(第1の実施形態)
(観察システムの構成に関する説明)
以下に、本発明にかかる液体供給装置を有する観察システムの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。例えば、以下の実施形態では、1つのマイクロチップに1つの液体供給装置を接続した構成としたが、1つのマイクロチップに複数の液体供給装置を接続した構成としてもよい。
図1は、本発明の液体供給装置を有する観察システムの第1の実施形態の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように観察システム10は、液体が流れる流路が形成されたマイクロチップ12と、マイクロチップ12に液体を供給する液体供給装置14と、マイクロチップ12の流路を拡大して観察した画像を取得する光学機器16と、光学機器16で取得した画像を検出する検出部18とを有する。観察システム10は、液体供給装置14からマイクロチップ12に供給され、マイクロチップ12の流路を流れる液体の画像を光学機器16及び検出部18で取得し、取得した画像をモニタに表示させること、操作者が流路を流れる液体を観察できるようにするシステムである。
以下、まず、図1及び図2を用いてマイクロチップ12の説明をする。ここで、図2は、図1に観察システムのマイクロチップの概略構成を示す分解斜視図である。図1及び図2に示すように、マイクロチップ12は、チップホルダ60と、流体チップ62と、チップ押さえ板64と、複数のOリング66とで構成されている。
チップホルダ60は、金属製の板状部材であり、面積が大きい面には、流体チップ62を保持するための凹部61が形成されている。凹部61は、一方の辺の幅が流体チップ62の幅と略同じ長さで形成されており、流体チップ62が位置ずれしないように、流体チップ62の対向する側面を挟み込んで所定位置に支持している。また、チップホルダ60は、凹部61の底面を構成する面にガラス板が配置されている。また、チップホルダ60には、ねじ止めするためのねじ穴が形成されている。
流体チップ62は、内部に流路68が形成されている。また、流路68の端部には、流路68と外部とを繋げる開口69が形成されている。ここで、本実施形態では、流路68は、一本の長い線分部と、その長い線分部68aに直交する方向に伸びた、二本の線分部68bとで構成されている。また、二本の線分部68bは、一定間隔離れて、平行に配置されており、それぞれ、該一本の長い線分部68aの交差している。つまり、一本の長い線分部68aと、二本の線分部68bとは、繋がっている。また、流体チップ62の開口69には、Oリング66が配置されている。なお、流体チップ62の開口は、流路68を構成する線分部の両端に形成されているため、本実施形態では、6つの開口が形成されている。また、流体チップ62は、少なくともチップホルダ60と対向していない面(チップ押さえ板64と対向する面)が、透明な材料で形成されている。また、流体チップ62とチップホルダ60との間には、ウレタンシートが配置されている。
なお、流路68が形成された流体チップ62は、種々の方法で作製することができる。例えば、工作機械により溝を形成した2枚の樹脂プレートを作製し、作製した2枚の樹脂プレートを張り合わせることで、内部に流路を有する流体チップ62を作製することができる。なお、流路68の端部に形成された開口は、樹脂プレートを張り合わせる前に形成しても、張り合わせた後に形成してもよい。
チップ押さえ板64は、金属で形成された板状部材であり、Oリング66が配置された開口とそれぞれ連通する注入口70と、排出口71とが形成されている。なお、注入口70は、流路68を構成する長い線分部68aの一方の端部に設けられた開口69と連通しており、排出口71と、流路68を構成する長い線分部68aの一方の端部に設けられた開口69と連通している。また、チップ押さえ板64には、注入口70と排出口71に加え、4つの開口69に対応して、4つの開口72が形成されている。また、流路68の長い線分部68aの上面に相当する領域は、線分部68aが観察できるように開口73が形成されている。また、チップ押さえ板64は、チップホルダ60のねじ穴に対応する位置にねじ穴が形成されている。
