリアニリン系、ポリチオフェン系、ポリピロール系などの導電性ポリマーが知られている。
一般的に、導電性ポリマーの導電性(σ)は、キャリアの電荷(q)、キャリアの数(n)、ならびにキャリアの分子鎖間および分子鎖内の易動度(μ)に依存し、下記式(I)より導き出される。
σ=qnμ ・・・(I)
ポリアニリン系の導電性ポリマーの場合、キャリアの電荷(q)は、キャリアの種類によって決まる固有値となる。そのため、導電性を向上させるには、キャリアの数(n)、および易動度(μ)を増大させることが重要である。
易動度(μ)を増大させるには、導電性ポリマーの分子量を高くしたり、導電性ポリマー中に含まれる不純物の割合を低減したりすることなどが有効であると考えられている。
一方、キャリアの数(n)を増大させるには、スルホン酸基、カルボキシ基などの酸性基を導入し、ドープを阻害する塩基を除去すること等が有効であると考えられている。
酸性基を導入したポリアニリン系の導電性ポリマーとしては、例えば下記に示す化合物(II):2−アミノアニソール−4−スルホン酸を前駆体として重合させた導電性ポリマーが提案されている(特許文献1参照)。
Figure 2014231540
特開平7−196791号公報
導電性ポリマーは、コンデンサなどの様々な用途に用いられる。例えばコンデンサに用いる場合、通常、金属電極上に導電性ポリマー、または導電性ポリマーを含有する溶液もしくは分散液を塗布、あるいは含浸した後、所定の処理をして導電性ポリマー層(電解質層)を形成する。
しかしながら、特許文献1に記載の導電性ポリマーは、必ずしも十分な導電性を発揮することはできなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高い導電性を有する導電性ポリマーの前駆体として好適な導電性ポリマー前駆体、および高い導電性を有する導電性ポリマーとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、酸性基に加え、より電子供与性が高い置換基をポリアニリン系の導電性ポリマーに導入することで、高い導電性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記一般式(1)で表される、導電性ポリマー前駆体。
Figure 2014231540
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミノ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R〜Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
[2] 前記Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である、[1]に記載の導電性ポリマー前駆体。
[3] 前記Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基であり、残りが水素原子である、[2]に記載の導電性ポリマー前駆体。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合させて得られる、導電性ポリマー。
[5] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合する、導電性ポリマーの製造方法。
本発明の導電性ポリマー前駆体は、高い導電性を有する導電性ポリマーの前駆体として好適である。
また、本発明の導電性ポリマーは、高い導電性を有する。
また、本発明の導電性ポリマーの製造方法は、高い導電性を有する導電性ポリマーを製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「導電性」とは、膜厚約0.1μmの塗膜が、1014Ω/□以下の表面抵抗値を有することである。
また、本発明において「水溶性」および「可溶性」とは、単なる水、塩基および/または塩基性塩を含む水、酸を含む水、または水と水溶性有機溶媒との混合物10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
「導電性ポリマー前駆体」
本発明の導電性ポリマー前駆体は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という。)である。
Figure 2014231540
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミノ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R〜Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘコキシ基などが挙げられる。
ここで、アミノ基は、一価のアミノ基を示し、具体的には−NH、−NHRまたは−NHRR’を示す。
アミノ基としては、例えば、アミノ基(−NH)、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の脂式アミノ基;ピペリジノ基等の環式アミノ基などが挙げられる。
また、これらアミノ基には、アミノ基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または置換アンモニウム塩なども含まれる。
酸性基としては、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基などが挙げられる。
