JP2013247006A - 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料 Download PDF

Info

Publication number
JP2013247006A
JP2013247006A JP2012120542A JP2012120542A JP2013247006A JP 2013247006 A JP2013247006 A JP 2013247006A JP 2012120542 A JP2012120542 A JP 2012120542A JP 2012120542 A JP2012120542 A JP 2012120542A JP 2013247006 A JP2013247006 A JP 2013247006A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cathode
fuel cell
general formula
oxide fuel
represented
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012120542A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5655032B2 (ja
Inventor
Hiroyuki Iwai
広幸 岩井
Yosuke Takahashi
洋祐 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Noritake Co Ltd
Original Assignee
Noritake Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Noritake Co Ltd filed Critical Noritake Co Ltd
Priority to JP2012120542A priority Critical patent/JP5655032B2/ja
Publication of JP2013247006A publication Critical patent/JP2013247006A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5655032B2 publication Critical patent/JP5655032B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)

Abstract

【課題】熱膨張や還元膨張が低減され、かつ中低温領域における電極性能を向上し得るSOFCのカソード形成用材料を提供すること。
【解決手段】
本発明によって、一般式:(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δで示されるペロブスカイト型の酸化物粒子と、一般式:(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δで示されるペロブスカイト型の酸化物粒子と、がメカノケミカル処理により複合化された複合粒子を主体とする、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料が提供される。ただし、上記一般式において、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。
【選択図】図11