マイクロチップ12は、流体チップ62をチップホルダ60の凹部61にはめ込み、凹部61を塞ぐようにチップ押さえ板64を配置し、チップホルダ60とチップ押さえ板64とをねじによりねじ止めすることで、構成されている。これにより、流体チップ62は、チップホルダ60とチップ押さえ板64とにより固定され、流体チップ62から液体が漏れることを抑制することができる。また、チップホルダ60と流体チップ62との間にウレタンシートを配置することで、密着性を高くすることができ、好適に密着させることができる。また、開口69と注入口70、開口69と排出口71、開口69と開口72とは、Oリング66を介して連結されている、これにより流体チップ62とチップ押さえ板64との開口の連結部から液体が漏れることを抑制することができる。
なお、マイクロチップ12の形状は、特に限定されず、流路が形成されたマイクロチップであればよく、種々のマイクロチップを用いることができる。例えば、本出願人が出願した、特開2008−224500号公報に記載された流路形成チップや、特開2008−151658号公報に記載された物質捕集装置も用いることができる。
次に、図1に戻り、観察システム10の他の部分を説明する。液体供給装置14は、マイクロチップ12の流路68に液体の試料を流す装置であり、シリンジポンプ20と、供給配管22と、排出配管24と、連結部材26と、支持部28と、押し子30と、移動機構32と、圧力検出部34と、制御部36と、モニタ38と、入力部40とを有する。
シリンジポンプ20は、内部に液体の試料が溜められたシリンジ42と、前後に移動することでシリンジ42の容積を変化させるピストン44とで構成されており、ピストン44を押し、シリンジ42の内部の容積を小さくすることで、シリンジ42のピストン側とは反対側の端部(先端)に形成された開口から試料を排出する。
供給配管22は、チューブ状の部材であり、一方の端部がシリンジ42の開口と接続され、他方の端部が注入口70と接続されている。供給配管22は、シリンジ42から供給された試料を注入口70に送る。排出配管24は、チューブ状の部材であり、一方の端部が、マイクロチップ12の排出口71に接続されている。排出配管24は、排出口71から排出される試料を他方の端部から排出する。なお、排出配管24は、他方の端部が廃液受け皿等、試料を廃棄することができる部材と繋がっている。
連結部材26は、ピストン44の端部、具体的には、シリンジ42と連結していない側の端部と連結している。また、連結部材26のピストン44と連結している面とは反対側の面には、後述する圧力検出部34のロードセル51が配置されている。以下、図3−1及び図3−2を用いて、連結部材26の形状を説明する。ここで、図3−1は、図1に示す連結部材の概略構成を示す正面図であり、図3−2は、図3−1のA−A線断面図である。なお、図3−2には、ロードセル51と、ねじ77も示す。図3−1及び図3−2に示すように連結部材26は、円柱状の部材であり、内部に、ピストン保持凹部74と、検出部設置凹部76とが形成されている。また、連結部材26は、ピストン44と押し子30との間に加わる圧力では、実質的に変形(伸縮)しない剛性の部材で形成されている。
ピストン保持凹部74は、ピストン44側の端部からロードセル51側の端部に向かって、開口の径が変化しない直動部と開口の径が徐々に小さくなるテーパ部(つまり、先端が切り落とされた円錐形状となる部分)とが繋がった形状で形成されている。ピストン保持凹部74は、ロードセル51側の一部、つまり凹部の底となる部分をテーパ部とすることで、ピストン44の端部の形状や径が種々の形状であっても、ピストン44の移動方向(軸方向)に直交する方向にずれないように保持することができる。これにより、ロードセル51側の面から加えられた力を、ピストン44の軸方向に的確に伝達することができる。
また、検出部設置凹部76は、ロードセル51が配置される面に形成された凹部であり、ロードセル51がはめ込まれる。検出部設置凹部76にはめ込まれたロードセル51は、ピストン44の移動方向に直交する方向にずれないように保持される。連結部材26は、以上のような構成でありロードセル51とピストン44と押し子30とがピストンの軸方向において同軸上(直線的)となるように、ピストン44に連結され、ロードセル51を保持している。また、ロードセル51は、ねじ77により連結部材26に固定されている。
図1に戻り、各部の説明を続ける。支持部28は、シリンジポンプ20のシリンジ42を支持する部材であり、シリンジ42の長手方向に伸びた箱状の部材であり、シリンジ42の長手方向に延びた溝が形成されている。シリンジ42は、この溝に配置されている。なお、支持部28は、シリンジ42を安定して保持する形状であればよく、その形状は限定されない。
押し子30は、板状部材であり、表面(面積が一番大きい面)が、連結部材26のロードセル51が配置された面に対面して配置されている。また、押し子30は、後述する移動機構32の移動部47に固定されており、移動部47ともに、ピストン44の移動方向と平行な方向に移動される。
