以下、本発明に係る地殻様組成体及び地殻様組成体の製造方法について図面を参照して説明する。なお、本発明の説明を以下の順に沿って進行する。
1.放射能無能化処理システムについて
2.放射性物質の濃度(密度)の所定値及び放射性物質について
3.放射性物質の密度分布について
4.地殻様組成体の構成について
4−1.放射性物質が全体均一の例
4−2.内部に放射性物質を配し内部が所定値を満たす例
4−3.内部に放射性物質を配し全体として所定値を満たす例
4−4.放射性物質を含む層を多層構造とし、全体として所定値を満たす例
4−5.放射性物質濃度(密度)が外部に向かうほど低くなる例
5.地殻様組成体の製造方法
5−1.製造工程全体の説明
5−2.前処理工程の説明
5−2−1.汚染材の焼成処理の説明
5−2−2.放射性物質の化学的固定(ラッピング処理)の説明
5−2−3.汚染水の前処理の説明
5−3.その他の処理の説明
5−4.成形方法の説明
5−4−1.放射性物質が全体均一の地殻様組成体の製造方法の説明
5−4−2.内部に放射性物質を配した地殻様組成体の製造方法の説明
(1)外層から開始する例
(2)内部から開始する例
(3)同時に開始する例
5−4−3.遠心力を利用した地殻様組成体の製造方法の説明
5−4−4.圧力を利用した地殻様組成体の製造方法の説明
5−5.粉砕処理工程の説明
5−6.利用工程の説明
5−6−1.経海地殻還元方法の説明
5−6−2.経坑地殻還元方法の説明
5−6−3.その他の利用方法の説明
[1.放射能無能化処理システムについて]
図1に示すように、本発明は、放射能無能化処理システム10によって、放射能汚染物質を無能化して、放射性物質の濃度を国内外の基準値以内にした本発明の地殻様組成体20を製造する。より具体的に、図2に示すように、放射能無能化処理システム10は、例えば、放射能汚染物質を含むがれき、汚泥、砂、スラッジ等を焼却等することによって、放射性物質と共に含まれる有機物を無くしながら、無機化処理された放射性物質を他の物質と例えば同時的に混合して希釈化し、放射性物質の濃度を基準値以内にした地殻様組成体20を製造する。地殻様組成体20は、放射性物質を固定し閉じ込め、また、封じ込めることによって、放射能が外部に放出されないように遮蔽することが出来る。つまり、希釈化するために混合される混合材として、放射線減衰性を有する無機物質を用いることで、効果的に放射性物質から放出される放射線を減衰させることが可能となる上、この混合材が更に物理的、化学的に安定な固化が成されて安定固相体となる物であることが望ましく、これによって長期的に放射性物質を閉じ込めて、放射能を実質的に無能化することが出来るようになる。
このように、放射能無能化処理システム10で製造された地殻様組成体20は、放射性物質を物理的に閉じ込め固定することで、及び/又は、放射性物質を化学的に閉じ込め固定することで、放射性物質の移動や溶出を防止することが出来、更に、放射性物質を超低密度化することで、放射線絶対量を大幅に低下することが出来る。更に、放射線を遮蔽することで、放射線レベルを低減することが出来、更に、熱密度を低下させることで、過熱を防止出来る。なお、過熱を防止しなければ、固相の地殻組成体を得る一反応である水硬反応の制御性が悪化し、過度な水硬反応の進行によって固化体が脆化する畏れがある。
[2.放射性物質の濃度(密度)の所定値及び放射性物質について]
ここで、放射性物質の濃度(密度)の基準値は、環境省の平成23年10月29日付け「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染の対処において必要な中間貯蔵施設等の基本的考え方について」の書面によれば、8,000Bq/kg以下である。従って、これに準拠するように地殻構成体を作製することは国内法に適い好ましい。なお、この基準が法的に設定された法令基準値ともなる。また、原子力安全・保安院放射性廃棄物規制課の「原子炉等規制法におけるクリアランス制度について」の書面によれば、下記基準とされる。従って、これに準拠するように地殻組成体を作製することは国際ルール上においても適するので好ましい。本発明の所定値は、この法令基準値及び/又はクリアランスレベルを満たす値となる。
具体的に、クリアランスレベルは、対象物中に複数の放射性核種が存在する場合、重畳を考慮すべく、対象物に含まれる評価対象放射性核種の濃度(密度)の当該核種のクリアランスレベルに対する比の総和が1以下であることを基準とする。数式では、以下の通りである。
i : 評価対象放射性核種i
D(i) :対象物に含まれる核種iの濃度(密度)
C(i) :核種iのクリアランスレベル(下記表1参照)
ところで、図3に示すように、放射能汚染材には、代表的には魚貝類、野菜類、焼却灰(ゴミ焼却場由来、或いは火力発電所由来など)、汚泥スラッジ、海洋泥砂、河川泥砂、湖泥砂、街路樹木、がれき(コンクリ、木材、ガラス、金属、プラスチック)、汚染水、土砂等々が含まれる。これらの汚染物質は、下記表2のように分類することが出来る。
[3.放射性物質の密度分布について]
ここで、放射性物質の密度分布と放射線強度の関係について考察する。ここでは、先ず、放射線の減衰性について物質固有に定まる減衰係数μの媒質中に放射性物質が分散している分布系における全放射性物質が放射する放射線が当該媒質表面の一点(以下、この点を測定点または原点という。)につくる放射線強度を考える。
先ず、一次元媒質系を考える。ここで、媒質は一様均質であるとし、媒質中における原点からの或る点までの距離(位置)をxjとし、媒質中に分布する放射性物質の密度分布を一次元の密度分布関数ρ(xj)とおく。すなわち、ρ(xj)は、位置xjにおける放射性物質の密度を表すものとする。
これより、媒質中の位置xjを代表点とする微小領域Δxjに存在する放射性物質から発せられる位置xjでの放射線強度ΔI0jは、ΔI0j∝ρ(xj)Δxjと表される。このことは、放射線強度が放射性物質の量とそれが発する固有の放射線強度によることから明らかであり、従って、
と表される。ここで、κは、放射性物質に固有の比例定数であり、強度係数である。この微小領域Δxjに存在する放射性物質から放射される放射線が測定点に及ぼす影響、すなわち、微小放射線強度をΔIjとすれば、微小放射線強度ΔIjは、
と表される。この分布系をn個の微小領域に分割して考えれば、分布系全体から放射される放射線による測定点に対するトータルとしての放射線強度Iは、微小放射線強度ΔIjのj全体に亘る重ね合わせとなる。従って、
であり、微小領域Δxjを極限まで小さくして行けば、すなわち、nの正の極限においてρが定義可能であれば、
となり、これより、
を得ることが出来る。
以上は、一次元モデルについての考察であったが、これを三次元モデルに拡張すると、三次元の密度分布関数は、三次元座標上の位置rを用いて、ρ(r)と拡張される。つまり、密度分布関数ρは座標の関数として規定される。また、位置rから発せられる測定点までの媒質中における直線経路の距離は、位置ベクトルrのノルム‖r‖で与えられる。従って、二次元分布系における測定点での放射線強度は、二次元分布系の全領域に亘って微小体積dvで積分することができる。
ここで、簡単のため一次元モデルで以下の4つのケースについての具体的な放射性物質密度分布関数ρ(x)を与えてそれぞれの放射線強度を求める。
(ケースI・・・図1中の地殻様組成体20a参照)
ρ(x)=c:const
全体として放射性物質が均一に分散されている例。
(ケースII・・・図1中の地殻様組成体20b参照)
ρ(x)=kx:k=比例定数
中心へ向かうほど比例的に放射性物質の密度が高くなる例。
(ケースIII・・・図1中の地殻様組成体20b参照)
ρ(x)=sin(gx):g=比例定数
中心部へ向かうほどsinカーブのように放射性物質の密度が高くなる例。
(ケースIV・・・図1中の地殻様組成体20c参照)
ρ(x)=0 :0≦x≦a
c(const):a<x≦X−a
0 :X−a<x≦X
中心部にのみ放射性物質が存在する例
ただし、放射能濃度分布関数ρ(x)は、Nを分布系における放射性物質の総量とし、分布系の長さをXとするとき、
を満たすものとする。
(ケースI・・・図1中の地殻様組成体20a参照)
従って、上式は、
となる。ここで、Xを十分大きくとれば、定義よりc=N/X=constであるから放射線強度IIは、
に収束することになる。つまり、分布系が一定の大きさを超えれば、その端点における放射線強度IIはその大きさや放射性物質の総量に因らず、媒質の性質と、媒質中に含まれる放射性物質の種類と放射能濃度のみによって決まる一定値となることを示している。
(ケースII・・・図1中地殻様組成体20b参照)
定義より、k=2N/X2であるから、放射線強度IIIは、
となる。ここで、Xを十分大きくとれば、放射線強度IIIは、
に収束することになる。つまり、分布系が一定の大きさを超えれば、その端点における放射線強度IIIはその大きさや放射性物質の総量に因らず一定となることを示している。さらに、この結果は、同じ大きさで同じ総物質量であれば、ケースIよりもケースIIの方が、分布系表面における放射線強度が低レベルになることを示している。
(ケースIII・・・図1中地殻様組成体20b参照)
を得る。ここで、放射性物質の密度分布関数ρとしてのsinカーブは、一次元の分布系において原点からXまでの間に半波長分の分布を成すものとする。すなわち、両端で放射性物質の存在量が0で、分布系の中央に向かって徐々に増量し、中心部で最多の量になるように分布するものとする。すると、この条件からg=π/Xとなる(ここでのπは円周率である)。これによれば、放射線強度IIIIは、
となる。ここで、Xを十分大きくとれば、放射線強度IIIIは、
に収束する。ここで、μとπ/Xが同程度であれば、この収束値は、
程度となり、μ2≫(π/X)2と表される同程度であれば、この収束値は、
となる。いずれにしてもXを十分大きくとれば、放射線強度IIIIは、一定の値に収束することを意味し、特に、定数gが大きさXの逆数に比例する設定となることからXの大きさに反比例して放射線強度IIIIが小さくなることが分かる。
(ケースIV・・・図1中地殻様組成体20c参照)
一方の放射性物質0分布領域の端点に測定点が在るとする。すると、この0分布領域と、それに隣接する一様均質分布cの領域との境界点におけるc分布領域側からの放射線強度をI’IVとすれば放射線強度IIVは、
と表される。ここで、μは0分布領域を構成する媒質の減衰係数である。放射線強度をI’IVは、aからX−aまでの間のxについての積分形として与えられる。すなわち、
となる。定義よりc=N/(X−2a)であるから放射線強度IIVは、
と表される。これは、どのような大きさのXを設定しても0<a<X/2を満たすaに対して単調減少であることを示している。また、aに対して十分にXが大きい場合のXの増加に対する放射線強度IIVの挙動も単調減少となる。従って、この際のXの極限では放射線強度IIVの値は0に収束することになる。
