JP5590419B2 - 多孔質電極基材前駆体シートの製造方法、多孔質電極基材の製造方法、多孔質電極基材、膜−電極接合体、および固体高分子型燃料電池 - Google Patents

多孔質電極基材前駆体シートの製造方法、多孔質電極基材の製造方法、多孔質電極基材、膜−電極接合体、および固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられる多孔質電極基材の前駆体シートの製造方法、多孔質電極基材の製造方法、多孔質電極基材、膜−電極接合体、および固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、プロトン伝導性の高分子電解質膜を用いることを特徴としており、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化ガスを電気化学的に反応させることにより起電力を得る装置である。このような固体高分子型燃料電池は、貴金属系触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層とガス拡散電極基材とを有する2組のガス拡散電極が、その各触媒層側を内側にして、高分子電解質膜の両面に接合された構造を有する。
ガス拡散電極基材は、一般的に、炭素質材料から構成され、このガス拡散電極基材の前駆体シートは、炭素質材料および炭素質前駆体材料から構成されており、この前駆体シートは、炭素質繊維を用いた湿式抄紙法によって製造される。炭素質繊維の繊維束が存在すると、ガス拡散電極基材として用いた際にガス拡散性に斑が生じることとなるため、湿式抄紙法による前駆体シートの製造法では、炭素質繊維を分散させたスラリーの濃度を0.05〜0.5g/L程度に調整してシート化することが行なわれる。一般的なガス拡散電極基材の前駆体シートおよびガス拡散電極基材として、例えば以下に示すガス拡散電極基材の前駆体シートおよびガス拡散電極基材が知られている。
特許文献1:ポリアクリロニトリル系炭素短繊維を70質量%以上含み、該炭素繊維同士が互いに水流交絡されてなることを特徴とする炭素繊維不織布。
特許文献2:厚みが0.05〜0.5mmで嵩密度が0.3〜0.8g/cmであり、かつ、歪み速度10mm/min、支点間距離2cmおよび試験片幅1cmの条件での3点曲げ試験において、曲げ強度が10MPa以上でかつ曲げの際のたわみが1.5mm以上であることを特徴とする燃料電池用多孔質炭素電極基材。
特許文献3:複数の炭素繊維を含んで成るマット;および該炭素繊維マットに組み込まれた複数のアクリルパルプ繊維を含んでなり、該アクリルパルプ繊維は、炭素繊維マットに組み込まれた後に硬化され炭化される燃料電池用ガス拡散層。
特許文献4:ポリアクリロニトリル系酸化繊維シートを焼成する炭素繊維シートの製造方法において、ポリアクリロニトリル系酸化繊維シートを150〜300℃、10〜100MPaの条件下で厚さ方向に圧縮処理して嵩密度が0.40〜0.80g/cm 、圧縮率40〜75%の圧縮処理をした酸化繊維シートを得、次いで前記圧縮処理した酸化繊維シートを焼成することを特徴とする炭素繊維シートの製造方法。
特許文献5:分散媒体に強化繊維束を投入する工程(I)、前記強化繊維束を構成する強化繊維が前記分散媒体中に分散したスラリーを調製する工程(II)、前記スラリーを輸送する工程(III)及び前記スラリーより分散媒体を除去して強化繊維を含む抄紙基材を得る工程(IV)を少なくとも有し、前記工程(II)で調製されるスラリー中の強化繊維の質量含有率をC1とし、前記工程(IV)開始時のスラリー中の強化繊維の質量含有率をC2とした場合に、C1/C2が0.8〜1.2の範囲である強化繊維を含む抄紙基材の製造方法。およびスラリー中の強化繊維の質量含有率が0.01〜1質量%である抄紙基材の製造方法。
特開2002−266217号公報 国際公開第2001/056103号パンフレット 特開2007−273466号公報 国際公開第2002/042534号パンフレット 特開2010−37666号公報
しかし、特許文献1に開示されている炭素繊維不織布は、剛直性の高い炭素繊維の交絡による機械的強度低く、ハンドリングに問題があった。特許文献2に開示されている多孔質炭素電極基材は、機械的強度および表面平滑性が高く、十分なガス透気度および導電性を有しているが、製造コストが高いという問題があった。特許文献3に開示されている燃料電池用ガス拡散層は、低コスト化での製造は可能であるが、シート化する際の炭素繊維とアクリルパルプの絡みが少なく、ハンドリングが困難であるという問題があった。また、アクリルパルプは繊維状材料と比較してポリマーの分子配向がほとんどないため、炭素化時の炭素化率が低く、ハンドリング性を高めるためには、多くのアクリルパルプを添加する必要があった。特許文献4に開示されている炭素繊維シート及び炭素繊維不織布は、低コストでの製造は可能であるが、焼成時の収縮が大きく、得られるシート等の厚みムラが大きいことやシートのうねり(シート断面が波打った状態または反った状態)が大きいという問題があった。
また、上記ガス拡散電極基材の前駆体シートおよびガス拡散電極基材を湿式抄紙法で製造する際、炭素繊維が集束した繊維束を低減させるため、低濃度スラリーを用いる必要があり、多量の水を使用し、さらにその水を脱水するための多大なユーティリティーが必要となることより、前駆体シートの製造コストが高くなるという問題があった。
特許文献5に開示されている抄紙基材の製造方法では抄紙スラリーの各工程での希釈度を制御しているものの、高い抄紙スラリー濃度となった際の炭素繊維が集束した繊維束を低減させるため手法は提示されておらず、燃料電池用のガス拡散電極基材に用いる抄紙基材としては、高濃度スラリーとなる条件では炭素繊維が集束した繊維束が多く発生するという問題があった。
本発明は、上記のような問題点を克服し、前駆体シートを製造する際の製造コストが低く、かつ炭素繊維が集束した繊維束が少ない、多孔質電極基材前駆体シート、およびその製造方法、さらに多孔質電極基材とした際のハンドリング性と表面平滑性に優れ、シートの厚みムラ、うねりが改善され、且つ十分なガス透気度および導電性を持つ多孔質電極基材およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題は、以下の発明〔1〕〜〔11〕によって解決される。
〔1〕 紙力増強剤を含む繊維混合スラリーを抄紙して多孔質電極基材前駆体シートを製造する方法において、
(i)紙力増強剤を含む繊維混合スラリー中の繊維が、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を含む混合物であり、炭素短繊維(A)の混合割合が繊維物質全量に対する質量比で40%以上90%以下であり、
(ii)紙力増強剤を含む繊維混合スラリー中の繊維濃度が0.8〜1.8g/Lであり、
かつ
(iii)紙力増強剤を含む繊維混合スラリーを濾水度計に充填し、JIS P8121に準拠した方法で測定した繊維混合スラリーの濾水性が80〜300mlである
ことを特徴とする多孔質電極基材前駆体シートの製造方法。
〔2〕 上記〔1〕に記載の製造方法で得た多孔質電極基材前駆体シートを加熱加圧処理する工程(1)と、工程(1)で加熱加圧した前駆体シートを1000℃以上の温度で炭素化処理する工程(2)を有する多孔質電極基材の製造方法。
〔3〕 工程(1)と工程(2)の間に、加熱加圧処理された多孔質電極基材前駆体シートを酸化処理する工程(4)を有する上記〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 工程(1)の前に、請求項1に記載の製造方法で得た多孔質電極基材前駆体シートを交絡処理する工程(3)を有する上記〔2〕または〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 工程(1)の前に、請求項1に記載の製造方法で得た多孔質電極基材前駆体シートに、炭素化可能な樹脂(c)を含浸させる工程(5)を有する上記〔2〕または〔3〕に記載の製造方法。
〔6〕 工程(3)と工程(1)の間に、多孔質電極基材前駆体シートに、炭素化可能な樹脂(c)を含浸させる工程(5)を有する上記〔4〕に記載の製造方法。
〔7〕 多孔質電極基材前駆体シートが、炭素短繊維(A)の繊維束比率が2個以下である多孔質電極基材前駆体シートであることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
<繊維束比率の求め方>
(I)多孔質電極基材前駆体シートの背面および上面から光を当て、15cm×15cmの範囲を200万画素以上のデジタルカメラを用いて撮影する。
(II)上記(I)で撮影した写真をもとに、当該15cm×15cmの範囲において炭素短繊維(A)が複数本束になった状態である繊維束の個数を測定する。
(III)多孔質電極基材前駆体シート上の任意の3か所おいて上記(I)(II)の測定を行い、その平均値を繊維束比率とする。
〔8〕 上記〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法により得られる多孔質電極基材。
