JP2013236801A - 表皮材の縫合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電糸の断線を極力回避しつつ表皮材を作成することにある。
【解決手段】ミシン20にセンサ部材28を設けて、ミシン針22の進行方向前方に配置する導電糸14を検出したのち、表皮ピースの送り量を変更して、ミシン針22の刺し通す位置を初期設定位置とは異なる導電糸14の配置位置以外の位置に変更可能とした。
【選択図】図3

Description

本発明は、導電糸を備えた表皮材の縫合方法(ミシンによる縫合方法)に関する。
この種の表皮材として、車両用シートの表皮材として使用可能な表皮材が公知である(特許文献1を参照)。
この表皮材は、織物や編物等の面状部材であり、複数の導電糸が構成糸として織り込まれる(又は編み込まれる)。複数の導電糸は、適宜の間隔で並列配置しつつ、それぞれ表皮材の一端から他端にかけて線状に延びる。そして複数の導電糸を通電状態とすることにより表皮材をヒータとして機能させることができる。また表皮材(導電糸)を静電容量式センサの電極として機能させることもできる。
ここでこの種の表皮材は、典型的に複数の表皮ピースを袋状に縫合することで形成される。例えば織物や編物等の原反を所定形状に切り分けて表皮ピースを作成したのち、隣り合う表皮ピースの縁部同士を重ね合わせる。そしてミシンに対して表皮ピースを所定の送り量で相対移動させつつ、表皮ピースに対して所定のピッチでミシン針を刺し通すことにより、重ね合わせた部分を縫合する(複数のミシン目からなる縫合線を形成する)。
特開2011‐243307号公報
ところで公知技術では、複数の導電糸が、表皮材の一端から他端にかけて線状に配置する(表皮ピースの端部に配置する)。このため表皮ピースの縁部同士をミシンにて縫合する際に、複数のミシン目からなる縫合線が導電糸と交差するなどして、ミシン針にて導電糸が断線することがあった。
もっとも導電糸間の間隔を考慮しつつミシン目の大きさなどを予め決定することで、導電糸の配置位置とは異なる位置にミシン針を刺し通すこともできる。しかし表皮材の伸縮により、導電糸同士の間隔が変化する(導電糸が想定外の位置に配置される)などして、ミシン針による導電糸の断線を確実に防止することは困難であった。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、導電糸の断線を極力回避しつつ表皮材を作成することにある。
上記課題を解決するための手段として、第1発明の表皮材の縫合方法は、複数の表皮ピース同士をミシンにて縫合して、車両用シート等の車両構成部材を覆う表皮材を形成する方法である。
本発明では、複数の表皮ピースの少なくとも一枚の表皮ピースに、一方向に向けて線状に延びる複数の導電糸を並列配置する。そしてミシンに対して表皮ピースを所定の送り量で相対移動させつつ、ミシンのミシン針を表皮ピースに所定のピッチで刺し通すことにより、複数のミシン目からなる縫合線を導電糸に対して交差状に形成する。この種の構成では、導電糸の断線を極力回避しつつ表皮材を作成できることが望ましい。
そこで本発明では、上述のミシンにセンサ部材を設けて、ミシン針の進行方向前方に配置する導電糸を検出したのち、表皮ピースの送り量を変更して、ミシン針を刺し通す位置を、初期設定位置とは異なる導電糸の配置位置以外の位置に変更可能とした。
例えば本発明では、センサ部材にて、ミシン針を刺し通す予定位置に導電糸があることを事前に検出したのち、表皮ピースの送り量を変更して、ミシン針の刺し通す位置を、導電糸の配置位置以外の位置に変更できる(導電糸の断線をより確実に回避できる)。
本発明に係る第1発明によれば、導電糸の断線を極力回避しつつ表皮材を作成することができる。
車両用シートの斜視図である。 ミシン一部と、表皮材一部を破断して示す斜視図である。 ミシン一部と表皮材一部の概略断面図である。 ミシン一部と表皮材一部の上方図である。 ミシン一部の概略図である。 ミシン一部と、縫合途中の表皮材を破断して示す図であり、(a)は、送り量変更前の図であり、(b)は変更後の図である。 ミシンの動きを示すフローチャート図である。 変形例1にかかるミシン一部と縫合途中の表皮材の断面図であり、(a)は、送り量変更前の図であり、(b)は変更後の図である。 変形例2にかかるミシン一部と、表皮材を破断して示す図である。 変形例3にかかる表皮材を破断して示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図10を参照して説明する。各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付す。