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池のカソード(空気極)形成に用いられる材料、および該材料を用いて構築された固体酸化物形燃料電池に関する。
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC;以下、単に「SOFC」ということもある。)は、種々のタイプの燃料電池の中でも発電効率が高く多様な燃料の使用が可能なため、環境負荷の少ない次世代の発電装置として開発が進められている。
かかるSOFC(単セル)は、典型的には酸素イオン伝導体(例えば酸素イオン伝導性のセラミック体)から成る緻密な固体電解質の一方の面に多孔質構造のカソード(空気極)が形成され、他方の面に多孔質構造のアノード(燃料極)が形成された構成である。使用時にはカソードが形成された側の固体電解質の表面には酸素(O)含有ガス(典型的には空気)が、アノードが形成された側の固体電解質の表面には燃料ガス(典型的には水素(H))がそれぞれ供給される。該ガスが供給されたSOFCに電流を印加すると、先ずカソードにおいて酸素が酸化され、酸素イオンとなる。そして、該酸素イオンが(固体電解質を介して)アノードに到達し、燃料ガスと反応して電子を放出することによって発電が行われる。
上記SOFCの発電は、高い発電性能を実現するために例えば800℃〜1200℃程度の高温環境下において行われることが一般的である。しかし、かかる温度環境下では構成材料が劣化し易いため、SOFCの耐久性には課題があった。また、起動や停止に長時間を要すること、高温環境下で使用し得る材料が限定されるために製造コストが高くなりがちであること、等の実用化に向けた課題もあった。
そこで近年、耐久性向上、低コスト化、使用用途拡大等の観点から、SOFCの作動温度をより低く、例えば500℃〜800℃(以下、「中低温」という。)とするための研究が進められている。しかし、作動温度を低くするとそれに伴って固体電解質の抵抗が高くなるため、発電性能が低下してしまう。
かかる問題に対処するための従来技術として、例えば特許文献1には、アノードの構造(気孔率)を制御することで該アノードにおける反応効率を向上させ、SOFCの発電性能を高め得ることが開示されている。また、特許文献2には、アノードを構成する材料(粒子)の平均粒径を制御することで該アノードにおける反応効率を向上させ、SOFCの発電性能を高め得ることが開示されている。
特開2004−200125号公報 特開2007−103077号公報
ところで、中低温においても高い反応性(触媒能力)を発揮し得るカソード材料としては、例えば一般式:(LaSr)(CoFe)O(以下、「LSCF」という。)で示される、いわゆる電子−酸素イオン混合伝導体が知られている。しかし、該LSCFは他のカソード材料に比べて熱膨張が大きいことから、熱衝撃(例えば、停止時の温度(典型的には常温)と使用時の温度域(例えば500℃〜800℃)との間で、昇温と降温とを繰り返すこと)に対する耐久性の向上が求められている。またLSCFは他のカソード材料に比べて還元膨張も大きいため、例えば燃料ガスがリークしてカソード側に混入した際に、クラック等の不具合が発生し得る。かかる場合には発電性能が低下したり或いは発電自体が行われなくなったりする虞がある。そこで、LSCFをカソード用材料として使用する際には、セリア(CeO)にガドリニア(Gd)をドープした、一般式:CeGdO(Gadolinium doped Ceria;以下、「GDC」という。)で表される材料を混合し用いることも検討されている。しかし、GDCは高価であり実用化や低コスト化の観点から使用量を極力低減することが好ましい。
本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性に優れ、かつ中低温領域における電極性能を向上し得るSOFCのカソード形成用材料を提供することである。また、本発明は、他の側面として、上記材料を用いて形成したカソードを備えるSOFCを提供する。
上記目的を実現するべく、本発明によって、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料が提供される。かかる材料は、一般式:(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子(LSCF)と、一般式:(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子(以下、「LSTF」という。)とが、メカノケミカル処理により複合化された複合粒子を主体とする。
上記構成のカソード用材料は、LSCFを単独で用いた場合に比べて熱膨張や還元膨張が抑えられているため、曝される環境が変化した場合(例えば、SOFCの起動・停止に伴う温度変化や、ガス雰囲気が還元雰囲気に変化した場合等)にも膨張や収縮が小さく、耐久性に優れる。また、LSCFとLSTFとは化学的安定性が高いため、上記複合粒子は長期間変質することなく安定して使用することができる。さらに、該材料はメカノケミカル処理により電子伝導性や酸素イオン伝導性が向上しているため、中低温領域(凡そ500℃〜800℃)においてもカソードとして優れた電極性能を発揮し得る。したがって、上記構成のカソード用材料を用いることでSOFCの発電性能や信頼性を向上させることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記複合粒子は、上記一般式(2)で示される酸化物からなるコア部と、該コア部表面の少なくとも一部に形成されている上記一般式(1)で示される酸化物からなる被覆部と、から構成される。
上記態様の粒子は、還元膨張の少ないLSTFをコア部とするため、温度やガス雰囲気等の環境変化に伴う膨張・収縮がより一層抑制されている。また、LSCFを表面近く(被覆部)に配置することで酸素含有ガスとの接触面積を広く確保することができ、より高い触媒性能を発揮し得る。このため、本願発明の効果をより発揮することができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記複合粒子は、一般式(1)で示される酸化物(LSCF)と上記一般式(2)で示される酸化物(LSTF)との質量比率が、LSCF:LSTF=80:20〜30:70である。
上記の質量比率を満たす材料は、より一層優れた電極性能を発揮し得る。したがって、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記複合粒子は、熱機械分析により測定される熱膨張係数(線膨張)が13×10−6/K以上15×10−6/K以下であり、還元膨張率(線膨張)が1%以下である。
カソード形成用材料の熱膨張係数を上記範囲とすることで、他のSOFC構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)との熱膨張係数(熱膨張率)の差異を小さく抑えることができる。また、該材料の還元膨張率を1%以下とすることで、酸素分圧の低い還元雰囲気下(例えば水素ガスが1質量%以上の雰囲気下)においても還元膨張を低く抑えることができる。したがって、上記カソード形成用材料は温度や雰囲気等の環境変化に伴う膨張や収縮が少なく、長期的な信頼性や耐久性に優れたものであり得る。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記複合粒子が少なくとも1種の溶媒に分散され、ペースト状(スラリー状、インク状を含む。以下同様。)に調製されていることが挙げられる。
ここで開示される材料は、SOFCのカソード(電極)を形成するために用いられる。かかる際には、該材料を1種以上の溶媒に分散(もしくは溶解)させペースト状に調製したものを用いることで、均質なカソードを安定して効率よく作製することができる。
また本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池が提供される。そして、上記カソードは、ここで開示される複合粒子を主体として形成されている。
上記カソードを備えたSOFCは、高い発電性能(例えば、動作温度700℃における最大電力密度が0.4W/cm以上)を発揮し得る。また、ここで開示されるカソードは環境変化に伴う膨張や収縮(例えば、熱膨張や還元膨張)が抑制されているため、かかるカソードを備えたSOFCは信頼性や耐久性に優れ、長期に渡り安定して使用することができる。すなわち、ここで開示されるSOFCは、発電性能と耐久性とを高いレベルで両立し得る。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様は、上記カソードと上記固体電解質と上記アノードとが層状に積層され形成されており、該積層構造における上記カソードの厚みが10μm以上100μm以下である。
ここで開示されるカソードは他のSOFC構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)と熱膨張係数が近いため、温度変化等に伴う不具合(例えば、カソードにおけるクラックの発生)が生じ難い。また、還元膨張率も小さく抑えられているため、還元雰囲気下においても不具合(例えば、カソードの反り返り)が生じ難い。このため、かかるSOFCでは該電極の厚みが比較的厚い場合でも、優れた発電性能を長期間にわたり安定的に発揮することができる。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様は、上記カソードは、上記固体電解質上に反応抑止層を設けることなく直接的に形成されている。
一般的に、カソード形成用材料としてLSCFを用いる場合には、該カソードと固体電解質(典型的には、ジルコニア系酸化物)との反応を抑止するため、これらの間に反応抑止層を形成する必要がある。しかし、ここで開示されるカソードはLSTFを含むため、かかる反応性が低減されたものであり得る。このため、固体電解質上に直接形成することができ、効率的である。また、SOFCの構造が簡素化されることで、好ましくは該SOFCの内部抵抗をも低減し得る。このため、ここで開示されるSOFCは発電性能と生産性とを高いレベルで両立することができる。
さらに本発明により、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料の製造方法が提供される。ここで提供される製造方法は、一般式:(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子(LSCF)と、一般式:(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子(LSTF)と、を用意すること;上記LSCFと上記LSTFとをメカノケミカル処理によって複合化し、複合粒子を得ること;上記複合粒子を用いて、カソード形成用材料を調製すること;を包含する。
かかる製造方法によれば、高い電極性能と優れた耐久性とを有するカソード形成用材料を好適に製造することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記メカノケミカル処理は、窒素吸着法により測定される該処理の後の比表面積B(m/g)と該処理前の比表面積A(m/g)との関係が、10≦(A−B)/A≦40となるように行う。すなわち、メカノケミカル処理は、該処理によって上記酸化物の比表面積が10%以上40%以下の割合で減少するように行う。
