WO2015045029A1 - 定温保管箱 - Google Patents
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Abstract
凝固している蓄熱体10と、凝固していない蓄熱体20とが内部に備えられ、蓄熱体20が、蓄熱体10の被保温物側に配置され、その重量が、蓄熱体10の重量の50%以下である。
Description
本発明は、被保温物を定温に保持するための定温保持具が内部に備えられた定温保管箱に関し、特に、被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避しながらも、被保温物が保管される保管スペースの温度を所望の温度にするまでに時間がかかりすぎてしまうことを回避する技術に関する。
従来より、保冷剤を用いて食品等を定温に保持して保管することが行われている。一般に使用されている保冷剤は、0℃未満の融解点を持つものが用いられ、例えば、冷凍庫で-25℃程度の低温で冷却された後に冷凍庫から取り出されて使用される。そのため、保冷剤を冷凍庫から取り出した状態のまま使用すると、食品等の被保温物が0℃以下まで冷やされることになる。
このように、保冷剤を用いて定温に保持される被保温物の中には、0℃以下で保冷されることが好ましくないものもある。そこで、そのような被保温物を定温に保持する場合は、保冷剤を冷凍庫から取り出した後に、保冷剤を常温や冷蔵庫にある程度の時間放置した後に使用することが行われている。また、断熱材等を介して被保温物を保冷することも考えられる。
しかしながら、保冷剤を冷凍庫から取り出してある程度の時間放置することは、効率的ではない。また、断熱材等を介して被保温物を保冷する場合は、保冷剤の冷気が被保温物に緩慢に伝達されるだけであり、被保温物が冷やされすぎてしまうことには変わりがない。
ここで、融点が互いに異なる2種類の蓄熱体を用い、一方の蓄熱体を凝固していない状態として被保温物の周囲に配置し、他方の蓄熱体を凝固した状態として一方の蓄熱体の外側に配置することにより、被保温物を2℃~8℃程度の定温に保持する技術が考えられており、特許文献1に開示されている。
ところで、被保温物が保管される保管スペースの温度を所望の温度にするまでに長い時間がかかってしまうと、被保温物の保管状態に悪影響が及んでしまったり、被保温物を保管スペースに保管できるようになるまでに長い時間待たなくてはならなかったりする。
ところが、特許文献1に開示されたものにおいては、そのような時間については何ら考慮されておらず、2種類の蓄熱体の割合によっては、被保温物が保管される保管スペースの温度を所望の温度にするまでに長い時間がかかってしまう虞れがある。
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避しながらも、被保温物が保管される保管スペースの温度を所望の温度にするまでに時間がかかりすぎてしまうことを回避できる定温保管箱を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、
被保温物を定温に保持するための少なくとも2つの蓄熱体からなる定温保持具が内部に備えられた定温保管箱であって、
前記定温保持具は、
凝固している第1の蓄熱体と、
凝固していない第2の蓄熱体とを有し、
前記第2の蓄熱体は、前記第1の蓄熱体の前記被保温物側に配置され、その重量が、前記第1の蓄熱体の重量の50%以下である。
被保温物を定温に保持するための少なくとも2つの蓄熱体からなる定温保持具が内部に備えられた定温保管箱であって、
前記定温保持具は、
凝固している第1の蓄熱体と、
凝固していない第2の蓄熱体とを有し、
前記第2の蓄熱体は、前記第1の蓄熱体の前記被保温物側に配置され、その重量が、前記第1の蓄熱体の重量の50%以下である。
上記のように構成された本発明においては、被保温物を定温に保持する保温初期状態では、まず、凝固している第1の蓄熱体が周囲温度によってその温度が上昇するとともに、凝固していない第2の蓄熱体が、第1の蓄熱体の冷気によってその温度が下降して凝固していく。この際、第2の蓄熱体が第1の蓄熱体の被保温物側に配置されているので、被保温物が保管される保管スペースの温度が第2の蓄熱体の凝固点近傍の温度となり、この保管スペースに保管された被保温物が、第2の蓄熱体の凝固点近傍の温度で保温されることになる。第2の蓄熱体が全て凝固した後は、第2の蓄熱体が第1の蓄熱体の融解点近傍まで冷却され、それにより、保管スペースの温度が第1の蓄熱体の融解点近傍の温度となり、この保管スペースに保管された被保温物が、第1の蓄熱体の融解点近傍の温度で保温されることになる。このようにして、被保温物が保管される保管スペースの温度が所定の範囲に保たれることとなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避される。また、第2の蓄熱体の重量が第1の蓄熱体の重量の50%以下であることにより、第1の蓄熱体の冷気によって第2の蓄熱体が全て凝固するまでの時間がかかりすぎることがなくなり、被保温物が保管される保管スペースの温度を所望の温度にするまでに時間がかかりすぎてしまうことが回避される。
このような第1及び第2の蓄熱体として、第1の蓄熱体の融解点が8℃以下であり、第2の蓄熱体の凝固点が0~8℃であるものを用いた場合は、第2の蓄熱体の重量を、第1の蓄熱体の重量の25%以上50%以下とすることにより、第1の蓄熱体による冷気が、第2の蓄熱体の温度下降及び凝固のためのエネルギー以外に、被保温物が必要以上に冷却されてしまうエネルギーとされることがなくなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避される。
また、第1及び第2の蓄熱体として、第1の蓄熱体の融解点が25℃以下であり、第2の蓄熱体の凝固点が13~25℃であるものを用いた場合は、第2の蓄熱体の重量を、第1の蓄熱体の重量の15%以上50%以下とすることにより、第1の蓄熱体による冷気が、第2の蓄熱体の温度下降及び凝固のためのエネルギー以外に、被保温物が必要以上に冷却されてしまうエネルギーとされることがなくなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避される。
本発明は、被保温物を定温に保持するために定温保管箱の内部に備えられた定温保持具が、凝固している第1の蓄熱体と、凝固していない第2の蓄熱体とを有し、第2の蓄熱体が第1の蓄熱体の被保温物側に配置された構成とすることにより、被保温物が保管される保管スペースの温度が所定の範囲に保たれることとなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避できる。また、第2の蓄熱体の重量を第1の蓄熱体の重量の50%以下とすることにより、被保温物が保管される保管スペースの温度を所望の温度にするまでに時間がかかりすぎてしまうことを回避できる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の定温保管箱の第1の実施の形態を示す図であり、定温保管箱を上から見た図である。