〔9〕 炭素短繊維(A)が網目状炭素繊維(B)及び/又は樹脂炭化物(C)で結着されており、炭素短繊維(A)の繊維束比率が2個以下である上記〔8〕に記載の多孔質電極基材。
<繊維束比率の求め方>
(I)多孔質電極基材の背面および上面から光を当て、15cm×15cmの範囲を200万画素以上のデジタルカメラを用いて撮影する。
(II)上記(I)で撮影した写真をもとに、当該15cm×15cmの範囲において炭素短繊維(A)が複数本束になった状態である繊維束の個数を測定する。
(III)多孔質電極基材上の任意の3か所おいて上記(I)(II)の測定を行い、その平均値を繊維束比率とする。
〔10〕 上記〔8〕または〔9〕に記載の多孔質電極基材を用いた膜−電極接合体。
〔11〕 上記〔10〕に記載の膜−電極接合体を用いた固体高分子型燃料電池。
本発明によれば、前駆体シートを製造する際の製造コストが低く、かつ炭素繊維が集束した繊維束が少ない、多孔質電極基材前駆体シート、およびその製造方法、さらに多孔質電極基材とした際のハンドリング性と表面平滑性に優れ、シートの厚みムラ、うねりが改善され、且つ十分なガス透気度および導電性を持つ多孔質電極基材およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<炭素短繊維(A)>
炭素短繊維としては、その原料によらず用いることができるが、ポリアクリロニトリル(以後PANと略す。)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維から選ばれる1つ以上の炭素繊維を含むことが好ましく、PAN系炭素繊維あるいはピッチ系炭素繊維を含むことがより好ましい。炭素短繊維の平均直径は、3〜30μm程度が好ましく、4〜20μmがより好ましく、4〜12μmがさらに好ましい。この範囲内であると多孔質電極基材としての表面平滑性と導電性がよい。
炭素短繊維の平均長は、2〜12mm程度であることが好ましい。この範囲内であるとシート化時の分散性と多孔質電極基材としての機械的強度が高くなる。
ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、原料として、アクリロニトリルを主成分とするポリマーを用いて製造されるものである。具体的には、PAN系繊維を紡糸する製糸工程、200〜400℃の空気雰囲気中で該繊維を加熱焼成して酸化繊維に転換する耐炎化工程、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中でさらに300〜2500℃に加熱して炭化する炭化工程を経て得ることのできる炭素繊維で、複合材料強化繊維として好適に使用される。そのため、他の炭素繊維に比べて強度が強く、機械的強度の強い炭素シートを形成することができる。
<網目状炭素繊維(B)>
網目状炭素繊維(B)は、炭素短繊維(A)同士を接合する繊維で、接合部において屈曲状または湾曲状になっている状態で存在し、それぞれが網目構造を形成している。網目状炭素繊維(B)は前駆体繊維(b)を加熱によって炭素化して得られる。炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を混合し、焼成することにより、炭素短繊維(A)は網目状炭素繊維(B)により結着される。
多孔質電極基材における網目状炭素繊維(B)の含有率は、10〜90質量%であることが好ましい。多孔質電極基材の導電性と機械的強度を十分なものに保つため、網目状炭素繊維(B)の含有率は、15〜80質量%であることがより好ましい。
<前駆体繊維(b)>
前駆体繊維(b)としては、炭素繊維前駆体短繊維(b1)およびフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の一方、もしくは両方を用いることができる。好ましくはフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)である。
<炭素繊維前駆体短繊維(b1)>
炭素繊維前駆体短繊維(b1)は、後述するポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)を用いて作製した長繊維状の炭素繊維前駆体繊維を適当な長さにカットしたものであることができる。炭素繊維前駆体短繊維(b1)の平均繊維長は、分散性の点から、2mm以上20mm以下が好ましい。なお、平均繊維長は、光学顕微鏡および電子顕微鏡により測定することができる。炭素繊維前駆体短繊維(b1)の断面形状は特に限定されないが、炭素化した後の機械的強度、製造コストの面から、真円度の高いものが好ましい。また、炭素繊維前駆体短繊維(b1)の平均直径は、炭素化時の収縮による破断を抑制する観点から、5μm以下であることが好ましい。なお、平均繊維径(直径)は、光学顕微鏡および電子顕微鏡により測定することができる。
炭素繊維前駆体短繊維(b1)は、炭素化処理する工程における残存質量が20質量%以上であるポリマーを用いることが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーが挙げることができる。紡糸性および低温から高温にかけて炭素短繊維(A)同士を接合させることができ、炭素化時の残存質量が大きい点、さらに、後述する交絡処理を行う際の繊維弾性、繊維強度を考慮すると、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
炭素繊維前駆体短繊維(b1)は、1種類であってもよく、繊維直径、ポリマー種が異なる複数種類であってもよい。これらの炭素繊維前駆体短繊維(b1)や後述するフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の種類や炭素短繊維(A)との混合比、200℃以上300℃以下での酸化処理の有無によって、最終的に得られる多孔質電極基材中に網目状炭素繊維(B)として残る割合を調整することができる。
<炭素繊維前駆体短繊維(b1)に用いるアクリル系ポリマー>
アクリル系ポリマーとしては、アクリロニトリルの単独重合体であっても、アクリロニトリルとその他のモノマーとの共重合体であってもよい。アクリロニトリルと共重合されるモノマーとしては、一般的なアクリル系繊維を構成する不飽和モノマーであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、5万以上100万以下であることが好ましい。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が5万以上であることで、紡糸性が向上すると同時に、繊維の糸質が良好になる傾向にある。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100万以下であることで、紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー濃度が高くなり、生産性が向上する傾向にある。
<フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)>
フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)としては、例えば以下のものを用いることができる。直径100μm以下の繊維状の幹より、直径が数μm以下(例えば0.1〜3μm)のフィブリルが多数分岐した構造を有する炭素前駆体繊維(b2−1)や、叩解によってフィブリル化した炭素前駆体短繊維(b2−2)を用いることができる。なお、以下、この2つのフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)をそれぞれ、繊維(b2−1)および繊維(b2−2)と称することがある。
これらのフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を用いることにより、前駆体シート中で炭素短繊維(A)とフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)が良く絡み合い、ハンドリング性と機械的強度の優れた前駆体シートを得ることが容易となる。フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の濾水度は特に限定されないが、一般的に濾水度が小さいフィブリル状繊維を用いると前駆体シートの機械的強度が向上するが、多孔質電極基材のガス透気度が低下する傾向がある。フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を用いることで、スラリーの濾水性が変化するため、スラリーの濾水性を80〜300mlとするため、フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の濾水度および混合比を調整することが好ましい。
フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)としては、繊維(b2−1)1種類、または繊維(b2−2)を1種類使用してもよく、また濾水度、繊維直径、ポリマー種等が異なるこれら繊維を複数種類併用してもよい。
