JP2013227646A - 耐食性などに優れた亜鉛系めっき鋼板用の表面処理剤および該表面処理剤で被覆された亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents

耐食性などに優れた亜鉛系めっき鋼板用の表面処理剤および該表面処理剤で被覆された亜鉛系めっき鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】 クロムフリー化が可能な表面処理剤であって、加工後の耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れた物性を有する表面処理剤を提供する。
【解決手段】 亜鉛系めっき鋼板に、耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れたおよび接着剤との接着性に優れたおよび接着剤との接着性に優れたに優れた表面処理膜を形成するための表面処理剤であって、水溶性の多価金属リン酸塩化合物と、無機系チタン化合物と、有機系チタン化合物とを含んでなることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板に、耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れた表面処理被膜を形成するための表面処理剤ならびに該表面処理剤で被覆された亜鉛系めっき鋼板に関する。
自動車、二輪車などの燃料タンクに使用される鋼板は、燃料による耐食性、溶接性、プレス加工性および外部環境に対する耐食性など、多くの物性が要求される。特に燃料タンクとして重要な物性は、燃料に対する耐食性が最重要であり、次いで外部環境に対する耐食性である。
燃料タンク内では、ガソリンが水を含んだり、または長期放置されることによって、ガソリン中の炭化水素が酸化され酢酸またはギ酸などの有機酸が生成する。これらの有機酸は、腐食性が強く、燃料タンクの材料を著しく腐食させる。最近では、世界各国で、COの排出を減じる観点から、アルコール(メタノール、エタノール、バイオエタノール等)をガソリンに混合したものが一部で使用されており、通常のガソリンと比較して有機酸を生成する傾向が高く、腐食性も強くなっている。
また燃料タンク材は、プレスによる深絞り成形を受ける場合が多く、それによる内面側の被膜の剥離が発生する可能性があり、このような場合には、外部からの飛来塩分等が内面側に混入すると、そこからの腐食が発生し最終的に内面側からの穴あき等に繋がる可能性がある。したがって加工後の耐食性は重要な物性である。
従来の亜鉛系めっき鋼板を自動車用燃料タンク用途に適用する技術として、特許文献1では、クロメート処理した亜鉛系めっき鋼板に対して、内面側にはNiおよびAl金属粉を含有するアミン変性エポキシ樹脂層で被覆し、外面側には、ワックスを含有するシリカ含有樹脂層を被覆した表面処理鋼板が提案されている。
また特許文献2では、燃料タンクの鋼板の両表面に、亜鉛系めっき層および中間層を順次積層形成し、さらに一方の中間層上には、AlおよびNiの金属粉末とアミン変性エポキシ樹脂とを含有する第1複合被膜を形成し、また他方の中間層上には、水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、グリシジル基およびアミノ基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種の有機樹脂とシリカと潤滑剤とを含有する第2複合被膜を形成してすることが提案されている。
さらに特許文献3には、一般の亜鉛系めっき鋼材用の処理剤として、水溶性の多価リン酸塩化合物と、ヘキサフルオロチタン酸(またはその塩)と、バナジウム化合物と、キレート剤とを含む表面処理剤が開示されている。
特開平10−137681号公報 特開2001−279468号公報 特開2008−274388号公報
しかし特許文献1の表面処理鋼板は被膜にクロメートを含有しており、クロムフリーが望ましいという環境面からの要望に答えることができない。
また、特許文献2の複合被膜は、クロムフリーという観点からは望ましいものであるが、必ずしも燃料タンク材として備えるべき物性を十分に満足するものではない。
さらに特許文献3の処理剤を燃料タンク用の鋼材に適用した場合、必ずしも燃料タンクとして満足のいく物性のものは得られない。
本発明の目的は、クロムを全く使用しないクロムフリー化が可能な表面処理剤であって、
該表面処理剤によって形成される被膜で被覆された亜鉛系めっき鋼板(以下、単に表面処理鋼板ということがある)が燃料タンク用として使用可能な物性、特に加工後の耐食性および耐劣化燃料性に優れた物性を有する鋼板となる表面処理剤を提供することにある。さらにまた、本表面処理剤の被膜で被覆された鋼板を燃料タンク用のかしめ加工に供する場合、表面処理鋼板と表面処理鋼板の間に使用する接着剤との接着性に優れた処理剤を提供することにある。