図1は、本発明の定温保管箱の第1の実施の形態を示す図であり、定温保管箱を上から見た図である。
本形態による定温保管箱は図1に示すように、発泡スチロール等からなる断熱箱50の4つの内側面のそれぞれに、第1の蓄熱体10と第2の蓄熱体20とが組になって配置されて構成されている。蓄熱体10は、断熱箱50の内側面に当接するように配置され、蓄熱体20は、蓄熱体10の断熱箱50の内側面とは反対側の面に近接または接触した状態で配置されている。なお、蓄熱体10,20はそれぞれ、所定の温度で凝固、融解するものであって、その条件としては、蓄熱体10は、融解点が8℃以下のものであり、蓄熱体20は、凝固点が0~8℃のものである。蓄熱体10は、凝固している状態で断熱箱50内に配置され、蓄熱体20は、凝固していない状態で断熱箱50内に配置されている。そして、蓄熱体10と蓄熱体20との4つの組によって囲まれた領域が、被保温物が保管される保管スペース40となる。これにより、蓄熱体10と蓄熱体20との1つの組について見ると、蓄熱体20が蓄熱体10の被保温物側に配置されていることとなり、これら蓄熱体10と蓄熱体20との1つの組から定温保持具が構成される。
以下に、上記のように構成された定温保管箱1の作用について、実験結果を用いて説明する。
まず、実験に用いた蓄熱体10,20について説明する。
図2は、図1に示した定温保管箱1に蓄熱体10,20として用いた材料の特性を示す図である。
蓄熱体10としては、図2に示す蓄熱材A~Cの3種類を用いた。蓄熱材Aは、融解熱が270(J/g)以上であり、融解点及び凝固点がそれぞれ-2℃である。蓄熱材Bは、融解熱が260(J/g)であり、融解点及び凝固点がそれぞれ-12℃である。蓄熱材Cは、融解熱が180~200(J/g)であり、融解点が3~8℃、凝固点が5℃である。
蓄熱体20としては、図2に示す蓄熱材C及び水の2種類を用いた。水は、融解熱が336(J/g)であり、融解点及び凝固点がそれぞれ0℃である。
このような蓄熱材A~Cは、その組成によって、融解点及び凝固点が設定される。
図3は、図2に示した蓄熱材A,Bの融解点及び凝固点を設定するための組成を示す図である。
図3に示すように、図2に示した蓄熱材A,Bは、無機塩、増粘剤及び防腐剤が分散媒内に分散、混合され、それらの割合によって、融解点及び凝固点が設定される。例えば、分散媒として水を95~99%、無機塩として、硫酸ナトリウムを0~5%、塩化カリウムを0~2%、塩化ナトリウムを0~1%とし、増粘剤としてカルボンキシメチルセルロースを0~1%、防腐剤として有機窒素イオウ系化合物を0.1%とすることにより、上述した融解点及び凝固点を有する蓄熱材Aを構成することができる。なお、蓄熱材Aの組成は、上述したようなものに限らず、塩化カリウム、塩化ナトリウム等の公知の塩を適宜調整して融解点が-2℃前後になるようにすればよい。また、分散媒として水を83.3%、無機塩として、硫酸ナトリウムを0~2%、塩化カリウムを10~15%、塩化ナトリウムを0~2%とし、増粘剤としてカルボンキシメチルセルロースを0~2%、防腐剤として有機窒素イオウ系化合物を0.1%とすることにより、上述した融解点及び凝固点を有する蓄熱材Bを構成することができる。なお、蓄熱材Bにおいても、その他の公知の塩を適宜調整して融解点が-12℃前後になるようにすればよい。なお、増粘剤及び防腐剤については、必要に応じて0%としても本発明の作用に影響が及ぶことはなく、その割合は適宜増減させることができる。
また、図2に示した蓄熱材Cは、パラフィン系化合物をエラストマーで凝固した蓄熱材を用いることが考えられる。
図1に示した定温保管箱1にて被保温物を保温する場合、上述したように、蓄熱体10は、例えば、-25℃の環境下で凝固された状態で断熱箱50内に配置され、蓄熱体20は、凝固していない状態で断熱箱50内に配置される。すると、-25℃の環境下で凝固された蓄熱体10は断熱箱50内の周囲温度によってその温度が上昇する。また、蓄熱体20は蓄熱体10の冷気によってその温度が下降して凝固していく。それにより、断熱箱50の保管スペース40に保管された被保温物は、蓄熱体20の凝固点近傍の温度で一定に保温される。そして、蓄熱体20が全て凝固した後は、蓄熱体20が蓄熱体10の融解点付近まで冷却されることにより、被保温物が蓄熱体10の融解点近傍の温度で一定に保温される。このように、蓄熱体10の温度の上昇と蓄熱体20の温度の下降は、蓄熱体10と蓄熱体20との間の熱エネルギーの交換によって行われる。
具体的には、蓄熱体10の初期温度をT1、融解点をT2、固体比熱をT3、重量をW1とすると、蓄熱体10にて生じる熱エネルギーJ1は、
J1=|T1-T2|×T3×W1
となり、また、蓄熱体20の初期温度をT5、凝固点をT6、液体比熱をT7、凝固熱をT8、重量をW2とすると、蓄熱体20にて生じる熱エネルギーJ2は、
J2=|T5-T6|×T7×W2+T8×W2
となる。そして、蓄熱体10にて生じる熱エネルギーJ1以上の熱エネルギーJ2が蓄熱体20にて生じることで、断熱箱50内の温度が保温初期状態から冷えすぎることなく、ほぼ一定に保たれることになる。
J1=|T1-T2|×T3×W1
となり、また、蓄熱体20の初期温度をT5、凝固点をT6、液体比熱をT7、凝固熱をT8、重量をW2とすると、蓄熱体20にて生じる熱エネルギーJ2は、
J2=|T5-T6|×T7×W2+T8×W2
となる。そして、蓄熱体10にて生じる熱エネルギーJ1以上の熱エネルギーJ2が蓄熱体20にて生じることで、断熱箱50内の温度が保温初期状態から冷えすぎることなく、ほぼ一定に保たれることになる。
そのため、図2に示した数値を用いて、蓄熱体10の重量と蓄熱体20の重量との割合をどれだけにすれば、蓄熱体10の温度の上昇に伴って生ずる熱エネルギーが蓄熱体20にて吸収可能なものとなり、被保温物が冷えすぎてしまうことを回避できるかが理論状態では算出することができる。しかしながら、蓄熱体10,20及び被保温物は、周囲の環境にも影響を受ける。そのため、蓄熱体10,20にて行われる熱エネルギーの交換は、周囲にある空気や定温保管箱1、さらには、定温保管箱1の外部の雰囲気温度等の影響を受け、熱の伝導や対流、拡散等が生じ、より複雑になっているため、理論値を参考にすることは有用だが厳密にはその値がずれてしまうことが多い。
