JP2013083480A - Rtk測位計算に利用する衛星の選択方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 RTK測位におけるリアルタイムの測位に使用出来るとともに、1日に高精度位置を利用出来る合計時間(利用率)の向上を図ること
【解決手段】 仰角マスク又は信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる別のマスク閾値を設定し、初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号に基づいてRTK測位計算を行い、この測位解の品質チェックを行い、判定結果が良い場合にはこの測位解を高精度測位解とし、判定結果が悪い場合には別のマスク閾値を設定したマスク閾値を初期値から別のマスク閾値に変更し、この別のマスク閾値を介して新たに選択した衛星からの信号に基づいてRTK測位計算を行い、この測位解の品質チェックを行い、判定結果が良い場合にはこの測位解を高精度測位解とする。品質チェックは、Ratioテストにより行い、利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択可能とする。
【選択図】 図2

Description

この発明は、RTK測位(Real Time Kinematic)計算に利用する衛星の選択方法及びその装置に関するものである。
一般に、RTK測位は、短時間で計測可能な干渉測位の一手法で、観測開始時に整数値バイアスを決定(初期化)し、その後は、受信機間で観測データの交信を行い、リアルタイムで解析処理を実施し、移動しながら高精度測位を実現するものであり、無人飛行機や自動車などの移動体の位置制御に応用されている。
都市部における衛星を用いた測位では、捕捉可能な衛星数が増えたとしても、低い仰角や信号強度の低い信号の場合には、仰角マスクや信号強度マスク(C/N0マスク)のマスク閾値により、マルチパス誤差の大きな信号と判定されて、測位計算においてはこれらの衛星は使用されない。
一般に、測位信号がマルチパス誤差の影響を強く受けると、信号強度は大きく低下する。そこで、従来、国際公開番号 WO2006/132003号公報(特許文献1)の図10に示すように、簡単且つ確実な方法によってマルチパスの影響を受けた衛星信号を判別し、移動局の測定位置を補正することが出来るGPS受信装置及びGPS測位補正方法として、衛星信号を受信すると(ステップ100)、基準局の位置補正用データと、基準局における衛星信号の受信強度とを算出し(ステップ110)、移動局における衛星信号の受信強度と、移動局のデルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率とを算出し(ステップ120)、基準局と移動局における衛星信号の受信強度とを比較し、その差が所定の閾値T1以上である場合、及び、デルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率が所定の閾値T2以上である場合、即ち、基準局と移動局における衛星信号の受信強度の差≧T1及びデルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率≧T2の場合には、前記衛星の衛星信号を測位用衛星信号から除外して、測位精度を向上させている。
又、非特許文献1では、周囲の地形における標高の影響を考慮に入れたRAIM予測手法により、DEM(数値標高モデル)のデータベースから、現在の受信機位置と衛星情報を使用して、地形の標高に合わせて仰角マスクを変更し、その精度低下率値(DOP値:Dilution Of Precision 値)を評価している。
さらに、非特許文献2では、可視範囲の衛星群について、全ての衛星の組合せを考慮して、その全ての衛星の組合せの中でRatioテストの解が最良になるものを選択している。
国際公開番号 WO2006/132003号公報 The Effect of Terrian Mask on RAIM Availability, T. Radisic, et al,Journal of Navigation, 2010 Increasing GNSS RTK availability with a new single-epoch batchpartial ambiguity resolution algorithm, Parkins A, GPS Solutions, 2010