次に、図1、図4及び図5−1から図5−3を用いて移動機構32について説明する。なお、図4は、移動機構の概略構成を示す斜視図であり、図5−1は、図4に示す移動機構の上面図であり、図5−2は、図5−1に示す移動機構の正面図であり、図5−3は、図5−1に示すB−B線断面図である。移動機構32は、押し子30をピストンの移動方向と平行な方向に移動させる機構であり、筐体45と、ボールねじ46と、移動部47と、ガイドレール48と、モータ49とで構成されている。なお、図4、図5−1から図5−3では、モータ49の図示を省略している。
筐体45は、ピストン44の軸方向が長手方向となる箱状部材であり、内部にボールねじ46、移動部47、ガイドレール48が収納されている。また、筐体45の上面には、支持部28が固定されている。
ボールねじ46は、ピストンの移動方向と平行な方向が長手方向(軸方向)となる向きで配置されており、移動部47が螺合している。また、ボールねじ46は、筐体45に回転可能で、かつ、ピストンの移動方向と平行な方向に移動しない状態で支持されている。また、ボールねじ46は、一方の端部(シリンジポンプ20が配置されていない側の端部)が筐体45から突出しており、後述するモータ49と連結している。
移動部47は、ねじ溝が形成されたねじ穴を有し、そのねじ穴がボールねじ46に螺合している部材である。移動部47は、ボールねじ46が回転することで軸方向に移動する。また、移動部47は、ボールねじ46の回転方向により移動方向が切り替えられ、また、ボールねじ46が一回転されると、ボールねじのねじ溝の1ピッチ分移動する。
ガイドレール48は、断面がU字となる細長い部材、レール状の部材であり、ボールねじ46と平行に、ボールねじ46の外周を囲うように、つまり、U字を構成する3つの辺を結んだ空間の内部にボールねじ46が入るように配置されている。また、ガイドレール48は、図5−1から図5−3に示すように、移動部47の外周に対面または接触するように配置されている。つまり、ガイドレール48は、移動部47と略隙間がない状態で配置されている。なお、ガイドレール48は、移動部47の押し子30が設けられている面以外の面に対面している。ガイドレール48は、移動部47がボールねじと共に回転しないように保持しつつ、移動部47を移動方向に案内する。
モータ49は、ボールねじ46を回転させる駆動機構である。また、モータ49は、回転数及び回転方向を変更することができる駆動機構である。移動機構32は、モータ49を回転させ、ボールねじ46を回転させることで、ボールねじ46に螺合している押し子30をピストンの移動方向と平行な方向に移動させる。また、移動機構32は、モータ49の回転数、回転速度、回転方向を変化させることで、押し子の位置、移動速度を変化させることができる。なお、本実施形態では、液体供給装置の小型化と、かつ、マイクロチップへ供給する必要な容量を考慮し、移動機構として日本精工社製、MCM02005H02K型モノキャリアを用いた。
圧力検出部34は、押し子30からピストン44に加えられる力を検出するロードセル51と、ロードセル51で検出された圧力値を信号として検出する信号検出部52とで構成される。ロードセル51は、上述したように連結部材26の検出部設置凹部76にねじ77によって固定されている。ロードセル51は、小型圧縮型のロードセルである。なお、後述する測定では、直径12mm、厚さ4mm、定格容量10Nの小型圧縮型ロードセル(KYOWA社製、LMA−A−10N型)を使用した。また、ロードセル51は、図3に示すように、その先端が、連結部材26よりも押し子30側に突出している。これにより、ロードセル51は、連結部材26と押し子30との間に配置され、ロードセル51を介して押し子30から連結部材26に力が伝達される。つまり、押し子30から連結部材26に加えられる力をロードセル51で検出することができる。信号検出部52は、ロードセル51で検出された圧力値を信号化し制御部36に送る。
制御部36は、CPU、メモリ等で構成された処理装置である。制御部36としては、パソコン(パーソナルコンピュータ)として使用されている処理装置(演算装置)を用いることができる。つまり、パソコンが制御部36の機能をソフトウェアの1つとして有する構成とし、パソコンにより制御部36の処理を行うようにしてもよい。制御部36は、後述する入力部40から入力された情報や、信号検出部52から送られる情報に基づいて、移動機構32のモータ49の回転数、回転方向を制御する。また、制御部36は、操作者が入力部40から情報を入力する画面をモニタ38に表示させたり、後述する検出部18から取得した画像をモニタ38に表示させたりする。
