以下、本発明を適用した放射線遮蔽ユニット及び放射線遮蔽モジュールについて図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明を適用した放射線遮蔽ユニット1は、放射線を遮蔽する複数個の放射線遮蔽モジュール10を備え、隣接する放射線遮蔽モジュール10が互いに係合して一列に配列されている。この放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を直線状に配列させることが出来ることに加え、S字状、L字状、U字状或いはC字状のような湾曲状に配列させることも出来る。このような放射線遮蔽ユニット1は、例えば、除染作業が完了した除染済現場2と、現在除染作業を行っている或いはまだ行われていない除染作業現場3とを仕切るように設置され、除染作業現場3からの放射線を遮蔽して、防護対象である除染済現場2を放射線から防護するとともに、除染作業に伴う塵埃等の飛散を防止して、除染済現場2が再度汚染されることを防止する。更に、放射線遮蔽ユニット1は、除染作業に伴う騒音等を防音する。なお、放射線遮蔽ユニット1は、例えば、住宅、学校の校舎や校庭、通学路、病院、公園等の防護対象の周囲の全て又は一部を囲むように設置しても良い。なお、上述した防護対象は、あくまで一例であり、これらに限定されるものではない。
<1.第一の実施の形態>
放射線遮蔽モジュール10は、図1に示すように、隣接する放射線遮蔽モジュール10に対して角度調整可能なブロック体である。具体的に、図2に示すように、放射線遮蔽モジュール10は、放射線を減衰させる放射線減衰部11と、放射線減衰部11に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に角度調整可能に係合するジョイント部12とを有している。
放射線減衰部11は、図3及び図4に示すように、流体13を貯留する容器部14を有し、流体13と容器部14とで構成されている。容器部14は、例えば、柱状に設けられ、内部に貯留部14aを有している。例えば、容器部14は、大人の背丈程の高さに設けられている。また、容器部14は、固体層であって、下記表1に示す元素周期表の第1の周期から第7の周期の元素を少なくとも一つ含む材質で形成されている。更に、容器部14は、光透過性を有するように設けられている。このような性質の素材としては、例えば、ソーダガラスや石英ガラス、鉛ガラス等の光透過性ガラス、酸化イットリウム、アルミン酸イットリウム、或いは酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を出発物質として焼結構成される光透過性セラミックス、ポリアミド11やトロガミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS、アクリル、四フッ化エチレン、エチレン酸ビコポリマー、ベークライト、メラミン、不飽和ポリエステル、エポキシ等の光透過性合成樹脂等の固体を採用することが好ましい。なお、容器部14の表面には、耐水層、防水層、ガスバリア層、緩衝層、耐酸性や耐塩基性等を有する耐薬品層、耐蝕層、耐熱層、耐紫外線層等を更に設けても良い。また、容器部14の貯留部14aには、放射線を減衰させる流体13が貯留されている。
流体13は、上記表1に示す元素周期表の第1の周期から第7の周期の元素を少なくとも一つ含む材質で形成されている。更に、流体13は、光透過性を有する材質で形成されている。例えば、流体13は、入手が容易な水や海水やオイル等が挙げられる。勿論、流体13としては、水や油意外に、液体金属である水銀、又はスラリー状やゲル状を成す流動体、或いは、砂や砂鉄等のような砂状の物質を含む粉体や粒体、顆粒状を成す物体、若しくはこれらの混合物を含むものであってもよいが、費用対効果を含めた経済合理性や環境合理性を考慮した場合にも、流体13として水を採用するのが最も好ましい。
ここで、経済合理性を検討する視点について説明する。放射線遮蔽モジュール10においての最大の目的は、一定以上の放射線遮蔽性能を有することである。ところで、放射線を減衰させる主たる要素は、減衰材の物質量の多さにある。そこで、減衰材として使用される物質毎に、或る値からそれ未満の値まで放射線レベルを減衰させるのに必要とされる物質量(質量)を考える。或る一定の断面積に設定された遮蔽体(例えば、円柱体)を一定の減衰割合となるまで放射線が通過する際の物質毎の質量を考えると、これは物質によらずほぼ一定(ここでは、放射線のエネルギーレベルを一定とみなす)となるので、これを等価減衰質量と呼ぶものとすれば、素材毎の質量単価を比較することで、費用対効果に対する一定の知見が得られる。等価減衰質量の材料単価(以下、等価減衰質量材料単価と云う)を、材料毎に求め、比較した物を表2に示す(2012年5月現在)。
表2から明らかなように、表2中において、水を除いた中で最も安価なコンクリートでさえ、水との比較では水の方がコンクリートよりも1千分の3倍安価であり、費用対効果では362倍高効率であることが判る。この表2では、材料の質量単価のみの記載であるが、実際には設置現場への搬送や加工、施工、撤去等に関する費用も含めて検討する必要が有り、この視点においても流体13として、水を採用することが最も経済合理性に適うと考えられる。勿論、水の場合には最も豊富な資源であり、周辺を汚損することは殆ど無いことから環境合理性においても最も適している。
すなわち、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10の流体13及び容器部14が光透過性を有しているので、外部から光(可視光)を取り入れることが出来、更に、除染済現場2から除染作業現場3を視認することが出来、勿論、除染作業現場3から除染済現場2を視認することも出来る。
なお、流体13は、光透過性を維持しつつ、着色するようにしても良い。これにより、放射線遮蔽ユニット1は、流体13を設置現場周囲の色と同色又は近似する色に着色することで、周囲との調和を図ることが出来る。或いは、放射線遮蔽ユニット1は、流体13を設置現場周囲の色と異なる色に着色することで、注意を促すことが出来る。
特に、流体13が水を主成分として成る場合には、水分子に含まれる水素原子の数量が非常に多くなる。水素原子は、中性子線の質量と非常に近く、多量の水分子中においてファンデルワールス力を多分に受けながら、また水素結合をしながら略静止状態にあることから、それらの水素原子に外部から飛来してきた中性子線が衝突すると、中性子線の運動エネルギーが著しく減衰し、平均18回程度の水素原子との衝突によって放射線として有していた強力な運動エネルギーの殆どを失うことになる。従って、流体13が水を主成分として成る場合には、放射線の一種であるγ線を減衰させられるだけでなく、中性子線の運動エネルギーも吸収させることが出来て好ましい。
更に、図4に示すように、容器部14の上面には、流体13を貯留部14aに注入する注入口15が形成されている。従って、流体13は、放射線遮蔽モジュール10を設置現場に運搬後に、容器部14の貯留部14aに注入することが出来る。勿論、流体13は、放射線遮蔽モジュール10を設置現場に運搬前に、予め容器部14の貯留部14aに注入しておくようにしても良いし、工場で貯留部14aに貯留することで蓋体16を用いずに封入されていても良い。また、注入口15は、流体13を容器部14の貯留部14aに注入後に、蓋体16によって閉塞される。