図1の車両用シート2は、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすフレーム部材(4F,6F,8F)と、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材に被覆の表皮材(4S,6S,8S)とを有する。
ここでフレーム部材4F,6F(図示省略)は、それぞれシート外形に倣って形成されたアーチ状の枠部材である。またクッション材4P,6P(図示省略)は、乗員を弾性的に支持する部材であり、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)にて形成できる。
[シートバック]
そしてシートバック6は、シートクッション4に対して起倒可能に連結する部材であり、上述の構成(6S,6P,6F)と、天板部11と、一対のサイド部12を有する(図1を参照)。
天板部11は、シートバック6中央の平坦部位であり、乗員の胴体部(背部や腰部等)に対面可能である。またサイド部12は、天板部11の側方に配置してシートバック6の着座側に突出する部位である。
本実施例では、クッション材6Pを、フレーム部材6F上に配置したのち、表皮材6S(詳細後述)で被覆する。表皮材6Sの中央には、複数の導電糸14がそれぞれシート幅方向に並列配置する。これにより表皮材6Sを、静電容量式センサの電極やヒータとして機能させることができる。
そして表皮材6Sは、複数の表皮ピース(11P,12P等)をミシン20で袋状に縫合することで作成される(作成方法は後述)。このため表皮材6Sには、複数のミシン目16からなる縫合線17がシート上下に形成される。この種の構成では、表皮ピースの縁部同士をミシン20にて縫合する際に、複数のミシン目16からなる縫合線17が導電糸14と交差するなどして、ミシン針22にて導電糸14が断線することが懸念される。
そこで本実施例では、後述の構成により、導電糸14の断線を極力回避しつつ表皮材6Sを作成することとした。以下、各構成について詳述する。
(表皮材)
表皮材6Sは、布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)からなる面状部材であり、導電糸14と、非導電糸を有する(図1〜図4を参照)。
導電糸14(通電可能な線材)として、炭素繊維のフィラメント、ステンレスなどの金属線、メッキ線材を例示できる。導電糸14の径寸法などは特に限定しないが、表皮材6Sの構成糸として織り込み又は編み込み可能な径寸法を有することが望ましい。
また非導電糸(符号省略)は、導電糸14よりも通電性に劣る繊維製の線材(フィラメント、紡績糸、延伸糸及び伸縮加工糸)である。この種の繊維として、植物系及び動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維及びこれらの混繊繊維を例示できる。
本実施例では、表皮材6Sを織編する際に、表皮材6Sの構成糸の一部として複数の導電糸14を織り込む(又は編み込む)ことができる。また表皮材6S(不織布や皮革)の一面に複数の導電糸14を取付けることもできる。
ここで隣り合う導電糸14同士の間隔寸法はシート構成に応じて適宜変更可能である。例えば表皮材6Sにヒータ機能を持たせる場合、導電糸14同士の間隔寸法を60mm以内に設定できる。また表皮材6Sにセンサ(電極)機能を持たせる場合においても、導電糸14同士の間隔寸法を60mm以内に設定することで、好適なセンサ機能(静電容量)を備えることとなる。
そして導電糸14が、表皮材6Sの一端から他端にかけて(一方向に向けて)線状に延びつつ複数並列して配置する。なお典型的なシート構成では、表皮材6Sの裏面(クッション材を臨む面)に各導電糸14を配置することで(表側から目視困難とすることで)、シートの見栄えを好適に維持できる。