スルホン酸基は、酸の状態(−SOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO )で含まれていてもよい。また、スルホン酸基には、炭素数1〜10のアルキル基を有するスルホン酸基(スルホアルキル基)や、スルホン酸基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または置換アンモニウム塩なども含まれる。
カルボキシ基は、酸の状態(−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−COO)で含まれていてもよい。また、カルボキシ基には、カルボキシ基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または置換アンモニウム塩なども含まれる。
リン酸基は、酸の状態(−PO)で含まれていてもよく、イオンの状態(−PO、−PO 2−)で含まれていてもよい。また、リン酸基には、リン酸基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または置換アンモニウム塩なども含まれる。 これら酸性基の中でも、特に水に対する親和性を高めることができ、導電性ポリマーとなったときに、さらに高い導電性を発現できる観点で、スルホン酸基、スルホアルキル基が好ましく、スルホン酸基がより好ましい。
アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
アルカリ土類金属としては、例えばマグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
置換アンモニウムとしては、例えば脂式アンモニウム類、環式飽和アンモニウム類、環式不飽和アンモニウム類などが挙げられる。
前記脂式アンモニウム類としては、下式一般式(III)で表されるアンモニウムが挙げられる。
Figure 2014231540
式(III)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基である。
このような脂式アンモニウム類としては、具体的にメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、テトラsec−ブチルアンモニウム、テトラt−ブチルアンモニウムなどを例示することができる。これらの中でも、溶解性の観点から、R〜Rのうち1つが水素原子、他の3つが炭素数1〜4のアルキル基の場合が最も好ましく、次いでR〜Rのうち2つが水素原子、他の2つが炭素数1〜4のアルキル基の場合が好ましい。
環式飽和アンモニウム類としては、例えばピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウムおよびこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
環式不飽和アンモニウム類としては、例えばピリジニウム、α−ピコリニウム、β−ピコリニウム、γ−ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、およびこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
化合物(1)としては、加熱処理しても導電性ポリマーの導電性を良好に維持でき、かつ化合物(1)の製造が容易である観点から、上記一般式(1)中のRが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である化合物が好ましい。その中でも、Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基であり、残りが水素原子である化合物がより好ましく、Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、1つがアミノ基であり、1つが酸性基であり、残りが水素原子である化合物が特に好ましい。
また、上記一般式(1)中のR以外の置換基の好ましい例は、以下の通りである。
は、導電性向上の観点から、水素原子、または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
は、導電性向上の観点から、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、アミノ基、または酸性基であることが好ましく、酸性基であることがより好ましく、スルホン酸基であることが特に好ましい。
は、導電性向上の観点から、水素原子、または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
は、導電性向上の観点から、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、アミノ基、酸性基、またはハロゲン原子であることが好ましく、−NH、−NHR、−NHRR’で表されるアミノ基であることがより好ましく、−NHRまたは−NHRR’で表されるアミノ基であることが特に好ましい。
化合物(1)は、例えば以下に示す(a)〜(c)の工程を経て製造できる。
(a)工程:下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」という。)を、スルホン化、カルボキシル化、またはリン酸化などして、下記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」という。)を得る工程。
