JP5916123B2 - バラ科に属する植物の果実の剥皮方法 - Google Patents

バラ科に属する植物の果実の剥皮方法 Download PDF

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本発明は、リンゴ、ナシなどのバラ科に属する植物の果実の剥皮方法に関するものである。
近年、果実類の消費が伸び悩んでおり、その背景の一つに、食べる前に皮を剥くことを敬遠する消費者の心理があることが指摘されている。事実、皮を剥いてすぐに食べられる状態にしたカットフルーツの市場は近年拡大を続けている。
しかし、カット加工の工程は、ほとんどを人手に頼っている。とりわけ、剥皮の工程には多くの労力を要している。
そこで特に需要の高いカキ果実を対象に、剥皮工程を効率化しようとする剥皮技術が種々開発されている(特許文献1、特許文献2)。
一方、これまでリンゴ、ナシなどのバラ科に属する植物の果実に関しては、カンキツ類の果実と異なって、酵素剥皮技術は特に提供されてこなかったが、近年のカットフルーツの市場の拡大に伴い、より効率的な剥皮技術が要望されている。
特許第3617042号公報 特開2008−86258号公報
本発明は、上記要望に副い、リンゴ、ナシなどのバラ科に属する植物の果実を効率よく剥皮する方法を提供することを目的とするものである。
リンゴ果実、ナシ果実などは、カキノキ科カキノキ属(Diospyros)に属するカキの果実とは異なり、バラ科に属する植物の果実であって、カキ果実とは果実の形態が異なっており、また皮の厚さ、皮を構成する成分や微細構造等も異なっている。
従って、リンゴ果実、ナシ果実などについて、カキノキ科カキノキ属(Diospyros)に属するカキの果実の剥皮技術をそのまま適用することはできない。
これらバラ科の果実には、クチクラ層を有している品種が多数ある。
即ち、いずれの果実も、外果皮のうちの最外層の角皮は、ワックス(クチクラ内ワックス)、難分解性のクチン、クタンからなるクチクラ層と、その外側のワックス層(クチクラ外ワックス)と、から構成されている。
このクチクラ層は、果実の表面を保護している強固な膜であることから、剥皮するには、このクチクラ層を弱体化する必要がある。
本発明者らは、上記要望に応えるべく、鋭意検討を重ねた結果、バラ科に属する植物の果実を弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理することにより、そのクチクラ層を弱体化することができることを見い出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に係る本発明は、バラ科に属する植物の果実を、弱アルカリ水溶液を存在させた95〜100℃の加熱水を用いて加熱処理した後に冷却する工程と、前記工程を行った後のバラ科に属する植物の果実の少なくとも外果皮を除去する工程と、を順次行うことを特徴とする、バラ科に属する植物の果実の剥皮方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、請求項1における加熱処理した後に冷却する工程と、外果皮を除去する工程と、の間に、酵素処理する工程を行うことを特徴とする、請求項1記載の方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、酵素処理工程を、界面活性剤の存在下に行う、請求項2記載の方法を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、請求項3に記載の方法を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、ノニオン系界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる、請求項4記載の方法を提供するものである。
請求項6に係る本発明は、弱アルカリ水溶液とするために重曹を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項7に係る本発明は、外果皮を除去する工程が、これに先立つ工程を行った後のバラ科に属する果実を流水中で擦ることにより、バラ科に属する植物の果実の少なくとも外果皮を除去するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項8に係る本発明は、バラ科に属する植物の果実が、リンゴ果実又はナシ果実である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法を提供するものである。

本発明によれば、リンゴ、ナシなどのバラ科に属する植物の果実を効率よく剥皮することができる。
本発明によれば、人手に頼ることなく、リンゴ、ナシなどのバラ科に属する植物の果実を効率よく剥皮することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、バラ科に属する植物の果実の剥皮方法に関し、バラ科に属する植物の果実を弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程と、前記工程を行った後のバラ科に属する植物の果実の少なくとも外果皮を除去する工程と、を順次行うことを特徴とするものである。