特許文献1に記載の方法では、測位信号がマルチパス誤差の影響を強く受けると、信号強度は大きく低下する。又、仰角に依存する理論的信号強度と都市部の移動局受信機で取得した信号強度の差が所定の閾値と比較され、閾値を越えた衛星の信号は排除して、測位精度を向上させている。即ち、衛星信号の受信強度の差≧T1及びデルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率≧T2として、衛星の信号を測位用衛星信号から除外して、測位精度を向上させている。しかしながら、仰角又は信号強度のマスク閾値を高い値に固定すると、低仰角又は信号強度の低い衛星が排除されてしまうが、同時に信号強度の低い衛星の中でもマルチパス誤差の小さい信号もすべて排除されてしまうという問題があった。
そして、発明者の解析、実験によれば、様々な衛星の配置条件で、都市部における信号を解析した結果、このような仰角又は信号強度の低い信号で、且つマルチパス誤差の小さい信号は、全信号の約1割以上存在することが判明した。
又、非特許文献1に記載の方法では、地形の標高に合わせて仰角マスクを変更し、その精度低下率値(DOP値)を評価しているので、数値標高モデルなどの外部データベースが必要であるという問題があった。
非特許文献2に記載の方法では、原理的にRatioテストの解がその閾値を超えるまで測位計算及びRatioテストの解のチェックを何回も繰り返しているので、測位計算にかかる部分のソフトウェアの計算処理時間が増大するという問題があった。この問題点により、リアルタイムの測位を要求されるRTK測位では不向きであるという問題があった。
さらに、現存するロシアのGLONASSや、将来的なGalileo、中国のCompass(北斗)、インドのGaganなどの測位衛星とGPSとの複合測位技術の開発が進む中で、測位誤差の小さい衛星を、より効果的に自動選択するアルゴリズムが求められていた。
又、発明者の実験によれば、現状の都市部において、GPS衛星のみを利用したRTK測位であるRTK−GPS測位で、1日に高精度位置を利用出来る合計時間(利用率)は、後述の表1に示すように合計2.2時間(9%)程度であった。また、GPS衛星だけでなく、GLONASS衛星からの信号を追加した複合RTK測位を行ったとしても、後述の表1に示すように利用率は8.2時間(34%)であり、さらなる利用率の向上が求められていた。
請求項1に係る発明は、衛星の仰角により衛星を選択する仰角マスク及び/又は衛星の信号強度により衛星を選択する信号強度マスクを介してRTK測位計算に利用する衛星を選択する方法において、仰角マスクのマスク閾値及び/又は信号強度マスクのマスク閾値を初期設定し、仰角マスク又は信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定し、初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号に基づいて、第1のRTK測位計算を行い、この第1のRTK測位計算における測位解について第1の品質チェックを行い、この第1の品質チェックによる判定結果が良い場合には、第1のRTK測位計算における測位解を高精度測位解とし、第1の品質チェックによる判定結果が悪い場合には、仰角マスク又は信号強度マスクの中で第1のマスク閾値を設定した方のマスク閾値を第1のマスク閾値に変更し、この変更した第1のマスク閾値を介して新たに選択した衛星からの信号に基づいて、第2のRTK測位計算を行い、この第2のRTK測位計算における測位解について第2の品質チェックを行い、この第2の品質チェックによる判定結果が良い場合には、第2のRTK測位計算における測位解を高精度測位解とすることを特徴とするRTK測位計算に利用する衛星の選択方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、第1の品質チェック及び第2の品質チェックは、Ratioテストにより行うものである。
請求項3に係る発明は、請求項1〜請求項2の何れかに係る発明において、利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択可能としたものである。
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項2の何れかに係る発明において、利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGalileo、Compass(北斗)、GAGAN、準天頂衛星からの信号を自動的に選択可能としたものである。