上記範囲を満たすようにメカノケミカル処理を行うことで、より一層電子伝導性や酸素イオン伝導性に優れたカソード形成用材料を得ることができる。したがって、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記酸化物粒子の用意は、上記一般式(1)で示される酸化物と、上記一般式(2)で示される酸化物との質量比率が、(1):(2)=80:20〜30:70となるよう用意する。
上記質量比でLSCFとLSTFとを混合することで、高い電極性能と耐久性とをより高いレベルで両立することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るSOFCを備えた発電システムを模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るSOFCの製造工程を模式的に示す図であり、(a)は支持基材(支持体)としてのアノードを、(b)はアノード−固体電解質積層体を、(c)はアノード支持型のSOFCを、それぞれ示している。 図3は、比較例1に係るカソード表面のSEM写真である。 図4は、図3の視野内におけるコバルト(Co)の分布を示した、SEM−EDXマッピングの結果である。 図5は、図3の視野内におけるチタン(Ti)の分布を示した、SEM−EDXマッピングの結果である。 図6は、図3の破線で表した部分を拡大したSEM写真である。 図7は、図6に示す地点(S1〜S6)における定性分析の結果を表すチャートである。 図8は、実施例2に係るカソード表面のSEM写真である。 図9は、図8の視野内におけるコバルト(Co)の分布を示した、SEM−EDXマッピングの結果である。 図10は、図8の視野内におけるチタン(Ti)の分布を示した、SEM−EDXマッピングの結果である。 図11は、図8の破線で表した部分を拡大したSEM写真である。 図12は、図11に示す地点(S7〜S11)における定性分析の結果を表すチャートである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外(例えば、発電システムの構成や製造方法等)の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において「メカノケミカル処理」とは、被処理物(ここでは、LSCFとLSTF)に圧縮力、剪断力、摩擦力等の機械的エネルギーを加えることによって、被処理物同士を物理的(機械的)に結合(複合化)させ、被処理物の比表面積を10%以上(好ましくは15%以上、例えば15%以上30%以下)減少させる処理をいう。また、本明細書において「複合粒子」とは、かかるメカノケミカル処理により複合化された粒子状の物質をいう。
本明細書において「比表面積」とは、窒素ガスによる定容量式吸着法に基づく比表面積測定によって測定された値を、BET法(例えばBET1点法)で解析した表面積(BET比表面積)をいう。本明細書において「平均粒径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう。)をいう。本明細書において「平均細孔径」とは、一般的な水銀圧入法測定に基づいて得られる値をいう。また、本明細書において「気孔率」とは、上記水銀圧入法の測定によって得られる気孔容積(Vb(cm))を、見かけの体積(Va(cm))で除して、100を掛けることにより、算出した値(Vb/Va×100(%))を意味する。
ここで開示される固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料は、一般式:(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δで示されるペロブスカイト型の酸化物粒子(LSCF)と、一般式:(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δで示されるペロブスカイト型の酸化物粒子(LSTF)と、がメカノケミカル処理によって複合化された複合粒子(以下、LSCFとLSTFとが複合化された粒子を、単に「複合粒子」ということもある。)を主体とすることにより特徴づけられる。
なお、複合粒子となっているか否かは、例えば一般的な走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)−エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)の手法を用いて確認することができる。より具体的には、後述する実施例に示す通り、SEM観察により得られる観察画像とEDX分析により得られる各元素の分布状態を基に判断することができる。
上記一般式における「x」は、ペロブスカイト型酸化物において「La元素」が「Sr元素」によって置換された割合を示す値である。このxは、ペロブスカイト型構造を崩すことなく、該構造を維持し得る限りにおいて0.1≦x≦0.5(好ましくは0.1≦x≦0.4)の範囲内であれば、いずれの実数をとってもよい。
また、上記一般式における「y」は、ペロブスカイト型酸化物における「Fe元素」と「Co元素(LSCFの場合)もしくはTi元素(LSTFの場合)」との組成比を定める値である。このyは、0.1≦y≦0.5の範囲内であればいずれの実数をとってもよい。
上記一般式における「δ」は、電荷中性条件を満たすように定まる値である。すなわち、ペロブスカイト型酸化物における酸素原子数は3以下(典型的には3未満)であり得る。かかるδの値は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子(例えば式中の「Sr元素」や「(LSCFの)Co元素もしくは(LSTFの)Ti元素」の一部)の種類、置換割合及びその他の条件に応じて、上記一般式における電荷中性条件を満たすように定められる。このδは、典型的には1を超えない正の数(0≦δ<1)である。
なお、上述のとおりδ値(すなわち、酸素原子数)はペロブスカイト型酸化物を構成する他の元素等の条件により変化し得るものであるため、正確に表示することは困難である。したがって、便宜上δを省略して記載する場合もあり得る。即ち、上記一般式中の(3−δ)は、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
LSCFは、いわゆる電子−酸素イオン混合伝導体であり、他のペロブスカイト型酸化物に比べて、高い電極性能(発電性能)を有している。このため比較的低い温度領域(例えば、500℃〜800℃)においても優れた性能を発揮することができる。しかし該LSCFは熱膨張や還元膨張が大きいため、SOFCの電極材料(カソード形成用材料)として単独で用いた場合には、曝される環境の変化によって不具合(例えば、電極の反りやクラックの発生)を生じる虞がある。一方、LSTFは発電性能がLSCFに比べてやや劣るものの、電子−酸素イオン混合伝導体であり、且つ熱膨張や還元膨張が低いという特徴を有する。ここで開示されるカソード用材料は、両者を混合して用いることで、比較的低い温度領域(例えば500℃〜800℃)においても優れた電極性能を発揮し得、且つ温度やガス雰囲気等の環境変化に伴う膨張・収縮が抑制され高い耐久性を有している。さらにLSCFとLSTFは反応性が低いため、上記複合粒子は長期間変質することなく安定して使用することができる。
さらに、ここで開示されるカソード形成用材料は、LSCFとLSTFとがメカノケミカル処理された複合粒子を主体とする。該複合粒子は、メカノケミカル処理によってLSCFとLSTFとが物理的に結合(複合化)されているため、より一層電子伝導性や酸素イオン伝導性に優れる。このため、該材料は中低温領域においても優れた電極性能を発揮し得る。
好ましい一態様では、上記複合粒子は、LSTFからなるコア部と該コア部の表面の少なくとも一部に形成されたLSCFからなる被覆部とから構成される。換言すれば、上記複合粒子は、コアとなるLSTF粒子の表面上に、(典型的には該LSTFより粒径の小さな)LSCF粒子が分散・固定化(複合化)された形態の粒子であることが好ましい。熱膨張や還元膨張がより小さいLSTFをコア部とすることで、温度やガス雰囲気等の環境変化に伴う膨張・収縮がより一層抑制され得る。また、LSCFを複合粒子の表面近傍領域に配置することで、電極性能の高いLSCFと酸素含有ガスとの接触面積を広く確保することができ、高い触媒性能を発揮し得る。したがって、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。ここで、上記「被覆部」はコア部を形成するLSTF粒子表面の少なくとも一部がLSCFに覆われていればよく、必ずしもコア部の全表面が被覆されていることは要しない。例えば、コア部の表面の10%以上(典型的には30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上)が被覆されていることが好ましく、実質的にコア部の全表面(典型的には90%以上、例えば95%以上)が被覆されたいわゆるコアシェル粒子の形態であることがより好ましい。なお、コアシェル粒子となっているか否かは、上記SEM−EDXの手法を用いて確認することができる。
複合粒子全体に占める上記形態の粒子の割合は、例えば10%以上(典型的には30%以上、例えば50%以上、好ましくは70%以上)であることが好ましく、実質的に100%であることがより好ましい。
上記態様の複合粒子を構成するLSCFとLSTFとの平均粒径は、典型的にはLSCF<LSTFである。コア部を構成するLSTFの平均粒径は、例えば0.1μm〜10μm(典型的には0.5μm〜5μm、好ましくは1μm〜3μm)とすることができる。また、被覆部を構成するLSCFの平均粒径は、例えば1μm未満(典型的には、0.001μm〜1μm、好ましくは0.01μm〜0.5μm、より好ましくは0.1±0.05μm)とすることできる。上記範囲を満たす場合、本発明の効果をさらに高いレベルで発揮することができる。
複合粒子におけるLSCFとLSTFとの質量比率は特に限定されないが、例えばLSCF:LSTF=80:20〜30:70であることが好ましい。上記の質量比率を満たす材料は、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここで開示されるカソード形成用材料としては、他のSOFC構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)と近接した熱膨張係数(線膨張)を有するものが好ましい。より具体的には、SOFC構成材料の熱膨張係数は9×10−6/K〜18×10−6/Kであり得、例えば固体電解質材料の熱膨張係数は概ね10×10−6/K〜13×10−6/Kであり得る。かかる場合、該カソード形成用材料の熱膨張係数は、典型的には10×10−6/K〜16×10−6/Kとすることができ、例えば13×10−6/K〜15×10−6/Kであり、後述する実施例では14×10−6/K〜15×10−6/K、具体的には14.5×10−6/K〜15×10−6/Kとすることができる。上記熱膨張係数を満たすカソードは、熱衝撃に強く、すなわち停止時の温度(典型的には常温)と使用時の温度域(例えば500℃〜800℃)との間で昇温と降温とを繰り返しても、温度変化に伴う不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。このため、かかるカソードを用いたSOFCでは、長期間にわたり安定した発電性能を発揮することができる。
なお、熱膨張係数は、例えば示差膨張方式を用いた熱機械分析装置(Thermo Mechanical Analysis:TMA)により、室温(25℃)〜500℃以上(例えば、500℃、600℃、700℃、800℃、1000℃)の温度範囲にて測定した値(線膨張)の算術平均値を採用することができる。具体的な測定条件は、後述する実施例に述べる。
