JP2013251070A - 多孔質電極基材、その製造方法 - Google Patents

多孔質電極基材、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 厚み精度、ガス透気度、導電性が高く、十分なハンドリング性を持ち、製造コストが低く、かつ厚みムラやうねりの原因となる炭素化時の重量減少の少ない多孔質電極基材およびその製造方法が求められていた。
【解決手段】 炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)が分散した前駆体シートを製造する工程(1)、および
該前駆体シートを炭素化処理する工程(2)
を含み、工程(2)による該前駆体シートの重量減少率が65%以下である多孔質電極基材の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池に用いることができる多孔質電極基材及びその製造方法。
燃料電池に設置されるガス拡散電極基材は、従来機械的強度を高くするために、炭素短繊維を抄造後、有機高分子で結着させ、これを高温で焼成して有機高分子を炭素化させたペーパー状の炭素/炭素複合体からなる多孔質電極基材を用いていた(特許文献1参照)。
また、前記基材の導電率の向上を目的として、炭素化可能な樹脂に炭素粉末を添加して得られた基材も提案されている(特許文献2参照)。
更に、低コスト化を目的として、酸化短繊維を抄造後、これを高温で焼成して酸化短繊維を炭素化させた多孔質電極基材が提案されている(特許文献3参照)。
また、複数の炭素繊維を含んで成るマット;およびその炭素繊維マットに組み込まれた複数のアクリルパルプ繊維を含んでなり、このアクリルパルプ繊維は、炭素繊維マットに組み込まれた後に硬化され炭化される燃料電池用ガス拡散層が提案されている(特許文献4参照)。
また、低コスト化を目的として、接触角が80°以上の撥水性物質と導電性物質からなるフィブリル部を有する分割繊維によって炭素短繊維間を結着する炭素化しない多孔質電極基材の製造方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかし、特許文献1に開示されている多孔質電極基材(多孔質炭素電極基材)は、十分なガス透気度および導電性を有しているものの、製造工程が複雑であるため製造コストが高くなる傾向があった。
特許文献2に開示されている多孔質電極基材は、機械的強度、表面平滑性、ガス透気度を有しており、さらに炭素粉末を添加することにより導電性が高くなっているものの、製造工程が複雑で製造コストが高くなる傾向があった。
特許文献3に開示されている炭素繊維シート(多孔質電極基材)の製法は、低コスト化は可能であるものの、焼成時の収縮が大きい場合があり、得られる多孔質電極基材の厚みムラやシートのうねりが大きい場合があった。
特許文献4に開示されている多孔質電極基材は、低コスト化は可能であるが、用いられているアクリルパルプは炭素化時の炭素化率が低い場合があり、ハンドリング性を高めるためには、多くのアクリルパルプを添加することが求められた。
特許文献5に開示されている多孔質電極基材は炭素化工程がなく大きな低コスト化が可能あるが、炭素短繊維間を結着する撥水性物質と導電性物質からなるフィブリル部を有する分割繊維の導電性が十分でない場合があり、多孔質電極基材の導電性が低い場合があった。
国際公開第2001/056103号パンフレット 特開2006−143478号公報 国際公開第2002/042534号パンフレット 特開2007−273466号公報 特開2004−363018号公報
本発明は、上記のような点を克服し、厚み精度、ガス透気度、導電性が高く、十分なハンドリング性を持ち、製造コストが低く、かつ厚みムラやうねりの原因となる炭素化時の重量減少の少ない多孔質電極基材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題が、以下の発明[1]〜[9]によって解決されることを見出した。
[1] 炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)が分散した前駆体シートを製造する工程(1)、および
該前駆体シートを炭素化処理する工程(2)
を含み、工程(2)による該前駆体シートの重量減少率が65%以下である多孔質電極基材の製造方法。
[2] 前記炭素前駆体繊維(b)が、フィブリル状炭素前駆体繊維である上記[1]に記載の製造方法。
[3] 前記炭素前駆体繊維(b)が、炭素粉を含有する炭素前駆体繊維である上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記炭素前駆体繊維(b)が、アクリロニトリル単位を95質量%以上含有するアクリロニトリル系重合体を含む炭素前駆体繊維である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記工程(1)と前記工程(2)の間に、前記前駆体シートを交絡処理する工程(3)を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記工程(2)の前に、前記前駆体シートを加熱加圧する工程(4)を含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記工程(4)の前に、前駆体シートに炭素化可能な樹脂(d)を含浸させる工程(5)を含む上記[6]に記載の製造方法。
[8] 前記工程(4)と前記工程(2)の間に、加熱加圧された前記前駆体シートを酸化処理する工程(6)を含む上記[6]または[7]に記載の製造方法。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の製造方法で得られる多孔質電極基材。
本発明によれば、厚み精度、ガス透気度、導電性が高く、十分なハンドリング性を持ち、製造コストが低く、かつ炭素化時の炭素化率が高い多孔質電極基材およびその製造方法を提供することができる。
フィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維を製造するために用いることのできるノズルの一例を示す模式的断面図である。
<多孔質電極基材>
本発明の製造方法により得られる多孔質電極基材は、炭素短繊維(A)同士が、炭素前駆体繊維(b)と炭素粉(C)に由来する炭素(B)によって接合された構造を有する。この多孔質電極基材は、分散された炭素短繊維(A)と、炭素(B)とからなることができる。本発明の多孔質電極基材は、固体高分子型燃料電池に用いる固体高分子型燃料電池用多孔質電極基材として使用することができる。
なお、ハンドリング性や導電性の観点から、炭素(B)は、網目状の炭素によって接合された構造を有することが好ましい。さらに、ハンドリング性や導電性の観点から、分散された炭素短繊維(A)同士が、3次元網目状炭素によって接合され、炭素短繊維(A)及び炭素(B)が互いに絡まり合った構造を有する多孔質電極基材がより好ましい。
上記多孔質電極基材は、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)が分散した炭素繊維前駆体シートを炭素化処理することにより得ることができる。即ち、炭素(B)は、前駆体シート中に分散させた炭素前駆体繊維(b)が炭素化処理されたものと炭素粉(C)からなる。なお、前駆体シートにおいて、炭素短繊維(A)および炭素前駆体繊維(b)は、2次元平面内に分散することができ、さらに後述する交絡処理により3次元に分散することができる。さらに、炭素化処理の前に、必要に応じてこの前駆体シートに対して、交絡処理、加熱加圧成型、及び酸化処理のうちの少なくとも1つの処理をすることもできる。
多孔質電極基材の形状は、燃料電池の分野で公知の形状から必要に応じて選択することができ、例えば、平板状、渦巻き状等の形状をとることができる。
シート状の多孔質電極基材の目付けは、ガス透気度とハンドリング性の観点から15g/m以上100g/m以下が好ましい。また、シート状の多孔質電極基材の空隙率は、ガス透気度と導電性の観点から50%以上、90%以下が好ましい。さらに、シート状の多孔質電極基材の厚みは、ガス透気度、導電性とハンドリング性の観点から50μm以上、300μm以下が好ましい。また、シート状の多孔質電極基材のうねりは、5mm未満が好ましい。
