本発明の実施例1に係る内燃機関のEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置5(以下、EGR装置5と称する)について説明する。図1は、EGR装置5が内燃機関10に適用された様子を示す模式図である。本実施例に係るEGR装置5は、車両に搭載されて用いられるものとする。但しEGR装置5の使用用途は、これに限定されるものではない。EGR装置5は、EGR通路20と、EGRバルブ30と、EGRクーラ40と、冷媒通路(第1冷媒通路50および第2冷媒通路51)と、バイパス通路55と、三方弁60と、各種センサと、制御装置80とを備えている。
本実施例に係る内燃機関10はディーゼルエンジンである。但し内燃機関10の種類は、これに限定されるものではない。例えば内燃機関10は、ガソリンエンジンその他のエンジンであってもよい。内燃機関10は、気筒11を有するシリンダブロックと、シリンダブロックの上部に配置されたシリンダヘッドと、気筒11に配置されたピストンとを備えている。また内燃機関10は、各気筒11に吸気を供給するための通路である吸気通路12と、各気筒11から排気を排出するための通路である排気通路13とを備えている。なお、本実施例に係る気筒11の数は、一例として4である。また気筒11は、列状に配置されている。但し、気筒11の数はこれに限定されるものではなく、例えば4つより多くてもよく、少なくてもよい。また気筒11の配列状態も、図1の構成に限定されるものではない。
EGR通路20は、内燃機関10から排出された排気の一部を内燃機関10へ再循環させる通路である。本実施例に係るEGR通路20は、吸気通路12と排気通路13とを連通している。それにより本実施例に係るEGR通路20は、排気通路13の排気の一部を吸気通路12へ再循環させることで、内燃機関10から排出された排気の一部を内燃機関10へ再循環させている。具体的にはEGR通路20は、EGR通路20の一端が内燃機関10の内部において排気通路13に接続し、EGR通路20の他端が内燃機関10の外部において吸気通路12に接続し、EGR通路20の通路途中の一部は内燃機関10の内部を通過している。但しEGR通路20の構成は、内燃機関10から排出された排気の一部を内燃機関10へ再循環させることができるものであれば、これに限定されるものではない。
EGRバルブ30は、EGR通路20を開閉するバルブである。本実施例に係るEGRバルブ30は、EGR通路20の吸気通路12への接続点に配置されている。但しEGRバルブ30のEGR通路20への配置箇所は、これに限定されるものではない。例えばEGRバルブ30は、EGR通路20の通路途中に配置されていてもよい。EGRバルブ30の動作は制御装置80が制御する。制御装置80がEGRバルブ30を開にした場合、内燃機関10からの排気がEGR通路20を通過して内燃機関10へ再循環することが開始される。制御装置80がEGRバルブ30を閉にした場合、内燃機関10からの排気がEGR通路20を通過して内燃機関10へ再循環することは停止される。EGRバルブ30の開度が大きくなるほど、内燃機関10へ再循環する排気の流量は多くなる。
EGRクーラ40は、EGR通路20に配置されている。EGRクーラ40はEGR通路20を通過する排気を冷却する装置である。本実施例に係るEGRクーラ40は、冷媒とEGR通路20を通過する排気との間で熱交換させることで、排気を冷媒によって冷却している。なお本実施例においては、EGRクーラ40に用いられる冷媒として、内燃機関10を冷却する冷媒を用いている。但し、EGRクーラ40に用いられる冷媒はこれに限定されるものではない。例えばEGR装置5は、内燃機関10を冷却する冷媒とは別の冷媒をEGRクーラ40用の冷媒として用いてもよい。また、冷媒の種類は特に限定されるものではない。例えば冷媒として、水、不凍液等を用いることができる。本実施例においては、冷媒として水を用いる。EGRクーラ40の詳細は後述する。