以下に、この2つのフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)について詳しく説明する。
<繊維(b2−1)>
繊維(b2−1)に用いられるポリマーは、炭素化処理工程における残存質量が20質量%以上であることが好ましい。このようなポリマーとしては、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーを挙げることができる。紡糸性および低温から高温にかけて炭素短繊維(A)同士を接合させることができ、炭素化時の残存質量が大きい点、さらに、炭素短繊維(A)との交絡、シート強度を考慮すると、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。アクリル系ポリマーとしては炭素繊維前駆体短繊維(b1)と同様のものを用いることができる。
繊維(b2−1)の製造方法は特に限定されないが、濾水度のコントロールが容易な噴射凝固法を用いて製造することが好ましい。噴射凝固法による繊維(b2−1)は例えば以下の方法で製造できる。
まず、アクリロニトリル系共重合体を溶媒に溶解させて紡糸原液を調製する。この溶媒としては、例えば、ジメチルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどを用いることができる。ついで、この紡糸原液を紡糸吐出口に通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気を紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出し、混合セル内でこのアクリロニトリル系共重合体を剪断流速の下で凝固させる。形成された凝固体を前記溶媒と水蒸気と共に混合セルから凝固液中に排出することで繊維(b2−1)が得られる。凝固液としては水または、水と前記溶媒との混合液を用いることができる。
このようにして得られた繊維(b2−1)は、繊維径の細い繊維が集合したフィブリル部と水蒸気にあまり触れることなく凝固した繊維径の太い芯部(幹)を有している。繊維(b2−1)のフィブリル部は炭素短繊維Aや繊維(b2−1)のフィブリル部同士との絡みを良好とし、繊維(b2−1)の芯部はバインダーとしての強度を発現することができる。
繊維(b2−1)のフィブリル部の繊維径は混合する炭素短繊維との絡みを良好にするため、2μm以下が好ましい。
芯部は、多孔質電極基材の均質化の観点から直径100μm以下であることが好ましい。直径を100μm以下とすることにより、繊維(b2−1)が偏在することを容易に抑制でき、比較的少量の繊維(b2−1)によって容易に炭素短繊維Aを結着することができる。また、強度を発現する観点から、芯部の直径は10μm以上であることが好ましい。
繊維(b2−1)が炭素短繊維Aに絡む機能の観点から、一つの芯部に対して繊維(b2−1)のフィブリル部が複数存在することが好ましく、一つの芯部に対してフィブリル部が多いほど好ましいと考えられる。
一本の繊維(b2−1)において、芯部の太さは、一定であるか、あるいは無段階に変化するものが好ましい。このような繊維(b2−1)を用いることにより、芯部の太さの段階的な変化により段差の部分が弱くなることを容易に防ぐことができ、強度が低下することを容易に防ぐことができる。なお、上記方法で繊維(b2−1)を製造した場合、水蒸気がランダムに飛び散ることにより芯部の太さを一定に保つことが困難な場合があり、芯部の太さが変化することがある。しかし、芯部の太さの段階的な変化は、噴射する水蒸気が冷えて液滴状になった場合に見られる傾向があるため、水蒸気の噴出圧および温度を高くするなどの方法で芯部の太さが段階的に変化することを容易に防止することができる。
<繊維(b2−2)>
繊維(b2−2)は、長繊維状の易割繊性海島複合繊維を適当な長さにカットしたものを、リファイナーやパルパーなどによって叩解しフィブリル化したものであることができる。長繊維状の易割繊性海島複合繊維は、共通の溶剤に溶解し、かつ非相溶性である2種類以上の異種ポリマーを用いて製造することができ、少なくとも1種類のポリマーが、炭素化処理工程における残存質量20質量%以上であることが好ましい。易割繊性海島複合繊維に用いられるポリマーのうち、炭素化処理工程における残存質量が20質量%以上であるものとしては、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーが挙げられる。中でも、紡糸性および炭素化処理工程における残存質量の観点から、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
アクリル系ポリマーとしては炭素繊維前駆体短繊維(b1)と同様のものを用いることができる。
易割繊性海島複合繊維に用いられるポリマーのうちの1種類に、炭素化処理工程における残存質量が20質量%以上であるポリマーとして、上述するアクリル系ポリマーを用いた場合、他のポリマーとしては、そのアクリル系ポリマーと共通の溶剤に溶解し、両ポリマーを溶解した紡糸原液が安定に存在することが望まれる。すなわち、他のポリマーは、アクリル系ポリマーと共通の溶剤に溶解した場合に、アクリル系ポリマーに対して非相溶であり、紡糸の際に海島構造を形成できる程度の混和性を有することが望まれる。これにより、紡糸原液とした際に、2種のポリマーの非相溶性の度合いが大きい場合に生じる繊維の不均質性を容易に防ぐとともに、紡糸時における糸切れを容易に防ぐことができ、さらに、繊維賦形を容易にすることができる。また、他のポリマーは水に難溶性であることが望まれ、これにより湿式紡糸する場合に、凝固槽、および洗浄槽において他のポリマーが水に溶解して脱落が起こることを容易に防ぐことができる。
これらの要望を満足する他のポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、酢酸セルロース、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂は、前述した要望のバランスの点で、好ましい。他のポリマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
繊維(b2−2)に用いる易割繊性海島複合繊維は、通常の湿式紡糸法で製造することができる。先ず、アクリル系ポリマーと他のポリマーとを溶剤に溶解して紡糸原液を調製する。または、アクリル系ポリマーを溶剤に溶解して得られる紡糸原液と、他のポリマーを溶剤に溶解して得られる紡糸原液とを、スタティックミキサー等で混合して紡糸原液としてもよい。溶剤としては、ジメチルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどを用いることができる。これらの紡糸原液を紡糸機に供給してノズルより紡糸し、湿熱延伸、洗浄、乾燥および乾熱延伸を施こすことで、易割繊性海島複合繊維を得ることができる。
易割繊性海島複合繊維の断面形状は、特に限定されない。分散性、炭素化時の収縮による破断を抑制するため、易割繊性海島複合繊維の繊度は、1dtex以上10dtex以下であることが好ましい。易割繊性海島複合繊維の平均繊維長は、叩解後の分散性の観点から、1mm以上20mm以下が好ましい。
易割繊性海島複合繊維は、機械的外力により相分離界面の剥離により叩解して、その少なくとも一部分が割繊し、フィブリル化する。叩解方法は、特に限定されないが、例えば、リファイナーやパルパー、ビーター、または加圧水流の噴射(ウオータージェットパンチング)によりフィブリル化することが可能である。易割繊性海島複合繊維を機械的外力により相分離界面の剥離により叩解する際には、叩解方法、叩解時間に依存して、フィブリル化の状態は変化する。フィブリル化の度合いを評価する方法として、濾水度評価(JIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型))を用いることができる。繊維(b2−2)の濾水度は特に限定されない。
<樹脂炭化物(C)>
樹脂炭化物は、炭素短繊維(A)間および炭素短繊維(A)と網目状炭素繊維(B)間とを結着する炭化物であり、樹脂を加熱によって炭素化して得られる炭素材を用いることができる。加熱によって炭素化可能な樹脂(c)としては、炭素化した段階で炭素短繊維(A)間および炭素短繊維(A)と網目状炭素繊維(B)間とを結着することのできる公知の樹脂から適宜選んで用いることができる。炭素化後に導電性物質として残存しやすいという観点から、樹脂(c)としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ピッチ等が好ましく、加熱による炭素化の際の炭化率の高いフェノール樹脂が特に好ましい。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。フェノール樹脂としては、アルコールやケトン類の溶媒に溶解したフェノール樹脂溶液や、水などの分散媒に分散したフェノール樹脂分散液などを用いることができる。