また、多孔質電極基材のガス透気度は50ml/hr/cm/Pa以上、2000ml/hr/cm/Pa以下であることが好ましい。
また、多孔質電極基材の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、50mΩ・cm以下であることが好ましい。なお、多孔質電極基材のガス透気度および貫通方向抵抗の測定方法は、後述する。
<炭素短繊維(A)>
前駆体シートに分散させた炭素短繊維(A)は、多孔質電極基材を構成する繊維の1つとなる。炭素短繊維(A)としては、例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(以下「PAN系炭素繊維」と称する)、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等の炭素繊維を所定の繊維長に切断したものが挙げられる。多孔質電極基材の機械的強度の観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。
炭素短繊維(A)の平均繊維長は、分散性の点から、2mm以上12mm以下であることが好ましい。なお、平均繊維長は、光学顕微鏡および電子顕微鏡により測定することができる。炭素短繊維(A)の平均繊維径は、炭素短繊維の生産コストおよび分散性の面から、3μm以上9μm以下であることが好ましく、多孔質電極基材の平滑性の面から、4μm以上8μm以下であることがより好ましい。なお、平均繊維径は、光学顕微鏡および電子顕微鏡により測定することができる。
多孔質電極基材を構成する1つの繊維である炭素短繊維(A)は、多孔質電極基材中において分散している。ここで、「多孔質電極基材中において分散」とは、炭素短繊維(A)が、シート状の多孔質電極基材の表面に略平行に存在していても、多孔質電極基材の厚み方向に存在していても良いことを意味する。また、このシート状の多孔質電極基材の表面に対して略平行な炭素短繊維(A)の配向方向は、実質的にランダムであっても良く、特定方向への配向性が高くなっていても良い。炭素短繊維(A)は、多孔質電極基材中においてほぼ直線状を保って存在している。また、多孔質電極基材中において、炭素短繊維(A)同士は直接結合しておらず、炭素(B)によって接合されている。
<炭素(B)>
炭素(B)は、炭素短繊維(A)同士を接合している炭素である。その炭素(B)は、接合部において屈曲状または湾曲状になっている状態で存在している。ハンドリング性や導電性の観点から、炭素(B)は網目状となっていることが好ましく、炭素(B)は3次元網目状となっていることがさらに好ましい。
多孔質電極基材中の炭素(B)の含有率は、多孔質電極基材の適度な機械的強度を容易に保つため、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
炭素(B)は炭素前駆体繊維(b)を炭素化したものと炭素粉(C)からなる。従って、炭素(B)は炭素前駆体繊維(b)由来の炭素と炭素粉(C)の混合物である。導電性や生産性の観点から、炭素(B)中の炭素粉(C)の含有量は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
<前駆体シート>
本発明では、工程(1)によって前駆体シートを製造することができる。この前駆体シートは、多孔質電極基材の前駆体となるシートである。工程(1)で得られる前駆体シートは、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)が分散した前駆体シートである。前駆体シートは、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と炭素粉(C)からなることができる。また、この前駆体シートを焼成(炭素化処理)した際の、焼成による前駆体シートの重量減少率は、厚みムラやうねりを低減し、かつハンドリング性や導電性、生産性の観点から、65%以下が好ましい。
<炭素前駆体繊維(b)>
炭素前駆体繊維(b)としては、炭素繊維前駆体短繊維(b1)およびフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の一方、もしくは両方を用いることができる。前駆体シート中に炭素粉(C)を内包する観点より、フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を用いることが好ましい。
<炭素繊維前駆体短繊維(b1)>
炭素繊維前駆体短繊維(b1)は、後述するポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)を用いて作製した長繊維状の炭素繊維前駆体繊維を適当な長さにカットしたものであることができる。炭素繊維前駆体短繊維(b1)の平均繊維長は、分散性の点から、2mm以上20mm以下が好ましい。なお、平均繊維長は、光学顕微鏡および電子顕微鏡により測定することができる。炭素繊維前駆体短繊維(b1)の断面形状は特に限定されないが、炭素化した後の機械的強度、製造コストの面から、真円度の高いものが好ましい。また、炭素繊維前駆体短繊維(b1)の平均直径は、炭素化時の収縮による破断を抑制する観点から、5μm以下であることが好ましい。なお、平均繊維径(直径)は、光学顕微鏡および電子顕微鏡により測定することができる。
炭素繊維前駆体短繊維(b1)は、炭素化処理する工程における残存質量が20質量%以上であるポリマーを用いることが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーが挙げることができる。紡糸性および低温から高温にかけて炭素短繊維(A)同士を接合させることができ、炭素化時の残存質量が大きい点、さらに、後述する交絡処理を行う際の繊維弾性、繊維強度を考慮すると、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
炭素繊維前駆体短繊維(b1)は、1種類であってもよく、繊維直径、ポリマー種が異なる複数種類であってもよい。これらの炭素繊維前駆体短繊維(b1)や後述するフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の種類や炭素短繊維(A)との混合比、200℃以上300℃以下での酸化処理の有無によって、最終的に得られる多孔質電極基材中に網目状炭素繊維(B)として残る割合を調整することができる。
<炭素繊維前駆体短繊維(b1)に用いるアクリル系ポリマー>
アクリル系ポリマーとしては、アクリロニトリルの単独重合体であっても、アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体であってもよい。しかし、紡糸性および炭素化処理工程における炭素化率の観点から、アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することがより好ましい。アクリロニトリルと共重合されるモノマーとしては、一般的なアクリル系繊維を構成する不飽和モノマーであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、5万以上100万以下であることが好ましい。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が5万以上であることで、紡糸性が向上すると同時に、繊維の糸質が良好になる傾向にある。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100万以下であることで、紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー濃度が高くなり、生産性が向上する傾向にある。
<フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)>
フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)としては、例えば以下のものを用いることができる。直径100μm以下の繊維状の幹より、直径が数μm以下(例えば0.1〜3μm)のフィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維(b2−1)や、叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)を用いることができる。なお、以下、この2つのフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)をそれぞれ、繊維(b2−1)および繊維(b2−2)と称することがある。
これらのフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を用いることにより、前駆体シート中で炭素短繊維(A)とフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)が良く絡み合い、ハンドリング性と機械的強度の優れた前駆体シートを得ることが容易となる。フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の濾水度は特に限定されないが、一般的に濾水度が小さいフィブリル状繊維を用いると前駆体シートの機械的強度が向上するが、多孔質電極基材のガス透気度が低下する傾向がある。フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を用いることで、スラリーの濾水性が変化するため、スラリーの濾水性を80〜300mlとするため、フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の濾水度および混合比を調整することが好ましい。
フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)としては、繊維(b2−1)1種類、または繊維(b2−2)を1種類使用してもよく、また濾水度、繊維直径、ポリマー種等が異なるこれら繊維を複数種類併用してもよい。
以下に、この2つのフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)について詳しく説明する。
<繊維(b2−1)>
繊維(b2−1)に用いられるポリマーは、炭素化処理工程における残存質量が20質量%以上であることが好ましい。このようなポリマーとしては、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーを挙げることができる。紡糸性および低温から高温にかけて炭素短繊維(A)同士を接合させることができ、炭素化時の残存質量が大きい点、さらに、炭素短繊維(A)との交絡、シート強度を考慮すると、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。アクリル系ポリマーとしては炭素繊維前駆体短繊維(b1)と同様のものを用いることができる。
繊維(b2−1)の製造方法は特に限定されないが、濾水度のコントロールが容易な噴射凝固法を用いて製造することが好ましい。噴射凝固法による繊維(b2−1)は例えば以下の方法で製造できる。
まず、アクリロニトリル系共重合体を溶媒に溶解させて紡糸原液を調製する。この溶媒としては、例えば、ジメチルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどを用いることができる。ついで、この紡糸原液を紡糸吐出口に通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気を紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出し、混合セル内でこのアクリロニトリル系共重合体を剪断流速の下で凝固させる。形成された凝固体を前記溶媒と水蒸気と共に混合セルから凝固液中に排出することで繊維(b2−1)が得られる。凝固液としては水または、水と前記溶媒との混合液を用いることができる。
このようにして得られた繊維(b2−1)は、繊維径の細い繊維が集合したフィブリル部と水蒸気にあまり触れることなく凝固した繊維径の太い芯部(幹)を有している。繊維(b2−1)のフィブリル部は炭素短繊維Aや繊維(b2−1)のフィブリル部同士との絡みを良好とし、繊維(b2−1)の芯部はバインダーとしての強度を発現することができる。
繊維(b2−1)のフィブリル部の繊維径は混合する炭素短繊維との絡みを良好にするため、2μm以下が好ましい。
芯部は、多孔質電極基材の均質化の観点から直径100μm以下であることが好ましい。直径を100μm以下とすることにより、繊維(b2−1)が偏在することを容易に抑制でき、比較的少量の繊維(b2−1)によって容易に炭素短繊維Aを結着することができる。また、強度を発現する観点から、芯部の直径は10μm以上であることが好ましい。
繊維(b2−1)が炭素短繊維Aに絡む機能の観点から、一つの芯部に対して繊維(b2−1)のフィブリル部が複数存在することが好ましく、一つの芯部に対してフィブリル部が多いほど好ましいと考えられる。
一本の繊維(b2−1)において、芯部の太さは、一定であるか、あるいは無段階に変化するものが好ましい。このような繊維(b2−1)を用いることにより、芯部の太さの段階的な変化により段差の部分が弱くなることを容易に防ぐことができ、強度が低下することを容易に防ぐことができる。なお、上記方法で繊維(b2−1)を製造した場合、水蒸気がランダムに飛び散ることにより芯部の太さを一定に保つことが困難な場合があり、芯部の太さが変化することがある。しかし、芯部の太さの段階的な変化は、噴射する水蒸気が冷えて液滴状になった場合に見られる傾向があるため、水蒸気の噴出圧および温度を高くするなどの方法で芯部の太さが段階的に変化することを容易に防止することができる。
<繊維(b2−2)>
繊維(b2−2)は、長繊維状の易割繊性海島複合繊維を適当な長さにカットしたものを、リファイナーやパルパーなどによって叩解しフィブリル化したものであることができる。長繊維状の易割繊性海島複合繊維は、共通の溶剤に溶解し、かつ非相溶性である2種類以上の異種ポリマーを用いて製造することができ、少なくとも1種類のポリマーが、炭素化処理工程における残存質量20質量%以上であることが好ましい。易割繊性海島複合繊維に用いられるポリマーのうち、炭素化処理工程における残存質量が20質量%以上であるものとしては、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーが挙げられる。中でも、紡糸性および炭素化処理工程における残存質量の観点から、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
アクリル系ポリマーとしては炭素繊維前駆体短繊維(b1)と同様のものを用いることができる。
易割繊性海島複合繊維に用いられるポリマーのうちの1種類に、炭素化処理工程における残存質量が20質量%以上であるポリマーとして、上述するアクリル系ポリマーを用いた場合、他のポリマーとしては、そのアクリル系ポリマーと共通の溶剤に溶解し、両ポリマーを溶解した紡糸原液が安定に存在することが望まれる。すなわち、他のポリマーは、アクリル系ポリマーと共通の溶剤に溶解した場合に、アクリル系ポリマーに対して非相溶であり、紡糸の際に海島構造を形成できる程度の混和性を有することが望まれる。これにより、紡糸原液とした際に、2種のポリマーの非相溶性の度合いが大きい場合に生じる繊維の不均質性を容易に防ぐとともに、紡糸時における糸切れを容易に防ぐことができ、さらに、繊維賦形を容易にすることができる。また、他のポリマーは水に難溶性であることが望まれ、これにより湿式紡糸する場合に、凝固槽、および洗浄槽において他のポリマーが水に溶解して脱落が起こることを容易に防ぐことができる。
これらの要望を満足する他のポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、酢酸セルロース、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂は、前述した要望のバランスの点で、好ましい。他のポリマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