モニタ38は、液晶表示ディスプレイやブラウン管の画像表示装置であり、制御部36から出力される信号(映像信号)に基づいて画像を表示させる。入力部40は、操作者が操作して指示を入力する手段であり、キーボードやマウスで構成される。入力部40は、操作者により行われた操作に対応する信号を操作信号として制御部36に送る。液体供給装置14は、以上のような構成である。
光学機器16は、対象領域の画像を拡大して取得する装置であり、マイクロチップ12の流路68の映像、画像を取得する。本実施形態では、光学機器16として、蛍光顕微鏡を用いる。なお、光学機器としては、蛍光顕微鏡に限定されず、各種顕微鏡やカメラを用いることができる。光学機器16は、取得した画像や動画をデジタルデータとして取得し検出部18に送る。なお、本実施形態では、光学機器16として画像をデジタルデータとして取得するようにしたが、本発明はこれに限定されず、光学機器としては、マイクロチップ12の流路68を肉眼で観察できるのみの顕微鏡も用いることができる。
検出部18は、光学機器16で取得したがデジタルデータを制御部36に送る。なお、制御部36は、検出部18から送られたデータを処理し、光学機器16で取得した流路68の画像、動画をモニタ38に表示させる。観察システム10は、以上のような構成である。上記構成とし、圧力検出部であるロードセルを押し子とピストンの間に配置し、また、移動機構をシリンダポンプの軸方向に平行、特に本実施形態のように並列となるように配置することで、装置を小型化することができる。
(観察システムの動作及び液体供給装置の動作の説明)
次に、図6から図8−2を用いて、観察システム10の動作、特に液体供給装置14の動作について説明する。液体供給装置14がマイクロチップ12に液体を供給する動作について説明する。まず、準備として、操作者は、シリンジ42の内部に液体が溜められたシリンジポンプ20を支持部28に設置する。また、光学機器16に対向する位置にマイクロチップ12を配置する。具体的には、光学機器16の撮影領域(光学機器16を用いて観察可能な領域)に流路68が入るようにマイクロチップ12を設置する。その後、供給配管22の一方の端部をマイクロチップ12の注入口70に繋げ、他方の端部をシリンジ42の先端に繋げる。
次に、操作者により、モータ回転速度が入力されることによって、シリンジポンプ20から液体を供給する速度、つまり単位時間当たりにシリンジポンプ20から排出する液体の量(以下「供給流量」)が設定される。操作者による供給流量の設定は、モニタ38の画面に表示された情報に基づいて、入力部40を用いて値、指示が入力されることで設定される。
ここで、図6は、モニタに表示される画面の一例を示す説明図である。操作者による供給流量の設定の際、モニタ38には、図6に示す画面100が表示される。なお、画面100はモニタ38の一部に表示させるようにしても、全面に表示させてもよい。画面100には、流量設定欄102と、モータ設定欄104と、スタートボタン106と、ストップボタン108と、緊急停止ボタン110とが表示されている。なお、画面100の各欄やボタンへの移動は、入力部40のキーボードのタブボタンを押下したり、マウスによりカーソルを移動させてクリックしたりすることで行うことができる。
流量設定欄102には、シリンジの径(シリンジ径)と、モータ回転速度の設定値を入力する部分がある。操作者がこの部分に数値を入力することで、シリンジポンプ20から排出液体の流量の計算値(計算流量(ml/h))が算出される。なお、シリンジ径は、設置したシリンジポンプ20の径(内径)を入力すればよい。モータの回転数は、操作者が所望の回転数を入力すればよい。この計算値が設定された流量となる。なお、操作者が入力したモータの回転数は設定値であり、制御部36の制御によりモータの回転数は、算出された計算流量で試料を排出するために適時変動する。
モータ設定欄104は、モータの各種設定を選択するボタンと、現在位置とモータ負荷を表示する部分とがある。また、スタートボタン106は、操作者によりクリックまたは決定されることでモータの制御を開始する指示を出力するボタンであり、ストップボタン108は、操作者によりクリックまたは決定されることでモータの停止処理を開始する指示を出力するボタンであり、緊急停止ボタン110は、モータの状態にかかわらず、強制的にモータの駆動を停止する指示を出力するボタンである。