樹脂炭化物中には導電性をさらに向上させるため導電性物質を混合することも好ましい。導電性物質としては、導電性、耐酸性の観点より炭素質ミルド繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛粉などの炭素質材料が好ましい。加熱によって炭素化可能な樹脂(c)中の導電性物質を混合量は、樹脂に対して、1〜10質量%が好ましい。混合量が1質量%未満であると導電性改善の効果が小さいという点で不利であり、10質量%を越えると導電性改善の効果が飽和する傾向にあり、またコストアップの要因となるという点で不利である。
多孔質電極基材における樹脂炭化物(C)の含有率は、10〜90質量%であることが好ましい。多孔質電極基材の導電性と機械的強度を十分なものに保つため、樹脂炭化物(C)の含有率は、15〜80質量%であることがより好ましい。
<前駆体シート>
前駆体シートは、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを分散させたものであり、3次元交絡構造を形成しても形成していなくても良い。3次元交絡構造を形成するための交絡処理に関しては後述する。
前駆体シートを構成する炭素短繊維(A)のシート中での質量比は、前駆体シートおよび熱処理した後の多孔質電極基材のシート強度発現の観点より、繊維物質全量に対して40%以上90%以下が好ましい。
本発明において「繊維物質全量」とは、シート中に存在する全ての繊維状物質の量をいう。例えば、バインダーとして有機高分子化合物を繊維形状にして用いた場合は、当該繊維状バインダーの質量も繊維物質として炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)の質量に加えて、炭素短繊維(A)の繊維物質全量に対する質量比を求める。
前駆体シートは、湿式法によって製造することができる。湿式法は、液体の媒体中に炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を分散させて抄造する方法である。炭素短繊維(A)が単繊維に開繊するのを助け、開繊した単繊維が再収束することを防止し、さらに炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とが絡み合ってシート強度を向上させ実質的にバインダーフリーとするためにも、フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を使用して、湿式法によって製造することが好ましい。
炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を分散させる媒体としては、例えば、水、アルコールなど、前駆体繊維(b)が溶解しない媒体が挙げられるが、生産性の観点から、水が好ましい。
前駆体シートは、連続法とバッチ法のいずれによっても製造できるが、前駆体シートの生産性および機械的強度の観点から、連続法で製造することが好ましい。
前駆体シート中に炭素短繊維(A)が集束した繊維束が存在すると、多孔質電極基材とした際の局所的なガス拡散性や導電性の斑が原因となり、燃料電池に組み込んだ状態で発電性能に斑が生じ、電池耐久性に大きな影響を及ぼす。そのため、前駆体シート中の炭素短繊維(A)が集束した繊維束の比率である繊維束比率が2個以下であることが好ましい。
<繊維束比率の求め方>
(I)多孔質電極基材前駆体シートの背面および上面から光を当て、15cm×15cmの範囲を200万画素以上のデジタルカメラを用いて撮影する。
(II)上記(I)で撮影した写真をもとに、当該15cm×15cmの範囲において炭素短繊維(A)が複数本束になった状態である繊維束の個数を測定する。
(III)多孔質電極基材前駆体上の任意の3か所おいて上記(I)(II)の測定を行い、その平均値を繊維束比率とする。
<スラリー>
湿式法で前駆体シートを作製する際、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を含む繊維混合物を分散溶媒に分散させることで、シート化用のスラリーを調整することができる。
前駆体シートおよび熱処理した後の多孔質電極基材のシート強度発現の観点より、繊維混合スラリー中の炭素短繊維(A)の混合割合を繊維物質全量に対する質量比で40%以上90%以下とすることが好ましい。
本発明において「繊維物質全量」とは、スラリー中に存在する全ての繊維状物質の量をいう。例えば、バインダーとして有機高分子化合物を繊維形状にして用いた場合は、当該繊維状バインダーの質量も繊維物質として炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)の質量に加えて、炭素短繊維(A)の繊維物質全量に対する質量比を求める。
前駆体シート中で炭素短繊維(A)が集束した繊維束を発生させないようにし、かつスラリー調製時の水の使用量を低減し、さらに脱水時のユーティリティーを低減するため、スラリー中の繊維濃度が0.8〜1.8g/L、かつ後述する濾水性が80〜300mlのスラリーを用いることが好ましい。繊維濃度が高すぎると前駆体シート中で炭素短繊維(A)が集束した繊維束が発生し、繊維濃度が低すぎると、水とユーティリティーが増加し、前駆体シートの製造コストが高くなる。濾水性が高すぎとスラリー中で分散していた炭素短繊維(A)が再び集束した繊維束が発生し、濾水性が低すぎとスラリー中から分散媒である水を脱水することが困難となり、ユーティリティーが増加し、前駆体シートの製造コストが高くなることに加え、連続的にシート化する際には、脱水位置が一定とならないことより、シート地合が悪化する。
なお、本発明における「スラリー中の繊維濃度」とは、スラリー中の全ての繊維の濃度である。例えば、バインダーとして有機高分子化合物を繊維形状にして用いた場合は、当該繊維状バインダーも繊維として炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)に加えて換算し、繊維濃度を求める。
スラリーの濾水性評価は、繊維の濾水度測定(JIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型))に用いる濾水度計を用いて、スラリーの濾水を測定する。
スラリー濾水性(ml)=抄紙用スラリー原液を濾水度計に充填し、JIS P8121に準拠した方法で濾水性を評価
<多孔質電極基材>
本発明の多孔質電極基材は、構造体中に分散された炭素短繊維(A)が、網目状炭素繊維(B)によって結着された構造体、または構造体中に分散された炭素短繊維(A)同士が、網目状炭素繊維(B)によって結着されかつ、樹脂炭化物(C)によって炭素短繊維(A)間および炭素短繊維(A)と網目状炭素繊維(B)間とが結着された構造体、または炭素短繊維(A)が樹脂炭化物(C)によって結着された構造体である。
多孔質電極基材は、シート状、渦巻き状等の形状をとることができる。シート状にした場合、多孔質電極基材の目付けは、15〜100g/m程度が好ましく、空隙率は、50〜90%程度が好ましく、厚みは、20μm以上400μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上、300μm以下である。
多孔質電極基材のガス透気度は、500〜30000ml/hr/cm/mmAqであることが好ましい。また、多孔質電極基材の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、50mΩ・cm以下であることが好ましい。なお、多孔質電極基材のガス透気度および貫通方向抵抗の測定方法は、後述する。
多孔質電極基材中に炭素短繊維(A)が集束した繊維束が存在すると、局所的なガス拡散性や導電性の斑が原因となり、燃料電池に組み込んだ状態で発電性能に斑が生じ、電池耐久性に大きな影響を及ぼす。そのため、多孔質電極基材中の炭素短繊維(A)が集束した繊維束の比率である繊維束比率が2個以下であることが好ましい。
本発明の多孔質電極基材中に、炭素短繊維(A)が集束した繊維束が存在すると、局所的なガス拡散性や導電性の斑が原因となり、燃料電池に組み込んだ状態で発電性能に斑が生じ、電池耐久性に大きな影響を及ぼす。そのため、多孔質電極基材中の炭素短繊維(A)が集束した繊維束の比率である繊維束比率が2個以下であることが好ましい。
<繊維束比率の求め方>
(I)多孔質電極基材の背面および上面から光を当て、15cm×15cmの範囲を200万画素以上のデジタルカメラを用いて撮影する。
(II)上記(I)で撮影した写真をもとに、当該15cm×15cmの範囲において炭素短繊維(A)が複数本束になった状態である繊維束の個数を測定する。
(III)多孔質電極基材上の任意の3か所おいて上記(I)(II)の測定を行い、その平均値を繊維束比率とする。
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法では、繊維混合スラリー中の繊維が、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を含む混合物であり、炭素短繊維(A)の混合割合が繊維物質全量に対する質量比で40%以上90%以下である繊維混合スラリーを抄紙して多孔質電極基材前駆体シートを製造する。