請求項5に係る発明は、衛星の仰角により衛星を選択する仰角マスク及び/又は衛星の信号強度により衛星を選択する信号強度マスクを介してRTK測位計算に利用する衛星を選択する装置において、仰角マスク及び/又は信号強度マスクのマスク閾値を初期設定する手段と、仰角マスク又は信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定する手段と、初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号(観測データ)に基づいて、測位解を求めるRTK測位計算部と、測位解の品質チェック手段と、品質チェック手段による判定結果が悪い場合には、前記仰角マスク又は前記信号強度マスクの中で前記第1のマスク閾値を設定した方のマスク閾値を第1のマスク閾値に変更する手段とを有することを特徴とするRTK測位計算に利用する衛星の選択装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、測位解の品質チェック手段は、Ratioテストの演算手段を有するものである。
請求項7に係る発明は、請求項5〜請求項6の何れかに係る発明において、利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択する手段を有するものである。
請求項8に係る発明は、請求項5〜請求項6の何れかに係る発明において、利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGalileo、Compass(北斗)、GAGAN、準天頂衛星からの信号を自動的に選択する手段を有するものである。
請求項1及び請求項5に係る発明は、上記のように構成したので、低仰角または信号強度の低い信号であってもマルチパス誤差の小さい信号が受信される場合には、これらの信号を有効に利用することが出来る。又、都市部における高精密位置を利用することが出来る時間、即ち、利用率を向上させることが出来る。また、一般的なGPS測位において処理に時間のかかる測位計算及び品質チェックは最大で2回ずつ行うだけでよいので、RTK測位におけるリアルタイムの使用に耐えることができる。
請求項2及び請求項6に係る発明は、上記のように構成したので、請求項1及び請求項5に係る発明と同様の効果がある。
請求項3及び請求項7に係る発明は、上記のように構成したので、利用可能な衛星の数が増加するため、測位誤差の少ない衛星を効果的に自動選択することが出来るとともに、利用率を上げることが出来る。
請求項4及び請求項8に係る発明は、上記のように構成したので、将来的に利用することが出来る測位衛星からの信号も利用することが出来るので、測位誤差の少ない衛星を効果的に自動選択することが出来る。また、利用可能な衛星の数が増加するので、利用率を上げることが出来る。
この発明の第1の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法において、仰角マスクの閾値を可変にした場合の原理を説明するための模式図である。 この発明の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法を説明するためのフローチャートである。 この発明の第2の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法において、信号強度マスクの閾値を可変した場合の原理を説明するための模式図である。 この発明の実施例を示すもので、従来の方法によりRTK測位を行った場合及びこの発明による衛星の選択方法を用いてRTK測位を行った場合におけるRTK測位結果を示す図である。
衛星の仰角により衛星を選択する仰角マスク及び/又は衛星の信号強度により衛星を選択する信号強度マスクを介してRTK測位計算に利用する衛星を選択する方法において、仰角マスクのマスク閾値及び/又は信号強度マスクのマスク閾値を初期設定し、仰角マスク又は信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定し、初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号に基づいて、第1のRTK測位計算を行い、この第1のRTK測位計算における測位解について第1の品質チェックを行い、この第1の品質チェックによる判定結果が良い場合には、第1のRTK測位計算における測位解を高精度測位解とし、第1の品質チェックによる判定結果が悪い場合には、第1のマスク閾値を設定したマスク閾値を第1のマスク閾値に変更し、この変更した第1のマスク閾値を介して新たに選択した衛星からの信号に基づいて、第2のRTK測位計算を行い、この第2のRTK測位計算における測位解について第2の品質チェックを行い、この第2の品質チェックによる判定結果が良い場合には、第2のRTK測位計算における測位解を高精度測位解とする。第1の品質チェック及び第2の品質チェックは、Ratioテストにより行い、利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択可能とする。
