JP2013252123A - ハダニ類の天敵昆虫の飼育方法及び飼育容器 - Google Patents

ハダニ類の天敵昆虫の飼育方法及び飼育容器 Download PDF

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【課題】ハダニ類の天敵昆虫を効率的かつ大量に飼育することができる天敵昆虫の飼育方法等を提供すること。
【解決手段】本発明に係る飼育方法は、ハダニ類を増殖させる増殖工程と、アブラナ科、キク科及びアカザ科の野菜からなる群より選択される少なくとも1種の野菜であってポット植えされた野菜に、増殖させたハダニ類を寄生させる寄生工程と、当該野菜を飼育容器に入れて、当該飼育容器内でハダニ類の天敵昆虫を飼育する飼育工程とを含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、ハダニ類の天敵昆虫を効率的かつ大量に飼育することができる天敵昆虫の飼育方法及び飼育容器に関する。
ハダニ類は野菜、果樹、花卉等の農作物に重大な被害を及ぼす重要害虫として世界中で問題となっている。ハダニ類は高度の薬剤抵抗性を発達させる難防除害虫であることから、天敵生物を用いた生物的防除が有効である。
ハダニ類の有力天敵として、カブリダニ類(チリカブリダニ等)及び天敵昆虫(ケシハネカクシ、キアシクロヒメテントウ、ハダニアザミウマ、ハダニタマバエ等)が挙げられる。これらの天敵生物を効率的に飼育・増殖させるためには、天敵の餌となるハダニ類と、ハダニ類の餌となる寄主植物とを適切に組み合わせる必要がある。
カブリダニ類は、一般に発育及び産卵に多くの餌ハダニを必要とせず、飼育も比較的容易であるため、ナミハダニが寄生したインゲンマメ株又はリママメ株等を用いた大量増殖法が開発されている(非特許文献1及び非特許文献2)。しかし、カブリダニ類は農薬に弱く、ハダニ多発時に防除効果を十分発揮できない等の問題点がある。
一方、天敵昆虫は農薬に比較的強く、ハダニ多発時にも防除効果を発揮する。そのため、天敵昆虫を効率的かつ大量に飼育する方法が切望されている。しかし、開発されている飼育法は、シャーレ等の中で、ナミハダニが寄生したクズ葉等を少数の天敵昆虫に与える小規模飼育法にとどまっている(非特許文献3及び非特許文献4)。
Overmeer, W. P. J. 1985. Rearing and handling. In Spider Mites: Their Biology, Natural Enemies and Control. Vol. 1B (W. Helle and M. W. Sabelis eds.). Elsevier, Amsterdam, pp. 161-170. Shih, C.I.T., 2001. Automatic mass-rearing of Amblyseius womersleyi (Acari: Phytoseiidae). Experimental and Applied Acarology 25, 425-440. Kishimoto, H., 2003. Development and oviposition of predacious insects, Stethorusjaponicus (Coleoptera: Coccinellidae), Oligota kashmirica benefica (Coleoptera: Staphylinidae), and Scolothrips takahashii (Thysanoptera: Thripidae) reared on different spider mite species (Acari: Tetranychidae). Applied entomology and zoology 38, 15-21. 下田武志, 2004. ハダニの天敵昆虫ケシハネカクシ類の飼育法. 植物防疫58(12)545-548 天野 洋, 1996. 第6章 実験法, 植物ダニ学(江原昭三・真梶徳純編), 全国農村教育協会p.314-322.
従来の小規模飼育法では、飼育できる天敵昆虫が容器あたり数十匹程度と少ない。また、天敵昆虫の種類によっては発育ステージ毎に飼育条件が異なる。そのため、発育ステージ毎に別々の容器内で隔離飼育し、餌を頻繁に(2〜3日毎)補充する方法が主流である。しかし、このような飼育方法は難解であり、高度の技術及び経験だけでなく、大きな労力も要するという問題がある(非特許文献5)。
しかし、上記小規模飼育法に代わるような大規模飼育法は未だ開発されていない。ハダニ類の天敵昆虫の飼育は、カブリダニ類の飼育と比較して格段に難しい。一つの理由は、天敵昆虫は、カブリダニ類と比較して大量の餌ハダニを必要とするからである。他の理由はダニ類と天敵昆虫との相違によるものである。例えば、カブリダニ類の大量増殖法として確立している、ナミハダニが寄生したインゲンマメ株を用いた増殖法を天敵昆虫に適用した場合、天敵昆虫が大量に死亡する場合がある。その主な理由は、天敵昆虫が、インゲンマメの葉上の毛茸にひっかかり死亡するためである。
また、ハダニタマバエ等の一部の天敵昆虫については、小規模の飼育法すら開発されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハダニ類の天敵昆虫を効率的かつ大量に飼育することができる天敵昆虫の飼育方法等を提供することにある。
本願発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。まずは、餌となるハダニ類を頻繁に補充する手間を低減するため、ハダニ類が寄生した様々な種類の生植物を、天敵昆虫の飼育に用いることを試みた。試みの結果、天敵昆虫の飼育には、カブリダニ類の飼育と比較してより大量かつ持続的にハダニ類が寄生可能で、かつ天敵昆虫との相性に優れた生植物を選択する必要があることが判明した。例えば、インゲンマメ等のマメ科の植物は、ハダニ類が嗜好する植物の代表例であるが、大量に寄生すると落葉すること、葉上にある毛茸に天敵昆虫が引っかかり死亡する場合があることから、天敵昆虫の飼育にはむしろ適していないことが判明した。
また、天敵昆虫の飼育は、飼育容器内で行うから、飼育容器内での育成に適した生植物を選択する必要があった。
これら鋭意検討の結果、本願発明者らは、アブラナ科、キク科及びアカザ科からなる群より選択される少なくとも1種の野菜を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本願発明に想到するに至った。
すなわち、本発明に係る天敵昆虫の飼育方法は、ハダニ類を増殖させる増殖工程と、アブラナ科、キク科及びアカザ科の野菜からなる群より選択される少なくとも1種の野菜であってポット植えされた野菜に、上記増殖させたハダニ類を寄生させる寄生工程と、上記ハダニ類が寄生したポット植えの野菜を飼育容器に入れて、当該飼育容器内でハダニ類の天敵昆虫を飼育する飼育工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る飼育方法は、上記方法において、上記野菜が、アブラナ科の野菜であることが好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記方法において、上記野菜が、コマツナであることがより好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記増殖工程において、マメ科、アブラナ科、ウリ科、ナス科、バラ科及びヒルガオ科の植物からなる群より選択される少なくとも1種の植物を用いて上記ハダニ類を増殖させることが好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記増殖工程において、マメ科の植物を用いて上記ハダニ類を増殖させることがより好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記増殖工程において、インゲンマメを用いて上記ハダニ類を増殖させることがさらに好ましい。
