JP2013243959A - カキ果実の剥皮方法及び剥皮カキ果実 - Google Patents

カキ果実の剥皮方法及び剥皮カキ果実 Download PDF

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Abstract

【課題】 物理的な穿孔処理によることなく、簡単かつ安価に酵素液をカキ果実の果皮組織に導入するための経路を確保する処理を行うことができ、その結果、効率よくカキ果実の剥皮を行うことができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 カキ果実を界面活性剤で処理する第1の工程と、第1の工程を行った後のカキ果実を加熱処理する第2の工程と、第2の工程を行った後のカキ果実を酵素処理する第3の工程と、第3の工程を行った後のカキ果実の少なくとも外果皮を除去する第4の工程と、を順次行うことを特徴とする、カキ果実の剥皮方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カキ果実の剥皮方法及び剥皮カキ果実に関するものである。
近年、果実類の消費が伸び悩んでおり、その背景の一つに、食べる前に皮を剥くことを敬遠する消費者の心理があることが指摘されている。事実、皮を剥いてすぐに食べられる状態にしたカットフルーツの市場は近年拡大を続けている。
しかし、カット加工の工程は、ほとんどを人手に頼っている。とりわけ、剥皮の工程には多くの労力を要している。
そこで剥皮工程を効率化しようとして、カキ果実を対象に酵素剥皮技術が開発されている(特許文献1)。
このカキ果実の酵素剥皮技術は、果皮組織の細胞間隙にポリガラクチュロナーゼ等を含む外来の酵素液を導入して作用させ、細胞間隙のペクチン質を分解することで細胞間の接着を乖離させるメカニズムに基づくものである。
このため、表層がクチクラで覆われているカキ果実の酵素剥皮を行おうとする場合、酵素液を果皮組織に導入するための経路を確保する前処理が必要となる。
このため、酵素処理工程の前に、金属針等を用いた角皮の貫通処理工程を行う方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、一つ一つの果実の表面にできるだけ均一に穿孔を行うこの処理は、手作業で行う場合には煩雑であり、改善が求められていた。
そこでカキ果実の傷付与装置が提案されているが(特許文献3、特許文献4)、装置の構造を複雑化し、装置自体を高価にしてしまっており、高価な商品以外には用いられにくかった。
特許第3617042号公報 特開2008−86258号公報 特許第4174440号公報 特開2010−046030号公報
本発明は、上記課題を解決し、物理的な穿孔処理によることなく、簡単かつ安価に酵素液をカキ果実の果皮組織に導入するための経路を確保する処理を行うことができ、その結果、効率よくカキ果実の剥皮を行うことができる方法、並びに、この方法で得られた剥皮カキ果実を提供することを目的とするものである。
カキ果実の外果皮のうちの最外層の角皮は、ワックス(クチクラ内ワックス)、難分解性のクチン、クタンからなるクチクラ層と、その外側のワックス層(クチクラ外ワックス)と、から構成されている。
カキ果実におけるクチクラ層の強度の維持に果たしているワックスの役割は大きく、本発明者らは、カキ果実のクチクラ層から有機溶媒(クロロホルム:メタノール(1:1)溶液)処理によりワックスを除去した場合には、剥皮しにくい品種「富有」においても、クチクラ層の機械的強度は大きく低下することを知見した。
本発明者らは、この知見をもとに、同じような作用を示し、かつ食品加工に適用可能な処理について、さらに鋭意研究を進めた。
その結果、酵素処理の前段階での処理として、従来行われていた物理的な穿孔処理の代わりに、界面活性剤で処理するという、溶液中での化学処理により、クチクラ層を分解除去し、酵素液の果皮組織への浸透性を高めることができることを見い出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に係る本発明は、カキ果実を界面活性剤で処理する第1の工程と、第1の工程を行った後のカキ果実を加熱処理する第2の工程と、第2の工程を行った後のカキ果実を酵素処理する第3の工程と、第3の工程を行った後のカキ果実の少なくとも外果皮を除去する第4の工程と、を順次行うことを特徴とする、カキ果実の剥皮方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、第1の工程における界面活性剤での処理が、カキ果実を、界面活性剤を含む水に浸漬する処理である、請求項1記載の方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、第1の工程で用いる界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、請求項1又は2に記載の方法を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、ノニオン系界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる、請求項3記載の方法を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、第2の工程を、第1の工程を行った後のカキ果実を弱アルカリ水溶液中で加熱することによって行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項6に係る本発明は、第3の工程で用いる酵素が、ペクチン質を分解する機能を有するものである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項7に係る本発明は、第4の工程が、第3の工程を行った後のカキ果実を流水中で擦ることにより、カキ果実の少なくとも外果皮を除去するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項8に係る本発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカキ果実の剥皮方法により剥皮された剥皮カキ果実を提供するものである。