(b)工程:化合物(3)をアミノ化して、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」という。)を得る工程。
(c)工程:化合物(4)を還元して、化合物(1)を得る工程。
Figure 2014231540
一般式(2)〜(4)中、R、R、Rは、一般式(1)中のR、R、Rと同じである。また、一般式(3)、(4)中のAは酸性基であり、一般式(4)中のBはアミノ基である。
一般式(2)中のR2Aは、(a)工程によってAに変換される置換基である。R2Aとしては、水素原子、ハロゲン原子が挙げられる。
一般式(2)、(3)中のR5Aは、(b)工程によってBに変換される置換基である。R5Aとしては、ハロゲン原子が挙げられる。
以下、各工程について詳しく説明する。なお、以下に示す方法は、化合物(1)のうち、Rがスルホン酸基であり、Rがアミノ基である化合物であり、残りが水素原子である化合物(以下、「化合物(1−1)」という。)を製造する方法である。
<化合物(1−1)の製造方法>
((a)工程)
(a)工程は、濃硫酸を溶媒として、下記一般式(2−1)で表される化合物(以下、「化合物(2−1)」という。)と発煙硫酸を反応させて(スルホン化)、下記一般式(3−1)で表される化合物(以下、「化合物(3−1)」という。)を得る工程である。
Figure 2014231540
化合物(2−1)と発煙硫酸との反応割合(mol比)は、1:1〜1:2が好ましい。発煙硫酸が少なすぎると反応が完結しにくくなる。発煙硫酸が多すぎると余剰の発煙硫酸を除去する必要があり、手間や製造コストがかかる。
反応温度は、60℃以上が好ましく、反応時間は、0.5〜10時間が好ましい。
スルホン化においては、発煙硫酸の使用が一般的ではあるが、濃硫酸または熱濃硫酸でも同様の反応が進行する可能性がある。
((b)工程)
(b)工程は、化合物(3−1)とアミノ化剤を反応させて(アミノ化)、下記一般式(4−1)で表される化合物(以下、「化合物(4−1)」という。)を得る工程である。
Figure 2014231540
(b)工程における反応条件は、ハロゲン原子に対する一般的な反応条件であれば、特に限定されない。具体的には、有機溶媒中で、炭酸カリウムを触媒として化合物(3−1)とアミノ化剤を反応する方法が挙げられる。
有機溶媒としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジンなどのアミンをジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
アミノ化剤としては、例えばアミン等の1級アミノ化剤;メチルアミン、エチルアミン等の2級アミノ化剤;ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の3級アミノ化剤などが挙げられる。
((c)工程)
(c)工程は、化合物(4−1)を還元して、化合物(1−1)を得る工程である。
Figure 2014231540
(c)工程における反応条件は、ニトロ基に対する一般的な還元条件であれば、特に限定されない。具体的には、パラジウムカーボン、ラネーニッケルなどの還元剤を用いた接触水素化や、酸性条件下において亜鉛粉やスズ等の還元剤を用いた還元などの方法が挙げられる。
<作用効果>
本発明の導電性ポリマー前駆体は、アミノ基と酸性基とが芳香環に結合している。
ところで、酸性基は電子求引性を有するため、酸性基と結合する不飽和炭素原子上の電子密度は低下し、その結果、加熱すると酸性基と炭素原子の結合が切断されやすくなる。
よって、上述した2−アミノアニソール−4−スルホン酸のように、酸性基が芳香環に結合している化合物を重合して得られる導電性ポリマーの場合、酸性基と炭素原子の結合が切断されて酸性基が脱離し、導電性が低下すると考えられる。特に加熱処理を行うと酸性基が脱離しやすくなる傾向にある。
しかしながら、本発明の導電性ポリマー前駆体であれば、上述したように酸性基に加えて、より電子供与性が高い置換基(アミノ基)が芳香環に結合している。
この芳香環は、電子求引性基である酸性基(例えばスルホン酸基)により芳香環電子密度が低下する一方、アミノ化により導入した電子供与性の高いアミノ基が電子を供給する役目を果たしている。これにより芳香環の電子密度は高くなり、導電性が向上すると考えられる。よって、酸性基のみが結合している芳香環に比べて電子求引性基の影響を受けにくく、電子密度の低下が軽減されると考えられる。従って、本発明の導電性ポリマー前駆体を用いた導電性ポリマーは、高い導電性を維持できる。
特に、上記一般式(1)中、Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、1つがアミノ基であり、1つが酸性基であり、残りが水素原子である導電性ポリマー前駆体であれば、より高い導電性を発現できる導電性ポリマーが得られる。
よって、本発明の導電性ポリマー前駆体は、高い導電性を有する導電性ポリマーの前駆体(原料)として好適である。
「導電性ポリマー」
本発明の導電性ポリマー(以下、「アニリン系導電性ポリマー(a)」ともいう。)は、本発明の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合させて得られる。
本発明の導電性ポリマーは、下記一般式(1−A)で表される単位を有することが好ましい。