本発明に係る飼育方法は、さらに、上記増殖工程において、上記植物は室内環境下で栽培されることが好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記方法において、上記ハダニ類が、ナミハダニ属に属するダニであることが好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記方法において、上記ハダニ類が、ナミハダニであることがより好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記方法において、上記天敵昆虫が、ケシハネカクシ類、テントウムシ類、アザミウマ類及びタマバエ類からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る飼育方法は、上記方法において、上記天敵昆虫が、ヒメハダニカブリケシハネカクシ、ハダニカブリケシハネカクシ、キアシクロヒメテントウ、ハダニアザミウマ又はハダニタマバエであることがより好ましい。
本発明はまた、上記飼育方法に用いる飼育容器であって、底面及び上面を有する筒型容器と、上記上面に形成された開口部を覆う、目の大きさが0.01mm以上で0.1mm以下の範囲内のメッシュと、を備え、上記筒型容器は、上記底面を有する筒型の下部と、上記上面を有する筒型の上部とが、着脱可能に継ぎ合わされてなるものであり、上記上部は、上記継ぎ合わせにおいて上記下部の内面と当接する係合用突起を備え、上記上部は透光性である、ことを特徴とする飼育容器を提供する。
本発明によれば、ポット植えのアブラナ科、キク科及びアカザ科からなる群より選択される少なくとも1種の野菜を用いるため、ハダニ類の天敵昆虫を効率的かつ大量に飼育することができる飼育方法等を提供することが出来るという効果を奏する。
(a)は本発明に係る、飼育容器の一例を示す図であり、(b)は当該飼育容器において、天敵昆虫の飼育に用いた飼育容器の上筒部(上部)及び下筒部(下部)の継ぎ合わせを示す図である。 (a)及び(b)は、実施例において、ナミハダニを大量飼育する様子を示す図であり、(c)は、ポット植えのナミハダニ寄生コマツナを示す図であり、(d)、(e)、(g)及び(h)は、天敵昆虫を示す図であり、(f)、(i)及び(k)は、実施例において、天敵昆虫導入後の様子を示す図である。(j)は、実施例において、飼育容器の上筒部1の内部壁面に塗布された蜂蜜液等の餌に対して、これを摂食する天敵昆虫の様子を示す図である。 一実施例において、キアシクロヒメテントウの増殖パターンを示す図である。 他の実施例において、キアシクロヒメテントウの増殖率を示す図である。 さらに他の実施例において、キアシクロヒメテントウの発育率を示す図である。 参考例において、インゲンマメ葉片を用いた場合のハダニアザミウマの生存率を示す図である。 (a)は、参考例において、クズ葉片を示す図であり、(b)は、参考例において、クズ葉片を用いた場合のハダニアザミウマの生存率を示す図である。
〔1.天敵昆虫の飼育方法〕
(概要)
本発明に係る天敵昆虫の飼育方法は、ハダニ類を増殖させる増殖工程と、アブラナ科、キク科及びアカザ科の野菜からなる群より選択される少なくとも1種の野菜であってポット植えされた野菜に、上記増殖させたハダニ類を寄生させる寄生工程と、上記ハダニ類が寄生したポット植えの野菜を飼育容器に入れて、当該飼育容器内でハダニ類の天敵昆虫を飼育する飼育工程とを含む、天敵昆虫の飼育方法である。
(本発明の利点)
1)本発明は、天敵昆虫飼育用の植物として、室内・温室等でも年間を通じて容易に栽培できる上記野菜を用いるため、年間を通して天敵昆虫の飼育をすることができる。また、天敵昆虫の飼育に、高度な知識及び技術を要しない。
2)ハダニ類を寄生させる寄主植物としての上記野菜は、ポット植えの生植物体の状態で使用するため、葉片等を用いる従来方法に比べて、植物が劣化しにくい。加えて、本発明で用いる寄主植物は、大量のハダニ類が寄生しても植物体に影響が出にくいので、多数のハダニ類を植物体上に長期間維持することができ、植物及び餌(ハダニ類)の補充・交換を頻繁に行う必要がない。また、これら寄主植物はポット植えの状態で用いるため交換が容易である。
3)上記野菜は、多数の餌(ハダニ類)を維持できるため、餌不足に伴う天敵昆虫の発達阻害、産卵数の減少、及び餓死といった問題が起こらず、天敵昆虫の成虫と幼虫とを隔離して飼育する必要がない。加えて、これら野菜は様々な種類の天敵昆虫との相性もよいため、大量の天敵昆虫(飼育容器あたり数百匹)を飼育することができる。
これらの利点を有することにより、従来の手法よりも労力をかけずに、多数の天敵昆虫を効率的に飼育することができ、また、年間を通じて様々な種類の天敵昆虫の飼育に対応することができる。さらに、天敵昆虫を累代的に飼育することができるため、結果的に大量の天敵昆虫を得ることができる。
まず、本発明に関わる天敵昆虫、ハダニ類及び植物について説明する。
(天敵昆虫)
本発明において天敵昆虫とは、ハダニ類を捕食する昆虫を指す。天敵昆虫は、例えば、ケシハネカクシ類、テントウムシ類、アザミウマ類、タマバエ類(Feltiella spp.、Anthrocnodax spp.、Therodiplosis spp.)、ハナカメムシ類(Orius spp.)、オオメカメムシ類(Geocoris spp.)、等が挙げられる。より具体的には、日本の土着天敵であれば、ヒメハダニカブリケシハネカクシ(Oligota kashmirica benefica)、ハダニカブリケシハネカクシ(Oligota yasumatsui)、キアシクロヒメテントウ(Stethorus japonicus)、ハダニアザミウマ(Scolohrips takahashii)、ハダニタマバエ(Feltiella acarivora)、等が挙げられる。また、外国の天敵であれば、Oligota flavicornis、Oligota oviformis、Stethorus punctum、Stethorus punctillum、Stethorus bifidus、Stethorus nigripes、Scolohrips sexmaculatus、Scolothrips indicues、Feltiella sp.、Anthrocnodax carolina、Anthrocnodax occidentalis、Therodiplosis persicae、等が挙げられる。
(ハダニ類)
本発明において、天敵昆虫の餌となるハダニ類は、分類学上でハダニ科(Tetranychidae)に属するダニをいう。ハダニ類としては、ナミハダニ属(Tetranychus属)に属するダニが好ましい。ナミハダニ属に属するものとして、例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae Koch)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawaiKishida)、サガミナミハダニ(Tetranychus phaselusEhara)、アシノワハダニ(Tetranychus ludeniZacher)、ナミハダニモドキ(Tetranychus pueraricolaEhara & Gotoh)、等が挙げられる。中でも、多数種の天敵昆虫の餌となるナミハダニが好ましい。