このことからケースIVでは、大きさXが固定された場合、壁厚aの大きさを、X/2に接近させて厚くする程、放射線強度IIVの強度を減少させることが出来ることを示している。ただし、壁厚aを大きくすると、放射能量Nを一定とする場合には、放射能濃度ρが、
で与えられるから、aをX/2に接近させるに連れてρの値が際限なく増大してしまう。つまり、放射能濃度を所定値以下に納めることが出来なくなる。従って、必要に応じてc分布領域の密度ρを上述したようなクリアランスレベルや政府基準値(クリアランスレベルや政府基準値を含めて法令基準値や所定値ともいう)以下に設定しながら表面放射線強度が所望の値以下好ましくは自然放射線レベル以下になるように設定することが好ましく、方程式上における放射線強度の可能な限りの最小化と、放射能濃度を規定している法的基準との兼ね合いを採ることが好ましい。
例えば、図4に、分布系に含有される放射性物質の総量を一定として、0分布領域の厚さa(遮蔽壁厚)を連続的に変えながらそれに対応する測定点での放射線強度をプロットし、このグラフに、0分布領域の厚さaを変えたことに伴って変化する放射能濃度を縦第二軸に採って漸次高濃度化するグラフを重ねて、壁厚aと放射線強度と放射能濃度の関係を示す。
図4中に線Aで示す通り、放射線強度は、壁厚aが厚くなる程弱くなり、a=X/2に向かって単調減少して徐々に放射線強度レベルが低下することが判る。一方で、線Bで示す通り、0分布領域の厚さaが厚くなるに連れて放射能濃度は、はじめはゆっくりと、次第に高濃度化され或る点から急速に超高濃度化されることが判る。ここで、線Bで示す濃度曲線に対して、時代の要請や社会的情勢によって変動し得る要素である法令基準濃度を横軸に平行な線Cで交差させ、その交点から横軸まで縦軸に平行な線Dを引き、横軸との交点を得る。
すると、この横軸との交点は、法令基準濃度を達成することが可能な最大の0分布領域の厚さamaxであって、法令基準濃度適合厚さとなる。さらに、この線Dを上方に延長して線Aで示される強度曲線と交差させ、その交点から縦軸に向けて横軸と平行に線Eを引き、縦軸との交点を得る。すると、線Eと縦軸との交点は、法令基準濃度適合厚さamaxに対応した放射線強度、すなわち法令基準濃度適合厚さ対応強度となる。この法令基準濃度適合厚さ対応強度は、必ずしも強度曲線における最小値若しくは極小値、或いは極小値付近の値となるとは限らず、寧ろ極小値よりも高い値となる上、法令基準濃度適合厚さ対応強度が必ずしも自然放射線レベル、若しくは所望の放射線レベルを満たしているとは限らない。そこで、そのような場合には、上記分布系に含有される放射性物質の総量を減少させるか、分布系全体の大きさを大きくすることで、系全体としての放射能濃度を希釈し、表面放射線強度を低下させることが望ましい。
ところで、如何なる分布系を構築すると外部に出てくる放射線強度を最小化することが出来るかを考えることは、安全且つ効果的に無能化処理を行う上で多分に意味がある。そこで、以下に、如何なる密度分布関数ρを採るとき、分布系の表面から放出される放射線強度が一定値以下となるかを検討する。
先ず、分布系の一端からの深さ(距離)をD、分布系の一端から中心まで(又は他端側まで)の深さ(距離)をDmaxとして、すなわち、
として、0以上Dmax以下の或る深度点までの深さをD0とする。このとき、D0<Dを満たす全てのDに対して、
を満たすことが、効率的な分布論上好ましい。なぜなら、媒質は厚い程、放射線強度を減衰させる効果があるからであり、比較として手前側に高濃度分布させるよりも深度の深い側を高濃度分布させる方が放射線強度を低減させることが出来るからである。
ここで、Dについて0からDmaxまでの積分値において、Dmaxの極限が上に有界となる任意の関数f(D)を導入する。つまり、
とする。ただし、Kは一定値である。すると、この媒質の放射線減衰係数をμDとすれば、或る一定の放射線強度Iη(基準強度)以下に、表面放射線強度IDを抑えることを可能とする密度分布関数ρ(D)の満たすべき条件は、全てのDに対して、
となる。
ゆえに、密度分布が上記条件を満たすとき、その分布系は如何なる大きさに構築されようとも表面から放出される放射線の強度が一定値を超えることがないということが実現される。従って、この条件を満たす限り、理論的には表面放射線強度を一定値に抑えながらも無限大の放射性物質を処理することが可能であるといえる。勿論、その場合にはその分布系の大きさも無限大となることに注意する。
ところで、分布系に分布するj種類の放射性物質(核種)Rjの半減期および分布系における核種の存在比をそれぞれτj、σjとおけば、核種全ての放射性物質Rjにわたる総合的な半減期τζ(経過時間tに対して一定ではない)は、次式のように表すことが出来る。すなわち、
ただし、σjは核種の存在比であるから、
である。これを用いればt時間後における放射性物質の総残量N(t)は、
と表される。ここで、各核種から放出されるγ線等の放射線の強度がほぼ一定であるとみなせば、t時間後の分布系の表面放射線強度I(t)は、
と表されることになる。
[4.地殻様組成体の構成について]
[4−1.全体均一の例]
地殻様組成体20は、上記ケースIの例に従えば、図5に示すように構成することが出来る。すなわち、図5(A)に示す地殻様組成体20aは、ブロック状に成形されており、放射性物質19が全体に均一に分散され固化されている。ここで、ブロック状に形成されている物としては特に形状などは限定されない。この地殻様組成体20aは、上記表1に示す一次組成物に一次組成物の硬化速度及び/又は水和反応速度を調整する石膏等の反応速度調整材を加えた固化性結合材となる二次組成物に対して、更に、適宜、水を加え混練し成形固化させた三次組成物であるブロックであっても良いし、更に、細骨材(砂)を加えて適宜、水を加え混練し成形固化させた四次組成物であるブロックであっても良いし、更に、粗骨材(砂)を加えて適宜、水を加え混練し成形固化させた五次組成物であるブロックであっても良い。これらの組成物の場合には、一次組成物に放射性物質19が含まれていても良いし、水として放射性物質19の汚染水を用いても良いし、細骨材や粗骨材に放射性物質19が含まれていても良いが、完成品としての成形品の放射性物質19の濃度(密度)が上述した所定値以下となるように調整する。ここで所定値とは、社会情勢や経済状況、放射線医学的知見や放射線生物学や放射線生態学、放射線環境学的知見の知得状態によってその社会が時々に応じて定められる基準値を意味し、現日本国内では8,000Bq/kg以下であって、クリアランス制度としては表1に記載のクリアランスレベルが採られている。
なお、地殻様組成体20aは、他に、放射性物質19を、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル熱処理質、アスファルト等と混練し、放射性物質19を全体に均一に分散させた成形品であっても良い。更に、放射性物質19が化学的又は物理的に被覆されたものが完成品であるブロックの中に均一に分散されていても良い。また、放射性物質19は、全体に均一に分散されていることが好ましいが、一部に放射性物質19が偏在した箇所が存在した不均一なものであっても良い。この場合にあっては、放射性物質19が偏在した箇所は、放射性物質19の密度が所定値より大きくても良いが、表面に露出していないことが好ましい。また、地殻様組成体20aには、図5(B)に示すように、外層17を設けて、外層17を、所定値より低い放射線濃度、例えば放射性物質19を含まないような層としても良い。
図5(A)及び(B)に示す地殻様組成体20aは、成形品を、魚礁や沿岸海洋構造物として用いることも出来るし、海洋に沈降させることが出来る。また、地殻様組成体20aは、ペースト状の状態でペースト状地殻様組成体として、海洋に沈降させることが出来る。また、坑道に配置し、また、坑道の床部及び/又は壁部及び/又は天井部として用いることが出来る。更に、坑道を埋め戻すための資材として供することも出来る。また、地殻様組成体20aは、ブロック状の成形品を粉砕して砕骨材(クラッシャーラン)としても良い。この砕骨材は、例えば、詳細は後述するが路盤材や軟弱地盤の置換材や土材やバラスト軌道に用いられるバラストに用いることも出来る。
[4−2.内部に放射性物質を配し内部が所定値を満たす例]
また、地殻様組成体20は、ケース4の例に従えば、図6及び図7に示すように構成することが出来る。図6の例から説明すると、この地殻様組成体20c−1は、内部18が有限の放射能濃度(密度)に設定され、外層17が内部18の放射能濃度(密度)よりも低い放射能濃度(密度)に設定され、内部18の放射能濃度(密度)が所定値以下に設定されている。具体的に、地殻様組成体20c−1は、ブロック状に成形されており、内部18に、放射性物質19が配され、外層17を放射性物質19を含まないバリア層としたものである。ここで所定値とは、社会情勢や経済状況、放射線医学的知見や放射線生物学や放射線生態学、放射線環境学的知見の知得状態によってその社会が時々に応じて定められる基準値を意味し、現日本国内では8,000Bq/kg以下であって、クリアランス制度としては表1に記載のクリアランスレベルが採られている。また、外層17は、少なくとも放射能濃度が測定下限値以下に設定されていれば良い。この地殻様組成体20c−1は、バリア層となる外層17によって、放射線を遮蔽することが出来、また、経年劣化等によって外層17が損傷し内部18が露出したとしても、上記所定値を超えてしまうことを防止することが出来、周辺環境に悪影響を与えることを防止できる。
この地殻様組成体20c−1は、詳細は省略するが、例えば次のように製造することが出来る。例えば、先ず、内部18を、上記表1に示す一次組成物に石膏等の反応速度調整材を加えた固化性結合材となる二次組成物に対して、更に、適宜、水を加え混練し成形固化させて三次組成物として製造することが出来る。更に、細骨材(砂)を加えて適宜、水を加え混練し成形固化させて四次組成物として製造することが出来る。更に、粗骨材(砂)を加えて適宜、水を加え混練し成形固化させて五次組成物として製造することが出来る。これらの場合には、一次組成物に放射性物質19が含まれていても良いし、水として放射性物質19を含んだ汚染水を用いても良いし、細骨材や粗骨材に放射性物質19が含まれていても良いが、完成品としての成形品の内部18の放射性物質19の濃度(密度)が上述した所定値以下となるように調整する。
以上のように製造された放射性物質19を含む内部18を型枠の例えば中央部に配置し、内部18の周囲に、例えば放射性物質19を含まない水で混練された四次組成物や五次組成物を流し込み、成形固化させることによって製造することが出来る。
以上のような地殻様組成体20c−1は、成形品を、魚礁や沿岸海洋構造物として用いることも出来るし、海洋に沈降させることが出来る。また、坑道に配置し、また、坑道の床部及び/又は壁部及び/又は天井部に用いることが出来る。また、地殻様組成体20c−1は、仮に、経年劣化等でバリア層となる外層17が損傷したときであっても、上記所定値を超えてしまうことが無いブロックである。従って、地殻様組成体20c−1は、地殻様組成体20aと同様に、ブロック状の成形品を粉砕して砕骨材(クラッシャーラン)として用いることが出来る。