本発明は、表面処理により加工後の耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板を得るための表面処理剤であって、水溶性の多価金属リン酸塩化合物と、無機系チタン化合物と、有機系チタン化合物とを含むことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤である。
また本発明は、前記多価金属リン酸塩化合物が、第一リン酸アルミニウムおよび第一リン酸マグネシウムのうちの少なくとも一方であることを特徴とする。
また本発明は、無機系チタン化合物が、ヘキサフルオロチタン酸もしくはその塩であることを特徴とする。
また本発明は、有機系チタン化合物が、チタンアルコキシド、チタンキレートおよびチタンアシレートから選択される少なくとも1種のチタン化合物であることを特徴とする。
また本発明は、無機系チタン化合物が、ヘキサフルオロチタン酸もしくはその塩であり、有機チタン化合物がチタンアルコキシドおよびチタンキレートであることを特徴とする。
また本発明は、さらに、コロイダルシリカを含むことを特徴とする。
また本発明は、さらに、バナジウム化合物を含むことを特徴とする。
また本発明は、バナジウム化合物が、バナジン酸もしくはその塩であることを特徴とする。
また本発明は、さらにキレート剤を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記キレート剤が、ホスホン酸系キレート剤であることを特徴とする。
また本発明は、前記ホスホン酸系キレート剤が1−ヒドロキシエチリデンー1,1−ジホスホン酸であることを特徴とする。
さらにまた本発明は、前記記載の表面処理剤を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布した後、焼き付けして形成される被膜で被覆されてなることを特徴とする耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板である。
本発明によると、本発明の表面処理剤を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布、焼き付けして被膜を形成することにより、燃料タンクとして加工後の耐食性および耐劣化燃料性に優れた亜鉛系めっき鋼板を得ることができる。さらにまた、本発明の表面処理剤による表面処理鋼板を燃料タンク用のかしめ加工に供する場合、表面処理鋼板と表面処理鋼板の間に使用する接着剤との接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板を得ることができる。
本発明の表面処理剤は、燃料タンク用の亜鉛系めっき鋼板の表面処理に用いるもので、その組成は、水溶性の多価金属リン酸塩化合物と、無機系チタン化合物と、有機系チタン化合物とを含んでなる。
多価金属リン酸塩化合物に、前記のチタン化合物を含ませることにより、チタンを介在させて多価リン酸塩化合物を強固に結合することができる。特に、無機系チタン化合物と、有機系チタン化合物を共に含ませることにより、緻密で密着性の高い被膜形成が可能であり、前記本発明の表面処理剤で処理された亜鉛系めっき鋼板は、加工後の耐食性および耐劣化燃料性に極めて優れた亜鉛系めっき鋼板となる。
本発明において、表面処理剤に含有される多価金属リン酸塩化合物は、被膜を形成する主体(ベース)となる成分である。多価金属リン酸塩化合物としては、2価以上の多価金属とリン酸との化合物が挙げられ、アルミニウム、マグネシウムなどの2価または3価の金属とリン酸との化合物がとりわけ好ましい。
かかる多価金属リン酸塩化合物の具体例としては、第一リン酸アルミニウム、第一リン酸マグネシウムが挙げられ、これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して使用することもできる。
多価金属リン酸塩化合物における多価金属とリン酸との比率は、リン1モルに対する多価金属のモル数が、0.23〜0.6モルであるのが好ましく、多価金属リン酸塩化合物が第一リン酸アルミニウムである場合は、A1/Pのモル比が0.7/3〜1.2/3のものが好ましく、多価金属リン酸塩化合物が第一リン酸マグネシウムである場合は、Mg/Pのモル比が0.7/2〜1.2/2のものが好ましい。
表面処理剤中の多価金属リン酸塩化合物の濃度は、1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。1重量%未満では、加水分解を起こし沈殿を生じることがあり、50重量%を超えると、多価金属リン酸塩化合物の溶解度を超えて多価金属リン酸塩化合物が沈殿し、表面処理剤の安定性に問題を生じることがある。
この多価金属リン酸塩化合物の水溶液には、該多価金属リン酸塩を構成する多価金属と同種類または異なる種類の多価金属を添加して、リン酸イオンに対する多価金属の比率を高めてもよく、多価金属は多価金属の酸化物もしくは水酸化物として添加してもよい。
これによって、低温での焼付けにおいて成膜性が向上するという効果を得ることができる。