(ハダニ増殖用植物)
上記増殖工程において、ハダニ類を増殖させるために植物を用いることが好ましい。ここで用いる植物(ハダニ増殖用植物)は、ハダニ類の餌となり、ハダニ類が増殖できる植物であればよく、例えば、マメ科、アブラナ科、ウリ科、ナス科、バラ科、ヒルガオ科等の植物が挙げられる。より具体的には、マメ科植物としては、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、リママメ(Phaseolus lunatus)、ササゲ(Phaseolus unguiculata)、ダイズ(Glycine max)、ラッカセイ(Arachis. hypogaea)、ツルマメ(Glycine soja)、エンドウ(Pisum. sativum)、クズ(Pueraria lobata(Wild) Ohwi)、等が挙げられる。アブラナ科植物としては、コマツナ(Brassica rapa var. perviridis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var. chinensis)、ダイコン(Raphanus sativus L.)、ハクサイ(Brassica rapa var. pekinensis)、等が挙げられる。ウリ科植物としては、キュウリ(Cucumis sativus)、カボチャ(Cucurbita spp.)、等が挙げられる。ナス科植物としては、ナス(Solanum melongena)、トマト(Solanum lycopersicum)、等が挙げられる。バラ科植物としては、イチゴ(Fragaria L.)、バラ(Rosa spp.)、ナシ(Pyrus pyrifolia var. pyrifolia)、リンゴ(Malus pumila)、サクラ(Prunus subg. Cerasus)、等が挙げられる。ヒルガオ科植物としては、エンサイ(Ipomoea aquatica)、等が挙げられる。上記例示した植物は、ハダニ類に特に好まれ、個体当りの葉面積の合計が比較的大きい、という共通する特性を有する。中でも、マメ科の植物は、これらの特性に加えて、比較的短期間で所定量の葉面積の合計に達し、かつ栽培も比較的容易である、という特性をも持ち、ハダニ類(特にナミハダニ)が大量増殖しやすいため好ましい。
ハダニ増殖用植物は、植物個体(生植物)をそのままハダニ類の増殖に用いてもよく、植物個体の一部(例えば、葉片等)をハダニ類の増殖に用いてもよいが、好ましくは植物個体をそのままハダニ類の増殖に用いる。
ハダニ増殖用植物として、室内・温室等で年間を通じて栽培が容易で、かつハダニ類が増殖し易い植物を用いると、年間を通じて餌となるハダニ類を大量増殖させることができるため、より好ましい。そのような植物としては、上記例示の中では、インゲンマメ、リママメ、ササゲ、ダイズ、ラッカセイ、ツルマメ、及びエンドウが特に好ましい。例えば、インゲンマメは、室内栽培が容易である上、成長が速く、23℃前後で栽培した場合には、播種後約2週間でハダニ類の大量増殖に利用可能な大きさに生長する。なお、特に限定されないが、インゲンマメの場合、ハダニ類の大量増殖に利用可能な大きさとして草丈が30cm程度以上であることが好ましい。
栽培方法は、植物の種類によって、適宜条件を決めればよい。例えば、インゲンマメであれば、培養土入りのポットに種子を1〜10粒程度播種し、水を入れたバット内に設置し、恒温室内(23±2℃、1000〜3500ルクス、16L8D)で栽培する。播種後約2〜3週間栽培した植物体をハダニ類の大量増殖に用いればよい。
(天敵昆虫飼育用植物)
上記寄生工程及び飼育工程で用いる、天敵昆虫の飼育の場となる植物(以下、天敵昆虫飼育用植物という)は、アブラナ科、キク科及びアカザ科の野菜からなる群より選択される少なくとも1種であってポット植えされた野菜である。これらの植物は、1)室内・温室等でも年間を通じて容易に栽培できる、2)ポット植えの状態で大量のハダニ類を維持できる、3)ポット植えの状態で多数の天敵昆虫を容易に飼育できる、4)複数種の天敵昆虫の飼育に共通に利用できる、等という共通の利点がある。
上記の天敵昆虫飼育用植物は、マメ科等の植物とは異なり、ハダニ類による食害ストレスを受けても落葉することがほとんどない。そのため、多数のハダニを接種した場合でも、長期間にわたりハダニ及び天敵昆虫を維持できる。また、落葉がほとんどないため、飼育容器内を汚す虞が比較的少ない。加えて、インゲンマメ等とは異なり、葉の表面にカギ状の毛茸がないため、天敵昆虫がひっかかり死亡することがない。
なお、上記天敵昆虫飼育用植物の範疇からは、野菜すなわち食用の植物、として利用されていない野草等は除かれる。野菜は、人為的に選抜及び改良がなされた結果、例えば、栽培が容易である、比較的短期間で可食部が大きく成長する等の特性を備えるため、ポット植えでかつ飼育容器内での栽培により適する。なお、野菜のうち、ハダニ類が寄生可能な葉面積が大きいこと、及び葉が比較的軟弱なためハダニ類が好んで寄生し易いという観点では、主に葉を可食部とする葉菜がより好ましい。なお、後述するダイコン及びカブは根菜だが、初期段階での成長が専ら葉の展開に費やされるという点で葉菜に準じた利用が可能である。
アブラナ科の野菜としては、コマツナ、チンゲンサイ、ダイコン、ハクサイ、ミズナ(Brassica rapa var. lancinifolia)、カブ(Brassica rapa L var. rapa、Brassica rapa L var. glabra)、キャベツ(Brassica oleracea var. capitata)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、クレソン(Nasturtium officinale)、タカナ(Brassica juncea var. integlifolia)、ノザワナ(Brassica rapa var. hakabura)、等が挙げられる。キク科の野菜としては、レタス(Lactuca sativa)、シュンギク(Glebionis coronaria)、トレビス(Cichorium intybus var. foliosum)、等が挙げられる。アカザ科の野菜としては、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、等が挙げられる。中でも、より多くの種類の天敵昆虫と相性が良いアブラナ科の野菜が好ましく、アブラナ科の葉菜がより好ましく、コマツナ又はチンゲンサイがさらに好ましく、コマツナが特に好ましい。複数種の天敵昆虫飼育用植物を組み合わせて用いることもできる。
天敵昆虫飼育用植物はポットにおいて栽培する。ここで、ポットとは、天敵昆虫飼育用植物及び培地を収容できる栽培容器であればよく、その大きさ・形状等は特に限定されない。なお、培地の例を挙げると、水耕栽培の場合は水又は水耕用培地であり、非水耕栽培(固形状の培地を用いる栽培)では土壌又は固形状の土壌代替物である。固形状の土壌代替物として、例えば、バーミキュライト、ピートモス等が挙げられる。
栽培方法は、天敵昆虫飼育用植物の種類によって、適宜条件を決めればよい。コマツナの場合を例にとると、培養土入りのポット(直径9cm)にコマツナの種子を1〜10粒程度播種し、水を入れたバット内に設置し、恒温室内(23±2℃、8000〜10000ルクス、16L8D)で約2週間栽培後、温室内(23±3℃)でさらに約3〜4週間栽培する。この栽培法により、多数のハダニ類を接種した状態で天敵昆虫を比較的長期間にわたり維持するために必要な、丈夫な植物体を得ることができる。天敵昆虫の生存・増殖への影響及び接種した多数のハダニ類による食害ストレスを考慮すると、コマツナに関しては、上記条件の恒温室内で約2週間栽培後、上記条件の温室内で栽培する条件であれば、通常播種後約3〜8週間の植物体が天敵昆虫の飼育に好ましく、播種後5〜6週間の植物体が最も好ましい。なお、特に限定されないが、コマツナの場合、天敵昆虫の増殖に利用可能な大きさとして草丈が20cm程度以上であることが好ましい。
