JP2013228190A - 保冷具 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定の温度で凝固して被保冷物を保冷する保冷体を用いた保冷具において、被保冷物が保冷体によって冷やされすぎてしまうことを回避する。
【解決手段】凝固している保冷剤10と、凝固していない蓄冷剤20とを有し、蓄冷剤20が、保冷剤10の被保冷物側に配置され、その重量が、保冷剤10の重量の25%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、被保冷物を保冷する保冷具に関し、特に、被保冷物が冷やされすぎてしまうことを回避する技術に関する。
従来より、保冷剤を用いて食品等の被保冷物を保冷することが行われている。一般に使用されている保冷剤は、0℃未満の融解点を持つものが用いられ、例えば、冷凍庫で−25℃程度の低温で冷却された後に冷凍庫から取り出されて使用される。そのため、保冷剤を冷凍庫から取り出した状態のまま使用すると、被保冷物が0℃以下まで冷やされることになる。
このように、保冷剤を用いて保冷される被保冷物の中には、例えば、検体等のように、その保管環境が2〜8℃程度が好ましく、0℃以下で保冷されることが好ましくないものもある。そこで、そのような被保冷物を保冷する場合は、保冷剤を冷凍庫から取り出した後に、保冷剤を常温や冷蔵庫にある程度の時間放置した後に使用することが行われている。また、断熱材等を介して被保冷物を保冷することも考えられる。
しかしながら、保冷剤を冷凍庫から取り出してある程度の時間放置することは、効率的ではない。また、断熱材等を介して被保冷物を保冷する場合は、保冷剤の冷気が被保冷物に緩慢に伝達されるだけであり、被保冷物が冷やされすぎてしまうことには変わりがない。
ここで、融点が互いに異なる2種類の蓄冷材を用いて、冷却時間を長くする技術が考えられている(例えば、特許文献1参照)。このように融点が互いに異なる2種類の蓄冷材を用いることで、融点が高い蓄冷材の融解を抑制することができ、その結果、被保冷物の冷却時間を長くすることができるようになる。
特開2001−330351号公報
しかしながら、上述したように、融点が互いに異なる2種類の蓄冷材を用いた場合においても、使用初期においては、2種類の蓄冷材がそれぞれ凝固された状態となっていることにより、被保冷物側に配置された蓄冷材の融点が低い場合、被保冷物が0℃以下まで冷やされてしまうことになる。
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、所定の温度で凝固して被保冷物を保冷する保冷体を用いた保冷具において、被保冷物が冷やされすぎてしまうことを回避することができる保冷具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、
被保冷物を保冷する保冷具であって、
凝固している第1の保冷体と、
凝固していない第2の保冷体とを有し、
前記第2の保冷体が、前記第1の保冷体の前記被保冷物側に配置され、その重量が、前記第1の保冷体の重量の25%以上である。
上記のように構成された本発明においては、被保冷物を保冷する初期状態においては、まず、凝固している第1の保冷体が周囲温度によってその温度が上昇するとともに、凝固していない第2の保冷体が、第1の保冷体の冷気によってその温度が下降して凝固していく。それにより、被保冷物は、第2の保冷体の凝固点近傍の温度で一定に保冷される。ここで、第2の保冷体の重量を第1の保冷体の重量の25%以上とすることにより、第1の保冷体による冷気が、第2の保冷体の温度下降及び凝固のためのエネルギー以外に、被保冷物が必要以上に冷却されてしまうエネルギーとされることがなくなり、被保冷物が冷やされすぎてしまうことが回避される。そして、第2の保冷体が全て凝固した後は、第2の保冷体が第1の保冷体の融解点付近まで冷却されることにより、被保冷物が第1の保冷体の融解点近傍の温度で一定に保冷される。
また、このような第1及び第2の保冷体としては、第1の保冷体の融解点が8℃以下であり、第2の保冷体の凝固点が0〜8℃であるものを用いることが考えられる。
また、第2の保冷体の重量を第1の保冷体の重量の50%以下とすれば、被保冷物の周囲温度を所望の温度にするまでに時間がかかりすぎてしまうことがない。
本発明は、以上説明したように構成されているので、被保冷物を保冷する初期状態においては、第1の保冷体による冷気が、第2の保冷体の温度下降及び凝固のためのエネルギー以外に、被保冷物が必要以上に冷却されてしまうエネルギーとされることがなくなり、被保冷物が冷やされすぎてしまうことを回避することができる。
また、第2の保冷体の重量が、第1の保冷体の重量の50%以下であるものにおいては、被保冷物の周囲温度を所望の温度にするまでに時間がかかりすぎてしまうことが回避される。
本発明の保冷具を用いた保冷容器の実施の一形態を示す図である。 図1に示した保冷容器に保冷剤及び蓄冷剤として用いた材料の特性を示す図である。 図2に示した保冷剤A,Bの融解点及び凝固点を設定するための組成を示す図である。 図1に示した保冷容器において、配置スペースに配置した被保冷物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。 図1に示した保冷容器にて保冷剤として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤として水を用い、その重量の割合を10:2.4とした場合の温度測定結果を示すグラフである。 図1に示した保冷容器にて保冷剤として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤として水を用い、その重量の割合を10:3.2とした場合の温度測定結果を示すグラフである。 