このような多価金属としては、水酸化マグネシウムが挙げられ、水酸化マグネシウムは、酸に溶解しやすく、容易に溶液とすることができ、また低温での焼付けでの成膜性の向上効果が大きい。
また、本発明の表面処理剤において、無機系チタン化合物としては、ヘキサフルオロチタン酸(チタンフッ化水素酸)が好ましい。ヘキサフルオロチタン酸は遊離のものであっても、塩であってもよく、ヘキサフルオロチタン酸の塩としては、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が好ましい。
かかるヘキサフルオロチタン酸塩の具体的な化合物として、ヘキサフルオロチタン酸ナトリウム(チタンフッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロチタン酸カリウム(チタンフッ化カリウム)、ヘキサフルオロチタン酸リチウム(チタンフッ化リチウム)およびヘキサフルオロチタン酸アンモニウム(チタンフッ化アンモニウム)などを挙げることができる。これらのうち、ヘキサフルオロチタン酸塩としては、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウムがとりわけ好ましい。また、ヘキサフルオロチタン酸は遊離のものもしくはその塩が混合して配合されていてもよく、ヘキサフルオロチタン酸とヘキサフルオロチタン酸アンモニウムとの混合物を用いるのがさらに好ましい。
有機系チタン化合物としては、チタンアルコキシド、チタンキレートおよびチタンアシレートから選択される少なくとも1種以上が挙げられる。
チタンアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン等が挙げられる。
これらのうち、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタンなどが好ましい。これらのチタンアルコキシドは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記チタンキレート化合物としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンのいずれか1種が挙げられる。
このうち、好ましくはジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタンなどが挙げられる。
これらのチタンキレート化合物は、塩であってもよく、塩としてはアンモニウム塩、チタンベロキソクエン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
チタンキレート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
チタンアシレート化合物としては、Ti(OCOR(OR4−nで表される化合物を挙げることができる。ここでRおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、nは1〜4の整数である。また好ましいチタンアシレートは、前記式において、Rが炭素数8〜18のアルキル基であり、Rが水素原子または炭素数3〜4のアルキル基である化合物が挙げられる。
チタンアシレート化合物の具体例としては、たとえば、ポリヒドロキシチタンステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート 、ジイソプロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジイソプロポキシチタン、ジイソステアレート 、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタンなどが挙げられる。さらに好ましくはポリヒドロキシチタンステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートなどが挙げられる。
本発明の表面処理剤においては、これら有機系チタン化合物のうち、チタンアルコキシドとチタンキレートを併用すると加工後の耐食性および耐劣化燃料性においてさらに好ましい結果が得られる。併用する場合には、とりわけ、チタンアルコキシドとしては、テトラ−n−ブトキシチタンが好ましく、チタンキレートとしては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンが好ましい。
加工後の耐食性および耐劣化燃料性において、より好ましい結果が得られるのは、チタンアルコキシドとチタンキレートを組み合わせることにより酸性液中での安定性が向上し、成膜性が向上するためと考えられる。
処理剤中の無機系チタン化合物および有機系チタン化合物の含有量は、両者の合計が多価リン酸塩化合物100重量部に対し、1〜50重量部となる量が好ましい。また無機系チタン化合物と有機系チタン化合物を併用する場合には、それら化合物におけるチタンのモル比が、チタン(有機系チタン)/チタン(無機系チタン)で、1/10〜50/10となるよう併用するのが好ましい。モル比の範囲がこれらの範囲未満であっても、これらの範囲を超えても、加工後の耐食性および耐劣化燃料性が低下する傾向にある。これら無機系チタン化合物と有機系チタン化合物を組み合わせることにより加工後の耐食性および耐劣化燃料性が向上するのは、成膜性が向上し、膜が緻密化し、基材に対する密着性が向上するためと考えられる。
