JP2004121242A - カキ果実の剥皮方法、剥皮果実、および包装剥皮果実 - Google Patents

カキ果実の剥皮方法、剥皮果実、および包装剥皮果実 Download PDF

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Abstract

【課題】 刃物を当てて果皮を剥く方法では果肉のロスが大きく生産性が低いため、大量生産に向かなかった。
【解決手段】 本発明は、カキ果実を加熱手段により加熱して、カキ果実に含まれているペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化させ、かつ、カキ果実の角皮に少なくとも亀裂を生じさせる加熱処理工程と、前記加熱処理工程における加熱により角皮2に少なくとも亀裂が生じたカキ果実1Aにペクチン質分解酵素を含浸させてカキ果実の外果皮組織3Aを分解する酵素処理工程と、前記酵素処理工程でペクチン質分解酵素により分解された外果皮組織を除去手段により除去して剥皮果実を得る外果皮除去工程とを備えてなるカキ果実の剥皮方法である。また、前記剥皮方法により得られた剥皮果実、および、この剥皮果実を密封包装した包装剥皮果実である。
【選択図】   図1

Description

 本発明は、刃などを用いないカキ果実の剥皮方法、この方法で得られた剥皮果実、および包装剥皮果実に関するものである。
 カキは我が国において、古くから広く食されてきた果実であるが、その消費形態は生食が中心であり、加工品としては干し柿、あんぽ柿などにとどまっている。近年、生産量の増加に伴い、新たな加工品の開発を含む新規需要の開拓が求められている。
 カキの需要の拡大を阻んでいる一つの要因は、その強固な果皮にあるとも言われている。近年、「剥きやすく、食べやすい果実」が好まれる消費傾向が顕著となり、皮や種が取り除かれて食べやすい大きさにカットされた、いわゆる「カットフルーツ」が市場を拡大しつつある。
 ところで、カキ果実の剥皮に関しては、次の特許文献1に記載された技術が知られている。
特開平7−132075号公報;
 かかる公報開示のカキ果実剥皮方法は、回転駆動の針体をカキ果実に突き刺して回転させ、カキ果実の表面に刃物を当てて果皮を剥くようにしたものである。このように刃物を用いる方法では、剥皮果実の表面に切除面の稜線が多数あらわれて、如何にも「皮を剥いた」といった外観を呈する。また、剥皮に伴う果肉のロスが大きく、生産性が低い。そのうえ、針体の突き刺しにより果肉内部まで傷がつき、その部分から果肉の軟化が進むという問題もある。そのため、この剥皮方法は干し柿やあんぽ柿の製造には適用できても、カットフルーツ用としては不向きであった。また、干し柿やあんぽ柿に加工する場合も、その生産性はあまり高くない。このような状況から、カキ果実を大量に、かつ、省力的に剥皮する技術の開発が強く求められてきた。
 一方で、高温高圧の気体を用いた果実の剥皮方法が次の特許文献2に記載されている。
特開昭59−192040号公報;
 前記公報開示の方法では、カキ果実を収容した密閉耐圧容器内に、294〜882kPaの高圧スチームを吹き込んで容器内を加熱加圧する。そして、所定時間経過後に密閉耐圧容器内を急激に常圧下に戻す。すると、カキ果実内外の急な圧力差により皮層の内側に爆発的沸騰が生じ皮層が膨らんで果肉から剥離し、その後直ちに皮層全体が破裂して果肉から離脱するようになっている。
 ところが、この剥皮方法は、高圧と常圧の間の圧力変化に耐え得る密閉耐圧容器を必要とするため、設備が重大で多額の建設コストがかかり操作にも十分な注意を払わなければならない。また、この剥皮方法に用いられるカキ果実は加熱加圧されても皮層がもとの形を保っているほど強固な皮質を持つ、例えば富有柿などしか適用されない。因みに、刀根早生、平核無柿などのように皮質が比較的弱い品種では加熱加圧時に皮層に割れなどの傷が付くため、傷からの圧力漏れにより常圧降下時でも皮層の爆発的沸騰がほとんど発生せず、大部分の皮層は果肉にくっついたままとなる。
 ところで、カキの外果皮組織は、図4に示すように、外側から順に角皮、表皮、亜表皮、石細胞といった4層で構成されている。このうち、角皮は特に強固であり、果肉の保護に重要な役割を果たしている。角皮は組織が緻密で表面に撥水性を有するのに対し、角皮よりも内側の外果皮組織は比較的組織が疎である。
 本発明者らは、このような角皮を含む外果皮組織の役割について更に精査し、角皮に亀裂を生じさせたり或る程度剥離させた後に、酵素を含浸させることで、内部の外果皮組織に酵素を浸透させることが可能であると推察した。すなわち、外果皮組織の細胞間隙に、ペクチン質分解酵素を作用させて、組織を構成する細胞間の接着を乖離させることにより、刃物などを使うことなく、効率的にカキ果実を剥皮することが可能になると考えたのである。
 他方で、多くの植物はペクチン質分解酵素から自身を守るためにペクチン質分解酵素の活性を阻害する阻害因子を保有しているとされる。かかるペクチン質分解酵素活性阻害因子は植物の種類により化学構造が異なる場合が多いが、例えばポリリン酸エステル、糖たんぱくなどのような高分子化合物であることが報告されている(Y.Aharonowitzら、Novel Microbial Products for Medicine and Agriculture,1989,Society for Industrial Microbiology.)。そして、カキについて、化学構造は同定されていないが同様の阻害因子を保有していると考えられる。このような阻害因子がカキ果実に残存していると、ペクチン質分解酵素によるカキ果実の剥皮作用に悪影響を及ぼすこととなる。