Figure 2014231540
式(1−A)中、R、R、R、Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミノ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
上記一般式(1−A)で表される単位としては、加熱処理しても導電性ポリマーの導電性を良好に維持でき、かつ製造が容易な点で、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基であるものが好ましい。その中でも、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基であり、残りが水素原子であるものがより好ましく、R、R、R、Rのうち、1つがアミノ基であり、1つが酸性基であり、残りが水素原子であるものが特に好ましい。
また、上記一般式(1−A)中のR、R、R、Rの好ましい例は、以下の通りである。
は、導電性向上の観点から、水素原子、または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
は、導電性向上の観点から、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、アミノ基、または酸性基であることが好ましく、酸性基であることがより好ましく、スルホン酸基であることが特に好ましい。
は、導電性向上の観点から、水素原子、または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
は、導電性向上の観点から、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、アミノ基、酸性基、またはハロゲン原子であることが好ましく、−NH、−NHR、−NHRR’で表されるアミノ基であることがより好ましく、−NHRまたは−NHRR’で表されるアミノ基であることが特に好ましい。
導電性ポリマー前駆体の含有量は、アニリン系単量体成分100質量%中、1〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。導電性ポリマー前駆体の含有量が上記範囲内であれば、高い導電性を有し、かつ熱安定性に優れた導電性ポリマーが得られやすくなる。
なお、導電性ポリマー前駆体は、1種単独で用いてもよく、一般式(1)に該当する範囲で異なる2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
アニリン系導電性ポリマー(a)は、可溶性向上の観点から、該アニリン系導電性ポリマー(a)を構成する全単位(100mol%)のうち、上記一般式(1−A)で表される単位を70mol%以上含有することが好ましく、80mol%以上含有することがより好ましく、90mol%以上含有することが特に好ましい。上記一般式(1−A)で表される単位の含有率が70mol%以上であれば、水に対する溶解性が向上する。また、上記一般式(1−A)で表される単位の含有率が高くなるほど溶解性は向上し、コンデンサ製造等に適した導電性ポリマーが得られやすくなる。
アニリン系導電性ポリマー(a)としては、本発明の導電性ポリマー前駆体由来の単位を必須の構造単位として含むが、可溶性、導電性および性状に影響を及ぼさない限り、上記一般式(1−A)で表される単位以外の単位(任意の単位)を含んでいてもよい。
任意の単位としては、置換又は無置換のアニリン単位(他のアニリン系単量体単位)、チオフェン単位、ピロール単位、フェニレン単位、ビニレン単位、二価の不飽和基、二価の飽和基などが挙げられる。
他のアニリン系単量体としては、本発明の導電性ポリマー前駆体と共重合可能なアニリン系単量体であれば特に限定されないが、例えばアニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トリメチルアニリン、テトラメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアニリン、テトラエチルアニリン、プロピルアニリン、ジプロピルアニリン、トリプロピルアニリン、テトラプロピルアニリン、ブチルアニリン、ジブチルアニリン、トリブチルアニリン、テトラブチルアニリン、メトキシアニリン、ジメトキシアニリン、トリメトキシアニリン、テトラメトキシアニリン、エトキシアニリン、ジエトキシアニリン、トリエトキシアニリン、テトラエトキシアニリン、ブロモアニリン、クロロアニリン、フッ化アニリン、シアノアニリン、ヒドロキシアニリン、ニトロアニリン、ジブロモアニリン、ジクロロアニリン、ジフッ化アニリン、ジシアノアニリン、ジヒドロキシアニリン、ジニトロアニリン、ジアミノベンゼン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−n−プロピルアニリン、N−iso−プロピルアニリン、N−ブチルアニリン、アミノベンゼンスルホンアミド、アミノベンゼンチオール、アミノベンズアミド、アセトトルイジン、アミノアセトフェノン、アミノベンゼンチオール、アミノクロロフェノール、アミノナフタレン、アミノナフタレンスルホン酸、アミノナフタレンカルボン酸、アミノナフタレンリン酸、アミノニトロフェノール、アミノフェニル、アミノフェニルフェノール、アミノキンリン、アミノベンゾトリフルオリド、アミノベンジルアルコール、アミノフェニルボロン酸、アミノクレゾール、アミノインドール、ルミノールなどが挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、他のアニリン系単量体として、本発明の導電性ポリマー前駆体以外の酸性基を有するアニリン系単量体(以下、「他の酸性基置換アニリン系単量体」という。)