JP7115726B2 - 位置推定装置及び位置推定プログラム - Google Patents

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Description

本発明は、搬送波位相測位による位置推定装置及び位置推定プログラムに関する。
人工衛星(以下、「衛星」と略記)から発信される信号を用いて位置推定を行うGNSS(Global Navigation Satellite System)による測位方式のうち、搬送波の位相に基づいて位置を推定する搬送波位相測位は、搬送波の変調に基づいて位置を推定するコード測位に比して、高精度であることを特徴とする。
搬送波位相測位の中でも、固定点に設置された基準局と移動受信機(ローバー)双方の搬送波位相観測値を使って基線解を求める相対測位の一種であるRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS)は、位置推定の誤差をセンチメートル単位にまで抑制できるので、精密測量等で用いられている。
非特許文献1には、RTK-GNSSによる位置推定の発明が開示されている。
高須知二、「RTK-GPS 及びネットワーク型RTK-GPS測位技術」、GPS/GNSSシンポジウム2007、267―278頁
非特許文献1に記載のRTK-GNSSは、基準衛星からの情報に基づく測位計算結果であるフロート解から、通常Lambda法等の計算手法を用いて測位の精度を向上させたフィックス解を算出し、当該フィックス解が適切か否かを判定するRatioテストを経て測位結果を出力する。
非特許文献1に記載のRTK-GNSSによる位置推定は、複数の衛星から情報を得ているが、衛星からの電波が山又は建物による反射等で生じるマルチパスの影響を完全に排除できず、その結果、測位誤差が大きくなり、不適切なフィックス解を出力するミスフィックスが生じるおそれがあった。
例えば、マルチパスが多い環境又は車両のような高速移動体では、上述のRatioテストを行っても正しいフィックス解かどうかの適切な判定ができず、測位誤差の大きいミスフィックス解を誤ってフィックス解と判定してしまうという問題があった。
ミスフィックスを減らすには、衛星判定によりマルチパス誤差の影響を受けている衛星を排除することが効果的だが、当該衛星を的確に識別して排除することは容易ではない。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、測位誤差の大きな解をフィックス解から排除して測位精度を担保できる位置推定装置及び位置推定プログラムを実現することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の位置推定装置は、衛星の各々から電波を受信する受信部と、衛星の各々から電波を受信する基準局から前記衛星の各々に関する補正情報を取得する補正情報取得部と、前記電波を受信した衛星のうち、搬送波位相測位に用いる複数の衛星を各々異なる組合せで複数回選択する衛星組合せ選択部と、前記衛星組合せ選択部で選択した衛星の組合せの各々について、前記組合せに含まれる衛星からの電波及び前記衛星に関する前記補正情報を用い、搬送波位相測位によるフィックス解を算出する測位計算部と、前記衛星の組合せの各々について前記算出した前記フィックス解の分布から、最終的なフィックス解を求めて出力するフィックス解判定部と、を備えている。
また、請求項2に記載の位置推定装置は、請求項1に記載の位置推定装置において、前記衛星組合せ選択部は、前記電波を受信した衛星のうち、搬送波位相測位に用いることが可能な衛星の組合せを全て順に選択する。
また、請求項3に記載の位置推定装置は、請求項1に記載の位置推定装置において、前記衛星組合せ選択部は、電波のSN比が所定値以下であること、仰角が所定角度以下であること、及びフロート解を求めたときの前記衛星までの疑似距離の残差が閾値以上であることの少なくとも一つを満たす衛星を排除して残った衛星から、搬送波位相測位に用いる衛星の組合せを選択する。
また、請求項4に記載の位置推定装置は、請求項3に記載の位置推定装置において、前記衛星組合せ選択部は、前記衛星を排除して残った衛星から、ランダムに衛星の組合せを選択する。