本発明の表面処理剤は、亜鉛系めっき鋼板に塗布、焼き付けることによって、接着剤との接着性に優れた被膜を鋼板表面に形成するが、コロイダルシリカを含むことによって、さらに接着剤との接着性に優れた被膜を形成するので好ましい。
とりわけ、本発明の表面処理剤により表面に被膜が形成された亜鉛系めっき鋼板を燃料タンク用のかしめ加工などの加工に供する場合、処理鋼板と処理鋼板とを接着剤で強固に接着しなければならないが、コロイダルシリカを含む表面処理鋼板を用いることにより、この接着性を著しく高めることができる。
本発明において、表面処理剤に配合されるコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、たとえば、平均粒子径が5〜100nmのものがあげられ、かかるコロイダルシリカの具体例をあげるとすれば、スノーテックスC(粒子径10〜20nm)、スノーテックスO(粒子径10〜20nm)、スノーテックスOS(粒子径8〜11nm)、スノーテックスUP(粒子径40〜100nm)、スノーテックスOUP(粒子径40〜100nm)、スノーテックスN(粒子径10〜20nm)、スノーテックスNS(粒子径8〜11nm)(以上、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT−20N、アデライトAT−20A、アデライトAT−20Q(以上、アデカ製)などである。
これら市販のコロイダルシリカは、通常、固形分濃度は5〜40重量%の分散液であるが、本発明の表面処理剤においては、コロイダルシリカが固形物換算で、表面処理剤に含まれる固形物の全量に対して、0.1〜50.0重量%、とりわけ1.0〜10.0重量%となる量を配合するのが好ましい。コロイダルシリカの配合量が0.1%以下では接着性が十分でなく、50.0%以上では成膜性が悪くなり耐食性が損なわれるため好ましくない。
また、前記コロイダルシリカを含む本発明の表面処理剤によって形成される被膜と良好な接着性を示す接着剤としては、金属の接着用に使用されるものであれば、特に限定されないが、たとえば、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合体を主成分とするα―オレフィン系接着剤、ポリオールとポリイソシアネート、またはイソシアネート基を持つウレタンプレポリマーとポリオールを反応させるウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂系接着剤、ポリ塩化ビニルを主成分とする塩化ビニル樹脂系接着剤、2−シアノアクリル酸エステルモノマーを主成分とするシアノアクリレート系接着剤、スチレンとブタジエン共重合体を主成分とするスチレン―ブタジエンゴム系接着剤、ニトリルゴムを主成分とするニトリルゴム系接着剤、フェノール樹脂を主成分とするフェノール樹脂系接着剤、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エチレン・酢酸ビニル系接着剤、ポリプロピレン系接着剤、ポリアミド系接着剤などを挙げることができる。
本発明の表面処理剤においては、バナジウム化合物を含むことが好ましい。バナジウム化合物を含むことで、耐食性をさらに改善することができる。表面処理剤に含有されるバナジウム化合物は、水溶性のバナジウム化合物が好ましく、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。具体的には、メタバナジン酸(トリオキソバナジン酸)などのバナジン酸、五酸化バナジウムなどの酸化バナジウム、五塩化バナジウムまたは五フッ化バナジウムなどのハロゲン化バナジウム、硫酸バナジル、硫酸バナジウム、硝酸バナジウム、燐酸バナジウム、重燐酸バナジウムなどの無機酸バナジウム、酢酸バナジウム、バナジウムアセチルアセトネートおよびバナジルアセチルアセトネートなどの有機バナジウム化合物を挙げることができる。
これらのバナジウム化合物は、その塩であってもよく、メタバナジン酸およびバナジン酸の塩を形成するものとしては、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムなどを挙げることができる。この中でも、バナジン酸化合物が好ましく、さらに、メタバナジン酸アンモニウムおよびバナジン酸カリウムが好ましく、特にメタバナジン酸アンモニウムが好ましい。
表面処理剤中のバナジウム化合物は、多価金属リン酸塩化合物100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下含有することが好ましい。1重量部未満では、充分な耐食性の改善を得ることができず、50重量部を超えると、バナジウム化合物が沈殿し、表面処理剤の安定性に問題を生じることがある。