また、ここで開示されるカソード形成用材料としては、還元膨張率(%)が抑えられていることが好ましい。還元膨張率とは、還元雰囲気下で加熱したときの寸法(長さ)変化により、還元耐久性(すなわち還元雰囲気における熱膨張率)の目安を定量的に示す指標である。かかる還元膨張率の値が大きい場合は、例えばアノード側に流れる燃料ガスがリークしてカソード側に混入した際、カソードに反りやクラック等の不具合が生じる虞がある。このため、還元膨張率(%)は、例えば1.0未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下とすることができる。上記還元膨張率を満たすカソードは耐久性が高く、長期間にわたって安定した発電性能を発揮することができる。
なお、本明細書において「還元雰囲気」とは酸素分圧が低い状態、例えば、水素、一酸化炭素、一酸化窒素等の還元性を有するガスが、0.1質量%以上(典型的には1%以上、例えば4%以上)含まれる雰囲気をいう。また、本明細書において「還元膨張率(%)」は、5質量%の還元性ガスを含む窒素雰囲気下における熱膨張率をEred(%)とし、空気雰囲気下における熱膨張率をEair(%)としたとき、下記の式(3)によって与えられる値を示す。
[{(1+Ered/100)−(1+Eair/100)}/(1+Eair/100)]×100 (3)
ここで開示されるカソード形成用材料には、必要に応じて上記複合粒子以外の成分を適宜添加することができる。任意で添加し得る他の成分としては、例えばバインダ、増粘剤、分散剤、造孔材等が挙げられるが、これらに限定されず、例えばカソード形成に用いられる従来公知のものから適宜選択して添加することができる。バインダとしては、例えばセルロースまたはその誘導体が挙げられる。より具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ブチラールおよびこれらの塩が挙げられる。
カソード形成用材料に占める任意の添加成分の割合は、特に限定されないが、例えば20質量%以下(典型的には0.1質量%〜20質量%、1質量%〜10質量%)とすることが好ましい。
ここで開示されるカソード形成用材料の形態は特に限定されず、例えば、粉末(粒子)状であっても、該粒子と任意の溶媒とを含むペースト状であっても、該ペーストを乾燥(もしくは焼成)した固体状であってもよい。なかでも、ここで開示される材料を1種以上の任意の溶媒に分散(もしくは溶解)させ、ペースト状に調製したものを好ましく用いることができる。ペースト状のものを用いることで、均質なカソードを安定して効率よく作製することができる。
溶媒としては、上記複合粒子を好適に分散(または溶解)し得るもののうち、一種または二種以上を特に限定することなく用いることができる。かかる溶媒は有機溶剤と無機系溶媒とに大別される。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、環状エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤または他の有機溶剤が挙げられる。とりわけ、ターピネオール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、オクタノール、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ(2−ブトキシエタノール)、ブチルジグリコールアセテート、イソボルニルアセテート等が好適に用いられる。また、無機系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
ペースト全体に占める溶媒の割合は、特に限定されないが、例えば5質量%〜35質量%(好ましくは、10質量%〜30質量%)とすることができる。
また、本明細書において、上述したカソード形成材料を好適に製造する方法が提供される。ここで提供される製造方法は、LSCFとLSTFとを用意すること(用意工程);上記LSCFと上記LSTFとをメカノケミカル処理によって複合化し、複合粒子を得ること(複合化工程);上記複合粒子を用いて、カソード形成用材料を調製すること(調製工程);を包含する。かかる製造方法によれば、高い電極性能と優れた耐久性とを有するカソード形成用材料を好適に製造することができる。
以下、順に説明する。
<用意工程>
ここで開示される製造方法では、先ずLSCFとLSTFとを用意する。これらは、購入したものを用いてもよく、また例えば原料物質から従来公知の手法を用いて作製することもできる。
ここで用意する該酸化物の性状は特に限定されないが、例えばLSCFの平均粒径は2μm未満(典型的には0.001μm〜2μm、例えば0.01μm〜1μm、好ましくは0.01μm〜0.5μm、より好ましくは0.01μm〜0.2μm)とすることができる。また、LSTFの平均粒径は0.1μm〜20μm(好ましくは0.5μm〜10μm、より好ましくは1μm〜3μm)とすることできる。後述する複合化工程の前に、あらかじめ酸化物の粒径を上記範囲内に調製しておくことで、メカノケミカル処理後の複合粒子の形態を好適に調節することができ、本願の効果をより高いレベルで発揮し得る。なお、かかる粒径の調製は、従来公知の粉砕処理や、篩いがけ、分級等によって行うことができる。
ここで好ましい一態様としては、LSCFとLSTFとの質量比率が、LSCF:LSTF=80:20〜30:70となるよう用意する。上記質量比でLSCFとLSTFとを用いることで、高い電極性能と耐久性とをより高いレベルで両立することができる。
<複合化工程>
ここで開示される製造方法では、次に、所定の配合比で量りとったLSCFとLSTFを(必要に応じてそれ以外の添加物とともに)適当な混合機に投入し、メカノケミカル処理を行う。これによりLSCFとLSTFとを複合化し、複合粒子を得ることができる。なお、メカノケミカル処理には、従来用いられる粉砕・混合装置のうち一種または二種以上を特に限定なく用いることができる。例えば、ジェットミル、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等の非媒体型の粉砕混合機(粉砕媒体が不要なもの)や、ボールミル、ビーズミル等の媒体型粉砕混合機(粉砕媒体を必要とするもの)を適宜用いることができ、非媒体型の粉砕混合機を用いることが好ましい。非媒体型の粉砕混合機を用いることで上記複合化処理を好適に行うことができ、且つ媒体との接触によるコンタミネーション(異物混入)を低減し得る。より好ましくは、乾式の非媒体型粉砕混合機を用いる。乾式混合することにより、必要以上に粒子が解砕されることを抑制し得る。また、原料物質たるLSCFとLSTFおよび/または目的物たる複合粒子の意図しない変質や変化等を防止することができる。かかる粉砕機の粉砕処理条件(例えば、粉砕強度や粉砕時間)を適宜調節することで、所望の形態(粒径、形状)の複合粒子を得ることができる。
より具体的には、例えばホソカワミクロン株式会社製の「NOB−MINI」を用いてメカノケミカル処理を行う場合、出力:0.1kW〜5kW(典型的には0.5kW〜3kW、例えば1kW〜3kW)で1分間〜30分間(典型的には3分間〜20分間、例えば5分間〜15分間)とすることで、該処理後の面積を10%以上(典型的には10%〜40%、好ましくは15%〜30%)低減することができ、所望の複合化粒子を好適に得ることができる。
かかるメカノケミカル処理では、LSCFとLSTFとが複合化されることにより、得られた複合粒子の比表面積は該処理前のものと比較して減少している。該処理によって減少する比表面積は10%以上であって、典型的には10%以上50%以下、例えば10%以上40%以下、好ましくは15%以上35%以下、より好ましくは15%以上30%以下である。すなわち、メカノケミカル処理後の比表面積B(m/g)と該処理前の比表面積A(m/g)との関係は、10≦(A−B)/Aであり、典型的には10≦(A−B)/A≦50、例えば10≦(A−B)/A≦40、例えば10<(A−B)/A<40、好ましくは15≦(A−B)/A≦35、より好ましくは15≦(A−B)/A≦30となるように行うことが好ましい。メカノケミカル処理を過剰にやりすぎると粒子が解砕されすぎて、反応性(触媒能力)の低下や粒子間の抵抗増大を招く虞がある。上記範囲を満たすようにメカノケミカル処理を行うことで、粒子間の接触抵抗が低減され、電子伝導性や酸素イオン伝導性により一層優れたカソード形成用材料を得ることができる。
<調製工程>
そして、上記複合粒子を用いて、カソード形成用材料を調製する。該材料の形態は、上述したような粉末状、ペースト状、固体状等であり得、例えば該材料と上述した任意の添加成分(例えばバインダや分散剤)とを1種以上の溶媒(例えばターピネオール)中で混合したペースト状の組成物であることが好ましい。ペーストの調製には、ボールミル、ミキサー、ディスパー、ニーダ等の従来公知の種々の攪拌・混合装置を適宜用いることができる。また、使用し得る溶媒の種類や混合比等は既に上述したものと同一であり得る。例えば、上記粉末状の複合粒子とその他の添加剤とを50rpm〜300rpmの攪拌速度で、0.5時間〜1時間混練することによって、粉末状の複合粒子が好適に分散したペースト状のカソード形成用材料を得ることができる。
また、本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)が提供される。そして、上記カソードはここで開示される複合粒子を主体として形成されている。上記カソードを備えたSOFCは、高い発電性能を発揮し得る。また、環境変化に伴うカソードの膨張・収縮(例えば、熱膨張や還元膨張)が抑えられているため、かかるSOFCは信頼性や耐久性に優れ、長期に渡り安定的に使用することができる。
ここで開示されるSOFCは種々の構造、例えば従来公知の平型(Planar)、多角形型、円筒型(Tubular)あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat Tubular)等とすることができ、形状やサイズは特に限定されない。例えば平型は、電力密度が高く、円筒型に比べて安価であるという特徴を有する。また、円筒型はガスの流量を一定に保ち易く、より安定的な発電が可能であるという特徴を有する。このため、用途等に応じて適宜好ましい形状およびサイズを選択することが好ましい。また、平型のSOFCとしては、電解質を厚くした電解質支持型(Electrolyte-Supported Cell:ESC)、アノードを厚くしたアノード支持型(Anode-Supported Cell:ASC)、カソードを厚くしたカソード支持型(Cathode-Supported Cell:CSC)等が挙げられる。その他、アノードの下に多孔質な金属シートを入れた、メタルサポートセル(Metal-Supported Cell:MSC)とすることもできる。
一例として、図1を参照しながら説明する。図1は、ここで開示されるSOFC50を備えた発電システムの断面構成を模式的に示した図である。ここに示す構成のSOFC50はアノード支持型のSOFCであり、支持体(基材)となるシート状のアノード(燃料極)10と、アノード10の少なくとも一部の表面上に形成された(膜状の)固体電解質20と、固体電解質20の表面上に形成されたシート状のカソード(空気極)30とが積層された構造を有している。そして、アノード10の端部12と、燃料ガス(典型的にはH(水素))を供給するガス管60の接合面とが接続部材40によって接合され、気体が流出および/または流入しないように封止されている。また、カソード30は外気に露出した構造を有している。かかる発電システムに電流を印加すると、カソード30において酸素含有ガス(典型的には空気)中の酸素原子が酸素イオンとなる。該酸素イオンは、カソード30から固体電解質20を介してアノード10に到達し、アノード10に供給される。そして、燃料ガス中の水素(H)と反応して電子を放出することによって発電が行われる。
