JP2013252558A - 粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法を提供する。
【解決手段】 (1)マルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成を有する溶湯を、双ロール法によって薄板に鋳造する第1の工程と、
(2)前記の鋳造された薄板に、圧下率が10%以上の熱間圧延を行う第2の工程と、
(3)前記の熱間圧延を行った薄板に、オーステナイト単相領域の温度で、2分以上の拡散焼なましを実施する第3の工程と、
からなるマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法である。
前記のマルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことが好ましい。また、前記の熱間圧延の圧下率は、80%以下であることが好ましい。あるいはさらに、前記の拡散焼なましは、60分以下であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】 (1)マルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成を有する溶湯を、双ロール法によって薄板に鋳造する第1の工程と、
(2)前記の鋳造された薄板に、圧下率が10%以上の熱間圧延を行う第2の工程と、
(3)前記の熱間圧延を行った薄板に、オーステナイト単相領域の温度で、2分以上の拡散焼なましを実施する第3の工程と、
からなるマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法である。
前記のマルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことが好ましい。また、前記の熱間圧延の圧下率は、80%以下であることが好ましい。あるいはさらに、前記の拡散焼なましは、60分以下であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、双ロール法を用いたマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法に関するものである。
マルテンサイト系ステンレス鋼(以下、「本鋼」と記載)は、優れた耐食性に加え、焼入れ硬さが高く、耐摩耗性にも優れるため、ベアリング等の機械構造用鋼や、包丁、鋏等の刃物用鋼として多く利用されている。また、厚さが概ね1mm以下の薄帯は、剃刀刃等に利用されている(特許文献1)。従来、これらの素材は、本鋼の成分組成を有した溶湯を造塊法により鋳造して鋼塊とし、これに熱間加工および冷間加工を行って製造される。素材が薄帯である場合、上記の鋼塊の替りに、連続鋳造法により鋳造して得られる例えば厚さが10mmを超える鋳造片を用いることが、素材の均質性および工程時間の短縮の観点から好ましい。また、本鋼のうち比較的C量の高い鋼種では、鋳造中の凝固過程において、成分の濃化により、粗大な炭化物の晶出または析出が生じやすい。この粗大な炭化物が最終製品中に多く残存すると、構造部品では割れや破壊の起点となり、刃物では刃欠けの起点となり得る。そこで、上記の製造工程には、偏析等を軽減するための長時間の「拡散焼なまし」の工程を選択的に導入して、共晶および共析炭化物を極力消失させることが有効である。
ところで、上記の連続鋳造法に替わる薄板の製造手法として、双ロール法がある。双ロール法は、互いが逆方向に回転する1対のロール間に溶湯を供給し、ロールに接して形成される2枚の凝固シェルを圧着して、例えば厚さが5mm以下の薄板も直接得ることができる手法である。従って、双ロール法は、従来の製造工程における鋳造後の熱間圧延工程を大幅に省略して薄板を製造できるため、製造工数の大きな低減、さらに省エネルギー化の効果がある(非特許文献1)。さらに、急冷凝固組織を得られるため、本鋼の製造においては、高炭素を含有する場合でも、凝固中に生成する炭化物を微細にできる等の、品質向上効果も期待できる(特許文献2〜4)
マイケル・フェリー(Michael Ferry)著、「ダイレクト ストリップ キャスティング オブ メタルズ アンド アロイズ(Direct strip casting of metals and alloys)」、(英語)ウッドヘッド パブリッシング リミテッド(Woodhead Publishing Limited)、2006年、p.88