まず、発明者等は実施に先立って、都市部の既知点にGPS受信機を設置し、RTK測位による1日の定点観測を行った。都市部という測定環境は、建ち並ぶ高層建築物によりマルチパスが多く発生し、マルチパス誤差の影響を最も強く受ける環境であり、測位を行うには最悪と考えられる環境であるために選定した。発明者等は、1日の定点観測の結果から、1日の中でFIX解による高精度測位が利用可能な時間の合計(利用率)の調査を行うとともに、衛星の仰角又は信号強度とマルチパス誤差の詳細な特性の解析を行った。
下記の表1に示す利用率の調査結果によれば、現状の都市部において、GPS衛星のみを利用したRTK測位であるRTK−GPS測位で、1日に高精度位置を利用出来る合計時間(利用率)は、合計2.2時間(9%)程度であった。また、GPS衛星だけでなく、GLONASS衛星からの信号を追加した複合RTK測位を行ったとしても、利用率は8.2時間(34%)であった。
また、マルチパス誤差の特性の解析結果によれば、低仰角の衛星からの信号や衛星からの信号の信号強度が低い信号であっても、マルチパス誤差の小さな信号は全体の1割以上存在することが判明した。
そこで、この発明の第1の実施例を、図1〜図2及び図4に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法において、仰角マスクの閾値を可変にした場合の原理を説明するための模式図である。図2は、この発明の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法を説明するためのフローチャートである。図4は、この発明の実施例を示すもので、従来の方法によりRTK測位を行った場合及びこの発明による衛星の選択方法を用いてRTK測位を行った場合におけるRTK測位結果を示す図である。
図1において、衛星の選択装置1は、ユーザのGPS受信機2により構成され、実施例1では、定点観測を行った場所と同じ都市部にある。衛星3はGPSやGLONASS等の測位衛星である。4は仰角マスクの閾値の初期値の境界を示す境界線で、5は仰角マスクの閾値の初期値とは異なる閾値の境界を示す境界線であり、本願の衛星の選択方法によって新たに設定する仰角マスクの閾値の境界を示す境界線である。
GPS受信機2は、仰角マスクのマスク閾値や信号強度マスクのマスク閾値等の各種パラメータを初期設定する初期設定手段(図示せず)と、仰角マスク又は信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定する第1のマスク閾値設定手段(図示せず)と、衛星からの信号に基づいて測位解を求めるRTK測位計算部(図示せず)と、測位解の品質チェック手段(図示せず)と、品質チェック手段の判定結果に基づきマスク閾値を変更するマスク閾値変更手段(図示せず)とを有している。このGPS受信機2の測位解の品質チェック手段は、Ratioテストの演算手段を有している。また、GPS受信機2は、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択する手段(図示せず)及びGPSに加えてGalileo、Compass(北斗)、GAGAN、準天頂衛星からの信号を自動的に選択する手段(図示せず)を有している。なお、この実施例で利用する衛星はGPS及びGLONASSである。
衛星3aは、衛星3の中で測位のために境界線4により選択される衛星であり、衛星3bは、衛星3の中で境界線5により新たに選択される衛星である。境界線4及び境界線5は、GPS受信機2で設定するパラメータである仰角マスクを分かりやすく便宜上図示したものである。
この仰角マスクは、仰角の閾値を設けることによりマルチパス誤差の大きい低仰角の衛星からの信号を受信しないようにするために設定するパラメータであり、GPS受信機2の置かれた環境により適宜設定する。
GPS受信機の置かれる環境には「屋上」や「都市部」等があり、仰角マスクや実施例2で後述する信号強度マスク(C/N0マスク)等のパラメータは、このような環境毎に経験的に知られている適切な設定値がある。例えば、仰角マスクについては、「屋上」の場合には10〜15度であり、「都市部」の場合には20度である。
次に、作用動作について、図1〜図2に基づいて説明する。
まず、GPS受信機2の環境を都市部とした場合について、GPS受信機2の初期設定手段により、GPS受信機2の各種パラメータの初期値の設定を行う。GPS受信機2のパラメータの中で仰角マスクの閾値については、初期値とは異なる他の閾値、即ち、第1のマスク閾値をGPS受信機2の第1のマスク閾値設定手段により設定する。
この実施例1では、仰角マスクの閾値について、初期値及びこの初期値とは異なる他の閾値の2つの閾値の設定を行うが、この2つの閾値の中で、仰角が高い方の閾値、即ち、高い閾値を初期値として設定し、仰角が低い方の閾値、即ち、低い閾値を第1のマスク閾値として設定している。当然ながら、これとは逆に、低仰角の低い閾値を初期値として設定し、高仰角の高い閾値を第1のマスク閾値として設定しても良い。