繊維(b2−2)に用いる易割繊性海島複合繊維は、通常の湿式紡糸法で製造することができる。先ず、アクリル系ポリマーと他のポリマーとを溶剤に溶解して紡糸原液を調製する。または、アクリル系ポリマーを溶剤に溶解して得られる紡糸原液と、他のポリマーを溶剤に溶解して得られる紡糸原液とを、スタティックミキサー等で混合して紡糸原液としてもよい。溶剤としては、ジメチルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどを用いることができる。これらの紡糸原液を紡糸機に供給してノズルより紡糸し、湿熱延伸、洗浄、乾燥および乾熱延伸を施こすことで、易割繊性海島複合繊維を得ることができる。
易割繊性海島複合繊維の断面形状は、特に限定されない。分散性、炭素化時の収縮による破断を抑制するため、易割繊性海島複合繊維の繊度は、1dtex以上10dtex以下であることが好ましい。易割繊性海島複合繊維の平均繊維長は、叩解後の分散性の観点から、1mm以上20mm以下が好ましい。
易割繊性海島複合繊維は、機械的外力により相分離界面の剥離により叩解して、その少なくとも一部分が割繊し、フィブリル化する。叩解方法は、特に限定されないが、例えば、リファイナーやパルパー、ビーター、または加圧水流の噴射(ウオータージェットパンチング)によりフィブリル化することが可能である。易割繊性海島複合繊維を機械的外力により相分離界面の剥離により叩解する際には、叩解方法、叩解時間に依存して、フィブリル化の状態は変化する。フィブリル化の度合いを評価する方法として、濾水度評価(JIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型))を用いることができる。繊維(b2−2)の濾水度は特に限定されない。
<炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)>
シート強度および炭素化処理工程における炭素化率の観点から、炭素前駆体繊維(b)は、炭素粉を含有することも好ましい。この炭素前駆体繊維(b)として、炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)を1種類用いても、炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)の炭素粉とポリマーの質量比、濾水度、繊維直径、ポリマー種、炭素粉種等が異なるこれら繊維を複数種類併用しても良い。さらに、炭素粉を含有する炭素前駆体短繊維(b1)とフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)とを併用しても良い。しかしながら、炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)としては、前駆体シートのハンドリング性の観点から、炭素粉を含有するフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を用いることが好ましい。
このような炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)は、その種類や混合比、さらには炭素短繊維(A)との混合比、酸化処理の有無によって、最終的に得られる多孔質電極基材中に炭素粉を含有する炭素として残る割合が異なる。炭素前駆体繊維(b)として、この炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)のみを用いた場合、炭素短繊維(A)と炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b1)との混合比は、以下のようにすることが好ましい。即ち、炭素短繊維(A)100質量部に対して、炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)が50〜300質量部であることが好ましい。炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)を50質量部以上とすることで、多孔質電極基材シートの強度を容易に向上させることができる。炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)を300質量部以下とすることで、炭素化時の炭素前駆体繊維(b1)の収縮を抑制する炭素短繊維(A)が少ないことに起因するシートの収縮をより確実に抑制でき、多孔質電極基材シートの強度が容易に向上しハンドリング性をより高くすることができる。
炭素粉としては、フォーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、又は熱分解黒鉛や燐片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛粉、またはそれらの混合物を用いることができる。これらの炭素粉は、導電性の発現およびシート形状維持の点から好ましい。
炭素粉を含有する炭素前駆体繊維(b)は、炭素粉とポリマー(重合体)とからなることができる。この炭素前駆体繊維(b)中の炭素粉の濃度は炭素化時の炭素化率が明確に改善する点より、用いるポリマー100質量部に対して10質量部以上であることが好ましい。また炭素粉の濃度の上限は紡糸可能な範囲で高いことが望ましいが、繊維の製造段階での紡糸安定性の点から、60質量部以下が特に好ましい。
<炭素粉(C)>
炭素粉としては、特に限定されないが、フォーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラックや、熱分解黒鉛や燐片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛粉、またはそれらの混合物を用いることが、前駆体シートの重量減少率を低減し、かつ導電性の発現およびシート形状維持の点より好ましい。
多孔質電極基材における炭素粉の含有率は、重量減少率の低減および導電性発現の観点から、炭素短繊維(A)と炭素前駆体繊維(b)の合計を100質量部としたとき、10〜100質量部が好ましく、10〜60質量部がより好ましい。
炭素粉の粒子径は、基材の強度、導電性の発現の観点より、0.01〜10μm程度であることが好ましく、0.1〜7μmとすることがより好ましく、1〜5μmとすることが、さらに好ましい。ここで、炭素質粉末の粒径は数平均径を用いる。
<炭素(D)>
炭素(D)は、炭素短繊維(A)間を結着するために用いられ、炭素(D)として炭化物を用いることができる。炭化物として、高分子化合物を加熱によって炭素化して得られる炭素材を用いることができる。炭素(D)の形状は特に限定されない。炭素(D)が炭化した樹脂である場合は、その原料として加熱によって炭素化可能な樹脂(d)を用いることができる。
<炭素化可能な樹脂(d)>
加熱によって炭素化可能な樹脂(d)を前駆体シートに含浸し、その後、加熱加圧により硬化し、次いで炭素化することにより炭素短繊維(A)と炭素(B)との結合が強固な多孔質電極基材とすることができる。
この加熱によって炭素化可能な樹脂(d)としては、炭素化した段階で炭素短繊維(A)と炭素(B)との結合を強固とすることのできる公知の樹脂から適宜選んで用いることができる。炭素化後に導電性物質として残存しやすいという観点から、樹脂(d)としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ピッチ等が好ましく、加熱による炭素化の際の炭化率の高いフェノール樹脂が特に好ましい。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に、公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。フェノール樹脂としては、アルコールやケトン類の溶媒に溶解したフェノール樹脂溶液や、水などの分散媒に分散したフェノール樹脂分散液などを用いることができる。
<多孔質電極基材の製造方法>
本発明の多孔質電極基材の製造方法は、以下の工程(1)と工程(2)を含み、工程(2)による前駆体シートの重量減少率が65%以下であればよい。
(1)炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)が分散した前駆体シートを製造する工程(1)。
(2)前記前駆体シートを炭素化処理する工程(2)。
工程(1)と工程(2)との間に、前駆体シートを交絡処理する工程(3)を含むことができる。