そこで、実際に図2に示した材料を用いて実験を行った。
図4は、図1に示した定温保管箱1において、保管スペース40に保管した被保温物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。なお、保温初期状態にて、保管スペース40に配置した段ボールの内部と外部の雰囲気温度が、2℃以下に低下しなかった場合を“○”で示し、2℃以下に低下してしまった場合を“×”で示している。
まず、図4に示すように、150リットルの容量の断熱箱50において、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用い、保管スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
図5は、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用い、その重量の割合を10:2.4とした場合の温度測定結果を示すグラフである。また、図6は、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用い、その重量の割合を10:3.2とした場合の温度測定結果を示すグラフである。
図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用い、その重量の割合を10:2.4とした場合は、図5に示すように、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度は、保温初期状態にて0℃以下に下がっていないものの、段ボールの外部の雰囲気温度が0℃以下に下がってしまっている。また、段ボールの内部の雰囲気温度も、2℃以下となっているため、検体等のように、その保管環境が2~8℃程度が好ましいものの保管には適していない。
これに対して、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用い、その重量の割合を10:3.2とした場合は、図6に示すように、保温初期状態でも、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2~8℃の範囲にしか低下しない。
また、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用い、その重量の割合を10:4.8とした場合や、10:9.6とした場合も、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
次に、図4に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、保管スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
図7は、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:2とした場合の温度測定結果を示すグラフである。また、図8は、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:2.8とした場合の温度測定結果を示すグラフである。また、図9は、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:7.5とした場合の温度測定結果を示すグラフである。
図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:2とした場合は、図7に示すように、保管スペース40に配置した段ボールの外部の雰囲気温度は、保温初期状態にて2℃まで下がっていないものの、段ボールの内部の雰囲気温度が2℃以下に下がってしまっている。そのため、検体等のように、その保管環境が2~8℃程度が好ましいものの保管には適していない。
これに対して、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱材20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:2.8とした場合は、図8に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2~8℃の範囲にしか低下しない。
また、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:7.5とした場合も、図9に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2~8℃の範囲にしか低下しない。
また、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:1とした場合は、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下してしまった。
また、図1に示した定温保管箱1にて蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、その重量の割合を10:2.5とした場合や、10:3.2とした場合や、10:4とした場合も、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
次に、図4に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、保管スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
すると、蓄熱体10と蓄熱体20との重量の割合を10:2とした場合は、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下してしまった。
これに対して、蓄熱体10と蓄熱体20との重量の割合を10:4とした場合は、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
次に、図4に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、蓄熱体10,20ともに図2に示した蓄熱材Cを用い、保管スペース40に配置した段ボールの雰囲気温度を測定した。
すると、蓄熱体10と蓄熱体20との重量の割合を10:2とした場合は、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下してしまった。
これに対して、蓄熱体10と蓄熱体20との重量の割合を10:2.8とした場合は、図4に示すように、保温初期状態において、保管スペース40に配置した段ボールの内部の雰囲気温度も段ボールの外部の雰囲気温度も、2℃以下に低下しなかった。