以下、SOFCの構成要素について順に説明する。
ここで開示されるSOFC50を構成するアノード(燃料極)10はガスを透過し得る多孔質構造を有している。アノード10の気孔率は、例えば10体積%〜50体積%、好ましくは20体積%〜40体積%とすることができる。また、平均細孔径は、例えば10μm以下、好ましくは0.1μm〜5μmとすることができる。かかる範囲を満たす場合、高い機械的強度と優れたガス透過性(即ち、十分なガス接触面積の確保)とを高いレベルで両立させることができる。なお、アノードの形状はSOFCに供給される燃料ガスに接触できるように構成されていればよく、上述したSOFCの形状に応じて適宜選択し得る。図1に示す構成のSOFC50では、シート状のアノード10がSOFC50の支持体として比較的厚めに形成されている。上記支持体としてのアノード10の厚みは、典型的には0.1mm〜10mm程度であり、好ましくは0.5mm〜5mm程度であるが、かかる厚みに限定されるものではない。また、例えば多孔質構造(多孔率)の異なる2層以上を積層した構造とすることもできる。この場合、固体電解質20から離れた層の多孔度をより高くすることで、ガスの分散を均一にすることができる。
アノード10を構成する材料としては、例えば1種以上の金属もしくは金属の酸化物が挙げられる。より具体的には、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ランタン(La)、金(Au)等の金属、もしくは、酸化コバルト(CoO、Co、Co)、酸化ニッケル(NiO、Ni、Ni)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ルテニウム(RuO)等の金属酸化物が挙げられる。なかでもニッケルは他の金属に比べて安価であり、且つ高い活性を示すことから、特に好適な金属種である。また、これらの金属や金属酸化物と、他の材料とを混合した複合物を用いることもできる。より具体的には、上記アノード構成材料(金属や金属酸化物)と、後述する固体電解質20の構成材料とを任意の割合で混合した複合物を用いることができる。好適例として、例えばニッケルと安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化ジルコニア(Yttria stabilized zirconia:YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(Calcia stabilized zirconia:CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(Scandia stabilized zirconia:ScSZ)等)とのサーメットが挙げられる。固体電解質の構成材料と混合することで、熱膨張の整合がとれ、耐久性に優れたSOFCを構築し得る。また、ニッケル粒子間の焼結をも防止し得るため好ましい。上記金属と固体電解質構成材料との混合比率(質量比)は、特に限定するものではないが、例えば90:10〜40:60(より好ましくは、凡そ80:20〜45:55)とすることができる。
ここで開示されるSOFC50を構成する固体電解質20は緻密構造を有している。かかる固体電解質20はアノード10の上に積層されており、アノード10の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。また、固体電解質20の厚み(膜厚)は、典型的には5μm〜100μm程度であり、好ましくは10μm〜30μm程度であるが、かかる厚みに限定されるものではない。
固体電解質20を構成する材料としては、高い酸素イオン伝導性を有する化合物が好ましい。例えば、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)等から選択される元素を含む酸化物が挙げられる。より具体的には、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er)等の安定化剤で結晶構造を安定化させたジルコニア(ZrO);イットリア(Y)、ガドリニア(Gd)、サマリア(Sm)等のドープ剤をドープしたセリア(CeO);等が、好適例として挙げられる。とりわけ、イットリウム(Y)の酸化物(例えば、イットリア(Y))を固溶させたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジウム(Sc)の酸化物(例えばスカンジア(Sc))を固溶させたスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)は、中低温においても比較的高い酸素イオン伝導性を示すため、好ましく用いることができる。
ここで開示されるSOFCを構成するカソード(空気極)30は、アノード10と同様にガスを透過し得る多孔質構造を有している。カソード30の気孔率は、例えば10体積%〜30体積%、好ましくは15体積%〜25体積%とすることができる。また、平均細孔径は、例えば10μm以下、好ましくは0.1μm〜5μmとすることができる。かかるカソード30は、上記固体電解質20の上に積層されており、固体電解質20の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。また、カソード30の厚み(膜厚)は、典型的には1μm〜200μm程度であり、好ましくは5μm〜100μm程度、より好ましくは10μm〜100μmであるが、かかる厚みに限定されるものではない。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様としては、カソード30は、固体電解質20上に反応抑止層を設けることなく直接的に形成されている。一般的に、カソード形成用材料としてLSCFを用いる場合には、該カソードと固体電解質(典型的には、ジルコニア系酸化物)との反応を抑止するため、これらの間に反応抑止層を形成する必要がある。しかし、ここで開示されるカソードはLSTFを含むためにかかる反応性が低減されたものであり得る。このため、固体電解質20の上に直接形成することができ、SOFCの構造をより簡素化し得る。したがって、生産性に優れ、且つ好ましくはSOFCの内部抵抗をも低減することができる。なお、カソードを構成する材料としては既に上述したカソード形成用材料を用いることができる。
また、本明細書において、SOFCを好適に製造する方法が提供される。ここで開示される製造方法は、多孔質構造のアノードと、酸素イオン伝導体からなる固体電解質と、多孔質構造のカソードとからなる積層構造を有した固体酸化物形燃料電池を製造する方法である。そして、上記カソードは、ここで開示されるカソード形成用材料により構成されていることを特徴とする。
かかる製造方法は、上記アノードと、上記アノード上に形成された固体電解質とからなるアノード−固体電解質積層体を用意すること、上記積層体の固体電解質側の表面に、ここで開示されるカソード形成用材料(典型的には、複合粒子)を付与すること、上記材料が付与された上記積層体を焼成することによって上記カソードを形成すること、を包含する。ここで開示される製造方法では、カソードと他の構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)との熱膨張係数(熱膨張率)の差異が小さく抑えられているため、熱膨張に起因する不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。また、カソード用材料と電解質との反応性が低いため、反応抑止層を設ける必要がない。したがって、ここで開示される製造方法によれば、高耐久性でありながら、高い発電性能を発揮し得るSOFCを簡便に製造することができる。
具体的な製造方法を、図2を用いて詳細に説明する。
<アノード−固体電解質積層体の用意>
ここで「アノード−固体電解質積層体」とは、アノードと固体電解質とが積層した状態を示すものであり、該アノード−固体電解質積層体を用意する方法について特に制限はない。したがって、SOFCの製造方法において従来公知のアノードおよび固体電解質の作製方法を用いることができる。
例えば、図2(a)に示すように、まず、支持基材(支持体)として多孔質構造のアノード10を形成する。ここでは、8族〜10族の金属元素の材料(例えばニッケル材料)と安定化ジルコニア(例えばYSZ)とを混合し、サーメット材料を調製する。次に、上記サーメット材料と、バインダ(例えばメタクリル酸エステル系ポリマー)と、分散剤(例えばソルビタントリオレエート)と、造孔材(例えばカーボン)とを、溶媒(例えばキシレン)に分散させて、ペースト状のアノード形成用材料を調製する。そして、調製したアノード形成用材料を適当な成形方法(例えばシート成形)で成形し、成形体を焼成することによってシート状のアノード10を形成することができる。上記成形体の焼成は、例えば1200℃〜1500℃の温度で1時間〜5時間加熱することにより行うことができる。なお、アノード形成用材料の焼成は、後述の固体電解質用材料の焼成と同時に行ってもよい。
そして、図2(b)に示すように、アノード10上に固体電解質20を形成する。ここでは、上述した固体電解質20の原料(例えばYSZ)をバインダ(例えばメタクリル酸エステル系ポリマー)と分散剤(例えばソルビタントリオレエート)とともに溶媒(例えばキシレン)に分散させて、ペースト状の固体電解質用材料を調製する。次に、調製した固体電解質用材料をアノード10(もしくはアノード形成用材料の成形体)上に任意の手法(例えば印刷成形)で付与し、固体電解質用材料の成形体を形成する。そして固体電解質用材料を付与した成形体を乾燥させた後に、大気雰囲気下で焼成する。このときの焼成温度は凡そ1200℃〜1400℃とすることができ、焼成時間は凡そ1時間〜5時間とすることができる。かかる焼成によってアノード10の上に膜状の固体電解質20が形成され、アノード10と、該アノード10上に形成された固体電解質20からなる、アノード−固体電解質積層体110を得ることができる。
<カソードの形成>
次に、図2(c)に示すように、アノード−固体電解質積層体110の固体電解質20側の表面に上述のカソード形成用材料を付与する。この際、均質な電極を安定して作製するために、構成材料を1種以上の溶媒に分散(もしくは溶解)させ、調製したものを好ましく用いることができる。そして任意の手法(例えば塗布)を用いて、該ペースト状の複合粒子を固体電解質20上に付与する。塗布方法としては、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法等を用いることができる。そして、カソード形成用材料が付与された積層体を焼成する。焼成方法は特に限定されないが、例えば、700℃〜900℃(好ましくは750℃〜850℃)の温度で焼成することができる。これによりカソード30が形成され、アノード10と固体電解質20とカソード30とが積層されたSOFC50を得ることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本実施例では、カソード形成用材料の異なる8種類の固体酸化物形燃料電池(SOFC)を作製し、その特性および発電性能を評価した。なお、以下で説明する実施例は、本発明を限定することを意図したものではない。