粗大な炭化物の残存は、最終製品の割れや破壊、欠けの原因となる。特に薄帯でなる剃刀刃においては、炭化物の品質管理が厳しく、その大きさが例えば0.5μm以下に管理されている。そして、従来の製造工程では、この炭化物が確認できなくなるまで消失させるには、数十時間に及ぶほどの長時間の拡散焼なましが必要であった。
本鋼でなる薄板を双ロール法で製造することは、製造面や品質面で利点がある。しかし、凝固中に生成する炭化物については、薄板が急冷凝固組織であるといっても、依然として粗大なものが存在し得る。この炭化物は、特に、薄板の最終凝固部である板厚の中央部に集中して生成される傾向にある。これは、専ら最終凝固部であるデンドライトのアーム間に溶質が濃化し、偏析を生じることによって、部分的に炭化物の生成しやすい成分組成が形成されてしまうことが原因である。そして、この炭化物の大きさは、造塊法による鋼塊や、連続鋳造法による鋳造片に存在するものよりは小さいものの、円相当径にして1〜10μm程度である。したがって、双ロール法で製造された本鋼でなる薄帯においても、剃刀刃の品質基準を達成するためには、従来の製造工程で製造された薄帯と同様に長時間の拡散焼なましが必要であると考えられていた。
本発明の目的は、粗大な炭化物の生成を効果的に抑制できるマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法を提供することである。
本発明の目的は、粗大な炭化物の生成を効果的に抑制できるマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法を提供することである。
本発明者は、双ロール法によって鋳造した直後の薄板に生成された炭化物について調査した。その結果、この炭化物は、造塊法による鋼塊や連続鋳造法による鋳造片に生成された従来のものとは形態が異なることを突きとめた。そして、この形態の炭化物に対しては、極めて短時間の拡散焼なましを実施するだけで、冷間圧延前における薄板の炭化物分布を、従来工程による薄板のものと同等レベルに調整できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)マルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成を有する溶湯を、双ロール法によって薄板に鋳造する第1の工程と、
(2)前記の鋳造された薄板に、圧下率が10%以上の熱間圧延を行う第2の工程と、
(3)前記の熱間圧延を行った薄板に、オーステナイト単相領域の温度で、2分以上の拡散焼なましを実施する第3の工程と、
からなることを特徴とする粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法である。
(1)マルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成を有する溶湯を、双ロール法によって薄板に鋳造する第1の工程と、
(2)前記の鋳造された薄板に、圧下率が10%以上の熱間圧延を行う第2の工程と、
(3)前記の熱間圧延を行った薄板に、オーステナイト単相領域の温度で、2分以上の拡散焼なましを実施する第3の工程と、
からなることを特徴とする粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法である。
前記のマルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことが好ましい。また、前記の熱間圧延の圧下率は、80%以下であることが好ましい。あるいはさらに、前記の拡散焼なましは、60分以下であることが好ましい。
本発明によれば、従来の製造工程と比較して、その工数を大幅に省略しても、従来と同等のマルテンサイト系ステンレス鋼薄板を製造できる。よって、本発明の製造方法に引き続いて、該薄板を冷間圧延する等によって製造される最終製品の高品質を、一連の製造に費やすエネルギーを省略して、維持することができる。
本発明の特徴は、双ロール法で鋳造したマルテンサイト系ステンレス鋼の薄板に、所定の圧下率による熱間圧延を行って、次の工程では、通常の場合に比べて極めて短時間の拡散焼なましを実施するだけでも、薄板の炭化物分布を高品位に維持できるところにある。以下、本発明の構成要件について、説明する。
(1)第1の工程:マルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成を有する溶湯を、双ロール法によって薄板に鋳造する。
本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼とは、JIS−G−0203に示されるように、焼入れすることによってマルテンサイト組織となり硬化させることができるステンレス鋼を言う。そして、この溶湯を双ロール法によって鋳造することで、目的の最終厚さに近づけることができ、従来の熱間圧延工程を大幅に省略できる。
