JP2013224487A - 化合物薄膜形成用スパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】化合物半導体型太陽電池における化合物薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット、特に、耐割れ性に優れたCuInS2薄膜形成用のスパッタリングターゲット、及び、そのスパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】Cu:10〜50原子%と、In:10〜34原子%とを含有し、残部がS及び不可避不純物からなる組成を有する焼結体であって、該焼結体の組織は、CuInS相と、分散したIn相又はCuS相とからなることを特徴とする。このCuS相又はIn相自体が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、化合物半導体型太陽電池における化合物薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット、特に、耐割れ性に優れたCuInS薄膜形成用のスパッタリングターゲット、及び、そのスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
近年、スパッタリング法を用いた薄膜の作製が盛んに行われている。例えば、薄膜を利用したものとして、Si系太陽電池に代わる低コストかつ高効率の化合物半導体薄膜太陽電池の開発が進められ、実用化されている。この化合物薄膜の形成においても、スパッタリング法が採用されている。
この化合物半導体による薄膜太陽電池は、ソーダライムガラス基板の上にプラス電極となるMo電極層を形成し、このMo電極層の上にCu−In−Ga−Se合金膜、Cu−Ga−Se合金膜、Cu−In−Se合金膜などのカルコパイライト型半導体膜からなる光吸収層が形成され、このカルコパイライト型半導体膜からなるこの光吸収層の上にZnS、CdSなどからなるバッファ層が形成され、このバッファ層の上にマイナス電極となる透明電極層が形成された基本構造を有している。
このカルコパイライト型半導体膜の成膜方法としては、蒸着法により成膜する方法が知られているが、この蒸着法により得られたカルコパイライト型半導体膜からなる光吸収層は高いエネルギー変換効率が得られるが、蒸着法によると、その成膜速度は、スパッタリング法に比較して早いものの、より平坦で、大面積の膜を得ることは難しい。そのため、スパッタリング法によってカルコパイライト型半導体膜からなる光吸収層を形成する方法が提案されている。
このカルコパイライト型半導体膜をスパッタリング法により成膜する方法の一例として、スパッタ装置にCu−GaターゲットおよびInターゲットを同時に設置してスパッタすることによりCu−Ga−In膜を成膜し、このCu−Ga−In膜をSe雰囲気中で熱処理してカルコパイライト型半導体膜であるCu−In−Ga−Se合金膜を成膜する方法が提案されており、これらCu−GaターゲットおよびInターゲットはいずれも鋳造で作製されている。
一方、特許文献1には、カルコパイライト型半導体薄膜の成膜において、カルコパイライト化合物そのものを真空蒸着法の蒸発源、或いは、スパッタリング法のターゲットとして用いることが開示されている。カルコパイライト型半導体薄膜が、CuInSe、CuInS、CuGaSe、或いは、これらの固溶体である場合に、低コストで、所定の電気特性のカルコパイライト型半導体薄膜を作製することができる。
特許第3431318号明細書
しかしながら、例えば、カルコパイライト型結晶構造を有するCuInSスパッタリングターゲットを製作しようとすると、ターゲット自体がCuInSの単相で形成されるため、ターゲットの切削加工時に、割れや、欠けなどが発生し、スパッタリングターゲットとして使用することができなかった。
そこで、本発明は、耐割れ性に優れたCuInS薄膜形成用スパッタリングターゲットと、そのスパッタリングターゲットの製造方法とを提供することを目的とする。
従来では、上記CuInS薄膜形成用スパッタリングターゲットを作製する場合、CuInSの単一化合物粉末を焼結することにより焼結体を得ている。この焼結体に切削加工などの機械加工を施して、スパッタリングターゲットを完成させることになるが、この焼結体は、カルコパイライト型結晶構造を有したCuInSの単相で形成されているため、機械加工の際に、割れや、欠けなどが発生し易いという問題があった。