ここでは、更に、図3及び図4に示すように、容器部14の側面部、例えば背側面部の下方には、貯留部14aに貯留された流体13を外部に排出する排出口17が形成されている。排出口17は、通常、蓋体18によって閉塞されている。従って、流体13は、放射線遮蔽モジュール10を設置現場から撤去前に、蓋体18を取り外して排出口17を開口することで、設置現場において、容器部14の貯留部14aから排出することが出来る。勿論、流体13は、撤去後に、容器部14の貯留部14aから排出することも出来る。また、本発明では、排出口17を設けないようにしても良い。
なお、注入口15及び排出口17の形成位置は、これらに限定されるものではなく、適宜変更可能である。更に、排出口17を設けずに、流体13を、注入口15から貯留部14aに注入すると共に、注入口15から例えばポンプ等の排出装置を用いて排出するようにしても良い。更に、容器部14の上面の注入口15の周囲に凹部を設けて、装着状態の蓋体16の頭が容器部14の上面を上回らない位置となるようにしても良い。更に、同様にして、容器部14の側面部の排出口17の周囲に凹部を設けて、装着状態の蓋体18の頭が当該凹部周辺の容器部14の周面から出ない位置となるようにしても良い。
ジョイント部12は、図3及び図4に示すように、容器部14に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に角度調整可能に係合する。ジョイント部12は、容器部14の一側面部の全面に亘って設けられた角度調整係合部19と、容器部14の一側面部とは反対側の他側面部の全面に亘って設けられ、角度調整係合部19に対応する形状を有する係合受部20とを有している。例えば、角度調整係合部19は、略凸円弧状に設けられ、係合受部20は、角度調整係合部19と略同径の略凹円弧状に設けられている。なお、一側面部に係合受部20を設けて、他側面部に角度調整係合部19を設けても良い。また、角度調整係合部19が凹状で係合受部20が凸状であっても良い。
更に、容器部14には、図3及び図4に示すように、角度調整係合部19の円弧中心に対応する位置に、取付孔21が形成されている。取付孔21は、例えば、高さ方向に貫通して形成されている。そして、図4に示すように、取付孔21には、放射線遮蔽モジュール10を支持する支持部材である単管22が挿通される。この単管22は、例えば断面円形状のパイプであり、下端が地面4に打ち込まれたり、コンクリートで埋設すること等により、地面4に固定されている。すなわち、放射線遮蔽モジュール10は、地面4に固定された単管22に取付孔21を挿通することで、単管22に支持される。なお、取付孔21は、容器部14を貫通していることに限定されるものではなく、容器部14の下面から所定の高さまで形成するようにしたり、或いは容器部14の下面及び上面からそれぞれ独立に所定高さまで形成するようにしても良い。
更に、流体13と容器部14とで構成された放射線減衰部11は、下記(1)式によって算出される厚さを有するように設けられている。
x:放射線減衰部の厚さ
μ:放射線減衰部を構成する物質固有の放射線に対する減衰係数
e:自然対数の底
I
0:放射線遮蔽モジュール(放射線減衰部)透過前の放射線強度
I:放射線遮蔽モジュール(放射線減衰部)透過後の放射線強度
ε:比例定数(原始減衰係数)
ρ:放射線減衰部を構成する物質の質量体積密度
ここで、原始減衰係数εについて説明する。γ線の物質中での減衰のメカニズムは、物質(電子を含む)と光(γ線)との光電効果並びに物質(電子を含む)と光(γ線)の散乱現象であるコンプトン効果によるものが支配的であると考えられる。つまり、γ線の減衰係数μは、原子核子や電子の数量の関数であり、物質の質量体積密度ρに比例すると考えられる。すなわち、μ∝ρと表される。従って、物質固有に定まる減衰係数μは、μ=ερと表される。ここでεは、比例定数扱いとする原始減衰係数である。
下記表3は、γ線の減衰性をまとめたものである。表3の左欄は、γ線のエネルギーの大きさ毎の各種物質の線吸収係数(γ線に対する減衰係数)の実測値をまとめたものである(三井金属エンジニアリング株式会社のHP参照。)。表3の右欄は、左欄の値をそれぞれの質量体積密度ρで割った値を示している。表3から分かるように、減衰の大きさは、γ線のエネルギーの大きさによって異なる。その一方で、同じエネルギーレベルを物質間で比較すると、原始減衰係数εは、ほぼ一定であると考えられる。
参考として、容器部14の貯留部14aに貯留する流体13が例えば水であり、外部からのγ線のエネルギーが2MeVであり、このγ線を20分の1まで減衰するのに必要な流体13の厚さ(貯留部14aの幅)を算出する。上記表3のγ線のエネルギーが2MeVの場合の水の原始減衰係数ε=0.048cm2/gを用いれば、水の減衰係数μは、μ=ερ=0.048×1.00=0.048(cm−1)となる。従って、流体13の厚さxは、x=−(1/0.048)loge(1/20)=62.4(cm)と算出される。
すなわち、放射線遮蔽モジュール10は、容器部14の貯留部14aに貯留する流体13が水であり、外部からのγ線のエネルギーが2MeVであり、このγ線を20分の1まで減衰するのに必要な流体13の厚さ(貯留部14aの幅)は62.4cmである。換言すると、放射線遮蔽モジュール10は、容器部14の貯留部14aに貯留する流体13を水とした場合、流体13の厚さ(貯留部14aの幅)を62.4cmとすることで、外部から防護対象に向けて放出されたエネルギーが2MeVのγ線を、20分の1まで減衰させることが出来る。
以上のような構成を有する放射線遮蔽ユニット1は、以下のようにして製作される。先ず、図5に示すように、地面4に第一単管22aを打ち込む等して、第一単管22aを地面4に固定する。次いで、第一単管22aに取付孔21を被せるように装着して、第一単管22aに第一放射線遮蔽モジュール10aを取り付ける。次いで、第一放射線遮蔽モジュール10aを、取付孔21(第一単管22a)の軸線を中心に回動させて、所定の角度となるように設ける。
次いで、第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20の円弧中心に対応する位置の地面4に、第二単管22bを打ち込む等して固定する。次いで、第二単管22bに取付孔21を被せるように装着して、第二単管22bに第二放射線遮蔽モジュール10bを取り付ける。この際、第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20と第二放射線遮蔽モジュール10bの角度調整係合部19とが係合する。角度調整係合部19と係合受部20とは、対応する形状を有し、取付孔21は、角度調整係合部19の円弧中心に形成されており、第二単管22bは、第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20の円弧中心に設けられている。従って、第二放射線遮蔽モジュール10bは、取付孔21(第二単管22b)の軸線を中心に回動させることが出来る。次いで、第二放射線遮蔽モジュール10bを、取付孔21(第二単管22b)の軸線を中心に回動させて、隣接する第一放射線遮蔽モジュール10aに対して所定の角度となるように設ける。