操作者は、このように表示されている画面に、シリンジの径(シリンジ径)の値と、モータ回転速度の値を入力して算出された計算流量が所望の流量であったら、スタートボタンを押し、制御を開始する。
ここで、制御部36は、計算流量を算出したら、シリンジポンプ20から計算流量で試料を排出するときに、ロードセル51で検出される予定の圧力値(理論圧力値)、つまり、条件を満たした流量で試料を排出するときに、押し子30がピストン44に加える適切な圧力(ロードセルで検出される圧力)を算出する。なお、理論圧力値の算出には、予め実験等で算出した流量と圧力値との関係を用いて算出すればよい。なお、圧力の値は、1つの値として算出しても、所定の数値範囲として算出してもよい。また、制御部36は、試料の位置に応じて、適切な圧力の値、範囲を設定するようにしてもよい。例えば、試料がマイクロチップ12に到達していない場合と、マイクロチップ12に到達している場合とで範囲を設定してもよい。また、マイクロチップ12の流路68内に試料が流れている間のみ制御を行うようにしてもよい。
制御部36は、理論圧力値を算出し、さらに処理開始の指示が入力されたら、モータ49を回転させて押し子30をピストン44に近づけ、押し子30によりピストン44を押し始める。なお、このとき、押し子30から加えられた力は、ロードセル51、連結部材26を介してピストン44に伝わる。また、ロードセル51は、押し子30からピストン44に加えられる圧力を検出し、信号検出部52を介して制御部36に伝えられる。
制御部36は、押し子30がピストン44を押し始めたら、圧力検出部34の検出値に基づいて、圧力検出部34で検出される圧力が設定値となるようにモータ49の回転数を制御する。制御部36により、制御された圧力で押し子30がピストン44を押し続けると、ピストン44が供給配管22側に押され、シリンジ42の内部に圧力が付加され、シリンジ42の内部に蓄えられている試料が、シリンジ42から供給配管22に押し出される。
ここで、液体供給装置14は、制御部36が、圧力検出部34で検出される圧力が設定値となるように制御とすることで、押し子30がピストン44に加える圧力を安定させることができる。
制御部36は、例えば、圧力(押し込み力)の設定値を5N(ニュートン)と設定している場合に、検出した圧力が2Nでモータ49の回転が停止しているときは、ピストン44を押す方向に押し子30が移動するようにモータ49を回転させる。また、押し子30がピストン44を押す方向にモータ49を回転させている場合は、モータ49の回転数をより高くする。また、検出した圧力が6Nでモータ49の回転が停止しているときは、押し子30とピストン44とを離す方向にピストンを移動させるようにモータ49を回転させる。つまり、上記の場合とは反対方向にモータ49を回転させ、押し子30がピストン44を押す力を緩和させる。また、押し子30がピストン44を押す方向にモータ49を回転させている場合は、モータ49の回転数をより低くする。
供給配管22に押し出された試料は、供給配管22を通過して注入口70からマイクロチップ12の流路68に送られ、流路68の長い線分部68aを通過する。長い線分部68aを流れ、通過した試料は、排出口71から排出配管24に送られる。また、光学機器16は、試料が流れている状態の流路68の長い線分部68aの画像、動画を取得し、制御部36に送る。制御部36は、取得した画像をモニタ38に表示させる。操作者は、モニタ38に表示された画像を観察することで、流路68を流れる試料の状態を観察する。
このように、液体供給装置14を有する観察システム10は、押し子30によりピストン44を一定の力で押し続けることができることで、シリンジポンプ20から供給配管22に液体を一定流量(一定範囲の流量)で安定して供給することができる。また、本発明によれば、押し子からピストン44に加える力を小さい力で安定させることができるため、試料を少ない流量で流すことができる。これにより、流路68で試料が流れる流速を低くすることができ、動画をコマ送りにしなくても試料の流れを的確に観察することができる。また、流路68の画像を取得した場合でも、試料の流れが速すぎて、映像がぶれたりすることを抑制することができる。これにより、高速度カメラ等の特殊で比較的高価な機材を用いることなく、一般的な顕微鏡のみで的確な観察を行うことが可能となる。