本発明によれば、物理的な穿孔処理によることなく、簡単かつ安価に酵素液をカキ果実の果皮組織に導入するための経路を確保する処理を行うことができ、その結果、効率よくカキ果実の剥皮を行うことができる。
即ち、本発明によれば、酵素処理の前段階での処理として、従来行われていた物理的な穿孔処理が不要となり、界面活性剤で処理するという、溶液処理だけで果実の剥皮を行うことが可能となる。
本発明の製法により得られた剥皮カキ果実は、カキ特有の食感を有するばかりか、見た目も優れており、皮を剥いてすぐに食べられる状態のカットフルーツとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、カキ果実の剥皮方法に関し、カキ果実を界面活性剤で処理する第1の工程と、第1の工程を行った後のカキ果実を加熱処理する第2の工程と、第2の工程を行った後のカキ果実を酵素処理する第3の工程と、第3の工程を行った後のカキ果実の少なくとも外果皮を除去する第4の工程と、を順次行うことを特徴とするものである。
ここで第1の工程と第2の工程とは、いずれも第3の工程(酵素処理工程)の前段階の処理としての役割を果たしており、その順番からすると、第1の工程を前々処理、第2の工程が前処理、と称することができる。
<第1の工程>
第1の工程は、カキ果実を界面活性剤で処理する工程である。
カキ果実としては、カキノキ科カキノキ属(Diospyros)に属する植物、例えばカキノキ(Diospyros kaki)の果実であればよい。具体的には例えば、「富有」、「平核無」、「刀根早生」、「甲州百目」、「次郎」、「市田」、「西条」、「愛宕」、「西村早生」などの品種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、品種「平核無」、「愛宕」、「富有」は、この順番で、剥皮性が悪くなる傾向がある。また、食用に用いられるものであれば、甘柿、渋柿のいずれであってもよい。
なお、カキ果実は、第1の工程を施すに先立って、水流コンベアなどを用いて予め洗浄しておくとよい。
第1の工程では、上記の如きカキ果実を、界面活性剤で処理する。
界面活性剤での処理としては、カキ果実を、界面活性剤を含む水に浸漬するか、或いは、界面活性剤をカキ果実に塗布することにより行えばよいが、これに制限されるものではない。
第1の工程における界面活性剤での処理としては、他に特段の必要がないのであれば、続く第2、第3の工程も水槽を用いての処理とすることができることから、同じように、水槽での処理を可能とする、カキ果実を、界面活性剤を含む水に浸漬する方法がより好ましい。
カキ果実を、界面活性剤を含む水に浸漬する場合における、界面活性剤を含む水中の界面活性剤の濃度は、300〜20000ppm、好ましくは500〜15000ppm、より好ましくは800〜12000ppmである。
なお、この場合、カキ品種「平核無」やカキ品種「愛宕」などのように、剥皮性がよいか、或いはそれほど悪くない品種では、界面活性剤を含む水中の界面活性剤の濃度は、300〜2000ppm、好ましくは500〜1500ppm、より好ましくは800〜1200ppmで充分である。
一方、剥皮性の悪いカキ品種「富有」などでは、界面活性剤を含む水中の界面活性剤の濃度は、1000〜20000ppm、好ましくは1500〜15000ppm、より好ましくは1800〜12000ppmとする。
浸漬時間は、8〜24時間、好ましくは10〜20時間、より好ましくは14〜18時間である。なお、この時間内の浸漬であれば、カキ果実の吸水による重量増加、および、糖度低下などは、ごく微細で問題無いレベルであることを確認済みである。
また、剥皮性の悪いカキ品種「富有」などの場合には、界面活性剤を塗布することが好ましく、この場合、界面活性剤の原液やその高濃度希釈液を用いればよい。
用いる界面活性剤としては、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤のHLB値としては、10〜19が好ましく、より好ましくは13〜18であり、さらに好ましくは15〜17である。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられるが、特にポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばデカグリセリンモノラウリレート、デカグリセリンモノカプリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、炭素数8〜22のものを用いることができ、特に炭素数8〜14のものが好ましく、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸などを挙げることができる。
上記の界面活性剤としては、食品添加物として認められているものが好ましい。そのようなものとして、具体的には例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)や、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート;HLB値15)などを挙げることができる。これらはいずれも、植物油由来のグリセリンと植物油由来の脂肪酸を用いて製造された、食品添加物として認められたものである。
なお、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7Dよりも、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19Dの方が、疎水性が高く、クチクラ層のワックス成分への効果が異なることから、カキ品種によって、それぞれに適した界面活性剤を使い分けることが好ましい。
なお、この第1の工程(界面活性剤での処理工程)では、高pH下での処理であると、黒変が出やすい傾向にあり、重曹(炭酸水素ナトリウム)などのアルカリを用いてpHを調整する必要はなく、界面活性剤単独での処理で充分である。
また、第1の工程として、界面活性剤での処理の代わりに、重曹(炭酸水素ナトリウム)などのアルカリを用いての処理を行ったとしても、酵素液をカキ果皮組織に導入するための経路(亀裂)を確保することはできない。
上記した如き第1の工程(界面活性剤での処理工程)を行うことにより、続く第2の工程(カキ果実を加熱する工程)とあいまって、物理的な穿孔処理によることなく、簡単かつ安価に酵素液をカキ果皮組織に導入するための経路(亀裂)を確保することができる。
この第1の工程は、従来のような果皮の傷付け作業ではなく、界面活性剤を用いての溶液処理となることから、作業を簡略化することができる。また、機械化する場合であっても、特殊な装置が不要となることから、従来の機械装置よりもコストを低くすることができるメリットがある。
<第2の工程>
続く第2の工程では、第1の工程を行った後のカキ果実を加熱処理する。第1の工程に続き第2の工程で加熱処理を行うことにより、カキ果実の外果皮のうちの少なくとも角皮に亀裂を生じさせ、続く第3の工程での酵素処理における酵素液をカキ果皮組織に導入するための経路を確保することができる。また、この加熱処理により、カキ果実中のペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化させることができる。
第2の工程における加熱処理としては、カキ果実が均一に加熱されるのであれば、その手段は特に制限されないが、加熱水を用いて行うことが好ましい。加熱水を用いた加熱処理としては、例えば熱水中への浸漬により行ってもよいし、スチーム(水蒸気)を吹き付けることにより行ってもよい。しかし、この加熱処理は、果肉の軟化を防止する観点から、短時間行うことが好ましい点を考慮すると、短時間加熱により適した、熱水中への浸漬により行うことが最も好ましい。
なお、水としては、水道水、蒸留水、脱イオン水、硬度の高い水、など如何なる水を用いることもできる。
この場合の熱水の温度は、80〜100℃、好ましくは95〜100℃である。
加熱処理時間は、20〜300秒間、好ましくは25〜270秒間、より好ましくは30〜240秒間である。
加熱処理時間は、果肉の軟化を防止する観点から、より短時間とすることが好ましく、加熱後は速やかに冷却しておくことが好ましい。
加熱処理を行った後は、速やかに冷却することにより、果肉の品質低下を最小限に抑えることができる。
この場合の冷却は、カキ果実の表面温度を、速やかに(具体的には60秒以内に、できれば30秒以内に)、40℃以下程度まで低下できるように行うことが望ましい。冷却手段は特に制限されないが、果実を流水中に置いたり、果実を氷水に浸漬したりすることが好ましい。
特に、第2の工程(加熱処理工程)を、水の代わりに、重曹などの弱アルカリ水溶液を用いて行うと、カキ果実の外果皮の亀裂を増加させたりすることが可能となり、続く第3の工程での酵素処理における酵素液をカキ果実の外果皮組織に導入するための経路(浸透経路)を確保することができることから、カキ果実の剥皮がより行い易くなるため、好ましい。
特に、「平核無」のように比較的剥皮容易な品種とは異なり、これより剥皮性の少し悪いカキ品種「愛宕」などの場合には、第2の工程(加熱処理工程)を重曹などの弱アルカリ水溶液を用いて行うことが好ましい。さらに剥皮性の悪いカキ品種「富有」などの場合には、第2の工程(加熱処理工程)を重曹などの弱アルカリ水溶液を用いて行うことが必須である。
即ち、第1の工程を行った後のカキ果実を、80〜100℃、好ましくは95〜100℃の温度の弱アルカリ水溶液中に浸漬したりすることが好ましい。
ここで「弱アルカリ性」とは、pHでいうと、pH8.0を超え、11.0以下を指す。
ここでは、高pHとする必要はなく、「弱アルカリ性」で充分に、次の第3の工程(酵素処理工程)及び第4の工程(外果皮除去工程)を行うことにより、剥皮可能である。「弱アルカリ性」でなく、例えばpH11.0を超える「アルカリ性」であると、剥皮後果実に黒変等の品質劣化の問題が生じるため、好ましくない。また、pHが6.0以上、8.0以下の「中性」であると、用いることによる効果が得られないため、好ましくない。