この実施例1では、仰角マスクの初期値、即ち、仰角マスクの高い閾値は「30度」、第1のマスク閾値、即ち、仰角マスクの低い閾値は「20度」に設定している。また、Ratioテストの閾値を「3」に設定する。
このようにGPS受信機2の各種パラメータの設定が終了した後、通常のRTK測位と同様に衛星3からの信号(観測データ)をGPS受信機2により受信する(ステップ11)。この受信した観測データについて、最初に設定した仰角マスクの初期値により、衛星3の中でも境界線4より仰角の高い衛星3aからの信号のみを選択する(ステップ12)。
選択された衛星3aからの信号に基づいて、GPS受信機2のRTK測位計算部において第1のRTK測位計算、即ち、1回目のRTK測位計算を行う(ステップ13)。
次に、1回目のRTK測位計算によって算出された測位解について第1の品質チェック、即ち、1回目の品質チェックをGPS受信機2の品質チェック手段により行う(ステップ14)。この品質チェックは、Ratioテストにより行う。
Ratioテストは解の残差比を使ったチェックであり、このRatioテストの解がユーザで指定した閾値以上の場合には、その測位解をFIX解、即ち、高精度測位解とし、Ratioテストの解がユーザで指定した閾値未満の場合には、その測位解をFLOAT解、即ち、低精度測位解とする。なお、実施例1では、Ratioテストの解の閾値は、上述のように「3」に設定している。この「3」という数値は、RTK測位の分野においてRatioテストの閾値として経験的に用いられている数値である。
第1の品質チェックにおいて、Ratioテストの解が3以上の場合には、その測位解を高精度測位解とし(ステップ15)、この高精度測位解によりユーザの高精度位置が得られる。
一方、第1の品質チェックにおいて、Ratioテストの解が3未満の場合には、その測位解は低精度測位解であるから、GPS受信機2のマスク閾値変更手段により仰角マスクを初期値からこの初期値とは異なる他の閾値、即ち、第1のマスク閾値へ変更する(ステップ16)。
仰角マスクを初期値から第1のマスク閾値へ変更することにより、仰角マスクの初期値によって選択される衛星、即ち、境界線4により選択される衛星3aに加えて、仰角マスクの第1のマスク閾値によって選択される衛星、即ち、境界線5により衛星3bが新たに選択される。選択された衛星3a及び新たに選択された衛星3bからの信号に基づいて、GPS受信機2のRTK測位計算部において第2のRTK測位計算、即ち、2回目のRTK測位計算を行う(ステップ17)。
この第2のRTK測位計算により、再計算された測位解について第2の品質チェック、即ち、2回目の品質チェックをGPS受信機2の品質チェック手段により行う(ステップ18)。この第2の品質チェックにおいても、Ratioテストの解が3未満の場合には、再計算された測位解も低精度測位解(ステップ19)であるから、最終的にユーザは低精度測位解しか得られない。
一方、第2の品質チェックにおいて、Ratioテストの解が3以上の場合には、再計算された測位解を高精度測位解とし(ステップ15)、この高精度測位解によりユーザの高精度位置が得られる。
このようにして、2回ずつのRTK測位計算及びRatioテストのチェックを行うだけで、従来のように閾値が固定だった場合には低精度測位解となるものを、閾値を適切に変更して再計算を行うことにより高精度測位解とすることができ、高精度測位解の利用率を上げることができる。
表1及び図4に示すように、発明者等はこの発明による衛星の選択方法を用いて都市部における利用率の実験を行った。表1及び図4は、都市部の既知点において1日の定点観測を行った際の(a)この発明による衛星の選択方法を用いてRTK測位を行った結果、(b)GPS衛星及びGLONASS衛星を利用した従来の複合RTK測位によりRTK測位を行った結果、及び(c)GPS衛星のみを利用した従来のRTK−GPS測位によりRTK測位を行った結果を示している。
表1は、全観測時間86400秒(1日)に対して高精度測位解、即ち、FIX解が得られた時間、及びこのFIX解が得られた時間から算出されるFIX解の利用率を示している。
Figure 2013083480
図4は、従来の方法に対してこの発明による衛星の選択方法による効果が顕著に表れている時間帯である26000秒〜31000秒間におけるRTK測位の結果を示している。図4において、横軸は時間(秒)であり、図中の黒点は高精度測位解、即ち、FIX解の測位結果を示し、縦軸はこのFIX解の東西方向(East−West)の測位誤差を示している。図4の縦軸の原点0は測位誤差のない真値である。