次に、図7−1及び図7−2を用いて、制御部36による圧力の調整の一例について説明する。図7−1は、モータ駆動開始時の圧力検出部で検出した押し子側から受けられた圧力の変位の一例を示すグラフであり、図7−2は、その後(図7−1の後)、圧力検出部で検出した押し子側から受けられた圧力の変位の一例を示すグラフである。ここで、図7−1及び図7−2において横軸は、制御開始からの時間[s]でり、縦軸は圧力検出部34で検出した圧力値である。また、図7−1と図7−2に示すグラフは、時間軸が異なるのみで、1つの制御例である。図7−1には、0sから300sまでの検出結果(グラフの軸上では350sまで表示)を示し、図7−2には、300sから600sまでの検出結果を示す。
図7−1及び図7−2に示す測定例では、0sの段階で押し子30とピストン44とが接触しており、押し子30とピストン44との間には、押し込み力が作用しており、圧力検出部34は、1N弱の圧力が検出されている。その後、計算流量を0.17ml/hに設定して、液体供給装置14のシリンジポンプ20の駆動を開始し、モータ49を回転させると、一時的に2.5Nまで押し込み力が増加した。なお、本測定例では、制御を開始するまでは、モータを一定回転速度(初期設定、計算流量を0.17ml/hの設定の回転数)で回転させている。
その後、150s付近までは1.5N程度まで押し込み力が低下した状態で推移した。駆動開始後から150s付近までは、試料が供給配管22を流れている状態であり、マイクロチップ12の流路68には試料が流れていない状態であった。その後、流路68に試料が到達し、流路68への試料の供給が開始したら、押し込み力が徐々に上昇していった。このように徐々に押し込み力が上昇している状態から、400s経過後、制御を開始した。なお、測定例では、押し込み力が4N以上6N以下となるように制御を行った。これにより、制御開始した後600s経過の間まで押し込み力を約4Nから6Nの間の力で維持することができた。また、本測定例では、流体の流れを目視で確認することができた。つまり、コマ送りさせずに、1倍速での再生またはリアルタイムで見ることで確認することができた。また、画像も流体を的確に確認することができた。
これに対して、同様の実験条件で圧力センサの検出値に基づいて押し込み力及びモータの回転数の制御を行わなかった場合は、押し込み力が10N程度まで上昇し、その後、10N付近で安定した。しかしながら、押し込み力が10Nでは、流体の流れが速くなりすぎ、目視で流体の流れを確認することができなかった。また、画像を取得した場合も流体がぶれた状態で撮影された画像となった。この点は後ほど説明する。
ここで、押し子の押し込み力の設定値は、通常タイプのマイクロチップへ注入するように、10N以下とすることが好ましく、つまり押し込み力が10N以下となるように制御することが好ましく、4N以上6N以下とすることがより好ましい。押し込み力を10N以下とすることで、スロー再生することなく流路を流れる試料を好適に観察することができ、4N以上6N以下とすることで、より的確に試料を観察することができる。
ここで、移動機構は、本実施形態のように、ボールねじをモータで回転させる移動機構を用いることが好ましい。上記構成とすることで、ボールねじにより押し子を確実に送ることができ、押し子の位置を正確に制御することができ、ピストンに加える押し込み力をより正確に制御することができる。これにより、ピストンポンプから供給する試料の流速をより安定させることができる。
以下、図8−1及び図8−2を用いて説明する。図8−1は、本発明の装置の理論変位と測定変位との関係の一例を示すグラフであり、図8−2は、従来の装置の理論変位と測定変位との関係の一例を示すグラフである。ここで、図8−1及び図8−2では、横軸を理論変位[μm]とし、縦軸を測定変位[μm]とした。ここで、理論変位とは、制御条件から算出される押し子の基準位置からの変位であり、測定変位とは、各理論変位の制御条件のときに測定された押し子の基準位置からの変位である。
ここで、本実施形態の装置では、理論変位は、モータの回転数とボールねじのリード(ねじのピッチ)から算出した。また、測定変位は、押し子に反射板を設置し、支持部側に固定されたレーザ干渉変位計により反射板に当てて反射されたレーザ光を検出することにより計測した。測定結果を図8−1に示す。また、比較のために、上述の測定にも用いた、他の機構によりピストンを押す液体供給装置(Kd Scientific社製、型式IC3100)についても同様の測定を行った。比較例の計測結果を図8−2に示す。