また、工程(2)の前に、前駆体シートを加熱加圧する工程(4)を含んでもよい。工程(1)と(2)の間に工程(3)を有する場合は、工程(3)と工程(2)の間に、前駆体シートを加熱加圧する工程(4)を含むことができる。
また、工程(4)の前に、炭素化可能な樹脂(d)を含浸させる工程(5)を含んでもよい。工程(1)と(2)の間に工程(3)を有する場合は、工程(3)と工程(4)の間に、前駆体シートを加熱加圧する工程(4)を含むことができる。
更に、工程(4)と工程(2)の間に、加熱加圧された前駆体シートを酸化処理する工程(6)を含んでもよい。
以下に各工程を詳しく説明する。
・前駆体シートを製造する工程(1)
前駆体シートの製造方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)を分散させて抄造する湿式法、空気中に炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)を分散させて降り積もらせる乾式法、などの抄紙方法を適用できる。しかし、シートの均一性が高いという観点から、湿式法を用いることが好ましい。
炭素短繊維(A)が単繊維に開繊するのを助け、開繊した単繊維が再収束することを防止するためにも、炭素前駆体繊維(b)を使用する。また、必要に応じてバインダーを使用して、湿式抄紙することもできる。
バインダーは、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)を含む前駆体シート中で、各成分をつなぎとめる糊剤としての役割を有する。バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニルなどを用いることができる。特に、抄紙工程での結着力に優れ、炭素短繊維(A)の脱落が少ないことから、ポリビニルアルコールが好ましい。本発明では、バインダーを繊維形状にして用いることも可能である。
本発明では、バインダーを用いずにシート化しても、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)との適度な絡みを得ることができる。
炭素短繊維(A)および炭素前駆体繊維(b)、炭素粉(C)を分散させる液体の媒体としては、例えば、水、アルコールなどの炭素前駆体繊維(b)が溶解しない媒体が挙げられる。この中でも、生産性の観点から、水を用いることが好ましい。
炭素短繊維(A)および炭素前駆体繊維(b)、炭素粉(C)を混合する方法としては、水中で攪拌分散させる方法、これらを直接混ぜ込む方法が挙げられるが、均一に分散させる観点から、水中で拡散分散させる方法が好ましい。炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)、炭素粉(C)とを混合し、抄紙して前駆体シートを製造することにより、前駆体シートの強度を向上させることができる。また、その製造途中で、前駆体シートから炭素短繊維(A)が剥離し、炭素短繊維(A)の配向が変化することを防止することができる。
前駆体シートは、連続法とバッチ法のいずれによっても製造できるが、前駆体シートの生産性および機械的強度の観点から、連続法で製造することが好ましい。
前駆体シートの目付は、前駆体シートのハンドリング性および多孔質電極基材としたときのガス透過性、導電性、ハンドリング性の観点から10g/m以上、200g/m以下であることが好ましい。また、前駆体シートの厚みは、20μm以上、400μm以下であることが好ましい。
・炭素化処理する工程(2)
工程(1)より得られた前駆体シートは、そのまま炭素化処理することができ、また上述したように、交絡構造を形成した後(工程(3)後)や加熱加圧成型後(工程(4)後)に炭素化処理することもでき、加熱加圧成型後の前駆体シートを酸化処理した後(工程(6)後)に炭素化処理することもできる。炭素短繊維(A)を炭素前駆体繊維(b)と炭素粉(C)で接合させ、かつ炭素前駆体繊維(b)を炭素化して炭素(B)(例えば、網目状炭素)とすることより、得られる多孔質電極基材の機械的強度および導電性を容易に高くすることができる。
炭素化処理は、得られる多孔質電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で行うことが好ましい。炭素化処理は、通常1000℃以上の温度で行なわれる。炭素化処理する温度範囲は、1000〜3000℃が好ましく、1000〜2200℃がより好ましい。炭素化処理を行う時間は、例えば10分〜1時間程度である。また、炭素化処理の前に、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行うことができる。
連続的に製造された前駆体シートを炭素化処理する場合は、製造コスト低減化の観点から、前駆体シートの全長にわたって連続で炭素化処理を行うことが好ましい。多孔質電極基材を長尺にすれば、多孔質電極基材の生産性をさらに高くすることができ、かつその後のMEA(Membrane Electrode Assembly)製造も連続で行うことができるので、燃料電池の製造コストを容易に低減できる。また、多孔質電極基材や燃料電池の生産性および製造コスト低減化の観点から、製造された多孔質電極基材を連続的に巻き取ることが好ましい。
・交絡処理する工程(3)
前駆体シート中の炭素短繊維(A)と炭素前駆体繊維(b)とを交絡させる交絡処理は、交絡構造が形成される方法であればよく、公知の方法で実施できる。例えば、ニードルパンチング法などの機械交絡法、ウォータージェットパンチング法などの高圧液体噴射法、スチームジェットパンチング法などの高圧気体噴射法、或いはこれらの組み合わせによる方法を用いることができる。交絡工程での炭素短繊維(A)の破断を容易に抑制でき、かつ適度な交絡性が容易に得られるという点から、高圧液体噴射法が好ましい。以下に、この方法について詳しく説明する。
(高圧液体噴射処理法)
高圧液体噴射処理法は、表面が平滑な支持部材上に前駆体シートを載せ、例えば、1MPaの圧力で噴射される液体柱状流、液体扇形流、液体スリット流等を作用させることによって、前駆体シート中の炭素短繊維(A)と炭素前駆体繊維(b)とを交絡させる処理方法である。ここで、実質的に表面平滑な支持部材としては、支持部材の模様が、得られる交絡構造体に形成されることなく、かつ噴射された液体が速やかに除かれるようなものから必要に応じて選択して用いることができる。その具体例としては30〜200メッシュの金網又はプラスチックネット或いはロール等を挙げることができる。実質的に表面平滑な支持部材上で前駆体シートを製造した後、高圧液体噴射処理することが、交絡構造前駆体シートを連続的に製造でき、生産性の観点から好ましい。
高圧液体噴射処理に用いる液体としては、前駆体シートを構成する繊維を溶解する溶剤以外なら何でもよいが、通常は水または温水を用いることが好ましい。高圧液体噴射ノズル中の、それぞれの噴射ノズルの孔径は、柱状流の場合、十分な交絡効果を得る観点から、0.01mm以上1.0mm以下が好ましく、0.05mm以上0.3mm以下がより好ましい。ノズル噴射孔と積層体の間の距離は、0.5cm以上5cm以下が好ましい。液体の圧力は、0.5MPa以上が好ましく、1.0MPa以上がより好ましい。交絡処理は、1列でもよく複数列で行ってもよい。複数列で行う場合、1列目よりも2列目以降の高圧液体噴射処理の圧力を高めることが有効である。
前駆体シートの高圧液体噴射による交絡処理は、複数回繰り返してもよい。即ち、前駆体シート高圧液体噴射処理を行った後、更に前駆体シートを積層し、高圧液体噴射処理を行ってもよいし、出来つつある交絡構造前駆体シートを裏返し、反対側から、高圧液体噴射処理を行ってもよい。また、これらの操作を繰り返してもよい。
交絡構造前駆体シートを連続的に製造する場合、1列または複数列のノズル孔を備える高圧液体噴射ノズルをシートの幅方向に振動させことにより、シート化方向にシートの疎密構造の形成に由来する筋状の軌跡パターンが形成されることを容易に抑制することができる。シート化方向の筋状の軌跡パターンを抑制することにより、シート幅方向の機械的強度を容易に発現することができる。また1列または複数列のノズル孔を備える高圧液体噴射ノズルを複数本使用する場合、高圧液体噴射ノズルをシートの幅方向に振動させる振動数、またその位相差を制御することにより交絡構造前駆体シートに現れる周期的な模様を容易に抑制することもできる。
・加熱加圧成型する工程(4)