本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼とは、JIS−G−0203に示されるように、焼入れすることによってマルテンサイト組織となり硬化させることができるステンレス鋼を言う。そして、この溶湯を双ロール法によって鋳造することで、目的の最終厚さに近づけることができ、従来の熱間圧延工程を大幅に省略できる。
(2)第2の工程:前記の鋳造された薄板に、圧下率が10%以上の熱間圧延を行う。
双ロール法によって鋳造された薄板は、その板厚の中央部に凝固収縮に伴う収縮孔が発生しやすい。そして、本発明の問題とする粗大な炭化物も、この収縮孔と同じ板厚の中央部に発生する傾向がある。これは凝固収縮に伴い、収縮部に吸引圧が生じて、その周囲にある溶質が濃化した溶鋼を収縮部が吸引するためである。そして、この濃化溶鋼がこの位置において粗大な炭化物を生成しやすいためである。この粗大な炭化物は、拡散焼なましを実施することで消失が可能であり、後述の通り、本発明もこの手法を採用する。そして、この拡散焼なましに先立って、上記の収縮孔を排除しておくことが効果的である。
双ロール法によって鋳造された薄板は、その板厚の中央部に凝固収縮に伴う収縮孔が発生しやすい。そして、本発明の問題とする粗大な炭化物も、この収縮孔と同じ板厚の中央部に発生する傾向がある。これは凝固収縮に伴い、収縮部に吸引圧が生じて、その周囲にある溶質が濃化した溶鋼を収縮部が吸引するためである。そして、この濃化溶鋼がこの位置において粗大な炭化物を生成しやすいためである。この粗大な炭化物は、拡散焼なましを実施することで消失が可能であり、後述の通り、本発明もこの手法を採用する。そして、この拡散焼なましに先立って、上記の収縮孔を排除しておくことが効果的である。
つまり、拡散焼なましの前に上記の収縮孔を排除しておくと、焼なまし時における炭化物のマトリックスへの拡散経路が確保されることにより炭化物の拡散性が向上する。その結果、極めて短時間の拡散焼なましでも、粗大な炭化物の消失が可能となる。また、収縮孔自身の残存は、最終製品の品質を損なう。したがって、後述の拡散焼なましの前に行う本発明の熱間圧延は、薄板中の収縮孔を圧着して消失させるために必要な工程である。そして、双ロール法による薄板の場合、10%以上の圧下率を確保すれば、上記の効果を得ることが可能である。好ましくは、30%以上である。なお、上限については、特段の制限はない。但し、熱間圧延後の表面スケールや凹凸を除去する場合は、そのための削り代を確保できる板厚が必要である等の点で、80%以下が好ましい。より好ましくは60%以下、さらに好ましくは40%以下である。圧下率は、[(圧延前の板厚−圧延後の板厚)/圧延前の板厚]×100(%)で算出される。
(3)第3の工程:前記の熱間圧延を行った薄板に、オーステナイト単相領域の温度で、2分以上の拡散焼なましを実施する。
本来、拡散焼なましとは、JIS−G−0201に示されるように、鋼を拡散によって均質化するため、A3点以上の温度に加熱して行う焼なましであって、偏析現象による炭化物等の不均一性を、拡散によって低減させることを意図した高温かつ長時間の焼なましである。そして、この効果を得るためには、通常、数時間から数十時間の処理時間が必要である。
本来、拡散焼なましとは、JIS−G−0201に示されるように、鋼を拡散によって均質化するため、A3点以上の温度に加熱して行う焼なましであって、偏析現象による炭化物等の不均一性を、拡散によって低減させることを意図した高温かつ長時間の焼なましである。そして、この効果を得るためには、通常、数時間から数十時間の処理時間が必要である。
本発明であっても、上記の工程で得た熱間圧延後の薄板には、円相当径にして1〜10μm程の粗大な炭化物が存在し得る。しかし、双ロール法による薄板の場合、これに生成された炭化物の形態は、造塊法や連続鋳造法による従来のものとは異なることを知見した。つまり、従来の造塊法は、凝固速度が遅いため、デンドライトが粗大に成長し、デンドライトのアーム間隔が広く、アーム間の溶質の濃化が顕著である。従って、溶質濃度が共晶組成に到達した部分に粗大な共晶炭化物を晶出しやすい。この結果、鋼塊中に生成された粗大な炭化物は、専ら凝固中に晶出したM7C3型の共晶炭化物である。また、連続鋳造法でも、造塊法よりは凝固速度が速いが、鋳造片中に生成された粗大な炭化物は、やはりM7C3型の共晶炭化物が多い。