また、請求項5に記載の位置推定装置は、請求項3に記載の位置推定装置において、前記衛星組合せ選択部は、前記衛星を排除して残った衛星のうち、高仰角の衛星を優先的に選択して、衛星の組合せを選択する。
また、請求項6に記載の位置推定装置は、請求項1に記載の位置推定装置において、前記衛星組合せ選択部は、所定時間内で電波のSN比の変動が小さい衛星を優先的に選択して、衛星の組合せを選択する。
また、請求項7に記載の位置推定装置は、請求項1に記載の位置推定装置において、前記衛星組合せ選択部は、フロート解を求めた時の前記衛星までの疑似距離の残差が小さい衛星を優先的に選択して、衛星の組合せを選択する。
また、請求項8に記載の位置推定装置は、請求項1~7のいずれか1項に記載の位置推定装置において、前記フィックス解判定部は、所定の半径の円内に存在するフィックス解の数が最大となる円を探索し、該円内のフィックス解を用いて、最終的なフィックス解を求める。
また、請求項9に記載の位置推定装置は、請求項8に記載の位置推定装置において、前記フィックス解判定部は、所定の半径の円内に存在するフィックス解の数が最大となる円が複数存在する場合、該円内のフィックス解の各々をRatioテストの値で重み付けし、円内のフィックス解の重み付けした値の合計が最大となる円内のフィックス解を用いて、最終的なフィックス解を求める。
また、請求項10に記載の位置推定装置は、請求項8又は9に記載の位置推定装置において、前記フィックス解判定部は、前記円の中心付近に存在するフィックス解を最終的なフィックス解として出力する。
また、請求項11に記載の位置推定装置は、請求項8又は9に記載の位置推定装置において、前記フィックス解判定部は、前記円内に存在するフィックス解の平均値を最終的なフィックス解として出力する。
上記目的を達成するために、請求項12に記載の位置推定プログラムは、コンピュータを、衛星の各々から電波を受信する受信部、衛星の各々から電波を受信する基準局から前記衛星の各々に関する補正情報を取得する補正情報取得部、前記電波を受信した衛星のうち、搬送波位相測位に用いる複数の衛星を各々異なる組合せで複数回選択する衛星組合せ選択部、前記衛星組合せ選択部で選択した衛星の組合せの各々について、前記組合せに含まれる衛星からの電波及び前記衛星に関する前記補正情報を用い、搬送波位相測位によるフィックス解を算出する測位計算部、及び前記衛星の組合せの各々について前記算出した前記フィックス解の分布から、最終的なフィックス解を求めて出力するフィックス解判定部、として機能させる。
本発明によれば、測位誤差の大きな解をフィックス解から排除して測位精度を担保できる位置推定装置及び位置推定プログラムを実現することができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る位置推定装置の一例を示したブロック図である。 搬送波位相二重差による測位の一例を示した説明図である。 本発明の実施の形態に係る位置推定装置の処理の一例を示したフローチャートである。 衛星組合せ及びフィックス解の信頼度の判定を各々行って得たフィックス解とミスフィックス解の一例を示した概略図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る位置推定装置を詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る位置推定装置100の一例を示したブロック図である。位置推定装置100は、衛星からの電波を受信するGNSS受信機10と、測位に適切な衛星を判定する衛星判定部12と、基準局からの補正情報を取得する補正情報取得部24と、測位に用いる複数の衛星を選択する衛星組合せ選択部14と、衛星組合せ選択部14で選択した衛星からの電波と基準局からの補正情報とを用いて測位の解であるフィックス解を算出する搬送波位相測位計算部と、搬送波位相測位計算部16が算出したフィックス解を記憶する記憶部18と、搬送波位相測位計算部16が算出したフィックス解及び記憶部18に記憶したフィックス解が適切か否かを判定するフィックス解判定部20と、判定結果を出力する出力部22と、を含む。
位置推定装置100は、一種のコンピュータであり、記憶部18等に記憶されたプログラムに基づいて、位置推定を行う。