前駆体シートの製造方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維(A)、または炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを分散させて抄造する湿式法がシートの均一性が高いという観点から好ましい。
湿式法により抄造する際には、炭素短繊維(A)が単繊維に開繊するのを助け、開繊した単繊維が再収束することを防止し、かつ抄造の際の使用水およびユーティリティーを低減するため、繊維物質全量に対する質量比で40〜90質量%の炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b1)および/またはフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)を含む繊維混合物の繊維濃度を0.8〜1.8g/Lとし、かつ濾水性が50〜300mlのスラリーを用いることが好ましい。また必要に応じて有機高分子化合物をバインダーとして使用して、湿式抄紙することもできる。
この有機高分子化合物は、炭素短繊維(A)、または炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを含む前駆体シート中で、各成分をつなぎとめるバインダー(糊剤)としての役割を有する。この有機高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニルなどを用いることができる。特に、抄紙工程での結着力に優れ、炭素短繊維の脱落が少ないことから、ポリビニルアルコールが好ましい。本発明では、この有機高分子化合物を繊維形状にして用いることも可能である。
前駆体繊維(b)を用いる場合は、バインダーとしての有機高分子化合物を用いずにシート化しても、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)(例えばフィブリル状炭素前駆体繊維(b2))との適度な絡みにより前駆体シートを得ることができる。
炭素短繊維(A)、または炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを分散させる媒体としては、例えば、水、アルコールなどの前駆体繊維(b)が溶解しない媒体が挙げられるが、生産性の観点から、水が好ましい。
スラリーの濾水性を80〜300mlとする方法は特に制限されないが、スラリー中の繊維濃度や、濾水度の低い前駆体繊維(b)(例えばフィブリル状炭素前駆体繊維(b2))の繊維物質全量に対する質量比を制御する方法、ポリアクリルアミドやカルボキシメチルセルロースなどの紙力増強剤の添加量を制御する方法が好ましい。またこれら方法を組み合わせて用いることも好ましい。スラリー中の繊維濃度や、濾水度の低い前駆体繊維(b)(例えばフィブリル状炭素前駆体繊維(b2))の繊維物質全量に対する質量比を高くすること、ポリアクリルアミドやカルボキシメチルセルロースなどの紙力増強剤の添加量を増やすことにより、スラリーの濾水性を小さくすることができ、スラリー中の繊維濃度や、濾水度の低い前駆体繊維(b)(例えばフィブリル状炭素前駆体繊維(b2))の繊維物質全量に対する質量比を低くすること、ポリアクリルアミドやカルボキシメチルセルロースなどの紙力増強剤の添加量を減らすことにより、スラリーの濾水性を大きくすることができる。具体的には、前述のスラリーの濾水性の評価方法に基づき濾水性を求め、上記対応にて濾水性を調整すればよい。
炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを混合する方法としては、水中で攪拌分散させる方法、これらを直接混ぜ込む方法が挙げられるが、均一に分散させる観点から、水中で攪拌分散させる方法が好ましい。炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを混合し、抄紙して前駆体シートを製造することにより、前駆体シートの強度が向上する。また、その製造途中で、前駆体シートから炭素短繊維(A)が剥離し、炭素短繊維(A)の配向が変化することを防止することができる。
前駆体シートは、連続法とバッチ法のいずれによっても製造できるが、前駆体シートの生産性および機械的強度の観点から、連続法で製造することが好ましい。
前駆体シートの目付は、前駆体シートのハンドリング性および多孔質電極基材としたときのガス透過性、導電性、ハンドリング性の観点から10g/m以上、200g/m以下であることが好ましい。
また、前駆体シートの厚みは、ガス透過性、導電性、ハンドリング性の観点から、20μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上、400μm以下である。
前駆体繊維(b)を用いる場合は、その種類や炭素短繊維(A)との混合比、酸化処理の有無によって、最終的に得られる多孔質電極基材中に網目状炭素繊維(B)として残る割合を調整することができる。
前駆体シート中において炭素短繊維(A)が質量比で40%以上90%以下であることが好ましい。炭素短繊維(A)の質量比を90%以下とすることで、形成される網目状炭素繊維(B)の量が適度に多くなるため、前駆体シートおよび熱処理した後の多孔質電極基材シートの強度を容易に向上させることができる。炭素短繊維(A)の質量比を40%以上とすることで、炭素化時の前駆体繊維(b)の収縮を抑制する炭素短繊維(A)が少ないことに起因するシートの収縮を容易に抑制でき、前駆体シートおよび熱処理した後の多孔質電極基材シートの強度を容易に向上させることができる。
このようにして得られた多孔質電極基材前駆体シートを、加熱加圧処理する工程(1)と、工程(1)で加熱加圧した前駆体シートを1000℃以上の温度で炭素化処理する工程(2)を経させることにより、多孔質電極基材を製造することができる。
工程(1)と工程(2)の間に、加熱加圧処理された多孔質電極基材前駆体シートを酸化処理する工程(4)を設けるとより好ましい。
また、工程(1)の前に、上記の製造方法で得られた多孔質電極基材前駆体シートを交絡処理する工程(3)を設けと更に好ましい。
更に、工程(1)の前に、若しくは工程(3)を有する場合は工程(3)と工程(1)の間に、多孔質電極基材前駆体シートに炭素化可能な樹脂(c)を含浸させる工程(5)を設けることが好ましい。
以下工程(1)〜(5)につき説明する。
<加熱加圧処理する工程(1)>
多孔質電極基材が、構造体中に分散された炭素短繊維(A)同士が、網目状炭素繊維(B)によって十分に結着された構造体、または構造体中に分散された炭素短繊維(A)同士が、網目状炭素繊維(B)によって十分に結着されかつ、樹脂炭化物(C)によって炭素短繊維(A)間および炭素短繊維(A)と網目状炭素繊維(B)間とが十分に結着された構造体とし、かつ多孔質電極基材の厚みムラを低減させるために、前駆体シートを300℃未満の温度で加熱加圧成型することが好ましい。加熱加圧成型は、前駆体シートを均等に加熱加圧成型できる技術であれば、いかなる技術も適用できる。例えば、前駆体シートの両面に平滑な剛板を当てて熱プレスする方法や、連続ロールプレス装置または連続ベルトプレス装置を用いる方法が挙げられる。
連続的に製造された前駆体シートを加熱加圧成型する場合には、連続ロールプレス装置や連続ベルトプレス装置を用いる方法が好ましい。これによって、炭素化処理を連続で行うことができる。連続ベルトプレス装置におけるプレス方法としては、ロールプレスによりベルトに線圧で圧力を加える方法、液圧ヘッドプレスにより面圧でプレスする方法などが挙げられる。後者の方がより平滑な多孔質電極基材が得られるという点で好ましい。
加熱加圧成型時の温度は、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)および樹脂(c)の接合を十分なものとし、かつ多孔質電極基材前駆体シートの表面を効果的に平滑にするために、300℃未満が好ましく、120〜290℃がより好ましい。
加熱加圧成型時の圧力は特に限定されないが、20kPa〜10MPa程度が好ましい。このとき必要以上にプレス圧を高くすると、加熱加圧成型時に炭素短繊維(A)が破壊されるという問題や、多孔質電極基材の組織が緻密になりすぎるという問題等が生じる可能性がある。
加熱加圧成型の時間は、例えば5秒〜10分とすることができる。前駆体シートを2枚の剛板に挟む、または連続ロールプレス装置や連続ベルトプレス装置で加熱加圧成型する時は、剛板またはロールやベルトに前駆体繊維(b)および/また樹脂(c)などが付着しないように、あらかじめ剥離剤を塗っておくことや、前駆体シートと剛板またはロールやベルトとの間に離型紙を挟むことが好ましい。
加熱加圧成型する際に1枚の前駆体シートを成型しても、複数枚の前駆体シートを重ね合わせて一体化するように成型しても良い。
<炭素化処理する工程(2)>
工程(2)により、前駆体繊維(b)および/または樹脂(c)が炭素化され、網目状炭素繊維(B)および/または樹脂炭化物(C)となる。これにより、得られる多孔質電極基材の機械的強度および導電性が向上する。