[4−3.内部に放射性物質を配し全体として所定値を満たす例]
また、地殻様組成体20は、ケース4の例に従えば、図7に示すように構成することが出来る。この地殻様組成体20c−2は、内部18が有限の放射能濃度に設定され、外層17が内部18の放射能濃度(密度)よりも低い放射能濃度(密度)に設定され、内部18の放射能濃度(密度)が前記所定値より大きく設定されている。具体的に、地殻様組成体20c−2は、ブロック状に成形されており、内部18に、放射性物質19が配され、外層17を放射性物質19を含まないバリア層としたものである。なお、外層17は、少なくとも放射能濃度が測定下限値以下に設定されていれば良い。ここで、内部18の放射性物質19の密度が上述した所定値以上とされ、内部18及び外層17を含む全体で、放射性物質19の密度が所定値以下となるようにしている。この地殻様組成体20c−2では、比較的放射性物質19の密度が所定値より高い瓦礫等を内部18の原料として効率的に用いることが出来る。
この地殻様組成体20c−2は、図6に示す地殻様組成体20c−1と同様な製造方法で製造することが出来る。以上のような地殻様組成体20c−2は、成形品を、魚礁や沿岸海洋構造物として用いることも出来るし、海洋に沈降させることが出来る。また、坑道に配置し、また、坑道の床部及び/又は壁部及び/又は天井部に用いることが出来る。更に、坑道を埋め戻すための資材として供することも出来る。
[4−4.放射性物質を含む層を多層構造とし、全体として所定値を満たす例]
更に、地殻様組成体20は、上記ケース2,3の例を参照すれば、図8に示すように構成することが出来る。すなわち、図8に示す地殻様組成体20b−1は、内部18が多層構造を成す。内部18は、放射性物質19を含む層であり、例えば、中心部18aの放射性物質19の濃度(密度)が上述した所定値より大きく又は以下となっており、中心部18aから外側に向かうに連れ中間層18bの放射性物質19の濃度(密度)が段階的に低くなるように構成されている。なお、この例において、中間層18bの数は特に限定されるものではない。ここで、中心部18aから外層17に向かうに連れて、放射性物質19の濃度(密度)は上記ケース2のように比例的に低くなっても良いし、sinカーブのような分布としても良い。そして、中間層18bの外側の外層17は、放射性物質19を含まないバリア層となっている。この外層17も少なくとも放射能濃度(密度)が測定下限値以下に設定されていれば良い。
この地殻様組成体20b−1は、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,2と同様な製造方法で製造することが出来る。すなわち、中心部18aを成形した後、順に、内側の中間層18bから順次成形していくことで多層構造とすることが出来る。以上のような地殻様組成体20b−1は、成形品を、魚礁や沿岸海洋構造物として用いることも出来るし、海洋に沈降させることが出来る。また、坑道に配置し、また、坑道の床部及び/又は壁部及び/又は天井部に用いることが出来る。更に、坑道を埋め戻すための資材として供することも出来る。また、放射性物質19の密度が最も高い内部18の中心部の放射性物質19の濃度(密度)を所定値以下とした場合、地殻様組成体20aと同様に、ブロック状の成形品を粉砕して砕骨材(クラッシャーラン)として用いることが出来る。
[4−5.放射性物質が外部向かうほど漸次密度が低くなる例]
更に、地殻様組成体20は、上記ケース2,3の例を参照すれば、図9に示すように構成することが出来る。図9に示す地殻様組成体20b−2は、内部18の中心部の放射性物質19の濃度(密度)が上述した所定値以上又は以下となっており、中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなるように構成されている。ここで、中心部18から外層17に向かうに連れて、放射性物質19の濃度(密度)は上記ケース2のように比例的に低くなっても良いし、sinカーブのような分布としても良い。そして、内部18の外側の外層17は、放射性物質19を含まないバリア層となっている。この外層17も少なくとも放射能濃度(密度)が測定下限値以下に設定されていれば良い。
この地殻様組成体20b−2は、詳細は後述するが、放射性物質19を比重の比較的低い複数の物質に吸着させ、ペースト状組成物を収容して回転させて、遠心力によって、中心部側に放射性物質19を含む比重の低い物質を分布させ、外側に放射性物質19の密度の低い物質を分布させることによって製造することが出来る。なお、バリア層となる外層17は、例えば、内部18を成形後、型枠を用いて成形すれば良い。
以上のような地殻様組成体20b−2は、成形品を、魚礁や沿岸海洋構造物として用いることも出来るし、海洋に沈降させることが出来る。また、坑道に配置し、また、坑道の床材及び/又は壁材として用いることが出来る。更に、放射性物質19の密度が最も高い内部18の中心部の放射性物質19の密度を所定値以下とした場合、地殻様組成体20aと同様に、ブロック状の成形品を粉砕して砕骨材(クラッシャーラン)として用いることが出来る。
なお、地殻様組成体20としては、図10に示すように、最外層にバリア層となる外層17を設けず、中心部から外側に向けて段階的に又は漸次放射性物質19の密度が低くなるようにし、更に、全体として所定値以下となる地殻様組成体20eとしても良い。
[5.地殻様組成体の製造方法]
[5−1.製造工程全体の説明]
以上のような図5−10に示した地殻様組成体20に用いられる放射性物質19を含んだ原料は、具体的に、図11に示す工程を経て製造される。上記表2に示すように、放射能汚染材には、魚貝類、野菜類、焼却灰、汚泥スラッジ、海洋泥砂、河川泥砂、湖泥砂、街路樹木、がれき(コンクリ、木材、ガラス、金属、プラスチック)、汚染水、土砂、路面材等がある。前処理工程1001では、例えば、これら汚染材の焼成等を行って、汚染材を無機化する。なお、この前処理工程1001の詳細は後述する。
原料工程1002では、図12に示すように、放射能汚染物質となった魚貝類、動物の死体、肉骨、野菜などの動植物類等から生成された炭酸カルシウム組成物、放射能汚染物質となった焼却灰、汚泥スラッジ、湖泥砂等の微粒地質組成物、放射能汚染物質となった海洋泥砂、河川泥砂、湖泥砂等のケイ酸質組成物、酸化鉄原料を中心に、所定の構成成分になるように粉砕、乾燥、混合して成分が安定した粉体原料を製造する。なお、微粒地質組成物やケイ酸質組成物には、火力発電所の焼却灰等を用いても良いし、放射能汚染物質となったがれき(コンクリ、木材、ガラス、金属、プラスチック)を用いても良い。
次いで、焼成工程1003では、図13に示すように、原料工程で得られた粉体原料を所定の温度になるまで加熱し、水硬性の化合物となるように焼成する。例えば最高温度に達して所定の化学反応を終えた後エアークエンチングクーラーで一気に冷却して固相組成物である一次組成物を生成する。焼成時には、放射能汚染物質、非放射能汚染材料の何れでも良いが廃プラスチック、廃油、廃白土、木くず、肉骨粉、再生油等の燃原料物質を投入し、粉体原料を焼成する。
なお、この固相組成物である一次組成物は、炭酸カルシウム組成物、微粒地質組成物、ケイ酸質組成物、酸化鉄原料、燃原料物質のそれぞれについて予め放射性物質の濃度(密度)を調整したものを用いることで、全体としての放射性物質の濃度(密度)を所定値以下又は以上に調整することが出来る。なお、固相組成物である一次組成物は、炭酸カルシウム組成物、微粒地質組成物、ケイ酸質組成物、酸化鉄原料、燃原料物質の一又は複数に、放射能汚染物質を用い、他を非放射能汚染材料とし、その量を調整することによって、放射性物質の濃度(密度)を上述した所定値以下又は以上の所定の値にすることも出来る。なお、これら一次組成物は、放射性物質が含まれない物であってもよい。
更に、仕上工程1004では、図14に示すように、焼成工程で得られた固相組成物である一次組成物に、該一次組成物の硬化速度及び/又は水和反応速度を調整するための反応速度調整材、例えば石膏が加えられ、これらは、細かい粉末になるまで粉砕され、これにより、固化性結合材となる二次組成物が完成される。この固化性結合材となる二次組成物も、上述の一次組成物が用いられることで、全体としての放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は以上の所定の値に調整することが出来る。
この固化性結合材となる二次組成物は、適宜量の水で混練されることによってペースト状組成物或いは固相物である三次組成物となる。この三次組成物は、水と混練されることによって、水和し、及び/又は重合し固化する。ここで用いられる水としては、水道水や河川の水、湖水等の淡水の他、海水など淡水以外の水であってもよく、放射能汚染物質である汚染水であっても良いし、非放射能汚染材料の水であっても良い。特に、海水を用いた場合であって、経海地殻還元による処理を行う場合には、地殻組成体とその経海時に接する海水との間の浸透圧調整を予め行うことが出来て好ましい。三次組成物は、どのような水を用いるかによって、全体としての放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は以下の所定の値に調整することが出来る。このような三次組成物は、ペースト状組成物の状態、或いは硬化した地殻様組成体の状態において、全体としての放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は以上にされる。
更に、固化性結合材となる二次組成物は、細骨材(砂)を加え、適宜量の水で混練されることによってペースト状組成物或いは、その固化物である四次組成物となる。この四次組成物は、水と混練されることによって、水和し、及び/又は重合し固化する。ここで用いられる水としては、淡水の他、海水であってもよく、放射能汚染物質である汚染水であっても良いし、非放射能汚染材料の水であっても良い。特に、海水を用いた場合であって、経海地殻還元を行う場合、地殻組成体とその経海時に接する海水との間の浸透圧調整を予め行うことが出来て好ましい。また、細骨材(砂)としては、土砂、湖泥砂、海洋泥砂、河川泥砂といった放射能汚染物質を用いても良いし、非放射能汚染材料の砂であっても良い。四次組成物は、どのような水や細骨材(砂)を用いるかによって、全体としての放射性物質の濃度(密度)を所定値以下又は以上の所定の値に調整することが出来る。このような四次組成物は、ペースト状組成物の状態、或いは硬化した地殻様組成体の状態において、全体としての放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は以上の所定の値にされる。