本発明者らは、この問題を解決するものとして、CuS粉末とIn粉末がS成分を含み、これらの粉末自体に弾性があることに着目して開発研究したところ、次のような知見が得られた。
・CuS粉末とIn粉末とがCuInS量論比となるように配合された場合でも、焼結後において、In粉末が相として残ること。
・残存したIn相が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制できること。
・さらに、CuS粉末とIn粉末のいずれかを過剰に配合し、焼結させることにより、カルコパイライト型結晶構造の焼結体組織中に、CuS粉末とIn粉末のいずれかが相として残ること。この残ったCuS相又はIn相自体が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制できること。
ここで、化合物薄膜をスパッタリングで成膜するとき、成膜された薄膜の組成は、スパッタリングターゲットの組成がそのまま維持されることから、CuS粉末とIn粉末の配合量は、その焼結体を用いてスパッタリング成膜された化合物薄膜の組成がCuInSとなるように調整されなければならないことについても配慮し、成膜目標のCuInS薄膜における成分の組成ずれの範囲内になるように、CuS粉末とIn粉末のいずれかを過剰に配合することとした。
そこで、本発明者らは、具体例として、CuS粉末:32.8質量%と、In粉末:67.2質量%とを配合し、混合した混合粉を作成した後、その混合粉を、真空雰囲気中で、温度:750℃、圧力:200kgf/cmの条件でホットプレス焼結して焼結体を得た。得られた焼結体について、EPMA(フィールドエミッション型電子線プローブ分析)にて組成分布の様子を観察した。この観察で得られた元素分布画像が図1の写真に示されている。
なお、EPMAによる元素分布画像は、本来カラー像であるが、図1の写真では、白黒像に変換して示されているため、その写真中において、白いほど、当該元素の濃度が高いことを表している。具体的には、「S」に関する分布画像では、S成分が全体に分布し、「In」に関する分布画像では、In成分が全体に薄く分布しているが、特に濃い部分が白点状に分散して存在し、これに対して、「Cu」に関する分布画像では、Cu成分は、全体に広がって存在するが、In成分が特に濃い部分に対応する部分では、ほとんど存在していないことが分かる。
特に、得られた焼結体におけるIn相の分散状態を確認するため、図2に示されるEPMAによるCOMPO像を取得した。その分布画像によれば、結晶構造を有するCuInS相を有する焼結体組織中に、例えば、黒線で指し示すように、In相(白い部分)が分散している様子が映し出されている。配合されたIn粉の大部分が、CuS粉と結合してCuInSのカルコパイライト型結晶構造となり、その結晶構造を有するCuInS相(第一相)中に、配合されたIn粉末のうちの一部が、In相(第二相)として残り、分散していることが分かる。
また、上述の焼結体について、X線回折(XRD)による分析を行った。この分析結果として、図3に示されるXRDパターンが得られた。このパターンによれば、CuInSに帰属されるピークが現れており、この焼結体は、CuInS相を有していることが分かる。しかし、In相の残存量がXRDの検出レベルよりも少ないため、このXRDパターンでは、In成分を確認するに至らなかった。
これらの観察によれば、得られた焼結体は、第一相であるCuInS相中に、第二相として、微細なIn相が分散して存在する組織を有することが分かる。この焼結体を機械加工して、スパッタリングターゲットを作製したところ、その加工時には、割れや、欠けなど、発生しなかった。なお、上記具体例では、In粉末をCuS粉末の量に比較して過剰に配合した場合であったが、CuS粉末をIn粉末の量に比較して過剰に配合しても、上記具体例と同様の結果が得られた。この場合には、配合されたCuS粉末のうちの一部が、CuS相として残り、第二相として分散している。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記問題を解決するために、以下の構成を採用した。
(1)本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットは、Cu:10〜50原子%と、In:10〜34原子%とを含有し、残部がS及び不可避不純物からなる組成を有する焼結体であって、前記焼結体の組織は、CuInS相と、分散したIn相又はCuS相とからなることを特徴としている。