上記実験結果から、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として水を用いた場合も、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用いた場合も、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用いた場合も、蓄熱体10,20ともに図2に示した蓄熱材Cを用いた場合も、蓄熱体20の重量を蓄熱体10の重量の25%以上とすれば、蓄熱体10,20にて生じた熱エネルギーが、蓄熱体10,20及び被保温物の周囲に存在する空気の影響を受けた場合でも、保温初期状態にて、蓄熱体20側に配置された被保温物の温度が2℃以下に低下してしまうことが回避されることがわかった。
このように、図1に示した定温保管箱1において、蓄熱体20を被保温物側に配置し、蓄熱体10として融解点が8℃以下であるものを用い、この蓄熱体10を凝固した状態とし、蓄熱体20として凝固点が0~8℃であるものを用い、この蓄熱体20を凝固していない状態とし、蓄熱体20の重量を蓄熱体10の重量の25%以上とすれば、保温初期状態にて被保温物の温度が2℃以下に低下してしまうことがなく、検体等のように、その保管環境が2~8℃程度が好ましいものの保管には適したものとすることができる。なお、蓄熱体10の融解点及び蓄熱体20の凝固点、並びに、蓄熱体10,20の重量比は、保管スペース40の温度をどのくらいにするかによって任意に設定されることになるが、蓄熱体10を凝固した状態とし、蓄熱体20を凝固していない状態とし、蓄熱体20を蓄熱体10の被保温物側に配置することにより、被保温物を定温に保持する保温初期状態では、まず、蓄熱体10が周囲温度によってその温度が上昇するとともに、蓄熱体20が、蓄熱体10の冷気によってその温度が下降して凝固していき、それにより、保管スペース40の温度が蓄熱体20の凝固点近傍の温度となり、この保管スペース40に保管された被保温物が、蓄熱体20の凝固点近傍の温度で保温されることになり、蓄熱体20が全て凝固した後は、蓄熱体20が蓄熱体10の融解点近傍まで冷却され、それにより、保管スペース40の温度が蓄熱体10の融解点近傍の温度となり、この保管スペース40に保管された被保温物が、蓄熱体10の融解点近傍の温度で保温されることになるというように、被保温物が保管される保管スペース40の温度が所定の範囲に保たれることとなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避される。
ここで、被保温物が保管される保管スペース40の温度を所望の温度にするまでに長い時間がかかってしまうと、被保温物の保管状態に悪影響が及んでしまったり、被保温物が保管スペース40に保管できるようになるまで長い時間待たなくてはならなかったりする。そこで、保管スペース40の温度変化と蓄熱材10,20との関係について考察した。
図10は、図1に示した定温保管箱1において、保管スペース40に保管した被保温物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。なお、保温初期状態にて、保管スペース40の温度が、2℃以下に低下しなかった場合を“○”で示し、2℃以下に低下してしまった場合を“×”で示している。また、保温初期状態にて、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間が30分以下であった場合を“○”で示し、30分を超えた場合を“×”で示している。また、図11は、図10に示した実験結果において保管スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間を示すグラフである。
図10に示すように、24リットルの容量の断熱箱50において、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間を測定した。
すると、図10及び図11に示すように、蓄熱体20が用いられていない場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでにはほぼ時間がかからなかった。また、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合が10%及び20%の場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに10分かかった。また、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合が28%の場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに10~20分かかった。また、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合が40%の場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに20~30分かかった。また、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合が50%の場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに25分かかった。また、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合が75%の場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに65分かかった。また、蓄熱体10の重量と蓄熱体20の重量とが同量の場合は、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに105分かかった。
このように、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでの時間は、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合によって異なっているが、図11に示すように、蓄熱体10に対する蓄熱体20の重量の割合のみによるものではない。
そこで、(蓄熱体10の融解点までの顕熱量)≦(蓄熱体20の凝固点までの顕熱量)が関係していると考えられる。蓄熱体10が冷えていると蓄熱体20との温度差により、蓄熱体20は急激に冷却されることになるが、蓄熱体20の重量が少なければ蓄熱体20が急激に冷却されて凝固し、5℃付近に落ち着くことになる。