更に、固化性結合材となる二次組成物は、細骨材(砂)と粗骨材(砂利)を加え、適宜量の水で混練されることによってペースト状組成物である五次組成物となる。この五次組成物は、水と混練されることによって、水和し、及び/又は重合し固化する。ここで用いられる水としては、ここで用いられる水としては、淡水の他、海水であってもよく、放射能汚染物質である汚染水であっても良いし、非放射能汚染材料の水であっても良い。特に、海水を用いた場合であって、経海地殻還元を行う場合、地殻組成体とその経海時に接する海水との間の浸透圧調整を予め行うことが出来て好ましい。また、細骨材(砂)としては、土砂、湖泥砂、海洋泥砂、河川泥砂といった放射能汚染物質を用いても良いし、非放射能汚染材料の砂であっても良い。四次組成物は、どのような水や細骨材(砂)を用いるかによって、全体としての放射性物質の濃度(密度)を所定値以下又は以上の所定の値に調整することが出来る。このような五次組成物は、ペースト状組成物の状態、或いは硬化した地殻様組成体の状態において、全体としての放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は以上の所定の値にされる。
以上のような三次組成物や四次組成物や五次組成物は、成形工程1005において、後述するが、型枠にペースト状組成物を流し込んで、ブロック状に成形される。このブロック状に成形された三次組成物や四次組成物や五次組成物は、利用工程1007において、上記図5−図10に示すような構成を成し、成形品を、魚礁や沿岸海洋構造物として用いることも出来るし、海洋に沈降させることが出来る。また、三次組成物や四次組成物や五次組成物は、放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のとき、ペースト状の状態で、ペースト状地殻様組成体として、海洋に沈降させることが出来る。また、成形された地殻様組成体20は、坑道に配置し、また、坑道の床部及び/又は壁部及び/又は天井部に用いることが出来る。また、ペースト状地殻様組成体であっても、床部及び/又は壁部及び/又は天井部に流し込み、又は、吹き付けることが出来る。更に、床部及び/又は壁部及び/又は天井部或いは坑道を埋め戻すための資材に用いることができる。更に、地殻様組成体20は、放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のとき、粉砕処理工程1006において、ブロック状の成形品を粉砕して砕骨材(クラッシャーラン)としても良い。この砕骨材は、利用工程1007において、例えば、詳細は後述するが路盤材や軟弱地盤の置換材や土材やバラスト軌道に用いられるバラストに用いること出来る。
[5−2.前処理工程の説明]
[5−2−1.汚染材の焼成処理の説明]
上記表2に示すように、放射能汚染材は、魚貝類、野菜類、焼却灰、汚泥スラッジ、海洋泥砂、河川泥砂、湖泥砂、街路樹木、がれき(コンクリ、木材、ガラス、金属、プラスチック)、汚染水、土砂、路面材等である。なお、ここで用いられる放射能汚染材は、放射能濃度(密度)が測定下限値でも良いが、測定下限値を超える放射能濃度(密度)で放射性物質を含んだ汚染材も用いることが出来る。このような汚染材に有機物が含まれると、地殻様組成体20が成形された後、時間経過に伴って、有機物が膨潤したり、腐敗したり、ガスを発生し、地殻様組成体20が脆弱化してしまう虞れがある。そこで、前処理工程1001では、図15に示すように、汚染材を地殻様組成体20の原料として使用する前に、汚染材の焼成処理を行う。ここでの焼成温度は、放射性物質の気化温度未満とし、放射性物質や灰分が残渣として残り、放射性物質が気化されて大気中に放出されないようにする。このように、汚染材は、焼成処理されることで、有機物を気化若しくは無機化させることが出来る。
上記表3は、代表的放射性物質の沸点表である。セシウム−134は、沸点が671℃である。従って、例えば、焼成温度を671℃未満としたときには、大分部分の放射性物質が気化することを防止することが出来る。なお、密閉空間で汚染材の焼成処理を行うときには、酸素を供給しながら行うことで、有機物質を炭酸ガス等の気体と、水分や灰分等の無機物質に変えることが出来る。
以上のような汚染材の焼成処理により得られた焼成汚染材や焼却灰は、例えば、原料工程1002において、炭酸カルシウム組成物、ケイ酸質組成物、酸化鉄組成物等と共に原料粉砕機に投入して、粉砕原料を得るようにしても良い。また、焼成汚染材や焼却灰は、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物とする際に、添加材として、硬化速度及び/又は水和反応速度を調整するための反応速度調整材や細骨材や粗骨材と共に混合するようにしても良い。このように焼成汚染材や焼却灰を添加することによっても、地殻様組成体20の全体としての放射性物質19の濃度(密度)を調整することが出来る。
[5−2−2.放射性物質の化学的固定(ラッピング処理)の説明]
また、測定下限値を超える放射性物質19を含む泥、土、砂、がれき、焼却灰、スラッジといった上記表2に示すような放射能汚染材は、図16に示すように、化学的に安定していることが好ましい。そこで、汚染材は、粉砕した後、及び/又は、焼成した後、及び/又は、乾燥した後に、放射性物質19の沸点より低温で溶融する低融点物質に溶かし込み又は混合して固化し、固化体を粉砕し砕骨材とすると良い。汚染材が混入されたペースト状の融点物質は、前記汚染材が低融点物質中に均一に分散するように混練されていると良い。この砕骨材は、仕上工程1004において、例えば、ペースト状組成物である四次組成物や五次組成物を製造する際に、細骨材や粗骨材として、二次組成物と混合することが出来る。また、上述した焼成汚染材や焼却灰と共に混合することが出来る。このように砕骨材を添加することによっても、地殻様組成体20の全体としての放射性物質19の濃度(密度)を調整することが出来る。なお、このラッピング処理を施して固化した固化体は、その後、粉砕せずに、無能化組成体として扱うことも可能であるが、この段階の組成体の場合、化学的安定性は得られるものの、放射線を減衰させる遮蔽性が不十分となる虞れがある。
低融点物質としては、例えば、セシウム−134(沸点671℃)の沸点より低い低融点ガラスを用いることが出来る。別の例では、例えば、ホウケイ酸ガラスの化学構造は、主成分であるケイ素とホウ素とが酸素を介して網目状に配置する構造網目構造を形成しており、ガラス固化体中では放射性物質19を網目構造の中に均質かつ安定に取り込むことが出来る。このように放射性物質19が取り込まれたガラス固化体を、粉砕することによって、砕骨材とすることが出来る。
また、低融点物質としては、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル、アスファルト等の少なくとも一つを用いても良い。この場合、放射性物質19を含む汚染材を骨材として用い、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル、アスファルト等と混合し、これを、粉砕して、砕骨材を製造することが出来る。このような砕骨材にあっても、上述のように、ペースト状組成物である四次組成物や五次組成物を製造する際に、細骨材や粗骨材として、二次組成物と混合することが出来る。勿論、この砕骨材は、アスファルト等との合材として、道路舗装材に用いても良い。
[5−2−3.汚染材の事前処理の説明]
放射性物質19を含む汚染材には、放射性物質19で汚染された汚染水もある。放射性物質を含んだ汚染水は、放射性物質を担持する担持材と混合することで、担持材に放射性物質を担持させ、これを一汚染材として、地殻様組成体20の原料に用いて処理することが出来る。すなわち、図17に示すように、容器内において、担持材と放射性物質19に汚染された汚染水とを混合する。
ここで用いられる担持材としては、例えば、バーミキュライトやベントナイトやアスベスト等の吸着性、凝集性、凝結性等の性質を有する層状構造の微粒土質やセシウム等のアルカリ金属やストロンチウム等のようなアルカリ土類金属等のカチオン系物質と反応して安定な固体系化合物を生成する化合性等を有する物質が含まれる。
本件発明者は、表土の成分を分級し、ウェントウォース粒度区分による分類における0.075mm以下の細粒砂や極細粒砂にセシウムの多くが発見されるという知見を得た。ここで用いる担持材は、0.075mm以下の粒径を有する層状構造の微粒土質にセシウムを吸着させる。層状構造の微粒土質と汚染水とを混合すると、放射性物質19を吸着保持した汚染物担持材は、ペースト状を成す。このペースト状汚染物質担持材は、仕上工程1004において、ペースト状組成物である三次組成物や四次組成物や五次組成物を製造する際に、上述した焼成汚染材や焼却灰や砕骨材や細骨材や粗骨材等と共に混合することが出来る。勿論、ペースト状のまま用いずに、乾燥して粉末状としてもよい。
また、層状構造の微粒土質に代わって、多孔質材を用いることも出来る。例えば、多孔質材としては、シラス多孔質ガラス(Shirasu Porous Glass)がある。シラス多孔質ガラスは、熱処理条件を調節することによって1nm〜50μmの範囲で自由に孔径を制御できるので、目的とする放射性物質やその化合物や混合物の大きさに応じて孔径を調整し、放射性物質を吸着することが出来る。このような多孔質材は、濾材となり、水と放射性物質19とを分離することが出来る。この汚染物担持材は、一次乃至五次組成物に混入し、一汚染材として利用することが出来、濾過された水も、仕上工程1004において、ペースト状組成物である三次組成物や四次組成物や五次組成物を製造する際に用いることが出来る。つまり、汚染水の汚染濃度に応じて、担持材の混入量を決定して混合し、分離することなく濾過水と汚染物担持材とが混在した状態のまま地殻組成体の原料として供することが出来る。なお、多孔質材としては、不定形炭素材であっても良い。
[5−3.その他の処理の説明]
三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物とする際に、添加材として、反応性が低い高比重物質を添加し、放射能の遮蔽機能の向上を図ることが出来る。高比重物質としては、バリウムや鉛ガラス片等がある。これらの高比重物質は、図6−図10に示すように、特に地殻様組成体20の外層17に分布させることで、バリア性能を高めることが出来る。更に、前述の担持材に放射性物質を担持させた汚染物担持材や汚染土などを処理する場合、これらの汚染材が高比重の添加材に比して低比重であるため、例えば、後述する遠心力を利用して成形するときには、高比重物質は外側に多く分布することになり、内部側に汚染材が分布し、外部側に放射性物質が分布しないこともあって、外層17のバリア性能を高めることが出来る。
また、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物とする際には、不飽和ポリエステルや不飽和ポリエチレンや不飽和ポリプロピレンと言った樹脂繊維、金属繊維を添加剤として添加することで、地殻様組成体20の物理的な強度を高めることが出来る。
更に、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物とする際には、ソーダガラス等の廉価で塩基性を示す物質を粉砕して添加しても良い。また、ガラス繊維を添加しても良い。これにより、地殻様組成体20の中性化を防止することが出来る。