第1冷媒通路50および第2冷媒通路51は、EGRクーラ40と内燃機関10とを連通している。第1冷媒通路50は、内燃機関10を冷却後の冷媒をEGRクーラ40に導く通路である。第2冷媒通路51は、EGRクーラ40を経由後の冷媒を内燃機関10に導く通路である。具体的には第1冷媒通路50は、内燃機関10に形成された冷媒通路であるウォータジャケットの冷媒排出口とEGRクーラ40の後述する冷媒供給口43とを連通している。また第2冷媒通路51は、ウォータジャケットの冷媒供給口とEGRクーラ40の後述する冷媒排出口44とを連通している。冷媒は、ウォータジャケットを通過することで内燃機関10を冷却した後に第1冷媒通路50を通過してEGRクーラ40の内部に流入し、EGRクーラ40において排気の熱を奪うことでEGR通路20の排気を冷却し、次いで第2冷媒通路51を通過して内燃機関10のウォータジャケットに流入する。
バイパス通路55は、EGRクーラ40より冷媒流動方向上流側の冷媒通路(すなわち第1冷媒通路50)の冷媒をEGRクーラ40をバイパスさせてEGRクーラ40より冷媒流動方向下流側の冷媒通路(すなわち第2冷媒通路51)に導入する通路である。三方弁60は、バイパス通路55と第1冷媒通路50との接続点に配置されている。三方弁60は、内燃機関10を経由後の冷媒の流動先を、第2バイパス通路55とEGRクーラ40との間で切り替える弁である。すなわち、第2バイパス通路55および三方弁60は、EGRクーラ40より冷媒流動方向上流側の冷媒通路の冷媒をEGRクーラ40をバイパスさせてEGRクーラ40より冷媒流動方向下流側の冷媒通路へ導入するバイパス手段としての機能を有している。三方弁60の動作は、制御装置80が制御する。
バイパス通路55を通過する冷媒の流量(以下、冷媒バイパス流量と称する場合がある)が多くなるほど、EGRクーラ40に流入する冷媒の流量は少なくなり、冷媒バイパス流量が少なくなるほど、EGRクーラ40に流入する冷媒の流量は多くなる。よって、バイパス通路55における冷媒バイパス流量を調整することで、EGRクーラ40への冷媒の流入量を調整することができる。したがって、バイパス通路55および三方弁60は、EGRクーラ40への冷媒の流入量を調整する冷媒流入量調整手段としての機能も有していることになる。なお、EGR装置5は、三方弁60を備える構成に代えて、流量調整弁がバイパス通路55に配置された構成を備えていてもよい。この構成によっても、流量調整弁によってバイパス通路55における冷媒バイパス流量を調整することができる。それにより、EGRクーラ40への冷媒の流入量を調整することができる。
各種センサは、制御装置80の制御に必要な情報を検出するセンサである。図1においては各種センサの一例として、クランクポジションセンサ70が図示されている。クランクポジションセンサ70は、内燃機関10のクランク角を検出し、検出結果を制御装置80に伝える。また図示はされていないが、内燃機関10は各種センサとして、内燃機関10が搭載された車両のアクセルの開度を検出するアクセルポジションセンサを備えている。アクセルポジションセンサは、アクセル開度を検出し、検出結果を制御装置80に伝える。
制御装置80は、内燃機関10、三方弁60およびEGRバルブ30を制御する制御部と、制御部の動作に必要な情報を記憶する記憶部とを有している。制御装置80として、電子制御装置(Electronic Control Unit)を用いることができる。本実施例においては、制御装置80の一例として、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82およびRAM(Random Access Memory)83を備える電子制御装置を用いる。制御部の機能は、CPU81によって実現される。記憶部の機能は、ROM82およびRAM83によって実現される。
制御部は、クランクポジションセンサ70およびアクセルポジションセンサの検出結果に基づいて内燃機関10の動作を制御する。具体的には制御部は、クランクポジションセンサ70の検出結果に基づいて取得したクランク角に基づいて、所定のタイミングで内燃機関10に燃料が噴射されるように燃料噴射手段(例えば燃料噴射弁)を制御することで、内燃機関10の運転状態を制御する。また制御部は、アクセルポジションセンサの検出結果に基づいて取得したアクセル開度に基づいて、内燃機関10に要求される負荷を取得し、取得した要求負荷に応じて内燃機関10の燃料噴射量、内燃機関10への吸入空気量等を制御することで内燃機関10の運転状態を制御する。
また制御部は、所定のEGRバルブ開条件が満たされた場合、EGRバルブ30を開に制御する。それにより、内燃機関10の排気はEGR通路20および吸気通路12を経由して内燃機関10に再循環される。排気が内燃機関10に再循環されることで、内燃機関10における燃焼温度を低下させて、エミッションの悪化を抑制することができる。