次いで、第二放射線遮蔽モジュール10bの係合受部20の円弧中心に対応する位置の地面4に、第三単管22cを固定し、第三単管22cに取付孔21を挿通して、第三単管22cに第三放射線遮蔽モジュール10cを取り付ける。次いで、第三放射線遮蔽モジュール10cを、取付孔21(第三単管22c)の軸線を中心に回動させて、隣接する第二放射線遮蔽モジュール10bに対して所定の角度となるように設ける。このとき、第二放射線遮蔽モジュール10bは、角度調整係合部19が第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20と係合され、係合受部20が第三放射線遮蔽モジュール10cの角度調整係合部19と係合されているので、回動することが防止される。
次いで、同様にして、更なる複数個の放射線遮蔽モジュール10において、上述したような操作を繰り返すことで、例えば、図1に示すようなS字状に湾曲した放射線遮蔽ユニット1を設置することが出来る。勿論、放射線遮蔽モジュール10を設置する角度に応じては、図6に示すようなL字状の放射線遮蔽ユニット1や図7に示すような直線状の放射線遮蔽ユニット1を製作することも出来る。
以上のように、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10の上記(1)式によって算出された厚さを有する放射線減衰部11によって、除染作業現場3から除染済現場2に向かって飛来する放射線を低減することが出来る。従って、放射線遮蔽ユニット1は、除染済現場2を放射線から防護することが出来る。すなわち、放射線遮蔽ユニット1は、防護対象の外部から防護対象に向って飛来する放射線を低減して、防護対象を放射線から防護することが出来る。
また、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11が容器部14の貯留部14aに流体13が貯留された構成を有するので、予め流体13を容器部14の貯留部14aに注入しておくことに限らず、運搬後に設置現場において、流体13を容器部14の貯留部14aに注入することが出来る。従って、放射線遮蔽モジュール10は、設置現場まで、流体13を容器部14の貯留部14aに設けていない軽量化した状態で、運搬することが出来る。更に、放射線遮蔽モジュール10は、撤去する際に、流体13を容器部14の貯留部14aから排出して軽量化した状態で、撤去することが出来、更に、移設することも用意である。
また、放射線遮蔽ユニット1は、複数個の放射線遮蔽モジュール10が隣接する放射線遮蔽モジュール10と互いに係合して一列に配列されているので、除染作業に伴う塵埃等の飛散を防止して、既に除染が行われた除染済現場2が再度汚染されることを防護することが出来る。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、所定の厚さを有する複数個の放射線遮蔽モジュール10が隣接する放射線遮蔽モジュール10と互いに係合するように一列に配列されているので、回折音波が少なくなり、除染作業に伴う騒音等を防音することが出来る。また、放射線遮蔽モジュール10には、通常、水が注入されて重量物となるので、防音に際しては、質量則に則って音波の透過損失効果が極めて高まる上、容器部14に収容されている水の粘性抵抗によって騒音等の音波が著しく減衰される。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、複数の放射線遮蔽モジュール10がジョイント部12を介して角度調整可能に設けられているので、放射線遮蔽モジュール10を直線状に配列させることが出来ることに加え、S字状、L字状、U字状或いはC字状のような湾曲状に配列させることも出来る。従って、放射線遮蔽ユニット1は、直線状及び湾曲状に設けることができ、設置自由度を高めることが出来る。また、放射線遮蔽ユニット1を湾曲させたときには、直線状に配列させたときよりも倒れ難くすることが出来る。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10の放射線減衰部11、すなわち、流体13及び容器部14が光透過性を有しているので、防護対象を放射線から防護しながらも、外部から光(可視光)を取り入れることが出来る。更に、放射線遮蔽ユニット1は、除染済現場2から除染作業現場3を視認することが出来、勿論、除染作業現場3からも除染済現場2を視認することが出来る。
なお、放射線遮蔽ユニット1は、図8(A)に示すように、一列に配列された複数個の放射線遮蔽モジュール10の端部に、端部モジュール30を設けるようにしても良い。
端部モジュール30は、図8(B)に示すように、放射線を減衰させる放射線減衰部31と、放射線減衰部31に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に係合するジョイント部32とを有している。放射線減衰部31は、流体33を貯留する容器部34を有し、流体33と容器部34とで構成されている。容器部34は、例えば、槽状に形成され、放射線遮蔽モジュール10の容器部14と同様の材質で形成されている。更に、流体33は、放射線遮蔽モジュール10の流体13と同様の材質で形成されている。ジョイント部32は、放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19と同様の形状を有し、凸円弧状に設けられている。更に、容器部34には、高さ方向に貫通した取付孔35が形成されている。そして、端部モジュール30は、ジョイント部32が放射線遮蔽モジュール10の係合受部20に係合した状態で、放射線遮蔽モジュール10と同様に、取付孔35に単管22が挿通されることで支持される。このような端部モジュール30は、ジョイント部32の両端部が回転規制部32aとなっており、放射線遮蔽モジュール10の係合受部20の端部が係合される。これにより、端部モジュール30は、端部の放射線遮蔽モジュール10が回転することを防止出来る。
また、放射線遮蔽ユニット1は、図9(A)に示すように、一列に配列された複数個の放射線遮蔽モジュール10の端部に、端部モジュール40を設けるようにしても良い。