「バラ科」は、「バラ亜科」(バラ属、オランダイチゴ属など)、「ナシ亜科」(リンゴ属、ナシ属など)、「サクラ亜科」(サクラ属など)、「シモツケ亜科」(ヤナギザクラ属など)の4つの亜科に分かれている。各亜科で、花或いは果実の形態が異なっている。
本発明は、このようなバラ科に属する植物の果実のうち、特に「ナシ亜科」(リンゴ属、ナシ属など)に属する植物の果実の剥皮に好適に用いられる。
具体的には、本発明は、「ナシ亜科」のリンゴ属に属するリンゴの果実や、「ナシ亜科」のナシ属に属するナシの果実を主な対象とするが、バラ科に属する植物の果実であれば、これらの果実に限定されるものではない。
ここでリンゴとしては、例えば、「ふじ」、「つがる」、「王林」、「ジョナゴールド(J.G.)」、「陸奥」、「北斗」、「千秋」、「紅玉」、「もりのかがやき」などの品種を挙げることができる。また、果肉が赤い「御所川原」、「紅の夢」などの赤肉品種、果実が小さい「アルプス乙女」などのヒメリンゴ、果肉が赤く果実が小さい「メイポール」などの赤肉ヒメリンゴなどの系統を挙げることもできる。これらのなかでも、リンゴ品種「紅玉」の果実は、クチクラ層が最も薄い品種の一つであることが分かる。リンゴは、周年供給可能であることから、広く利用が期待される。
次に、ナシとしては、ニホンナシ、セイヨウナシ、チュウゴクナシの3つがある。
このうちニホンナシとしては、例えば、「幸水」、「豊水」、「新高」、「新興」などの赤ナシの品種を挙げることができる。また、「二十世紀」、「秋麗」などの青ナシの品種を挙げることができる。
次に、セイヨウナシとしては、例えば「ラ・フランス」、「ル・レクチェ」、「チャピン」、「バートレット」などの品種を挙げることができる。また、「カリフォルニア」、「ロイヤル・レッド・ハーディ」などの果皮が赤い品種を挙げることができる。
また、チュウゴクナシとしては、例えば「鴨梨(ヤーリー)」、「慈梨(ツーリー)」などの品種を挙げることができる。また、「白梨」などの野生種の品種を挙げることができる。
<弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程>
本発明では、まずバラ科に属する植物の果実を、弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程を行う。
なお、バラ科に属する植物の果実は、この工程を施すに先立って、水流コンベアなどを用いて予め洗浄しておくとよい。
本工程では、バラ科に属する植物の果実を弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する。本工程を行うことにより、クチクラ層を均一に弱体化することができる。これにより、果皮全体を均一に弱体化することができる。また、この加熱処理により、果実中のペクチン質分解酵素活性阻害因子を不活性化させることができる。
本工程における加熱処理としては、弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理することが必要であり、バラ科に属する植物の果実を均一に加熱するために、弱アルカリ水溶液を存在させた加熱水を用いて行うことが好ましい。
弱アルカリ水溶液を存在させた加熱水を用いた加熱処理としては、例えば弱アルカリ水溶液を存在させた熱水中への浸漬により行ってもよいし、弱アルカリ水溶液を存在させたスチーム(水蒸気)を吹き付けることにより行ってもよい。しかし、この加熱処理は、果肉の軟化を防止する観点から、短時間行うことが好ましい点を考慮すると、短時間加熱により適した、弱アルカリ水溶液を存在させた熱水中への浸漬により行うことが最も好ましい。
なお、弱アルカリ水溶液とするための水としては、水道水、蒸留水、脱イオン水、硬度の高い水、など如何なる水を用いることもできる。
この場合の弱アルカリ水溶液を存在させた熱水の温度は、80〜100℃、好ましくは95〜100℃である。
加熱処理時間は、30〜240秒間、好ましくは45〜180秒間、より好ましくは60〜120秒間である。
加熱処理時間は、果肉の軟化を防止する観点から、より短時間とすることが好ましいが、品種により好適な加熱処理時間が異なることから、これを考慮して行うべきであり、1回の加熱処理では不充分な場合には、加熱処理時間を長く設定するとよい。例えば、「王林」のように剥皮の困難な品種の場合には、例えば少なくとも120秒以上に設定するとよい。
加熱処理を行った後は、速やかに冷却することにより、果肉の品質低下を最小限に抑えることができる。冷却は、バラ科に属する植物の果実の表面温度を、速やかに40℃以下程度まで低下できるように行うことが望ましい。冷却手段は特に制限されないが、加熱終了直後に、果実を流水中に置いたり、果実を氷水に浸漬したりすることが好ましい。冷却処理は、少なくとも加熱時間と同時間することが好ましい。
本発明では、この加熱処理を、重曹などの弱アルカリ水溶液の存在下に行うことが必要である。これにより、クチクラ層を均一に弱体化することができ、その結果、果皮全体を均一に弱体化することができることから、バラ科に属する植物の果実の剥皮がより行い易くなるため、好ましい。
ここで「弱アルカリ性」とは、pHでいうと、pH8.0を超え、11.0以下を指す。
ここでは、高pHとする必要はなく、「弱アルカリ性」で充分に、次の外果皮除去工程を行うことにより、剥皮可能である。「弱アルカリ性」でなく、例えばpH11.0を超える「アルカリ性」であると、剥皮後果実の品質が劣るため、好ましくない。また、pHが6.0以上、8.0以下の「中性」であると、用いることによる効果が得られないため、好ましくない。