表1に示すように、この発明による衛星の選択方法(a)における1日に高精度位置を利用出来る合計時間(利用率)は、合計9.6時間(40%)まで向上した。この利用率の値(9.6時間)を実施に先立って行った従来の方法による利用率の調査結果と比較した場合、GPS衛星及びGLONASS衛星を利用した複合RTK測位(b)による結果(8.2時間)より1.4時間増加し、GPS衛星のみを利用したRTK−GPS測位(c)による結果(2.2時間)より4倍以上に増加した。
また、図4に示すように、この発明による衛星の選択方法(a)は、従来の手法である(b)(c)と比較すると、図4中の黒点、即ち、FIX解の測位結果を示す測位点が増加している。従って、この発明による衛星の選択方法(a)を用いてRTK測位を行うことにより利用率が増加することは、図4に示す結果からも明らかである。
さらに、この発明による衛星の選択方法では、一般的なGPS測位において処理に時間のかかる測位計算及びRatioテストのチェックは最大で2回ずつ行うだけでよいので、RTK測位におけるリアルタイムの使用に耐えることができる。
この発明の第2の実施例を図2〜図3に基づいて詳細に説明する。図2は、この発明の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法を説明するためのフローチャートで、図3は、この発明の第2の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法において、信号強度マスクの閾値を可変にした場合の原理を説明するための模式図である。
この発明の第2の実施例は、この発明による衛星の選択方法において、仰角マスクの閾値を可変にした第1の実施例に対して、信号強度マスクの閾値を可変にした場合の実施例である。なお、第1の実施例と同じ部分については、同一名称、同一番号を用い、その説明を省略する。
図3において、衛星3cは、衛星3の中で測位のために信号強度マスクの閾値の初期値により選択される衛星であり、衛星3dは、衛星3の中で信号強度マスクの閾値の初期値とは異なる他の閾値により新たに選択される衛星である。
この信号強度マスクは、信号強度の閾値を設けることによりマルチパス誤差の大きい信号強度の低い衛星からの信号を受信しないようにするために設定するパラメータであり、GPS受信機2の置かれた環境により適宜設定する。
次に、作用動作について、図2〜図3に基づいて説明する。
まず、GPS受信機2の環境を都市部とした場合について、GPS受信機2の初期設定手段により、GPS受信機2の各種パラメータの初期値の設定を行う。GPS受信機2のパラメータの中で信号強度マスクの閾値については、初期値とは異なる他の閾値、即ち、第1のマスク閾値をGPS受信機2の第1のマスク閾値設定手段により設定する。
この実施例2では、信号強度マスクの閾値について、初期値及びこの初期値とは異なる他の閾値の2つの閾値の設定を行うが、この2つの閾値の中で、信号強度が高い方の閾値、即ち、高い閾値を初期値として設定し、信号強度が低い方の閾値、即ち、低い閾値を第1のマスク閾値として設定している。当然ながら、これとは逆に、信号強度の低い閾値を初期値として設定し、信号強度の高い閾値を第1のマスク閾値として設定しても良い。
この実施例2では、信号強度マスクの初期値、即ち、信号強度マスクの高い閾値は「30dB−Hz」、第1のマスク閾値、即ち、信号強度マスクの低い閾値は「10dB−Hz」に設定している。また、実施例1と同様に、Ratioテストの閾値を「3」に設定する。
GPS受信機2の各種パラメータの設定が終了した後、通常のRTK測位と同様に衛星3からの信号(観測データ)をGPS受信機2により受信する(ステップ11)。この受信した観測データについて、最初に設定した信号強度マスクの初期値により、衛星3の中でも信号強度マスクの初期値よりも信号強度が高い衛星3cからの信号のみを選択する(ステップ12)。
選択された衛星3cからの信号に基づいて、GPS受信機2のRTK測位計算部において第1のRTK測位計算、即ち、1回目のRTK測位計算を行う(ステップ13)。
次に、1回目のRTK測位計算によって算出された測位解について第1の品質チェック、即ち、1回目の品質チェックをGPS受信機2の品質チェック手段により行う(ステップ14)。この品質チェックは、Ratioテストにより行う。
第1の品質チェックにおいて、Ratioテストの解が3以上の場合には、その測位解を高精度測位解とし(ステップ15)、この高精度測位解によりユーザの高精度位置が得られる。
一方、第1の品質チェックにおいて、Ratioテストの解が3未満の場合には、その測位解は低精度測位解であるから、GPS受信機2のマスク閾値変更手段により信号強度マスクを初期値からこの初期値とは異なる他の閾値、即ち、第1のマスク閾値へ変更する(ステップ16)。