炭素化処理は、得られる多孔質電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で行なうことが好ましい。炭素化処理は、通常1000℃以上の温度で行なわれる。炭素化処理する温度範囲は、1000〜3000℃が好ましく、1000〜2200℃がより好ましい。炭素化処理を行なう時間は、例えば10分〜1時間程度である。また、炭素化処理の前に、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行なうことができる。
連続的に製造された前駆体シートを炭素化処理する場合は、製造コスト低減化の観点から、前駆体シートの全長にわたって連続で炭素化処理を行なうことが好ましい。多孔質電極基材を長尺にすれば、多孔質電極基材の生産性をさらに高くすることができ、かつその後のMEA(Membrane Electrode Assembly)製造も連続で行なうことができるので、燃料電池の製造コストを容易に低減できる。また、多孔質電極基材や燃料電池の生産性および製造コスト低減化の観点から、製造された多孔質電極基材を連続的に巻き取ることが好ましい。
また本発明では、上述したように、工程(1)の前に、前駆体シートを交絡処理する工程(3)を含むことができる。この際、工程(1)および(2)は、前述した方法により実施される。この形態では、交絡処理工程を含むため、前駆体シートおよび多孔質電極基材のハンドリンク性が向上する。さらに、交絡処理により多孔質電極基材の厚み方向の導電性が向上する。以下に、交絡処理工程について詳しく説明する。
<交絡処理する工程(3)>
前駆体シート中の炭素短繊維(A)、または炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを交絡させる交絡処理は、交絡構造が形成される方法であればよく、公知の方法で実施できる。例えば、ニードルパンチング法などの機械交絡法、ウォータージェットパンチング法などの高圧液体噴射法、スチームジェットパンチング法などの高圧気体噴射法、或いはこれらの組み合わせによる方法を用いることができる。交絡工程での炭素短繊維(A)の破断を容易に抑制でき、かつ適度な交絡性が容易に得られるという点から、高圧液体噴射法が好ましい。以下、この方法について詳しく説明する。
高圧液体噴射処理法とは、実質的に表面平滑な支持部材上に前駆体シートを載せ、例えば、1MPaの圧力で噴射される液体柱状流、液体扇形流、液体スリット流等を作用させることによって、前駆体シート中の炭素短繊維(A)、または炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)とを交絡させる処理方法である。ここで、実質的に表面平滑な支持部材としては、支持部材の模様が得られる交絡構造体に形成されることなく、かつ噴射された液体が速やかに除かれるようなものから必要に応じて選択して用いることができる。その具体例としては30〜200メッシュの金網又はプラスチックネット或いはロール等を挙げることができる。
実質的に表面平滑な支持部材上で前駆体シートを製造した後、高圧液体噴射処理することが、交絡構造前駆体シートを連続的に製造でき、生産性の観点から好ましい。
高圧液体噴射処理に用いる液体としては、前駆体シートを構成する繊維を溶解する溶剤以外なら何でもよいが、通常は水或いは温水を用いることが好ましい。高圧液体噴射ノズル中のそれぞれの噴射ノズルの孔径は、柱状流の場合、十分な交絡効果が得られるという観点から、0.03mm以上1.0mm以下が好ましく、0.05mm以上0.3mm以下がより好ましい。ノズル噴射孔と積層体の間の距離は、0.5cm以上5cm以下が好ましい。液体の圧力は、0.5MPa以上が好ましく、1.0MPa以上がより好ましい。交絡処理は、1列でもよく複数列で行ってもよい。複数列で行なう場合、1列目よりも2列目以降の高圧液体噴射処理の圧力を高めることが有効である。
前駆体シートの高圧液体噴射による交絡処理は、複数回繰り返してもよい。即ち、前駆体シートに高圧液体噴射処理を行った後、更に前駆体シートを積層し、高圧液体噴射処理を行ってもよいし、出来つつある交絡構造前駆体シートを裏返し、反対側から、高圧液体噴射処理を行ってもよい。また、これらの操作を繰り返してもよい。
交絡構造前駆体シートを連続的に製造する場合、1列または複数列のノズル孔を備える高圧液体噴射ノズルをシートの幅方向に振動させことにより、シート化方向にシートの疎密構造の形成に由来する筋状の軌跡パターンが形成されることを抑制することができる。シート化方向の筋状の軌跡パターンを抑制することにより、シート幅方向の機械的強度を発現することができる。また1列または複数列のノズル孔を備える高圧液体噴射ノズルを複数本使用する場合、高圧液体噴射ノズルをシートの幅方向に振動させる振動数、またその位相差を制御することにより交絡構造前駆体シートに現れる周期的な模様を抑制することもできる。
次に、本発明では、加熱加圧工程(1)と炭素化処理工程(2)との間に、加熱加圧された前駆体シートを酸化処理する工程(4)を含むことができる。炭素短繊維(A)を、前駆体繊維(b)で良好に融着させ、かつ前駆体繊維(b)の炭素化率を向上させるという観点から、加熱加圧した前駆体シートを、酸化処理することが好ましい。以下に、酸化処理工程について詳しく説明する。
<酸化処理する工程(4)>
酸化処理の温度は、炭素化率を向上させる観点から、200℃以上300℃未満とすることが好ましく、240℃以上290℃以下とすることがより好ましい。酸化処理の時間は、例えば1分間〜2時間とすることができる。酸化処理としては、加熱多孔板を用いた加圧直接加熱による連続酸化処理、または加熱ロール等を用いた間欠的な加圧直接加熱による連続酸化処理が、低コスト、かつ炭素短繊維(A)を前駆体繊維(b)で融着させることができるという点で好ましい。連続的に製造された前駆体シートを酸化処理する場合、前駆体シートの全長にわたって連続で酸化処理することが好ましい。これによって、炭素化処理を容易に連続して行なうことができる。
次に、本発明では、加熱加圧工程(1)の前に、前駆体シートを樹脂(c)を含浸する工程(5)を含むことができる。なお、工程(3)がある場合は、は工程(3)と行程(1)の間に工程(5)を設ける。この際、工程(1)、(2)および(3)は、前述した方法により実施される。この形態では、炭素短繊維(A)間および炭素短繊維(A)と網目状炭素繊維(B)間とを樹脂炭化物(C)で結着させることができるため、多孔質電極基材のハンドリンク性が向上する。さらに、多孔質電極基材の厚み方向の導電性が向上する。以下に、樹脂含浸工程について詳しく説明する。
<樹脂含浸工程(5)>
本発明においては、上述した炭素短繊維を含む前駆体シートに炭素化可能な樹脂または樹脂と導電体の混合物を含浸し、加熱加圧により硬化し、次いで炭素化することにより燃料電池用多孔質電極基材とする。
樹脂または樹脂と導電体の混合物を前駆体シートに含浸する方法としては、絞り装置を用いる方法もしくは樹脂フィルムを炭素シートに重ねる方法が好ましい。絞り装置を用いる方法は樹脂溶液もしくは混合液中に炭素シートを含浸し、絞り装置で取り込み液が炭素シート全体に均一に塗布されるようにし、液量は絞り装置のロール間隔を変えることで調節する方法である。比較的粘度が低い場合はスプレー法等も用いることができる。
樹脂フィルムを用いる方法は、まず熱硬化性樹脂を離型紙に一旦コーティングし、熱硬化性樹脂フィルムとする。その後、炭素シートに前記フィルムを積層して加熱加圧処理を行い、熱硬化性樹脂を転写する方法である。
<膜−電極接合体(MEA)>
本発明の多孔質電極基材は、膜−電極接合体に好適に用いることができる。膜−電極接合体は、高分子電解質膜、触媒層、および多孔質炭素電極基材からなり、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜の一方の面に酸化ガス用触媒からなるカソード側触媒層を備え、もう一方の面に燃料ガス用触媒からなるアノード側触媒層を備えており、それぞれの触媒層の外側には、カソード側多孔質電極基材およびアノード側多孔質電極基材が備えられている。
<固体高分子型燃料電池>
本発明の膜−電極接合体は、固体高分子型燃料電池に好適に用いることができる。固体高分子型燃料電池は、膜−電極接合体を挟持するように、カソード側ガス流路が形成されたカソード側セパレーター、およびアノード側ガス流路が形成されたアノード側セパレーターを備えている。また、それぞれのセパレーターには、酸化ガス導入部と酸化ガス排出部、および燃料ガス導入部と燃料ガス排出部が備えられている。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。実施例中の各物性値等は以下の方法で測定した。「部」は「質量部」を意味する。
(1)ガス透気度
JIS規格P−8117に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、多孔質電極基材のガス透気度(ml/hr/cm/mmAq)を算出した。
(2)厚み
多孔質電極基材の厚みは、厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ((株)ミツトヨ製、商品名:7321)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。