本発明の表面処理剤は、キレート剤を含むことが好ましい。キレート剤としては、ホスホン酸系キレート剤およびオキシカルボン酸系キレート剤が好ましく、特に、ホスホン酸系キレート剤が好ましい。ホスホン酸系キレート剤のリン酸基と、多価金属リン酸塩化合物のリン酸基とが結合されてキレートが生成されるので、より均一で緻密な被膜を形成することができる。
ホスホン酸系キレート剤の具体例としては、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシアルキリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、またはそれらの塩を挙げることができる。特に、処理液を作製する際、リン酸塩化合物の水溶液への溶解性の観点から、1−ヒドロキシアルキリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。さらに好ましくは、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸である。
本発明の表面処理剤は、前記水溶性の多価金属リン酸塩化合物と、無機系チタン化合物と、有機系チタン化合物と、さらにはコロイダルシリカ、多価金属、バナジウム化合物、キレート剤などの任意成分を混合して、撹拌することによって製造することができる。
本発明の耐食性および耐劣化燃料性に優れた亜鉛系めっき鋼板は、本発明の表面処理剤を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布、焼き付けして被膜形成することによって製造することができる。
表面処理剤を適用する亜鉛系めっき鋼板は、特に限定されず、公知のめっき方法で亜鉛含有めっきが施された鋼板であればよい。めっき方法としては、たとえば、溶融めっき、電気めっきなどが挙げられる。亜鉛系めっき鋼板の例としては、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等を挙げることができる。めっき付着量も特に制限されないが、片面当たりの付着量で、電気めっき鋼板では5g/m〜70g/m、溶融めっき鋼板では30g/m〜250g/m程度が一般的である。
表面処理剤のめっき鋼板への塗布は、工業的に一般に用いられる公知の塗布方法で行うことができ、特に限定されないが、たとえば、ロールコータおよびスプレー塗装などが挙げられる。
塗布量は、被膜形成後の被膜として、膜の付着量は、100mg/m以上1000mg/m以下となる量を塗布するのが好ましい。付着量が100mg/m未満では充分な耐食性が得られない。また、付着量が1000mg/mを超える場合には耐食性の向上が飽和する上、被膜の密着性が低下することがあり、被膜の一部が加工時に削り取られやすくなり、加工後の耐食性劣化の原因となる。
焼付けは、公知の焼付け方法で行うことができ、特に限定されないが、たとえば、熱風式、赤外式および誘導加熱式などの焼付け方法によって行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。実施例および比較例中、処理液の%は、重量%を表し、残部は水である。また、重量部は、処理液中のリン酸アルミニウムの含有量を100重量部とした場合の、これに対する各成分の含有量の比率を重量部として表したものである。
(実施例1)
電気亜鉛−ニッケル合金めっき(片面当たりめっき付着量20g/m)の片面のめっき面に、以下の組成からなる表面処理剤をスピンコータで塗布し、100℃で焼き付け、塗布量が500mg/mの被膜を形成し、試験片を作成した。加工後の耐食性、耐劣化燃料性および接着性の評価は下記の方法で行った。
<表面処理剤の組成>
(多価金属リン酸塩):第一リン酸アルミニウム8.75%
(無機系チタン):チタンフッ化水素酸(森田化学工業社製)1.6%
(チタンアルコキシド):テトラ−n−ブトキシチタン(マツモトファインケミカル社製、TA−25)1.0%
(チタンキレート):ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン(マツモトファインケミカル社製、TC−100)0.75%
(バナジウム化合物):メタバナジン酸アンモニウム(太陽鉱工社製)
(キレート剤):1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(デイクエスト2010(登録商標)、サーモフォスジャパン社製)4.2%
<耐食性の評価方法>
塗布面を内面側にして、プランク径100mmΦ、ポンチ径50mmΦ、絞り速度100mm/minで、一般防錆油を塗布して絞り成形を施し、耐食性を評価した。SSTに関しては、120時間での白錆発生率(白錆発生面積率)で評価した。
白錆発生面積率 5%未満 ◎
5%〜20%未満 ○
20%以上 ×
<耐劣化燃料性の評価方法>