EGRバルブ開条件としては特に限定されるものではないが、本実施例においては一例として、内燃機関10の負荷が所定の値以上であるとの条件を用いる。なお、この所定の値は、後述する図3のステップS10の判定処理で用いられる負荷の基準値より小さい値である。制御装置80の記憶部はこの所定の値を予め記憶しておき、制御部は内燃機関10の負荷が記憶部の所定の値以上となったか否かを判定することで、EGRバルブ開条件が満たされたか否かを判定する。
また制御部は、三方弁60を制御することで、EGRクーラ40に流入する冷媒の流量を制御する。具体的には制御部は、バイパス通路55を通過する冷媒バイパス流量が多くなるように三方弁60を制御することで、EGRクーラ40に流入する冷媒の流量を減少させることができ、冷媒バイパス流量が少なくなるように三方弁60を制御することで、EGRクーラ40に流入する冷媒の流量を多くすることができる。なお、制御部によるEGRクーラ40への冷媒流量の制御の詳細は後述する。
続いてEGRクーラ40の詳細について説明する。図2(a)はEGRクーラ40を示す模式図である。なお図2(a)は、EGRクーラ40の内部を透視した状態で模式的に図示している。EGRクーラ40の内部には、排気が通過する通路である内部ガス通路41と、冷媒が通過する通路である内部冷媒通路42とが設けられている。内部ガス通路41は、EGR通路20に連通している。それによりEGRクーラ40より排気流動方向上流側のEGR通路20を通過する排気は、EGRクーラ40の内部ガス通路41に流入し、内部ガス通路41を通過後にEGRクーラ40より排気流動方向下流側のEGR通路20に再び流入し、その後吸気通路12に流入する。
内部冷媒通路42は、内部ガス通路41の周囲に設けられている。具体的には本実施例に係る内部ガス通路41は、排気流動方向を高さ方向とする円柱形状を有しており、内部冷媒通路42は、この円柱形状の内部ガス通路41の側面(周壁面)の外側全体に設けられている。内部冷媒通路42には、冷媒が供給される穴である冷媒供給口43と、冷媒が排出される穴である冷媒排出口44とが設けられている。
冷媒供給口43には第1冷媒通路50が接続されている。冷媒排出口44には第2冷媒通路51が接続されている。内燃機関10を冷却後の冷媒は第1冷媒通路50を通過して、冷媒供給口43から内部冷媒通路42に流入する。内部冷媒通路42に流入した冷媒は、内部冷媒通路42を通過後に、冷媒排出口44から排出される。冷媒排出口44から排出された冷媒は、第2冷媒通路51を通過して内燃機関10に供給される。
またEGRクーラ40は、第1熱交換体45と第2熱交換体46とを備えている。第1熱交換体45および第2熱交換体46は、内部ガス通路41に配置されている。第2熱交換体46は、第1熱交換体45よりも排気流動方向上流側に位置している。また第1熱交換体45と第2熱交換体46とは、互いに接している。具体的には第1熱交換体45の排気流動方向上流側の面は、第2熱交換体46の排気流動方向下流側の面に接している。
第1熱交換体45および第2熱交換体46の形状は特に限定されるものではないが、本実施例においては、内部ガス通路41の円柱形状に合うように、内部ガス通路41に配置された第1熱交換体45および第2熱交換体46の外形も円柱形状を有している。また、本実施例に係る第1熱交換体45および第2熱交換体46全体の排気流動方向の長さ(すなわち第1熱交換体45および第2熱交換体46の全長)は、内部ガス通路41の全長と一致している。その結果、本実施例に係るEGRクーラ40の内部形状は、第1熱交換体45および第2熱交換体46の側面(周壁面)を内部冷媒通路42が囲んだ形状となっている。
図2(b)は、EGRクーラ40の内部を排気流動方向上流側から見た模式図である。なお、図2(b)においては第2熱交換体46が図示されているが、第1熱交換体45も、排気流動方向上流側から見た場合、図2(b)に示す第2熱交換体46と同様の形状を有している。第1熱交換体45および第2熱交換体46は、排気が通過可能な構造を有している。この構造の一例として、第1熱交換体45および第2熱交換体46は、多孔質構造を有している。