GNSS受信機10は、衛星からの電波を受信するアンテナ及び受信回路である。衛星判定部12は、マルチパスの影響がある衛星を排除する構成である。一例として、衛星判定部12は、GNSS受信機10で電波を受信した衛星の仰角が所定の仰角値よりも小さい場合又は受信した電波のSN比が所定値よりも小さい場合に、当該電波は、衛星からの電波が地形又は建物等で反射して生じたマルチパスとみなし、当該電波を発信した衛星は測位から排除する。衛星判定部12は、後述する衛星組合せ選択部14と一体に構成されていてもよい。
衛星組合せ選択部14は、測位に用いる複数の衛星の組合せを選択する。後述するように、本実施の形態では、衛星組合せ選択部14で異なる組合せで複数の衛星を選択することを複数回行う。衛星の選択に際しては、基準局からの補正情報を参照してもよい。補正情報は、基準局の搬送波位相及び擬似距離観測値に基づく値である。
搬送波位相測位計算部16は、異なる衛星の組合せ毎に、フロート解を算出し、フロート解を用いてフィックス解を算出し、記憶部18に記憶する。フィックス解判定部20は、搬送波位相測位計算部16が算出した複数のフィックス解の分布から、信頼性の高い最終的なフィックス解を判定し、ミスフィックスを排除することで、出力部22で誤差の小さい測位結果を出力する。
図2は、搬送波位相二重差による測位の一例を示した説明図である。図2に示したように、地上には固定点に設置された基準局34と、移動体であるローバー36とが存在し、上空には衛星30と衛星32とが存在している。
図2におけるΦは、搬送波位相観測値である。以下、衛星30が発信した電波の搬送波位相観測値は「a」を、衛星32が発信した電波の搬送波位相観測値は「b」を各々添付する。また、基準局34が受信した電波の搬送波位相観測値は「u」を、ローバー36が受信した電波の搬送波位相観測値は「r」を各々添付する。
図2に示したように、2つの衛星30、32からの電波を各々用いて測位する場合、搬送波位相二重差Φur abを、以下のように定義できる。下記式中の上付文字「ab」は衛星30と衛星32との間、下付文字「ur」は観測点である基準局34とローバー36との間で、各々差をとることを示している。

Figure 0007115726000001
また、搬送波位相二重差Φur abは、下記の観測方程式で表すことができる。
Figure 0007115726000002
上式中のρ は衛星(衛星30又は衛星32)と受信機(基準局34又はローバー36)との間の幾何学距離であり、c は光速、dt は受信機の時計誤差、dT は衛星の時計誤差、I は電離層遅延、Tは対流圏遅延、λは搬送波の波長、εΦは観測誤差を表す。N は搬送波位相バイアスであり、搬送波位相測位ではフィックス解を算出する際に必要な値で、搬送波位相二重差による測位では整数値である。
基準局34及びローバー36の各受信機で観測値が同時測定されると仮定すると、dtは0となる。また、衛星30の送信時刻と衛星32の送信時刻とがほぼ同時で、かつ短時間内では衛星30、32の時計は十分安定であることを考慮すると、dTも0となる。その結果、上式は下記のように近似できる。
Figure 0007115726000003
さらに、基線(基準局34とローバー36との距離)が十分に短い場合、観測値に含まれる電離層遅延及び対流圏遅延の大きさはほぼ同一になるので、上式のIur ab及びTur abは、各々0とみなすことができる。その結果、搬送波位相二重差Φur abは、下記の式(1)のように近似される。
Figure 0007115726000004
また、搬送波位相二重差による測位では、疑似距離二重差Pur abを、以下のように定義できる。前述の搬送波位相二重差Φur abと同様に、下記式中の上付文字「ab」は衛星30と衛星32との間、下付文字「ur」は観測点である基準局34とローバー36との間で、各々差をとることを示している。
Figure 0007115726000005
また、疑似距離二重差Pur abは、下記の観測方程式で表すことができる。下記式中のεは観測誤差を表す。
Figure 0007115726000006
上述のように、基準局34及びローバー36の各受信機で観測値が同時測定されると仮定すると、dtは0となる。また、衛星30の送信時刻と衛星32の送信時刻とがほぼ同時で、かつ短時間内では衛星30、32の時計は十分安定であることを考慮すると、dTも0となる。その結果、上式は下記のように近似できる。