更に、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物とする際には、酸化チタンを添加するようにしても良い。酸化チタンは、高い親水性を有し、保水効果を高め、水硬反応時における水分不足による劣化を防止することが出来る。
[5−4.成形方法の説明]
次に、上述した図5−10に示した地殻様組成体20を、上述した三次組成物や四次組成物や五次組成物を用いて成形する場合を説明する。
[5−4−1.放射性物質が全体均一の地殻様組成体の製造方法の説明]
図5に示した地殻様組成体20aは、放射性物質19が全体に均一に分散され固化されてブロック状に成形されている。図18に示すように、この地殻様組成体20aを成形するには、先ず、鋼材、木材、樹脂、ガラス等の材料によって所定の形状を成す外型枠101に対して、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物102を打ち込み、バイブレータ等で締固めを行い、この後、外型枠101を取り外して成形することが出来る。ここで、ペースト状組成物102は、放射性物質19が均一に分散された状態で外型枠101に流し込まれる。また、ペースト状組成物102は、放射性物質の濃度(密度)が所定値以下の所定の値に設定されている。かくして、地殻様組成体20aは、全体としての放射性物質の濃度(密度)が所定値以下の値とされたブロックとして成形される。
なお、外型枠101は、取り外すのではなく、残存させて、地殻様組成体20aの保護層や放射線に対するバリア層のように使用しても良い。また、放射性物質19は、混練時間を増やししっかりと混練したときには、放射性物質19を均一に分散することが出来し、混練時間を短くしたときには、成形品の一部に放射性物質19が偏在した場所が形成されることになる。
[5−4−2.内部に放射性物質を配した地殻様組成体の製造方法の説明]
図6に示す地殻様組成体20c−1は、ブロック状に成形されており、内部18に、放射性物質19が配され、外層17を、放射能濃度が測定下限値以下乃至比較的低く設定されたバリア層とし、内部18の放射性物質19の濃度(密度)が上述した所定値以下とされたものである。ここでの例では、外層17に放射性物質19が含まれないようにしている。また、図7に示す地殻様組成体20c−2は、ブロック状に成形されており、内部18に、放射性物質19が配され、外層17を放射性物質19を含まないバリア層とし、内部18と外層17とを合わせた全体としての放射性物質19の濃度(密度)が上述した所定値より大きくしたものである。図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2には、外層17から成形する場合と内部18から成形する場合があるので、次にこれらの製造方法を説明する。
(1)外層から開始する例
このような図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、外層17側から成形する場合、図19に示す手順で製造することが出来る。具体的に、図19(A)に示すように、先ず、鋼材、木材、樹脂、ガラス等の材料によって所定の形状を成す外型枠111には、更に、放射性物質19を含む内部18を成形するための内型枠112が外型枠111の底面から所定間隔上の位置に図示しない取付部に支持されて配設されている。また、内型枠112は、内部18の上にも非放射性物質のペースト状組成物113を打ち込むことが出来るように、開口面の高さが外型枠111の開口面よりも低く設定される。
例えば、内部18をブロックの中心部に設けるときには、外型枠111の中心部に内型枠112が配設される。すなわち、内型枠112は、図19(A)中、外型枠111の側壁と内型枠112の側壁との間隔a1と外型枠111の底面と内型枠112の底面との間隔a2と外型枠111の開口面と内型枠112の開口面との間隔a3とが等しくなるように外型枠111内に配置される。そして、外型枠111と内型枠112との間の空間部には、モルタルやコンクリートといった非放射性物質であるペースト状組成物113が内型枠112の開口面の高さまで打ち込まれる。なお、ペースト状組成物113は、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル熱処理質、アスファルト等であっても良い。また、ここで、バイブレータ等で締固めを行っても良い。
次いで、図19(B)に示すように、内型枠112には、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物114を打ち込まれる。ここで、ペースト状組成物114は、図6に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値以下の地殻様組成体20c−1を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値以下に調整されたものが用いられる。また、図7に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値より大きい地殻様組成体20c−2を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値より大きく、好ましくは、外層17と内部18の全質量に対しての放射能レベル、すなわち放射能濃度が基準値に適合するように調整されたものが用いられる。そして、ペースト状組成物114は、内型枠112の開口面まで打ち込まれる。なお、ここでも内型枠112内のペースト状組成物114の締固めを行っても良い。
次いで、図19(C)に示すように、内型枠112に流し込まれたペースト状組成物114の上側を含む全体に外型枠111の開口面まで非放射性物質のペースト状組成物113が打ち込まれる。なお、ここでも内型枠112内のペースト状組成物114の締固めを行っても良い。かくして、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18の放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は大きい値とされ、全体としても放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のブロックとして成形される。なお、外型枠111は、取り外すのではなく、残存させて、地殻様組成体20c−1,20c−2の保護層や放射線に対するバリア層のように使用しても良い。
なお、図19(A)及び(D)に示すように、外型枠111に非放射性物質のペースト状組成物113が流し込まれ予め象られた状態で固化した後、内型枠112を取り外し、内型枠112が離型され成形された凹部115に対して、放射性物質19を含むペースト状組成物114を流し込むようにしても良い。すなわち、この例では、凹部115が内型枠112として利用される。この後、図19(E)に示すように、非放射性物質のペースト状組成物113は、凹部115に流し込まれたペースト状組成物114の上側を含む全体に外型枠111の開口面まで打ち込まれる。これにより、外層17と内部18との界面は、図19(E)に示すように、非放射性物質のペースト状組成物113と放射性物質19を含むペースト状組成物114とが接することになり、型枠などのセパレータがある場合に比して界面の物理的な強度を高めることが出来る。
また、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、外層17側から成形する場合、図20に示す手順で製造することが出来る。具体的に、図20(A)に示すように、外型枠111には、更に、放射性物質19を含む内部18を成形するための内型枠112aが外型枠111の底面から所定間隔上の位置に図示しない取付部に支持されて配設されている。内型枠112aは、開口面の高さが外型枠111の開口面と揃うように設定される。
例えば、内部18をブロックの中心部に設ける場合、内型枠112aは、図20(A)中、外型枠111の側壁と内型枠112aの側壁との間隔a1と外型枠111の底面と内型枠112aの底面との間隔a2とが等しくなるように外型枠111内に配置される。そして、外型枠111と内型枠112との間の空間部には、モルタルやコンクリートといった非放射性物質であるペースト状組成物113が外型枠111の開口面の高さまで打ち込まれる。なお、ペースト状組成物113は、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル、アスファルト等であっても良い。また、ここで、バイブレータ等で締固めを行っても良い。
次いで、図20(B)に示すように、内型枠112には、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練しペースト状組成物114が打ち込まれる。ここで、ペースト状組成物114は、図6に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値以下の地殻様組成体20c−1を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値以下に調整されたものが用いられる。また、図7に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値より大きい地殻様組成体20c−2を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値より大きく、好ましくは、外層17と内部18の全質量に対しての放射能レベル、すなわち放射能濃度が基準値に適合するように調整されたものが用いられる。そして、ペースト状組成物114は、内型枠112の所定高さまで打ち込まれる。すなわち、ペースト状組成物114は、間隔a1,a2と外型枠111と内型枠112aの開口面とペースト状組成物114の上面との間隔a3とが等しくなる高さまで内型枠112に打ち込まれる。なお、ここでも内型枠112内のペースト状組成物114の締固めを行っても良い。
次いで、図20(C)に示すように、内型枠112に流し込まれたペースト状組成物114の上側に、内型枠112の開口面まで非放射性物質のペースト状組成物113が打ち込まれる。なお、ここでも内型枠112内のペースト状組成物113の締固めを行っても良い。かくして、放射性物質19を含むペースト状組成物114は、非放射性物質のペースト状組成物113によって閉塞されることになる。このような図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18の放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は大きい値とされ、全体としても放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のブロックとして成形される。なお、外型枠111は、取り外すのではなく、残存させて、地殻様組成体20c−1,20c−2の保護層や放射線に対するバリア層のように使用しても良い。