を用いてもよい。他の酸性基置換アニリン系単量体としては、例えば上記一般式(1)において、R〜Rが、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R〜Rのうち、少なくとも1つが酸性基である化合物が挙げられる。具体的には、アミノベンゼンスルホン酸、アミノベンゼンジスルホン酸、アミノフェノールスルホン酸、アミノフェノールジスルホン酸、メトキシアニリンスルホン酸(2−アミノアニソール−4−スルホン酸)、アミノ安息香酸、アミノベンゼンジカルボン酸、アミノベンゼンリン酸、アミノベンゼンジリン酸などが挙げられる。
これら他のアニリン系単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
他のアニリン系単量体の含有量は、アニリン系単量体成分100質量%中、0〜99質量%が好ましく、0〜90質量%がより好ましい。他のアニリン系単量体の含有量が上記範囲内であれば、高い導電性を有し、かつ熱安定性に優れた導電性ポリマーが得られやすくなる。
アニリン系導電性ポリマー(a)の質量平均分子量は、導電性、成膜性および膜強度が向上する観点で、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で、3000〜50万が好ましく、5000〜20万がより好ましく、7000〜10万のものが特に好ましい。質量平均分子量が3000以上であれば、溶解性を維持しつつ、成膜性および導電性が向上する。一方、質量平均分子量が50万以下であれば、溶解性および多孔質成形体への含浸性が向上する。
ここで、アニリン系導電性ポリマー(a)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
また、アニリン系導電性ポリマー(a)の導電率は、0.01S/cm以上が好ましく、0.05S/cm以上がより好ましい。導電率が0.01S/cm以上であれば、周波数特性などの性能が向上するので、例えば固体電解コンデンサ用としてアニリン系導電性ポリマー(a)を好適に用いることができる。
<導電性ポリマーの製造方法>
本発明の導電性ポリマーは、本発明の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合させて得られる。
重合の方法としては特に限定されず、酸化剤による化学重合法や電解重合法など、公知の製造方法を用いることができる。
以下、本発明の導電性ポリマーの製造方法の一例について、具体的に説明する。
本発明の導電性ポリマーは、例えば重合溶媒中で上述したアニリン系単量体成分を酸化剤により重合させて得られる。
(酸化剤)
酸化剤としては、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類、過酸化水素などが挙げられる。
これら酸化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
酸化剤の使用量は、アニリン系単量体成分1molに対して1〜5molが好ましく、より好ましくは1〜3molである。酸化剤の使用量が上記範囲内であれば、導電性ポリマーの高分子量化や、主鎖の酸化を十分に行うことができる。
なお、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
(重合溶媒)
重合溶媒としては、水や有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類などが挙げられる。
重合溶媒としては、水、または水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
(重合工程)
上述したアニリン系単量体成分を、重合溶媒中で酸化剤により化学酸化重合することで、導電性ポリマーを得る(重合工程)。
具体的には、酸化剤溶液中にアニリン系単量体成分溶液(前駆体溶液)を滴下する方法、アニリン系単量体成分溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にアニリン系単量体成分溶液と酸化剤溶液とを同時に滴下する方法、反応容器等にアニリン系単量体成分溶液と酸化剤溶液とを連続的に供給し、押し出し流れで重合させる方法などの各種方法によって、導電性ポリマーを得る。
重合の際には、上述した重合溶媒を用いることができる。
また、重合の際には、反応系内にプロトン酸を加えてもよい。
プロトン酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、ホウ化フッ素酸等の鉱酸類;トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸類;メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機スルホン酸類;ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ−2−メチルプロパン−2−アクリルアミドスルホン酸等の高分子酸類などが挙げられる。
