JP2013228237A - 変位観測方法および変位観測システム - Google Patents

変位観測方法および変位観測システム Download PDF

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Abstract

【課題】GPSを用いて海面、地面などの変位を観測する際に、正確に、その変位を観測し得る変位観測方法を提供する。
【解決手段】GPS受信機を有する観測局であるGPS津波計1により海面の変位を観測する際に、IGS精密暦に含まれる衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器による遅延を修正した修正精密暦を用いる変位観測方法であって、観測対象となるエリアA内の津波計1に提供する補正情報を得るための主基準局網3Aとは別の場所に配置された2つの補助基準局網3X,3Bにて得られる補正情報を用いて主基準局網3Aにおける基準点2の位置を計測し、得られた基準局2の位置が変位している場合に、主基準局網3Aにて得られる補正情報が無効であると判断する観測方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、変位観測方法および変位観測システムに関するもので、特に、広域における海面、地面などの変位を観測する場合に適したものである。
近年、広域に亘って、海面、地面などの変位を観測する技術としてGPS(Global Positioning System :全地球測位システム)が用いられている。
例えば、津波を観測する場合にもGPSの技術が用いられている。
この観測システムは、GPS受信機を搭載した浮体を沖合いに浮かべ、海面の変位(変動)に追従する浮体の三次元位置をRTK(リアルタイムキネマティック)方式を用いて計測することにより沖合いで津波を検知して、津波が陸地に到達する前に警報を出すようにしたものである。そして、このRTK方式は、浮体に設けられたGPS受信機すなわち観測局の他に、計測誤差を取り除くために基準局を必要とするものであり、特に、この基準局については、観測局から20km以内に配置する必要があった。
特許第3803177号公報
上述したように、観測局から20km以内に基準局を配置する必要があるため、地震が発生して地盤沈下や隆起が生じて基準局が変位した場合、津波を正確に検出することができず、誤報を出してしまうという問題がある。
そこで、本発明は、GPSを用いて海面、地面などの変位を観測する際に、正確に、その変位を観測し得る変位観測方法および変位観測システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る変位観測方法は、GPS受信機が設けられた観測局にて且つ当該観測局に対応する複数の基準局からなる基準局網より提供される補正情報を用いてその位置における変位を観測する際に、GPS衛星の精密暦および上記基準局網の基準局にて得られる観測データを入力するとともに、上記補正情報として、精密暦に含まれている衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器自体に起因して生じる機器遅延を修正してなる修正精密暦を用いる変位観測方法であって、
観測対象となるエリア内の観測局に提供する補正情報を得るための主基準局網とは異なる位置で且つ少なくとも2箇所に配置された補助基準局網にて得られる補正情報を用いて主基準局網における基準局の位置を計測するとともに、
上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位していない場合または上記いずれか一方の補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が有効であると判断し、
上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が無効であると判断する方法である。
また、本発明の請求項2に係る変位観測方法は、請求項1に記載の変位観測方法において、観測対象となる全エリアが一方向に長い場合に、主基準局網にて得られる補正情報が適用されるエリアを、上記一方向に沿って順番に且つその観測範囲の一部同士が重なるように配置しておき、
上記全エリアのうち、中間部のエリアについては、補助基準局網として両側に隣接する各エリアの主基準局網を用い、且つ端部のエリアについては、一方の補助基準局網として隣接するエリアの主基準局網を用いるとともに、他方の補助基準局網として新たに基準局網を配置する観測方法である。