弱アルカリ水溶液とするために、重曹(炭酸水素ナトリウム)が好ましく用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。重曹は、通常、pH8付近を示す。弱アルカリ水溶液でなく、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いた場合には、濃度が低い場合であっても、果皮や果肉が褐変したり、黒変したりする傾向がある。
このとき用いる重曹の濃度は、0.1〜8.0%、好ましくは0.5〜7.0%、より好ましくは0.8〜6.0%である。ここで重曹の濃度が0.1未満であると、効果が充分でない。一方、重曹の濃度が8.0%を超えると、常温(室温)での溶解が困難で好ましくない。
一般に重曹の濃度が高い方が、多くの品種に適用可能であり、さらに、より短時間での加熱で充分な処理効果が得られる。
ここでは、バラ科に属する植物の果実を、80〜100℃、好ましくは95〜100℃の温度の弱アルカリ水溶液中に浸漬したりすることにより、弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程を行う。さらにその後、速やかに冷却することが好ましい。
このような弱アルカリ水溶液存在下での加熱処理、特に重曹沸騰水溶液中での加熱処理を行うことにより、単なる水を用いての加熱処理より、より一層効果的に、果皮全体を均一に弱体化させることが可能となる。
なお、バラ科に属する植物の果実のクチクラ層は、カキ果実などのクチクラ層と比べると、より果肉から分離しやすい品種が存在する。例えば、「紅玉」、「ジョナゴールド(J.G.)」、「もりのかがやき」などのリンゴの品種や、「メイポール」などのヒメリンゴなどは、この「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」に続いて、後述する「少なくとも外果皮を除去する工程」を行うだけで、剥皮することができる。
また、必要に応じて〔例えば、「王林」などのリンゴの品種のように、「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」だけでは、果皮を均一に弱体化させることが困難な場合などに〕、この「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」と、「少なくとも外果皮を除去する工程」との間に、以下に述べる「酵素処理する工程」を挟むことができる。
<酵素処理する工程>
上記したように、「王林」などのリンゴの品種のように、「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」だけでは、果皮を均一に弱体化させることが困難であって、果皮に亀裂を生じさせることができなかったり、或いは亀裂を生じさせることが困難な場合などには、「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」と、「少なくとも外果皮を除去する工程」との間に、「酵素処理する工程」を行うとよい。
「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」と、「少なくとも外果皮を除去する工程」との間に、「酵素処理する工程」を行うことにより、「弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程」により作出された亀裂を通じて、「酵素処理する工程」により酵素液を、バラ科に属する植物の果実の果皮組織に導入することができ、これにより、これを崩壊状態にさせることができる。従って、本工程を行わない場合と比べて、剥皮をより容易化することができたり、或いは剥皮がしにくい品種をより剥皮しやすくすることができる。
この工程(酵素処理工程)では、バラ科に属する植物の果実の細胞壁と細胞間に含まれているペクチン質を分解する機能を有する、酵素ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)を用いるが、市販のペクチナーゼ酵素剤には、セルラーゼ活性を有するものがあることから、そのようなペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いてもよい。
即ち、この工程(酵素処理工程)では、ペクチナーゼ活性のみで剥皮可能であるが、ペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いてもよい。
但し、ペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いた場合には、剥皮後の果肉がペクチナーゼ活性のみを有する酵素剤よりも軟化する。従って、ペクチナーゼ活性のみを有する酵素剤か、或いはペクチナーゼ活性を主体とする酵素剤が適している。
ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)としては、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)など酵母及び酵母近縁微生物由来のプロトペクチナーゼ類の他、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)由来のポリガラクチュロナーゼ類、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)由来のポリメトキシポリガラクチュロナーゼ類などを挙げることができる。