多孔質構造の一例として、第1熱交換体45および第2熱交換体46は、複数の隔壁部材100が格子状に組み合わされた構造を有している。この場合、排気は、第1熱交換体45および第2熱交換体46の隔壁部材100によって区画された複数の空間部101を流動する。また排気の熱は、主として隔壁部材100を伝導する。
第1熱交換体45および第2熱交換体46(以下、総称して熱交換体と称する場合がある)は、内部冷媒通路42の冷媒と内部ガス通路41の排気との間で熱交換させる媒体としての機能を有している。具体的には第1熱交換体45および第2熱交換体46は、熱交換体を通過する内部ガス通路41の排気の熱を奪し、熱交換体の熱は内部冷媒通路42を通過する冷媒によって奪われる。より具体的には、図2(b)の矢印で示すように、排気の熱は、内部冷媒通路42の中心部(熱交換体の中心部)側から外側に向かって熱交換体を伝導し、その後、内部冷媒通路42の冷媒によって吸収される。このようにして、EGRクーラ40の内部において、排気の熱は第1熱交換体45および第2熱交換体46を媒体として冷媒に伝導する。なお本実施例に係る第1熱交換体45および第2熱交換体46は、多孔質構造を有していることから、排気に含まれるHCや煤等の粒子状物質を捕集するフィルタとしての機能も発揮することができる。
第1熱交換体45および第2熱交換体46の材質(具体的には、本実施例においては、隔壁部材100の材質)は、特に限定されるものではない。例えば第1熱交換体45および第2熱交換体46の材質として、ステンレス、セラミックス等を用いることができる。但し、第1熱交換体45および第2熱交換体46は、耐腐食性の良好な材質であることが好ましい。このような耐腐食性の良好な材質の一例として、本実施例においては、セラミックスを主成分とする材質を用いる。すなわち、本実施例に係る第1熱交換体45および第2熱交換体46の材質の主成分はセラミックスである。
セラミックスの具体例として、炭化珪素(SiC)、コージェライト等を用いることができる。本実施例においては、セラミックスとして炭化珪素(SiC)を用いる。すなわち、本実施例に係る第1熱交換体45および第2熱交換体46の材質の主成分は、炭化珪素である。なお、熱交換体の材質の主成分が炭化珪素であるとは、熱交換体の材質が100%炭化珪素であってもよく、炭化珪素以外に他の不純物を含んでいてもよいことを意味している。
また、第2熱交換体46には、排気浄化触媒が担持されている。一方、本実施例に係る第1熱交換体45には排気浄化触媒が担持されていない。但し、第1熱交換体45にも排気浄化触媒が担持されていてもよい。すなわち、第1熱交換体45および第2熱交換体46のうち少なくとも第2熱交換体46に排気浄化触媒が担持されていればよい。排気浄化触媒の種類は特に限定されるものではなく、例えば貴金属等の酸化触媒を用いることができる。貴金属の例として、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Rd)等を用いることができる。本実施例においては排気浄化触媒の一例として、白金を用いる。
また、第2熱交換体46の熱伝導率は、第1熱交換体45の熱伝導率よりも低く設定されている。第2熱交換体46の熱伝導率を第1熱交換体45の熱伝導率よりも低く設定する具体的手法は、特に限定されるものではない。例えば第1熱交換体45および第2熱交換体46の材質、形状等を調整することで、第2熱交換体46の熱伝導率を第1熱交換体45の熱伝導率よりも低く設定することができる。例えば材質によって熱伝導率を異ならせる場合には、第2熱交換体46の材質として第1熱交換体45よりも熱伝導率の低い材質を用いればよい。形状によって熱伝導率を異ならせる場合には、第2熱交換体46の形状を、第1熱交換体45よりも熱が伝導し難い形状にすればよい。
本実施例においては、第2熱交換体46の材質として第1熱交換体45の材質よりも熱伝導率の低い材質を用いることで、第2熱交換体46の熱伝導率を第1熱交換体45の熱伝導率よりも低くしている。具体的には、第1熱交換体45の材質として、第2熱交換体46に用いられている炭化珪素よりも密度の高い炭化珪素(すなわち緻密な炭化珪素)を用いることで、第1熱交換体45の材質の熱伝導率を第2熱交換体46の材質の熱伝導率よりも高くし、その結果、第2熱交換体46の材質の熱伝導率を第1熱交換体45の材質の熱伝導率よりも低くしている。このようにして本実施例においては、第2熱交換体46の熱伝導率を第1熱交換体45の熱伝導率よりも低くしている。