 本発明者らは、このような推察のもとで鋭意研究した結果、(1)カキ果実に対し所定の加熱処理を行うことにより、カキ果実中のペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化するとともに、果肉の特性に影響を与えることなく角皮に少なくとも亀裂を生じさせ得ること、(2)少なくとも亀裂の生じたカキ果実にペクチン質分解酵素を含浸させることで、角皮よりも内側の外果皮組織に当該酵素を浸透させ、外果皮組織を崩壊させられること、(3)酵素処理により崩壊させた外果皮組織は、水流、ブラシ、手洗いなどによる除去処理により容易に除去できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明によれば、カキ果実を加熱手段により加熱することにより、カキ果実に含まれているペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化させ、かつ、カキ果実の角皮に少なくとも亀裂を生じさせる加熱処理工程と、前記加熱処理工程における加熱により角皮に少なくとも亀裂が生じたカキ果実にペクチン質分解酵素を含浸させてカキ果実の外果皮組織を分解する酵素処理工程と、前記酵素処理工程でペクチン質分解酵素により分解された外果皮組織を除去手段により除去して剥皮果実を得る外果皮除去工程とを備えてなるカキ果実の剥皮方法、この方法で得られた剥皮果実、および、包装剥皮果実が提供される。
 本発明方法によれば、ペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化させるとともに角皮だけに亀裂や剥離を生じさせる程度の加熱処理を実行すればよいので、高圧スチームで蒸す場合のような密閉耐圧容器を必要とせず、簡素な設備で簡単に加熱処理を行うことができ、比較的皮質が弱い種類のカキ果実でも適用可能である。そして、角皮以外の外果皮組織が残っている状態で酵素処理するので、ペクチン質分解酵素の影響は外果皮組織に及ぶが、果肉にはほとんど及ばない。従って、剥皮果実は、酵素処理による果肉の軟化がなくカキ特有の硬い食感をそのまま備えており、外果皮組織が均一に剥がれた丸みのある外観を呈する。因みに、外果皮組織を刃物で除去したのちの果肉をペクチン質分解酵素で処理すると、酵素の反応の進行が不均一で、表面が一部えぐれたりし、外果皮組織が均一に剥がれた丸みのある特徴的な外観を得ることができない。すなわち、本発明は、刃物などの切断機械を使用することなく外果皮組織を除去して、喫食可能な状態のカキ剥皮果実を製造することができ、従来無かった新たなカキの加工品を製造することが可能となる。また、果肉はほとんど持ち去られないので、果肉得率が極めて高い。
 前記の製法により得られた剥皮果実は、見た目がよく、カキ特有の食感を残し、食に際して硬い皮を剥く手間の省けるカットフルーツとして好適に提供される。
 そして、気体バリア性を有する合成樹脂フィルムで剥皮果実を密封状に包装したのち所定温度に加熱するようにした場合は、包装後の加熱によりペクチン質分解酵素を失活させて以降の軟化を防ぐとともに包装内部を殺菌することができる。また、合成樹脂フィルムが角皮の代わりをし包装内部を外部と遮断してカビや微生物から果肉を守るため、保存性を向上させることができる。
 本発明の方法が適用されるカキ果実は、カキノキ科に属するDiospyros kakiの学名で知られる植物の果実であり、食用に用いられるものであれば、甘柿、渋柿の区別を問わず、どのような品種のものでもよいが、刀根早生、平核無柿などの品種が特に好ましい。
 本発明に係る酵素処理工程の前処理として行われる加熱処理工程は、カキ果実中のペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化するとともにカキ果実の角皮に亀裂を生じさせる機能を有していれば実施態様を問わないが、果実表面を短時間に加熱処理できる工程であることが望ましい。かかる加熱処理工程により角皮の全面にわたって亀裂を発生させれば、これらの亀裂から角皮よりも内側の外果皮組織にペクチン質分解酵素を含浸させることができる。但し、加熱処理条件は果肉の硬度に影響を与えない範囲であれば、角皮に亀裂を発生させ得る条件を超え、角皮を外果皮組織から剥離させたり離脱させる条件でも構わない。
 加熱処理工程における加熱手段としては、例えば熱水、過熱スチーム、熱風などが挙げられる。そのうち、熱水は容量あたりの顕熱が大きいことから短時間加熱に適しており利用もしやすい。かかる熱水を用いる場合は、80℃から100℃まで、より好ましくは95℃から100℃までの熱水がよい。投入されるカキ果実と熱水の量比率は、水温の低下が5℃以内に抑えられる比率、例えばカキ10kgに対して熱水50〜100Lであることが望ましい。また、加熱処理時間は果肉の軟化を防ぐためにも極力短い方がよく、例えば水温98℃の場合に、30秒から120秒間、より好ましくは60秒から90秒間である。尚、ペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化するには加熱温度と加熱時間とのかねあいになるが、例えば98℃の熱水を用いるときは加熱時間を30秒以上とすることが望ましい。一方、過熱スチームを用いる場合も加熱が目的であるから、高圧容器内で処理する必要はなく、常圧下でカキ果実に過熱スチームを吹き付けて加熱すればよい。