これらの中でも、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)など酵母及び酵母近縁微生物由来の「プロトペクチナーゼ類」が好ましい。そのようなものとして具体的には、例えば、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)を挙げることができる。これは、基本的にはペクチナーゼ活性のみを有する酵素剤である。
また、ペクチナーゼ活性以外にセルラーゼ活性を有する酵素剤としては、例えば、Peelzym(Novozymes社製)のようにペクチナーゼ活性を主体とし、セルラーゼ活性も有する酵素剤を挙げることができる。
なお、アクレモセルラーゼKM(協和化成社製)のように、ペクチナーゼ活性を有するもののセルラーゼ活性の強い酵素剤の場合には、剥皮後の果肉の軟化が大きく、場合によっては果肉にえぐれが出るなどの障害が発生するため、好ましくない。
この工程(酵素処理工程)において、ペクチン質を分解する機能を有する酵素、ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)は、水、緩衝液、好ましくは蒸留水のように酵素作用に影響を及ぼさない液に、酵素を溶解させた酵素含有液として用いることができる。なお、水としては、水道水、蒸留水、脱イオン水、硬度の高い水、など如何なる水を用いることもできるが、上記したように、蒸留水が最も好ましい。
酵素含有液中の酵素の濃度については特に制限はないが、ペクチナーゼ活性が100U/ml以上になるように希釈した酵素含有液を用いることが好ましい。より好ましくは、ペクチナーゼ活性が100〜150U/mlになるように希釈した酵素含有液、特に好ましくは、ペクチナーゼ活性が100〜120U/mlになるように希釈した酵素含有液を用いる。
この酵素処理工程における酵素処理の態様としては、上記酵素含有液を、バラ科に属する植物の果実の表面に吹き付けたり、塗布したり、或いは、上記酵素含有液中にバラ科に属する植物の果実を浸漬するなどの態様が挙げられるが、均一処理の観点から、上記酵素含有液中にバラ科に属する植物の果実を浸漬する態様が最も好ましい。
この酵素処理工程における酵素処理は、10〜55℃、好ましくは25〜37℃の温度で行うとよい。
従って、10〜55℃、好ましくは25〜37℃の温度とした上記酵素含有液中に、バラ科に属する植物の果実を浸漬することが最も好ましい。
この酵素処理工程における酵素処理の時間は特に制限されないが、通常は、8〜24時間、好ましくは10〜20時間、より好ましくは14〜18時間である。
なお、この酵素処理工程では、界面活性剤を添加する必要はないが、例えば、剥皮し難い品種のような場合には、必要に応じて、次のように界面活性剤を添加することも可能である。
<界面活性剤存在下での酵素処理>
即ち、必要に応じて、この酵素処理工程を、界面活性剤の存在下に行うことができる。
界面活性剤存在下での酵素処理としては、バラ科に属する植物の果実を、界面活性剤を含む酵素含有液中に浸漬するか、或いは、界面活性剤を含む酵素含有液をバラ科に属する植物の果実に塗布することにより行えばよいが、これに制限されるものではない。
界面活性剤存在下での酵素処理としては、他に特段の必要がないのであれば、水槽での処理を可能とする、バラ科に属する植物の果実を、界面活性剤を含む酵素含有液中に浸漬する方法がより好ましい。
バラ科に属する植物の果実を、界面活性剤を含む酵素含有液に浸漬する場合における、界面活性剤を含む酵素含有液中の界面活性剤の濃度は、300〜20000ppm、好ましくは500〜15000ppm、より好ましくは800〜12000ppmである。
なお、この場合、リンゴ品種「もりのかがやき」などのように、剥皮性が比較的よいか、或いはそれほど悪くない品種では、界面活性剤を含む酵素含有液中の界面活性剤の濃度は、300〜2000ppm、好ましくは500〜1500ppm、より好ましくは800〜1200ppmで充分である。
一方、剥皮性の悪いリンゴ品種「王林」などでは、界面活性剤を含む酵素含有液中の界面活性剤の濃度は、600〜20000ppm、好ましくは800〜15000ppm、より好ましくは900〜12000ppmとする。
浸漬時間は、前記したように、8〜24時間、好ましくは10〜20時間、より好ましくは14〜18時間である。
用いる界面活性剤としては、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤のHLB値としては、10〜19が好ましく、より好ましくは13〜18であり、さらに好ましくは15〜17である。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられるが、特にポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばデカグリセリンモノラウリレート、デカグリセリンモノカプリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、炭素数8〜22のものを用いることができ、特に炭素数8〜14のものが好ましく、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸などを挙げることができる。
上記の界面活性剤としては、食品添加物として認められているものが好ましい。そのようなものとして、具体的には例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)や、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート;HLB値15)などを挙げることができる。これらはいずれも、植物油由来のグリセリンと植物油由来の脂肪酸を用いて製造された、食品添加物として認められたものである。
なお、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7Dよりも、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19Dの方が、疎水性が高く、クチクラ層のワックス成分への効果が異なることから、果実の品種等によって、それぞれに適した界面活性剤を使い分けることが好ましい。
なお、この界面活性剤存在下での酵素処理工程においては、特に重曹(炭酸水素ナトリウム)などのアルカリを用いてpHを調整する必要はなく、pH無調整で処理可能である。
また、酵素処理や界面活性剤存在下での酵素処理等を行うことにより、果実に褐変が生じるような場合には、酵素液に既存の方法でビタミンCを添加することで剥皮後果実の褐変を抑制することが出来る。
上記したように、弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程に引き続いて、酵素処理工程(必要とあらば、界面活性剤存在下での酵素処理工程)を行うことにより、果皮全体を均一に弱体化させることができる。
これらの工程は、従来のような人手に頼った果皮の傷付け作業ではなく、そのため作業を簡略化することができる。また、機械化する場合であっても、特殊な装置が不要となることから、従来の機械装置よりもコストを低くすることができるメリットがある。
<外果皮除去工程>
本発明においては、バラ科に属する植物の果実を弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程に引き続いて、必要に応じて、酵素処理工程、さらに必要に応じて、界面活性剤存在下での酵素処理工程を行い、さらに前記工程を行った後のバラ科に属する植物の果実の少なくとも外果皮を除去する工程と、を順次行う。
この工程(外果皮除去工程)を行うことにより、それまでの工程を施すことによって崩壊状態となっているバラ科に属する植物の果実の果皮組織およびその直下にある加熱処理の影響を受けた果肉を、バラ科に属する植物の果実表面から除去することができる。
本発明は、バラ科に属する植物の果実を弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理することにより、そのクチクラ層を弱体化することができることを見い出した結果なされたものであるが、この加熱処理により、バラ科に属する植物の果実の果皮組織のみならず、その直下にある果肉も熱の影響を受けることになる。
ところが、熱の影響を受けた果肉部位にはいくつかの問題点がある。一つ目は、色調が濃くなり、外観面で品質が劣るものとなる。二つ目は、熱によりペクチンによる果肉細胞間の接着が緩くなり、果肉の硬度(硬さ)が低下し、食感が劣化する。三つ目は、加熱により香りの散逸、さらに、加熱臭付加による、香りの品質の劣化(フレッシュ感の低下・喪失)である。加熱臭は、生の果実には無く、熱により新たに生成した香りであるが、果実に関してはマイナスに評価されることが一般的である。
しかし、上記したように、本発明によれば、外果皮除去工程により、果皮組織だけでなく、品質面で劣る、熱の影響を受けた果肉部位も同時に除去することができる。
そのため、本発明では、加熱処理を行っているものの、加熱処理の利点を生かしつつ、加熱処理による悪影響を抑えて、品質の良好な剥皮果実を得ることができるという特色がある。
この工程(外果皮除去工程)で行う外果皮除去手段としては、それまでの工程を施すことによって崩壊状態となっているバラ科に属する植物の果実の果皮組織を、バラ科に属する植物の果実表面から除去しうる手段であれば特に制限されず、例えば、手で擦過したり、手袋を嵌めて擦過したり、回転ブラシを用いたり、或いはこれらと流水を組み合わせるなどの手段の他、公知の外果皮除去装置を用いて行うことなどが挙げられる。
これらの中でも、手間がかからず、しかもバラ科に属する植物の果実の果皮組織を除去した後のバラ科に属する植物の果実表面を傷めない点から、流水下に手で擦過したり、或いは流水下に回転ブラシを用いて外果皮を除去することが最も好ましい。流水下に除去処理を行うことにより、酵素液の除去も合わせて行うことができ、果肉が熟しきらずに済むというメリットもある。
本発明においては、上記した工程を、順次行うことが必要であって、この順序でないと目的を達成することはできない。
本発明の方法では、上記した弱アルカリ水溶液存在下での加熱処理工程を沸騰水槽中で、界面活性剤存在下での酵素処理工程を含めて酵素処理工程を恒温水槽中で、それぞれ行うことができる。
このように本発明の方法では、弱アルカリ水溶液存在下での加熱処理工程と、界面活性剤存在下での酵素処理工程を含めて酵素処理工程を、いずれも水槽中で行うことができることから、工程毎に溶液を変更することにより、水槽を転用することも可能である。また、各槽間を結合する搬送装置を設けることにより、連続的に処理することも可能である。