一方、蓄熱体20の重量が多いと、蓄熱体20が急激に冷却されても凝固点まで冷却されず、蓄熱体10が融解点まで達してしまう。蓄熱体10が融解点に達してしまうと、蓄熱体20との温度差が小さいためにゆっくり冷却されることになり、それにより、保管スペース40の温度が8℃以下になるまでに時間がかかってしまうことになる。
上記のような理由及び実験結果により、蓄熱体20の重量を蓄熱体10の重量の50%以下とすれば、保管スペース40の温度を所望の温度となる8℃以下とするまでかかる時間が30分以下となり、そのための時間がかかりすぎてしまうことが回避されることになる。
図12a~図12cは、図1に示した定温保管箱1において、蓄熱体20の重量の違いによる蓄熱体10,20の温度の変化を説明するための図であり、蓄熱体10,20の温度の変化をわかりやすく模式的に示したものである。なお、図中実線は蓄熱体10の温度を示し、破線は蓄熱体20の温度を示す。
初期状態として、図1に示した定温保管箱1において、蓄熱体10を-25℃に冷却し、蓄熱体20を20℃と想定する。
24リットルの容量の断熱箱50において、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用いた場合、蓄熱体20の重量が、蓄熱体10の重量の25%未満である場合は、図12aに示すように、蓄熱体20の温度が5℃未満まで下がってしまい、それにより、保管スペース40に保管された被保温物が冷やされすぎてしまうことになる。
また、蓄熱体20の重量が、蓄熱体10の重量の50%を超えている場合は、図12bに示すように、蓄熱体20の温度が所望の温度の5℃に下がるまで4時間もかかってしまい、その結果として、保管スペース40の温度も5℃になるまで4時間もかかってしまうことになる。
これらに対して、蓄熱体20の重量が、蓄熱体10の重量の25%以上50%以下である場合は、図12cに示すように、蓄熱体20の温度が5℃未満まで下がることなく、かつ、蓄熱体20の温度が所望の温度の5℃に下がるまでの時間が30分以下となる。
このように、図1に示した定温保管箱1において、断熱箱50として24リットルの容量を用い、蓄熱体10として図2に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体20として図2に示した蓄熱材Cを用い、蓄熱体10を凝固した状態とするとともに蓄熱体20を凝固していない状態とした場合、蓄熱体20の重量が、蓄熱体10の重量の25%以上50%以下であれば、保温初期状態にて、蓄熱体20側に配置された被保温物の温度が、2℃以下に低下してしまうことがなく、検体等のように、その保管環境が2~8℃程度が好ましいものの保管には適したものとすることができるとともに、被保温物が保管される保管スペース40の温度を所望の温度にするまでの時間がかかりすぎてしまうことを回避することができる。なお、蓄熱体10の融解点及び蓄熱体20の凝固点、並びに、蓄熱体10,20の重量比は、保管スペース40の温度をどのくらいにするかによって任意に設定されることになるが、上述したように、蓄熱体10を凝固した状態とし、蓄熱体20を凝固していない状態とし、蓄熱体20を蓄熱体10の被保温物側に配置することにより、被保温物が保管される保管スペース40の温度が所定の範囲に保たれることとなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避されるため、蓄熱体10を凝固した状態とし、蓄熱体20を凝固していない状態とし、蓄熱体20を蓄熱体10の被保温物側に配置し、蓄熱体20の重量を蓄熱体10の重量の50%以下とすれば、被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避しながらも、被保温物が保管される保管スペース40の温度を所望の温度にするまでの時間がかかりすぎてしまうことを回避することができる。
(第2の実施の形態)
図13は、本発明の定温保管箱の第2の実施の形態を示す図であり、定温保管箱を上から見た図である。
図13は、本発明の定温保管箱の第2の実施の形態を示す図であり、定温保管箱を上から見た図である。
本形態による定温保管箱は図13に示すように、発泡スチロール等からなる断熱箱150の4つの内側面のそれぞれにポケット160が設けられ、このポケット160の内部に、第1の蓄熱体110と第2の蓄熱体120とが組になって収納されて構成されている。また、定温保管箱101の天井及び底面のそれぞれにも1つずつのポケットが設けられている。
これら蓄熱体110,120は、これらのポケット160内において、蓄熱体110が断熱箱150の内側面側に配置され、蓄熱体120がそれとは反対側に配置され、互いに近接または接触した状態で配置されている。蓄熱体110,120はそれぞれ、所定の温度で凝固、融解するものであって、その条件としては、蓄熱体110はその融解点が25℃以下のものであり、蓄熱体120はその凝固点が13~25℃のものである。蓄熱体110は、凝固している状態でポケット160内に収納され、蓄熱体120は、凝固していない状態でポケット160内に収納されている。そして、蓄熱体110,120が収納された6つのポケット160によって囲まれた領域が、被保温物が保管される保管スペース140となる。これにより、蓄熱体110,120からなる1つの組について見ると、蓄熱体120が蓄熱体110の被保温物側に配置されていることとなり、これら蓄熱体110,120の1つの組から定温保持具が構成される。
以下に、上記のように構成された定温保管箱101の作用について、実験結果を用いて説明する。
まず、実験に用いた蓄熱体110,120について説明する。
図14は、図13に示した定温保管箱101に蓄熱体110,120として用いた材料の特性を示す図である。
蓄熱体110,120としては、ゲル化剤を10%含有したパラフィン系蓄熱体を用い、図14に示すように蓄熱材A,Bの2種類を用いた。蓄熱材Aは、融解熱が180~200(J/g)以上であり、融解点が3~7℃であり、凝固点が5℃である。蓄熱材Bは、融解熱が180~200(J/g)以上であり、融解点が15~17℃であり、凝固点が17℃である。
図13に示した定温保管箱101にて被保温物を保温する場合、上述したように、蓄熱体110は、例えば、5℃の環境下で凝固された状態でポケット160内に収納され、蓄熱体120は、凝固していない状態でポケット160内に収納される。すると、5℃の環境下で凝固された蓄熱体110は断熱箱150内の周囲温度によってその温度が上昇する。また、蓄熱体120は蓄熱体110の冷気によってその温度が下降して凝固していく。それにより、断熱箱150の保管スペース140に保管された被保温物は、蓄熱体120の凝固点近傍の温度で一定に保温される。そして、蓄熱体120が全て凝固した後は、蓄熱体120が蓄熱体110の融解点付近まで冷却されることにより、被保温物が蓄熱体110の融解点近傍の温度で一定に保温される。このように、蓄熱体110の温度の上昇と蓄熱体120の温度の下降は、蓄熱体110と蓄熱体120との間の熱エネルギーの交換によって行われる。