図1に示した保冷容器にて保冷剤として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2とした場合の温度測定結果を示すグラフである。 図1に示した保冷容器にて保冷剤として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2.8とした場合の温度測定結果を示すグラフである。 図1に示した保冷容器にて保冷剤として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:7.5とした場合の温度測定結果を示すグラフである。 図1に示した保冷容器において、配置スペースに配置した被保冷物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。 図10に示した実験結果において配置スペースの温度が8℃以下になるまでの時間を示すグラフである。 図1に示した保冷容器において、蓄冷剤の重量の違いによる保冷剤と蓄冷剤の温度の変化を説明するための図である。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の保冷具を用いた保冷容器の実施の一形態を示す図であり、保冷容器を上から見た図である。
本形態の保冷容器は図1に示すように、発泡スチロール等からなる断熱箱50の4つの内側面のそれぞれに、第1の保冷体となる保冷剤10と、第2の保冷体となる蓄冷剤20とが組になって配置されて構成されている。保冷剤10は、断熱箱50の内側面に当接するように配置され、蓄冷剤20は、保冷剤10の断熱箱50の内側面とは反対側の面に近接または接触した状態で配置されている。なお、保冷剤10と蓄冷剤20は、断熱箱50内の配置位置を区別するためにその名称を異ならせているが、両者とも所定の温度で凝固、融解するものである。その条件としては、保冷剤10は、融解点が8℃以下のものであり、蓄冷剤20は、凝固点が0〜8℃のものである。保冷剤10は、凝固している状態で断熱箱50内に配置され、蓄冷剤20は、凝固していない状態で断熱箱50内に配置されている。そして、保冷剤10と蓄冷剤20との4つの組によって囲まれた領域が、被保冷物が配置される配置スペース40となる。これにより、保冷剤10と蓄冷剤20との1つの組について見ると、蓄冷剤20が保冷剤10の被保冷物側に配置されていることとなり、これら保冷剤10と蓄冷剤20との1つの組から、本発明の保冷具が構成される。
以下に、上記のように構成された保冷容器の作用について、実験結果を用いて説明する。
まず、実験に用いた保冷剤10及び蓄冷剤20について説明する。
図2は、図1に示した保冷容器に保冷剤10及び蓄冷剤20として用いた材料の特性を示す図である。
図2に示すように、保冷剤10としては、保冷剤A,Bの2種類を用いた。保冷剤Aは、融解熱が270(J/g)以上であり、融解点及び凝固点がそれぞれ−2℃である。保冷剤Bは、融解熱が260(J/g)であり、融解点及び凝固点がそれぞれ−12℃である。
蓄冷剤20としては、水及び保冷剤Cの2種類を用いた。水は、融解熱が336(J/g)であり、融解点及び凝固点がそれぞれ0℃である。保冷剤Cは、融解熱が180〜200(J/g)であり、融解点が3〜8℃、凝固点が5℃である。
このような保冷剤A,Bは、その組成によって、融解点及び凝固点が設定される。
図3は、図2に示した保冷剤A,Bの融解点及び凝固点を設定するための組成を示す図である。
図3に示すように、図2に示した保冷剤A,Bは、無機塩、増粘剤及び防腐剤が分散媒内に分散、混合され、それらの割合によって、融解点及び凝固点が設定される。例えば、分散媒として水を95〜99%、無機塩として、硫酸ナトリウムを0〜5%、塩化カリウムを0〜2%、塩化ナトリウムを0〜1%とし、増粘剤としてカルボンキシメチルセルロースを0〜1%、防腐剤として有機窒素イオウ系化合物を0.1%とすることにより、上述した融解点及び凝固点を有する保冷剤Aを構成することができる。なお、保冷剤Aの組成は、上述したようなものに限らず、塩化カリウム、塩化ナトリウム等の公知の塩を適宜調整して融解点が−2℃前後になるようにすればよい。また、分散媒として水を83.3%、無機塩として、硫酸ナトリウムを0〜2%、塩化カリウムを10〜15%、塩化ナトリウムを0〜2%とし、増粘剤としてカルボンキシメチルセルロースを0〜2%、防腐剤として有機窒素イオウ系化合物を0.1%とすることにより、上述した融解点及び凝固点を有する保冷剤Bを構成することができる。なお、保冷剤Bにおいても、その他の公知の塩を適宜調整して融解点が−12℃前後になるようにすればよい。なお、増粘剤及び防腐剤については、必要に応じて0%としても本発明の作用に影響が及ぶことはなく、その割合は適宜増減させることができる。
また、図2に示した保冷剤Cは、パラフィン系化合物をエラストマーで凝固した蓄熱材を用いることが考えられる。
図1に示した保冷容器にて被保冷物を保冷する場合、上述したように、保冷剤10は、例えば、−25℃の環境下で凝固された状態で断熱箱50内に配置され、蓄冷剤20は、凝固していない状態で断熱箱50内に配置される。すると、−25℃の環境下で凝固された保冷剤10は断熱箱50内の周囲温度によってその温度が上昇する。また、蓄冷剤20は保冷剤10の冷気によってその温度が下降して凝固していく。それにより、断熱箱50の配置スペース40に配置された被保冷物は、蓄冷剤20の凝固点近傍の温度で一定に保冷される。そして、蓄冷剤20が全て凝固した後は、蓄冷剤20が保冷剤10の融解点付近まで冷却されることにより、被保冷物が保冷剤10の融解点近傍の温度で一定に保冷される。このように、保冷剤10の温度の上昇と蓄冷剤20の温度の下降は、保冷剤10と蓄冷剤20との間の熱エネルギーの交換によって行われる。
具体的には、保冷剤10の初期温度をT1、融解点をT2、固体比熱をT3、重量をW1とすると、保冷剤10にて生じる熱エネルギーJ1は、