信号強度マスクを初期値から第1のマスク閾値へ変更することにより、信号強度マスクの初期値によって選択される衛星3cに加えて、信号強度マスクの第1のマスク閾値によって新たに選択される衛星3dがさらに選択される。選択された衛星3c及び新たに選択された衛星3dからの信号に基づいて、GPS受信機2のRTK測位計算部において第2のRTK測位計算、即ち、2回目のRTK測位計算を行う(ステップ17)。
この第2のRTK測位計算により、再計算された測位解について第2の品質チェック、即ち、2回目の品質チェックをGPS受信機2の品質チェック手段により行う(ステップ18)。この第2の品質チェックにおいても、Ratioテストの解が3未満の場合には、再計算された測位解も低精度測位解(ステップ19)であるから、最終的にユーザは低精度測位解しか得られない。
一方、第2の品質チェックにおいて、Ratioテストの解が3以上の場合には、再計算された測位解を高精度測位解とし(ステップ15)、この高精度測位解によりユーザの高精度位置が得られる。
この発明によるRTK測位計算に利用する衛星の選択方法は、移動体の高精度な自動制御が求められている無人航空機(UVA: Unmanned Aerial Vehicles)や高度道路交通システム(ITS: Intelligent Transport Systems)の分野において、移動体制御に利用することが出来る。又、EU地域の衛星測位システムであるGalileo、中国の北斗、インドのGAGAN等との複合RTK測位にも適用可能である。
また、都市部の移動体では、通信ネットワークのロバスト性を向上させるために、RTK測位における速度情報が用いられるが、これに適用することにより、高精度の位置の利用率を向上させることが出来る。
1 衛星の選択装置
2 GPS受信機
3(3a、3b、3c、3d) 衛星
一般に、測位信号がマルチパス誤差の影響を強く受けると、信号強度は大きく低下する。そこで、従来、図に示す特許文献1のように、簡単且つ確実な方法によってマルチパスの影響を受けた衛星信号を判別し、移動局の測定位置を補正することが出来るGPS受信装置及びGPS測位補正方法がある。これは、衛星信号を受信すると(ステップ100)、基準局の位置補正用データと、基準局における衛星信号の受信強度とを算出し(ステップ110)、移動局における衛星信号の受信強度と、移動局のデルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率とを算出し(ステップ120)、基準局と移動局における衛星信号の受信強度とを比較し、その差が所定の閾値T1以上である場合、及び、デルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率が所定の閾値T2以上である場合、即ち、基準局と移動局における衛星信号の受信強度の差≧T1及びデルタ擬似距離/デルタ擬似距離変化率≧T2の場合には、前記衛星の衛星信号を測位用衛星信号から除外して、測位精度を向上させている。
この発明の第1の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法において、仰角マスクの閾値を可変にした場合の原理を説明するための模式図である。 この発明の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法を説明するためのフローチャートである。 この発明の第2の実施例を示すもので、この発明による衛星の選択方法において、信号強度マスクの閾値を可変した場合の原理を説明するための模式図である。 この発明の実施例を示すもので、従来の方法によりRTK測位を行った場合及びこの発明による衛星の選択方法を用いてRTK測位を行った場合におけるRTK測位結果を示す図である。 従来のGPS測位補正方法の処理の流れを示すフローチャートである。
請求項5に係る発明は、衛星の仰角により衛星を選択する仰角マスク及び/又は衛星の信号強度により衛星を選択する信号強度マスクを介してRTK測位計算に利用する衛星を選択する装置において、仰角マスク及び/又は信号強度マスクのマスク閾値を初期設定する手段と、仰角マスク又は前記信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定する手段と、初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号(観測データ)に基づいて、第1の測位解を求めるRTK測位計算部と、第1の測位解の品質をチェックする第1の品質チェック手段と、この第1の品質チェック手段による判定結果が悪い場合には、仰角マスク又は信号強度マスクの中で第1のマスク閾値を設定した方のマスク閾値を第1のマスク閾値に変更する手段と、この変更した第1のマスク閾値を介して新たに選択した衛星からの信号に基づいて、第2の測位解を求める第2のRTK測位計算部と、第2の測位解の品質をチェックする第2の品質チェック手段とを有することを特徴とするRTK測位計算に利用する衛星の選択装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、第1及び第2の測位解の品質チェック手段は、いずれもRatioテストの演算手段を有することを特徴とするRTK測位計算に利用する衛星の選択装置である。