端部モジュール40は、図9(B)に示すように、放射線を減衰させる放射線減衰部41と、放射線減衰部41に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に係合するジョイント部42とを有している。放射線減衰部41は、流体43を貯留する容器部44を有し、流体43と容器部44とで構成されている。容器部44は、例えば、槽状に形成され、放射線遮蔽モジュール10の容器部14と同様の材質で形成されている。更に、流体43は、放射線遮蔽モジュール10の流体13と同様の材質で形成されている。ジョイント部42は、放射線遮蔽モジュール10の係合受部20と同様の形状を有し、放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19と略同径の凹円弧状に設けられている。更に、容器部44には、高さ方向に貫通した取付孔45が形成されている。そして、端部モジュール40は、ジョイント部42に放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19が係合された状態で、放射線遮蔽モジュール10と同様に、取付孔45に単管22が挿通されることで支持される。このような端部モジュール40は、ジョイント部42に放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19が係合されることで、端部の放射線遮蔽モジュール10が回転することを防止出来る。
更に、端部モジュール30、40は、二色成形によって二色に色分けされているようにしても良い。例えば、図8(A)に示すように、端部モジュール30は、取付孔35の軸線よりも一方側の部分34aを第一色にして、他方側の部分34bを第二色にする。同様に、図9(A)に示すように、端部モジュール40は、取付孔45の軸線よりも一方側の部分44aを第一色にして、他方側の部分44bを第二色にする。例えば、第一色は、黄色であり、第二色は青である。なお、第一色及び第二色は、これに限定されるものではない。これにより、端部モジュール30,40は、例えば、一方側の部分34a,44aを除染作業現場3側に向け、他方側の部分34b,44bを除染済み現場2側に向けて放射線遮蔽モジュール10の端部に設けられることで、除染が完了している側と除染が行われていない側とを周囲に容易に把握させることが出来る。
また、放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19及び係合受部20には、それぞれ、歯車状の凹凸部が形成されるようにしても良い。この凹凸部は、角度調整するために放射線遮蔽モジュール10を回動させた際に、例えば、クリック感を発現する。更に、凹凸部は、例えば、放射線遮蔽モジュール10が所定の角度回動する毎にクリック感を付与させるようにしても良い。これにより、設置作業者は、放射線遮蔽モジュール10を隣接する放射線遮蔽モジュール10に対して何度回動させたかを容易に把握することが出来る。勿論、凹凸部は、凹凸部同士の嵌合程度を高強度にすることで、嵌合後には放射線遮蔽モジュール10を回転によって、係合位置からずらすことが出来ないようにして位置固定させるようにしてもよい。
また、図10に示すように、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11の容器部14に、次の放射線遮蔽モジュール10を支持する次の単管22を打ち込む際のガイド部50を有するようにしても良い。ガイド部50は、容器部14の下面の一側面側に形成された凹段部51と、下面の他側面側に側方に突出し、隣接する放射線遮蔽モジュール10の凹段部51が配置される凸段部52とで構成されている。更に、凸段部52には、係合受部20の円弧中心に対応する位置に、ガイド孔53が形成されている。このガイド孔53は、放射線遮蔽モジュール10が単管22に取り付けられて角度調整された後に、次の放射線遮蔽モジュール10を支持する次の単管22を打ち込む際のガイドとなる。従って、設置作業者は、次の単管22を打ち込む位置を容易に把握することが出来る。
また、図11に示すように、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を、高さ方向に複数個積み上げて設けるようにしても良い。この場合、放射線遮蔽ユニット1は、積み上げた全ての放射線遮蔽モジュール10の取付孔21に亘って単管22が挿通されることで支持される。
更に、図12に示すように、放射線遮蔽ユニット1は、最下段及び中間段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の上面及び下面に取付孔21を形成し、最上段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の下面に取付孔21を形成して、最下段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の下面の取付孔21に地面4に固定された単管22を挿通し、最下段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の上面の取付孔21と中間段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の下面の取付孔21とに亘って単管22を挿通し、更に、中間段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の上面の取付孔21と最上段の放射線遮蔽モジュール10の容器部14の下面の取付孔21とに亘って単管22を挿通することで、支持されるようにしても良い。
更に、図13に示すように、放射線遮蔽モジュール10は、容器部14の上面に係合凸部54を設け、容器部14の下面に他の放射線遮蔽モジュール10の係合凸部54と係合する係合凹部55を設けるようにしても良い。これにより、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を高さ方向に複数個積み上げて設ける際に、上段の放射線遮蔽モジュール10の係合凸部54と下段の放射線遮蔽モジュール10の係合凹部55とを係合させることで、上段の放射線遮蔽モジュール10と下段の放射線遮蔽モジュール10とのずれ止めを図ることが出来る。勿論、放射線遮蔽モジュール10は、容器部14の上面に係合凹部55を設け、容器部14の下面に係合凸部54を設けるようにしても良い。
更に、端部モジュール30,40も、上述した放射線遮蔽モジュール10と同様にして、高さ方向に複数個積み上げて設けるようにしても良い。
また、放射線遮蔽モジュール10は、単管22によって支持されることに限定されるものではなく、図14に示すように、支持板60によって支持されるようにしても良い。支持板60は、板状のフランジ部61と、フランジ部61上に一体に設けられ、放射線遮蔽モジュール10の取付孔21に挿通される支持突部62とを有している。従って、放射線遮蔽ユニット1は、支持板60を地面4に配置するだけで良く、容易に製作することが出来る。
更に、図15に示すように、支持板60は、フランジ部61に、複数個の支持突部62を有するようにしても良い。例えば、フランジ部61は、S字状等、放射線遮蔽ユニット1の完成予定形状に予め形成しておく。従って、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を設置する度に支持板60を地面4に配置する必要が無く、容易に設置することが出来る。なお、支持板60は、フランジ部61を地面4にアンカボルト等の締結部材で固定するようにしても良い。また、支持板60は、放射線遮蔽モジュール10より幅広に形成することで、放射線遮蔽ユニット1を安定支持することが出来るし、コンクリートで固定することで、更に強固に支持することも出来る。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、単管22や支持板60等の支持部材によって放射線遮蔽モジュール10を支持することなく、放射線遮蔽モジュール10を地面4上に配置するようにしても良い。