J1=|T1−T2|×T3×W1
となり、また、蓄冷剤20の初期温度をT5、凝固点をT6、液体比熱をT7、凝固熱をT8、重量をW2とすると、蓄冷剤20にて生じる熱エネルギーJ2は、
J2=|T5−T6|×T7×W2+T8×W2
となる。そして、保冷剤10にて生じる熱エネルギーJ1以上の熱エネルギーJ2が蓄冷剤20にて生じることで、断熱箱50内の温度が保冷初期状態から冷えすぎることなく、ほぼ一定に保たれることになる。
そのため、図2に示した数値を用いて、保冷剤10の重量と蓄冷剤20の重量の比をどれだけにすれば、保冷剤10の温度の上昇に伴って生ずる熱エネルギーが蓄冷剤20にて吸収可能なものとなり、被保冷物が冷えすぎてしまうことを回避できるかが理論状態では算出することができる。しかしながら、保冷剤10、蓄冷剤20及び被保冷物は、周囲の環境にも影響を受ける。そのため、保冷剤10や蓄冷剤20にて行われる熱エネルギーの交換は、周囲にある空気や保冷容器、さらには、保冷容器の外部の雰囲気温度等の影響を受け、熱の伝導や対流、拡散等が生じ、より複雑になっているため、理論値を参考にすることは有用だが厳密にはその値がずれてしまうことが多い。
そこで、実際に図2に示した材料を用いて実験を行った。
図4は、図1に示した保冷容器において、配置スペース40に配置した被保冷物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。なお、保冷初期状態にて、配置スペース40に配置した段ボールの内部と外部の雰囲気温度が、2℃以下に低下しなかった場合を“○”で示し、2℃以下に低下してしまった場合を“×”で示している。
まず、図4に示すように、150リットルの容量の断熱箱50において、保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用い、配置スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
図5は、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用い、その重量の割合を10:2.4とした場合の温度測定結果を示すグラフである。また、図6は、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用い、その重量の割合を10:3.2とした場合の温度測定結果を示すグラフである。
図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用い、その重量の割合を10:2.4とした場合は、図5に示すように、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度は、保冷初期状態にて0℃以下に下がっていないものの、段ボールの外部の雰囲気温度が0℃以下に下がってしまっている。また、段ボールの内部の雰囲気温度も、2℃以下となっているため、検体等のように、その保管環境が2〜8℃程度が好ましいものの保管には適していない。
これに対して、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用い、その重量の割合を10:3.2とした場合は、図6に示すように、保冷初期状態でも、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2〜8℃の範囲にしか低下しない。
また、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用い、その重量の割合を10:4.8とした場合や、10:9.6とした場合も、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
次に、図4に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、配置スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
図7は、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2とした場合の温度測定結果を示すグラフである。また、図8は、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2.8とした場合の温度測定結果を示すグラフである。また、図9は、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:7.5とした場合の温度測定結果を示すグラフである。
図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2とした場合は、図7に示すように、配置スペース40に配置した段ボールの外部の雰囲気温度は、保冷初期状態にて2℃まで下がっていないものの、段ボールの内部の雰囲気温度が2℃以下に下がってしまっている。そのため、検体等のように、その保管環境が2〜8℃程度が好ましいものの保管には適していない。
これに対して、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2.8とした場合は、図8に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2〜8℃の範囲にしか低下しない。
また、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:7.5とした場合は、図9に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2〜8℃の範囲にしか低下しない。