なお、EGRクーラ40内部における内部冷媒通路42の配置態様は、内部冷媒通路42を通過する冷媒によって内部ガス通路41を通過する排気を冷却可能な態様であれば、図2(a)の形状に限定されるものではない。例えば本実施例において冷媒供給口43および冷媒排出口44の数はそれぞれ1つであるが、これに限定されるものではない。EGRクーラ40は、複数の冷媒供給口43を有していてもよく、複数の冷媒排出口44を有していてもよい。
また、本実施例において内部冷媒通路42における冷媒の流動方向と内部ガス通路41における排気の流動方向とは、反対方向であるが、これに限定されるものではない。内部冷媒通路42における冷媒の流動方向と内部ガス通路41における排気の流動方向とは、同方向であってもよい。この場合、図2(a)において、冷媒排出口44および冷媒供給口43の位置を入れ替えれば、内部冷媒通路42における冷媒の流動方向と内部ガス通路41における排気の流動方向とを同方向にすることができる。
また本実施例において、内部冷媒通路42は第1熱交換体45および第2熱交換体46の側面全体を囲むように配置されているが、これに限定されるものではない。内部冷媒通路42は、内部冷媒通路42の壁面が第1熱交換体45および第2熱交換体46の側面の少なくとも一部に接していればよい。この構成によっても、内部冷媒通路42の冷媒によって第1熱交換体45および第2熱交換体46の熱を奪うことは可能である。しかしながら、本実施例のように内部冷媒通路42が第1熱交換体45および第2熱交換体46の側面全体を囲むように配置されている方が、そうでない場合に比較して、第1熱交換体45および第2熱交換体46をより効果的に冷却することができる点で好ましい。
続いて、本実施例に係る制御装置80によるEGRクーラ40への冷媒流量の制御の詳細について説明する。制御装置80の制御部は、内燃機関10の運転状態を示す指標に基づいて、EGRクーラ40への冷媒流量を制御している。具体的には制御部は、内燃機関10の運転状態を示す指標に基づいて、三方弁60を制御することでバイパス通路55における冷媒バイパス流量を制御し、その結果、EGRクーラ40への冷媒流量を制御し、以って内部冷媒通路42における冷媒の流量を制御している。
内燃機関10の運転状態を示す指標は、特に限定されるものではなく、内燃機関10の負荷、排気通路13の排気の温度、EGR通路20の排気の温度、排気浄化触媒の温度、内燃機関10を冷却する冷媒の温度等、内燃機関10の運転状態と相関関係を有する種々の指標を用いることができる。本実施例においては内燃機関10の運転状態を示す指標として、内燃機関10の負荷を用いる。すなわち、本実施例に係る制御部は、内燃機関10の負荷に基づいて、三方弁60を制御することで内部冷媒通路42における冷媒の流量を制御している。
また本実施例に係る制御部は、内燃機関10の負荷に基づいて内部冷媒通路42における冷媒の流量を制御する具体的手法の一例として、内燃機関10の負荷が所定値以上の場合(以下、高負荷の場合と称する)には、内燃機関10の負荷が所定値より小さい場合(高負荷でない場合)に比較して内部冷媒通路42における冷媒の流量が増大するように内部冷媒通路42における冷媒の流量を制御している。具体的には制御部は、内燃機関10の負荷が高負荷の場合には、内燃機関10の負荷が高負荷でない場合に比較して、第1冷媒通路50の開口率が高くなるように(逆に言えば、バイパス通路55の開口率が低くなるように)三方弁60を制御することで、内部冷媒通路42における冷媒の流量を増大させている。
図3は、制御装置80が内部冷媒通路42の冷媒流量を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。制御装置80は、図3のフローチャートを所定時間毎に繰り返し実行する。なお図3のフローチャートのスタート時点において、EGRバルブ30は開になっているものとする。まず制御装置80の制御部は、内燃機関10の負荷が高負荷であるか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10の具体的な実行手法は、特に限定されるものではないが、本実施例においては以下の手法を用いる。