(3)貫通方向抵抗
多孔質電極基材の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、金メッキした銅板に多孔質電極基材を挟み、銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cmの電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。
(数1)
貫通方向抵抗(mΩ・cm)=測定抵抗値(mΩ)×試料面積(cm
(4)多孔質電極基材のうねり
多孔質電極基材のうねりは、平板上に縦250mm横250mmの多孔質電極基材を静置した際の高さの最大値と最小値の差より算出した。
(5)燃料電池に組み込んだ際の発電特性
両面に触媒担持カーボン(触媒:Pt、触媒担持量:50質量%)からなる触媒層(触媒層面積:25cm、Pt付着量:0.3mg/cm)を形成したパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)を、3次元交絡構造を持たない3次元構造体側が高分子電解質膜と接するように2組の多孔質電極基材で挟持し、これらを接合してMEAを得た。そのMEAを、蛇腹状のガス流路を有する2枚のカーボンセパレーターによって挟み、固体高分子型燃料電池(単セル)を作製した。そして、温度を80℃にした単セルに、水素ガスと空気を80℃のバブラーを介して供給したときの電圧を測定することで、燃料電池に組み込んだ際の発電特性を確認した。
(実施例1)
炭素短繊維(A)として、平均繊維径が7μm、平均繊維長が3mmのPAN系炭素繊維を用意した。また、炭素繊維前駆体短繊維(b1)として、平均繊維径が4μm、平均繊維長が3mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン(株)製、商品名:D122)を用意し、フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)として、叩解によってフィブリル化するアクリル系ポリマーとジアセテート(酢酸セルロース)とからなる易割繊性アクリル系海島複合短繊維(b2−2)(三菱レイヨン(株)製、商品名:ボンネルM.V.P.−C651、平均繊維長:3mm)を用意した。
以下の操作によって、前駆体シート、および多孔質電極基材を得た。
〔炭素短繊維(A)の離解〕
炭素短繊維(A)を、繊維濃度が5g/Lになるように水中へ分散して、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製)を通して離解処理し、離解スラリー繊維(SA)とした。
〔炭素繊維前駆体短繊維(b1)の離解〕
炭素繊維前駆体短繊維(b1)を、繊維濃度が5/Lになるように水中へ分散して、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製)を通して離解処理し、離解スラリー繊維(Sb1)とした。
〔フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)の離解〕
前記易割繊性アクリル系海島複合短繊維を、繊維濃度が5g/Lになるように水中へ分散させディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製)を通して叩解・離解処理し、離解スラリー繊維(Sb2)とした。
〔抄紙用スラリーの調製〕
炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b1)とフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)との質量比それぞれが60:20:20となり、かつスラリー中の繊維の濃度が1.4g/Lとなるように、離解スラリー繊維(SA)、離解スラリー繊維(Sb1)、離解スラリー繊維(Sb2)および希釈水を計量し、スラリー供給タンクに投入した。さらに、紙力増強剤としてポリアクリルアマイド(第一工業製薬(株)製、商品名:G9210)を添加して、濾水性が132mlの抄紙用スラリーを調製した。
〔前駆体シートの製造〕
調整した抄紙用スラリーを用い、標準角型シートマシン(熊谷理機工業(株)製、商品名:No.2555 標準角型シートマシン)により、JIS P−8209法に準拠して手動で抄紙を行い、乾燥させて、目付けが35g/mの前駆体シートを得た。製造した前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。
〔加熱加圧成型〕
次に、前駆体シートの両面を、シリコーン系離型剤をコートした紙で挟んだ後、バッチプレス装置にて180℃、3MPaの条件下で3分間加熱加圧成型した。
〔炭素化処理〕
その後、前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化処理して、多孔質電極基材を得た。
得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例2〜5)
スラリー中の繊維の濃度と濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個以下であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例6〜8)
紙力増強剤としてのポリアクリルアマイド(第一工業製薬(株)製、商品名:G9210)のスラリーへの添加量を調整し濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個以下であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例9〜13)
スラリー中の炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b1)とフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)との質量比と濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個以下であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例14)
フィブリル状炭素前駆体繊維(b2)として、繊維状の幹より直径3μm以下のフィブリルが多数分岐したポリアクリロニトリル系パルプ(b2−1)を用い、濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例15)
ネット駆動部と幅60cmのプラスチックネット製平織メッシュをベルト状につなぎあわせて連続的に回転させるネットよりなるシート状物搬送装置と、スラリー供給部幅が48cmで供給スラリー量が30L/minである抄紙用スラリー供給装置と、ネット下部に配置した減圧脱水装置とからなるシート化装置に、実施例1と同様の抄紙用スラリーを定量ポンプにより平織メッシュ上に供給した。抄紙用スラリーは、均一な流れに整流するためのフローボックスを通して所定サイズに拡幅して供給した。その後、静置し、自然脱水する部分を通過させ、減圧脱水装置により脱水して、連続的に前駆体シートを得た。なお、目標目付は35g/mとした。さらに、前記シート化装置の下流に、3本のウォータージェットノズルを備えた加圧水流噴射処理装置を配置し、得られた前駆体シートを加圧水流噴射処理装置のネット上に積載した。そして、加圧水流噴射圧力を1MPaに設定し、前駆体シートをノズル1、ノズル2およびノズル3の順で通過させて交絡処理を加え、交絡処理された前駆体シートを得た。この交絡処理された前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個以下であった。さらに、この交絡処理された前駆体シ-トを実施例1と同様の方法で、加熱加圧成型処理、炭素化処理を行なうことで、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗も、厚み斑やハンドリング性それぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例16)
実施例15の交絡処理された前駆体シートの炭素化処理工程の前に、加圧加熱成型した前駆体シートを大気中280℃、1分間酸化処理したこと以外は実施例15と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例17)
実施例15の交絡処理された前駆体シートに対し、水分散フェノール樹脂(商品名:PR−55464、住友ベークライト(株)製)を含浸させ、室温で十分に乾燥させ、フェノール樹脂の不揮発分を質量比60%付着させたフェノール樹脂含浸シートを得た。さらに、このフェノール樹脂が含浸された前駆体シ-トを実施例1と同様の方法で、加熱加圧成型処理、炭素化処理を行なうことで、多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であった。評価結果を表1に示した。
(実施例18)
〔膜−電極接合体(MEA)の製造〕
