JP6303263B2 - 酸性基置換導電性ポリマーの製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に、導電性ポリマーの導電性(σ)は、キャリアの電荷(q)、キャリアの数(n)、及びキャリアの分子鎖間及び分子鎖内の易動度(μ)に依存し、下記式(I)より導き出される。
σ=qnμ ・・・(I)
易動度(μ)を増大させるには、ポリマーの分子量を高くすること等が有効であると考えられている。
一方、キャリアの数(n)を増大させるには、スルホン酸基などの酸性基を導入し、ドープを阻害する塩基を除去すること等が有効であると考えられている。
前記導電性ポリマーを電気化学的手法で製造する方法として、アミノベンゼンスルホン酸誘導体やアミノベンゼンカルボン酸誘導体を単独で重合する方法(特許文献1、非特許文献1)が開示されている。
また、電気化学的方法を用いる非特許文献1記載の方法では、電極に付着した酸性基置換導電性ポリマーが得られない、又は途中で反応が停止するという問題があった。
酸性基置換芳香族化合物(A)及び塩基性化合物(B)を用いる電気化学的方法による酸性基含有導電性ポリマーの製造方法において、
前記酸性基置換芳香族化合物(A)の濃度が0.25M以上であり、かつ、前記塩基性化合物(B)の水‐オクタノール分配係数が0.60以上2.40未満の塩基性化合物(B)である、酸性基含有導電性ポリマーの製造方法に関する。
前記酸性基置換芳香族化合物(A)が、酸性基含有アニリン(A−1)である、前記酸性基含有導電性ポリマーの製造方法に関し、
第三の観点は、
前記酸性基含有アニリン(A−1)が、下記一般式(1)で示される、前期酸性基含有導電性ポリマーの製造方法に関する。
なお、本明細書中の高溶解性とは0.1mol/L以上の溶解度とする。
本発明で用いる酸性基置換芳香族化合物の酸性基とは、スルホン酸基又はカルボキシル基である。
酸性基置換芳香族化合物として、代表的なものは、酸性基置換のアニリン、ピロール、チオフェン、フラン、セレノフェン、テルロフェン、イソチアナフテン、イソベンゾフラン、イソインドリン、イソベンゾセレノフェン及びイソベンゾテルロフェンである。
酸性基置換芳香族化合物であれば、特に限定されないが、水溶性、溶解性及び成膜性の観点から、酸性基置換アニリン(A−1)が好ましい。
酸性基含有アニリン(A−1)としては、例えば、アミノベンゼンスルホン酸誘導体やアミノ安息香酸誘導体があげられる。
ここで、導電性や溶解性の観点から、アミノベンゼンスルホン酸誘導体が好ましく、下記一般式(1)を有することが特に好ましい。
導電性及び溶解性の観点から、その少なくとも一つは酸性基を有することが好ましく、R2又はR4が酸性基であることがより好ましい。
また、反応効率の観点から、少なくとも一つは、水素を有することが好ましく、R3が水素であることがより好ましい。
さらに、反応効率の観点から、少なくとも一つは、電子供与基を有することが好ましく、中でもアルコキシ基がより好ましく、R1又はR5が、電子供与基(好ましくは、アルコキシ基)であることが特に好ましい。
A:スルホン酸基又はカルボン酸基、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩から選ばれた一つの基を示し、B:メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基、ヒドロキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロム基などのハロゲン基から選ばれた一つの基を示し、H:水素を示す。
これらモノマーで塩を形成できるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが例示できる。
N+R6R7R8R9 ・・・(2)
環式不飽和アンモニウム類としては、ピリジニウム、α−ピコリニウム、β−ピコリニウム、γ−ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが例示される。
本発明で用いられる塩基性化合物(B)としては、水‐オクタノール分配係数が、0.60以上2.40未満の化合物である。
前記塩基性化合物(B)の水‐オクタノール分配係数(LogPow)は、0.65以上が好ましく、0.70以上がより好ましい。
また、前記塩基性化合物(B)の水‐オクタノール分配係数(LogPow)は、2.38以下が好ましく、2.36以下がより好ましい。
ここで、LogPowが0.60未満の場合は、生成するポリマーの溶媒への溶解度が高くなるため、効率的に電極上でのポリマー成長が起こらず、得られたポリマーの導電性も低位になる。
一方、LogPowが2.40を超える場合は、ポリマーの溶媒への溶解度が低いため、不溶性となり、成膜して用いることができない。
これらの中でも、入手の容易性から、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが好ましい。
NR10R11R12 ・・・(3)
(式中、R10〜R12は、炭素数2〜16のアルキル基よりなる群から独立して選ばれた基である。)で示される化合物、