次に、本発明に係る飼育方法の各工程について説明する。
(増殖工程)
ハダニ類を増殖させる増殖工程について説明する。増殖工程におけるハダニ類の増殖方法は特に限定されないが、所定の大きさにまで育成した上記ハダニ増殖用植物にハダニ類を寄生させて増殖することが好ましい。
増殖工程に供するハダニ増殖用植物、及び増殖工程におけるハダニ増殖用植物は屋外で栽培してもよいが、室内・温室等の、外界と隔離した室内環境下で栽培することが好ましい。その理由は、ハダニ増殖用植物及びハダニ類を、年間を通じて安定供給することが可能となり、かつカブリダニ類が混入する等の汚染の虞を低減することが可能となるからである。
より具体的な一例では、所定の大きさにまで育成したハダニ増殖用植物の植物体にハダニ寄生植物の葉を数枚乗せ、別の恒温室内(例えば、23±2℃、16L8D)において2〜3週間隔離飼育することで、ハダニ類の次世代個体を得る。この手順を繰り返すことで、ハダニ類を効率的に大量増殖させることができる。
(寄生工程)
ポット植えの野菜(天敵昆虫飼育用植物)に上記増殖させたハダニ類を寄生させる寄生工程について説明する。寄生工程は、増殖させたハダニ類を、所定の大きさにまで育成した天敵昆虫飼育用植物上に移動させた後に、天敵昆虫飼育用植物を栽培することにより行う。ハダニ類を天敵昆虫飼育用植物上に移動させる方法は特に限定されない。
寄生工程に供する天敵昆虫飼育用植物、及び寄生工程における天敵昆虫飼育用植物は屋外で栽培してもよいが、室内・温室等の、外界と隔離した室内環境下で栽培することが好ましい。その理由は、天敵昆虫飼育用植物及びハダニ類を、年間を通じて安定供給することが可能となり、かつカブリダニ類が混入する等の汚染の虞を低減することが可能となるからである。
また、寄生工程は、下記の飼育工程と同時に行うこともできるが、天敵昆虫飼育用植物上にハダニ類を充分量寄生させた後に、飼育工程を行うことが好ましい。
より具体的な一例では、まず、所定の大きさにまで育成したポット植えの天敵昆虫飼育用植物を、水を入れたバット内に設置する。次いで、ハダニ類を大量増殖させた上記ハダニ増殖用植物の葉を、天敵昆虫飼育用植物の植物体に数枚乗せ、恒温室内(例えば、25±1℃、2000〜5000ルクス、16L8D)において1〜3日間程度維持した後に、枯れたハダニ増殖用植物の葉を除去する。これにより、多数のハダニ類(例えば、ポット当たり、雌成虫100〜400匹、全発育ステージでその5〜10倍)が寄生した状態の天敵昆虫飼育用植物を得ることができる。
(飼育工程)
ハダニ類の天敵昆虫を飼育する飼育工程について説明する。飼育工程は、ハダニ類が寄生したポット植えの天敵昆虫飼育用植物を、天敵昆虫を飼育する飼育容器内に入れて、当該飼育容器内でハダニ類の天敵昆虫を飼育する工程である。
飼育工程では、必要に応じて、天敵昆虫飼育用植物の生育に必要な水分を供給する。また、天敵昆虫飼育用植物の枯死等が生じた場合に、必要に応じて、ポット植えの天敵昆虫飼育用植物の交換を行う。なお、飼育工程は屋外で行ってもよいが、年間を通じて、天敵昆虫を安定供給可能とするためには、室内・温室等の、外界と隔離した室内環境下で行うことが好ましい。
天敵昆虫を飼育する飼育容器は、1)ポット植えの天敵昆虫飼育用植物を収容可能な内部空間を有し、2)ハダニ類及び天敵昆虫が逃げ出さないように隔離飼育することができ、3)ポット植えの天敵昆虫飼育用植物及び天敵昆虫を出し入れ可能な開閉構造を有し、かつ、4)換気可能な構造(通気構造)を少なくとも有するものであればよい。光源を飼育容器外に設置する場合には、飼育容器は透光性であることが望ましい。例えば、下記で説明する飼育容器(図1(a))を用いることができる(図2(f)、図2(i)も参照)。
なお、上記2)の条件をより確実に満たすために、上記4)の通気構造以外には、飼育容器の内外を常時連通する構造を持たないことが好ましい。また、飼育工程を連続的に行うために、飼育容器は、天敵昆虫飼育用植物を植えたポットを複数個受け入れ可能な内部空間を有することが好ましい場合がある。
飼育工程のより具体的な一例では、まず、飼育容器内に、ハダニ類が寄生した天敵昆虫飼育用植物を1〜2ポット程度設置し、天敵昆虫を導入する。天敵昆虫の導入後は飼育容器内の餌量に応じて7〜10日毎にハダニ類が寄生した天敵昆虫飼育用植物を1〜2ポット追加し、古いポットは必要に応じて適宜取り除いた上(交換した上)で数日毎に給水する。ケシハネカクシ類については、成虫、卵及び幼虫が植物上に生息するのに対して(図2(g))、蛹は土壌中で繭を形成し発育する必要があるため(図2(h))、飼育容器の底に湿らせたバーミキュライト等を5cm程度敷き(図2(i))、天敵昆虫飼育用植物ポットを設置する。なお、バーミキュライトの上にポットを直接設置すると、ポットの重みでバーミキュライト内のケシハネカクシ蛹に圧力がかかり死亡するため、両者の間に円形の網等(圧力分散手段)を設置し、圧力を分散させた方が好ましい。また、ハダニタマバエについては、幼虫はハダニ捕食性であるのに対して成虫は花蜜等を摂食するため、飼育容器の内部壁面等に蜂蜜液等を付着させ(図2(j))、成虫の餌とすることが好ましい。例えば、後述の飼育容器において、上筒部1又はメッシュ8の一部に蜂蜜液等を塗布すればよい(図2(j))。あるいは、メッシュ8の上に蜂蜜液等を染み込ませた脱脂綿等を載せてもよい(図2(k))。
天敵昆虫の次世代成虫が多数出現したら(通常、天敵導入から約1〜2ヶ月の期間中)、一部を収集し、新たな飼育容器内で飼育する。以上の手順を繰り返すことで、大きな労力をかけることなく、上記の天敵昆虫を効率的に累代飼育することができる。
上記の方法で飼育された天敵昆虫は、ハダニ類の生物的防除等に用いることができる。特に、カブリダニ類による生物的防除が十分に効果を挙げていないナシ、ミカン、リンゴ等の果樹において、効果的に用いることができる。これにより、農薬に依存しない、消費者に対して安心安全な農作物を提供することに貢献できる。
〔2.飼育容器〕
本発明に係る飼育容器は、上記飼育方法に用いる飼育容器であって、底面及び上面を有する筒型容器と、上記上面に形成された開口部を覆う、目の大きさが0.01mm以上で0.1mm以下の範囲内のメッシュと、を備え、上記筒型容器は、上記底面を有する筒型の下部と、上記上面を有する筒型の上部とが着脱可能に継ぎ合わされてなるものであり、上記上部は、上記継ぎ合わせにおいて上記下部の内面と当接する係合用突起を備え、上記上部は透光性である。
以下、図1及び図2の(i)を参照して、本発明に係る飼育容器の一例についてより具体的に説明する。図1に示す飼育容器10は、円形の底面4及び円形の上面3を有する円筒型容器である。飼育容器10は、一端側が開口し他端側に底面4を有する筒型の下筒部(下部)2と、一端側が開口し他端側に上面3を有する筒型の上筒部(上部)1とを、当該一端側同士を継ぎ合わせた構造である。上筒部1と下筒部2との継ぎ合わせは機械的なものであり、必要に応じて両者を取り外し、再び取り付けることも可能である。なお、図1では、説明の便宜上、上筒部1と下筒部2とを継ぎ合わせる前、又は両者を取り外した後の状態を示している。図2の(i)は上筒部1と下筒部2とを継ぎ合わせた状態を示している。