〔カソード形成用材料の調製〕
<比較例1>
平均粒径0.2μmのLSCF酸化物(ここでは、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83−δを用いた。)粒子と、平均粒径1.0μmのLSTF酸化物(ここでは、La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.73−δを用いた。)粒子とを、LSCF:LSTF=70:30の質量比率で秤量し乳鉢を用いて混合分散することで、カソード形成用材料(比較例1)を得た。
<実施例1>
上記比較例1において、乳鉢混合に替えてホソカワミクロン株式会社製の「NOB−MINI」を用い0.5kWの条件で10分間メカノケミカル処理(乾式混合)を行うことで、カソード形成用材料(実施例1)を得た。
<実施例2>
上記メカノケミカル処理を1.0kWの条件で10分間行ったこと以外は実施例1と同様に、カソード形成用材料(実施例2)を得た。
<実施例3>
上記メカノケミカル処理を3.0kWの条件で10分間行ったこと以外は実施例1と同様に、カソード形成用材料(実施例3)を得た。
<実施例4>
上記メカノケミカル処理を3.0kWの条件で20分間行ったこと以外は実施例1と同様に、カソード形成用材料(実施例4)を得た。
<比較例2>
LSCF酸化物のみを用いた場合(すなわちLSTF酸化物を用いなかった場合)を、カソード形成用材料(比較例2)とした。
<比較例3>
LSTF酸化物に換えてGDCを用い、且つLSCF酸化物とGDCとの質量比率がLSCF:GDC=50:50となるよう乾式混合したこと以外は比較例1と同様に、カソード形成用材料(比較例3)を得た。
<比較例4>
上記LSCF酸化物とGDCとの質量比率がLSCF:GDC=40:60となるよう乾式混合したこと以外は比較例3と同様に、カソード形成用材料(比較例4)を得た。
上記粒子の条件を表1に纏める。
〔比表面積の測定〕
得られたカソード形成用材料の比表面積を下記条件で測定した。作製に用いた材料および乾式混合の条件と共に、結果を表1に示す。なお、表1においてメカノケミカル処理条件の欄の「−」は、メカノケミカル処理を行わなかったことを示している。
測定装置;日本ベル株式会社製、自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP(商標)−18PLUS」
測定方法;定容量式吸着法
吸着ガス;窒素
解析方法;BET1点法
表1に示すように、メカノケミカル処理において出力を高くおよび/または処理時間を長くするほど該処理後の比表面積は減少する傾向にあった。これは、メカノケミカル処理によってLSCFとLSTFとの複合化が進んだことを示している。
〔電子顕微鏡観察〕
また、上記得られたカソード形成用材料の性状を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。代表的な結果として、比較例1および実施例2の観察結果をそれぞれ図3および図8に示す。図3は比較例1に係る粒子、すなわちメカノケミカル処理を施していない混合粒子のSEM観察写真である。図8は実施例2に係る粒子、すなわちメカノケミカル処理を施した複合粒子のSEM観察写真である。また、かかる制限視野内においてエネルギー分散型X線分光分析(EDX)を行い、コバルト(Co)とチタン(Ti)の分布状態をマッピングした。得られた結果を、図4(比較例1におけるCo(Kα)の分布)、図5(比較例1におけるTi(Kα)の分布)、図9(実施例2におけるCo(Kα)の分布)、図10(実施例2におけるTi(Kα)の分布)にそれぞれ示す。
SEM−EDXのマッピング結果より、比較例1に係る図4および図5では、局所的にCoやTiの存在比率が高い箇所が認められた。すなわち、比較例1ではLSCFやLSTFが部分的に凝集し、均一に分散されていないことがわかった。一方、実施例2に係る図9および図10では、比較例1に比べCoやTiがより均一に分散していた。したがって、上記メカノケミカル処理によって、機械的な複合化のみならず均一分散の効果をも得られることが示された。
さらに、図3および図8に破線で表した部分を拡大したSEM写真を図6(比較例1)および図11(実施例2)に示す。その結果、比較例1(図6)に比べて実施例2(図11)ではサブミクロンオーダー(例えば0.1μm程度)の小さな粒子が多数存在しており、この小さな粒子が0.5μm〜1μm程度のより大きな粒子に結合(複合化)している状態が認められた。
そこで、上記観察された粒子の種類を明らかにすべく、図6(S1〜S6)および図11(S7〜S11)に示した地点において、EDXの手法を用いてそれぞれ定性分析を行った。結果を図7(比較例1)および図12(実施例2)のチャートに示す。また表2に各元素の定量分析結果を示す。
図7および表2の結果より、比較例1ではLSTFとLSCFとがそれぞれ独立した状態で混在していることが示された。一方、図11および表2の結果より、実施例2では0.5μm〜1μm程度のLSTF粒子をコアとし、該コア部の表面にサブミクロンオーダーのLSCFが多数付着(物理的に結合)した被覆部が形成された構造となっていることが示された。
〔熱的特性評価〕
さらに、上記得られた8種類のカソード形成用材料について、下記条件で熱機械分析(Thermo Mechanical Analysis:TMA)を行い、熱膨張係数および還元膨張率を測定した。表3の該当欄に、測定温度域における算術平均値を示す。
測定装置;株式会社リガク製、型式「CN8098F1」
測定方法;示差膨張方式
測定温度範囲;室温(25℃)〜1000℃、昇温速度;5℃/分
測定雰囲気;大気中(熱膨張係数測定時)、水素4%+窒素96%の雰囲気中(還元膨張率測定時)
表3に示す通り、LSCFのみで構成される比較例2のカソード形成用材料は熱膨張係数が最も高かった。このため熱衝撃等の温度変化に対する耐久性が低いと考えられる。また、LSCFとGDCとを混在させた比較例3,4では、比較例2に比べ熱膨張係数は抑えられていたが、還元膨張率は1%超と大きい値を示した。このため、かかる材料でカソードを形成した場合、還元雰囲気下において該カソードの剥離や構造破壊が生じる虞がある。これに比べて、本発明に係る実施例1〜4のカソード形成用材料では還元膨張率が0.7%と小さく、さらに熱膨張係数もSOFCのセルに使用される典型的な材料の熱膨張係数(10〜13(×10−6/K))と近い値を示していた。以上の結果より、ここで開示されるカソード形成用材料は環境変化に伴う変質が少なく、信頼性や耐久性に優れたものであり得ることが示された。
〔SOFCの構築〕
上記8種類のカソード形成用の複合粒子を用いて、以下の手順でSOFCを構築した。
具体的には、先ず平均粒径1μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、平均粒径3μmの酸化ニッケル(NiO)粉末とをYSZ:NiO=40:60の質量比率で混ぜ合わせ、さらに造孔材としてのカーボンを添加し混合粉末を得た。該混合粉末と、バインダ(メタクリル酸エステル系ポリマー)と、分散剤(ソルビタントリオレエート)とを、溶媒(キシレン)中で混練することにより、ペースト状のアノード形成用材料を調製した。該アノード形成用材料をドクターブレード法によってシート成形し、φ20mm、厚み1mm程度のアノード成形体を作製した。
次に、平均粒径1μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、バインダ(メタクリル酸エステル系ポリマー)と、分散剤(ソルビタントリオレエート)とを、溶媒(キシレン)中で混練することにより、ペースト状の固体電解質用材料を調製した。上記アノード成形体上に該固体電解質用材料をスクリーン印刷し、φ20mm、厚み10μmの固体電解質を形成した。そして、上記積層した2層からなる成形体を乾燥させた後に、1400℃の温度で3時間焼成することにより、アノード−固体電解質積層体を得た。
そして、上記作製した複合粒子と、バインダ(エチルセルロース)とを、溶媒(ターピネオール)中に添加し、ロールミルで0.5時間混練して、ペースト状の複合粒子を得た。該ペースト状の複合粒子を、上記固体電解質層上にスクリーン成形して、φ16mmのカソード用成形体を固体電解質層の上に形成した。なお、このときのカソード用成形体の厚みは、凡そ10μm〜50μmだった。そして、積層した2層からなる成形体を、800℃の温度で、1時間焼成することによってカソードを形成した。これによって、アノード、固体電解質、カソードの順に積層したアノード支持型のSOFCを得た。なお、表3の該当欄に示す通り、カソードの気孔率はいずれも15体積%〜20体積%の範囲内であり、機械的強度とガス透過の観点から好適な値であった。
〔発電試験〕
上記作製したSOFCについて、温度500℃〜800℃で動作させ、発電特性評価を行った。「発電性能」の代表値として、温度700℃における最大電力密度(W/cm)の値を表3の該当欄に示す。
表3に示すように、LSCFのみで構成される比較例2のカソード形成用材料で最も高い電力密度を示した。また、LSCFとLSTFとを70:30の割合で単純に混合した比較例1のカソード形成用材料では、最大電力密度が比較例2の凡そ半分にまで低下した。一方、比較例1にメカノケミカル処理を施した実施例1〜4では比較例1に比べて発電性能が上昇し、700℃において最大出力が0.4W/cm以上(好ましくは0.45W/cm以上)を示した。これは、LSCFとLSTFとをメカノケミカル処理することによって、粒子同士を複合化し得、電子や酸素イオンの電導パスが増加したためと考えられる。すなわち、比表面積が10%以上40%以下(好ましくは15%以上30%以下)の割合で減少するようにメカノケミカル処理を行うことで、より一層電子伝導性や酸素イオン伝導性に優れたカソード形成用材料とし得ることが示された。
〔電子顕微鏡観察〕
また、上記発電試験後のSOFCを解体し、アノードの表面(成形体の表面)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、電極表面の状態を確認した。すると、熱膨張係数が15×10−6/Kよりも高かった比較例2および3では、カソード電極表面にクラックの発生が認められた。したがって、本例においては、熱膨張係数を15×10−6/K以下とするのが好ましい。
以上の結果より、本発明のカソード形成用材料を用いることにより、熱膨張および還元膨張が抑制され、且つ優れた電極性能を有するカソードを形成し得ることが示された。また、該カソードを用いたSOFCでは、中低温領域における発電性能(電力密度)と耐久性とを高いレベルで両立し得ることが示された。
本発明の材料によると、優れた電極性能を有し、且つ耐久性の向上したSOFCのカソードを形成することができる。このため、本発明は、高性能なSOFC(もしくは発電システム)の構築に貢献することができる。かかる材料を用いることで、中低温領域においても高い発電性能を発揮し得るSOFCを構築することができる。さらに、ここで開示されるカソードは固体電解質上に直接形成することができるため作業が簡便であり、好ましくは電池特性を向上(例えば抵抗の低減等)することができる。
10 アノード(燃料極)
20 固体電解質
30 カソード(空気極)
40 接合部材
50 SOFC
60 ガス管
110 アノード−固体電解質積層体