(2)前記(1)の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットは、Cu:20〜30原子%と、In:20〜30原子%とを含有し、残部がS及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴としている。
(3)本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法では、CuS粉末:12.7〜70.5質量%と、In粉末:残部とを配合し、混合して混合粉末を作成した後、該混合粉を焼結したことを特徴としている。
(4)前記(3)の製造方法では、前記焼結は、温度:600〜800℃、圧力:100〜400kgf/cm、1〜3時間の条件で行われることを特徴としている。
本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造においては、上述したように、CuS粉末とIn粉末を量論比又はいずれかを過剰に配合することにより、焼結体を形成するカルコパイライト型結晶構造(γ相)のCuInS相中に、CuS粉末又はIn粉末のいずれかが相として残るようにして、この残ったCuS相又はIn相自体が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制できるという知見に基づいている。しかし、CuS粉末とIn粉末の配合にあたっては、CuS粉末とIn粉末のいずれか一方を過剰にするということは、他方の硫化物粉末をその分減らすということであって、その焼結体を用いてスパッタリング成膜された化合物薄膜の組成がCuInSとなるように、それらの粉末の量が調整される。その過剰量は、成膜目標の薄膜における成分の組成ずれ範囲内に収まるようにされる。
即ち、成膜される化合物薄膜の組成は、CuInSであるので、スパッタリングターゲットにおける組成も、CuInSに対応する成分の組成比でなくてはならない。スパッタリングターゲット全体における成分の理論的組成比(量論比)は、Cu:25原子%、In:25原子%、S:50原子%となる。この組成比を維持することが前提であるが、実際には、成膜目的の薄膜の組成には、ずれ幅が許容されているため、その幅の範囲内で、その組成比を変更することができる。その範囲内で、ターゲット中において第二相として、微細なIn相を形成するのであれば、CuS粉末の量よりIn粉末の量を多く配合する。また、微細なCuS相を形成するのであれば、In粉末の量よりCuS粉末の量を多く配合することになる。
本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットでは、CuInS薄膜の許容できる組成ずれ範囲を考慮して、スパッタリングターゲット全体における組成比について、Cu:10〜50原子%と、In:10〜34原子%とを含有し、残部をS及び不可避不純物とすることができる。より好ましくは、Cu:25±5原子%、In:25±5原子%、S:50±5原子%を考慮して、そのスパッタリングターゲットの組成比について、Cu:20〜30原子%と、In:20〜30原子%とを含有し、残部をS及び不可避不純物とすることができる。ここで、CuS粉末とIn粉末のいずれかを過剰に配合されていることにより、成膜された薄膜において、Cu又はInが多くなるが、成膜目的の薄膜の組成幅の範囲内であれば、薄膜の特性に影響しないので、問題にならない。
この様な組成比を達成できるように、12.7〜70.5質量%のCuS粉末と、その残部をIn粉末として配合するようにした。例えば、CuS粉末が28.6質量%の場合には、In粉末は71.4質量%配合され、CuS粉末が37.4質量%の場合には、In粉末は62.6質量%配合される。CuS粉末を12.7〜70.5質量%の範囲外となる量で配合した場合には、CuInS薄膜の許容できる組成ずれ範囲を逸脱することになるので、好ましくない。
本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造においては、上述のようにCuS粉末とIn粉末とが配合され、混合されて混合体が作成された後、該混合体を、真空、不活性ガス、或いは、還元雰囲気中で、温度:600〜800℃、圧力:100〜400kgf/cmの条件でホットプレス焼結してCuInS焼結体を得た。ここで、焼結時の温度が、600℃を下回ると、カルコパイライト構造のCuInS相(第一相)が得られない。600℃以上であれば、CuSとInとの反応が起こり易くなる。また、焼結時の温度が800℃を超えると、S成分が蒸発してしまうので、InからInの析出が起こり、このInが割れなどの原因となる。そのため、焼結時の温度は、600〜800℃であることが好ましい。この温度が800℃以下であっても、InからInが析出することがあるが、そのIn析出が僅かであって、In相が、第二相として、CuInS相中に残存していれば、割れや、欠けを抑制することができる。