図8−1及び図8−2に示すように、本実施形態の移動機構を用いることで、従来の移動機構よりも理論変位と測定変位との誤差を小さくすることができることがわかる。具体的には、図8−1に示す本発明では、測定変位と理論変位が略比例関係を維持したまま変位しているのに対し、図8−2に示す測定例では、測定変位と理論変位がステップ状に変化しているため、押し子の位置を適切に制御することが困難であることがわかる。これにより適切に押し子の位置を制御でき、押し子の位置が正確に制御できることで、移動機構の制御に基づいて押し込み力を適切に制御することができる。
ここで、上記実施形態では、1つのマイクロチップに1つの液体供給装置を繋げた観察システムとしたが、本発明はこれに限定されず、1つのマイクロチップと複数の液体供給装置で観察システムを構成してもよい。具体的には、マイクロチップに複数の注入口を儲け、それぞれの注入口に別々の液体供給装置を繋げ、各液体供給装置からマイクロチップに試料を供給するようにしてもよい。なおこの場合、マイクロチップを図2に示すように複数の流路が繋がっている構成とすることで、流路の連結部で各液体供給装置から供給される試料が接触する状態を観察することができる。また、一方の試料で他方の試料を分断することもできる。
ここで、図9−1は、本発明の装置により試料(液体)を供給した流路の一例を示す説明図であり、図9−2は、従来の装置により試料を供給した流路の一例を示す説明図であり、図9−3は、図9−1と同様の装置を用い、検出した圧力に基づいて制御を行わずに試料を供給した流路の他の一例を示す説明図である。図9−1に示す例では、2つの液体供給装置を用い、一方の液体供給装置からは有機相の液体としてオレイン酸を供給し、他方の液体供給装置からは水相の液体として水を供給した。また、マイクロチップの流路は、2本の線分の流路が直交して連結された十字の流路とし、2本の線分のそれぞれに液体供給装置を繋げた。また、液体供給装置のシリンジポンプとして、内径10.5mmのガスタイトシリンジを用いた。有機相を供給する液体供給装置は、計算流量を0.25ml/hと設定して駆動した後、押し込み力が1.7Nとなったときに、圧力を維持するように制御した。水相を供給する液体供給装置は、計算流量を0.17ml/hとして駆動した後、有機相と同じ押し込み力となるように制御した。
この条件で水相の液体と有機相の液体を供給した結果、図9−1に示すように、水相の液体と有機相の液体は、2本の線分が交わる位置でぶつかり、水相が有機相を分断して、水相の液滴が生成されることを確認することができた。また、液体の流速が低速であるため、図9−1に示すように、液滴の輪郭を確実に把握することができ、スロー再生しなくとも、観察を行うことができた。
これに対して、従来の液体供給装置を使用した場合は、設定値をその装置の最低速度(0.02ml/h)として、駆動させても、生成する液体の流速が早く、観察に高速度カメラを用いる必要があった。また、流速が早いため、図9−2に示すように、液滴の輪郭の一部(点線で示す部分)がぼけてしまい、適切に観察をすることが困難であった。また、図9−2に示す液滴を生成する従来の液体供給装置に比べて、本実施例の液体供給装置は、液滴の流速を20分の1から10分の1にすることができた。
さらに、図9−1に示す測定と同様の条件で、圧力検出部の検出結果に基づいた制御を行わずに試料を供給した場合、つまり、回転数等の制御条件を初期設定値のまま変化させなかった場合は、図9−3に示すように、適切な大きさの水相の液滴が形成されず、適切な観察を行うことが困難であった。また、このとき、水相(水)の流速は、0.06ml/hであり、有機相(オレイン酸)の流速は、2.0ml/hであった。このように、圧力制御を行わない場合は、相対的な流速も適切に制御することができないため、流量も安定させることができず、流速も早くなっていることがわかる。
ここで、上記実施形態では、いずれも流路が十字となっているマイクロチップを用いたが流路の形状は特に限定されない。ここで、図10−1から図10−3は、それぞれ本発明の装置により試料を供給した流路の状態の他の例を示す説明図である。また、図10−4は、図10−3と同様の装置を用い、検出した圧力に基づいて制御を行わずに試料を供給した流路の他の一例を示す説明図である。マイクロチップの流路は、図10−1に示すようにT字の流路としてもよい。また、図10−2に示すように直線と曲線の流路を組み合わせた構成としてもよい。さらに、図10−3に示すように直線の流路としてもよい。また、図10−1から図10−3に示すように、流路の形状によらず、本発明の装置を用いることで、液体供給装置からマイクロチップに少ない流量で安定して液体を供給することができるため、流路を流れる試料を好適に観察することができる。ここで、図10−3の同様の直線の流路である場合も、圧力検出値に基づいて回転数の制御を行わない場合は、図10−4に示すように、流速が早くなりすぎ、適切な観察ができなかった。また、わかりにくいが、図10−4に示す場合でも、小さな液滴は形成されていたが、流速が早いため、一倍速での適切な観察は困難であった。