そして本実施例の表皮材6Sは、複数の表皮ピース(第一ピース11P,第二ピース12P等)を袋状に縫合して形成できる(図1及び図2を参照)。
第一ピース11Pは、天板部11を被覆可能な表皮ピースであり、複数の導電糸14を備える。複数の導電糸14は、第一ピース11Pの一端から他端にかけて(シート幅方向に向けて)線状に延びつつ並列配置する。
第二ピース12Pは、サイド部12を被覆可能な表皮ピースである。そして後述するように、第一ピース11Pの端部と第二ピース12Pの端部を重ね合わせたのち、ミシン20(後述)にて縫合することで表皮材6S(袋状)を作成する。
[シートクッション]
ここでシートクッション4は、上述の構成(4S,4P,4F)と、天板部11aと、一対のサイド部12aを有する(図1を参照)。天板部11aは、シートクッション4中央の平坦部位であり、乗員の臀部や脚部に対面可能である。またサイド部12aは、天板部11aの側方に配置して着座側に突出する部位である。
そしてシートクッション4においても、表皮材4Sを、複数の表皮ピース(第一ピース11p,第一ピース12p等)を袋状に縫合して形成する。
本実施例にかかるシートクッション4の構成(導電糸14,ミシン目16等)は、シートバック6と略同一である。このためシートクッション4については、シートバック6と対応する部位について対応する符号を付すなどして詳細な説明を省略する。
[ミシン]
ミシン20は、略横U字状(正面視)の装置であり、内部機構(図示省略)と、ミシン針22と、押え部材24と、送り量調節機構26と、釜部材(図示省略)と、センサ部材28(後述)を有する(図2〜図5を参照)。
ここで内部機構(図示省略)は、制御部と、モータにて回転する主軸と、主軸の回転を検知するロータリエンコーダとを有する。
そして押え部材24とミシン針22(後述)が、ミシン20上部に配設されて、表皮材6Sの表側に対面可能に配置する。押え部材24は、略L字状(側面視)の平板部材であり、中央に、ミシン針22が侵入可能な溝部25を有する(図3及び図4を参照)。
また送り量調節機構26(後述)と釜部材が、ミシン20下部に配設されて、表皮材6Sの裏側に対面可能に配置する(図5を参照)。そして釜部材は、下糸を供給するための円筒部材であり、表皮材6S裏面においてミシン針22に対面状に配置する。
(ミシン針)
ミシン針22は、上糸を供給する針材であり、クランク機構を介して主軸に連結する(図2〜図4を参照)。本実施例のミシン針22は、主軸の回転により上下動(表皮材6Sに近接又は離間)して、上死点と下死点の間を変位可能である。
上死点のミシン針22は、表皮材6Sから最も離間して配置する。また下死点のミシン針22は、押え部材24の中央(溝部25内)から突出して表皮材6Sを刺し通しつつ、上糸を下糸に交差可能に配置する。そして本実施例では、ロータリエンコーダにてミシン針22の位置を検出可能であり(例えばクランク軸の位置にてミシン針22の位置を検出可能であり)、ミシン針22の位置情報を制御部に伝達できる。
(送り量調節機構)
送り量調節機構26は、ミシン20に対して表皮材6Sを相対移動させる(送り出す)機構である。本実施例の送り量調節機構26は、上軸A1の偏心カム2gと、連結ロッド10gと、調節機構(3g,4g,6g,8g)と、送り歯機構(12g,14g,16g,18g,20g)を有する。上軸A1上は、主軸と同期して回転可能な軸状部材であり、偏心カム2gは、上軸A1の径方向に突出する円筒状の部位(一部径方向に突出)である。
また連結ロッド10gは、略長方形状の平板部材であり、一端が二又に分かれて偏心カム2gに相対移動可能に係合し、他端が送り歯機構(後述)に回転可能に連結する。そして連結ロッド10gの途中(一端寄り)に調節機構(後述)が連結する。
また送り歯機構は、回動アーム12gと、送り軸14gと、送り台アーム16gと、送り台18gと、送り歯20gを有する。回動アーム12g(梃状)は、連結ロッド10gの上下動を送り軸14g(軸材)の回転運動に変換する部材である。また送り台アーム16g(梃状)は、送り軸14gの回転運動を、送り台18g(略長方形状の平板材)のスライド移動(表皮材6Sの送り方向に向けてのスライド移動)に変換する部材である。そして送り台18gの先端には送り歯20gが配置する。送り歯20gは凹凸状の部位であり、表皮材6Sに当接可能である。