塗布面が内面側にして、プランク径100mmΦ、ポンチ径50mmΦ、絞り速度100mm/min、絞り高さ25mmでカップ絞り成形を行った。このカップに300ppm濃度のギ酸水溶液3ccをガソリンに添加した模擬劣化ガソリンを入れて密閉し、45℃で120時間保持した。評価は腐食生成物の面積率で行った。
腐食生成物の面積率 5%未満 ◎
5%〜10%未満 ○
10%以上 ×
<接着性の評価方法>
被覆処理した前記試験片2枚のうち、一方の試験片の被覆処理面にフェノール系の構造用接着剤(商品名:JA−7433、住友スリーエム株式会社製)を厚さ0.15mmに塗布し、もう一方の試験片の被覆処理面を重ね合わせて接着した。この状態の試験片を室温で3時間放置した後、160℃のオーブンに入れ30分間保持し、さらに室温にて12時間以上放置し接着させた。
その後、オートグラフにて引張剪断力を測定し、剪断力の値で接着性の評価をした。
剪断力 200kg/cm以上 ◎
180〜200kg/cm
180kg/cm未満 ×
結果を表2に示す。
Figure 2013227646
(表中、Aはチタンフッ化水素酸、Bはチタンフッ化アンモニウム、Cはテトラ−n−ブトキシチタン、Dはジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、Eはポリヒドロキシチタンステアレート(マツモトファインケミカル社製、TPHS)を示し、表中における括弧内の数字は第一リン酸アルミニウムの総含有量を100重量部としたときの各成分の含有率を重量部で表したものである。)
Figure 2013227646
(実施例2〜8)
表1に示す組成からなる表面処理剤を用い、実施例1と全く同様にして試験片を作成し、評価した。結果は表2に示す。
なお、実施例8では、コロイダルシリカとして、スノーテックスO(商品名、日産化学工業株式会社製)を使用した。
(比較例1および2)
表1に示す組成からなる表面処理剤を用い、実施例1と全く同様にして試験片を作成し、加工後の耐食性、耐劣化燃料性および接着性を評価した。結果は表2に示す。

Claims (12)

  1. 表面処理により加工後の耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板を得るための表面処理剤であって、水溶性の多価金属リン酸塩化合物と、無機系チタン化合物と、有機系チタン化合物とを含んでなることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  2. 前記多価金属リン酸塩化合物が、第一リン酸アルミニウムおよび第一リン酸マグネシウムのうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  3. 無機系チタン化合物が、ヘキサフルオロチタン酸もしくはその塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  4. 有機系チタン化合物が、チタンアルコキシド、チタンキレートおよびチタンアシレートから選択される少なくとも1種のチタン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  5. 無機系チタン化合物が、ヘキサフルオロチタン酸もしくはその塩であり、有機系チタン化合物がチタンアルコキシドおよびチタンキレートである請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  6. さらに、コロイダルシリカを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  7. さらに、バナジウム化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  8. バナジウム化合物が、バナジン酸もしくはその塩であることを特徴とする請求項7記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  9. さらにキレート剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  10. キレート剤が、ホスホン酸系キレート剤であることを特徴とする請求項9記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  11. ホスホン酸系キレート剤が1−ヒドロキシエチリデンー1,1−ジホスホン酸であることを特徴とする請求項10記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理剤。
  12. 請求項1〜11のいずれか1つに記載の表面処理剤を亜鉛めっき鋼板の表面に塗布した後、焼き付けして形成される被膜で被覆されてなることを特徴とする耐食性、耐劣化燃料性および接着剤との接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
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