炭素短繊維(A)を炭素前駆体繊維(b)と炭素粉(C)で接合させ、かつ多孔質電極基材の厚みムラを低減させるという観点から、炭素化処理の前に、前駆体シートを加熱加圧成型することが好ましい。加熱加圧成型は、前駆体シートを均等に加熱加圧成型できる技術であれば、いかなる技術も適用できる。例えば、前駆体シートの両面に平滑な剛板を当てて熱プレスする方法、ロールプレス装置、連続ベルトプレス装置を用いる方法が挙げられる。
連続的に製造された前駆体シートを加熱加圧成型する場合には、ロールプレス装置、連続ベルトプレス装置を用いる方法が好ましい。これによって、炭素化処理を連続で行うことができる。
加熱加圧成型における加熱温度は、前駆体シートの表面を効果的に平滑にするために、200℃未満が好ましく、120〜190℃がより好ましい。成型圧力は特に限定されないが、前駆体シート中における炭素前駆体繊維(b)の含有比率が多い場合は、成型圧が低くても容易に前駆体シートの表面を平滑にすることができる。なお、成型圧力は、20kPa以上10MPa以下が好ましい。プレス圧が10MPa以下であれば、加熱加圧成型時に炭素短繊維(A)が破壊されることを容易に防ぎ、多孔質電極基材の組織が非常に緻密になること等を容易に防ぐことができる。加熱加圧成型の時間は、例えば10秒〜10分とすることができる。
前駆体シートを2枚の剛板に挟んでまたはロールプレス装置、連続ベルトプレス装置で加熱加圧成型する時は、剛板やベルトに炭素前駆体繊維(b)などが付着しないようにあらかじめ剥離剤を塗っておくことや、前駆体シートと剛板やベルトとの間に離型紙を挟むことが好ましい。
・炭素化可能な樹脂(d)を含浸させる工程(5)
炭素化可能な樹脂(d)を前駆体シートに含浸する方法としては、絞り装置を用いる方法もしくは樹脂フィルムを前駆体シートに重ねる方法が好ましい。絞り装置を用いる方法は樹脂溶液に前駆体シートを含浸し、絞り装置で取り込み液が炭素シート全体に均一に塗布されるようにし、液量は絞り装置のロール間隔を変えることで調節する方法である。比較的粘度が低い場合はスプレー法等も用いることができる。
樹脂フィルムを用いる方法は、まず炭素化可能な樹脂(d)を離型紙に一旦コーティングし、炭素化可能な樹脂(d)フィルムとする。その後、前駆体シートに前記フィルムを積層して加熱加圧処理を行い、炭素化可能な樹脂(d)を転写する方法である。
・酸化処理する工程(6)
炭素短繊維(A)を前駆体繊維(b)と炭素粉(C)で良好に接合させ、かつ炭素前駆体繊維(b)の炭素化率を向上させるという観点から、加熱加圧成型した前駆体シートを酸化処理することが好ましい。酸化処理の温度は、炭素化率を向上させる観点から200℃以上300℃未満とすることが好ましく、240℃以上290℃以下とすることがより好ましい。酸化処理の時間は、例えば1分間〜2時間とすることができる。
酸化処理としては、加熱多孔板を用いた加圧直接加熱による連続酸化処理、または加熱ロール等を用いた間欠的な加圧直接加熱による連続酸化処理が、低コスト、かつ炭素短繊維(A)を容易に炭素前駆体繊維(b)で接合させることができるという点で好ましい。連続的に製造された前駆体シートを酸化処理する場合、前駆体シートの全長にわたって連続で酸化処理することが好ましい。これによって、炭素化処理を容易に連続して行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例中の各物性値等は、以下の方法で測定した。「部」は「質量部」を意味する。
(1)ガス透気度
多孔質電極基材のガス透気度は、ISO−5636−5に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、ガス透気度(ml/hr/cm/Pa)を算出した。
(2)厚み
多孔質電極基材の厚みは、厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ((株)ミツトヨ製、商品名:7321)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。
(3)貫通方向抵抗
多孔質電極基材の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、金メッキした銅板に多孔質電極基材を挟み、銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cmの電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。
貫通方向抵抗(mΩ・cm)=測定抵抗値(mΩ)×試料面積(cm
(4)多孔質電極基材のうねり
多孔質電極基材のうねりの指標として、平板上に縦250mm横250mmの多孔質電極基材を静置した際の、多孔質電極基材の高さの最大値と最小値の差を算出した。
(5)前駆体シートの重量減少率
前駆体シートの重量減少率は、重量減少のない炭素短繊維(A)を除くシート目付けを用いて、以下の式1より算出した。
重量減少率(%)=(前駆体シートの目付(g/m)−(多孔質電極基材目付(g/m))/(前駆体シートの目付(g/m)−炭素短繊維(A)目付(g/m))×100。
(製造例1)炭素繊維前駆体短繊維(b1)の製造
水系懸濁重合法により合成したアクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=97/2.5/0.5(質量比)の組成を有する重量平均分子量140000のアクリロニトリル系重合体250gをジメチルアセトアミド750gにスリーワンモータを用いて混合溶解させ、紡糸原液を調製した。次いで得られた混合液(紡糸原液)を0.1MPaの窒素加圧下で押し出し、ギアポンプを通して、この紡糸原液を12000ホールのノズルより濃度30質量%、温度35℃のジメチルホルムアミド水溶液中に吐出し、湿式紡糸した。得られた凝固繊維を沸水中で6倍延伸しながら洗浄及び脱溶剤したのち、繊維長を3mmに切断することで、アクリロニトリルを95質量%以上含有するアクリロニトリル系重合体からなる平均繊維径5μmの炭素繊維前駆体短繊維(b1)を得た。
(製造例2)フィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維(b2−1)の製造
水系懸濁重合法により合成したアクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=97/2.5/0.5(質量比)の組成を有する重量平均分子量140000のアクリロニトリル系重合体150gをジメチルアセトアミド850gにスリーワンモーターを用いて混合溶解させ、紡糸原液を調製した。次いで得られた混合液を0.1MPaの窒素加圧下で押し出し、ギアポンプを用いて図1に示したノズルの流路1へ定量供給を行なうと同時に水蒸気を流入口3から水蒸気流路4に供給した。水蒸気供給量は減圧弁により供給圧力を規定することにより行なった。Y字型の溶液吐出口2、直径が2mm、長さが10mmの円筒状の混合セル5、水蒸気流路4がスリット状で開度を390μmに調整し、溶液流路の中心線Aとスリットの中心線Bとのなす角度Cが60度になるように製作した。ノズルを用い、混合液の供給量を36ml/min、水蒸気の供給圧を350kPaとし、混合セル出口6から温度30℃の水中へ噴出した。凝固浴中に浮遊したアクリロニトリル系重合体を捕集し、更に室温の水で一晩洗浄を行い、脱水することでアクリロニトリルを95質量%以上含有するアクリロニトリル系重合体からなるフィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維(b2−1)を得た。この得られたフィブリル状炭素前駆体繊維(b2−1)をISO−5267−2のパルプ濾水度試験法(1)カナダ標準型で測定したところ、濾水度が175mlであった。
得られた炭素前駆体繊維(b2−1)を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、繊維形態はフィブリル状であることを確認した。
(製造例3)叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)の製造