本実施例では、上軸A1(偏心カム2g)の回転にて連結ロッド10gを上下動させる。このとき連結ロッド10gが、偏心カム2g(突出部分)の押圧により下方に移動し、偏心カム2g(周面)に対面することで上方に移動する。そして連結ロッド10gの上下動を、複数の部材(12g,14g,アーム16g)を介して送り台18gのスライド移動(表皮材6Sの送り方向に向けてのスライド移動)に変換できる。
そして調節機構は、連結ロッド10gの上下移動量(送り台18gのスライド移動量)を調節する機構であり、二又リンク3gと、調節台4gと、コロ軸6gと、レバー軸8gを有する。
調節台4gは、略長方形状の平板材であり、下側に開口する凹部を有する。また二又リンク3gの一側(二又状)は、調節台4gの上部に連結し、他側は、連結ロッド10gの途中(一端寄り)に連結する。この二又リンク3gを介して、調節台4gが、連結ロッド10gの上下動に同期して上下動することとなる。そしてレバー軸8g(軸状)は外部から回転操作可能であり、一側がクランク状とされており、先端にコロ軸6g(軸状)を有する。
本実施例では、コロ軸6gを、調節台4g下部(凹部)に嵌装することで、調節台4gの上下移動を規制可能に配置する。このときコロ軸6gを上方に移動させて、調節台4gの上下移動幅を少なくすることにより、連結ロッド10gの上下移動幅が小さくなる。このように連結ロッド10gの上下移動幅を小さくすることで、複数の部材(12g,14g,アーム16g)を介して送り台18gのスライド移動量を小さくできる。
またコロ軸6gを下方に移動させて、調節台4gの上下移動幅を多くすることにより、連結ロッド10gの上下移動幅が大きくなる。このように連結ロッド10gの上下移動幅を大きくすることで、複数の部材(12g,14g,アーム16g)を介して送り台18gのスライド移動幅を大きくできる。
そして本実施例では、送り歯26bと押え部材24にて表皮材6Sを把持したのち、ミシン針22(下死点)を表皮材6Sに差し通して上糸と下糸を交差させる(図5及び図6を参照)。
つぎにミシン針22を上方に移動させつつ、送り歯26bを送り方向に移動させることで、ミシン20に対して表皮材6Sを送り出すことができる。このとき送り量調節機構26(レバー軸8gの操作)により、表皮材6Sの送り量を増減できる。このように表皮材6Sの送り量を調節することで、ミシン目16の縫い目ピッチ(1針分の長さ寸法)を調節することができ、このとき縫い目ピッチは、隣り合う導電糸14同士の隙間間隔よりも小さいことが望ましい。例えばミシン目16の縫い目ピッチ(一針分の長さ寸法)を4.5±1.0mmに設定することで、縫合線17の縫合強度を好適に維持できる。
なお縫製方法(ステッチ形式)は特に限定しないが、本縫い、単環縫い、二重環縫い、縁飾り縫い及び扁平縫いを例示できる。
(センサ部材)
センサ部材28は、導電糸14の有無を検出可能な機構を有し、磁気型、X線放射型、静電容量型の機構を例示できる(図2〜図4及び図6を参照)。
本実施例では、ミシン20にセンサ部材28を設けて、ミシン針22の進行方向前方に配置する導電糸14を検出可能とする。なおセンサ部材28の配置位置は特に検定しないが、典型的に表皮材6Sの表面側と裏面側の少なくとも一方に配置できる。
[表皮ピースの縫合作業]
図2及び図6を参照して、複数の表皮ピース(第一ピース11P,第一ピース12Pなど)をミシン20にて縫合しつつ袋状の表皮材6Sを作成する。
本実施例では、第一ピース11Pの端部と、第二ピース12Pの端部を重ね合わせたのち、この重ね合わせ部分をミシン20にて縫合する(縫合線17を形成する)。このとき各表皮ピース(重ね合わせ部分)をミシン20に対して相対移動させて、各導電糸14に交差する方向に向けて送り出す。そしてミシン針22を所定ピッチで表皮材6Sに差し通して、ミシン針22の上糸を、釜部材の下糸に交差させることにより、複数のミシン目16からなる縫合線17を形成する。
(初期設定位置の設定)
ところで上述の構成では、縫合線17が各導電糸14に交差状に形成されるため、ミシン針22にて導電糸14が断線しないよう配慮すべきである。
例えば本実施例の第一ピース11Pでは、隣り合う導電糸14同士(第一導電糸14aと第二導電糸14b)の間隔寸法を20mmに設定する。またミシン目16の第一縫い目ピッチP1(初期設定)を4mmとして導電糸同士の間隔の1/5に設定する。