Figure 0007115726000007
さらに、基線が十分に短い場合、上述のように、観測値に含まれる電離層遅延及び対流圏遅延の大きさはほぼ同一になるので、上式のIur ab及びTur abは、各々0とみなすことができる。その結果、疑似距離二重差Pur abは、下記の式(2)のように近似される。
Figure 0007115726000008
上述の式(1)、(2)により、疑似距離二重差Pur abを算出でき、疑似距離二重差Pur abに基づいて基準局34からローバー36の相対的な位置を推定できる。
ローバー36の位置をru、搬送波位相バイアスをNiとすると、推定パラメータxは以下のようになる。
x=(ru T1 T2 T
推定パラメータxを用いると、ローバー36の位置推定は、上記式(1)、(2)で示した搬送波位相二重差Φur abの観測方程式及び疑似距離二重差Pur abの観測方程式の各々は、下記のようになる。
y=h(x)+ε
上記のyは二重差観測量ベクトルであり、一例として、下記の式のように定義される。
y=(Φ1 T Φ2 T1 T2 T
さらに観測誤差εの共分散行列Rを下記のように定義する。
R=E(εεT
以上の観測方程式及び誤差共分散行列を拡張カルマンフィルタ等を用いて観測値により逐次更新することにより、xの推定値及びxの共分散行列Pを推定でき、推定したx、Pに基づいて、基準局34に対するローバー36の相対的な位置の実数推定値であるフロート解を算出する。
フロート解の誤差は相互に大きな相関を持っており、かかる相関が搬送波位相バイアスNの整数解の探索空間を拡大して探索効率を悪化させる。本実施の形態では、既知の手法であるLambda法を用いてフィックス解を算出する。
Lambda法では、最初にZ変換(無相関化)と呼ぶ変換により上述の探索空間を縮小する。Z変換による処理後は、整数格子点探索と逆Z変換が行われ、フィックス解が算出される。
算出されたフィックス解には信頼性の低い解も含まれる。搬送波位相バイアスNの整数値である整数バイアスを誤って解いた解をミスフィックス解と呼ぶが、通常ミスフィックス解では測位精度が大きく劣化するので、Ratioテスト等の既知の手法により整数バイアス解の信頼度の検定を行い信頼度の低い解を排除して、フィックス解を出力する。
Ratioテストは、下記式(3)の左辺が検定閾値β(一例として、β=2~5の固定値)を超えるか否かの判定を行う。
Figure 0007115726000009
図3は、本実施の形態に係る位置推定装置100の処理の一例を示したフローチャートである。ステップ300では、マルチパスの影響がある衛星を排除する処理を行う。一例として、受信した電波の仰角が所定値よりも小さい場合、当該電波は、衛星からの電波が地形又は建物等で反射して生じたマルチパスとみなし、当該電波を発信した衛星は測位から排除する。しかしながら、ステップ300での衛星判定を厳密に行うと、測位に用いる衛星の数が少なくなり、フィックス解が得られないおそれがある。本実施の形態では、ステップ300の衛星判定の基準を通常のRTK-GNSSよりも緩和して、測位に用いる衛星数を確保する。
ステップ302では、上記ステップ300により排除されなかった衛星から、測位に用いる衛星の組合せを決定する。上述のように、本実施の形態では、ステップ300での衛星判定の基準を緩和して確保した測位に使用可能な衛星から、実際に測位に用いる衛星を複数個選択し、測位に用いる衛星の組合せとする。後述するように、本実施の形態では、衛星組合せの選択を複数回行い、複数の搬送波位相測位解を算出する。以下に、衛星の組合せの例を示す。
(1)測位計算可能な衛星の組合せを全て順に選択する
ステップ300の衛星判定後に残った衛星のうち、計算可能な全ての衛星の組合せを試行するため、最も誤差の小さい測位結果も抽出できるが、計算量は多くなる。
(2)DOPが閾値以下の測位計算可能な異なる衛星の組合せをランダムに選択する