上面3には、換気用として、所定の大きさの開口(開口部)3aが形成されている。開口3aはメッシュ8で覆われており、上筒部1と下筒部2とが継ぎ合わされた状態では、飼育容器10の内部空間と外部とはメッシュ8の部分のみで連通している。メッシュ8の網目の大きさは0.01mm以上で0.1mm以下の範囲内である。これにより、換気の機能を充分果たしつつ、極めて微小な天敵昆虫(成虫で体長1〜3mm)及びハダニ類(成虫で体長約0.5mm)を隔離飼育することができる。なお、メッシュ8の材質に特に限定はなく、テトロンゴース製のプランクトンネット等を用いることができる。
下筒部2の側面9bには、開口7が形成されている。これにより、必要に応じて、上筒部1と下筒部2との開閉を行うことなく、ハダニ類及び天敵昆虫を導入(例えば、筆などに乗せて天敵昆虫飼育用植物上に移す)又は回収する(例えば、吸引装置などを使って吸引する)ことができる。開口7の位置、個数、大きさ、形状等は、飼育する天敵昆虫又は天敵昆虫飼育用植物の種類等によって、適宜決めればよい。開口7は、上筒部1の側面9aにあってもよく、また、必ずしも設ける必要はない。開口7の大きさは、直径5mm〜30mmが好ましい。天敵昆虫及びハダニ類が飼育容器10外に逃げ出すことを防止するために、開口7は栓等で塞ぎ、必要なときにのみ栓等を外すようにする。
また、図1中の(b)に示すように、下筒部2の上記一端側には、当該下筒部2の内側面を構成する円筒の半径が拡大するように段差部5が設けられている。一方、上筒部1の上記一端側には、当該上筒部1の外側面を構成する円筒の半径が縮小するように段差部(係合用突起)6が設けられている。下筒部2と上筒部1とを継ぎ合わせたとき、段差部5の内側面(下部の内面)5aと段差部6の外側面とが互いに当接して、段差部5と段差部6とがシームレスな平滑面を形成するように互いにはめ合わされる。このはめ合わせ構造を備えることで、上筒部1と下筒部2との継ぎ目から、体長約0.5mm〜3mmの微小生物である天敵昆虫及びハダニ類が容器外に逃げ出さないようになっている。
また、少なくとも上筒部1は透光性の材料から構成されており、好ましくは上筒部1及び下筒部2が何れも透光性の材料から構成される。これにより、植物の光合成に必要な波長の外部光(例えば可視光の一部又は全部)を飼育容器10内に取り込むことができる。透光性の材料は、例えば、アクリル等の透光性の樹脂、透光性セラミックス、ガラス等が挙げられる。中でもアクリル樹脂、ガラス等、透明なものは飼育容器内の様子が観察できるため好ましい。アクリル樹脂は軽量であり、扱いやすいため、より好ましい。
飼育容器10内に、天敵及び/又はポット植えの上記天敵昆虫飼育用植物を格納する場合には、上筒部1の一部と下筒部2の一部との当接を維持した状態で、段差部5と段差部6とのはめ合い構造を支点にして上筒部1を上方に傾ける。このとき、上筒部1の段差部6の外側面は、段差部5の内側面により動きを規制されるため、上筒部1と下筒部2とがずれることなく開閉を行うことができる。飼育容器10内から天敵及び/又はポット植えの上記天敵昆虫飼育用植物を取り出す場合も同様である。
なお、飼育容器10の形状は筒型であれば特に限定されず、例えば、四角柱状、楕円柱状等であってもよい。飼育容器10の高さは、ポット植えの天敵昆虫飼育用植物の種類によって適宜決めればよいが、例えば、30cm〜100cmの範囲内であり、好ましくは、30cm〜50cmの範囲内である。上筒部1と下筒部2との高さの比率は、特に限定はないが、下筒部2の高さが、15cm〜25cmの範囲内であればポット植えの天敵昆虫飼育用植物の出し入れがしやすくなり、好ましい。また、上筒部1と下筒部2とがずれることなく開閉を行うという観点では、上記段差部5及び段差部6は連続したリング状に形成する必要はないが、天敵昆虫及びハダニ類の隔離飼育という観点では、上記段差部5及び段差部6は連続したリング状に形成することが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
はじめに実施例1〜8で共通して用いた材料及び方法について纏めて説明する。
<ハダニ増殖用植物の栽培とハダニ類の大量増殖>
園芸用培土(クレハ園芸培土)を入れた4個の黒ポット(直径9cm)にインゲンマメ種子(品種:ナガウズラマメ)をポット当たり3〜5粒播種し、水を入れたバット(30×22×4.5cm)内に設置し、恒温室内(23±2℃、1000〜3500ルクス、16L8D)で栽培した。播種後約2〜3週間のインゲンマメ植物体にナミハダニ寄生インゲンマメ葉を数枚乗せ、別の恒温室内(23±2℃、1000〜3500ルクス、16L8D)において2〜3週間隔離飼育することで次世代個体を得た(図2(a))。この手順を繰り返して、ナミハダニを効率的に大量飼育した(図2(b))。
<天敵昆虫飼育用植物の栽培>
園芸用培土(クレハ園芸培土)を入れた黒ポット(直径9cm)に、コマツナ(品種:楽天、ポット当たり1〜4粒)、チンゲンサイ(品種:青帝チンゲンサイ、青軸パクチョイ、ポット当たり1〜3粒)、ダイコン(品種:関白、ポット当たり1〜3粒)、ハクサイ(品種:耐病六十日、ポット当たり1〜3粒)、ホウレンソウ(品種:ソロモン、ポット当たり1〜2粒)、又はレタス(品種:サニーレタス、ポット当たり1〜2粒)の種子を播種し、水を入れたバット内に設置し、恒温室内(23±2℃、8000〜10000ルクス、16L8D)で約2週間栽培後、温室内(23±3℃)でさらに約3〜4週間栽培した。
<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>
上記<天敵昆虫飼育用植物の栽培>の方法で得たポット植えのコマツナ(播種後5〜6週間)を水を入れたバット内に設置し、コマツナ植物体にナミハダニ寄生インゲンマメ葉を数枚乗せ、恒温室内(25±1℃、2000〜5000ルクス、16L8D)において1〜3日間維持した後に、枯れたインゲンマメ葉を除去することで、多数のナミハダニ(ポット当たり、雌成虫100〜400匹、全発育ステージでその5〜10倍)が寄生した状態のポット植えのコマツナ(以下、「ハダニ寄生コマツナ」という)を得た(図2(c))。なお、ナミハダニ寄生インゲンマメ葉は、上記<ハダニ増殖用植物の栽培とハダニ類の大量増殖>の記載にしたがって得た。そして、後述する天敵飼育容器内にハダニ寄生コマツナを1〜2ポット設置した。チンゲンサイ、ダイコン、ハクサイ、ホウレンソウ及びレタスについても、コマツナと同様の手順で行った。
<天敵昆虫の飼育>
天敵昆虫(キアシクロヒメテントウ(図2(d))、ハダニアザミウマ(図2(e))、ヒメハダニカブリケシハネカクシ、ハダニカブリケシハネカクシ、又はハダニタマバエ(図2(j))を、上記ハダニ寄生コマツナを設置した天敵飼育容器内に導入して、飼育した。天敵飼育容器として、図1に示す飼育容器10を用いた。飼育容器10は、アクリル樹脂製で、下筒部2の外寸高さが約180mm、上筒部1の外寸高さが約210mm、上面3及び底面4は何れも直径約300mmの円盤状で、開口3aは約200mm×150mmの角穴である。また、メッシュ8としてテトロンゴース製のプランクトンネット(東レ スターナイト ♯6000、目の大きさは0.04mm)を用いた。なお、飼育容器10の上面3、底面4、側面9a・9bの厚みはそれぞれ約5mmである。また、段差部5・6の高さはそれぞれ約5mmであり、厚みは約2.5mmである。開口7は下筒部2の上辺から20mm下に位置し、直径8.2mmの円穴である。