さらに、本発明の請求項3に係る変位観測システムは、GPS受信機が設けられた観測局にて且つ当該観測局に対応する複数の基準局からなる基準局網より提供される補正情報を用いてその位置における変位を観測する際に、GPS衛星の精密暦および上記基準局網の基準局にて得られる観測データを入力するとともに、上記補正情報として、精密暦に含まれている衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器自体に起因して生じる機器遅延を修正してなる修正精密暦を用いる変位観測システムであって、
観測対象となるエリア内の観測局に提供する補正情報を得るための主基準局網とは異なる位置で且つ少なくとも2箇所に当該観測局に提供する補正情報を得るための補助基準局網を配置し、
これら各補助基準局網からの補正情報に基づき得られた主基準局網の基準局の位置を入力するとともに、上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位していない場合または上記いずれか一方の補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が有効であると判断し、上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が無効であると判断する補正情報判断部を具備したものである。
また、本発明の請求項4に係る変位観測システムは、請求項3に記載の変位観測システムにおいて、観測対象となる全エリアが一方向に長い場合に、主基準局網にて得られる補正情報が適用されるエリアを、上記一方向に沿って順番に且つその観測範囲の一部同士が重なるように配置しておき、
上記全エリアのうち、中間部のエリアについては、補助基準局網として両側に隣接する各エリアの主基準局網を用い、且つ端部のエリアについては、一方の補助基準局網として隣接するエリアの主基準局網を用いるとともに、他方の補助基準局網として新たに基準局網を配置したものである。
上記変位観測方法および変位観測システムによると、修正精密単独測位方式を用いてエリア内での変位を計測する際に、そのエリアとは異なる少なくとも2箇所に配置されたエリアに対応する補助基準局網からの補正情報を用いて当該観測対象のエリアに対応する主基準局網における各基準局の変位を計測するとともにその変位の有無を考慮し、その計測結果に共に変位が発生していると考えられる場合には、その補正情報を無効にするようにしたので、観測精度のさらなる向上を図ることができる。例えば、この観測方法および観測システムを津波の観測に適用する場合には、誤報を出すのを防止することができる。
本発明の実施例に係る変位観測システムの概略構成を示す模式図である。 同変位観測システムにおけるGPS津波計の概略構成を示す模式図である。 同変位観測システムを津波観測に適用した場合のエリアを示す概略平面図である。 同変位観測システムの概略構成を示すブロック図である。 同変位観測システムにおける津波観測に適用した場合のフローチャートである。 同変位観測システムの詳細構成およびデータの流れを示すブロック図である。
以下、本発明の実施例に係る変位観測方法および変位観測システムについて説明する。
この変位観測方法および変位観測システムは、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いて、任意の位置の変位を観測するもので、特に精密単独測位方式(PPP:Precise Point Positioning)の精度をさらに向上させた修正精密単独測位方式(PPP−AR:Precise Point Positioning with Ambiguity Resolution)を用いたものである。
まず、精密単独測位方式について簡単に説明する。
この精密単独測位方式とは、IGS(International GNSS Service)などが提供する高精度なGPS衛星軌道および衛星時計誤差の推定値、並びに観測局における搬送波位相の観測データを使用して観測局だけで精密測位を行う方法である。
一般的な精密測位で使われるRTK−GPS(realtime kinematic GPS)などの二重位相差による相対測位法と比較して、下記のような特徴がある。
a.観測局単独の観測データだけを用いて測位が可能である。
b.座標値と同時に受信機時計誤差および対流圏遅延推定値が得られる。
c.計算量が少なく、高速に推定値を求めることができる。
精密単独測位方式では、2周波(L1,L2)の搬送波位相の観測データから生成される電離層フリー線形結合を用いて精密測位が行われる。
電離層フリー線形結合Φは下記(1)式にて示されるが、これはGPS衛星から送信されるL1とL2の2つの周波数のデータについて線形結合を行ったもので、電離層遅延による誤差成分が除去されている。
Figure 2013228237