また、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:1とした場合や、10:2とした場合も、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下してしまった。
また、図1に示した保冷容器にて保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、その重量の割合を10:2.5とした場合や、10:3.2とした場合や、10:4とした場合も、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
次に、図4に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、保冷剤10として図2に示した保冷剤Bを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、配置スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
すると、保冷剤Bと保冷剤Cの重量の割合を10:2とした場合は、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下してしまった。
これに対して、保冷剤Bと保冷剤Cの重量の割合を10:4とした場合は、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
次に、図4に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、保冷剤10、蓄冷剤20ともに図2に示した保冷剤Cを用い、配置スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
すると、保冷剤10として用いた保冷剤Cと蓄冷剤20として用いた保冷剤Cの重量の割合を10:2とした場合は、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下してしまった。
これに対して、保冷剤10として用いた保冷剤Cと蓄冷剤20として用いた保冷剤Cの重量の割合を10:4とした場合は、図4に示すように、保冷初期状態において、配置スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
上記実験結果から、保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として水を用いた場合も、保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用いた場合も、保冷剤10として図2に示した保冷剤Bを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用いた場合も、保冷剤10、蓄冷剤20ともに図2に示した保冷剤Cを用いた場合も、蓄冷剤20の重量を保冷剤10の重量の25%以上とすれば、保冷剤10や蓄冷剤20にて生じた熱エネルギーが、保冷剤10、蓄冷剤20及び被保冷物の周囲に存在する空気の影響を受けた場合でも、保冷初期状態にて、蓄冷剤20側に配置された被保冷物の温度が、2℃以下に低下してしまうことが回避されることがわかった。
このように、図1に示した保冷容器の保冷剤10と蓄冷剤20とからなる保冷具において、保冷剤10として融解点が8℃以下であるものを用い、この保冷剤10を凝固した状態とし、蓄冷剤20として凝固点が0〜8℃であるものを用い、この蓄冷剤20を凝固していない状態とし、蓄冷剤20の重量が、保冷剤10の重量の25%以上であれば、保冷初期状態にて、蓄冷剤20側に配置された被保冷物の温度が、2℃以下に低下してしまうことがなく、検体等のように、その保管環境が2〜8℃程度が好ましいものの保管には適したものとすることができる。
ここで、被保冷物が配置される配置スペース40の温度を所望の温度にするまでに長い時間がかかってしまうと、被保冷物の保管状態に悪影響が及んでしまったり、被保冷物が配置スペース40に配置できるようになるまで長い時間待たなくてはならなかったりする。そこで、配置スペース40の温度の変化と保冷剤10及び蓄冷剤20との関係について考察した。
図10は、図1に示した保冷容器において、配置スペース40に配置した被保冷物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。なお、保冷初期状態にて、配置スペース40の温度が、2℃以下に低下しなかった場合を“○”で示し、2℃以下に低下してしまった場合を“×”で示している。また、保冷初期状態にて、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間が30分以下であった場合を“○”で示し、30分を超えた場合を“×”で示している。また、図11は、図10に示した実験結果において配置スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間を示すグラフである。
図10に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、保冷剤10として図2に示した保冷剤Aを用い、蓄冷剤20として図2に示した保冷剤Cを用い、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間を測定した。