具体的には、蓄熱体110の初期温度をT1、融解点をT2、固体比熱をT3、重量をW1とすると、蓄熱体110にて生じる熱エネルギーJ1は、
J1=|T1-T2|×T3×W1
となり、また、蓄熱体120の初期温度をT5、凝固点をT6、液体比熱をT7、凝固熱をT8、重量をW2とすると、蓄熱体120にて生じる熱エネルギーJ2は、
J2=|T5-T6|×T7×W2+T8×W2
となる。そして、蓄熱体110にて生じる熱エネルギーJ1以上の熱エネルギーJ2が蓄熱体120にて生じることで、断熱箱150内の温度が保温初期状態から冷えすぎることなく、ほぼ一定に保たれることになる。
J1=|T1-T2|×T3×W1
となり、また、蓄熱体120の初期温度をT5、凝固点をT6、液体比熱をT7、凝固熱をT8、重量をW2とすると、蓄熱体120にて生じる熱エネルギーJ2は、
J2=|T5-T6|×T7×W2+T8×W2
となる。そして、蓄熱体110にて生じる熱エネルギーJ1以上の熱エネルギーJ2が蓄熱体120にて生じることで、断熱箱150内の温度が保温初期状態から冷えすぎることなく、ほぼ一定に保たれることになる。
そのため、図14に示した数値を用いて、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合をどれだけにすれば、蓄熱体110の温度の上昇に伴って生ずる熱エネルギーが蓄熱体120にて吸収可能なものとなり、被保温物が冷えすぎてしまうことを回避できるかが理論状態では算出することができる。しかしながら、蓄熱体110,120及び被保温物は、周囲の環境にも影響を受ける。そのため、蓄熱体110,120にて行われる熱エネルギーの交換は、周囲にある空気や定温保管箱、さらには、定温保管箱の外部の雰囲気温度等の影響を受け、熱の伝導や対流、拡散等が生じ、より複雑になっているため、理論値を参考にすることは有用だが厳密にはその値がずれてしまうことが多い。
そこで、実際に図14に示した材料を用いて実験を行った。
図15は、図13に示した定温保管箱101において、保管スペース140に保管した被保温物の初期温度低下の実験条件及びその結果を示す図である。なお、保温初期状態にて、保管スペース140に保管した被保温物の温度が、15℃未満に低下しなかった場合を“○”で示し、15℃未満に低下してしまった場合を“×”で示している。また、図16a~図16eは、図15に示した条件における被保温物の温度の変化を示すグラフである。
測定条件として、外気温が17℃の環境において、蓄熱体110,120を、5℃、17℃にそれぞれ予冷するとともに、24リットルの容量の断熱箱150を17℃に予冷し、被保温物として、17℃に予冷された水5ml入りの試験管50本を用いた。この測定条件において、蓄熱体110,120の重量の割合を変えて被保温物の温度を測定した。
まず、蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体120を用いずに、保管スペース140に保管した被保温物の温度を測定した。なお、被保温物の二カ所の温度を測定し、図16a~図16eにおいて被保温物の二カ所の温度の変化を実線と破線でそれぞれ示す。
図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体120を用いない場合は、図16aに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度は、保温初期状態にて15℃未満まで下がってしまっている。そのため、その保管環境が15~25℃程度が好ましいものの保温には適していない。
次に、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110,120の重量の割合を変えて、保管スペース140に保管した被保温物の温度を測定した。
蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:1とした場合は、図16bに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度は、保温初期状態にて15℃未満まで下がってしまっている。そのため、その保管環境が15~25℃程度が好ましいものの保温には適していない。
蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:1.5とした場合は、図16cに示すように、保管スペース40に保管した被保温物の温度は、保温初期状態でも15℃未満に下がることはない。
また、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:2とした場合や、10:5とした場合でも、図16d及び図16eに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度は、保温初期状態でも15℃未満に下がることはない。
また、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量とを同量にした場合も、保管スペース140に保管した被保温物の温度が、保温初期状態でも15℃未満に下がることはなかった。
次に、蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体120として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:2として、保管スペース140に保管した被保温物の温度を測定した。
この場合も、保管スペース140に保管した被保温物の温度が、保温初期状態でも15℃未満に下がることはなかった。
上記実験結果から、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用いた場合も、蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Aを用い、蓄熱体120として図14に示した蓄熱材Bを用いた場合も、蓄熱体120の重量を蓄熱体110の重量の15%以上とすれば、蓄熱体110,120にて生じた熱エネルギーが、蓄熱体110,120及び被保温物の周囲に存在する空気の影響を受けた場合でも、保冷初期状態にて、蓄熱体120側に配置された被保温物の温度が15℃未満に低下してしまうことが回避されることがわかった。