そして、精密単独測位方式においては、(1)式の観測モデル中の衛星位置(衛星−受信機間幾何距離を求める際に使用する)および衛星時計誤差をIGS精密暦(精密軌道暦)から得られる値に固定し、観測局の座標を未知パラメータとして推定する。パラメータの推定手法としては、最小二乗法またはカルマンフィルタが用いられる。この観測局の座標を推定するのと同時に、観測モデル中の対流圏遅延、受信機時計誤差および搬送波位相バイアス(アンビギュイティ)も推定される。対流圏遅延Tの推定に使用するモデルを下記(2)式に示す。
Figure 2013228237
対流圏遅延のうち静水圧遅延に関しては、地表気圧が与えられれば数学モデルを使って精度良く計算することができるが、水蒸気遅延に関しては一般にはモデルによる高精度補正が難しいため、全天頂遅延を未知量パラメータとして推定する。
また、搬送波位相バイアスについては、二重位相差と異なり、初期位相および受信機位相が加算されるため整数とならない。したがって、整数化による精度向上を行うことができず、実数解(フロート解)として推定される。
上記以外の観測モデル中の相対論効果、Phase-Windup効果、衛星・受信機のアンテナ位相中心および観測局位置の変位については精密補正モデルを使って補正される。
ところで、精密単独測位方式では、IGS精密暦が用いられるが、リアルタイムで利用可能な精密暦では衛星時計の精度が十分ではない。このため、電子基準局網のデータを用いて精密暦の衛星時計誤差を修正する必要があるが、この場合でも、搬送波位相バイアスの決定まで至ることはできず、得られる解は実数解となる。
そこで、上述した精密単独測位方式の測位精度を向上させるために、搬送波バイアスを決定し得る修正精密単独測位方式が提案されている。この修正精密単独測位方式は、例えば2008年9月16日〜19日に開催された集会(Proceedings of the 21st International Technical Meeting of the Satellite Division of The Institute of the Navigation (ION GNSS 2008))にて「GPS Solutions Inc., Boulder CO」より発表された論文(Precise Point Positioning With Ambiguity Resolution In Real-Time)に記載されている。
この修正精密単独測位方式では、基準局網における各基準局からの観測データを用いて補正情報を得る際に、すなわち衛星時計誤差を推定する際に、衛星時計や電波送信機といったハードウェア(機器)に依存した未知情報についても推定される。この未知情報を考慮して精密暦の衛星時計誤差に修正が加えられ、この修正されてなる修正精密暦が観測局の位置を計算する際に利用される。
すなわち、未知情報である衛星時計誤差が極めて精度良く推定されるため、観測局にて搬送波位相バイアスを整数値として決定することができるので、フィックス解と呼ばれる最も高精度な測位解が得られる。
このように、修正精密単独測位方式によると、RTK−GPSと同程度の精度でもって、観測局だけでその位置を計測することができ、例えば観測範囲を少なくとも1000km程度まで拡大し得る。
次に、上記修正精密単独測位方式を用いた変位観測方法および変位観測システムについて説明する。
なお、本実施例では、海面の変位、具体的には、日本全土の周辺海域(広域)に亘って津波を観測するものについて説明する。
本実施例に係る変位観測システム(津波観測システムとも言える)は、上述した修正精密単独測位方式(PPP−AR)を用いるもので、また日本全土に配置されている複数の基準局よりなる基準局網によって提供される観測データに基づき修正精密暦を得るようにしたもので、この修正精密暦に基づき海面の変位を計測するものである。なお、詳しくは後述するが、基準局網がカバーする、つまり基準局網からの補正情報が有効な観測対象となるエリア(観測範囲)は日本列島に沿って複数配置されるとともに、隣接するエリア同士は互いに一部が重なるように想定されている。上記基準局は電子基準局または電子基準点と称するもので、公の機関のものに加えて私設のものであってもよい。
すなわち、この変位観測システムは、図1〜図6に示すように、少なくとも、日本列島の周囲の海域に沿って多数配置された観測局としてのGPS津波計1と、複数の基準局2よりなる基準局網3における各基準局2での搬送波位相および測位コードによる各観測データ並びにIGS4から送られる精密暦を入力して修正精密暦を求めるとともにこの修正精密暦を補正情報として各GPS津波計1に送るとともに基準局2の位置(変位)を観測し得る制御局5と、上記各GPS津波計1で補正情報に基づき求められた測位データを入力し且つ陸上に設けられて津波の発生を監視するための監視センター6とから構成されている。勿論、基準局2にはGPS受信機が配置されており、その観測データが制御局5に送られている。図1では、監視センター6を制御局5とは別個に図示したが、制御局5を監視センター6内に設けてもよい。