弱アルカリ水溶液とするために、重曹(炭酸水素ナトリウム)が好ましく用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。重曹は、通常、pH8付近を示す。弱アルカリ水溶液でなく、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いた場合には、濃度が低い場合であっても、果皮や剥皮後の果肉が褐変したり、黒変したりする傾向がある。
用いる重曹の濃度は、0.1〜8.0%、好ましくは0.5〜7.0%、より好ましくは0.8〜6.0%である。ここで重曹の濃度が0.1未満であると、効果が充分でない。一方、重曹の濃度が8.0%を超えると、室温での重曹の溶解が困難で好ましくない。
一般に重曹の濃度が高い方が、多くの品種に適用可能であり、さらに、より短時間での加熱で充分な前処理効果が得られる。
カキ品種「愛宕」などでは、重曹の濃度が高くなるにつれて、同一処理時間での加熱処理効果を高くすることができる。
なお、「平核無」のように比較的剥皮容易な品種の場合、熟度が進んでいるものでは、弱アルカリ水溶液を用いることなく、加熱水(沸騰水)を用いての加熱処理にて、カキ果皮最外層のクチクラ層を剥くことができる。
従って、第2の工程(加熱処理工程)として、具体的には、第1の工程を行った後のカキ果実を、重曹を入れた沸騰水溶液中に浸漬し、上記した如き加熱処理を行うことが好ましく、さらにその後、速やかに冷却することが好ましい。
このような重曹沸騰水溶液中での加熱処理を行うことにより、単なる水を用いての加熱処理より、より一層効果的に、果皮の亀裂を増加させることが可能となり、続く第3の工程(酵素処理工程)で行う、酵素液をカキ果皮組織に導入するための経路を確保することができる。
なお、この第2の工程(加熱処理工程)においては、界面活性剤を添加すると、加熱後に果皮に生じる亀裂が増加する傾向があり、界面活性剤が果皮の弱体化に一定の効果をあげていることが分かる。しかし、重曹と界面活性剤の混合溶液を強い火力で加熱すると、溶液が泡立ち、吹きこぼれる可能性があり、作業の安全性の観点から、重曹溶液への界面活性剤の添加は好ましくない。
<第3の工程>
第3の工程では、第2の工程を行った後のカキ果実を酵素処理する。
第1の工程と第2の工程に続き、第3の工程で酵素処理を行うことにより、第1の工程と第2の工程を行うことにより作出された経路(カキ果実の外果皮のうちの少なくとも角皮に亀裂を生じさせて作出された、第3の工程での酵素処理における酵素液をカキ果皮組織に導入するための経路)を通じて、酵素液をカキ果皮組織に導入することができる。
第3の工程(酵素処理工程)では、カキ果実の細胞壁に含まれているペクチン質を分解する機能を有する酵素ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)を用いるが、市販のペクチナーゼ酵素剤には、セルラーゼ活性を有するものがあることから、そのようなペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いてもよい。
即ち、第3の工程(酵素処理工程)では、ペクチナーゼ活性のみで剥皮可能であるが、ペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いてもよい。
但し、ペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いた場合には、剥皮後の果肉がペクチナーゼ活性のみを有する酵素剤よりも軟化する。従って、ペクチナーゼ活性のみを有する酵素剤か、或いはペクチナーゼ活性を主体とする酵素剤が適している。
ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)としては、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)など酵母及び酵母近縁微生物由来のプロトペクチナーゼ類の他、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)由来のポリガラクチュロナーゼ類、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)由来のポリメトキシポリガラクチュロナーゼ類などを挙げることができる。
これらの中でも、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)など酵母及び酵母近縁微生物由来の「プロトペクチナーゼ類」が好ましい。そのようなものとして具体的には、例えば、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)を挙げることができる。これは、基本的にはペクチナーゼ活性のみを有する酵素剤である。
また、ペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤としては、例えば、Peelzym(Novozymes社製)のようにペクチナーゼ活性を主体とし、セルラーゼ活性も有する酵素剤を挙げることができる。
なお、アクレモセルラーゼKM(協和化成社製)のように、ペクチナーゼ活性を有するもののセルラーゼ活性の強い酵素剤の場合には、剥皮後の果肉の軟化が大きく、場合によっては果肉にえぐれが出るなどの障害が発生するため、好ましくない。
第3の工程(酵素処理工程)において、ペクチン質を分解する機能を有する酵素、ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)は、水、緩衝液、好ましくは蒸留水のように酵素作用に影響を及ぼさない液に、酵素を溶解させた酵素含有液として用いることができる。なお、水としては、水道水、蒸留水、脱イオン水、硬度の高い水、など如何なる水を用いることもできるが、上記したように、蒸留水が最も好ましい。