このように、図13に示した定温保管箱101において、蓄熱体120を被保温物側に配置し、蓄熱体110として融解点が25℃以下であるものを用い、この蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120として凝固点が13~25℃であるものを用い、この蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120の重量を蓄熱体110の重量の15%以上とすれば、保温初期状態にて被保温物の温度が15℃以下に低下してしまうことがなく、その保管環境が15~25℃程度が好ましいものの保管には適したものとすることができる。なお、蓄熱体110の融解点及び蓄熱体120の凝固点、並びに、蓄熱体110,120の重量比は、保管スペース140の温度をどのくらいにするかによって任意に設定されることになるが、蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120を蓄熱体110の被保温物側に配置することにより、被保温物を定温に保持する保温初期状態では、まず、蓄熱体110が周囲温度によってその温度が上昇するとともに、蓄熱体120が、蓄熱体110の冷気によってその温度が下降して凝固していき、それにより、保管スペース140の温度が蓄熱体120の凝固点近傍の温度となり、この保管スペース140に保管された被保温物が、蓄熱体120の凝固点近傍の温度で保温されることになり、蓄熱体120が全て凝固した後は、蓄熱体120が蓄熱体110の融解点近傍まで冷却され、それにより、保管スペース140の温度が蓄熱体110の融解点近傍の温度となり、この保管スペース140に保管された被保温物が、蓄熱体110の融解点近傍の温度で保温されることになるというように、被保温物が保管される保管スペース140の温度が所定の範囲に保たれることとなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避される。
ここで、被保温物が保管される保管スペース140の温度を所望の温度にするまでに長い時間がかかってしまうと、被保温物の保管状態に悪影響が及んでしまったり、被保温物が保管スペース140に保管できるようになるまで長い時間待たなくてはならなかったりする。そこで、保管スペース140の温度変化と蓄熱材110,120との関係について考察した。
図17は、図13に示した定温保管箱101において、蓄熱体110,120の重量比の違いによる保管スペース140の温度変化の実験条件及びその結果を示す図である。また、図18a~図18cは、図17に示した実験条件による保管スペース140の温度変化を示すグラフである。
まず、蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体120を用いずに、保管スペース140の温度変化を測定した。
図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体120を用いない場合は図17に示すように、保管スペース140の温度が25℃以下になるまでにはほぼ時間がかからなかった。
次に、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱体Bを用い、蓄熱体110に対する蓄熱体120の重量の割合を変えて、保管スペース140の温度変化を測定した。
図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110に対する蓄熱体120の重量の割合を20%とした場合は、図17及び図18aに示すように、保管スペース140の温度が25℃以下になるまでに10分かかった。
また、図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110に対する蓄熱体120の重量の割合を40%とした場合は、図17及び図18bに示すように、保管スペース140の温度が25℃以下になるまでに25分かかった。
また、図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110に対する蓄熱体120の重量の割合を50%とした場合は、図17に示すように、保管スペース140の温度が25℃以下になるまでに30分かかった。
また、図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110に対する蓄熱体120の重量の割合を80%とした場合は、図17及び図18cに示すように、保管スペース140の温度が25℃以下になるまでに60分かかった。
このように、図13に示した定温保管箱101において、24リットルの容量の断熱箱150において、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110を凝固した状態とするとともに蓄熱体120を凝固していない状態とした場合、蓄熱体120の重量が、蓄熱体110の重量の15%以上50%以下であれば、保温初期状態にて、蓄熱体120側に配置された被保温物の温度が、15℃以下に低下してしまうことがなく、その保管環境が15~25℃程度が好ましいものの保管には適したものとすることができるとともに、被保温物が保管される保管スペース140の温度を所望の温度にするまでの時間を30分以下とすることができる。なお、蓄熱体110の融解点及び蓄熱体120の凝固点、並びに、蓄熱体110,120の重量比は、保管スペース140の温度をどのくらいにするかによって任意に設定されることになるが、上述したように、蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120を蓄熱体110の被保温物側に配置することにより、被保温物が保管される保管スペース140の温度が所定の範囲に保たれることとなり、被保温物が冷やされすぎてしまうことが回避されるため、蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120を蓄熱体110の被保温物側に配置し、蓄熱体120の重量を蓄熱体110の重量の50%以下とすれば、被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避しながらも、被保温物が保管される保管スペース140の温度を所望の温度にするまでの時間がかかりすぎてしまうことを回避することができる。
ここで、上述したように、蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120を蓄熱体110の被保温物側に配置した場合に、蓄熱体120の重量を蓄熱体110の重量の50%以下としたことにより生じる副次的効果について説明する。