なお、詳細は後述するが、図3に示すように、基準局網3がカバーする、つまり基準局網3からの補正情報が有効な観測対象となるエリア(観測範囲)は日本列島に沿って複数、例えば4つ(A〜D)配置されるとともに、隣接するエリア同士は互いに一部が重なるように想定されている。
したがって、GPS津波計1に補正情報を提供する基準局網3についても、日本列島に沿って4つ配置されるとともに、或る基準局網(以下、主基準局網とも称す)3に対しては、その両隣に位置する基準局網(以下、補助基準局網とも称す)3の基準局2にて得られる補正情報を用いて主基準局網3における基準局2の位置が求められ、この位置に基づき主基準局網3の基準局2にて得られる補正情報が信頼に足るものか否かが判断されるようにしている。なお、基準局網3の設置箇所は、エリアに対応する4箇所に加えて、後述するが端部エリア専用の補助基準局網3が2箇所、合計6箇所である。
上記GPS津波計1は、図2に示すように、少なくとも、海面上に係留された浮体21と、この浮体21に設けられたGPS受信機22とが具備されたものであり、この浮体21には制御局5からの補正情報に基づき浮体の正確な位置を演算により求める観測局位置演算部23が具備されている。また、この浮体21には、当然ながら、補正情報を受信するとともに上記観測局位置演算部23で求められた位置すなわち測位データを陸上に設けられた監視センター6に送信するための無線通信装置24が具備されている。
そして、この変位観測システムには、上述したように、主基準局網3の基準局2が変位しているか否かを判断して当該主基準局網3から送られる補正情報が信頼に足るものか否か、言い換えれば、補正情報の有効/無効を判断する機能が具備されている。
すなわち、図4に示すように、制御局5には、基準局網3における複数の基準局2からの観測データに基づき補正情報を得るための補正情報生成部11と、或る基準局網(主基準局網)3の隣に位置する基準局網(補助基準局網)3により生成された補正情報を用いて当該基準局網3における基準局2の位置(変位)を求める基準局位置演算部12と、この基準局位置演算部12にて求められた位置つまり測位データに基づき補正情報の有効/無効を判断する補正情報判断部13とが設けられている。なお、図4に示される制御局5の補正情報生成部11では、或る基準局網(主基準局網)3に対する補正情報の生成に加えて、その両隣の基準局網(補助基準局網)3に対する補正情報の生成が行われている。なお、一つの補正情報生成部11で全ての補正情報を生成してもよく、また或る基準局網3に対する補正情報生成部11をそれぞれ設けるとともにこれら各補正情報生成部11で両隣の基準局網3に対する補正情報を生成するようにしてもよい。また、後述する図6においては、説明の明確化の意味で、主基準局網A(3A)および2つの補助基準局網B(3B),X(3X)に対してそれぞれ補正情報生成部A,B,X(11)、および2つの補助基準局網B(3B),X(3X)に対する基準局位置演算部A(B)[12],A(X)[12]を設けたものとして図示している。
上記補正情報生成部11では、基準局2の座標および衛星軌道を既知として、対流圏遅延、受信機時計誤差、衛星時計誤差および搬送波位相バイアス(フロート解)に加えて、衛星時計、衛星の電波送信機などのハードウエア(機器)に依存する遅延(誤差)などの未知情報を推定し、この未知情報も考慮して精密暦の衛星時計誤差が修正されてなる修正精密暦を補正情報として出力するものである。
上記基準局位置演算部12では、主基準局網3の両隣につまり両側に隣接する2つの補助基準局網3により生成された補正情報を用いて、中央の主基準局網3における各基準局2の位置(変位)が求められる。
上記補正情報判断部13では、上記両隣の補助基準局網3に対する補正情報生成部11で得られた補正情報を用いて基準局位置演算部12で求められた主基準局網3の基準局2の位置(観測データ)が入力されて、これら2つの補助基準局網3からの補正情報による基準局2の各位置が変位しているか否かが判断される。そして、各隣の補助基準局網3からの補正情報による位置が共に変化していない場合またはいずれか一方の補正情報による位置が変化している場合には、その補正情報が「有効」であると判断され、また両補助基準局網3からの補正情報による位置が共に変化している場合には、主基準局網3における基準局2が変位していると考えられるため、その補正情報が「無効」であると判断され、これら有効/無効の判断データが出力される。
ところで、制御局5から観測局であるGPS津波計1に補正情報が送られると、全ての遅延が推定されることになり、搬送波位相バイアス(アンビギュイティ)が整数値として決定される。すなわち、フィックス解と呼ばれる高精度な測位データ(測位解)が得られることになる。
このようにして、GPS津波計1で得られた高精度の測位データは、例えば監視センター6に送られる。