重合反応の内温は50℃以下が好ましく、より好ましくは−15〜30℃、さらに好ましくは−10〜20℃である。特に、重合反応の内温が30℃以下、さらに好ましくは20℃以下であれば、副反応の進行や、主鎖の酸化還元構造の変化による導電性の低下を抑止できる。また、重合反応の内温が−15℃以上、さらに好ましくは−10℃以上であれば、十分な反応速度を維持し、反応時間を短縮できる。
(精製工程)
導電性ポリマーは、溶媒に溶解または分散したポリマー溶液の状態で得られる。導電性ポリマーは、溶媒を除去した後、そのまま各種用途に用いてもよいが、ポリマー溶液には未反応のモノマー(アニリン系単量体成分)やオリゴマーなどの低分子量体や、陽イオンなどの不純物などが含まれる場合がある。また、導電性ポリマーは、陽イオンと塩を形成していることもあり、導電性を阻害する要因となる場合がある。そこで、これら低分子量体や不純物を除去し、導電性ポリマーを精製してから用いるのが好ましい(精製工程)。
精製された導電性ポリマーは、未反応のモノマーやオリゴマーなどの低分子量体や、陽イオンなどの不純物が十分に除去されているので、より優れた導電性を示す。
導電性ポリマーを精製する方法としては、溶剤を用いた洗浄法、膜濾過法、陽イオン交換法などが挙げられる。特に、陽イオン交換法が有効である。
陽イオン交換法を用いることにより、未反応のモノマー、オリゴマー、不純物や、陽イオンなどを効果的に除去でき、純度の高い導電性ポリマーを得ることができる。
陽イオン交換法により導電性ポリマーを精製する場合は、例えば導電性ポリマーの分散液または溶解液を陽イオン交換樹脂に接触させればよい。
導電性ポリマーの分散液または溶解液としては、重合工程で得られた反応液をそのまま用いてもよいし、所望の固形分濃度になるように溶媒で希釈したものを用いてもよい。固形分濃度は、工業性や精製効率の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類、およびこれらを混合したものが好ましい。
陽イオン交換樹脂としては市販品を用いることができ、例えば、オルガノ株式会社製の「アンバーライト」などの強酸型の陽イオン交換樹脂が好ましい。
陽イオン交換樹脂の形態については特に限定されることなく、種々の形態のものを使用でき、例えば球状細粒、膜状や繊維状などが挙げられる。
導電性ポリマーに対する陽イオン交換樹脂の量は、工業性や精製効率の観点から、導電性ポリマー1質量部に対して1〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
導電性ポリマーの分散液または溶解液と、陽イオン交換樹脂の接触方法としては、容器に導電性ポリマーの分散液または溶解液と陽イオン交換樹脂とを入れ、攪拌または回転させることで、陽イオン交換樹脂と接触させる方法が挙げられる。
また、陽イオン交換樹脂をカラムに充填し、導電性ポリマーの分散液または溶解液を、好ましくはSV=0.01〜20、より好ましくはSV=0.2〜5の流量で通過させて、陽イオン交換処理を行う方法でもよい。
ここで、「SV」とは、空間速度のことであり、空間速度(1/hr)=流量(m/hr)/濾材量(体積:m)である。
導電性ポリマーの分散液または溶解液と、陽イオン交換樹脂を接触させる時間は、精製効率の観点から、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。
なお、接触時間の上限値については特に制限されず、導電性ポリマーの分散液または溶離液の濃度、陽イオン交換樹脂の量、後述する接触温度などの条件に併せて、適宜設定すればよい。
また、導電性ポリマーの分散液または溶解液と、陽イオン交換樹脂を接触させる際の温度は、工業的観点から、10〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
このようにして得られる導電性ポリマーは、下記一般式(5)で表されるフェニレンジアミン構造(還元型)とキノジイミン構造(酸化型)を有していると考えられる。
Figure 2014231540
式(5)中、R10〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミノ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる。また、yは重合度を示す。
10〜R13のうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
14〜R17のうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
18〜R21のうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
22〜R25のうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
特に、R11、R15、R19、R23のうち少なくとも1つはアミノ基であり、R13、R17、R21、R25のうち少なくとも1つは酸性基であることが好ましい。
このフェニレンジアミン構造(還元型)とキノジイミン構造(酸化型)は、酸化もしくは還元により任意の比率で可逆的に変換させることが可能である。フェニレンジアミン構造とキノジイミン構造の比率(x)は、0.2<x<0.8の範囲が導電性および溶解性の面から好ましく、0.3<x<0.7がより好ましい。
<作用効果>