酵素含有液中の酵素の濃度については特に制限はないが、ペクチナーゼ活性が100U/ml前後になるように希釈した酵素含有液を用いることが好ましい。より好ましくは、ペクチナーゼ活性が80〜120U/mlになるように希釈した酵素含有液、特に好ましくは、ペクチナーゼ活性が90〜110U/mlになるように希釈した酵素含有液を用いる。
第3の工程(酵素処理工程)における酵素処理の態様としては、上記酵素含有液を、カキ果実の表面に吹き付けたり、塗布したり、或いは、上記酵素含有液中にカキ果実を浸漬するなどの態様が挙げられるが、均一処理の観点から、上記酵素含有液中にカキ果実を浸漬する態様が最も好ましい。
第3の工程(酵素処理工程)における酵素処理は、10〜55℃、好ましくは25〜37℃の温度で行うとよい。
従って、10〜55℃、好ましくは25〜37℃の温度とした上記酵素含有液中に、カキ果実を浸漬することが最も好ましい。
第3の工程(酵素処理工程)における酵素処理の時間は特に制限されないが、通常は、2〜8時間、好ましくは3〜7時間、より好ましくは4〜6時間である。
なお、この第3の工程(酵素処理工程)では、界面活性剤を添加する必要はないが、例えば、剥皮し難い品種のような場合には、必要に応じて、界面活性剤を添加することも可能である。
この第3の工程(酵素処理工程)を行うことにより、第1の工程と第2の工程を行うことにより作出された経路(カキ果実の外果皮のうちの少なくとも角皮に亀裂を生じさせて作出された、第3の工程での酵素処理における酵素液をカキ果皮組織に導入するための経路)を通じて、酵素液をカキ果皮組織に導入し、これを崩壊状態にさせることができる。
<第4の工程>
第4の工程では、第3の工程を行った後のカキ果実の少なくとも外果皮を除去する。
この第4の工程(外果皮除去工程)を行うことにより、第3の工程(酵素処理工程)によって崩壊状態となっているカキ果皮組織を、カキ果実表面から除去することができる。
第4の工程(外果皮除去工程)で行う外果皮除去手段としては、第3の工程(酵素処理工程)によって崩壊状態となっているカキ果皮組織を、カキ果実表面から除去しうる手段であれば特に制限されず、例えば、手で擦過したり、手袋を嵌めて擦過したり、回転ブラシを用いたり、或いはこれらと流水を組み合わせるなどの手段の他、公知の外果皮除去装置を用いて行うことなどが挙げられる。
これらの中でも、手間がかからず、しかもカキ果皮組織を除去した後のカキ果実表面を傷めない点から、流水下に手で擦過したり、或いは流水下に回転ブラシを用いて外果皮を除去することが最も好ましい。流水下に除去処理を行うことにより、酵素液の除去も合わせて行うことができ、果肉が熟しきらずに済むというメリットもある。
本発明においては、上記した第1の工程から第4の工程までを、順次行うことが必要であって、この順序でないと目的を達成することはできない。
例えば、第1の工程(界面活性剤での処理工程)を、第2の工程(加熱処理工程)の後に行ったとしても、目的を達成することはできない。
本発明の方法では、上記した第1の工程(界面活性剤での処理工程)を水槽中で、第2の工程(加熱処理工程)を沸騰水槽中で、第3の工程(酵素処理工程)を恒温水槽中で、それぞれ行うことができる。
このように本発明の方法では第1の工程から第3の工程までを、いずれも水槽中で行うことができることから、工程毎に溶液を変更することにより、水槽を転用することも可能である。また、各槽間を結合する搬送装置を設けることにより、連続的に処理することも可能である。
上記のようにして、効率よくカキ果実の剥皮を行うことができる。
このようにして得られたカキの剥皮果実は、そのまま食品として用いることができる。
即ち、本発明の製法により得られた剥皮カキ果実は、皮を剥いてすぐに食べられる状態のカットフルーツとなる。また、本発明の製法は、乾燥果実加工の剥皮前処理としても利用することができる。
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1> 品種「平核無」
(1)第1の工程(界面活性剤での処理工程)
室温下、カキ果実(品種「平核無」)を、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17〕(実施例1)の1000ppm(0.1%)水溶液中に一晩(16時間)浸漬した。このとき、pHは特に調整しなかった。
この処理により、カキ果実の果皮最外層に亀裂を生じさせることができた。
なお、この界面活性剤を用いての第1の工程を行う際に、重曹(炭酸水素ナトリウム)又は炭酸ナトリウムを併用して(それぞれ1.0%濃度と5.0%濃度のものを使用)アルカリ条件としたが、特に剥皮効果を上げることができないばかりか、炭酸ナトリウムを併用した場合、特に濃度が高い場合には、黒変が生じたことから、第1の工程において、pHを調整する必要はないと考えられた。
(2)第2の工程(加熱処理工程)
上記処理を施されたカキ果実を、熱水(95〜100℃)3L中に浸漬し、30秒間加熱処理を行った後、直ちに氷水で急冷した。これにより、30秒以内にカキ果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
(3)第3の工程(酵素処理工程)
プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の5.0%水溶液又はアクレモセルラーゼKM(協和化成社製)の0.2%水溶液を調製し、これを常温(15〜25℃)で容量5Lの水槽に入れ、この水槽中に上記処理を施されたカキ果実を浸漬し、5時間酵素処理を行った。