天敵昆虫導入後は天敵飼育容器内の餌量に応じて7〜10日毎にハダニ寄生コマツナを1〜2ポット追加し、数日毎にコマツナに給水した(図2(f))。なお、古いポットは、追加したポットの数量に応じて適宜取り除いた(すなわち新旧のポットを交換した)。ケシハネカクシ類については、成虫(図2(g))、卵及び幼虫がコマツナポット上に生息するのに対して、蛹(図2(h))は土壌中で繭を形成し発育する必要があるため、天敵飼育容器の底に湿らせたバーミキュライトを5cm程度敷き、ハダニ寄生コマツナを設置した(図2(i))。ハダニタマバエについては、幼虫はハダニ捕食性であるのに対して成虫は花蜜等を摂食するため、50%蜂蜜液を染み込ませた脱脂綿をメッシュ8上に設置(図2(k))するか、メッシュ8又は飼育容器10の上筒部1の内部壁面等に蜂蜜液等を塗布(図2(j))し、成虫の餌とした。ハダニ寄生コマツナの追加・交換及び天敵昆虫の導入・回収等は、天敵飼育容器の上段の容器を傾けた状態で行った。天敵昆虫導入から約2週間〜1ヶ月の期間中に天敵昆虫の次世代成虫が多数出現するため、一部を回収し、新たな天敵飼育容器内で増殖させた。以上の手順を繰り返して、天敵昆虫を飼育した。チンゲンサイ、ダイコン、ハクサイ、ホウレンソウ及びレタスについても、コマツナと同様の手順で行った。
より具体的な方法・条件は、下記の実施例の中で個々に説明する。
<実施例1:ハダニ寄生コマツナを用いたテントウムシの累代飼育>
野外のクズ葉上に生息するキアシクロヒメテントウ成虫・幼虫を約20匹採集し、上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生コマツナを設置した天敵飼育容器を用いて、恒温室内(25±1℃、16L8D)で4ヶ月間にわたり累代飼育した。累代飼育の方法は、上記<天敵昆虫の飼育>の方法に従った。本条件下では約1ヶ月毎にキアシクロヒメテントウの次世代成虫を得ることができたため、1ヶ月毎に容器内のすべてのテントウムシ成虫を回収し、新たな天敵飼育容器内に導入した(容器当たり成虫数は最大で200匹)。
その際のキアシクロヒメテントウの増殖パターンを図3に示す。4ヶ月後(4世代飼育)には、導入時の80倍にあたる約1600匹のキアシクロヒメテントウ成虫を得ることができた。本試験の調査対象外である他の発育ステージ(卵・幼虫・蛹)を含めると、さらに多くのキアシクロヒメテントウを飼育できたことを示唆している。
<実施例2:ハダニ寄生コマツナを用いた際のテントウムシの増殖率>
本試験では、キアシクロヒメテントウ成虫を一定期間産卵させた飼育容器当たりの次世代成虫数を指標に増殖率を評価した。キアシクロヒメテントウ成虫(200匹、雌雄はほぼ同数)を、上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生コマツナを設置した天敵飼育容器内に導入し、7日間産卵させた後で導入成虫をすべて除去後、上記<天敵昆虫の飼育>の方法に従って飼育試験を開始した。試験開始後は、孵化した幼虫にハダニ寄生コマツナを適宜与えて飼育し、羽化成虫数を調査した(反復は1回)。その他の飼育条件・方法等は実施例1と同様である。
その結果を図4に示す。試験開始後15〜21日の期間中に合計420匹の次世代成虫を得ることができ、ハダニ寄生コマツナによる本天敵昆虫の増殖率は高いことが示唆された。
<実施例3:ハダニ寄生コマツナを用いた際のテントウムシの飼育効率>
本試験では、キアシクロヒメテントウの幼虫が成虫にまで発育できる割合を評価指標として、テントウムシの飼育効率を評価した。上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生コマツナにキアシクロヒメテントウ幼虫(1〜2齢、400匹)を小筆で接種し、天敵飼育容器に設置した。そして、上記<天敵昆虫の飼育>の方法に従って、ハダニ寄生コマツナを適宜交換しながら飼育し、羽化成虫数を調査した(反復は2回)。なお、ハダニ寄生コマツナは、天敵飼育容器内で、水を入れたバット(直径11cm)に設置されている。その他の飼育条件・方法等は実施例1と同様である。
その結果を図5に示す。試験は2反復実施したが、いずれの場合も試験開始後8〜24日の期間中に接種数の88.8%(各355匹)の羽化成虫を得た。この結果は、ハダニ寄生コマツナが、キアシクロヒメテントウ幼虫及び蛹の発育に好適であることを示唆している。
<実施例4:各種ポット植え植物を用いたテントウムシの飼育状況>
上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得た各種ハダニ寄生植物体(コマツナ、ダイコン、ホウレンソウ及びレタス)を天敵飼育容器に設置した。次いで、キアシクロヒメテントウ雌成虫を天敵飼育容器当たり3匹導入し、上記<天敵昆虫の飼育>の方法に従って、導入時と同様の、ハダニ類が寄生した各種ハダニ寄生植物体を適宜交換しながら、天敵昆虫の飼育を行った。そして、天敵昆虫の飼育を開始してから1ヶ月後の次世代天敵数を比較した。
また、上記コマツナ、及びダイコンに代えて、参考例としてのインゲンマメ、及びリママメについても、この方法に準じてキアシクロヒメテントウを飼育した。インゲンマメ、及びリママメ(品種:Sieva)は、上記<ハダニ増殖用植物の栽培とハダニ類の大量増殖>の欄の記載に従い約2〜3週間栽培した後に、上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の欄の記載に準じてナミハダニを寄生させたものである。
その結果を表1に示す。コマツナ、ダイコン、ホウレンソウ及びレタスを用いた試験(反復は各1回)では、1ヶ月後には次世代成虫が35〜94匹、その他の個体も約110匹回収され、成虫数では導入時の12〜30倍程度にまで増加した。これらの結果は、ポット植えのアブラナ科、アカザ科及びキク科の野菜にナミハダニを接種することでキアシクロヒメテントウを容易に増殖できることを示唆している。
これに対して、インゲンマメ及びリママメを用いた試験(反復は各4回)では天敵昆虫が全滅、又はほとんど増殖しなかった。これは、インゲンマメ及びリママメにナミハダニを多数接種すると植物が枯死してしまい、天敵飼育容器内でカビが生えやすいこと、さらには両者の葉上に密生するカギ状の毛茸に天敵昆虫(特に幼虫)がひっかかり、死亡すること等の理由によるものであった。以上の結果は、従来の天敵昆虫の飼育に用いられてきた、ハダニ類と植物との組み合わせではキアシクロヒメテントウを十分に増殖できないことを示唆している。
<参考例1:従来の手法・材料を用いたハダニアザミウマ飼育法の問題点>
本試験では、従来の飼育法における問題点を検討した。インゲンマメ葉片(5×5cm、葉表又は葉裏)を丸形スチロール容器(直径9cm、高さ4.5cm)内の湿らせた脱脂綿上(7×7cm)に設置し、ナミハダニ雌成虫100匹を2日間接種後、試験に用いた。ハダニアザミウマ雌成虫10匹をハダニ寄生インゲンマメ葉片上に接種し、3日間の生存率の推移を調査した(反復は、葉表・葉裏で各20回)。
その結果を図6に示す。インゲンマメ葉片の葉表における生存率は、試験開始1日後には79.3%で、2日後には70%、3日後には52.7%に減少した。死亡要因としては、葉片上に密生するカギ状の毛茸にひっかかり死亡したケースと、脱脂綿上で水死したケースが観察された。インゲンマメ葉片の葉裏における生存率は、試験開始1日後には52.7%と低く、2日後には34%、3日後には24%と急激に減少した。
クズ葉片(直径8cm、葉表又は葉裏)(図7(a))についても、成虫10匹を接種し、同様の手順・条件により調査した(反復は、葉表・葉裏で各5回)。
その結果を図7(b)に示す。クズ葉片の葉表における生存率は、試験開始3日後には30%で、脱脂綿上での水死個体の割合は70%であった。クズ葉片の葉裏における生存率は、試験開始3日後には40%で、水死個体の割合は60%であった。いずれの場合もひっかかりに伴う死亡は観察されなかった。