この監視センター6には、GPS津波計1からの測位データを入力して津波を検出し得る津波検出部31と、この津波検出部31にて津波が検出された場合にその旨を入力するとともに制御局5の補正情報判断部13からの判断データを入力して津波の警報を出すか否かを判断する警報判断部32とが具備されている。すなわち、判断データが「有効」である場合には津波の警報が出され、「無効」である場合には津波の警報は出されない。なお、図4に、変位観測システムでの各データの流れを示す。
ここで、具体的に、日本周辺海域における津波の発生を観測する場合について説明する。
ところで、上述したように、制御局5から送られる補正情報はおよそ1000kmの超長距離範囲内で有効であるため、この補正情報を用いる場合、図3に示すように、例えば主基準局網としての基準局網3(3A,3B,3C,3D)を4つ配置して4つのエリア(A〜D)を想定すれば、日本周辺海域全体をカバーすることができる。
また、各基準局網3については、当該基準局網3の両側に隣接する2つの基準局網3からの各観測データによる補正情報を得るようにしているため、端部のエリア、すなわち北端のエリアAおよび南端のエリアDについては、その内側の基準局網(主基準局網)3B,3Cおよびその基準局網(主基準局網)3A,3Dの外側に配置された補助用だけに用いられる基準局網(補助基準局網)3X,3Yによって提供される補正情報が用いられる。上記補助用としての基準局網3(3X,3Y)は、両端部のエリアA,D内に配置される。また、主基準局網3であっても、隣のエリアが主基準局網3となる場合には補助基準局網3として扱われる。なお、基準局網3を構成する基準局2としては、既設の電子基準局を利用すればよく、勿論、必要に応じて、新しい基準局を設置してもよい。
以下、具体的に、津波を観測する方法について説明する。
通常、海面の変位はGPS津波計1により時々刻々と観測されているとともに、基準点網3における各基準局2でもその位置が時々刻々と観測されており、これら各基準局2での観測データが制御局5に送られている。
そして、制御局5の補正情報生成部11では、基準局2の座標および衛星軌道を既知として、対流圏遅延、受信機時計誤差、衛星時計誤差および搬送波位相バイアス(フロート解)に加えて、衛星時計、衛星の電波送信機などのハードウエア(機器)に依存する遅延(誤差)などの未知情報を推定し、この未知情報も考慮してIGS4から送られた精密暦の衛星時計誤差が修正され、より精度が高い補正情報として、観測局であるGPS津波計1に送られている。
したがって、この補正情報が有効な範囲、例えば1000kmの範囲内に位置するGPS津波計1に送信されて、RTK−GPSと同様の精度でもって測位データが得られる。この測位データは監視センター6に送られ、津波検出部31にて海面の変位に基づき津波の有無が検出される。
ところで、地震により津波が発生するとともに陸地にも揺れが発生した場合には、当然に、基準局網3を構成する基準局2も揺れることになるが、この揺れにより、当該基準局2によって提供される補正情報についても、信頼性が低下することになる。
以下、補正情報の信頼性が低下するのを防止し得る変位観測方法を、図5および図6に基づき説明する。図5は観測方法を説明したフローチャートであり、図6は変位観測システムの具体例に係る構成およびデータの流れを示したものである。
ここでは、北端のエリアAに着目して詳しく説明する。
すなわち、エリアA内に配置されている主基準局網3Aの近傍で地震が発生した場合、当然に、主基準局網3Aの基準局2も変位(変動)するため、この主基準局網3Aの基準局2からの観測データAに基づき補正情報生成部(A)11で得られる補正情報Aの信頼度が低下することになる。
これに対処するため、当該基準局網3Aの北寄りに配置された補助基準局網3Xの基準局2からの観測データXにより補正情報生成部(X)11で得られた補正情報Xに基づき、主基準局網3Aを構成する基準局2の位置(変位)が計測されるとともに、一つ南寄りのエリアB内に配置された補助基準局網3Bの基準局2からの観測データBにより補正情報生成部(B)11で得られた補正情報Bに基づき、上記主基準局網3Aを構成する基準局2の位置(変位)が計測されている。
そして、主基準局網3Aの両隣に配置された2つの補助基準局網3X,3Bからの補正情報X,Bに基づき得られた各測位データA(X),B(X)が共に変動している場合、すなわち、共に主基準局網3Aにおける基準局2に変位が見られた場合には、主基準局網3A内に変位が発生したと考えられるため、主基準局網3Aからの補正情報Aが「無効」であると判断される。
これに対して、一方の補助基準局網3X(または3B)からの補正情報X(またはB)により得られた測位データA(X)(またはA(B))が変動している場合、すなわち一方だけの測位データにより主基準局網3Aにおける基準局2に変位が見られた場合、その補助基準局網3X(または3B)だけが変位したと考えられるため、主基準局網3Aでの補正情報が「有効」であると判断される。この場合、「有効」の判断データが警報判断部32に送られて、津波の警報が出されることになる。