更に、放射線遮蔽モジュール10は、角度調整係合部19が多角形状であっても良い。また、放射線遮蔽モジュール10は、係合受部20が多角形状であっても良い。このような場合であっても、放射線遮蔽モジュール10を隣接する放射線遮蔽モジュール10に対して角度調整可能に係合させることができ、直線状或いは湾曲状に配列させることができる。
また、容器部14には、図16に示すように、更なる層70を設けるようにしても良い。更なる層70は、容器部14の貯留部14a側の全面及び容器部14の外部側の全面に、一層又は複数層設けるようにしても良く、これらの面のうちの少なくとも一面に、一層又は複数層設けるようにしても良い。このような更なる層70は、固体層又は流体層であって、上記表1に示す元素周期表の第1の周期から第7の周期の元素を少なくとも一つ含む材質で形成されている。このような性質の素材としては、例えば、ソーダガラスや石英ガラス、鉛ガラス等の光透過性ガラス、酸化イットリウム、アルミン酸イットリウム、或いは酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を出発物質として焼結構成される光透過性セラミックス、ポリアミド11やトロガミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS、アクリル、四フッ化エチレン、エチレン酸ビコポリマー、ベークライト、メラミン、不飽和ポリエステル、エポキシ等の光透過性合成樹脂などの固体を採用することが可能である他、オイルや入手が容易な水や海水等の液体を採用することが可能であり、液相体の他、ゲル状体、スラリー状体、粉体、粒体、或いはそれらの混合体、若しくは、注入時には、流体でありながら、注入後に硬化して固体化するものであっても良い。本発明の放射線遮蔽モジュール10においては、これらの配合によって、放射線の減衰率を調整することも可能である。従って、放射線遮蔽モジュール10は、放射線の遮蔽性、機械的強度、耐久性等の向上を図ることが出来る。
また、放射線遮蔽モジュール10は、容器部14を、放射線減衰部11と同様に、放射線を減衰する減衰層として用いるようにしても良い。この際、放射線遮蔽モジュール10は、下記(2)式を満たすように設けられる。更に、放射線遮蔽モジュール10は、更なる層70が設けられている場合、容器部14と更なる層70とを、放射線減衰部11と同様に、放射線を減衰する減衰層として用いるようにしても良い。この際、放射線遮蔽モジュール10は、下記(2)式を満たすように設けられる。更に、放射線遮蔽モジュール10は、更なる層70が設けられている場合、更なる層70を、放射線減衰部11と同様に、放射線を減衰する減衰層として用いるようにしても良い。この際、放射線遮蔽モジュール10は、下記(2)式を満たすように設けられる。このような場合であっても、放射線遮蔽モジュール10は、下記(2)式によって算出された厚さを有することによって、外部から防護対象に向って飛来する放射線を低減することが出来る。
j:1からnまでの自然数
n:放射線減衰部や更なる層などの全層数であって、2以上の自然数
μ
j:j番目の層を構成する物質固有のγ線に対する減衰係数
x
j:j番目の層の厚さ
e:自然対数の底
I
0:外部から入射する放射線の放射線遮蔽モジュール(放射線減衰部)透過前の放射線強度
I
n:n層の層を有する放射線遮蔽モジュール(放射線減衰部)透過後の放射線強度
ε
j:j番目の層を構成する物質固有の比例定数(原始減衰係数)
ρ
j:j番目の層を構成する物質固有の質量体積密度
また、放射線遮蔽モジュール10は、図17に示すように、上面及び下面に連結手段を兼ねる開口部が形成され、下部の開口部が栓体80で閉止された容器部14上に、上面及び下面に連結手段を兼ねる開口部が形成された容器部14を複数個積み重ねて、積み重ねられた容器部14の貯留部14a内に、流体13を貯留するようにしても良い。このように構成することで、容器部14内部を空にしておきながら複数の容器部14を連結手段を兼ねる開口部同士を互い連結させて連通させ、組み上がった時点で、最上段の上部の開口部から流体13を注入することが可能で、最下段に位置する容器部14の貯留部14aの内部に至るまで全ての連結された容器部14内に、流体13を行き渡らせることが可能となる。
更に、流体13及び容器部14は、光透過性を有する材料で構成されることに限定されるものではなく、光不透過性の材料で構成されるようにしても良い。
この場合、容器部14の材料としては、例えば、タングステン系素材や鉄系素材、鉛系素材等を主成分とする金属類、陶器素材や磁器素材等を主成分とするセラミックス類、板ガラスやガラスカレット等のガラス質を主成分とするガラス類、コンクリート、アスファルト、天然樹脂や合成樹脂類やゴム類等の高分子化合物類、木類或いはそれらから構成される複合材料によって、例えば繊維強化材化するなどして構成される。更に、流体13の材料としては、例えば、タングステン系素材や鉄系素材、鉛系素材等主成分とする金属類、陶器素材や磁器素材等を主成分とするセラミックス類、板ガラスやガラスカレット等のガラス質を主成分とするガラス類、コンクリート、アスファルト、天然樹脂や合成樹脂類やゴム類等の高分子化合物類、木類、ホウ酸系素材、黒鉛系素材や無定形炭素系素材、或いはそれらから構成される複合材料等を含んで構成することが可能であるが、流動可能な状態に構成する。勿論、流体13としては、液相体の他、ゲル状体、スラリー状体、粉体、粒体、或いはそれらの混合体、若しくは、注入時には、流体でありながら、注入後に硬化して固体化するものであってもよい。本発明の放射線遮蔽モジュールにおいては、これらの配合によって、放射線の減衰率を調整することが出来る。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、光透過性を有する放射線遮蔽モジュール10dと、光不透過性を有する放射線遮蔽モジュール10eとを組み合わせて製作されるようにしても良い。
例えば、放射線遮蔽ユニット1は、図18(A)に示すように、長手方向の中央部に光透過性を有する放射線遮蔽モジュール10dを配置し、その両側に光不透過性を有する放射線遮蔽モジュール10eを配置するようにしても良い。また、放射線遮蔽ユニット1は、図18(B)に示すように、上層に光透過性を有する放射線遮蔽モジュール10dを配置し、下層に光不透過性を有する放射線遮蔽モジュール10eを配置するようにしても良く、また言うまでもないがこれらの上下を逆にしても良い。更に、放射線遮蔽ユニット1は、図18(C)に示すように、光透過性を有する放射線遮蔽モジュール10dを、光不透過性を有する放射線遮蔽モジュール10eで囲むように配置するようにしても良い。
<2.第二の実施の形態>
第二の実施の形態の放射線遮蔽モジュール10の放射線減衰部11は、第一の実施の形態の放射線遮蔽モジュール10の放射線減衰部11が流体層であるのに対して、固体で構成される。