 加熱処理後のカキ果実は、速やかに冷却することで果肉の品質低下を最小限に抑えることができる。カキ果実の冷却は、カキ果実の表面温度を30秒以内に40℃以下まで低下させることができれば、その実施態様は問わないが、通常は果実を流水や氷水に浸漬することで達成される。
 本発明の酵素処理工程で用いられるペクチン質分解酵素は、不溶性のプロトペクチンに作用して植物組織を崩壊させる活性、いわゆるマセレーション活性を有する酵素であれば、微生物が生産するもの、または合成により得られるもののいずれであってもよく、酵素1種のみの使用でも2種以上の併用であっても構わない。
 かかるペクチン質分解酵素としては、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)など酵母および酵母近縁の微生物により生じたプロトペクチナーゼ類(Methods in Enzymology、161 巻、335頁、1988年)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)由来のポリガラクチュロナーゼ類(Biochem. Biophys. Biotech.、 64巻、1337および1729頁、2000年)、トリコスポロン・ペニシラタム由来のポリメトキシガラクチュロナーゼ類(FEBS Letters、 414巻、439頁、1997年)などが挙げられるが、トリコスポロン・ペニシラタムSNO3株の生産するプロトペクチナーゼ−S(Methods in Enzymology、161 巻、335頁、1988年)が特に好ましい。
 本発明の酵素処理工程において、ペクチン質分解酵素は、荷姿が液体または固体のいずれの形態のものでも使用できるが、水、緩衝液、好ましくは蒸留水のように酵素作用に影響を及ぼさない液に酵素を溶解させた酵素含有液として用いることができる。そして、カキ果実にペクチン質分解酵素を含浸させる態様としては、カキ果実の表面に酵素含有液を流したり、吹き付けたり、塗布したり、あるいは酵素含有液中にカキ果実を浸漬するなどの態様が挙げられる。例えば酵素含有水溶液に、角皮が一部剥離したり亀裂を生じたカキ果実を10〜55℃、好ましくは25〜37℃の温度で所定時間浸漬し、角皮の亀裂部分や剥離部分から外果皮組織に酵素を浸透させることにより、外果皮組織を崩壊させることができる。また、カキ果実の表面に酵素含有液を流したり、吹き付けたり、塗布した場合は、そのカキ果実を10〜55℃、好ましくは25〜37℃の温度で、水分の揮発を防ぎながら所定時間、空気中に放置し、酵素反応を進行させることにより、外果皮組織を崩壊させることができる。これらの処理態様は、継続して浸漬させた場合よりも効率がよく、浸漬槽を必要としないために特定の場所をとらず、処理場所を移動させることもできる。
 上記したペクチン質分解酵素は、酵素および対象カキ果実の種類などによるが、通常、カキ果実1kg当たりに10〜50万U (国際単位)、詳しくは20〜40万Uの濃度で使用することができ、酵素含有液は全体として酵素の濃度が前記の範囲となり、かつ、全てのカキ果実が浸漬する量に調製することが好ましい。また、カキ果実に酵素含有液を流下、吹き付け、塗布したりする場合にも前記濃度に調製した溶液を用いることができる。
 尚、角皮よりも内側の外果皮組織にペクチン質分解酵素を含浸できる態様であれば、含浸手順および含浸時間などは任意である。例えば、カキ果実を入れた容器に酵素含有液を加えてもよく、あらかじめ酵素含有液を入れた容器にカキ果実を加えてもよい。また、カキ果実に酵素含有液を流下、吹き付け、塗布したりする場合も含浸手順および含浸時間などは任意である。このようにペクチン質分解酵素を含浸させておく酵素処理時間は特に限定されないが、通常は1時間〜3時間、好ましくは90〜120分とするのが工業的に実施する上で望ましい。
本発明の外果皮除去工程において、酵素処理後の外果皮組織は除去手段により果実表面から除去される。かかる除去手段としては、手間がかからず、外果皮組織を除いた後の果実表面を傷めないものであれば特に限定されないが、例えば手により擦過する例、回転ブラシなどと勢いの強い流水とを組み合わせた機械装置の例などが挙げられる。因みに、流水を用いて外果皮組織を除去すれば、酵素の除去にもつながり果肉が熟しきらずに済む。また、流水中で果実表面を手で拭って外果皮組織を除去することも可能である。回転ブラシを用いる場合は、極めて小さな押し当て力で外果皮組織を除去でき動力費が安価で済む。
 本発明方法により得られたカキの剥皮果実は、そのまま食品として利用できる。更には、剥皮果実に二次加工を施して、各種の食品、例えばゼリー、羊羹などを製造したり、または干し柿、あんぽ柿を製造することができる。
 そのまま食品とする場合には、剥皮果実をアスコルビン酸水溶液などに浸漬した後、空気などの気体を透過させない性質、いわゆる気体バリア性を有する合成樹脂フィルムで密封状に包装する。そして、密封包装された包装剥皮果実を所定温度に加熱する。この所定温度とは、使用したペクチン質分解酵素を不活性化し、包装内に混入している微生物を殺菌し得る温度であり、例えば60℃程度である。かかる加熱に要求される温度は加熱時間とのかねあいで変わる。例えば、長時間加熱の場合は50℃程度でよいが、工業的に望まれる短時間加熱の場合は85℃以上とすることが好ましい。そうして、前記加熱後の包装剥皮果実は、冷蔵保存することで数週間の保存が可能であり、カットフルーツとして市場に流通させることができる。
 以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものでない。
実施例1.