なお、図20(A)及び(D)に示すように、外型枠111に非放射性物質のペースト状組成物113が流し込まれ予め象られた状態で固化した後、内型枠112を取り外し、内型枠112が離型され成形された凹部116に対して、放射性物質19を含むペースト状組成物114を流し込むようにしても良い。すなわち、この例では、凹部116が内型枠112として利用される。この後、図20(E)に示すように、非放射性物質のペースト状組成物113は、凹部115に流し込まれたペースト状組成物114の上側に外型枠111の開口面まで打ち込まれる。これにより、外層17と内部18との界面は、図20(E)に示すように、非放射性物質のペースト状組成物113と放射性物質19を含むペースト状組成物114とが接することになり、型枠などのセパレータがある場合に比して界面の物理的な強度を高めることが出来る。
なお、図8に示すような中心部18aから外側に向かうに連れ中間層18bの放射性物質19の密度が段階的に低くなる図8に示すような多層構造の地殻様組成体20b−1を成形するときには、外型枠111の中に、層数に応じた内型枠112を配設し、中心側空順に、内型枠112にペースト状組成物を流し込み成形していけばよい。
(2)内部から開始する例
また、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18側から成形する場合、図21に示す手順で製造することが出来る。この場合、先ず図21(A)に示すように、内型枠112aに対して、三次組成物や四次組成物や五次組成物を水又は汚染水で混練した放射性物質19を含むペースト状組成物114としてこれを打ち込み、バイブレータ等で締固めを行い成形する。なお、ペースト状組成物114は、図6に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値以下の地殻様組成体20c−1を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値以下に調整されたものが用いられる。また、図7に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値より大きい地殻様組成体20c−2を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値より大きく、好ましくは、外層17と内部18の全質量に対しての放射能レベル、すなわち放射能濃度が基準値に適合するように調整されたものが用いられる。そして、内部用組成物となる図21(A)に示す内型枠112a付きの内部成形体18cや図21(B)に示す内型枠112aが外された内部成形体18dが次に外型枠111内に設置されることになる。内型枠112a付きの内部成形体18cは、内型枠112aが内部18の保護層又は放射線に対するバリア層と機能することが出来る。また、内型枠112aが外された内部成形体18dは、非放射性物質のペースト状組成物113との物理的な強度を高くすることが出来る。なお、以下の例では、内型枠112aが外された内部成形体18cを例に説明する。
具体的に、図22(A)に示すように、外型枠111には、硬化前のモルタルやコンクリートといった非放射性物質であるペースト状組成物113が所定の高さにまで打ち込まれる。なお、ここで、バイブレータ等で締固めを行っても良い。次いで、ペースト状組成物113には、図22(B)に示すように、内部成形体18dが設置される。ペースト状組成物113には、内部成形体18dがペースト状組成物113内に沈降しない程度にまで固化した後、内部成形体18dが設置される。この際、内部成形体18dは、外型枠111の側壁と内部成形体18dの側壁との間隔a1が同じとなる位置に設置される。この後、外型枠111には、図22(C)に示すように、開口面まで、非放射性物質であるペースト状組成物113が流し込まれる。この際、内部成形体18dは、外型枠111内において、外型枠111の底面と内部成形体18dの底面との間隔a2と外型枠111の開口面と内部成形体18dの上面との間隔a3とが等しくなるように設定される。すなわち、内部成形体18dは、外型枠111内において、a1=a2=a3となる位置に配置される。かくして、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18の放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は大きい値とされ、全体としても放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のブロックとして成形される。なお、外型枠111は、取り外すのではなく、残存させて、地殻様組成体20c−1,20c−2の保護層や放射線に対するバリア層のように使用しても良い。また、ペースト状組成物113は、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル、アスファルト等であっても良い。また、ここで、バイブレータ等で締固めを行っても良い。
また、外型枠111は、図23のように構成しても良い。すなわち、外型枠111には、図23(A)に示すように、底面に、第一高さの仮台111aが設置されており、この仮台111aには、内部成形体18dが設置される。仮台111aは、例えば複数の支持脚111bによって所定高さに設置され、仮台111aと外型枠111の底面との間は、空洞で、ペースト状組成物113が流れ込むようになっている。仮台111aに内部成形体18dが設置されると、外型枠111には、図23(B)に示すように、非放射性物質であるペースト状組成物113が第2高さである外型枠111の開口面まで流し込まれる。この際、内部成形体18dは、外型枠111内において、外型枠111の底面と内部成形体18dの底面との間隔a2と外型枠111の開口面と内部成形体18dの上面との間隔a3とが等しくなるように設定される。また、外型枠111の側面と内部成形体18dの側面との間隔a1と間隔a2,a3とが等しくなるように設置される。
かくして、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18の放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は大きい値とされ、全体としても放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のブロックとして成形される。このような成形方法は、仮台111aの部分を除き、ペースト状組成物113,114とが直接接することになり、型枠などのセパレータがある場合に比して界面における物理的な高度を高めることが出来る。なお、外型枠111は、取り外すのではなく、残存させて、地殻様組成体20c−1,20c−2の保護層や放射線に対するバリア層のように使用しても良い。また、ペースト状組成物113は、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル、アスファルト等であっても良い。また、ここで、バイブレータ等で締固めを行っても良い。
更に、図24(A)に示すように、外型枠111には、第一高さに、ワイヤ111cによって吊り下げて、図24(B)に示すように、非放射性物質であるペースト状組成物113を外型枠111の開口面である第二高さまで流し込むようにしても良い。この際、内部成形体18dは、外型枠111の側面と内部成形体18dの側面との間隔a1と間隔a2,a3とが等しくなるように設置される。また、外型枠111内において、外型枠111の底面と内部成形体18dの底面との間隔a2と外型枠111の開口面と内部成形体18dの上面との間隔a3とが等しくなるように設定される。勿論、これらの間隔a1,a2,a3は必ずしも等しくなければならないというものではなく、内部から発せられる放射線を十分に或いは所望の値まで減衰させるに足るものであればよい。これにより、内部成形体18dは、外型枠111の中央部に配置されることになる。そして、ワイヤ111cは、ペースト状組成物113が固化した後露出した部分が切断される。勿論、ワイヤ111cは必ずしも切断する必要はなく、ある程度内部成形体18dをペースト状組成物113で埋設した時点で、ワイヤ111cを取り外したり、内部成形体18dと共に埋設することも出来る。
かくして、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18の放射性物質の濃度(密度)が所定値以下又は以上の値とされ、全体としても放射性物質の濃度(密度)が所定値以下のブロックとして成形される。このような成形方法は、外型枠111に仮台111aを設置する必要もなく、製造工程の簡素化を実現することが出来る。また、ペースト状組成物113,114とが直接接することになり、型枠などのセパレータがある場合に比して界面における物理的な高度を高めることが出来る。なお、外型枠111は、取り外すのではなく、残存させて、地殻様組成体20c−1,20c−2の保護層や放射線に対するバリア層のように使用しても良い。また、ペースト状組成物113は、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル、アスファルト等であっても良い。また、ここで、バイブレータ等で締固めを行っても良い。
更に、図25(A)及び(B)に示すように、外型枠111に非放射性物質であるペースト状組成物113を外型枠111の開口面まで流し込み、その後、ペースト状組成物113が固化する前であって適度な固さのときに、内部成形体18dを沈み込ませ、外型枠111内の略中央部に位置させるようにしても良い。
なお、中心部18aから外側に向かうに連れ中間層18bの放射性物質19の密度が段階的に低くなる図8に示すような地殻様組成体20b−1は、内部成形体18dの表面に放射性物質19の濃度(密度)の低い中間層18bを設け、これを繰り返し、最後に、放射性物質19を含まない外層17を設けることによって成形することが出来る。
(3)同時に開始する例
また、図6及び図7に示す地殻様組成体20c−1,20c−2は、内部18と外層17とを同時に製造することも出来る。この場合、図26(A)及び(B)に示すように、非放射性物質のペースト状組成物113を排出する排出口113aと放射性物質19を含んだペースト状組成物114を排出する排出口114aとを備えたホッパ118を用いる。勿論、ここでの排出口113aは、非放射性物質のペースト状組成物113を排出していることとしているが、必ずしも非放射性物質のペースト状組成物である必要はない。放射性物質19を含んだペースト状組成物114を排出する排出口114aは、中央部に設けられ、内部18を形成し、非放射性物質のペースト状組成物113を排出する排出口113aは、排出口114aの周囲に複数設けられ、外層17を形成する。そして、排出口114aの下には、内部18を成形する内型枠112が位置し、排出口113aの下には、外型枠111と内型枠112の間の領域が位置している。