ここで、本発明者らは、上記具体例と比較するため、CuS粉末とIn粉末との配合量は、具体例の場合と同じであるが、ホットプレス焼結時の温度条件を850℃に変更してホットプレス焼結することにより、焼結体を作製した。得られた焼結体について、EPMAにて組成分布の様子を観察した。得られた元素分布画像が図4の写真に示されている。
図4の写真に示されたEPMAによる元素分布画像の見方は、図1の写真の場合と同様であるが、焼結温度が高いため、In単体が析出し、Inリッチの大きなIn相が形成されていることが分かる。このことは、焼結温度が高くなると、In単体が析出し易くなることを示し、このIn析出は、焼結体の機械加工時の割れ発生などに悪い影響を与える。さらに、In相が微細に分散するのではなく、大きいままで残ることを示し、この大きさも、焼結体の割れなどに繋がるものと考えられる。
また、焼結時の圧力についても、100kgf/cmを下回ると、焼結不良が発生して、ターゲットの機械加工において不具合が生じ、400kgf/cmを超えると、Inの析出を促進することとなり、このIn析出が割れなどの原因となる。そのため、ホットプレス焼結時の圧力については、真空雰囲気中で、100〜400kgf/cmの範囲とした。
さらに、ホットプレス焼結の時間についても、1時間を下回ると、焼結不良が発生しやすく、3時間を超えると、In析出を促進することとなり、このIn析出が割れなどの原因となる。そのため、ホットプレス焼結の時間については、上述した条件のもとで、1〜3時間とした。
なお、配合されるCuS粉末及びIn粉末の大きさに関して、焼結後のカルコパイライト型結晶構造のCuInS相中に、微細なCuS相又はIn相として残り、かつ、分散状態で存在させるには、できるだけ小さい平均粒径を有するもが好ましく、そして、均一に混合することが好ましい。
以上の様に、本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造において、過剰に配合されたCuS粉末とIn粉末のいずれかが、焼結後のカルコパイライト型結晶構造のCuInS相中に、微細なCuS相又はIn相として残るので、このCuS相又はIn相自体が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制でき、化合物半導体による薄膜太陽電池の吸収層の成膜に使用するのに好適である。
本発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットによると、焼結体のCuInS相中に、微細なIn相又はCuS相が第二相として分散されているので、このCuS相又はIn相自体が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制でき、所望するCuInS薄膜をスパッタリング成膜することができる。また、その製造方法では、CuS粉末とIn粉末を量論比又はいずれかを過剰に配合することにより、カルコパイライト型結晶構造のCuInS相中に、CuS粉末とIn粉末のいずれかが相として残るように配合され、その混合粉が焼結されるので、焼結体において、CuInS相中に、微細なCuS相又はIn相が分散して残りやすくなることとなって、それ自体が有する弾性によって、機械加工時の衝撃が吸収され、割れや、欠けなどの発生を抑制できる。
本発明に係る化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの焼結体の一例についてEPMAにより取得したCu−In−S元素分布画像である。 本発明に係る化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの焼結体の一例についてIn相の分散分布状態を説明するEPMAにより取得したCOMPO像である。 図1に示された焼結体についてX線回折により測定した結果を表しXRDパターンである。 比較例に係る化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの焼結体についてEPMAにより取得したCu−In−S元素分布画像である。