これに対して、双ロール法は、凝固速度が速く、デンドライトが微細に成長し、デンドライトのアーム間隔が狭く、アーム間の溶質の濃化が軽微である。従って、デンドライトアーム間や最終凝固部である板厚中央部には、粗大な炭化物は晶出し難い。しかし、偏析は軽微ではあるものの、偏析部分は凝固後における熱履歴の途中でM23C6型の炭化物を析出しやすい。そして、粗大な炭化物は晶出し難いとしても、偏析部分は急冷凝固によって過冷却され、より低温域の平衡相であるM23C6型の炭化物を晶出することも考えられる。よって、本法で生成された粗大な炭化物は、専ら凝固後の冷却中に析出したM23C6型の共析炭化物と、凝固中に晶出することが考えられるM23C6型の共晶炭化物が占める。
M23C6型の炭化物は、M7C3型の炭化物と比較して、オーステナイト単相領域で熱力学的に不安定な相である。そして、双ロール法によって得られた微細な凝固組織は、造塊法や連続鋳造法による従来の凝固組織よりも、偏析が軽微である。そのため、再度のオーステナイト単相領域の温度(拡散焼なまし温度)に加熱した時の、上記のM23C6型の炭化物のマトリックスへの固溶能は、造塊法や連続鋳造法によるM7C3型の共晶炭化物のものよりも高い。したがって、上記の第1、2の工程で得た本発明にかかる薄板は、続く拡散焼なましの工程において、粗大な炭化物の低減化に有利であり、従来よりも短時間の処理で同炭化物の極低減が可能である。
さらに、双ロール法による薄板は、例えば板厚が5mm以下と薄いことに加えて、第2の工程では、薄板中にある収縮孔が圧着されていることから、上記の拡散焼なましによる炭化物の拡散効果を促進し、粗大な炭化物が短時間でマトリックス中に十分に拡散して、同炭化物を極低減できる。そして、本発明の双ロール法による薄板の場合、2分以上の処理時間を確保すれば、上記の効果を得ることが可能である。好ましくは5分以上であり、さらに好ましく8分以上である。なお、上限については、特段の制限はない。但し、拡散焼なましを大気中で実施することも想定すれば、その時の表面スケールの付着を低減する点で、60分以下が好ましい。より好ましくは40分以下、さらに好ましくは30分以下である。
なお、本発明にかかる上記の拡散焼なましの実処理工程には、薄板を炉内へ搬入する作業から、昇温、降温、そして搬出までの作業に伴う不可避的な処理時間が加算され得る。しかし、この場合であっても、5時間もあれば上記の一連の作業を終えることは可能であり、従来の拡散焼なましに要した一連の作業時間に比して、これに費やされるエネルギー量は大幅に削減することが可能である。
(4)前記のマルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことが好ましい。
本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼の具体的な成分組成には、例えばJIS−G−4303に示されるものの他に、これらの改良鋼等、そして、従来提案されてきたものも適用できる。そして、本発明の特徴である、粗大な炭化物の生成を抑制できる効果は、これらの炭化物が生成しやすい共析組成(0.8%C)前後の炭素組成を有する鋼種において、最大限に発揮される。例えば、本鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことが好ましい。そして、さらに好ましくは、以下のマルテンサイト系ステンレス鋼である。
本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼の具体的な成分組成には、例えばJIS−G−4303に示されるものの他に、これらの改良鋼等、そして、従来提案されてきたものも適用できる。そして、本発明の特徴である、粗大な炭化物の生成を抑制できる効果は、これらの炭化物が生成しやすい共析組成(0.8%C)前後の炭素組成を有する鋼種において、最大限に発揮される。例えば、本鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことが好ましい。そして、さらに好ましくは、以下のマルテンサイト系ステンレス鋼である。
質量%で、
C :0.4〜1.2%、
Si:1%以下、
Mn:2%以下、
P :0.05%以下、
S :0.05%以下、
Ni:1.0%以下(無添加を含む)、
Cr:10.0〜18.0%、
Fe:残部(不純物を含む)
C :0.4〜1.2%、
Si:1%以下、
Mn:2%以下、
P :0.05%以下、
S :0.05%以下、
Ni:1.0%以下(無添加を含む)、
Cr:10.0〜18.0%、
Fe:残部(不純物を含む)