この結果、アクレモセルラーゼKM(協和化成社製)を用いた場合には、果肉の軟化が見られ、部分的にはえぐれが発生したが、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)を用いた場合には、そのような軟化は見られなかった。
従って、酵素としては、ペクチナーゼ活性のみで充分であり、セルラーゼ活性があると果肉が軟化し、好ましくないことが分かった。
それ故、以下の工程では、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)だけを用いた。
(4)第4の工程(外果皮除去工程)
上記処理を施されたカキ果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊したカキ果実の外果皮組織を脱離除去した。
このときの果皮脱離の作業性(剥皮性)を次の6段階の判定基準で評価した。結果を表1に示す。
なお、レベル0〜2を「不可」(許容範囲外)と判定し、レベル3〜5を「可以上」(許容範囲内)と判定した。
[果皮脱離の作業性の判定基準]
・0:不可;全く剥けない。
・1:不可;部分的に剥ける。部位により全く剥けない。
・2:不可;強引に力を入れて長時間(3分以上)かければ剥けるレベル。
・3:可;果皮脱離に、レベル5よりも力と時間が必要。所要時間2分程度。
・4:良;果皮脱離に、レベル5よりも力が必要。所要時間1分程度。
・5;優;果皮脱離が短時間・容易。所要時間30秒以内。
なお、最高評価(レベル5)の基準としては、剣山を用いて果皮の傷付け処理をした後、加熱処理、酵素処理、外果皮除去を行った場合であって、最も容易に果皮脱離を行うことができた場合を想定し、これと同等の力と時間で、短時間に、かつ、容易に果皮脱離を行うことができた場合をレベル5としている。
表1の結果によれば、界面活性剤での処理を行うことにより、所要時間1分程度で、容易に果皮脱離を行うことができており(レベル4)、剣山を用いて果皮の傷付け処理を行った参考例1の場合(レベル5)に近い剥皮性が得られたことが分かる。このことは、見方を変えると、剣山を用いて1個1個処理する必要がなく、連続的な溶液処理も可能な本願発明は、効率よくカキ果実の剥皮を行うことができるものであると言うことができる。
Figure 2013243959
<実験例1> 品種「富有」;界面活性剤処理工程・加熱処理工程の実施と果皮の状態
室温下、カキ果実(品種「富有」)について、表2に示す条件で、第1の工程(界面活性剤での処理工程)と第2の工程(加熱処理工程)を行い、加熱処理前及び加熱処理後の果皮の状態を目視により確認し、以下の6段階(a〜f)の判定基準で評価した。結果を表2に示す。参考のために、界面活性剤での処理の代わりに、水での処理を行った例を合わせて示した。
なお、品種「富有」は、皮が硬くて、亀裂が生じにくい品種である。
[果皮の状態の判定基準]
・a:長い亀裂が多数発生
・b:長い亀裂が発生
・c:小さな亀裂が部分的に発生
・d:シワ状のものが多数発生
・e:シワ状のものが発生
・f:全く変化なし
なお、「亀裂」であると、果肉が見えているが、「シワ状のもの」は、クチクラ膜が裂ける前段階で、果肉が見えない状態を指している。
Figure 2013243959
表2の結果によれば、皮が硬くて、亀裂が生じにくい品種「富有」にもかかわらず、界面活性剤での処理を行うことにより、加熱処理前は全く変化がなかったものの、加熱処理後には、小さな亀裂が発生していることが分かる。
これに対して、界面活性剤での処理の代わりに、水での処理を行った場合には、加熱処理前後を通じて、全く変化がなかったことが分かる。
<実験例2> 品種「平核無」;界面活性剤の濃度条件の検討
実施例1において、第1の工程におけるノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート〕の濃度を、種々変えた〔0ppm(蒸留水のみ使用)、14ppm、57ppm、285ppm、571ppm〕こと以外は、実施例1と同様にして行った。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表3に示す。
Figure 2013243959
その結果、剥皮効果に関して、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤の明確な濃度依存性は認められなかったが、実施例1の結果と合わせると、界面活性剤の濃度が高い方が好ましい傾向が見られた。
<実験例3> 品種「平核無」;重曹添加実験
実施例1において、第2工程の加熱処理を行う際に、熱水中に、重曹を0.1%、1.0%、5.0%ずつ入れて弱アルカリ水溶液としたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表4に示す。
Figure 2013243959
その結果、熱水のみの場合と比較して、重曹を添加した場合においても、剥皮効果に特段の差異はみられなかった。従って、剥皮の比較的容易な品種「平核無」の場合には、重曹を用いるまでの必要がなく、熱水処理で充分であることが分かった。
<実施例2、3> 品種「愛宕」;重曹濃度の検討
(1)第1の工程(界面活性剤での処理工程)