つぎに、この発明の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲット及びその製造方法について、以下に、実施例及び比較例により具体的に説明する。
〔実施例〕
先ず、CuInS薄膜形成用スパッタリングターゲットを製造するにあたり、原料粉末として、平均粒径が30μmで、純度が2NのCuS粉末と、平均粒径が2μmで、純度が4NのIn粉末とをそれぞれ用意し、そして、CuS粉末とIn粉末を所定の量となるように秤量した。表1に示されるように、実施例1乃至10について、CuS粉末とIn粉末とを配合し、混合粉砕を行って、混合粉を作製した。

ここでの混合粉砕には、湿式ボールミルが使用されたが、これに限られず、例えば、ボールミル、ヘンシェルミル、ジェットミル、V型混合器、ロッキングミキサーなどを用いることができる。なお、CuS粉末とIn粉末の平均粒径は、小さい程好ましく、CuInS相中に、第二相として、微細なCuS相又はIn相を残りやすくし、かつ、分散しやすくする上で有利である。In粉末の粒径が大きいと、Inが析出しやすくなり、焼結後の機械加工時における耐割れ性を低下させることになるので、好ましくない。
次に、上述のように原料粉末を混合粉砕した混合粉をモールドに充填した。そして、このモールドが収納された真空槽内を到達真空圧力:10−2Torrまで排気した後、表2に示されるように、温度:650〜800℃、圧力:200kgf/cm、2時間の条件で、ホットプレス焼結を行って、実施例1乃至10の焼結体を作製した。

〔比較例〕
CuInS化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの比較例として、本発明の実施例条件の設定範囲外としたものについても、表1に示すように、比較例1乃至4について、原料粉末を用意した。この比較例1では、原料粉末として、CuInS粉末を用意し、比較例2乃至4については、上述のCuS粉末とIn粉末とを用意した。
そして、実施例1乃至10の場合と同様にして、上述のように原料粉末を粉砕してモールドに充填し、真空槽内を到達真空圧力:10−2Torrまで排気した後、表2に示されるように、温度:700〜750℃、圧力:200kgf/cm、2時間の条件で、ホットプレス焼結を行い、比較例1乃至4の焼結体を作製した。
以上の様に作製された実施例1乃至10及び比較例1乃至4の焼結体について、旋盤などによる切削加工等を行って、実施例1乃至10及び比較例1乃至4のスパッタリングターゲットを作製した。そこで、実施例1乃至10及び比較例1乃至4のスパッタリングターゲットについて、割れや、欠けが発生したかどうかを調べた。その結果が、表3に示されている。ここで、表3における「切削加工時の割れ、欠け」欄においては、最外径が0.5mm以上の欠け、割れが発生しなかった場合を「◎」印で表示し、0.5mm以上の欠け、割れが発生したが、2mm以上の欠け、割れが発生しなかった場合を「○」印で表示し、さらに、2mm以上の欠け、割れが発生した場合を「×」印で表示した。

表3に示された結果によれば、実施例1乃至10のスパッタリングターゲットには、割れや欠けが発生しないか、或いは、発生しても小さいため、スパッタリングに影響がなく、良好な結果が得られた。これに対して、比較例1乃至4のスパッタリングターゲットには、割れや欠けが発生し、スパッタリングに供することができないものであった。
また、実施例1乃至10及び比較例1乃至4のスパッタリングターゲットについて、EPMAを用いて、反射電子像(COMPO像)と、Cu、In、Sの各元素の組成分布像を観察し、さらに、得られたスパッタリングターゲットを粉砕した粉を用いて、理学電気社製XRD装置(RINT−Ultima/PC)により、2θ=5〜80°の範囲で測定した。また、ターゲットの成分組成は、ターゲットの粉砕粉を用いて、Cu、InをIPC−AESによって定量し、残りの成分をSとした。それらの分析に基づいた結果が、表3に示されている。
これらで得られたEPMAによる元素組成分布画像(図1を参照)や、XRD測定結果である2θ―強度グラフ(図2を参照)から、実施例1乃至4及び8のスパッタリングターゲットの組織中には、第二相としての微細なIn相の分散が確認され、実施例5、7、9のスパッタリングターゲットにおいても、その組織中には、第二相としての微細なCuS相の分散が確認された。実施例1乃至4及び8のスパッタリングターゲットでは、表1に示されるように、In粉が過剰に配合されたため、焼結後においても、微細なIn相がターゲットの組織中に残る結果となり、実施例5、7、9のスパッタリングターゲットでは、CuS粉が過剰に配合されたため、その組織中に、微細なCuS相が残る結果となった。