なお、両補助基準局網3Xおよび3Bからの補正情報X,Bにより得られた測位データが変動していない場合には、当然に、その補正情報Aが「有効」であると判断される。
したがって、或るエリア内に配置されたGPS津波計1により津波を観測している際に、そのエリアの両隣のエリア内に配置された基準局網3によって提供される補正情報に基づき得られた当該或るエリア内の基準局網3の基準局2に変位が共に発生している場合には、正確な津波の計測が行われていないと考えられるため、津波の警報は発せられることはない。
なお、中間部のエリアBまたはエリアCにおける基準点網3Bまたは3Cに変位が発生した場合には、その両隣における基準局網3Aと3Cまたは3Bと3Dからの補正情報が用いられる。
勿論、南端に位置する基準局網3Dについては、基準局網3Cおよび補助基準局網3Yからの補正情報に基づき、その変位が計測される。
このように、修正精密単独測位方式を用いて観測対象のエリア内での変位を計測する際に、その両隣のエリアに対応する補助基準局網からの補正情報を用いて当該観測対象のエリアに対応する主基準局網における各基準局の変位を観測するとともにその変位の有無を考慮し、その計測結果に共に変位が発生していると考えられる場合には、津波の警報を無効にするようにしたので、観測精度のさらなる向上を図ることができる。すなわち、海面の変位を計測して津波の有無を観測している場合には、津波に関する誤報が出るのを防止することができる。
ここに、上記変位観測方法および変位観測システムを纏めて記載すると以下のようになる。
すなわち、この変位観測方法は、GPS受信機が設けられた観測局にて且つ当該観測局に対応する複数の基準局からなる基準局網より提供される補正情報を用いてその位置における変位を観測する際に、GPS衛星の精密暦および上記基準局網の基準局にて得られる観測データを入力するとともに、上記補正情報として、精密暦に含まれている衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器自体に起因して生じる機器遅延を修正してなる修正精密暦を用いる変位観測方法であって、
観測対象となるエリア内の観測局に提供する補正情報を得るための主基準局網とは異なる位置で且つ少なくとも2箇所に配置された補助基準局網にて得られる補正情報を用いて主基準局網における基準局の位置を計測するとともに、
上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位していない場合または上記いずれか一方の補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が有効であると判断し、
上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が無効であると判断する観測方法であり、
また上記観測方法において、観測対象となる全エリアが一方向に長い場合に、主基準局網にて得られる補正情報が適用されるエリアを、上記一方向に沿って順番に且つその観測範囲の一部同士が重なるように配置しておき、
上記全エリアのうち、中間部のエリアについては、補助基準局網として両側に隣接する各エリアの主基準局網を用い、且つ端部のエリアについては、一方の補助基準局網として隣接するエリアの主基準局網を用いるとともに、他方の補助基準局網として新たに基準局網を配置する観測方法である。
さらに、この変位観測システムは、GPS受信機が設けられた観測局にて且つ当該観測局に対応する複数の基準局からなる基準局網より提供される補正情報を用いてその位置における変位を観測する際に、GPS衛星の精密暦および上記基準局網の基準局にて得られる観測データを入力するとともに、上記補正情報として、精密暦に含まれている衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器自体に起因して生じる機器遅延を修正してなる修正精密暦を用いる変位観測システムであって、
観測対象となるエリア内の観測局に提供する補正情報を得るための主基準局網とは異なる位置で且つ少なくとも2箇所に当該観測局に提供する補正情報を得るための補助基準局網を配置し、
これら各補助基準局網からの補正情報に基づき得られた主基準局網の基準局の位置を入力するとともに、上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位していない場合または上記いずれか一方の補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が有効であると判断し、上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が無効であると判断する補正情報判断部を具備したものであり、