室温下、カキ果実(品種「愛宕」)を、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17〕(実施例2)又はノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート;HLB値15〕(実施例3)の1000ppm水溶液中に一晩(16時間)浸漬した。このとき、pHは特に調整しなかった。
この処理により、カキ果実の果皮最外層に亀裂を生じさせることができた。
なお、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7Dで処理した場合(実施例2)は勿論のこと、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19Dで処理した場合(実施例3)にも、果皮が黒変するなどの果肉傷害の発生は認められず、この両者間で剥皮効果に特段の差異は認められなかった。
(2)第2の工程(加熱処理工程)
上記処理を施されたカキ果実を、表5に示す濃度で重曹を入れた熱水(95〜100℃)3L中に浸漬し、60秒間又は120秒間加熱処理を行った後、直ちにそれぞれ60秒間又は120秒間氷水で急冷した。これにより、それぞれ60秒以内又は120秒以内にカキ果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
(3)第3の工程(酵素処理工程)
プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の5.0%水溶液又はアクレモセルラーゼKM(協和化成社製)の0.2%水溶液を調製し、これを常温(15〜25℃)で容量5Lの水槽に入れ、この水槽中に上記処理を施されたカキ果実を浸漬し、5時間酵素処理を行った。
この結果、アクレモセルラーゼKM(協和化成社製)を用いた場合には、果肉の軟化が見られたが、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)を用いた場合には、そのような軟化は見られなかった。
従って、酵素としては、ペクチナーゼ活性のみで充分であり、セルラーゼ活性があると果肉が軟化し、好ましくないことが分かった。
それ故、以下の工程では、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)だけを用いた。
(4)第4の工程(外果皮除去工程)
上記処理を施されたカキ果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊したカキ果実の外果皮組織を除去した。外果皮組織の残存状態を目視により、5段階の判定基準で評価した。結果を表5に示す。
Figure 2013243959
表5の結果によれば、加熱処理時間を120秒間とすれば、熱水中に重曹を0.1%入れた場合であっても、若干時間を要するものの、剥皮性が許容範囲内であることが分かる。
なお、熱水中に重曹を0.1%入れることにより、第2の工程(加熱処理工程)において、明瞭に亀裂が発生したことが分かった。次に、熱水中に重曹を1.0%入れた場合には、クチクラ層に剥がれが認められた。さらに、熱水中に重曹を5.0%入れた場合には、クチクラ層の下にある石細胞の一部が分離していることが分かった。
従って、そもそもの剥皮性が、品種「平核無」と品種「富有」の中間的な品種「愛宕」の場合には、弱アルカリ水溶液中(重曹中)で加熱処理することが好ましいこと、及び、剥皮効果は重曹の濃度に依存して上がることが、それぞれ分かった。
但し、加熱処理時間が60秒間のときに熱水中に重曹を0.1%入れた場合には、亀裂が発生するものの、第4工程での作業性が劣り、作業効率の点からは必ずしも優れたものではないことが分かった。
<実施例4、5> 品種「富有」
(1)第1の工程(界面活性剤での処理工程)
室温下、カキ果実(品種「富有」)の表面に、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート〕(実施例3)又はノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート〕(実施例4)の原液を希釈せずに塗布した。このとき、pHは特に調整しなかった。
なお、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7Dで処理した場合(実施例4)は勿論のこと、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19Dで処理した場合(実施例5)にも、果皮が黒変するなどの果肉傷害の発生は認めらなかったが、剥皮効果としては、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19Dで処理した場合の方がよかった。
(2)第2の工程(加熱処理工程)
上記処理を施されたカキ果実を、重曹を5.0%入れた熱水(95〜100℃)3L中に浸漬し、60秒間又は120秒間又は240秒間、それぞれ加熱処理を行った後、直ちに加熱処理時間と同じ時間氷水でそれぞれ急冷した。これにより、カキ果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
(3)第3の工程(酵素処理工程)
プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の5.0%水溶液又はアクレモセルラーゼKM(協和化成社製)の0.2%水溶液を調製し、これを常温(15〜25℃)で容量5Lの水槽に入れ、この水槽中に上記処理を施されたカキ果実を浸漬し、5時間酵素処理を行った。