また、液体供給装置がマイクロチップに供給する液体(試料)としては、種々の液体を用いることができ、例えば、水相としては、超純水、塩化カルシウム溶液等を用いることができる。また、有機相としては、オレイン酸以外にもデカンを用いることができる。また、水相と有機相にたんぱく質を加えて試料としてもよい。たんぱく質としては、例えばバクテリオロドプシン(bR)がある。また、たんぱく質の類似品としては、カルシウムイオン透過イオノフォア(A23187)がある。また、水相と有機相とたんぱく質等の組み合わせとしては、水、デカン、バクテリオロボプシンを組み合わせることができ、塩化カルシウム溶液、オレイン酸、カルシウムイオン透過イオノフォアを組み合わせることができる。
(第2の実施形態)
また、上記実施形態では、移動機構として、ボールねじをモータによって回転させることで押し子の位置、押し子がピストンに加える圧力を調整する機構を用いたが、本発明はこれに限定されない。以下、図11を用いて、第2の実施形態の液体供給装置について説明する。ここで、図11は、第2の実施形態の液体供給装置の概略構成を示す説明図である。図11に示す液体供給装置の移動機構90は、固定部92と、移動部94と、磁気フィルム96と、ストッパ98とを有するエアスライダであり、空気圧と磁力により、固定部92に対して移動部94を相対的に移動させる。
固定部92は、支持部28または、土台に載置された部分であり、所定位置に固定されている。また、固定部92は、移動部94を移動させる駆動機構が設けられている。移動部94は、固定部92に対してピストン44の軸方向移動自在に配置されている。また、移動部94には、押し子30が固定されている。磁気フィルム96は、移動部94の内部に配置され、固定部92に対する移動部94の相対移動時に固定部92との間で磁界を発生させて、移動部94のピストン44の軸方向への移動を補助する。ストッパ98は、クッションとなる材料で構成されており、移動部94の移動領域の両端部となる位置の固定部92にそれぞれ配置されており、移動領域の端部まで移動された移動部94が固定部92に接触しないように保護している。
移動機構90は、以上のような構成であり、固定部92に備えられた駆動機構により、移動部94と固定部92との間に空気を供給し、空気圧により移動部94と固定部92とを相対的に移動させる。また、この移動時に磁気フィルム96と固定部92との間に磁界を発生させ、磁力も発生させることで、移動部94と固定部92との相対移動を補助する。移動機構90は、このようにして押し子30が固定された移動部94を移動させる。液体供給装置は、移動機構として移動機構90を用いた場合でも、圧力検出部で検出した圧力に基づいて、移動部94の位置を制御することで、押し子30がピストン44を押す力を調整することができる。これにより、空気圧と磁力により移動部を移動させる移動機構を用いた場合でも、シリンジポンプから少ない流量で安定して液体の試料を供給することができる。
なお、上記実施形態では、圧力を検出する圧力検出手段として、ロードセルを用いたが、圧力を検出できる検出素子であればよく、ロードセルには限定されない。なお、ロードセルとしては、小型圧縮型ロードセル、引張圧縮両用ロードセルを用いることが好ましい。
また、移動機構には、送りねじとしてボールねじを用いたが、すべりねじを用いることもできる。そのほか、移動方向の位置決め精度を向上するために、ガイドレールを設けたが、ガイドレール以外の案内機構を用いることもできる。例えば、ボールねじに平行に配置され、移動部を貫通した棒状部材も案内機構として用いることができる。また、移動部の側面のみを回転しないように保持したレールも案内機構として用いることができる。また、移動機構は、移動部の位置を検出する位置検出部を設け、位置検出部の情報に基づいて、移動部の位置を検出しつつ、モータの回転の制御を行うようにしてもよい。このように位置検出部を設け、その検出結果に基づいて制御を行うことで、移動部の位置をより正確に制御することができる。
また、上記実施形態では、いずれマイクロチップの流路に試料を供給する場合として説明したが、液体を供給する対象は特に限定されない。微量の液体を断続的に、または、連続的に供給する必要がある種々の対象に液体を供給することができる。