 平核無柿種のカキ果実を1個ずつ、60℃(実施例1−1)、80℃(実施例1−2)、100℃(実施例1−3)の熱水3L中に別々に浸漬し、30秒〜60分間加熱処理した後、流水で急冷した。処理したカキ果実の側部および果頂部(ヘタと反対側の部分)の硬度を、貫入式果実硬度計(木屋製作所製のユニバーサル型に円錐型針頭を装着したもの)により測定した。また、カキ果実の角皮の表面状態を目視で判定し、5段階の角皮剥離スコアを付した。
比較例1.
 実施例1に用いたと同じ平核無柿種のカキ果実について、加熱処理をすることなくブランクとして、果実側部および果頂部の硬度を測定した。
 以上のようにして得られた、実施例1および比較例1のカキ果実硬度を以下の表1に示し、実施例1による角皮剥離スコアを以下の表2に示す。
 表2中の数値は、加熱処理後の角皮の状態により評価される5段階の角皮剥離スコアであり、それぞれ複数個実施したサンプルの平均値を示してある。
 表2における「角皮剥離スコア」の内容は次の通りである。
 1;変化無し。
 2;表面にシワが発生している。
 3;細かい亀裂が生じている。
 4;大きな亀裂が生じている。
 5;角皮が剥離している。
 表1および表2に示すように、60℃熱水処理区では、熱水中に60分間浸漬しても、角皮にほとんど損傷を与えることができなかった。80℃処理区でも角皮の剥離は不十分であった。100℃処理区では、角皮の剥離が顕著であり、30秒間(0.5分間)処理であっても、80℃で10分間処理の場合を上回る角皮の剥離が見られた。100℃処理区では、1分間、2分間と処理時間の経過に伴って角皮の剥離が進行した。参考までに、図1に、100℃で1分間加熱処理したカキ果実1Aの状態を示す。角皮2に細かい亀裂が入り、果肉4の表面を被う外果皮組織3Aは角皮2以外が亀裂部分に露出している。また、一部の角皮2は外果皮組織3Aから剥離している。一方、果実硬度に関しては、いずれの処理区も熱水浸漬時間が長くなるにつれて少しずつ硬度が低下し、また温度が高いほど硬度が低下している。
 以上の結果から、効率的に角皮の亀裂や剥離を生じさせるためには、できるだけ高温で加熱処理することが重要であると考えられる。因みに、100℃の熱水で1分間処理した場合は、果肉の軟化も最小限に抑えられることが示された。
実施例2.
 実施例1−3に記載した方法により、角皮の亀裂や剥離の発生に有効であると判断された100℃での加熱処理をそれぞれ30秒(実施例2−1)、60秒(実施例2−2)、120秒(実施例2−3)行った平核無柿果実に対し、ペクチン質分解酵素であるPectinase-GODO(トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)由来ペクチン質分解酵素、合同酒精製)を用いて、外果皮組織の崩壊試験を行った。
 前記酵素の0.1wt%水溶液を調製し、その650mLを1000mL容ビーカーに入れた。37℃に設定した恒温水槽中で前記の酵素水溶液を予熱した。酵素水溶液が37℃に達した時点で、加熱処理により予め角皮を一部剥離させたカキ果実2個を酵素水溶液中に浸漬した。ビーカーを恒温器に移して37℃に保温し、所定時間(30分、60分、90分、180分)経過後にカキ果実を取りだした。そして、酵素処理したカキ果実を流水中で軽く手で擦ることで、崩壊した外果皮組織を除去した。外果皮組織の残存状態を目視で判定し、5段階の剥皮スコアにより評価した。
実施例3.
 Pectinase-GODOに替え、同じくペクチン質分解酵素であるマセロチームA(リゾプス(Rhizopus)属由来ペクチン質分解酵素、ヤクルト薬品工業製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、加熱済みカキ果実を酵素処理した。
比較例2.
 Pectinase-GODOに替え、非ペクチナーゼ系酵素である精製パパインF(パパイヤ由来タンパク質分解酵素、アサヒビール製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、加熱済みカキ果実を酵素処理した。
比較例3.