以上の結果は、従来の材料及び方法を用いた際には、葉片の種類及び葉の表裏に関係なく、ハダニアザミウマ雌成虫が頻繁に死亡するために、ハダニアザミウマを十分に増殖できないことを示唆している。
<実施例5:ポット植えのコマツナ及びその他の植物体を用いたハダニアザミウマの飼育>
上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生コマツナ(播種後5〜6週間の植物体にハダニ類を寄生させたもの、以下「播種後5〜6週間」という)を、天敵飼育容器内に1ポット設置後、ハダニアザミウマ雌成虫を5匹又は20匹導入した(反復は各4回)。そして、上記<天敵昆虫の飼育>の方法に従って、ハダニ寄生コマツナを適宜追加しながら天敵昆虫の飼育を行い、天敵昆虫導入後1ヶ月の次世代数を発育ステージ毎に調査した。各試験の手順及び条件等は実施例1と同様とした。
また、播種後の経過日数が異なるハダニ寄生コマツナ(播種後3〜4週間、又は播種後7〜8週間の植物体にハダニ類を寄生させたもの、以下「播種後3〜4週間」又は「播種後7〜8週間」という)を用いた以外は同様の条件で、ハダニアザミウマ雌成虫を5匹導入した試験も行った(反復は各2回)。また、播種後7〜8週間のハダニ寄生コマツナに、ハダニアザミウマ雌成虫を20匹導入した試験も行った(反復は2回)。播種後3〜4週間、又は播種後7〜8週間のハダニ寄生コマツナは、上記<天敵昆虫飼育用植物の栽培>の方法において、恒温室内(23±2℃、8000〜10000ルクス、16L8D)で約2週間栽培後、温室内(23±3℃)でそれぞれさらに約1〜2週間、又は5〜6週間栽培したポット植えの植物体に、上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法でハダニ類を寄生させたものである。
さらに、上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生ダイコン(播種後5〜6週間)にハダニアザミウマ雌成虫4匹を導入した試験(反復は1回)、ハダニ寄生チンゲンサイ(播種後5〜6週間)に雌成虫5匹を導入した試験(反復は3回)、ハダニ寄生ハクサイ(播種後5〜6週間)に雌成虫4匹を導入した試験(反復は1回)、ハダニ寄生ホウレンソウ(播種後5〜6週間)に雌成虫4匹を導入した試験(反復は1回)、及びハダニ寄生レタス(播種後5〜6週間)に雌成虫4匹を導入した試験(反復は1回)も同様に行った。
さらに、比較として、上記実施例4と同様の方法で得たハダニ寄生リママメ(播種後2〜3週間)にハダニアザミウマ雌成虫5匹を導入した試験(反復は1回)も同様に行った。
その結果を表2に示す。ハダニ寄生コマツナ(播種後5〜6週間)に天敵昆虫を5匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が169〜229匹、その他の個体も約200〜500匹回収され、雌成虫数では導入時の34〜46倍程度にまで増加した。ハダニ寄生コマツナ(播種後5〜6週間)に天敵昆虫を20匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が394〜564匹、その他の個体も約100〜2000匹回収され、雌成虫数では導入時の20〜28倍程度に増加した。
一方、ハダニ寄生コマツナ(播種後3〜4週間)に天敵昆虫を5匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が70〜88匹、その他の個体も約140〜370匹回収され、雌成虫数では導入時の14〜18倍程度にまで増加した。また、ハダニ寄生コマツナ(播種後7〜8週間)に天敵昆虫を5匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が64匹、その他の個体も約60〜100匹回収され、雌成虫数では導入時の13倍程度にまで増加した。ハダニ寄生コマツナ(播種後7〜8週間)に天敵昆虫を20匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が122〜172匹、その他の個体は約30〜40匹回収され、雌成虫数では導入時の6〜9倍程度に増加した。
以上の結果は、播種後3〜8週間のポット植えのコマツナにナミハダニを接種することでハダニアザミウマを容易に増殖できること、さらに播種後5〜6週間のコマツナにナミハダニを接種することが最も好ましいことを示唆している。その理由は、播種後5〜6週間のコマツナは、多数のナミハダニを接種しても食害ストレスにより耐性を示し、かつ古い葉の劣化もより起こりにくいためと推定される。
ハダニ寄生ダイコンにハダニアザミウマ雌成虫4匹を導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が174匹、その他の個体も約140匹回収され、雌成虫数では導入時の約43倍に増加した。ハダニ寄生チンゲンサイに雌成虫5匹を導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が91〜224匹、その他の個体が約70〜380匹回収され、雌成虫数では導入時の18〜45倍程度にまで増加した。ハダニ寄生ハクサイに雌成虫4匹を導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が76匹、その他の個体が約150匹回収され、雌成虫数では導入時の19倍に増加した。ハダニ寄生ホウレンソウに雌成虫4匹を導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が67匹回収され、雌成虫数では導入時の17倍に増加した。ハダニ寄生レタスに雌成虫4匹を導入した試験区では、1ヶ月後には次世代雌成虫が39匹回収され、雌成虫数では導入時の10倍に増加した。以上の結果は、ポット植えのアブラナ科、アカザ科及びキク科の野菜にナミハダニを接種することでハダニアザミウマを容易に増殖できることを示唆している。
比較対象であるポット植えのハダニ寄生リママメにハダニアザミウマ雌成虫5匹を導入した試験では、1ヶ月後の次世代雌成虫で14匹しか回収されず、ほとんど増殖しなかった。このことは、従来の天敵昆虫の飼育に用いられてきた、ハダニ類と植物との組み合わせではハダニアザミウマを十分に増殖できないことを示唆している。
<実施例6:ハダニ寄生コマツナ及びその他の植物体を用いたケシハネカクシ類の飼育>
上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生コマツナ(播種後5〜6週間)を用いて、2種類のケシハネカクシを対象に飼育試験を実施した。実験条件及び手順は実施例1と同様であるが、上述のとおり、ケシハネカクシの蛹は土壌中で発育するため、天敵飼育容器の底に湿らせたバーミキュライトを敷いた。ヒメハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を天敵飼育容器当たり4匹導入した(反復は2回)。同様に、近縁種であるハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を天敵飼育容器当たり4匹導入した(反復は2回)。また、上記実施例4と同様の方法で得たハダニ寄生ホウレンソウ(播種後5〜6週間)、及びハダニ寄生レタス(播種後5〜6週間)にヒメハダニカブリケシハネカクシ又はハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を天敵飼育容器当たり4匹導入した(反復は各1回)。さらに、比較として、上記実施例4と同様の方法で得たハダニ寄生リママメにヒメハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を天敵飼育容器当たり4匹導入した(反復は1回)。