Claims (11)

  1. 固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料であって;
    以下の一般式(1):
    (La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ (1)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子と、
    以下の一般式(2):
    (La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ (2)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子と、
    が、メカノケミカル処理により複合化された複合粒子を主体とする、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  2. 前記複合粒子は、前記一般式(2)で示される酸化物からなるコア部と、該コア部表面の少なくとも一部に形成されている前記一般式(1)で示される酸化物からなる被覆部と、から構成される、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  3. 前記複合粒子は、前記一般式(1)で示される酸化物と、前記一般式(2)で示される酸化物との質量比率が、(1):(2)=80:20〜30:70である、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  4. 前記複合粒子は、熱機械分析により測定される熱膨張係数が13×10−6/K以上15×10−6/K以下であり、還元膨張率が1%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  5. 前記複合粒子が少なくとも1種の溶媒に分散または溶解され、ペースト状に調製されてなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  6. アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
    前記カソードは、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合粒子を主体として形成されている、固体酸化物形燃料電池。
  7. 前記カソードと前記固体電解質と前記アノードとが層状に積層され形成されており、
    該積層構造における前記カソードの厚みが10μm以上100μm以下である、請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池。
  8. 前記カソードは、前記固体電解質上に反応抑止層を設けることなく直接的に形成されている、請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池。
  9. 固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料の製造方法であって;
    以下の一般式(1):
    (La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ (1)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子と、
    以下の一般式(2):
    (La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ (2)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物粒子と、
    を用意すること、
    前記一般式(1)で示される酸化物と前記一般式(2)で示される酸化物とをメカノケミカル処理によって複合化し、複合粒子を得ること、
    前記複合粒子を用いて、カソード形成用材料を調製すること、
    を包含する、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料の製造方法。
  10. 前記メカノケミカル処理は、窒素吸着法により測定される該処理の後の比表面積B(m/g)と該処理前の比表面積A(m/g)との関係が、10≦(A−B)/A≦40となるように行う、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記酸化物粒子の用意は、前記一般式(1)で示される酸化物と、前記一般式(2)で示される酸化物との質量比率が、(1):(2)=80:20〜30:70となるよう用意する、請求項9または10に記載の製造方法。
JP2012120542A 2012-05-28 2012-05-28 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料 Active JP5655032B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012120542A JP5655032B2 (ja) 2012-05-28 2012-05-28 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012120542A JP5655032B2 (ja) 2012-05-28 2012-05-28 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013247006A true JP2013247006A (ja) 2013-12-09
JP5655032B2 JP5655032B2 (ja) 2015-01-14