ステップ300の衛星判定後に残った衛星の全ての組合せを試行すると膨大な計算量となる場合があるので、試行する組合せの数を定めてランダムに衛星の組合せを選択することで、処理時間を一定値以内に抑えることができる。また、GNSSの精度低下率であるDOP(Dilution of Precision)が大きい衛星の組合せは、衛星配置に依存する測位精度が低いので、組合せから排除することにより、試行回数を抑制する。
(3)マルチGNSSを考慮して測位計算可能な異なる衛星の組合せをランダムに選択する
ステップ300の衛星判定後に残った衛星のうち、米国のGPS、日本の準天頂衛星システム及びロシアのGLONASS等の異なる衛星システムに属する衛星を用いるマルチGNSSにおいて、各々の衛星システムに属する衛星が2つ以上含まれるか、同衛星が1つも含まれない組合せをランダムに選択する。マルチGNSSは、同一の衛星システムに属する衛星が2つ以上含まれないと効果的な測位が望めない。また、マルチGNSSでは、測位に用いる衛星システムが増えると、測位に係る変数が増大する。従って、他と異なる衛星システムに属する衛星が1つだけ選択される組合せは排除する。
(4)ステップ300の衛星判定後に残った衛星のうち、低仰角の衛星、SN比の小さい衛星、残差の大きい衛星等を優先的に排除して、測位計算可能な異なる衛星の組合せを決定する
仰角が所定角度以下の衛星は周囲の遮蔽物の影響を受けやすく、誤差要因になりやすい。SN比が所定値以下の衛星は、周辺物により遮蔽又は反射回折等の影響を受けており、誤差要因になりやすい。また、実際に測定された衛星及び受信機(ローバー36のGNSS受信機10等)の間の疑似距離と衛星から受信機まで予測した距離である近似距離との残差が閾値より大きい衛星も誤差要因となる。これらの衛星を含む衛星を測位に用いる組合せの候補として残しつつ、誤差要因となる可能性が高い衛星を排除する組合せを順に試行して、最終的に、測位に用いる衛星の組合せを決定する。誤差要因となる可能性が高い衛星の排除では、上述のように、DOPが閾値以上の組合せの排除、又は異なる衛星システムに属する衛星数が1つだけの組合せの排除を併用してもよい。残差の算出に用いられる近似距離は、一例として、得られたフィックス解から求められる衛星・受信機間の距離として取得する。
(5)ある時間内でのSN比の変動が大きい衛星から順に排除して、測位計算可能な異なる衛星の組合せを決定する
ステップ300の衛星判定後に残った衛星のうち、SN比が大きい衛星は、通常、測位計算に用いる。しかし、マルチパス干渉の影響を受けている衛星は、干渉の状況の変化に応じて変動(時間変動)しやすい。従って、時間変動が顕著な衛星を排除することで、最終的にフィックス解が得られる可能性が高くなる。
上記以外にも、1つの衛星に着目し、それ以外の衛星は同じ組み合わせで、着目した衛星のありなしでのフィックス解の位置の差を見る。そして、フィックス解どうしの差が大きい場合は、誤差の影響の大きい衛星として排除し、フィックス解どうしの差が小さい場合は、誤差の影響の小さい衛星として測位に用いる衛星としてもよい。さらに、上記を繰り返して、順に排除する衛星を決めてもよい。
又は、衛星と受信機とにおける疑似距離と近似距離との残差が小さい衛星から順次優先的に衛星の組合せを選択してもよい。
ステップ304では、上記ステップ302で決定した衛星の組合せを用いて、搬送波位相測位解を算出する。一例として、ステップ304では、決定した衛星の組合せに関する観測値からフロート解を算出し、さらにフロート解からフィックス解を算出する。
ステップ306では、ステップ304で算出した搬送波位相測位解を記憶部18に記憶する。
ステップ308では、測位に用いることができる衛星組合せの候補が存在するか否かを判定する。ステップ308で、測位に用いることができる衛星組合せの候補が存在する場合は手順をステップ302に移行し、測位に用いることができる衛星組合せの候補が存在しない場合は手順をステップ310に移行する。
ステップ310では、フィックス解の信頼度を判定する。ステップ310では、上述のRatioテストを行うと共に、Ratioテストの結果をさらに以下の方法で判定して、最終的なフィックス解を抽出する。
(1)所定の閾値で定めた円内のフィックス解の数が最大となる位置を探索し、当該円内のフィックス解を信頼性の高いフィックス解と判定する