双ロール連続鋳造機によって、表1に示す2種の成分組成のマルテンサイト系ステンレス鋼の鋳造片AおよびBを鋳造した。また、造塊法による鋼塊Cも準備した。鋳造片の平均板厚は、鋳造片Aが2.6mmであり、鋳造片Bが4.0mmである。そして、上記の鋳造片に、表2に示す条件の熱間圧延および/または拡散焼なましを行って、薄板No.1〜10に仕上げた。なお、参考に示す薄板No.11、12は、熱間圧延も拡散焼なましも行っていない鋳造片のままの薄板である。薄板No.13〜15は、鋼塊Cを分塊して得た厚さが約4mmの鋼材に、表2に示す条件の拡散焼なましを行ったものである。
以上で作製した薄板に分布する炭化物を評価した。炭化物は、圧延方向(または鋳造片の長さ方向)である縦断面において、その板厚中央部(T/2位置)と、さらにその半分の位置(T/4位置)に分布するものを観察した。薄板No.13〜15においては、分塊方向である。まず、薄板から該位置の観察用試料を採取した。次に、その観察面を鏡面研磨してから、1000倍の走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、BSE(反射電子)画像を取得した。そして、得られた画像から、マトリックスとのコントラストの濃淡で区別される炭化物のうちの、円相当径にして0.5μm超の炭化物の個数、平均径、および、最大径を測定した。結果を表3に示す。
まず、造塊法によった薄板No.13〜15の場合、その組織中には鋼塊の時点から大きな炭化物が存在していた。そして、この炭化物を確認できなくなるまで消失させるには、数十時間に及ぶ長時間の拡散焼なましが必要であった(No.15)。これに対して、双ロール法によった薄板No.1〜12の場合、その鋳造片の時点で組織中に存在する炭化物は比較的小さかった。但し、鋳造片のままの状態である薄板No.11、12には、双ロール法による急冷凝固組織が得られたとしても、粗大な炭化物が確認され、特に板厚中央部で多く確認された。図2は、薄板No.11のT/2位置におけるBSE画像である。白色で確認される粗大な炭化物が多く確認された。そして、これらの薄板に本発明法および比較法による熱間圧延および/または拡散焼なましを実施した結果が、薄板No.1〜10である。
拡散焼なましを実施しなかった薄板No.5、6は、熱間圧延を実施したことによらず、粗大な炭化物が多く確認された。一方、拡散焼なましを実施した薄板No.7〜10においては、焼なまし時間が10分であれば、熱間圧延を実施しなくても、粗大な炭化物が消失した(No.8、10)。しかし、5分の短い焼なまし時間では、T/2の位置に粗大な炭化物が残留した(No.7、9)。これに対し、本発明法によった薄板No.1〜4には、5分の短時間の拡散焼なましでも、T/2の位置に粗大な炭化物は確認されず、熱間圧延の実施によって拡散焼なまし時間を短縮できた。
図1は、薄板No.1のT/2位置におけるBSE画像である。図2には多く確認された粗大な炭化物が、図1には確認されなかった(少数点在する白点は介在物である)。
本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法は、ベアリング等の機械構造用鋼や、包丁、鋏、剃刀等の刃物用鋼の製造方法に利用できる。
Claims (4)
- (1)マルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成を有する溶湯を、双ロール法によって薄板に鋳造する第1の工程と、
(2)前記の鋳造された薄板に、圧下率が10%以上の熱間圧延を行う第2の工程と、
(3)前記の熱間圧延を行った薄板に、オーステナイト単相領域の温度で、2分以上の拡散焼なましを実施する第3の工程と、
からなることを特徴とする粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法。 - 前記のマルテンサイト系ステンレス鋼の成分組成は、質量%で、C:0.4〜1.2%、Cr:10.0〜18.0%を含むことを特徴とする請求項1に記載の粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法。
- 前記の熱間圧延の圧下率は、80%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法。
- 前記の拡散焼なましは、60分以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の粗大な炭化物の生成を抑制したマルテンサイト系ステンレス鋼薄板の製造方法。
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