まず制御部は、内燃機関10の負荷を、内燃機関10の回転数、内燃機関10における燃料噴射量、内燃機関10の吸入空気量等に基づいて取得することができる。本実施例に係る制御部は、一例として、内燃機関10の回転数に基づいて内燃機関10の負荷を取得するものとする。また制御装置80の記憶部は、内燃機関10の負荷が高負荷であるか否かの判定基準値である負荷の所定値を予め記憶しておく。本実施例においては、内燃機関10の回転数に基づいて内燃機関10の負荷を取得するため、この所定値も内燃機関10の回転数に関連付けて規定されている。制御装置80の制御部は、クランクポジションセンサ70の検出結果に基づいて内燃機関10の回転数を取得し、取得された回転数が記憶部の所定値以上となったか否かを判定することで、内燃機関10の負荷が所定値以上であるか否か、すなわち内燃機関10の負荷が高負荷であるか否かを判定する。
ステップS10において内燃機関10の負荷が高負荷であると判定されなかった場合、制御部は、内部冷媒通路42における冷媒の流量が第1流量となるように三方弁60を制御する(ステップS20)。具体的には制御部は、第1冷媒通路50の開口率が第1の開口率になるように三方弁60を制御することで、内部冷媒通路42における冷媒の流量を第1流量に制御する。次いで制御部は、フローチャートの実行を終了する。
ステップS10において内燃機関10の負荷が高負荷であると判定された場合、制御部は、内部冷媒通路42における冷媒の流量が第1流量よりも大きい第2流量となるように三方弁60を制御する(ステップS30)。具体的には制御部は、第1冷媒通路50の開口率が第1の開口率よりも大きい第2の開口率になるように三方弁60を制御することで、内部冷媒通路42における冷媒の流量を第2流量に制御する。次いで制御部は、フローチャートの実行を終了する。
続いてEGR装置5の作用効果について説明する。これまで説明したように、EGR装置5において、EGRクーラ40の内部には、内部ガス通路41と、内部ガス通路41の周囲に配置された内部冷媒通路42とが設けられ、内部ガス通路41には、第1熱交換体45と第1熱交換体45よりも熱伝導率の低い第2熱交換体46とが、第2熱交換体46が第1熱交換体45よりも排気流動方向上流側に位置するように設けられ、第2熱交換体46には排気浄化触媒が担持されている。
この構成によれば、第1熱交換体45よりも排気流動方向上流側に配置されている第2熱交換体46に担持されている排気浄化触媒によって、排気中のHCや粒子状物質の酸化分解を促進させて、第2熱交換体46および第1熱交換体45へのHCや粒子状物質の堆積を抑制することができる。それにより、HCや粒子状物質の堆積によるEGRクーラ40の圧力損失の増加、EGRクーラ40の熱交換効率の低下等を抑制することができることから、EGRクーラ40の冷却能力の低下を抑制することができる。また、排気浄化触媒がEGRクーラ40の内部に配置されていることから、EGRクーラ40よりも排気流動方向上流側のEGR通路20に排気浄化触媒が設けられている場合に比較して、EGR装置5の小型化を図ることができる。
また、内部冷媒通路42によって第1熱交換体45および第2熱交換体46を冷却できることから、排気浄化触媒の温度が過度に上昇することを抑制することができる。それにより、排気浄化触媒の劣化を抑制することができる。また、排気浄化触媒を担持した第2熱交換体46の熱伝導率は第1熱交換体の熱伝導率よりも低いことから、例えば排気浄化触媒が第1熱交換体45にのみ担持されている場合のように排気浄化触媒が第2熱交換体46に担持されていない場合に比較して、排気浄化触媒の床温を容易に上昇させることができる。その結果、排気浄化触媒の触媒性能を向上させることができる。
よって、EGR装置5によれば、EGRクーラ40の冷却能力の低下を抑制しつつ小型化を図ることができ、且つ排気浄化触媒の劣化の抑制および触媒性能の向上を図ることができる。
またEGR装置5によれば、第1熱交換体45と第2熱交換体46とが互いに接していることから、第1熱交換体45と第2熱交換体46とが互いに接していない場合に比較して、第1熱交換体45と第2熱交換体46との間の内部ガス通路41に凝縮水が付着することを抑制することができる。それにより排気浄化触媒の劣化の抑制および触媒性能の向上をさらに図ることができる。また第1熱交換体45と第2熱交換体46とが互いに接していない場合に比較して、EGRクーラ40の排気流動方向の長さ(全長)を小さくすることができる。それにより、EGR装置5の小型化を図ることができる。