上記のようにして、効率よくバラ科に属する植物の果実の剥皮を行うことができる。
このようにして得られたバラ科に属する植物の剥皮果実は、そのまま食品として用いることができる。
即ち、本発明の製法により得られた、バラ科に属する植物の剥皮果実は、皮を剥いてすぐに食べられる状態のカットフルーツとなる。
さらに、本発明の製法は、乾燥加工、糖蔵等の加工時の最初の剥皮処理としても利用することができる。
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1> リンゴ果実の剥皮
(1)弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程
表1に示すリンゴ果実を、重曹を5.0%の割合で含む熱水(95〜100℃)3L中に浸漬し、60秒間(紅玉)又は120秒間(紅玉以外全て)加熱処理を行った後、直ちに氷水で急冷した。これにより、60秒以内(紅玉)又は120秒以内(紅玉以外全て)にリンゴ果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
(2)外果皮除去工程
上記処理を施されたリンゴ果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊したリンゴ果実の外果皮組織およびその直下にある加熱処理の影響を受けた果肉を脱離除去した。
このときの果皮脱離の作業性(剥皮性)を次の6段階の判定基準で評価した。結果を表1に示す。
なお、レベル0〜2を「不可」(許容範囲外)と判定し、レベル3〜5を「可以上」(許容範囲内)と判定した。
[果皮脱離の作業性の判定基準]
・0:不可;全く剥けない。
・1:不可;部分的に剥ける。部位により全く剥けない。
・2:不可;強引に力を入れて長時間(3分以上)かければ剥けるレベル。
・3:可;果皮脱離に、レベル5よりも力と時間が必要。所要時間2分程度。
・4:良;果皮脱離に、レベル5よりも力が必要。所要時間1分程度。
・5:優;果皮脱離が短時間・容易。所要時間30秒以内。
なお、最高評価(レベル5)の基準としては、酵素で剥皮する方法が既に開発されているカキ果実において、剣山を用いて果皮の傷付け処理をした後、加熱処理、酵素処理、外果皮除去を行った場合であって、最も容易に果皮脱離を行うことができた場合を想定し、これと同等の力と時間で、短時間に、かつ、容易に果皮脱離を行うことができた場合をレベル5としている。
表1の結果によれば、水を用いての加熱処理ではいずれも全く剥けなかったのに対して、弱アルカリ水溶液(重曹)存在下に加熱処理する工程を行うことにより、特にリンゴ品種「紅玉」の果実では、所要時間1分程度で、容易に果皮脱離を行うことができており(レベル4)、剣山を用いてカキ果実の果皮の傷付け処理を行ったレベル5に近い剥皮性が得られたことが分かる。また、リンゴ品種「ジョナゴールド(J.G.)」、「もりのかがやき」や、リンゴ系統「赤肉」の果実では、所要時間2分程度で、果皮脱離を行うことができている(レベル3)。このことは、見方を変えると、剣山を用いて1個1個処理する必要がなく、連続的な溶液処理も可能な本願発明は、効率よくリンゴ果実の剥皮を行うことができるものであると言うことができる。
但し、リンゴ品種「王林」の果実については、弱アルカリ水溶液(重曹)存在下での加熱処理によっては、全く剥けなかった。そこで、以下の実施例2において、酵素処理工程を行った。
<比較例1> リンゴ果実の剥皮
実施例1において、重曹を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして行った。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表1に示す。
表1からは、この比較例1のように重曹を用いずに、熱水のみで処理した場合には、全く剥けなかったことが分かる。これは、加熱処理において、弱アルカリ水溶液存在下に行わなかったことから、果皮全体を均一に弱体化することができなかったからであると考えられる。
Figure 0005916123
ここで重曹含有水のpHについて説明すると、重曹含有水は、溶解直後の非加熱の状態のものであると、pH8.0〜8.5を示す。ちなみに炭酸ナトリウムは、同じくpH11.0〜12.0を示し、セスキ炭酸ナトリウムは、同じくpH10.0付近を示す。
重曹は、加熱すると、炭酸ナトリウムと二酸化炭素と水に分解される。そして、200〜300℃での固形物への加熱ならば、ほぼ全量、炭酸ナトリウムにまで変化するが、本願発明のような100℃程度までの水溶液中での加熱ならば、加熱で最終的には、セスキ炭酸ナトリウムの水溶液に似た状態(pH10.0付近)になる。従って、本願発明のような、100℃程度までの水溶液への加熱で、重曹溶液がpH11.0を超える強アルカリになることはありえないことが分かる。したがって、処理に適したpHを実現するためには、重曹を選択することが極めて重要である。
<実施例2> 各種リンゴ果実の剥皮
(1)弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程
表2に示すリンゴ果実を、重曹を5.0%の割合で含む熱水(95〜100℃)3L中に浸漬し、60秒間(紅玉)又は120秒間(紅玉以外全て)加熱処理を行った後、直ちに氷水で急冷した。これにより、60秒以内(紅玉)又は120秒以内(紅玉以外全て)にリンゴ果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