Claims (8)

  1. 衛星の仰角により衛星を選択する仰角マスク及び/又は衛星の信号強度により衛星を選択する信号強度マスクを介してRTK測位計算に利用する衛星を選択する方法において、
    前記仰角マスクのマスク閾値及び/又は前記信号強度マスクのマスク閾値を初期設定し、
    前記仰角マスク又は前記信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定し、
    前記初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号に基づいて、第1のRTK測位計算を行い、
    この第1のRTK測位計算における測位解について第1の品質チェックを行い、
    この第1の品質チェックによる判定結果が良い場合には、前記第1のRTK測位計算における測位解を高精度測位解とし、
    前記第1の品質チェックによる判定結果が悪い場合には、前記仰角マスク又は前記信号強度マスクの中で前記第1のマスク閾値を設定した方のマスク閾値を前記第1のマスク閾値に変更し、
    この変更した前記第1のマスク閾値を介して新たに選択した衛星からの信号に基づいて、第2のRTK測位計算を行い、
    この第2のRTK測位計算における測位解について第2の品質チェックを行い、
    この第2の品質チェックによる判定結果が良い場合には、前記第2のRTK測位計算における測位解を高精度測位解とすること
    を特徴とするRTK測位計算に利用する衛星の選択方法。
  2. 前記第1の品質チェック及び前記第2の品質チェックは、Ratioテストにより行うこと
    を特徴とする請求項1に記載のRTK測位計算に利用する衛星の選択方法。
  3. 利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択可能とすること
    を特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載のRTK測位計算に利用する衛星の選択方法。
  4. 利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGalileo、Compass(北斗)、GAGAN、準天頂衛星からの信号を自動的に選択可能とすること
    を特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載のRTK測位計算に利用する衛星の選択方法。
  5. 衛星の仰角により衛星を選択する仰角マスク及び/又は衛星の信号強度により衛星を選択する信号強度マスクを介してRTK測位計算に利用する衛星を選択する装置において、
    前記仰角マスク及び/又は前記信号強度マスクのマスク閾値を初期設定する手段と、
    前記仰角マスク又は前記信号強度マスクの何れか一方のマスク閾値について初期設定したマスク閾値とは異なる第1のマスク閾値を設定する手段と、
    前記初期設定したマスク閾値を介して選択した衛星からの信号(観測データ)に基づいて、測位解を求めるRTK測位計算部と、
    前記測位解の品質チェック手段と、
    前記品質チェック手段による判定結果が悪い場合には、前記仰角マスク又は前記信号強度マスクの中で前記第1のマスク閾値を設定した方のマスク閾値を前記第1のマスク閾値に変更する手段と、
    を有することを特徴とするRTK測位計算に利用する衛星の選択装置。
  6. 前記測位解の品質チェック手段は、Ratioテストの演算手段を有すること
    を特徴とする請求項5に記載のRTK測位計算に利用する衛星の選択装置。
  7. 利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGLONASSからの信号を自動的に選択する手段を有すること、
    を特徴とする請求項5〜請求項6の何れかに記載のRTK測位計算に利用する衛星の選択装置。
  8. 利用可能な衛星信号として、GPSに加えてGalileo、Compass(北斗)、GAGAN、準天頂衛星からの信号を自動的に選択する手段を有すること
    を特徴とする請求項5〜請求項6の何れかに記載のRTK測位計算に利用する衛星の選択装置。
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