またEGR装置5によれば、内燃機関10の運転状態に基づいて内部冷媒通路42における冷媒の流量を制御する制御装置80を備えていることから、内燃機関10の運転状態に基づいて排気浄化触媒の温度の過度の上昇を適切に抑制することができる。
具体的には、制御装置80は、内燃機関10の負荷が所定値以上の場合(すなわち高負荷の場合)には、内燃機関の負荷が高負荷でない場合に比較して、内部冷媒通路42における冷媒の流量が増大するように内部冷媒通路42における冷媒の流量を制御している。ここで、内燃機関10の負荷が高負荷の場合は、内燃機関10の負荷が高負荷でない場合に比較して、内燃機関10から排出された排気の流量が増大する傾向があり、また排気の温度が高くなる傾向があることから、このような場合に、仮に内部冷媒通路42における冷媒流量を増大させない場合には、排気浄化触媒の温度が過度に上昇するおそれが高くなると考えられる。これに対して、EGR装置5によれば、排気浄化触媒の温度が過度に上昇するおそれが高いと考えられる場合に、内部冷媒通路42における冷媒の流量を増大させることができることから、排気浄化触媒の温度の過度の上昇を効果的に抑制することができる。
またEGR装置5によれば、第1熱交換体45および第2熱交換体46の材質の主成分が炭化珪素であることから、排気による第1熱交換体45および第2熱交換体46の腐食を効果的に抑制することができる。
続いて、比較例に係るEGR装置を用いて、本実施例に係るEGR装置5の作用効果を比較例に係るEGRクーラと比較しつつ説明する。図4(a)は比較例1に係るEGR装置200aのEGRクーラ210aを示す模式図である。図4(b)は比較例2に係るEGR装置200bのEGRクーラ210bを示す模式図である。図5(a)は比較例3に係るEGR装置200cのEGRクーラ210cを示す模式図である。図5(b)は比較例4に係るEGR装置200dのEGRクーラ210dを示す模式図である。比較例に係るEGR装置200a〜EGR装置200dは、実施例1に係るEGRクーラ40に代えて、EGRクーラ210a〜EGRクーラ210dをそれぞれ備えている点において、実施例1に係るEGR装置5と異なっており、それ以外の構成は実施例1に係るEGR装置5と同様である。
図4(a)に示すように比較例1に係るEGRクーラ210aは、第2熱交換体46を備えずに第1熱交換体45のみを備えている点において本実施例に係るEGRクーラ40と異なっている。なお、EGRクーラ210aの第1熱交換体45には、排気浄化触媒が担持されている。
EGRクーラ210aにおいても、第1熱交換体45に排気浄化触媒が担持されていることから、第1熱交換体45におけるHCや粒子状物質の堆積を抑制してEGRクーラ40の冷却能力の低下を抑制することができる。また排気浄化触媒がEGRクーラ40の内部に配置されていることから、EGRクーラ210aよりも排気流動方向上流側のEGR通路20に排気浄化触媒が設けられている場合に比較して、EGR装置200aの小型化を図ることができる。また、内部冷媒通路42によって第1熱交換体45を冷却できることから、排気浄化触媒の温度の過度の上昇を抑制することができる。それにより、排気浄化触媒の劣化を抑制することができる。
しかしながら、本実施例に係るEGRクーラ40と比較例1に係るEGRクーラ210aとを比較した場合、EGRクーラ40の方が、第1熱交換体45よりも熱伝導率の低い第2熱交換体46が排気浄化触媒を担持していることから、第1熱交換体45が排気浄化触媒を担持しているEGRクーラ210aに比較して、排気浄化触媒の床温を容易に上昇させることができる。その結果、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210aに比較して、排気浄化触媒の触媒性能をより向上させることができ、それにより、EGRクーラ40の冷却能力の低下をより効果的に抑制することができる。
図4(b)に示すように比較例2に係るEGRクーラ210bは、第1熱交換体45の中心部に第3熱交換体47を備えている点において、比較例1に係るEGRクーラ210aと異なっている。また、EGRクーラ210bは、第3熱交換体47に排気浄化触媒が担持されており、第1熱交換体45には排気浄化触媒が担持されていない点においてもEGRクーラ210aと異なっている。第3熱交換体47の材質の主成分は炭化珪素である。また第3熱交換体47の熱伝導率は、第1熱交換体45と同じである。第3熱交換体47の全長は、第1熱交換体45の全長と同じである。具体的には第3熱交換体47の排気流動方向上流側の端部は第1熱交換体45の排気流動方向上流側の端部と一致しており、第3熱交換体47の排気流動方向下流側の端部は第1熱交換体45の排気流動方向下流側の端部と一致している。