 Pectinase-GODOに替え、非ペクチナーゼ系酵素であるスミチームAC(Aspergillus niger由来セルロース分解酵素、新日本化学工業製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、加熱済みカキ果実を酵素処理した。
比較例4.
 Pectinase-GODOに替え、非ペクチナーゼ系酵素であるスミチームC(Trichoderma属由来セルロース分解酵素、新日本化学工業製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、加熱済みカキ果実を酵素処理した。
比較例5.
 加熱処理をしていない平核無柿種のカキ果実を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、カキ果実を酵素処理した。
 表3および表4中の数値は、酵素処理後の外果皮組織の状態により評価される5段階の剥皮スコアであり、それぞれ複数個実施したサンプルの平均値を示してある。
 表3および表4における「剥皮スコア」の内容は次の通りである。
 1;変化無し。
 2;部分的に角皮が剥離できる。
 3;部分的に外果皮組織が崩壊している。
 4;外果皮組織が大部分崩壊している。
 5;外果皮組織が完全に崩壊している。
 マセレーション活性を有するPectinase-GODO(実施例2)およびマセロチームA(実施例3)については、カキ果実の外果皮組織を分解して崩壊させることができ、崩壊した外果皮組織は流水中で軽く手で擦るだけで除去できた。特に、Pectinase-GODOはマセロチームAと比べて低温の加熱処理でも剥皮効果が大であった。
 これに対し、精製パパインF(比較例2)、スミチームAC(比較例3)、スミチームC(比較例4)のように、ペクチン質分解活性を持たない非ペクチナーゼ系の酵素剤を使用した場合は、外果皮組織の状態にほとんど影響を与えなかった。また、比較例5のように、加熱処理されていない収穫時のままのカキ果実は、Pectinase-GODOで処理されても角皮すら影響を受けず表面状態に変化が見られなかった。
 参考までに、実施例2−2のうち、100℃で60秒間加熱処理したカキ果実をPectinase-GODOの0.1wt%水溶液中に90分間浸漬したのちに流水中で手で擦って得た剥皮果実を図2に示す。図に示した剥皮果実1Bでは、外果皮組織が剥離・除去されて、果肉4の表面3Bが全面にわたって露出し、全体として丸みのある外観を呈している。表面3Bは見た目に瑞々しく、質感が刃物を使わずに剥いた桃の表面とよく似ている。また、表面3Bはいくぶん柔らかく口当たりがよいため、カットフルーツとして好適である。
実施例4.
 実施例2で用いたPectinase-GODOについて、更に詳細な酵素処理条件の検討を行った。実施例1−3に記載した方法により、最適化した加熱処理条件(100℃、1分間)で前処理し角皮を剥離させた平核無柿果実を用いて、外果皮組織の崩壊試験を行った。Pectinase-GODOの、0.001wt%、0.01wt%、0.1wt%水溶液を調製し、各酵素水溶液の650mLをそれぞれ1000mL容ビーカーに入れた。37℃に設定した恒温水槽中で前記の酵素水溶液を予熱した。酵素水溶液が37℃に達した時点で、加熱処理により予め角皮を剥離させた果実2個を酵素水溶液中に浸漬した。ビーカーを恒温器に移して37℃に保温し、所定時間(30分、60分、90分、120分、180分)経過後にカキ果実を取りだした。そして、酵素処理したカキ果実を流水中で軽く手で擦ることで、崩壊した外果皮組織を除去した。外果皮組織の残存状態を目視で判定し、5段階の剥皮スコアにより評価した。
実施例5.
 実施例4におけるPectinase-GODOに替えてマセロチームAを用いたことと、100℃で2分間加熱処理したカキ果実を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、カキ果実を酵素処理した。
 実施例4および実施例5の結果を以下の表5に示す。
 表5中の数値は、酵素処理後の外果皮組織の状態により評価される5段階の剥皮スコアであり、それぞれ複数個実施したサンプルの平均値を示してある。
 表5における「剥皮スコア」の内容は次の通りである。
 1;変化無し。
 2;部分的に角皮が剥離できる。
 3;部分的に外果皮組織が崩壊している。
 4;外果皮組織が大部分崩壊している。
 5;外果皮組織が完全に崩壊している。
 表5に示すように、マセロチームAに関しては、酵素濃度を0.1wt%以上とし酵素処理時間を90分以上とすることで剥皮効果を得ることができた。一方、Pectinase-GODOに関しては、酵素濃度を0.01wt%以上とし酵素処理時間を90分以上とすることで、特に優れた剥皮効果が得られている。すなわち、Pectinase-GODOはマセロチームAと比べ低濃度の酵素処理でも剥皮効果が大であった。
実施例6.