そして第一導電糸14aの配置位置において、ミシン針22を上死点に配置する(ミシン針22の初期設定位置を設定する)ことにより、ミシン針22による第一導電糸14aの断線を回避する。そしてミシン針22が5針分進むことで(20mm進むことで)、第二導電糸14bの配置位置に到達したとき、ミシン針22が同じく上死点に配置することとなる。
しかし上述の構成では、第一ピース11Pが伸縮するなどして導電糸同士の間隔が変化することにより、第二導電糸14bが想定外の位置に配置されることがある。
そこで本実施例では、ミシン20にセンサ部材28を設けて、ミシン針22の進行方向前方に配置する導電糸(第二導電糸14b)を検出する。そして表皮ピース(P1,P2)の送り量を変更して、ミシン針22を刺し通す位置を初期設定位置とは異なる位置(導電糸の配設位置以外の位置)に変更可能とした。
(縫合ステップ)
図7のステップS1にて、各表皮ピースの縫合作業を開始する。そしてセンサ部材28により、ミシン針22から2.5針分(10mm)前方位置における導電糸(第二導電糸14b)の有無を検出する(図6(a)を参照)。
そしてステップS2にて、センサ部材28にて第二導電糸14bを検出したのち、ロータリエンコーダにて実際のミシン針22(図6(a)の実線で示すミシン針)の位置を検出する。
このとき実際のミシン針22が上死点にある場合、第二導電糸14bの配置位置(2.5針分進んだ位置)におけるミシン針22の位置は下死点(表皮材6Sを差し通した状態)にある。このように実際のミシン針22が下死点にない場合、ミシン針22が導電糸14を断線すると判定される(図7のステップS3にてNoと判定される)。
そこでステップS4にて、送り量調節機構26を介して各表皮ピースの送り量を多くする。このとき本実施例では、二針分のミシン目16の第二縫い目ピッチP2を5.0mmとしたのち、送り量を初期設定状態(第一縫い目ピッチP1)に戻す(図6(b)を参照)。
こうすることで第二導電糸14bの配置位置においてミシン針22が上死点に配置することとなり、第二導電糸14bを跨ぎつつ(断線を回避しつつ)、表皮ピースの縫合を継続できる(図7のステップS5)。
これとは異なり導電糸14から2.5針分(10mm)手前で、実際のミシン針22が下死点にあるとする(図6(a)では図示を省略)。
このとき第二導電糸14bの配置位置(2.5針分進んだ位置)におけるミシン針22の位置は上死点(表皮材6Sから最も離間した状態)にある。このように実際のミシン針22が下死点にある場合、ミシン針22が導電糸14を断線しないと判定される(図7のステップS3にてYesと判定される)。このため各表ピースの送り量を変更することなく縫製を続行することで導電糸14を回避できる(図7のステップS5)。
以上説明したとおり本実施例では、センサ部材28にて、ミシン針22を刺し通す予定位置に導電糸14があることを事前に検出する。そして表皮ピースの送り量を変更して、ミシン針22の刺し通す位置を導電糸14の配設位置とは異なる位置に変更できる(導電糸14の断線を極力回避できる)。
また本実施例では、複数のミシン目16の大きさを変更することができる。これにより(単数のミシン目16だけを大幅に大きくする場合と比較して)表皮材6Sの縫合強度と、縫合線17の見栄えを好適に維持できる。
このため本実施例によれば、導電糸14の断線を極力回避しつつ表皮材6Sを作成することができる。
[変形例1]
ミシン20の制御方法は、上述の構成のほか、各種の構成をとることができる。
例えば変形例1においても、第二導電糸14bから2.5針分(10mm)手前のミシン針22の位置を検出する(図8(a)を参照)。
このとき実際のミシン針22が下死点と上死点の間(移行途中)にある場合、第二導電糸14bの配置位置(2.5針分進んだ位置)においてもミシン針22が上死点と下死点の間(移行途中)にある。
このように第二導電糸14bの配置位置においてミシン針22が上死点にないとき、第二導電糸14bがミシン目16の中央からずれることとなる(例えば本変形例では中央から1.0mmずれるとする)。そこで本変形例では、表皮材6Sの送り量を多くして、二針分のミシン目16の第二縫い目ピッチP2を4.5mmとしたのち、送り量を初期設定状態(第一縫い目ピッチP1)に戻す(図8(b)を参照)。こうして第二導電糸14bの配置位置においてミシン針22を上死点に配置することにより、第二導電糸14bをミシン目16の中央に配置する(安定性良く配置する)ことができる。