水系懸濁重合法により合成したアクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=97/2.5/0.5(質量比)の組成を有する重量平均分子量140000のアクリロニトリル系重合体200gをジメチルアセトアミド600gにスリーワンモーターにて混合溶解させ、アクリロニトリル系重合体紡糸原液を調製した。また、ポリメタクリル酸メチル200gをジメチルアセトアミド600gにスリーワンモーターにて混合溶解させ、ポリメタクリル酸メチル紡糸原液を調製した。
それぞれ得られたアクリロニトリル系重合体紡糸原液とポリメタクリル酸メチル紡糸原液を混合した後、合計のポリマー濃度が25質量%となるようにジメチルアセトアミドを添加し、常温で60分間攪拌した後、液温が70℃になるように温水ジャケットで昇温させて、70℃になってから60分間攪拌した。
次いで、得られた紡糸原液を80℃に昇温し、その温度に保ったまま、ギヤポンプを用いて紡糸ノズルへ定量供給した。そして、紡糸原液をノズルの口金より凝固浴(ジメチルアセトアミドが30質量%で、水が70質量%となるように調整)に吐出し凝固させる湿式紡糸方法より、総延伸倍率が3.0倍になるように紡糸した。
具体的には、得られた混合液を0.1MPaの窒素加圧下で押し出し、ギアポンプを通して、この紡糸原液を12000ホールのノズルよりジメチルホルムアミド水溶液(濃度30質量%、温度35℃)中に吐出し、湿式紡糸した。得られた凝固繊維を沸水中で3倍延伸しながら洗浄・脱溶剤したのち、繊維長を3mmに切断し、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製、商品名:KRK高濃度ディスクリファイナー、ディスククリアランス0.3mm、回転数5000rpm)を用いて叩解処理することで、叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)を得た。得られた炭素前駆体繊維(b2−2)を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、繊維形態はフィブリル状であることを確認した。
(製造例4)
水系懸濁重合法により合成したアクリロニトリル/酢酸ビニル=93/7(質量比)の組成を有する質量平均分子量140000のアクリロニトリル系重合体117gと、炭素粉であるカーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名:♯3230B)83gとをジメチルアセトアミド800gにスリーワンモーターにて混合溶解させ、炭素粉とアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を調製した。次いで得られた混合液を0.1MPaの窒素加圧下で押し出し、ギアポンプを用いて図1に示したノズルの原液流路1へ定量供給を行なうと同時に水蒸気を流入口3から水蒸気流路4に供給した。
水蒸気供給量は減圧弁により供給圧力を規定することにより行なった。水蒸気量は図1に示すノズルより水蒸気量の増分を求めることにより測定した。なおこのノズルは、Y字型の溶液吐出口2、直径が2mm、長さが10mmの円筒状の混合セル部5、水蒸気流路4がスリット状で開度を390μmに調整し、溶液流路1の中心線(紡糸原液の吐出線Aと同じ)と水蒸気流路4の中心線(水蒸気の噴射線Bと同じ)とのなす角度Cが60度になるように製作した。
前記ノズルを用い、混合液の供給量を36ml/min、水蒸気の供給圧を350kPaとし、混合セル出口6から温度30℃の水中へ噴出した。凝固浴中に浮遊したアクリロニトリル系重合体と炭素粉の混合凝固体を捕集し、更に室温の水で一晩洗浄を行い、脱水することで炭素粉を含むフィブリル状炭素前駆体繊維(b2−1)を得た。この得られた炭素粉を含むフィブリル状炭素前駆体繊維(b2−1)の濾水度は90mlであった。
得られた炭素前駆体繊維を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、繊維形態はフィブリル状であることを確認した。
(実施例1)
炭素短繊維(A)として、平均繊維径が7μm、平均繊維長が3mmのPAN系炭素繊維を用意した。また、炭素繊維前駆体短繊維(b1)として、平均繊維径が4μm、平均繊維長が3mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン(株)製、商品名:D122)を用意し、フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)として、叩解によってフィブリル化するアクリル系ポリマーとジアセテート(酢酸セルロース)とからなる易割繊性アクリル系海島複合短繊維(b2−2)(三菱レイヨン(株)製、商品名:ボンネルM.V.P.−C651、平均繊維長:3mm)を用意し、炭素粉としてケッチェンブラック(ライオン(株)製)を用意した。
以下の操作によって前駆体シート及び3次元交絡構造前駆体シートを連続的に製造した。
(炭素短繊維(A)の離解)
前記炭素短繊維(A)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製)を通して離解処理し、離解スラリー繊維(SA)とした。
(炭素繊維前駆体短繊維(b1)の離解)
前記炭素繊維前駆体短繊維(b1)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製)を通して離解処理し、離解スラリー繊維(Sb1)とした。
(繊維(b2−2)の作製および離解)
前記易割繊性アクリル系海島複合短繊維を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散させディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製)を通して叩解および離解処理し、離解スラリー繊維(Sb2−2)とした。
(抄紙用スラリーの調整)
炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b1)と繊維(b2−2)と炭素粉とが、質量比60:10:20:10で、かつスラリー中の固体の濃度が、1.5g/Lとなるように離解スラリー繊維(SA)、離解スラリー繊維(Sb1)、離解スラリー繊維(Sb2−2)、炭素粉、希釈水を計量し、スラリー供給タンクに調製した。さらに、ポリアクリルアマイドを添加して粘度22mPa・s(センチポイズ)の抄紙用スラリーを調製した。
(前駆体シートの製造)
ネット駆動部及び幅60cm×長さ585cmのプラスチックネット製平織メッシュをベルト状につなぎあわせて連続的に回転させるネットよりなるシート状物搬送装置、スラリー供給部幅が48cm、供給スラリー量が30L/minである抄紙用スラリー供給装置、ネット下部に配置した減圧脱水装置からなる処理装置を用いた。
前記抄紙用スラリーを定量ポンプにより前記平織メッシュ上に供給した。抄紙用スラリーは均一な流れに整流するためのフローボックスを通して所定サイズに拡幅して供給した。その後自然脱水する部分を通過して、減圧脱水装置により脱水し、湿紙ウエッブ(前駆体シート)を得た。
(前駆体シートの3次元交絡処理)
前記処理装置の下流に下記の3本ウォータージェットノズル(ノズル1〜3)を備えた加圧水流噴射処理装置を配置した。
ノズル1:孔径φ(直径)0.15mm×501孔、幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)、1列配置、ノズル有効幅500mm。
ノズル2:孔径φ0.15mm×501孔、幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)、1列配置、ノズル有効幅500mm。
ノズル3:孔径φ0.15mm×1002孔、幅方向孔間ピッチ1.5mm、3列配置、列間ピッチ5mm、ノズル有効幅500mm。
前記湿紙ウエッブを加圧水流噴射処理装置のネット上に積載した。加圧水流噴射圧力を1MPa(ノズル1)、圧力1MPa(ノズル2)、圧力1MPa(ノズル3)として、前記湿紙ウエッブをノズル1、ノズル2、ノズル3の順で通過させて交絡処理を加えた。
(乾燥処理)
前記交絡処理シート状物を、ピンテンター試験機(辻井染機工業(株)製、商品名:PT−2A−400)により150℃で3分間、乾燥させて目付け60g/mの3次元交絡構造前駆体シートを得た。この3次元交絡構造前駆体シート中での炭素繊維前駆体短繊維(b1)およびフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の分散状態は良好で両繊維の絡み合いも良好であり、ハンドリング性は良好であった。