 ここでは、剥皮果実の密封包装商品を製造する例を示す。すなわち、実施例1−3において1分間加熱処理したカキ果実を実施例4−3において90分間酵素処理した以外は、実施例4と同様にして剥皮果実を得た。こうして得られたカキの剥皮果実に包丁で十字状の切れ目を入れ、1wt%L−アスコルビン酸溶液に15分間浸漬した。その後、剥皮果実を膜厚50μmのポリエチレン製袋に入れ、業務用卓上バキュームシーラー(シャープ株式会社製SQ−202型)を用いて袋内を脱気しヒートシールにより密封包装して包装剥皮果実を得た。
 包装剥皮果実をそのまま沸騰水中に1分間保持し、袋内面と剥皮果実表面の殺菌、および果実表面に残存している可能性のあるペクチン質分解酵素の不活性化を行った。このように加熱された包装剥皮果実を放冷後に5℃で貯蔵したところ、処理後約10日間経っても、色調の変化、果実硬度の変化、および微生物の繁殖が認められず、カットフルーツとしての良好な品質を保持していた。
実施例7.
 ところで、加熱処理による角皮の亀裂の生じ方は、カキ果実の熟成状態や貯蔵状態により差が現われる。例えば、上記のように100℃の熱水を用いて加熱処理をする場合であっても加熱時間が30秒間を下回ると、角皮に亀裂を生じたにも拘わらず、その後に酵素処理を実施しても外果皮組織の崩壊を生じない場合があった。
 すなわち、平核無柿果実で、(1)適熟期のもの(適熟果、実施例7−1)、(2)適熟期に採取してポリエチレンフィルムで包装し5℃で1ヶ月間貯蔵したもの(貯蔵果、実施例7−2)、(3)完熟のもの(完熟果、実施例7−3)の3区について、それぞれのカキ果実を1個ずつ、100℃の熱水3L中に別々に浸漬し、10秒、30秒、60秒間、それぞれ保持した後、流水で急冷した。加熱処理後のカキ果実の角皮の状態について、5段階の角皮剥離スコアで評価した。これらの評価結果を下記の表6に示す。表6における「角皮剥離スコア」の内容(1〜5)は表2で示した角皮剥離スコアの内容と同じである。
 また、これら加熱処理後のカキ果実を、前述と同様に37℃に保ったPectinase-GODO の0.1wt%水溶液中に浸漬し、そのまま2時間保持した後、外果皮組織を除去するためにカキ果実を流水中で軽く手で擦った。外果皮組織の残存状態を目視で判定し、5段階の剥皮スコアにより評価した。表6における「剥皮スコア」の内容(1〜5)は表5で示した剥皮スコアの内容と同じである。
 表6に示すように、適熟期に収穫された適熟果に30秒を下回る加熱処理(10秒)を施しても、角皮に亀裂などを生じず処理前後で角皮状態は変化していない(実施例7−1)。一方で、適熟期に収穫されて一定期間低温で貯蔵されたカキ果実(実施例7−2)や完熟のカキ果実(実施例7−3)では、30秒を下回る加熱処理(10秒)であっても、角皮に亀裂を生じさせることができている。しかしながら、このような30秒未満の加熱処理により亀裂を生じたカキ果実(実施例7−2、実施例7−3)を酵素処理しても、外果皮組織の崩壊が生じなかったのである。これは、カキ果実中にペクチン質分解酵素の活性を阻害する阻害因子が存在し、この阻害因子を前記の加熱処理条件(100℃、30秒未満)では不活性化できなかったためと考えられる。
実施例8.
 そこで、この実施例では、「カキ果実に含まれる酵素活性阻害因子の存在と、加熱処理による酵素活性阻害因子の不活性化」について確認試験を実施した。
 まず、平核無柿のカキ果実をナイフを用いて剥皮し、剥ぎ取った皮部分(16.2g)に100mM酢酸緩衛液(pH5.5)50mLを加え、水冷しながらポリトロンホモジナイザーで摩砕した。この摩砕物を13000rpm、4℃で40分間遠心分離し、上澄液を得た。この上澄液を透析チューブ(和光純薬製、ダイアリシスメンブラン8)に移したのち、20mM酢酸緩衝液(pH5.5)に対して透析し、チューブ内に残った液を果皮抽出液とした。この果皮抽出液はたんぱく質を含む高分子成分である。ペクチン質分解酵素活性の測定は、ポリガラクチュロン酸カリウム塩(シグマケミカル製)を基質として酵素反応により生成するガラクチュロン酸を、Somogyi−Nelson法により還元糖として定量することで行った。この場合、Pectinase-GODO の粉末を0.001wt%となるように20mM酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解して酵素溶液とした。また、ポリガラクチュロン酸カリウム塩を0.2wt%となるように20mM酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解して基質溶液とした。この基質溶液400μLに前記の酵素溶液50μLおよび果皮抽出液50μLを加えて、37℃で30分間反応させた後、反応液中の還元糖量をSomogyi−Nelson法によりガラクチュロン酸を標準として定量し、1分間に1μモルのガラクチュロン酸を遊離する酵素活性が1U(ユニット)であるとして反応液の酵素活性Uを算出した(実施例8−1)。また、実施例8−1における果皮抽出液50μLの替わりに、この果皮抽出液を予め沸騰水浴中で30分間加熱処理して得た加熱果皮抽出液50μLを用いたこと以外は、実施例8−1と同様にして反応液の酵素活性Uを算出した(実施例8−2)。そして、コントロール(比較例6)については、前記した果皮抽出液50μLまたは加熱果皮抽出液50μLの替わりに20mM酢酸緩衛液(pH5.5)50μLを用いたこと以外、実施例8−1または実施例8−2と同様にして反応液の酵素活性Uを算出した。これらの測定結果を下記の表7および図3に示す。
 表7および図3に示したように、基質溶液と酵素溶液との反応系に果皮抽出液を加えたもの(実施例8−1、図3中のB)では、ペクチン質分解酵素の活性がコントロール(比較例6、的図3中のA)と比べて約1/4に抑制された。また、基質溶液と酵素溶液との反応系に加熱果皮抽出液を加えたもの(実施例8−2、図3中のC)では、ペクチン質分解酵素の活性がコントロールの2/3程度にとどまっている。すなわち、これらの結果より、カキ果実の果皮にペクチン質分解酵素の活性を阻害する阻害因子が存在しており、かかる阻害因子が加熱処理により不活性化されることが示される。
実施例9.