本発明の導電性ポリマーは、本発明の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合して得られる。上述したように、本発明の導電性ポリマー前駆体は、酸性基に加えて、より電子供与性が高い置換基(アミノ基)が芳香環に結合したモノマーであり、加熱処理しても酸性基が脱離しにくい。従って、本発明の導電性ポリマーは、高い導電性を有する。しかも、本発明の導電性ポリマーは、熱安定性にも優れるので、加熱処理しても導電性を維持できる。
また、本発明の導電性ポリマーは、単なる水、塩基および塩基性塩を含む水、酸を含む水、またはメタノール、エタノール、iso−プロパノール等の溶媒、またはそれらの混合物に溶解することができ、加工性にも優れる。
本発明の導電性ポリマーは、スプレーコート法、デイップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の簡便な手法で導電体を形成することができる。
また、本発明の導電性ポリマーを主成分とする組成物は、各種帯電防止剤、コンデンサ、電池、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食、接着剤、繊維、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装の下地、電気防食、電池の蓄電能力向上等に適応可能である。
これらの中でも、本発明の導電性ポリマーは、酸性基に加えて、電子供与性の高い置換基(アミノ基)を導入することで重合性に優れており、高い導電性を発現することから、高い導電性が要求されるコンデンサなどの用途に好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における測定・評価方法は、以下の通りである。
(NMRの測定)
H−NMRスペクトルの測定により化合物の同定を行った。この測定は、FT−NMR(日本電子株式会社製、「JNM−GX270」)を用いて、重水に濃度が約5質量%になるように測定サンプルを溶解したものを、直径5mmΦの試験管に入れ、測定温度25℃、測定周波数270MHz、シングルパルスモードにて64回の積算回数で行った。
(導電性ポリマーの質量平均分子量の測定)
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。この溶離液に、導電性ポリマーを固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した。
得られた試験溶液について、ゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定した。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算し、導電性ポリマーの質量平均分子量を求めた。
(導電性の評価)
スピンコータを用いて導電性ポリマー溶液をガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で、120℃で60分間加熱して、塗膜(膜厚:約100nm)がガラス基板上に形成された試験片を得た。なお、塗膜の膜厚はナノスケールハイブリッド顕微鏡(株式会社キーエンス製、「VN−8000」)を用いて測定した。
得られた試験片の表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、「ハイレスタIP」)に2探針プローブを装着して測定した。
塗膜の膜厚に表面抵抗値を乗じて体積抵抗率を求め、この体積抵抗率の逆数を計算し、導電率を求めた。導電率の値が高いほど、導電性に優れることを意味する。
「実施例1」
<導電性ポリマー前駆体の合成>
(a)工程:4−フルオロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸の合成
温度計およびコンデンサーを付した200mL三口フラスコに、2−フルオロニトロベンゼン10.0g(0.071mol)、濃硫酸8.80gを加えて撹拌した後、濃度25質量%の発煙硫酸40.0gを加えて撹拌し、60℃まで昇温した。反応液を食塩水で処理した後、濾過することで、4−フルオロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸15.6g(収率99.0%)を得た。
(b)工程:4−ジメチルアミノ−3−ニトロベンゼンスルホン酸の合成
(a)工程で得た4−フルオロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸8.00g(0.036mol)にジメチルホルムアミド80.0gを加え、撹拌した。続いて炭酸カリウム11.0g(0.080mol)、濃度50質量%のジメチルアミン水溶液6.53gを加えた後、50℃まで昇温した。濾過後の濾液を乾燥させた後、純水にて溶解し、陽イオン交換樹脂を加えて処理することで、4−ジメチルアミノ−3−ニトロベンゼンスルホン酸7.37g(収率82.7%)を得た。
(c)工程:3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸の合成
(b)工程で得た4−ジメチルアミノ−3−ニトロベンゼンスルホン酸3.80g(0.029mol)を純水38.0gに溶解し、活性炭に5質量%のパラジウム(0)が担持したパラジウム炭素0.38gを添加した。その後、水素により内圧を0.70MPaまで昇圧させ、50℃で5時間熟成した。反応終了後、パラジウム炭素を濾別し、母液を減圧濃縮して、3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸3.3g(収率98.9%)を得た。3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸は、上記一般式(1)中、R、R、Rが水素原子(−H)であり、Rがスルホン酸基(−SOH)であり、Rがジメチルアミノ基である化合物である。