その結果を表3に示す。ハダニ寄生コマツナにヒメハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を導入した試験区では、導入1ヶ月後には次世代成虫が162〜167匹、幼虫が101匹回収され、成虫数で導入時の約40倍に増加した。近縁種であるハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を導入した試験区では、導入1ヶ月後には次世代成虫が109〜141匹回収され、成虫数で導入時の約27〜35倍に増加した。また、ハダニ寄生ホウレンソウにヒメハダニカブリケシハネカクシ又はハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を導入した試験区では、導入1ヶ月後には次世代成虫が67〜104匹回収され、成虫数で導入時の17〜26倍程度に増加した。ハダニ寄生レタスにヒメハダニカブリケシハネカクシ雌成虫を導入した試験区では、導入1ヶ月後には次世代成虫が89匹回収され、成虫数で導入時の22倍程度に増加した。これらの結果は、ポット植えのアブラナ科、アカザ科及びキク科の野菜にナミハダニを接種することでケシハネカクシ類を容易に増殖できることを示唆している。
比較対象であるハダニ寄生リママメを用いた試験区では、ヒメハダニカブリケシハネカクシ雌成虫導入1ヶ月後に70匹の成虫を回収したが、リママメ葉上に密生するカギ状の毛茸に引っかかり死亡した幼虫も多数観察された。また、成虫の大半は植物体上に定着せずに飼育容器の内壁部分に分布し、植物体から脱出したハダニを餌として生息していた。以上の結果は、従来の天敵昆虫の飼育に用いられてきた、ハダニ類と植物との組み合わせでは、ケシハネカクシ類の幼虫が十分に発育できず、成虫も植物体上に十分に定着しないため、ケシハネカクシ類を十分に増殖できないことを示唆している。
<実施例7:ハダニ寄生コマツナを用いたハダニタマバエの飼育>
上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生コマツナ(播種後5〜6週間)を、天敵飼育容器(上述のとおり、50%蜂蜜液を染み込ませた脱脂綿をメッシュ上に設置、又は飼育容器上筒部の内部壁面等に蜂蜜液を塗布)内に1ポット設置後、ハダニタマバエ幼虫15匹(反復は4回)又は成虫50匹(反復は2回)を導入した。そして、上記<天敵昆虫の飼育>の方法に従って、ハダニ寄生コマツナを適宜追加しながら天敵昆虫の飼育を行い、天敵昆虫導入から1ヶ月後の次世代成虫数を調査した。各試験の手順及び条件等は実施例1と同様とした。
その結果を表4に示す。ハダニ寄生コマツナにハダニタマバエ幼虫を15匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代成虫数が51〜88匹回収され、成虫数では導入時の3〜6倍程度に増加した。ハダニ寄生コマツナにハダニタマバエ成虫を50匹導入した試験区では、1ヶ月後には次世代成虫数が224〜245匹回収され、成虫数では導入時の4〜5倍程度に増加した。また、成虫の餌である蜂蜜液の供試方法はハダニタマバエの増殖率には影響しなかった。
以上の結果は、播種後5〜6週間のポット植えのコマツナにナミハダニを接種し、成虫の餌である蜂蜜液等を与えることで、ハダニタマバエを容易に増殖できることを示唆している。
<実施例8:ハダニ寄生ホウレンソウを用いたハダニタマバエの飼育>
上記<天敵昆虫飼育用植物へのハダニ類の寄生>の方法で得たハダニ寄生ホウレンソウ(播種後4〜6週間)を、実施例7と同様に用意した天敵飼育容器内に1ポット設置後、ハダニタマバエ成虫30匹を導入した(反復は2回)。そして、天敵昆虫導入から2週間後の次世代成虫数を調査した。各試験の手順及び条件等は実施例1と同様とした。
その結果を表5に示す。ハダニ寄生ホウレンソウ(播種後4〜6週間)にハダニタマバエ成虫30匹を導入した試験区では、2週間後には次世代成虫数が71〜97匹回収され、成虫数では導入時の3倍程度に増加した。また、成虫の餌である蜂蜜液の供試方法はハダニタマバエの増殖率には影響しなかった。
以上の結果は、播種後4〜6週間のポット植えのホウレンソウにナミハダニを接種し、成虫の餌である蜂蜜液等を与えることで、ハダニタマバエを容易に増殖できることを示唆している。
本発明によれば、ハダニ類の天敵昆虫を効率的かつ大量に飼育することができる。
1 ・・・上筒部(上部)
2 ・・・下筒部(下部)
3 ・・・上面
3a ・・開口(開口部)
4 ・・・底面
5a ・・内側面(下部の内面)
6 ・・・段差部(係合用突起)
7 ・・・開口
8 ・・・メッシュ
9a ・・側面(上筒部の側面)
9b ・・側面(下筒部の側面)
10 ・・飼育容器(飼育容器・筒型容器)

Claims (12)

  1. ハダニ類を増殖させる増殖工程と、
    アブラナ科、キク科及びアカザ科の野菜からなる群より選択される少なくとも1種の野菜であってポット植えされた野菜に、上記増殖させたハダニ類を寄生させる寄生工程と、
    上記ハダニ類が寄生したポット植えの野菜を飼育容器に入れて、当該飼育容器内でハダニ類の天敵昆虫を飼育する飼育工程とを含むことを特徴とする、天敵昆虫の飼育方法。
  2. 上記野菜が、アブラナ科の野菜であることを特徴とする、請求項1に記載の飼育方法。
  3. 上記野菜が、コマツナであることを特徴とする、請求項2に記載の飼育方法。
  4. 上記増殖工程において、マメ科、アブラナ科、ウリ科、ナス科、バラ科及びヒルガオ科の植物からなる群より選択される少なくとも1種の植物を用いて上記ハダニ類を増殖させることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の飼育方法。
  5. 上記増殖工程において、マメ科の植物を用いて上記ハダニ類を増殖させることを特徴とする、請求項4に記載の飼育方法。
  6. 上記増殖工程において、インゲンマメを用いて上記ハダニ類を増殖させることを特徴とする、請求項5に記載の飼育方法。
  7. 上記増殖工程において、上記植物は室内環境下で栽培されることを特徴とする、請求項4から6の何れか1項に記載の飼育方法。
  8. 上記ハダニ類が、ナミハダニ属に属するダニであることを特徴とする、請求項1から7の何れか1項に記載の飼育方法。
  9. 上記ハダニ類が、ナミハダニであることを特徴とする、請求項8に記載の飼育方法。
  10. 上記天敵昆虫が、ケシハネカクシ類、テントウムシ類、アザミウマ類及びタマバエ類からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載の飼育方法。
  11. 上記天敵昆虫が、ヒメハダニカブリケシハネカクシ、ハダニカブリケシハネカクシ、キアシクロヒメテントウ、ハダニアザミウマ又はハダニタマバエであることを特徴とする、請求項10に記載の飼育方法。
  12. 請求項1〜11の何れか1項に記載の飼育方法に用いる飼育容器であって、
    底面及び上面を有する筒型容器と、
    上記上面に形成された開口部を覆う、目の大きさが0.01mm以上で0.1mm以下の範囲内のメッシュと、を備え、
    上記筒型容器は、
    上記底面を有する筒型の下部と、上記上面を有する筒型の上部とが、着脱可能に継ぎ合わされてなるものであり、
    上記上部は、上記継ぎ合わせにおいて上記下部の内面と当接する係合用突起を備え、
    上記上部は透光性である、ことを特徴とする飼育容器。
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