 次に、平核無柿のカキ果実を多数用いて、剥皮状態に及ぼす加熱処理の必要性に関する検討を行った。加熱区のカキ果実は、100℃で60秒間加熱処理を実施して角皮を損傷させたもの(実施例9(実施例2−2に相当))を用いた。また、非加熱区のカキ果実としては、加熱処理のかわりに、(1)金属ブラシを用いて角皮を部分的に損傷させたもの(比較例7)、(2)サンドペーパーを用いて角皮を完全に除去したもの(比較例8)を用いた。前記のようにそれぞれに処理されたカキ果実をPectinase-GODOの0.1wt%水溶液に浸漬し、実施例2−2と同様の方法で酵素処理を行った。3時間の浸漬後にカキ果実を酵素水溶液から取り出し、流水中でカキ果実の表面を軽く手で擦った。カキ果実の外果皮組繊の残存状態を目視で判定し、5段階の剥皮スコアにより評価した。これらの評価結果を下記の表8に示す。表8における「剥皮スコア」の内容(1〜5)は表5で示した剥皮スコアの内容と同じである。
 表8から判るように、所定の加熱処理後に酵素処理を行った場合(実施例9)は外果皮組織が良好に崩壊しているのに対し、加熱処理によらず機械的に、角皮を部分的に損傷させたもの(比較例7)と、角皮を完全に除去したもの(比較例8)のいずれも、酵素処理による外果皮組織の崩壊が起こらなかった。すなわち、このことは、既述したようにカキ果実にペクチン質分解酵素活性の阻害因子が存在し、加熱区(実施例9)のカキ果実では角皮の損傷と同時に、前記阻害因子の加熱による不活性化が生じたことを裏付けている。
実施例10.
 実施例1〜7および実施例9における酵素処理の含浸態様では、酵素水溶液中に継続して浸漬させる態様をとった。そこで、この実施例10では、実施例1−3に記載した方法により最適化した加熱処理条件(100℃、1分間)で加熱処理し角皮を剥離させた平核無柿果実に対し、前記の「継続浸漬」とは異なる含浸態様で酵素処理を実施し、カキ果実の外果皮組織の崩壊を評価した。
 すなわち、Pectinase-GODOの0.1wt%水溶液を調製し、この酵素水溶液650mLをそれぞれ1000mL容ビーカーに入れた。37℃に設定した恒温水槽中で前記の酵素水溶液を予熱した。酵素水溶液が37℃に達した時点で、加熱処理により予め角皮を剥離させたカキ果実に対し、以下に述べる各試験区の含浸態様で各区2個のカキ果実を酵素処理した。
 試験区(1):カキ果実を酵素水溶液中に約10秒間浸漬したのち直ちに酵素水溶液から取りだし、一つのカキ果実は密閉容器(実施例10−1)に、もう一つのカキ果実は開放容器(実施例10−2)に入れ、それぞれを37℃で2時間保持した。
 試験区(2):酵素水溶液を収容したガラス製噴霧瓶で、カキ果実1個あたり約1.5mLの酵素水溶液をカキ果実の表面に均一に噴霧した後、一つは密閉容器(実施例10−3)に、もう一つは開放容器(実施例10−4)に入れ、それぞれを37℃で2時間保持した。
 試験区(3):果頂部を上にしてカキ果実を置き、カキ果実1個あたり約2mLの酵素水溶液を果頂部より滴下し、カキ果実の表面に均一に流下させた後、一つは密閉容器(実施例10−5)に、もう一つは開放容器(実施例10−6)に入れ、それぞれを37℃で2時間保持した。
 試験区(4):カキ果実を酵素水溶液中に浸漬し、浸漬を継続した状態で37℃で2時間保持した(実施例4−3)。
 前記した試験区(1)〜(4)の酵素処理後に、それぞれのカキ果実を流水中で軽く手で擦ることで、崩壊した外果皮組織を除去した。外果皮組織の残存状態を目視で判定し、5段階の剥皮スコアにより評価した。これらの評価結果を下記の表9に示す。表9における「剥皮スコア」の内容(1〜5)は表5で示した剥皮スコアの内容と同じである。
 表9に示したように、試験区(1)〜(3)のいずれの含浸態様で酵素反応を行った場合でも、密閉容器中にカキ果実を入れて37℃で保存した場合には、同じ時間(2時間)酵素水溶液中で浸漬を継続した場合(試験区(4))と同程度(スコア5)に、外果皮組織の崩壊が認められ、ほぼ完全に剥皮することができた。一方、開放容器に果実を入れて37℃に保持した場合には、外果皮組織の表面が乾燥し、所定時間(この例では2時間)が経過した後でも、外果皮組織の崩壊が部分的に認められる(スコア2)に留まった。以上の結果より、酵素反応は、必ずしもカキ果実を酵素溶液中に浸漬したままにしておく必要はなく、一定量の酵素溶液を加熱処理済のカキ果実の表面に展着させ、かつ、カキ果実表面からの水分の蒸発を防ぐことができれば、外果皮組織を崩壊し得ることが明らかになった。
実施例11.