実施例1で得られた多孔質電極基材の2組を、カソード用およびアノード用の多孔質炭素電極基材として用意した。また、パーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)の両面に触媒担持カーボン(触媒:Pt、触媒担持量:50質量%)からなる触媒層(触媒層面積:25cm2、Pt付着量:0.3mg/cm)を形成した積層体を用意した。そして、この積層体を、カソード用およびアノード用の多孔質炭素電極基材で挟持し、これらを接合してMEAを得た。
〔MEAの燃料電池特性評価〕
得られたMEAを、蛇腹状のガス流路を有する2枚のカーボンセパレーターによって挟み、固体高分子型燃料電池(単セル)を形成した。
この単セルの電流密度−電圧特性を測定することによって、燃料電池特性評価を行った。燃料ガスとしては水素ガスを用い、酸化ガスとしては空気を用いた。単セルの温度を80℃とし、燃料ガス利用率を60%とし、酸化ガス利用率を40%とした。また、燃料ガスと酸化ガスへの加湿は、80℃のバブラーにそれぞれ燃料ガスと酸化ガスを通すことによって行った。その結果、電流密度が0.8A/cmのときの燃料電池セルのセル電圧が0.68Vであり、セルの内部抵抗が2.4mΩであり、良好な特性を示した。
(比較例1)
スラリー中の繊維の濃度と濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束が観察され、繊維束比率は4個であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束が観察され、繊維束比率は4個であった。炭素化処理時における面内の収縮はほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好で、厚み、貫通方向抵抗、ハンドリング性もそれぞれ良好であったが、繊維束が観察された部分のガス透気度がそれ以外の部分と比較し、低下していることが観察され、ガス透気度の斑が存在することが確認できた。評価結果を表1に示した。
(比較例2)
スラリー中の繊維の濃度と濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であったが、抄紙用スラリー調整の際に、所定濃度とするために多くの希釈水が必要となり、シート化にかかる製造コストが高くなった。また、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であったが、前駆体シートの製造コストが高いため、得られた多孔質電極基材の製造コストも実施例1と比較し高くなった。評価結果を表1に示した。
(比較例3)
紙力増強剤としてのポリアクリルアマイド(第一工業製薬(株)製、商品名:G9210)のスラリーへの添加量を調整し濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であったが、シート化の際に、抄紙用スラリーからの脱水が困難となり、ユーティリティーの増加や生産性の低下が起こり、シート化にかかる製造コストが高くなった。また、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。炭素化処理時における面内の収縮がほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好であり、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗、厚み斑やハンドリング性もそれぞれ良好であったが、前駆体シートの製造コストが高いため、得られた多孔質電極基材の製造コストも実施例1と比較し高くなった。評価結果を表1に示した。
(比較例4)
紙力増強剤としてのポリアクリルアマイド(第一工業製薬(株)製、商品名:G9210)のスラリーへの添加量を調整し濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束が観察され、繊維束比率は3個であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束が観察され、繊維束比率は3個であった。炭素化処理時における面内の収縮はほとんどなく、うねりも2mm以下と小さく表面平滑性は良好で、厚み、貫通方向抵抗、ハンドリング性もそれぞれ良好であったが、繊維束が観察された部分のガス透気度、がそれ以外の部分と比較し、低下していることが観察され、ガス透気度の斑が存在することが確認できた。評価結果を表1に示した。
(比較例5,6)
スラリー中の炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b1)とフィブリル状炭素前駆体繊維(b2)との質量比と濾水性を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体シートおよび多孔質電極基材を得た。前駆体シートは炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個以下であった。さらに、得られた多孔質電極基材は、炭素短繊維が集束した繊維束がほとんどなく、繊維束比率は1個であった。また、炭素化処理時における面内の収縮や、実施例1と比較しうねりも3mmと大きくなった。ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗はそれぞれ良好であったが、ハンドリング性が実施例1と比較し悪化した。

Claims (11)

  1. 紙力増強剤を含む繊維混合スラリーを抄紙して多孔質電極基材前駆体シートを製造する方法において、
    (i)紙力増強剤を含む繊維混合スラリー中の繊維が、炭素短繊維(A)と前駆体繊維(b)を含む混合物であり、炭素短繊維(A)の混合割合が繊維物質全量に対する質量比で40%以上90%以下であり、
    (ii)紙力増強剤を含む繊維混合スラリー中の繊維濃度が0.8〜1.8g/Lであり、
    かつ
    (iii)紙力増強剤を含む繊維混合スラリーを濾水度計に充填し、JIS P8121に準拠した方法で測定した繊維混合スラリーの濾水性が80〜300mlである
    ことを特徴とする多孔質電極基材前駆体シートの製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法で得た多孔質電極基材前駆体シートを加熱加圧処理する工程(1)と、工程(1)で加熱加圧した前駆体シートを1000℃以上の温度で炭素化処理する工程(2)を有する多孔質電極基材の製造方法。
  3. 工程(1)と工程(2)の間に、加熱加圧処理された多孔質電極基材前駆体シートを酸化処理する工程(4)を有する請求項2に記載の製造方法。
  4. 工程(1)の前に、請求項1に記載の製造方法で得た多孔質電極基材前駆体シートを交絡処理する工程(3)を有する請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 工程(1)の前に、請求項1に記載の製造方法で得た多孔質電極基材前駆体シートに、炭素化可能な樹脂(c)を含浸させる工程(5)を有する請求項2または3に記載の製造方法。
  6. 工程(3)と工程(1)の間に、多孔質電極基材前駆体シートに、炭素化可能な樹脂(c)を含浸させる工程(5)を有する請求項4に記載の製造方法。
  7. 多孔質電極基材前駆体シートが、炭素短繊維(A)の繊維束比率が2個以下である多孔質電極基材前駆体シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
    <繊維束比率の求め方>
    (I)多孔質電極基材前駆体シートの背面および上面から光を当て、15cm×15cmの範囲を200万画素以上のデジタルカメラを用いて撮影する。
    (II)上記(I)で撮影した写真をもとに、当該15cm×15cmの範囲において炭素短繊維(A)が複数本束になった状態である繊維束の個数を測定する。
    (III)多孔質電極基材前駆体シート上の任意の3か所おいて上記(I)(II)の測定を行い、その平均値を繊維束比率とする。
  8. 請求項2〜6のいずれかに記載の方法により得られる多孔質電極基材。
  9. 炭素短繊維(A)が網目状炭素繊維(B)及び/又は樹脂炭化物(C)で結着されており、炭素短繊維(A)の繊維束比率が2個以下である請求項8に記載の多孔質電極基材。<繊維束比率の求め方>
    (I)多孔質電極基材の背面および上面から光を当て、15cm×15cmの範囲を200万画素以上のデジタルカメラを用いて撮影する。
    (II)上記(I)で撮影した写真をもとに、当該15cm×15cmの範囲において炭素短繊維(A)が複数本束になった状態である繊維束の個数を測定する。
    (III)多孔質電極基材上の任意の3か所おいて上記(I)(II)の測定を行い、その平均値を繊維束比率とする。
  10. 請求項8または9に記載の多孔質電極基材を用いた膜−電極接合体。
  11. 請求項10に記載の膜−電極接合体を用いた固体高分子型燃料電池。
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