[変形例2]
本変形例においても、第二導電糸14bから2.5針分(10mm)手前のミシン針22の位置を検出する(図6(a)及び図9を参照)。
このとき実際のミシン針22が上死点にある場合、第二導電糸14bの配置位置(2.5針分進んだ位置)におけるミシン針22は下死点にある(ミシン針22が導電糸14を断線すると判定される)。
そこで本変形例では、表皮材6Sの送り量を少なくして、二針分のミシン目16の第二縫い目ピッチP2を3.5mmとしたのち、送り量を初期設定状態(第一縫い目ピッチP1)に戻す(図9を参照)。こうして第二導電糸14bの配置位置においてミシン針22を上死点に配置することにより、第二導電糸14bを跨ぎつつ(断線を回避しつつ)、表皮ピースの縫合を継続することができる。
[変形例3]
本変形例においても、第二導電糸14b手前のミシン針22の位置を検出する(図6(a)及び図10を参照)。
本変形例では、第二導電糸14bを跨ぐ時だけ表皮材6Sの送り量を多くして、一針分のミシン目16を大きくする。例えば第一縫い目ピッチP1が2.0mmであったところを第二縫い目ピッチP2に変更して6.0mmとする(図10を参照)。こうして第二導電糸14bの配置位置においてミシン針22を上死点に配置することにより、第二導電糸14bを跨ぎつつ(断線を回避しつつ)、表皮ピースの縫合を継続することができる。
本実施形態の表皮材の縫合方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、導電糸14の構成(配設数や配置位置や隙間寸法など)、ミシン目16の構成(縫い目ピッチや形成数など)、縫合線17の構成(形成数や配置位置など)を具体的な数値等を示しつつ説明したが、これら各構成を限定する趣旨ではない。例えば導電糸14は、シート幅方向に限らず、シート上下方向シート前後方向などの各種の方向に延設することができる。また縫合線17は、導電糸14に直交状に交差してもよく、また傾斜状に交差することもできる。
(2)また本実施形態では、ミシン20の構成を例示したが、ミシンの構成を限定する趣旨ではない。例えばセンサ部材にて、ミシン針の2.5針前方よりもさらに前方の導電糸を検出することができ、またミシン針の2.5針前方よりも手前の導電糸を検出することもできる。またミシン針と釜部材を複数配置するなどして、ダブルステッチ等の複数ステッチを形成することもできる。
(3)また本実施形態では、第一ピース11P(11p)に導電糸14を配設する例を説明したが、導電糸14の配設箇所を限定する趣旨ではない。導電糸は、シート構成に応じて、第二ピース等の各種表皮ピース(複数又は単数の表皮ピース)に配設できる。
(3)また本実施形態では、シートクッションとシートバックを一例に説明したが、本実施例の構成は、ヘッドレスト等の各種シート構成部材や車両構成部材に適用できる。
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4S,6S 表皮材
11P 第一ピース
12P 第二ピース
14 導電糸
16 ミシン目
17 縫合線
20 ミシン
22 ミシン針
26 送り量調節機構
28 センサ部材

Claims (1)

  1. 複数の表皮ピース同士をミシンにて縫合して、車両用シート等の車両構成部材を覆う表皮材を形成するに際して、前記複数の表皮ピースの少なくとも一枚の表皮ピースに、線状に延びる複数の導電糸を並列配置するとともに、
    前記ミシンに対して前記表皮ピースを所定の送り量で相対移動させつつ、前記ミシンのミシン針を前記表皮ピースに所定のピッチで刺し通すことにより、複数のミシン目からなる縫合線を前記導電糸に対して交差状に形成する表皮材の縫合方法において、
    前記ミシンにセンサ部材を設けて、前記ミシン針の進行方向前方に配置する前記導電糸を検出したのち、前記表皮ピースの送り量を変更して、前記ミシン針の刺し通す位置を、初期設定位置とは異なる前記導電糸の配置位置以外の位置に変更可能とした表皮材の縫合方法。
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