(2)酵素処理工程
プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の5%水溶液4Lを調製し、これを常温で容量5Lの水槽に入れ、この水槽中に上記処理を施されたリンゴ果実を、その全面が浸るようにして浸漬し、一晩(16時間)酵素処理を行った。
(3)外果皮除去工程
上記処理を施されたリンゴ果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊したリンゴ果実の外果皮組織およびその直下にある加熱処理の影響を受けた果肉を脱離除去した。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表2に示す。
なお、リンゴ系統「赤肉」については、実施例1において既にレベル3のデータが得られていたので、この実施例2では行わなかった。
表2の結果によれば、さらに酵素処理を行うことにより、実施例1では全く剥けなかったリンゴ品種「王林」の果実についても、所要時間2分程度で、果皮脱離を行うことができる(レベル3)ようになったことが分かった。
但し、表2の結果によれば、リンゴ品種「ふじ」については、さらにプロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)を用いての酵素処理を行ったにもかかわらず、レベル2(不可;強引に力を入れて長時間(3分以上)かければ剥けるレベル。)に止まったままであった。
そこで、以下の実施例3において、界面活性剤存在下での酵素処理工程を行った。
Figure 0005916123
<実施例3> リンゴ果実の剥皮
実施例2において、酵素処理工程を、界面活性剤存在下で行ったこと以外は、実施例2と同様にして行った。
酵素処理工程として具体的には、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の5%水溶液4Lを調製し、さらにこの酵素液中に、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)(実施例1)を終濃度1000ppm(0.1%)となるように添加し、これを常温で容量5Lの水槽に入れると共に、この酵素界面活性剤混合液中に上記処理を施されたリンゴ果実を浸漬し、一晩(16時間)、界面活性剤存在下で酵素処理を行った(pH無調整)。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表3に示す。
なお、リンゴ系統「赤肉」については、実施例1において既にレベル3のデータが得られていたので、実施例2と同様に、この実施例3でも行わなかった。
表3の結果によれば、さらに界面活性剤存在下で酵素処理を行うことにより、実施例2ではレベル2(不可;強引に力を入れて長時間(3分以上)かければ剥けるレベル。)に止まったままであった、リンゴ品種「ふじ」の果実についても、所要時間2分程度で、果皮脱離を行うことができる(レベル3)ようになったことが分かった。
Figure 0005916123
<実施例4> リンゴ品種「紅玉」の果実の剥皮
実施例3において、酵素として、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の代わりに、Peelzym(Novozymes社製)又はアクレモセルラーゼKM(協和化成社製)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして行った。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表4に示す。
表4の結果によれば、リンゴ品種「紅玉」の果実について、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の代わりに、Peelzym(Novozymes社製)又はアクレモセルラーゼKM(協和化成社製)を用いた場合にも、所要時間1分程度で、果皮脱離を行うことができる(レベル4)ようになったことが分かった。
Figure 0005916123
<実施例5> リンゴ品種「ふじ」の果実の剥皮
実施例3において、酵素として、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の代わりに、Peelzym(Novozymes社製)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして行った。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表5に示す。
表5の結果によれば、リンゴ品種「ふじ」の果実について、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の代わりに、Peelzym(Novozymes社製)を用いた場合にも、所要時間2分程度で、果皮脱離を行うことができる(レベル3)ようになったことが分かった。
Figure 0005916123
<実施例6> セイヨウナシ品種「チャピン」の果実の剥皮
(1)弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程
セイヨウナシ品種「チャピン」の果実を、重曹を5.0%の割合で含む熱水(95〜100℃)3L中に浸漬し、30秒間加熱処理を行った後、直ちに氷水で急冷した。これにより、30秒以内にセイヨウナシ品種「チャピン」の果実の表面温度を40℃以下に低下させた。