放射線遮蔽モジュール10は、図1に示すように、隣接する放射線遮蔽モジュール10に対して角度調整可能なブロック体である。具体的に、図19に示すように、放射線遮蔽モジュール10は、放射線を減衰させる放射線減衰部11と、放射線減衰部11に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に角度調整可能に係合するジョイント部12とを有している。
放射線減衰部11は、図19及び図20に示すように、例えば、柱状に設けられている。例えば、放射線減衰部11は、大人の背丈程の高さに設定されている。また、放射線減衰部11は、固体で構成され、上記表1に示す元素周期表の第1の周期から第7の周期の元素を少なくとも一つ含む材質で形成されている。更に、放射線減衰部11は、光透過性を有するように設けられている。このような性質の素材としては、例えば、ソーダガラスや石英ガラス、鉛ガラス等の光透過性ガラス、酸化イットリウム、アルミン酸イットリウム、或いは酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を出発物質として焼結構成される光透過性セラミックス、ポリアミド11やトロガミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS、アクリル、四フッ化エチレン、エチレン酸ビコポリマー、ベークライト、メラミン、不飽和ポリエステル、エポキシ等の光透過性合成樹脂などの固体を採用することが可能である。なお、放射線減衰部11の表面には、耐水層、防水層、ガスバリア層、緩衝層、耐酸性や耐塩基性等を有する耐薬品層、耐蝕層、耐熱層、耐紫外線層等を更に設けても良い。
更に、放射線減衰部11は、上記(1)式によって算出される厚さを有するように設けられている。
参考として、放射線減衰部11が例えば鉛ガラスであり、外部からのγ線のエネルギーが2MeVであり、このγ線を20分の1まで減衰するのに必要な放射線減衰部11の厚さを算出する。なお、ここでは、鉛ガラスの質量体積密度ρ=4.28g/cm3とする。例えば、表3の2MeVのγ線の場合の原始減衰係数ε=0.048cm2/gを用いれば、鉛ガラスの減衰係数μは、μ=ερ=0.048×4.28=0.205(cm−1)となる。従って、放射線減衰部11の厚さxは、x=−(1/0.205)loge(1/20)=14.6(cm)と算出される。
すなわち、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11が鉛ガラスであり、外部からのγ線を2MeVと設定した場合、このγ線を20分の1まで減衰するのに必要な放射線減衰部11の厚さは14.6cmとなる。換言すると、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11が鉛ガラスの場合、放射線減衰部11の厚さを14.6cmとすることで、除染作業現場3から除染済現場2に向かって、或いは、外部から防護対象に向かって放出された2MeVのγ線を、20分の1まで減衰させることが出来る。
ジョイント部12は、図19及び図20に示すように、放射線減衰部11に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に角度調整可能に係合する。ジョイント部12は、放射線減衰部11の一側面部の全面に亘って設けられた角度調整係合部19と、放射線減衰部11の一側面部とは反対側の他側面部の全面に亘って設けられ、角度調整係合部19に対応する形状を有する係合受部20とを有している。例えば、角度調整係合部19は、略凸円弧状に設けられ、係合受部20は、角度調整係合部19と略同径の略凹円弧状に設けられている。
更に、放射線減衰部11には、図19及び図20に示すように、角度調整係合部19の円弧中心に対応する位置に、取付孔21が形成されている。取付孔21は、例えば、高さ方向に貫通して形成されている。そして、図20に示すように、取付孔21には、放射線遮蔽モジュール10を支持する支持部材である単管22が挿通される。この単管22は、例えば断面円形状のパイプであり、下端が地面4に打ち込まれたり、コンクリートで埋設される等することで、地面4に固定されている。すなわち、放射線遮蔽モジュール10は、地面4に固定された単管22に取付孔21を被せて装着することで、単管22に支持される。なお、取付孔21は、放射線減衰部11を貫通していることに限定されるものではなく、放射線減衰部11の下面から所定の高さまで形成されているようにしたり、或いは、放射線減衰部11の下面及び上面からそれぞれ独立に所定の高さまで形成されたものであっても良い。
以上のような構成を有する放射線遮蔽ユニット1は、以下のようにして設置される。先ず、図5に示すように、地面4に第一単管22aを打ち込む等して、第一単管22aを地面4に固定する。次いで、第一単管22aに取付孔21を被せるように装着して、第一単管22aに第一放射線遮蔽モジュール10aを取り付ける。次いで、第一放射線遮蔽モジュール10aを、取付孔21(第一単管22a)の軸を中心に回動させて、所望の角度となるように設ける。
次いで、第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20の円弧中心に対応する位置の地面4に、第二単管22bを打ち込む等して固定する。次いで、第二単管22bに取付孔21を被せるように装着して、第二単管22bに第二放射線遮蔽モジュール10bを取り付ける。この際、第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20と第二放射線遮蔽モジュール10bの角度調整係合部19とが係合するが、角度調整係合部19と係合受部20とは、対応する形状を有し、取付孔21は、角度調整係合部19の円弧中心に形成されており、第二単管22bは、第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20の円弧中心に設けられているので、第二放射線遮蔽モジュール10bは、取付孔21(第二単管22b)の軸線を中心に回動させることが出来る。次いで、第二放射線遮蔽モジュール10bを、取付孔21(第二単管22b)の軸線を中心に回動させて、隣接する第一放射線遮蔽モジュール10aに対して所定の角度となるように設ける。
次いで、第二放射線遮蔽モジュール10bの係合受部20の円弧中心に対応する位置の地面4に、第三単管22cを固定し、第三単管22cに取付孔21を被せるように装着して、第三単管22cに第三放射線遮蔽モジュール10cを取り付ける。次いで、第三放射線遮蔽モジュール10cを、取付孔21(第三単管22c)の軸線を中心に回動させて、隣接する第二放射線遮蔽モジュール10bに対して所定の角度となるように設ける。このとき、第二放射線遮蔽モジュール10bは、角度調整係合部19が第一放射線遮蔽モジュール10aの係合受部20と係合され、係合受部20が第三放射線遮蔽モジュール10cの角度調整係合部19と係合されているので、回動することが防止される。