すると、図10及び図11に示すように、蓄冷剤20が用いられていない場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでにはほぼ時間がかからなかった。また、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合が10%及び20%の場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに10分かかった。また、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合が28%の場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに10〜20分かかった。また、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合が40%の場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに20〜30分かかった。また、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合が50%の場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに25分かかった。また、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合が75%の場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに65分かかった。また、保冷剤10の重量と蓄冷剤20の重量とが同等の場合は、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに105分かかった。
このように、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間は、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合によって異なっているが、図11に示すように、保冷剤10に対する蓄冷剤20の重量の割合のみによるものではない。
そこで、(保冷剤10の融解点までの顕熱量)≦(蓄冷剤20の凝固点までの顕熱量)が関係していると考えられる。保冷剤10が冷えていると蓄冷剤20との温度差により、蓄冷剤20は急激に冷却されることになるが、蓄冷剤20の重量が少なければ蓄冷剤20が急激に冷却されて凝固し、5℃付近に落ち着くことになる。
一方、蓄冷剤20の重量が多いと、蓄冷剤20が急激に冷却されても凝固点まで冷却されず、保冷剤10が融解点まで達してしまう。保冷剤10が融解点に達してしまうと、蓄冷剤20との温度差が小さいためにゆっくり冷却されることになり、それにより、配置スペース40の温度が8℃以下になるまでに時間がかかってしまうことになる。
上記のような理由及び実験結果により、蓄冷剤20の重量を保冷剤10の重量の50%以下とすれば、配置スペース40の温度を所望の温度となる8℃以下とするまでかかる時間が30分以下となり、そのための時間がかかりすぎてしまうことが回避されることになる。
図12は、図1に示した保冷容器において、蓄冷剤20の重量の違いによる保冷剤10と蓄冷剤20の温度の変化を説明するための図であり、保冷剤10と蓄冷剤20の温度の変化をわかりやすく模式的に示したものである。なお、図中実線は保冷剤10の温度を示し、破線は蓄冷剤20の温度を示す。
初期状態として、図1に示した保冷容器において、保冷剤10を−25℃に冷却し、蓄冷剤20を20℃と想定する。
蓄冷剤20の重量が、保冷剤10の重量の25%未満である場合は、図12(a)に示すように、蓄冷剤20の温度が5℃未満まで下がってしまい、それにより、配置スペース40に配置された被保冷物が冷やされすぎてしまうことになる。
また、蓄冷剤20の重量が、保冷剤10の重量の50%を超えている場合は、図12(b)に示すように、蓄冷剤20の温度が所望の温度の5℃に下がるまで4時間もかかってしまい、その結果として、配置スペース40の温度も5℃になるまで4時間もかかってしまうことになる。
これらに対して、蓄冷剤20の重量が、保冷剤10の重量の25%以上50%以下である場合は、図12(c)に示すように、蓄冷剤20の温度が5℃未満まで下がることなく、かつ、蓄冷剤20の温度が所望の温度の5℃に下がるまでの時間が30分以下となる。
このように、図1に示した保冷容器の保冷剤10と蓄冷剤20とからなる保冷具において、保冷剤10を凝固した状態とするとともに蓄冷剤20を凝固していない状態とし、蓄冷剤20の重量が、保冷剤10の重量の25%以上50%以下であれば、保冷初期状態にて、蓄冷剤20側に配置された被保冷物の温度が、所望の温度以下に低下してしまうことがなく、検体等のように、その保管環境が2〜8℃程度が好ましいものの保管には適したものとすることができるとともに、被保冷物が配置される配置スペース40の温度を所望の温度にするまでの時間がかかりすぎてしまうことを回避することができる。
なお、本形態においては、保冷具を構成する保冷剤10と蓄冷剤20との4つの組がその内部に配置された保冷容器を例に挙げて説明したが、保冷剤10と蓄冷剤20とが上述したような条件を満たすものであれば、保冷具を袋状のものに適用してもよい。
10 保冷剤
20 蓄冷剤
30 底板
40 配置スペース
50 断熱箱

Claims (3)

  1. 被保冷物を保冷する保冷具であって、
    凝固している第1の保冷体と、
    凝固していない第2の保冷体とを有し、
    前記第2の保冷体が、前記第1の保冷体の前記被保冷物側に配置され、その重量が、前記第1の保冷体の重量の25%以上である保冷具。
  2. 請求項1に記載の保冷具において、
    前記第1の保冷体の融解点が8℃以下であり、
    前記第2の保冷体の凝固点が0〜8℃である保冷具。
  3. 請求項1または請求項2に記載の保冷具において、
    前記第2の保冷体の重量が、前記第1の保冷体の重量の50%以下である保冷具。
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