比較例2に係るEGRクーラ210bにおいても、第3熱交換体47に担持された排気浄化触媒によって排気中のHCや粒子状物質の酸化を促進させることができることから、EGRクーラ210bの冷却能力の低下を抑制することができる。また、排気浄化触媒がEGRクーラ210bの内部に配置されていることから、EGR装置200bの小型化を図ることができる。また、内部冷媒通路42によって第1熱交換体45および第3熱交換体47を冷却できることから、排気浄化触媒の温度の過度の上昇を抑制することができる。それにより、排気浄化触媒の劣化を抑制することができる。
またEGRクーラ210bの内部の中心部は、内部冷媒通路42の冷媒からの距離が遠いことから、EGRクーラ210bの中で温度が相対的に高くなり易い部分である。この点、EGRクーラ210bによれば、この中心部に排気浄化触媒が担持された第3熱交換体47を備えていることから、効率的に排気浄化触媒の床温を上昇させて排気浄化触媒の触媒性能の向上を図ることができる。
しかしながら、本実施例に係るEGRクーラ40と比較例2に係るEGRクーラ210bとを比較した場合、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210bよりも製造が容易である。EGRクーラ40の場合、EGRクーラ210bのような第3熱交換体47の周囲に第1熱交換体45を配置するとの高度な加工が不要なためである。よって本実施例に係るEGRクーラ40の方が製造コストを低く抑えることができる。またEGRクーラ40の場合、排気浄化触媒が担持された第2熱交換体46が第1熱交換体45よりも排気流動方向上流側に配置されていることから、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210bよりも第1熱交換体45へのHCや粒子状物質の堆積を効果的に抑制することができる。
図5(a)に示すように比較例3に係るEGRクーラ210cは、第3熱交換体47に代えて第2熱交換体46を備えている点において、比較例2に係るEGRクーラ210bと異なっている。EGRクーラ210cにおいて第2熱交換体46の熱伝導率は、第1熱交換体45の熱伝導率よりも低い。また第2熱交換体46には、排気浄化触媒が担持されている。第2熱交換体46の材質の主成分は炭化珪素である。EGRクーラ210cとEGRクーラ210bとを比較した場合、EGRクーラ210cの方が、第3熱交換体47よりも熱伝導率の低い第2熱交換体46に排気浄化触媒が担持されていることから、EGRクーラ210bに比較して、排気浄化触媒の床温を容易に上昇させることができる。それにより、排気浄化触媒の触媒性能をより向上させることができる。しかしながら本実施例に係るEGRクーラ40と比較例3に係るEGRクーラ210cとを比較した場合、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210cよりも製造が容易である。よって、本実施例に係るEGRクーラ40の方が製造コストを低く抑えることができる。また、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210cよりも第1熱交換体45へのHCや粒子状物質の堆積を効果的に抑制することができる。
図5(b)に示すように比較例4に係るEGRクーラ210dは、第2熱交換体46が第1熱交換体45の排気流動方向下流側の端部にまで延伸していない点において、比較例3に係るEGRクーラ210cと異なっている。EGRクーラ210dにおいても、EGRクーラ210cと同様の作用効果を発揮することができる。しかしながら本実施例に係るEGRクーラ40と比較例4に係るEGRクーラ210dとを比較した場合、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210dよりも製造が容易である。よって本実施例に係るEGRクーラ40の方が製造コストを低く抑えることができる。また、EGRクーラ40の方がEGRクーラ210dよりも第1熱交換体45へのHCや粒子状物質の堆積を効果的に抑制することができる。