又は、下記一般式(4)
(NR13R14R15R16)+OH− ・・・(4)
(式中、R13〜R16はそれぞれ水素、炭素数1〜4のアルキル基よりなる群から独立して選ばれた基である。)
で表されるアンモニウムヒドロキシド化合物を挙げることができる。
また、これらの塩基性化合物(B)は、2種以上をそれぞれ任意の割合で混合して用いることもできる。
ここで、塩基性化合物(B)の割合が十分であれば、溶媒に対する溶解度が良好になるため、反応効率が向上し、導電性も向上する。更に、得られるポリマー中の酸性基と塩基性化合物(B)が塩を形成する割合が適度であり、高導電性を発現する。
電気化学的重合(電解酸化重合)時の電極材料としては、金、銀、白金、ニッケル、水銀、ステンレス鋼や、銅、亜鉛、スズ、鉛、鉄、アルミニウム、チタン、ルテニウム、イリジウム、又はこれらの酸化物等の金属板や網電極、グラッシーカーボン等の炭素電極、ITO、スズ−インジウム酸化物、酸化錫等の金属酸化物を付与したガラス電極等を用いることができ、この中でも銀、白金、チタン、グラッシーカーボン、ITOガラスが好ましい。
定電流電気化学的重合時の電流密度は、反応効率、副反応及び分解反応抑制の観点から、5〜200mA/cm2、好ましくは10〜200mA/cm2、より好ましくは15〜150mA/cm2の範囲である。
また、定電位電気化学的重合時の電位は、反応効率、副反応及び分解反応抑制の観点から、標準電極に対して0.5V以上、好ましくは0.5V〜5V、より好ましくは1V〜3Vの電位を作用極に対してかけることが好都合である。
また、サイクリックボルタメトリーを用いる場合は、反応効率の観点から、−1V〜10V、好ましくは0.5V〜5V、より好ましくは0.5V〜3Vの掃引範囲であり、反応効率(収率等)の観点から、前記範囲内で、繰り返し回数50回〜1000回、好ましくは100回〜800回、より好ましくは200回〜500回の掃引回数で電位をかけることが望ましい。
反応温度は、導電性の観点から、−15〜70℃が好ましく、−5〜60℃がより好ましい。
その中でも、精製効率の観点から、膜濾過法を用いることが好ましい。
膜濾過法で使用する濾過膜としては、不純物や低分子量体を効率よく除去できる点で、限外濾過膜が好ましい。
特に、クロスフロー方式の場合は、試料液を繰り返し連続的に濾過膜に接触させることができ、精製度を高めることが可能である。なお、試料液中の溶媒(水など)は濾過膜を透過するため、精製の過程で試料液が濃縮され、高粘度化しやすくなる傾向にある。このような場合は、濃縮液に溶媒をさらに加えて適度な濃度に希釈すればよい。
一方、膜濾過法として加圧濾過方式を採用する場合、十分な濾過効率が得られ、膜の破損を防げることから、濾過圧力は0.01〜0.35MPaが好ましい。
陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、陽イオン交換樹脂に対する試料液の量は、例えば5%の導電性ポリマー水溶液の場合、陽イオンの確実な除去及び置換と、経済性の観点から陽イオン交換樹脂に対して10倍の容積までが好ましく、5倍の容積までがより好ましい。
陽イオン交換樹脂としては、例えば三菱化学株式会社製の「ダイヤイオンSK1B」、オルガノ株式会社製の「アンバーライトIR−120B(H)」、米国ダウ・ケミカル株式会社製の「DOWEX 50W」などが挙げられる。
(表面抵抗値の測定)
導電性アニリン系ポリマー溶液を、スピンコーター(ミカサ株式会社製、「Opticoat MS−A150」)を用いて5cm×5cmのガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で120℃×10分間加熱乾燥して、所定の膜厚の塗膜がガラス基板上に形成された導電性評価用の試験片を得た。塗膜の膜厚は、微細形状測定機(株式会社小坂研究所社製、「サーフコーダ ET200」)を用いて測定した。
得られた導電性評価用の試験片の表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四端子プローブを装着して測定した。
測定した表面抵抗値及び塗膜の膜厚の積から体積抵抗値を算出し、その逆数から導電率を求めた。
pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性ポリマーを固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液とした。この試験溶液について、ゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用してクロマトグラムを得て、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で分子量を測定した。分子量としては、重量平均分子量(Mw)を評価した。
超純水(ミリポア)とメタノールを、容積比が超純水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