また、排出口114aから排出される放射性物質19を含んだペースト状組成物114は、図6に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値以下の地殻様組成体20c−1を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値以下に調整されたものが用いられる。また、図7に示す内部18の放射性物質19の密度が所定値より大きい地殻様組成体20c−2を成形する場合、放射性物質19の密度が所定値より大きく、好ましくは、外層17と内部18の全質量に対しての放射能レベル、すなわち放射能濃度が基準値に適合するように調整されたものが用いられる。
図26(C)に示すように、先ず、外型枠111には、排出口113aより非放射性物質のペースト状組成物113が流し込まれる。次いで、図26(D)に示すように、内型枠112には、排出口114aから放射性物質19を含んだペースト状組成物114が流し込まれ、図26(E)に示すように、内型枠112の開口面の高さまでペースト状組成物114が流し込まれる。すると、排出口114aからの排出が停止され、排出口113aより非放射性物質のペースト状組成物113が外型枠111の開口面の高さまで流し込まれる。排出口113aから排出される非放射性物質のペースト状組成物113と排出口114aから排出される放射性物質19を含むペースト状組成物114の流速や流量は、内型枠112がペースト状組成物114によって満たされる前に、ペースト状組成物113が内型枠112に入り込まないように調整されることが好ましい。また、ペースト状組成物114が内型枠112から溢れて外型枠111側に流れ込まないように調整することが望ましい。このような成形方法によれば、非放射性物質のペースト状組成物113と放射性物質19を含むペースト状組成物114の流し込みを並行して行うことが出来ることから、生産効率の向上を図ることが出来る。
また、排出口113aから排出される非放射性物質のペースト状組成物113と排出口114aから排出される放射性物質19を含むペースト状組成物114を同時に流し込むにあたっては、内型枠112を用いなくても良い。すなわち、図27(A)に示すように、外型枠111には、内型枠112は設置されていない。この状態で、排出口113aからは、非放射性物質のペースト状組成物113が第一高さまで流し込まれる。次いで、図27(B)に示すように、排出口114aからも、放射性物質19を含むペースト状組成物114が流し込まれる。すると、図27(C)に示すように、外型枠111の中央部には、排出口114aから放射性物質19を含むペースト状組成物114が流し込まれ、その外側には、非放射性物質のペースト状組成物113が流し込まれる。排出口113aからの非放射性物質のペースト状組成物113の水面の上がり方と排出口114aからの放射性物質19を含むペースト状組成物114の水面の上がり方を揃えることによって、図27(E)に示すように、外ペースト状組成物113の内側にペースト状組成物114を分布させることが出来る。そして、所定の高さとなったところで、排出口114aからのペースト状組成物114の排出を停止し、排出口113aからペースト状組成物113だけを排出することで、ペースト状組成物114上にペースト状組成物113を分布させることが出来る。そして、ペースト状組成物113は、外型枠111の開口面まで流し込まれる。
このような成形方法によれば、非放射性物質のペースト状組成物113と放射性物質19を含むペースト状組成物114の流し込みを並行して行うことが出来ることから、生産効率の向上を図ることが出来る。また、内型枠112を用いないことから、生産工程の簡素化を図ることが出来る。ここで、ペースト状組成物113と、ペースト状組成物114の流動性や比重が余りに違い過ぎると、分布の乱れが生じるので、これらの性状が違い過ぎないようにすることが好ましい。
なお、中心部18aから外側に向かうに連れ中間層18bの放射性物質19の密度が段階的に低くなる図8に示すような地殻様組成体20b−1は、放射性物質19の濃度(密度)の異なる放射性物質19を含むペースト状組成物114を、外型枠111側に行くに連れて濃度(密度)が低くなるようにして、外型枠111に流し込むことで成形することが出来る。
[5−4−3.遠心力を利用した地殻様組成体の製造方法の説明]
図9に示す地殻様組成体20b−2の内部18は、中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなるように構成されている。図10に示す地殻様組成体20eも、全体で、中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなるように構成されている。ここでは、二つの地殻様組成体を合わせて単に、「地殻様組成体20e等」ともいう。このように、中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなる地殻様組成体20e等は、遠心力を利用して製造することが出来る。
図28(A)には、遠心分離装置121を示す。遠心分離装置121では、地殻様組成体20e等を成形する型枠122を備えており、この型枠122が軸125を中心に高速回転するようになっている。そして、この遠心分離装置121には、ホッパの排出口123と排出口124が設けられている。排出口123からは、高比重物質に相当する物質19bが型枠122に流し込まれ、排出口124からは、低比重物質に相当する物質19aが型枠122に流し込まれる。勿論、遠心分離装置は、必ずしも回転する型枠を備えている必要はなく、型枠に収容された固化前の流動可能な状態の材料物質を高速回転させることが出来るようになっていればよい。
高比重物質19bとしては、放射能濃度が測定下限値以下乃至比較的低く設定された比重の高いものであり、上述したように放射能の遮蔽効果の高いバリウムや鉛ガラス片等の他、細骨材や粗骨材が挙げられる。また、低比重物質19aとしては、有限の放射能濃度を有する比重の低いもので、放射性物質を含んだ土、すなわち汚染土、特に層状構造の微粒土質やその他に多孔質材が挙げられ、また、上述したように、汚染水とこれらを混合した汚染物担持材等であってもよい(図17参照)。具体的には、層状構造の微粒土質としては、例えば、主たる粒径が0.075mm以下のもので、バーミキュライト、ベントナイト、アスベストの等があり、多孔質材としては、シラスポーラスガラス、不定形炭素材等が挙げられる。このような高比重物質19bと低比重物質19aとを添加材や骨材として、排出口123,124からペースト状組成物である三次組成物や四次組成物や五次組成物に混合し混練する。すると、放射性物質19を含んだ低比重物質19aと非放射性物質の高比重物質20とが均一に分散される。また、遠心分離装置は、必ずしも排出口123や124が設けられている必要はなく、排出も高比重物質と低比重物質とが分けられた状態で排出される必要もなく、また予め高比重物質と低比重物質とが混合されて型枠内に収容されていてもよい。
次いで、図28(B)に示すように、型枠122を高速に回転すると、遠心力によって、高比重物質19bが外側に多く分布し、低比重物質19aが内側に多く分布するようになる。これにより、中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなる地殻様組成体20e等を簡便に製造することが出来る。また、高比重物質19bは、放射能のバリア効果が高い。高比重物質19bを外側に多く分布させることで、放射能のバリア効果の高い地殻様組成体を成形することが出来る。また、図9に示すような、放射性物質19を含まない外層17も高比重物質が多く分布した層で成形することが出来る。また、外層17は、表皮層のように薄くすることが出来る。
[5−4−4.圧力を利用した地殻様組成体の製造方法の説明]
上記表2や図3に示すように、放射能汚染材には、魚貝類、野菜類、焼却灰、汚泥スラッジ、海洋泥砂、河川泥砂、湖泥砂、街路樹木、がれき(コンクリ、木材、ガラス、金属、プラスチック)、汚染水、土砂、路面材等が存在し、土砂、湖泥砂、海洋泥砂、河川泥砂、路面材等は、細骨材や粗骨材として用いることが出来る。そして、一次組成物に石膏等を加えた固化性結合材となる二次組成物に対して、細骨材や粗骨材等を加えることで上述した三次組成物や四次組成物や五次組成物を製造することが出来る。
そして、図9及び図10に示すように中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなる地殻様組成体20b−2,20eを製造するにあたっては、型枠内のペースト状組成物を加圧することによって製造することが出来る。具体的に、図29(A)に示すように、外型枠加圧装置131は、型枠132と型枠132内のペースト状組成物を加圧する加圧部材133とを備えている。型枠132には、例えば、一次組成物に石膏等を加えた固化性結合材となる二次組成物134として、放射性物質19を含まないものと、細骨材や粗骨材135としては、放射性物質19を含むものが混合されて収容される。そして、予め二次組成物134と細骨材や粗骨材135とが混練された後、型枠132内に収容されたペースト状組成物136は、加圧部材133によって、型枠132内で加圧される。すると、図29(B)に示すように、細骨材や粗骨材135より粒径が小さく流動性の高い微粒子を含む二次組成物134は、型枠132側に移動する。図9に示すように、外層17を形成しながら内部18の構成を中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなる地殻様組成体20eを成形することも出来る。
なお、型枠加圧装置131では、加圧圧力が低い場合、外層17は殆ど形成されないことになり、図5に示すような放射性物質19が均一に分散された地殻様組成体20aを成形することも出来る。また、加圧圧力を高くしたときには、型枠132の内面に沿って、粒径の小さい流動性高い二次組成物134が分布し、図5に示す地殻様組成体20aの表皮に薄い外層17を形成することも出来る。外層17は、流動性の高い二次組成物134が多く分布することで、成形品の物理的な強度を高めることが出来る。更に、圧力を高めたときには、図9に示すように、外層17を形成しながら内部18の構成を中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなる地殻様組成体20b−2を成形することも出来る。更に、図10に示すように、外層17が殆ど形成されない中心部から外側に向かうに連れ、放射性物質19の密度が漸次低くなる地殻様組成体20eを成形することも出来る。すなわち、どの様な地殻様組成体20を成形するかは、二次組成物134や水の配合や圧力の大きさ、加圧時間等を適宜調整することで決まることになる。