また、実施例6及び10のスパッタリングターゲットでは、僅かにIn析出が見られたが、第二相としてのIn相の分散を確認することができた。これは、ホットプレス焼結時の温度が、他の実施例の場合に比較して高かったため、In粉末の一部からS成分が蒸発し、Inが析出したものである。しかし、そのIn析出が僅かであって、In相が、第二相として、CuInS相中に残存しており、析出したInを起点とした欠けが発生するものの、ターゲット自体の割れや、欠けを抑制できたことが確認された。
実施例1乃至10のスパッタリングターゲットにおいては、CuInS相中に、第二相として、これらの微細なIn相又はCuS相が組織中に分散することによって、In相又はCuS相自体の有する弾性が、切削加工等の機械加工時の緩衝作用を奏し、割れや欠けなどの発生を抑制している。なお、実施例1乃至10のスパッタリングターゲットは、In粉末とCuS粉末とのいずれかが過剰に配合されて焼結された焼結体であるが、そのターゲット中の成分組成については、表3に示されたような比となることが確認された。これらの比は、このターゲットを用いたスパッタリング法で成膜された薄膜における組成ずれの範囲内にあり、問題とならない。
一方、比較例1のスパッタリングターゲットは、焼結時に、単一化合物であるCuInS粉末を用いた場合であって、その焼結体中には、元々、In相又はCuS相からなる第二相を形成することができない。そのため、機械加工時に、割れや欠けが発生し、スパッタリングに供することができなかった。また、比較例2のスパッタリングターゲットでは、CuS粉末が過剰に多量に配合され、比較例3のスパッタリングターゲットでは、In粉末が過剰に多量に配合されたため、CuInS相が少なく、CuS相又はIn相が素地を形成するようになった。比較例2及び3の場合には、機械加工時に、点在する比較的脆いCuInS相が脱落し、これが、割れや欠けの原因になった。さらに、比較例4では、ホットプレス温度を850℃と高温にしたため、In粉末の一部からS成分が蒸発し、多量に析出したInを起点にして、割れが発生した。
以上のように、実施例1乃至10のCuInS薄膜形成用スパッタリングターゲットによれば、CuInS相中に、第二相としての微細なIn相又はCuS相が分散されて形成されているので、In相又はCuS相自体の有する弾性が、切削加工等の機械加工時の緩衝作用を奏し、割れや欠けなどの発生を抑制することができ、耐割れ性に優れていることが確認された。この様なCuInS薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造においては、成膜目標の薄膜における成分の組成ずれの範囲内に収まるように調整されて秤量されなければならないが、In粉をCuS粉の量に比較して、或いは、CuS粉をIn粉の量に比較して過剰に配合した混合粉末を得て、真空、不活性ガス、還元雰囲気内で、温度:600〜800℃、圧力:200kgf/cmの条件で粉末焼結することにより、焼結体におけるCuInS相中において、微細なIn相又はCuS相が分散状態になることが確認された。



Claims (4)

  1. Cu:10〜50原子%と、In:10〜34原子%とを含有し、残部がS及び不可避不純物からなる組成を有する焼結体であって、
    前記焼結体の組織は、CuInS相と、分散したIn相又はCuS相とからなることを特徴とする化合物薄膜形成用スパッタリングターゲット。
  2. Cu:20〜30原子%と、In:20〜30原子%とを含有し、残部がS及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3. CuS粉末:12.7〜70.5質量%と、In粉末:残部とを配合し、混合して混合粉末を作成した後、該混合粉を焼結したことを特徴とする化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 前記焼結は、温度:600〜800℃、圧力:100〜400kgf/cm、1〜3時間の条件で行われることを特徴とする請求項3に記載の化合物薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。



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