被保温物を所望の温度にて保管する場合、その保温時間も重要なものとなる。そこで、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合と、保温時間との関係について考察した。
図19は、図13に示した定温保管箱101において、保管スペース140に保管した被保温物の保温時間の実験条件及びその結果を示す図である。また、図20a~図20dは、図19に示した条件における被保温物の温度の変化を示すグラフである。
測定条件として、外気温が40℃の環境において、蓄熱体110,120をそれぞれ、5℃、17~20℃に予冷するとともに、24リットルの容量の断熱箱150を17~20℃に予冷し、被保温物として、17~20℃に予冷された水5ml入りの試験管50本を用いた。この測定条件において、蓄熱体110,120の重量の割合を変えて被保温物の温度の時間変化を測定した。
まず、蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体120を用いずに、保管スペース140に配置した被保温物の温度を測定した。なお、被保温物の二カ所の温度を測定し、図20a~図20dにおいて被保温物の二カ所の温度の変化を実線と破線でそれぞれ示す。なお、この場合だけは、蓄熱体110を15℃に予冷した。
図13に示した定温保管箱101にて蓄熱体110として図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体120を用いない場合は、図19及び図20aに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度が15~25℃に保たれる時間は64時間であった。
次に、蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110,120の重量の割合を変えて、保管スペース140に保管した被保温物の温度変化を測定した。
蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:1.5とした場合は、図19及び図20bに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度が15~25℃に保たれる時間は77時間であった。
蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:3.5とした場合は、図19及び図20cに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度が15~25℃に保たれる時間は74時間であった。
蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量との割合を10:5とした場合は、図19及び図20dに示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度が15~25℃に保たれる時間は72時間であった。
蓄熱体110,120としてそれぞれ図14に示した蓄熱材Bを用い、蓄熱体110の重量と蓄熱体120の重量とを同量とした場合は、図19に示すように、保管スペース140に保管した被保温物の温度が15~25℃に保たれる時間は70時間であった。
このように、蓄熱体120を用いることにより、保管スペース140に保管した被保温物の保温時間が短くなってしまうことを回避できることがわかった。ところが、蓄熱体120を用いることにより、保管スペース140に保管した被保温物の保温時間が短くなってしまうことを回避できるものの、蓄熱体120の重量が多くなった場合、保管スペース140が狭くなってしまうことになる。
図21は、図19に示した条件における蓄熱体110,120の重量比に対する被保温物の保温時間の変化を示す図である。
図21に示すように、図19に示した条件においては、蓄熱体110の重量に対する蓄熱体120の重量が上述したように15%以上であれば、保温時間として70時間以上の時間を得ることができるが、蓄熱体110の重量に対する蓄熱体120の重量が50%以上となると、被保温物の保温時間に大きな変化がなくなることがわかった。
ここで、上述したように、蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120を蓄熱体110の被保温物側に配置し、蓄熱体120の重量を蓄熱体110の重量の50%以下とすれば、被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避しながらも、被保温物が保管される保管スペース140の温度を所望の温度にするまでの時間がかかりすぎてしまうことを回避することができる。
そこで、図13に示した定温保管箱101において、蓄熱体120を被保温物側に配置し、蓄熱体110として融解点が25℃以下であるものを用い、この蓄熱体110を凝固した状態とし、蓄熱体120として凝固点が13~25℃であるものを用い、この蓄熱体120を凝固していない状態とし、蓄熱体120の重量が、蓄熱体110の重量の15%以上50%以下であれば、保温初期状態にて、蓄熱体120側に配置された被保温物が冷やされすぎてしまうことを回避しながらも、被保温物が保管される保管スペース140の温度を所望の温度にするまでの時間がかかりすぎてしまうことを回避することができ、さらには、保管スペース140を必要以上に狭くすることなく、被保温物の保温時間が短くなってしまうことを回避できることになる。なお、蓄熱体110の融解点及び蓄熱体120の凝固点によっては、保温時間を70時間以上とするための蓄熱体110に対する蓄熱体120の重量は15%以上に限らない。
Claims (3)
- 被保温物を定温に保持するための少なくとも2つの蓄熱体からなる定温保持具が内部に備えられた定温保管箱であって、
前記定温保持具は、
凝固している第1の蓄熱体と、
凝固していない第2の蓄熱体とを有し、
前記第2の蓄熱体は、前記第1の蓄熱体の前記被保温物側に配置され、その重量が、前記第1の蓄熱体の重量の50%以下である定温保管箱。 - 請求項1に記載の定温保管箱において、
前記第1の蓄熱体の融解点が8℃以下であり、
前記第2の蓄熱体の凝固点が0~8℃であり、
前記第2の蓄熱体の重量が、前記第1の蓄熱体の重量の25%以上50%以下である定温保管箱。 - 請求項1に記載の定温保管箱において、
前記第1の蓄熱体の融解点が25℃以下であり、
前記第2の蓄熱体の凝固点が13~25℃であり、
前記第2の蓄熱体の重量が、前記第1の蓄熱体の重量の15%以上50%以下である定温保管箱。
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