次いで、同様にして、複数個の放射線遮蔽モジュール10において、上述したような操作を繰り返すことで、例えば、図1に示すようなS字状に湾曲した放射線遮蔽ユニット1を組立設置することが出来る。勿論、放射線遮蔽モジュール10を設置する角度に応じては、図6に示すようなL字状の放射線遮蔽ユニット1や図7に示すような直線的な放射線遮蔽ユニット1を設置することも出来る。
以上のように、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10の上記(1)式によって算出された厚さを有する固体層から成る放射線減衰部11によって、除染作業現場3から除染済現場2に向って飛来する放射線を低減することが出来る。従って、放射線遮蔽ユニット1は、除染済現場2を放射線から防護することが出来る。すなわち、放射線遮蔽ユニット1は、防護対象の外部から防護対象に向かって飛来する放射線を低減して、防護対象を放射線から防護することが出来る。
また、放射線遮蔽ユニット1は、複数個の放射線遮蔽モジュール10が隣接する放射線遮蔽モジュール10と互いに係合して一列に配列されているので、除染作業に伴う塵埃等の飛散を防止して、既に除染が行われた除染済現場2が再度汚染されることを防護することが出来る。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、所定の厚さを有する複数個の放射線遮蔽モジュール10が隣接する放射線遮蔽モジュール10と互いに係合するように一列に配列されているので、周囲で発生した音波が回折して放射線遮蔽ユニット1で画成された空間に回り込むことを抑制しつつ、放射線遮蔽モジュールの質量からもたらされる音波の透過損失における質量則に基づく防音効果が期待でき、除染作業に伴う騒音等を遮蔽することが出来る。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10がジョイント部12によって角度調整可能に設けられているので、放射線遮蔽モジュール10を直線状に配列させることが出来ることに加え、S字状、L字状、U字状或いはC字状のような湾曲状に配列させることも出来る。従って、放射線遮蔽ユニット1は、直線状及び湾曲状に設けることができ、設置自由度を高めることが出来る。勿論、放射線遮蔽ユニット1の配列は一列のみならず、複数列の配列とすることも可能であり、また放射線遮蔽ユニット1の各列に対してそれらの上段に更に別の放射線遮蔽ユニット1を積み上げることも可能であり、この意味で縦横自在に組み合わせての配置が可能である。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10の放射線減衰部11が光透過性を有しているので、防護対象を放射線から防護しながらも、外部から光(可視光)を取り入れることが出来る。更に、放射線遮蔽ユニット1は、除染済現場2から除染作業現場3を視認することが出来、勿論、除染作業現場3からも除染済現場2を視認することが出来る。
なお、放射線遮蔽ユニット1は、図21に示すように、一列に配列された複数個の放射線遮蔽モジュール10の端部に、端部モジュール30を設けるようにしても良い。
端部モジュール30は、図21に示すように、放射線を減衰させる放射線減衰部31と、放射線減衰部31に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に係合するジョイント部32とを有している。放射線減衰部31は、例えば、柱状に形成された固体層であり、放射線遮蔽モジュール10の放射線減衰部11と同様の材質で形成されている。ジョイント部32は、放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19と同様の形状を有し、略凸円弧状に設けられている。更に、放射線減衰部31には、高さ方向に貫通した取付孔35が形成されている。そして、端部モジュール30は、ジョイント部32が放射線遮蔽モジュール10の係合受部20に係合した状態で、放射線遮蔽モジュール10と同様に、取付孔35に単管22が挿通されることで支持される。このような端部モジュール30は、ジョイント部32が端部の放射線遮蔽モジュール10の係合受部20に係合することで、端部の放射線遮蔽モジュール10が回転することを防止することが出来る。
また、放射線遮蔽ユニット1は、図22に示すように、一列に配列された複数個の放射線遮蔽モジュール10の端部に、端部モジュール40を設けるようにしても良い。
端部モジュール40は、図22に示すように、放射線を減衰させる放射線減衰部41と、放射線減衰部41に設けられ、隣接する放射線遮蔽モジュール10に係合するジョイント部42とを有している。放射線減衰部41は、例えば、柱状に形成された固体層であり、放射線遮蔽モジュール10の放射線減衰部11と同様の材質で形成されている。ジョイント部42は、放射線遮蔽モジュール10の係合受部20と同様の形状を有し、放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19と略同径の略凹円弧状に設けられている。更に、放射線減衰部41には、高さ方向に貫通した取付孔45が形成されている。そして、端部モジュール40は、ジョイント部42に放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19が係合された状態で、放射線遮蔽モジュール10と同様に、取付孔45に単管22が挿通されることで支持される。このような端部モジュール40は、ジョイント部42に放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19が係合されることで、端部の放射線遮蔽モジュール10が回転することを防止出来る。
更に、端部モジュール30,40は、二色成形によって二色に色分けされているようにしても良い。例えば、図21に示すように、端部モジュール30は、取付孔35の軸線よりも一方側の部分30aを第一色にして、他方側の部分130bを第二色にする。同様に、図22(A)に示すように、端部モジュール40は、取付孔45の軸線よりも一方側の部分40aを第一色にして、他方側の部分40bを第二色にする。例えば、第一色は、黄色であり、第二色は青である。なお、第一色及び第二色は、これに限定されるものではない。これにより、端部モジュール30,40は、例えば、一方側の部分30a,40aを除染作業現場3側に向け、他方側の部分30b,40bを除染済み現場2側に向けて放射線遮蔽モジュール10の端部に設けられることで、除染が完了している側と除染が行われていない側とを周囲に容易に把握させることが出来る。
また、放射線遮蔽モジュール10の角度調整係合部19及び係合受部20には、それぞれ、歯車状の凹凸部が形成されるようにしても良い。この凹凸部は、角度調整するために放射線遮蔽モジュール10を回動させた際に、例えば、クリック感を発現する。更に、凹凸部は、例えば、放射線遮蔽モジュール10が所定の角度回動する毎にクリック感を付与させるようにしても良い。これにより、設置作業者は、放射線遮蔽モジュール10を隣接する放射線遮蔽モジュール10に対して何度回動させたかを容易に把握することが出来る。なお、角度調整係合部19及び係合受部20に形成される凹凸部同士の嵌合程度を強固になるように予め設定することで、嵌合後には一方の放射線遮蔽モジュール10を他方の放射線遮蔽モジュール10に対して回動出来ないようにすることも可能である。