 前記した実施例10−1,10−2のように寸時の浸漬後に酵素水溶液から取り出して保存した場合の保存温度条件について、更に詳細な検討を行った。
 実施例1−3に記載した方法により100℃、1分間の加熱処理条件で角皮を剥離させた平核無柿果実を、前記の実施例10−1,10−2に従って調製したPectinase-GODOの0.1wt%水溶液に浸漬し、約10秒間保持したのち直ちに酵素水溶液から取り出した。このように処理した多数のカキ果実を10の試験区にわけ、それぞれを密閉容器(実施例11−1,11−3,11−5,11−7,11−9)と開放容器(実施例11−2,11−4,11−6,11−8,11−10)に入れるとともに、10℃(実施例11−1,11−2)、15℃(実施例11−3,11−4)、20℃(実施例11−5,11−6)、25℃(実施例11−7,11−8)、30℃(実施例11−9,11−10)の各温度で保存し、所定時間(4時間、6時間、24時間)経過後に、カキ果実を流水中で軽く手で擦ることで、崩壊した外果皮組織を除去した。外果皮組織の残存状態を目視で判定し、5段階の剥皮スコアにより評価した。これらの評価結果を下記の表10に示す。表10における「剥皮スコア」の内容(1〜5)は表5で示した剥皮スコアの内容と同じである。表中において、「−」印(実施例11−7,11−9)は4時間経過時点で剥皮スコアの最高点が得られたため以後の評価を省略したことを示している。
 表10に示したように、4時間の処理時間(保存時間)において、外果皮組織が崩壊してきれいに剥皮できたものは、25℃区と30℃区で密閉容器に入れたもの(実施例11−7,11−9)のみであった。20℃以下の温度区では20℃以上の区に比べてカキ果実表面からの水分の蒸発が少ないため、組織の崩壊の進行が若干認められている。そのうち、10℃区ではカキ果実の表面に水分が保たれているものの、低温のため酵素反応が十分に進行していないようであった。そして、密閉容器に収容したものであれば時間の経過に伴って酵素反応が進行しており、24時間後には10℃、15℃、20℃のいずれの温度区においても外果皮組織が崩壊し、きれいに剥皮できている。
 以上の結果から、カキ果実の表面が乾かない状態(密閉容器内)で温度を25℃以上にして保存すれば、酵素反応が効率よく進行し、4時間以内に外果皮組織を崩壊させて剥皮できることがわかる。無論、保存時間をさらに長くすれば、10〜20℃の低温でも十分に酵素反応が進行することが示されている。一方、開放容器内で保存した場合は、保存温度が高いほど果皮が乾きやすくなるため、外果皮組織が崩壊しにくいことが判る。
本発明の実施例に係る加熱処理後のカキ果実を示す一部断面を含む平面図である。 本発明の実施例に係る酵素処理により得た剥皮果実を示す一部断面を含む平面図である。 本発明の実施例に係るペクチン質分解酵素活性の抑制作用を示すグラフである。 一般的なカキ果実の果皮を示す断面構成図である。
符号の説明
 1A カキ果実
 1B 剥皮果実
 2  角皮
 3A 外果皮組織
 3B 表面
 4  果肉

Claims (3)

  1. カキ果実を加熱手段により加熱して、カキ果実に含まれているペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化させ、かつ、カキ果実の角皮に少なくとも亀裂を生じさせる加熱処理工程と、前記加熱処理工程における加熱により角皮に少なくとも亀裂が生じたカキ果実にペクチン質分解酵素を含浸させてカキ果実の外果皮組織を分解する酵素処理工程と、前記酵素処理工程でペクチン質分解酵素により分解された外果皮組織を除去手段により除去して剥皮果実を得る外果皮除去工程とを備えてなるカキ果実の剥皮方法。
  2. 請求項1に記載のカキ果実の剥皮方法により得られた剥皮果実。
  3. 請求項2に記載の剥皮果実を、気体バリア性を有する合成樹脂フィルムで密封状に包装した後、密封包装された剥皮果実を所定温度に加熱してなる包装剥皮果実。
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