この溶離液に、導電性アニリン系ポリマー溶液を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(I))。
得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2996(PDA)」)で、カラム(東ソー株式会社製、「TSK−GEL ALPHA−M」、7.8×300mm)を2本用いて分子量分布を測定し、UV吸収波長760nmのクロマトグラムを得た(工程(II))。なお、測定は、流速0.6mL/min、カラム温度40℃で行った。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した(工程(III))。具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料については固形分濃度が25ppmとなるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製した。そして、各標準溶液についてGPC測定を行い、PDAのUV吸収波長254nmにて検出した保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した。
重合で得られたポリマーのスラリー15gを、超純水(ミリポア)で100mLに希釈した。分画分子量が10000Daの加圧式限外濾過膜(アドバンテック株式会社製、「ウルトラフィルターQ0100」)を備えた加圧式限外濾過ユニット(アドバンテック株式会社製、「攪拌型ウルトラホルダー」)に、得られた水溶液をセットし、0.35MPaの圧力で加圧しながら濾液が出なくなるまで濾過した。その後圧力を解除し、水溶液に超純水を100mL加え、再度加圧しながら濾過した。この操作を5回繰り返して未精製の導電性ポリマーを精製し、濾残を導電性ポリマー溶液として回収した。
5%水溶液に調整したポリマー溶液5gを、直径1cmのカラムに充填したアンバーライトIR−120B(H)(オルガノ株式会社製)5mLに通液することで陽イオン交換を行った。
電解重合溶液を、2−アミノアニソール−4−スルホン酸(1.5242g)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.9694g)、超純水(10mL)から作製した。
電解重合の作用極、対極としていずれも白金板(1cm×2cm)(北斗電工株式会社製)を用いた。参照極としては銀/塩化銀電極(3M NaCl水溶液)(ビー・エー・エス株式会社製)を用いた。
電解重合溶液に作用極、対極、参照極を浸漬させ、作用極と対極の間に2.5Vの定電位で、3時間反応を行わせることにより、作用上に酸性基置換導電性ポリマー塊を形成した。この後、反応生成物を超純水に溶解させてから限外濾過器にて精製し、陽イオン交換を行ってポリマーを得た。得られたポリマーについて、上記方法により測定された導電率及び分子量(Mw)を表3に示す。
表2に示す処方に従って、導電性ポリマー溶液の調製、電解重合反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、分子量測定、導電率測定の評価等を実施した。結果を表3に示す。
一方、前記化合物(A)の濃度が0.25M未満で重合した比較例4及び5は、導電性ポリマーを得ることができなかった。
また、前記酸性基置換芳香族化合物(A)の濃度が0.25M以上であるが、水‐オクタノール分配係数が0.60以上2.40未満の範囲外の塩基性化合物(B)を用いた比較例1〜3は、低導電率又は不溶化により、良好なポリマーを得ることができなかった。
更に、本発明の方法で得られるポリマーは導電性の湿度依存性がなく、透明性が高く、しかも延伸加工や成形加工、エンボス加工等が可能なため、各種帯電防止用途への適合性
が優れている。
Claims (3)
- 酸性基置換芳香族化合物(A)及び塩基性化合物(B)を用いる電気化学的方法による
酸性基含有導電性ポリマーの製造方法において、
前記酸性基置換芳香族化合物(A)の濃度が0.25M以上であり、かつ、前記塩基性化
合物(B)の水‐オクタノール分配係数が0.60以上2.40未満の塩基性化合物(B
)を用い、標準電極に対して2.5V以上の電位で定電位電気化学的重合する、酸性基含
有導電性ポリマーの製造方法。 - 前記酸性基置換芳香族化合物(A)が、酸性基含有アニリン(A−1)である、請求項
1の酸性基含有導電性ポリマーの製造方法。 - 前記酸性基含有アニリン(A−1)が、下記一般式(1)で示される、請求項1又は2
記載の酸性基含有導電性ポリマーの製造方法。
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は、水素、炭素数1〜24の直鎖又は分岐の
アルキル基、炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基
及びハロゲン基よりなる群から選ばれた置換基であり、その少なくとも一つは酸性基を示
す。また、ここで酸性基とはスルホン酸基又はカルボン酸基を示す。)
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