この結果、アクレモセルラーゼKM(協和化成社製)を用いた場合には、果肉の軟化が見られたが、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)を用いた場合には、そのような軟化は見られなかった。
従って、酵素としては、ペクチナーゼ活性のみで充分であり、セルラーゼ活性があると果肉が軟化し、好ましくないことが分かった。
それ故、以下の工程では、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)だけを用いた。
(4)第4の工程(外果皮除去工程)
上記処理を施されたカキ果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊したカキ果実の外果皮組織を除去した。外果皮組織の残存状態を目視により、5段階の判定基準で評価した。結果を表6に示す。
Figure 2013243959
表6の結果によれば、熱水中に重曹を5.0%入れた場合には、加熱処理時間を120秒間以上にすると、剥皮性が向上することが分かる。
従って、剥皮が困難な品種「富有」の場合には、弱アルカリ水溶液中(重曹中)で加熱処理することが好ましいこと、及び、できるだけ高濃度にすることがよいこと、さらには加熱処理時間を長くする(120秒間以上)ことがよいことが分かった。
<実験例4> 品種「富有」;界面活性剤で処理したのち加熱処理後の果皮に生じる亀裂の判定
室温下、カキ果実(品種「富有」)について、表7に示す条件で、第1の工程(界面活性剤での処理工程)と第2の工程(加熱処理工程)を行い、加熱処理後の果皮に生じる亀裂を、亀裂の生じた部位、粗密により、以下の6段階(A〜F)の判定基準で評価した。結果を表7に示す。参考のために、界面活性剤処理を行わなかった例を合わせて示した。
なお、界面活性剤は、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート〕(実施例3)又はノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート〕を用い、一晩(16時間)処理した。
また、加熱処理は、表7に示す条件で120秒間行い、直ちに氷水で120秒間急冷した。これにより、120秒以内にカキ果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
なお、有機溶媒(クロロホルム:メタノール(1:1)溶液)中での超音波処理は、超音波洗浄器VS−P100(アズワン株式会社)を用いて30分間行った。
品種「富有」は、皮が硬くて、加熱処理後に亀裂が生じにくい品種である。
果柄側(ヘタのある側)が特に硬い。果頂側(ヘタの反対側)の方が、亀裂が生じやすい。
[果皮に生じる亀裂の判定基準]
・A:果頂側・密。果柄側・密。ヘタの周辺まで亀裂が多数生じる。
・B:果頂側・密。果柄側・粗。果柄側に長い亀裂が生じるが、数が少ない。
・C:果頂側・密。
・D:果頂側・粗。果頂側に長い亀裂が生じるが、数が少ない。
・E:小さな短い亀裂が部分的に生じた。
・F:全く生じない。
Figure 2013243959
表7の結果によれば、加熱処理前に界面活性剤で処理することにより、有機溶媒中での超音波処理には及ばないものの、有効に亀裂を増やすことができることが分かる。
特に、表7の結果によれば、皮が硬くて、加熱処理後に亀裂が生じにくい品種「富有」の場合には、重曹水溶液中で加熱処理を行うことで、有効に亀裂を増やすことができることが分かる。
従って、酵素液をカキ果実の果皮組織に導入するための経路を確保することができ、その結果、効率よくカキ果実の剥皮を行うことができるものと考えられる。
本発明の技術は、カットフルーツやドライフルーツなどのカキ果実加工品の製造において、一次加工に広く応用が期待される。
さらに、本発明により、既存の果実剥皮の自動化機械装置よりも安価な機械装置の開発、提供が期待される。

Claims (8)

  1. カキ果実を界面活性剤で処理する第1の工程と、第1の工程を行った後のカキ果実を加熱処理する第2の工程と、第2の工程を行った後のカキ果実を酵素処理する第3の工程と、第3の工程を行った後のカキ果実の少なくとも外果皮を除去する第4の工程と、を順次行うことを特徴とする、カキ果実の剥皮方法。
  2. 第1の工程における界面活性剤での処理が、カキ果実を、界面活性剤を含む水に浸漬する処理である、請求項1記載の方法。
  3. 第1の工程で用いる界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. ノニオン系界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる、請求項3記載の方法。
  5. 第2の工程を、第1の工程を行った後のカキ果実を弱アルカリ水溶液中で加熱することによって行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 第3の工程で用いる酵素が、ペクチン質を分解する機能を有するものである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 第4の工程が、第3の工程を行った後のカキ果実を流水中で擦ることにより、カキ果実の少なくとも外果皮を除去するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のカキ果実の剥皮方法により剥皮された剥皮カキ果実。
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