(2)酵素処理工程
プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の3%水溶液4Lを調製し、さらにこの酵素液中に、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)(実施例1)を終濃度1000ppm(0.1%)となるように添加し、これを常温で容量5Lの水槽に入れると共に、この酵素界面活性剤混合液中に上記処理を施されたセイヨウナシ品種「チャピン」の果実を浸漬し、60分間、界面活性剤存在下で酵素処理を行った(pH無調整)。
(3)外果皮除去工程
上記処理を施されたセイヨウナシ品種「チャピン」の果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊したセイヨウナシ品種「チャピン」の果実の外果皮組織を脱離除去した。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表6に示す。
表6の結果によれば、セイヨウナシ品種「チャピン」の果実についても、所要時間1分程度で、果皮脱離を行うことができる(レベル4)ことが分かった。
Figure 0005916123
<実施例6> 界面活性剤の濃度の検討
実施例3において、リンゴ果実として、リンゴ品種「ふじ」の果実を用い、かつ、界面活性剤の濃度を種々変えたこと以外は、実施例3と同様にして行った。
具体的には、まずリンゴ品種「ふじ」の果実を、重曹を5.0%の割合で含む熱水(95〜100℃;pH8.0〜10.0)3L中に浸漬し、120秒間加熱処理を行った後、直ちに氷水で急冷した。これにより、120秒以内にリンゴ果実の表面温度を40℃以下に低下させた〔弱アルカリ水溶液存在下に加熱処理する工程〕。
次いで、プロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)の5%水溶液4Lを調製し、さらにこの酵素液中に、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤〔リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)(実施例1)を、表7に示す種々の濃度となるように添加し、これを常温で容量5Lの水槽に入れると共に、この酵素界面活性剤混合液中に上記処理を施されたリンゴ品種「ふじ」の果実を浸漬し、一晩(16時間)、界面活性剤存在下で酵素処理を行った(pH無調整)〔酵素処理工程〕。
その後、上記処理を施されたリンゴ品種「ふじ」の果実を取り出し、流水中で軽く擦った。
これにより、崩壊した、リンゴ品種「ふじ」の果実の外果皮組織およびその直下にある加熱処理の影響を受けた果肉を脱離除去した〔外果皮除去工程〕。
果皮脱離の作業性(剥皮性)の評価結果を表7に示す。
表7の結果によれば、リンゴ品種「ふじ」の果実について、界面活性剤存在下で酵素処理する場合、界面活性剤の濃度が100ppmであると、レベル2(不可;強引に力を入れて長時間(3分以上)かければ剥けるレベル。)に止まったままであったが、界面活性剤の濃度が1000ppmになると、所要時間2分程度で、果皮脱離を行うことができる(レベル3)ようになることが分かった。
Figure 0005916123
本発明の技術は、リンゴやナシなどのバラ科に属する植物の果実加工品の製造において、一次加工に広く応用が期待される。
さらに、本発明により、既存の果実剥皮の自動化機械装置よりも安価な機械装置の開発、提供が期待される。

Claims (8)

  1. バラ科に属する植物の果実を、弱アルカリ水溶液を存在させた95〜100℃の加熱水を用いて加熱処理した後に冷却する工程と、前記工程を行った後のバラ科に属する植物の果実の少なくとも外果皮を除去する工程と、を順次行うことを特徴とする、バラ科に属する植物の果実の剥皮方法。
  2. 請求項1における加熱処理した後に冷却する工程と、外果皮を除去する工程と、の間に、酵素処理する工程を行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 酵素処理工程を、界面活性剤の存在下に行う、請求項2記載の方法。
  4. 界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、請求項3に記載の方法。
  5. ノニオン系界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる、請求項4記載の方法。
  6. 弱アルカリ水溶液とするために重曹を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 外果皮を除去する工程が、これに先立つ工程を行った後のバラ科に属する果実を流水中で擦ることにより、バラ科に属する植物の果実の少なくとも外果皮を除去するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. バラ科に属する植物の果実が、リンゴ果実又はナシ果実である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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