正しいフィックス解が全て円内に収まると期待できる程度の大きさの円(一例として、半径30センチメートル等の所定半径)にすると共に、ミスフィックスにより発生する測位誤差として排除したい誤差の大きさよりも小さい円の大きさを閾値とすることにより、ミスフィックスを排除して、正しいフィックス解を抽出できる可能性が高くなる。また、当該円の中心を測位結果として出力することにより、測位精度を向上できる。
(2)所定の閾値(半径)で定めた円内のフィックス解の平均値を算出する
上記(1)と同様に所定の閾値で定めた円内のフィックス解の数が最大となる位置を探索し、当該円内のフィックス解の平均値を測位結果として出力する。
(3)所定の閾値で定めた円内のフィックス解のうち、円の中心値のフィックス解を選択する。
上記(1)と同様に、所定の関係で定めた円内のフィックス解の数が最大となる位置を探索し、当該円内の中心付近のフィックス解の平均値を測位結果として出力する。
(4)Ratioテストの値で基づいて重み付けした円内のフィックス解の値の合計が最大となる円を探索する
円内のフィックス解の個数が最大となる円が、異なる位置に複数存在する場合、(1)~(3)の方法では位置が一意に特定できない場合があるので、フィックス解の各々を前述の式(3)の左辺で示したRatioテストの値で重み付けし、円内のフィックス解の重み付けした値の合計が最大になる円内のフィックス解を正しいフィックス解に近いと判定する。さらに、当該円内のフィックス解の平均値、又は当該円の中心付近のフィックス解を測位結果として出力する。
(5)2次元(東西南北)である円で探索する代わりに、3次元である球で探索する。又はクロックバイアスを含む4次元で探索するように、上記(1)~(4)の方法を活用する。
ステップ310でフィックス解の信頼性が認められた場合は、ステップ312で測位結果(測位に用いるフィックス解)を出力して処理を終了する。ステップ310でフィックス解の信頼性が認められなかった場合は、ステップ314でフィックス解なしと判定して処理を終了する。
図4は、上述の衛星組合せの方法(1)~(5)のいずれかを、そして上述のフィックス解の信頼度の判定方法(1)~(5)のいずれかを、各々行って得たフィックス解40とミスフィックス解44A、44B、44C、44Dとの一例を示した概略図である。搬送波位相測位の場合、フィックス解40は、半径数センチメートル程度の範囲内に入る。しかしながら、マルチパス誤差の影響を受けている衛星が複数含まれている場合は、正しいフィックス解に近くてもばらつきが大きくなることが考えられるため、信頼性の高いフィックス解を探索する円の大きさは、半径数センチメートル~数十センチメートル程度以内が望ましい。
以上説明したように、本実施の形態に係る位置推定装置100によれば、測位計算に用いる衛星として、複数の異なる衛星の組合せを用いて、複数のフィックス解を求め、ある一定の範囲内の集合に属するフィックス解を測位結果に採用することにより、搬送波位相測位における測位精度を担保できる。
マルチパスの影響により、従来の衛星判定及び選択だけでは十分に誤差の大きな衛星を排除しきれない場合、搬送波位相測位によりフィックス解と判定されても、ミスフィックスとなり測位誤差が大きい場合がある。
フィックス解は、搬送波位相の波数推定を行い、その後、正しいフィックス解かどうかをRatioテストにより判定している。Ratioテストで正しいと判定されたにもかかわらず波数推定に間違いがある場合、ミスフィックスとなり、測位誤差が発生する。正しいフィックス解は、通常、数センチメートルの精度が得られるとされている。
ミスフィックスは、マルチパス誤差等の影響で波数推定に失敗した場合であり、波数の整数値を推定するため、その測位誤差は「離散的」な性質を持ち、図4に示したミスフィックス解44A、44B、44C、44Dのように、大きな測位誤差となる場合が多い。
マルチパスの影響がある衛星を排除した衛星の組合せで測位をすると、マルチパス誤差の影響が小さい測位解(正しいフィックス解)が得られる可能性がある。正しいフィックス解が得られる場合は、衛星の組合せを変えても測位誤差は非常に小さくなり、図4のフィックス解40のように、ほぼ同じ測位結果が複数個得られる。
従って、本実施の形態に係る位置推定装置100では、狭い範囲に集中している複数のフィックス解の平均値又は中心値を測位結果である最終的なフィックス解として採用することにより、搬送波位相測位における測位精度を担保できる。