また、図10に示すように、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11に、次の放射線遮蔽モジュール10を支持する次の単管22を打ち込む際のガイド部50を有するようにしても良い。ガイド部50は、放射線減衰部11の下面の一側面側に形成された凹段部51と、下面の他側面側に側方に突出し、隣接する放射線遮蔽モジュール10の凹段部51が配置される凸段部52とで構成されている。更に、凸段部52には、係合受部20の円弧中心に対応する位置に、ガイド孔53が形成されている。このガイド孔53は、放射線遮蔽モジュール10が単管22に取り付けられて角度調整された後に、次の放射線遮蔽モジュール10を支持する次の単管22を打ち込む際のガイドとなる。従って、設置作業者は、次の単管22を打ち込む位置を容易に把握することが出来る。
また、図11に示すように、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を、高さ方向に複数個積み上げて設けるようにしても良い。この場合、放射線遮蔽ユニット1は、積み上げた全ての放射線遮蔽モジュール10の取付孔21に亘って単管22が挿通されることで支持される。
更に、図12に示すように、放射線遮蔽ユニット1は、最下段及び中間段の放射線遮蔽モジュール10の上面及び下面に取付孔21を形成し、最上段の放射線遮蔽モジュール10の下面に取付孔21を形成して、最下段の放射線遮蔽モジュール10の下面の取付孔21に地面4に固定された単管22を挿通し、最下段の放射線遮蔽モジュール10の上面の取付孔21と中間段の放射線遮蔽モジュール10の下面の取付孔21とに亘って単管22を挿通し、更に、中間段の放射線遮蔽モジュール10の上面の取付孔21と最上段の放射線遮蔽モジュール10の下面の取付孔21とに亘って単管22を挿通することで、支持されるようにしても良い。
更に、図13に示すように、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11の上面に係合凸部54を設け、放射線減衰部11の下面に他の放射線遮蔽モジュール10の係合凸部54と係合する係合凹部55を設けるようにしても良い。これにより、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を高さ方向に複数個積み上げて設ける際に、上層の放射線遮蔽モジュール10の係合凸部54と下層の放射線遮蔽モジュール10の係合凹部55とを係合されることで、上層の放射線遮蔽モジュール10と下層の放射線遮蔽モジュール10とのずれ止めを図ることが出来る。勿論、放射線遮蔽モジュール10は、放射線減衰部11の上面に係合凹部55を設け、放射線減衰部11の下面に係合凸部54を設けるようにしても良い。
更に、端部モジュール30,40も、上述した放射線遮蔽モジュール10と同様にして、高さ方向に複数個積み上げて設けるようにしても良い。
また、放射線遮蔽モジュール10は、単管22によって支持されることに限定されるものではなく、図14に示すように、支持板60によって支持されるようにしても良い。支持板60は、板状のフランジ部61と、フランジ部61上に一体に設けられ、放射線遮蔽モジュール10の取付孔21に挿通される支持突部62とを有している。従って、放射線遮蔽ユニット1は、支持板60を地面4に配置するだけで良く、容易に製作することが出来る。
更に、図15に示すように、支持板60は、フランジ部61に、複数個の支持突部62を有するようにしても良い。例えば、フランジ部61は、S字状等、放射線遮蔽ユニット1の完成予定形状に予め形成しておく。従って、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を設置する度に支持板60を地面4に配置する必要が無く、容易に製作することが出来る。なお、支持板60は、フランジ部61を地面4にアンカボルト等の締結部材で固定するようにしても良い。
更に、放射線遮蔽ユニット1は、単管22や支持板60等の支持部材によって放射線遮蔽モジュール10を支持することなく、放射線遮蔽モジュール10を地面4上に配置するようにしても良い。
また、放射線減衰部11には、図23に示すように、更なる層90を設けるようにしても良い。更なる層90は、放射線減衰部11の全面に、一層又は複数層設けるようにしても良く、放射線減衰部11の少なくとも一面に、一層又は複数層設けるようにしても良い。このような更なる層90は、固体層又は流体層であって、上記表1に示す元素周期表の第1の周期から第7の周期の元素を少なくとも1つ含む材質で形成されている。このような性質の素材としては、例えば、ソーダガラスや石英ガラス、鉛ガラス等の光透過性ガラス、酸化イットリウム、アルミン酸イットリウム、或いは酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を出発物質として焼結構成される光透過性セラミックス、ポリアミド11やトロガミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS、アクリル、四フッ化エチレン、エチレン酸ビコポリマー、ベークライト、メラミン、不飽和ポリエステル、エポキシ等の光透過性合成樹脂などの固体を採用することが可能である他、オイルや入手が容易な水や海水等の液体を採用することが可能であり、液相体の他、ゲル状体、スラリー状体、粉体、粒体、或いはそれらの混合体、若しくは、注入時には、流体でありながら、注入後に硬化して固体化するものであっても良い。本発明の放射線遮蔽モジュール10においては、これらの配合によって、放射線の減衰率を調整することも可能である。従って、放射線遮蔽モジュール10は、放射線の遮蔽性、可視光の透過性の他、機械的強度や各種の耐久性の向上を図ることが出来る。
また、放射線遮蔽モジュール10は、更なる層90を、放射線減衰部11と同様に、放射線を減衰する減衰層として用いるようにしても良い。この際、放射線遮蔽モジュール10は、上記(2)式を満たすように設けられる。このような場合であっても、放射線遮蔽モジュール10は、上記(2)式によって算出された厚さを有することによって、外部から防護対象に向かって飛来する放射線を低減することが出来る。
また、放射線遮蔽モジュール10は、第一の実施の形態及び第二の実施の形態ともに、図24に示すように、平面視で縦長(幅広)となるように設けても良く、図25に示すように、平面視で横長(長手方向に長く)となるように設けても良い。更に、放射線遮蔽モジュール10は、大人の背丈程の高さに設けることに限定されるものではなく、それより低く、例えば、板状と言えるような縦横比で設けるようにしても良く、高く設けるようにしても良い。更に、放射線遮蔽ユニット1は、放射線遮蔽モジュール10を積み上げて、大人の背丈程の高さに設けるようにしても良く、それより低く設けるようにしても良く、高く設けるようにしても良い。