(加熱加圧成型)
次に、この前駆体シートを、ロール対を有する連続式加熱ロールプレス装置を用いて線圧3×10N/m、ロール温度200℃、速度2.0m/minで連続的に成型した。
(炭素化処理)
その後、前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化処理して、多孔質電極基材を得た。
(評価結果〕
得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。さらに、前駆体シートの重量減少率は60%であった。また、得られた多孔質電極基材は、基材内で分散した炭素短繊維(A)同士が、網目状炭素(B)と炭素粉によって接合されていることが確認できた。得られた多孔質電極基材の評価結果を表1に示す。
(実施例2〜5)
実施例2〜5では、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)の使用量および前駆体シートの目付を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例6)
炭素繊維前駆体短繊維(b1)として、製造例1で得られた(b1)を用い、それぞれの使用量および前駆体シートの目付を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例7)
叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)として、製造例3で得られた(b2−2)を用い、それぞれの使用量および前駆体シートの目付を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例8および9)
叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)を用いず、製造例2得られたフィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維(b2−1)を用い、それぞれの使用量および前駆体シートの目付を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例10)
叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)を用いず、製造例4得られた炭素粉を含むフィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維(b2−1)を用い、それぞれの使用量および前駆体シートの目付を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例11)
加熱加圧成型工程と炭素化処理工程との間に、酸化処理する工程を行った以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。具体的には、加圧加熱成型された前駆体シートの両面を、シリコーン系離型剤をコートしたステンレスパンチングプレートで挟んだ後、バッチプレス装置にて、280℃、0.5MPaの条件下で1分間酸化処理した。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例12)
実施例1の交絡処理された前駆体シートに対し、水分散フェノール樹脂(商品名:PR−55464、住友ベークライト(株)製)を含浸させ、室温で十分に乾燥させ、フェノール樹脂の不揮発分を20g/m付着させたフェノール樹脂含浸シートを得た。さらに、このフェノール樹脂が含浸された前駆体シ-トを実施例1と同様の方法で、加熱加圧成型処理、炭素化処理を行なうことで、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例13)
加熱加圧成型工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例14)
3次元交絡処理工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例15)
炭素粉としてデンカブラック(電気化学工業(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例16)
炭素粉として熱分解黒鉛(商品名:PC−H、伊藤黒鉛工業(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(実施例17)
炭素粉として球状黒鉛(商品名:SG−BH8、伊藤黒鉛工業(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素化処理時における面内の収縮がなく、うねりも2mm以下と小さく、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
(比較例1)
炭素粉を用いず、それぞれの使用量および前駆体シートの目付を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、十分なハンドリング性があり、ガス透気度、厚みおよび貫通方向抵抗はいずれも良好であったが、炭素化処理時における面内の収縮が観察され、うねりも2mmであった。評価結果を表1にそれぞれ示す。
Figure 2013251070
1:分割繊維製造用紡糸原液の流路
2:分割繊維製造用紡糸原液の吐出口
3:水蒸気の流入口
4:スリット状水蒸気流路
5:混合セル部
6:混合セル部の出口
A:分割繊維製造用紡糸原液の吐出線
B:水蒸気の噴射線
C:AとBのなす角

Claims (9)

  1. 炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)と、炭素粉(C)が分散した前駆体シートを製造する工程(1)、および
    該前駆体シートを炭素化処理する工程(2)
    を含み、工程(2)による該前駆体シートの重量減少率が65%以下である多孔質電極基材の製造方法。
  2. 前記炭素前駆体繊維(b)が、フィブリル状炭素前駆体繊維である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記炭素前駆体繊維(b)が、炭素粉を含有する炭素前駆体繊維である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記炭素前駆体繊維(b)が、アクリロニトリル単位を95質量%以上含有するアクリロニトリル系重合体を含む炭素前駆体繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記工程(1)と前記工程(2)の間に、前記前駆体シートを交絡処理する工程(3)を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記工程(2)の前に、前記前駆体シートを加熱加圧する工程(4)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記工程(4)の前に、前駆体シートに炭素化可能な樹脂(d)を含浸させる工程(5)を含む請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記工程(4)と前記工程(2)の間に、加熱加圧された前記前駆体シートを酸化処理する工程(6)を含む請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で得られる多孔質電極基材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2015098902A1 (ja) * 2013-12-27 2017-03-23 東レ株式会社 トナークリーニング用シートおよびその製造方法
JP7417227B2 (ja) 2021-01-28 2024-01-18 国立研究開発法人物質・材料研究機構 空気電池正極用の炭素多孔体の製造方法

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