得られた3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸のH−NMRスペクトルの帰属を下記に示す。
H−NMR(270MHz in DO):δ7.48(d、1H)、δ7.32(d,1H)、δ7.26(m,1H)、δ3.08(s,6H)。
<導電性ポリマーの製造>
ペルオキソ二硫酸アンモニウム(分子量224.20)2.24g(10mmol)を25gの水に攪拌溶解し、酸化剤溶液を調製した。
別途、3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸(分子量216.26)2.16g(10mmol)からなるアニリン系単量体成分を1mol/L塩酸25gに溶解し、アニリン系単量体成分溶液(前駆体溶液)を調製した。
酸化剤溶液を氷浴にて冷却し攪拌しながら、前駆体溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、氷冷下で12時間攪拌を継続した。次いで室温(25℃)で2時間攪拌を継続し重合反応を行い、黒色沈殿物を得た。
得られた黒色沈殿を濾過し、残渣を水にて洗浄した後、減圧乾燥し、導電性ポリマー(ポリ(3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸))0.50gを得た。得られたポリ(3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸)の質量平均分子量は6500であった。
得られたポリ(3−アミノ−4−ジメチルアミノベンゼンスルホン酸)を0.2mol/Lのアンモニア水に溶解し、導電性ポリマー溶液を調製した。この導電性ポリマー溶液を用いて導電性を評価した。
その結果、導電率は0.04s/cmであった。
「比較例1」
<導電性ポリマーの合成>
ペルオキソ二硫酸アンモニウム(分子量224.20)2.24g(10mmol)を10gの水およびアセトニトリルの混合溶媒(体積比=1:1)に攪拌溶解し、酸化剤溶液を調製した。
別途、東京化成工業株式会社製から市販されている2−アミノアニソール−4−スルホン酸(分子量203.22)2.03g(10mmol)、およびトリエチルアミン1.1gを、10gの水およびアセトニトリルの混合溶媒(体積比=1:1)に溶解し、前駆体溶液を調製した。
これらの酸化剤溶液および前駆体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして重合反応を行い、得られた黒色沈殿を濾過し、残渣を水にて洗浄した後、減圧乾燥し、導電性ポリマー(ポリ(2−アミノアニソール−4−スルホン酸))1.2gを得た。
得られたポリ(2−アミノアニソール−4−スルホン酸)の質量平均分子量は6000であった。
得られたポリ(2−アミノアニソール−4−スルホン酸)を室温(25℃)で水に溶解し、強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIR−120B」)にてイオン交換処理を行い、これを導電性ポリマー溶液とした。
得られた導電性ポリマー溶液を用いて、実施例1と同様にして導電性を評価した。
その結果、導電率は0.007s/cmであった。
以上の結果より、実施例1で得られた導電性ポリマーは、比較例1で得られた導電性ポリマーに比べて導電率の値が高く、導電性に優れていた。
該導電性向上効果は、導電性ポリマーの質量平均分子量に起因するキャリアの分子鎖間および分子鎖内の易動度(μ)に起因する効果とは異なる。
従って、本発明の導電性ポリマー前駆体が、従来の導電性ポリマー前駆体よりも、導電性ポリマーの前駆体として好適であることが示された。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表される、導電性ポリマー前駆体。
    Figure 2014231540
    式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミノ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R〜Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である。
  2. 前記Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基である、請求項1に記載の導電性ポリマー前駆体。
  3. 前記Rが水素原子であり、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つはアミノ基であり、少なくとも1つは酸性基であり、残りが水素原子である、請求項2に記載の導電性ポリマー前駆体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合させて得られる、導電性ポリマー。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリマー前駆体を含むアニリン系単量体成分を重合する、導電性ポリマーの製造方法。
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