Family

ID=49846616

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012120542A Active JP5655032B2 (ja) 2012-05-28 2012-05-28 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5655032B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101711924B1 (ko) * 2015-09-17 2017-03-03 주식회사 엘지화학 연료 전지 양극의 성능 평가 방법 및 연료 전지
US11677080B2 (en) 2017-03-31 2023-06-13 Osaka Gas Co., Ltd. Electrochemical element, electrochemical module, solid oxide fuel cell and manufacturing method

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07267748A (ja) * 1994-03-30 1995-10-17 Ngk Insulators Ltd 多孔質焼結体及びその製造方法
JP2002520248A (ja) * 1998-07-16 2002-07-09 ユニバルシテ ラバル 金属酸化物およびペロブスカイトまたはペロブスカイト様結晶構造を有する金属酸化物を合成するための方法
JP2010146727A (ja) * 2008-12-16 2010-07-01 Japan Fine Ceramics Center 固体酸化物形燃料電池の製造方法
JP2011190148A (ja) * 2010-03-15 2011-09-29 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 複合セラミックス粉体及びその製造方法並びに固体酸化物形燃料電池
JP2012074306A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Tdk Corp 固体酸化物形燃料電池用発電セル
JP2013143187A (ja) * 2012-01-06 2013-07-22 Noritake Co Ltd 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07267748A (ja) * 1994-03-30 1995-10-17 Ngk Insulators Ltd 多孔質焼結体及びその製造方法
JP2002520248A (ja) * 1998-07-16 2002-07-09 ユニバルシテ ラバル 金属酸化物およびペロブスカイトまたはペロブスカイト様結晶構造を有する金属酸化物を合成するための方法
JP2010146727A (ja) * 2008-12-16 2010-07-01 Japan Fine Ceramics Center 固体酸化物形燃料電池の製造方法
JP2011190148A (ja) * 2010-03-15 2011-09-29 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 複合セラミックス粉体及びその製造方法並びに固体酸化物形燃料電池
JP2012074306A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Tdk Corp 固体酸化物形燃料電池用発電セル
JP2013143187A (ja) * 2012-01-06 2013-07-22 Noritake Co Ltd 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101711924B1 (ko) * 2015-09-17 2017-03-03 주식회사 엘지화학 연료 전지 양극의 성능 평가 방법 및 연료 전지
US11677080B2 (en) 2017-03-31 2023-06-13 Osaka Gas Co., Ltd. Electrochemical element, electrochemical module, solid oxide fuel cell and manufacturing method

Also Published As

Publication number Publication date
JP5655032B2 (ja) 2015-01-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6018639B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池ハーフセル及び固体酸化物形燃料電池
JPWO2006092912A1 (ja) 固体酸化物形燃料電池用セル及び固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法
JP2010282772A (ja) 固体酸化物形燃料電池用電極材及び固体酸化物形燃料電池用電極
JP6491936B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池の製造方法、固体酸化物形燃料電池のハーフセルグリーンシートおよび固体酸化物形燃料電池
JP5546559B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料
JP6338342B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池ハーフセル、及び固体酸化物形燃料電池
JP5611249B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料
JP2017076520A (ja) 固体酸化物形燃料電池用の電極材料とこれを用いた固体酸化物形燃料電池
JP2007200664A (ja) 固体電解質型燃料電池の製造方法
JP6808544B2 (ja) 固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル、固体酸化物形電気化学セル及び固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法
JP5509142B2 (ja) 複合材料およびその利用
JP5655032B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料
JP5923045B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池用グリーンシートおよびその製造方法
JP6151212B2 (ja) 低温作動型の固体酸化物形燃料電池およびその製造方法
JP6433168B2 (ja) 固体電解質形燃料電池および該燃料電池の反応抑止層形成用材料
JP2018063871A (ja) 電気化学セル用燃料極、およびそれを含む電気化学セル
JP2016126984A (ja) 燃料電池単セルおよびその製造方法
JP2015185246A (ja) アノード支持基板及びアノード支持型セル
JP7208764B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池とこれに用いる集電部形成用材料
JP5965383B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池および該電池の反応抑止層形成用組成物
JP6199680B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池のハーフセル及び固体酸化物形燃料電池セル
JP7136185B2 (ja) セル構造体
JP5285115B2 (ja) 複合材料およびその利用
JP2018152204A (ja) 電気化学セル用空気極、およびそれを含む電気化学セル
JP6378241B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池用グリーンシートおよびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140820

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140821

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20141017

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141113

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141121

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5655032

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250