また上記変位観測システムにおいて、観測対象となる全エリアが一方向に長い場合に、主基準局網にて得られる補正情報が適用されるエリアを、上記一方向に沿って順番に且つその観測範囲の一部同士が重なるように配置しておき、
上記全エリアのうち、中間部のエリアについては、補助基準局網として両側に隣接する各エリアの主基準局網を用い、且つ端部のエリアについては、一方の補助基準局網として隣接するエリアの主基準局網を用いるとともに、他方の補助基準局網として新たに基準局網を配置したものである。
1 GPS津波計
2 基準局
3 基準局網
4 IGS
5 制御局
6 監視センター
11 補正情報生成部
12 基準局位置演算部
13 補正情報判断部
21 浮体
22 GPS受信機
23 観測局位置演算部
24 無線通信装置
31 津波検出部
32 警報判断部
A〜D エリア

Claims (4)

  1. GPS受信機が設けられた観測局にて且つ当該観測局に対応する複数の基準局からなる基準局網より提供される補正情報を用いてその位置における変位を観測する際に、GPS衛星の精密暦および上記基準局網の基準局にて得られる観測データを入力するとともに、上記補正情報として、精密暦に含まれている衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器自体に起因して生じる機器遅延を修正してなる修正精密暦を用いる変位観測方法であって、
    観測対象となるエリア内の観測局に提供する補正情報を得るための主基準局網とは異なる位置で且つ少なくとも2箇所に配置された補助基準局網にて得られる補正情報を用いて主基準局網における基準局の位置を計測するとともに、
    上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位していない場合または上記いずれか一方の補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が有効であると判断し、
    上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が無効であると判断することを特徴とする変位観測方法。
  2. 観測対象となる全エリアが一方向に長い場合に、主基準局網にて得られる補正情報が適用されるエリアを、上記一方向に沿って順番に且つその観測範囲の一部同士が重なるように配置しておき、
    上記全エリアのうち、中間部のエリアについては、補助基準局網として両側に隣接する各エリアの主基準局網を用い、且つ端部のエリアについては、一方の補助基準局網として隣接するエリアの主基準局網を用いるとともに、他方の補助基準局網として新たに基準局網を配置することを特徴とする請求項1に記載の変位観測方法。
  3. GPS受信機が設けられた観測局にて且つ当該観測局に対応する複数の基準局からなる基準局網より提供される補正情報を用いてその位置における変位を観測する際に、GPS衛星の精密暦および上記基準局網の基準局にて得られる観測データを入力するとともに、上記補正情報として、精密暦に含まれている衛星時計誤差に衛星時計・電波送信機などの機器自体に起因して生じる機器遅延を修正してなる修正精密暦を用いる変位観測システムであって、
    観測対象となるエリア内の観測局に提供する補正情報を得るための主基準局網とは異なる位置で且つ少なくとも2箇所に当該観測局に提供する補正情報を得るための補助基準局網を配置し、
    これら各補助基準局網からの補正情報に基づき得られた主基準局網の基準局の位置を入力するとともに、上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位していない場合または上記いずれか一方の補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が有効であると判断し、上記少なくとも2つの補助基準局網からの補正情報により得られる主基準局網の基準局の位置が共に変位している場合に、主基準局網にて得られる補正情報が無効であると判断する補正情報判断部を具備したことを特徴とする変位観測システム。
  4. 観測対象となる全エリアが一方向に長い場合に、主基準局網にて得られる補正情報が適用されるエリアを、上記一方向に沿って順番に且つその観測範囲の一部同士が重なるように配置しておき、
    上記全エリアのうち、中間部のエリアについては、補助基準局網として両側に隣接する各エリアの主基準局網を用い、且つ端部のエリアについては、一方の補助基準局網として隣接するエリアの主基準局網を用いるとともに、他方の補助基準局網として新たに基準局網を配置したことを特徴とする請求項3に記載の変位観測システム。
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