10 GNSS受信機
12 衛星判定部
14 衛星組合せ選択部
16 搬送波位相測位計算部
18 記憶部
20 フィックス解判定部
22 出力部
24 補正情報取得部
30、32 衛星
34 基準局
36 ローバー
40 フィックス解
44A、44B、44C、44D ミスフィックス解
100 位置推定装置

Claims (12)

  1. 衛星の各々から電波を受信する受信部と、
    衛星の各々から電波を受信する基準局から前記衛星の各々に関する補正情報を取得する補正情報取得部と、
    前記電波を受信した衛星のうち、搬送波位相測位に用いる複数の衛星を各々異なる組合せで複数回選択する衛星組合せ選択部と、
    前記衛星組合せ選択部で選択した衛星の組合せの各々について、前記組合せに含まれる衛星からの電波及び前記衛星に関する前記補正情報を用い、搬送波位相測位によるフィックス解を算出する測位計算部と、
    前記衛星の組合せの各々について前記算出した前記フィックス解の分布から、最終的なフィックス解を求めて出力するフィックス解判定部と、
    を備えた位置推定装置。
  2. 前記衛星組合せ選択部は、前記電波を受信した衛星のうち、搬送波位相測位に用いることが可能な衛星の組合せを全て順に選択する請求項1に記載の位置推定装置。
  3. 前記衛星組合せ選択部は、電波のSN比が所定値以下であること、仰角が所定角度以下であること、及びフロート解を求めたときの前記衛星までの疑似距離の残差が閾値以上であることの少なくとも一つを満たす衛星を排除して残った衛星から、搬送波位相測位に用いる衛星の組合せを選択する請求項1に記載の位置推定装置。
  4. 前記衛星組合せ選択部は、前記衛星を排除して残った衛星から、ランダムに衛星の組合せを選択する請求項3に記載の位置推定装置。
  5. 前記衛星組合せ選択部は、前記衛星を排除して残った衛星のうち、高仰角の衛星を優先的に選択して、衛星の組合せを選択する請求項3に記載の位置推定装置。
  6. 前記衛星組合せ選択部は、所定時間内で電波のSN比の変動が小さい衛星を優先的に選択して、衛星の組合せを選択する請求項1に記載の位置推定装置。
  7. 前記衛星組合せ選択部は、フロート解を求めた時の前記衛星までの疑似距離の残差が小さい衛星を優先的に選択して、衛星の組合せを選択する請求項1に記載の位置推定装置。
  8. 前記フィックス解判定部は、所定の半径の円内に存在するフィックス解の数が最大となる円を探索し、該円内のフィックス解を用いて、最終的なフィックス解を求める請求項1~7のいずれか1項に記載の位置推定装置。
  9. 前記フィックス解判定部は、所定の半径の円内に存在するフィックス解の数が最大となる円が複数存在する場合、該円内のフィックス解の各々をRatioテストの値で重み付けし、円内のフィックス解の重み付けした値の合計が最大となる円内のフィックス解を用いて、最終的なフィックス解を求める請求項8に記載の位置推定装置。
  10. 前記フィックス解判定部は、前記円の中心付近に存在するフィックス解を最終的なフィックス解として出力する請求項8又は9に記載の位置推定装置。
  11. 前記フィックス解判定部は、前記円内に存在するフィックス解の平均値を最終的なフィックス解として出力する請求項8又は9に記載の位置推定装置。
  12. コンピュータを、
    衛星の各々から電波を受信する受信部、
    衛星の各々から電波を受信する基準局から前記衛星の各々に関する補正情報を取得する補正情報取得部、
    前記電波を受信した衛星のうち、搬送波位相測位に用いる複数の衛星を各々異なる組合せで複数回選択する衛星組合せ選択部、
    前記衛星組合せ選択部で選択した衛星の組合せの各々について、前記組合せに含まれる衛星からの電波及び前記衛星に関する前記補正情報を用い、搬送波位相測位によるフィックス解を算出する測位計算部、及び
    前記衛星の組合せの各々について前記算出した前記フィックス解の分布から、最終的なフィックス解を求めて出力するフィックス解判定部、
    として機能させるための位置推定プログラム。
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