ところで、加圧の際に、型枠132と、ペースト状組成物136と、加圧部材137との間に空気等が存在すると、成形される地殻様組成体20が脆弱なものとなってしまう。そこで、図30(A)に示す加圧部材137は、先端部の加圧面が中心部が最も高くなるように、山形状に形成されている。この場合には、加圧部材137は、ペースト状組成物136を押しのけるようにして、型枠132内に進入していくので、加圧時に、型枠132内に空気が入ってしまうことを防止することが出来る。
[5−5.粉砕理工程の説明]
図5(A)及び(B)に示す放射性物質19が全体に均一に分散された地殻様組成体20aや図6に示す内部18に放射性物質19を含む地殻様組成体20c−1は、放射性物質19の密度が所定値以下であり、もはや放射性廃棄物の定義に該当するものではなく、一般廃棄物若しくは単に資材、資源として扱い得る物と成る。そこで、図11に示す粉砕処理工程1006では、図31(A)及び(B)に示すように、クラッシャー等で地殻様組成体20aや地殻様組成体20c−1を粉砕し、プラントで粗砕、中砕、細砕により人工的に砕骨材150とすることが出来る。このような砕骨材150は、図31(C)に示すように、レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル熱処理質、アスファルトの少なくとも一つの被覆層151で被覆するようにしても良い。レジン、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリル熱処理質、アスファルトは、各砕骨材に含まれる放射性物質が発する放射線に対するバリア層として機能させることが出来るだけでなく、化学的な安定性を高め、酸性雨や空気中の二酸化炭素などによる中性性化や溶出を防止することが出来る。
このような砕骨材150は、例えば、図32に示すように、路盤材201として使用することが出来る。国道といった一般的道路202は、路床203上に、下層路盤204、上層路盤205、基層206、表層207が順次設けられる。例えば、砕骨材150である路盤材201は、下層路盤204や上層路盤205に用いることが出来る。すなわち、路盤材201を用いる部分は、道路表面ではなく、基層206及び表層207の下層の路盤204,205である。従って、基層206及び表層207は、放射線に対するバリア層ともなる。
また、砕骨材150は、図33に示すように、盛土材211として使用することが出来る。原地盤が勾配を有するときには、一般に、舗装212の上側を切土し、下側を盛土する。砕骨材である盛土材211は、盛土部分に用いることが出来る。なお、舗装212の部分では、路床の上に、路盤材201を用いることが出来る。また、砕骨材150は、図示しないが、軟弱地盤の置換材として用いることも出来る。更に、砕骨材150は、図34に示すように、バラスト軌道217に用いられるバラスト216として用いることが出来る。更に、図40に示すように、防波堤・岸壁・護岸等使用されるケーソン310の内部に砕骨材を充填することが出来る。
[5−6.利用工程の説明]
更に、図5−10に示したブロック状に成形された地殻様組成体20は、更に、次のようにして、地殻に還元することも出来る。具体的には、海洋を経て地殻還元する方法と直接的に地中に還元する方法とがある。
[5−6−1.経海地殻還元方法の説明]
図5−10に示したブロック状に成形された地殻様組成体20は、図35に示すように、海洋302に着水させ、海底303に配置して、海底において地殻の一部として地殻還元することが出来る。海底に配置されたブロック状に成形された地殻様組成体20は、船舶301で海洋302に運搬し、投入することによって、海底303において、魚礁303a等として機能し、また、大陸プレートや海洋プレートが沈み込んだ海溝等の深海に沈降させた際には、プレート304の移動にあわせて海底の地殻内に潜り込ませ消滅させることが出来る。
深海に沈降させる際には、海流等の影響を少なくし所定位置に地殻様組成体20を着底させるため、例えば、図36(A)−(C)に示すように、全体として錘のような涙滴形、錘形、弾丸形、流線形等の外形にし、一端側に他端側より重量のある錘部307を設けると良い。これにより、地殻様組成体20は、安定した姿勢で海底303の所定位置に着底させることが出来る。
地殻様組成体20を海洋の所定の場所にまで運搬する船舶301は、例えば、図37に示すように、船体後部のハッチ301aよりコンベア301bを用いて順次海中から海底303に向けて沈降させることが出来る。勿論、船舶301は、図35に示すように、クレーン等を用いて海上より海面に着水させるようにしても良い。また、図38は、双胴船の例を示す。この双胴船では、二つの船胴301cの間に大きな甲板301dを設けることが出来、この甲板301dに多くの地殻様組成体20を積載することが出来る。例えば、甲板301dは、開閉式となっており、開放したとき、海面に一度に積載している地殻様組成体20aを投入することが出来る。また、図39は、台船の例を示す。台船の場合には、甲板301や内部の収納庫に、ブロック状の地殻様組成体20を積載し、所定の場所まで曳航し、所定の場所において、クレーンやコンベア等を用いて海洋に沈降させることが出来る。また、推進機関を備えない台船の場合には、地殻様組成体20を積載している台船を、内部に海水を注入して、そのまま海洋に水没及び/又は沈降させても良い。なお、台船には、推進機関を備えていても良い。
なお、台船のような船舶の場合には、地殻様組成体20を船体型、筏型、浮水し得る浮き型といった形状に成形し、これを曳航し、所定の場所で、そのまま海洋に水没及び/又は沈降させても良い。更に、地殻様組成体20は、潜行状態で曳航され、その後、所望の位置で曳航船から切り離されて沈降させても良い。この場合、水抵抗を小さくするため、潜水艇、潜水艦等といった流線型に成形することが好ましい。また、地殻様組成体20は、海洋の埋立用にとしても良い。
更に、地殻様組成体20は、図40に示すように、沿岸海洋構造物に用いることが出来る。例えば、図40は、港湾・漁港の施設の一つとして、防波堤・岸壁・護岸等使用されるケーソン310である。ケーソン310は、例えば海底に沈設される。この後、ケーソン310内は、地殻様組成体20を配設することが出来る。また、ケーソン310内は、地殻様組成体20を粉砕した砕骨材を充填しても良いし、この砕骨材を用いたペースト状組成物をブロック状の地殻様組成体20の隙間に間詰めしても良いし、充填しても良い。或いは、ペースト状の三次組成物や四次組成物或いは五次組成物を流動性を有した状態のまま収容してケーソン内において固化させてもよい。また、沿岸海洋構造物として、浮体式係船岸、沖合に浮かせて消波、防波を行う浮消波堤、海岸浸食防止と海岸域の多目的利用を目的とする斜板堤等に用いることも出来る。
ところで、図41に示すように、ペースト状組成物である四次又は五次組成物が固化した地殻様組成体20は、その表面にアスファルト質、タール質、ガラス質のうちから選択される少なくとも一つ以上の物質によって不透水層21を設けるようにしても良い。不透水層21を設けたときには、海水等に晒されて地殻様組成体20が脆弱になることを防止することが出来る。
更に、高レベル放射性物質や高毒性放射性物質の固化処理方法としては、ホランダイト、ペロブスカイト、ジルコノライト等のチタン酸塩系の鉱質を主成分として人工的に鉱石を合成し、その際に、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、プルトニウム等の超ウラン元素核種等を共在固定化し、共在固定化した定着材22を、一次乃至五次組成物や不透水層21と複合固化させて高度な閉じ込め効果を有するようにしても良い。例えば定着材22は、水との混練時より前に混入することが出来る。上記の人工的な鉱石の合成は、例えば前駆体のうちルチル(TiO2)とジルコン(ZnO2)は、チタンアルコキシドとジルコニウムアルコキシドから作製する。残り成分は、全て硝酸塩溶液の混合液としてアルカリ溶液で処理して共沈させて作製する。これらの前駆体を、高レベル放射性や高毒性放射性廃液と混合してスラリーとし、これを乾燥させて800℃の還元雰囲気下で焼成し、これをチタン粉末と共に器内に封入して、加熱加圧して加圧焼成させることも出来る。
なお、図5(A)及び(B)に示す放射性物質19が全体に均一に分散された地殻様組成体20aや図6に示す内部18に放射性物質19を含む地殻様組成体20c−1は、放射性物質19の濃度(密度)が所定値以下であり、もはや放射性廃棄物の定義に該当するものではなく、一般廃棄物若しくは単に資材、資源として扱い得る物となり、経海地殻還元を行う場合に用い易い。勿論、内部18に放射性物質19の濃度(密度)が所定値より高い部分を有する図7に示すような地殻様組成体20は、ブロック状を成すときに経海地殻還元に用いても良い。
[5−6−2.経坑地殻還元方法の説明]
図5−10に示したブロック状に成形された地殻様組成体20は、図42に示すように、閉鎖坑道401の埋め戻しに利用し地殻還元していくことが出来る。例えば、坑道401は、坑内の崩壊を防ぐ支保坑402の上に、インバートコンクリート403が打設されている。ブロック状の地殻様組成体20は、例えば、インバートコンクリート403の上に配設される。この際、放射性物質19の密度が所定値以下の上述した四次組成物又は五次組成物を、地殻様組成体20の間詰めに注入しても良い。また、天端側には、埋め戻し材404を充填することが出来る。この埋め戻し材404にあっても、例えば、固化性結合材となる二次組成物を貧配合とした放射性物質19の密度が所定値以下の流動性処理土を用いても良い。かくして、閉鎖坑道401は、放射性物質19の密度が所定値以下のペースト状組成物や地殻様組成体20を効率的に使用して埋め戻される。勿論、ペースト状の地殻様組成体20は、支保坑402やインバートコンクリート403に用いて、坑道401の床部及び/又は壁部及び/又は天井部に用いることも出来る。
なお、放射性物質19の密度が所定値以下のペースト状組成物は、坑道401の床面や壁面に吹き付けるようにしても良い。吹き付け用のペースト状組成物は、トンネル掘削時のインバートコンクリートとして用いるようにして良い。また、現在も利用している坑道において、陥没防止のため、図42に示すような埋め戻しを行っても良い。
[5−6−3.その他の利用方法の説明]
上述したような地殻様組成体20は、図43(A)に示すように、従来から放射性物質の処分方法としてある人工構築物を設けない浅地中501のトレンチ501aに、ブロック状の地殻様組成体20を配設しても良いし、放射性物質19の密度が所定値以下のペースト状組成物を打設するようにしても良い。また、一部に放射性物質19の密度が所定値より大きい部分が存在する図7に示す地殻様組成体20c−2は、浅地中501でも良いが、図43(B)に示すように、一般的な地下利用に対して十分余裕を持った深度(地下50〜100m)502のピット502aに配設するようにしても良い。また、ペースト状の地殻様組成体20は、トレンチ501aやピット502aを造成するために通常のコンクリートに代えて用いることも出来る。