JP2013215777A - 連続鋳造装置および凝固状態推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続鋳造中の鋳片の表面温度を、その凝固状態の推定に用いるのに適した値として取得すること。
【解決手段】連続鋳造機1は、鋳型4に注入された溶鋼2を引き抜き、この引き抜き方向に沿って分割された複数の冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bで構成される2次冷却ゾーンを通過させて2次冷却を行うことで連続して鋳片Sを製造する。この連続鋳造機1は、2次冷却中の鋳片Sの表面温度を測定する温度計16を備える。温度計16は、冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bのうち、2次冷却の過程で表面温度が内部からの復熱によって上昇する鋳片Sの位置を含む冷却ゾーン内、この冷却ゾーンの近傍、またはこの冷却ゾーンよりも下流側の位置に設置される。
【選択図】図1

Description

本発明は、連続的に鋳片を鋳造する連続鋳造装置、および連続鋳造中の鋳片の凝固状態を推定する凝固状態推定方法に関するものである。
連続鋳造機(連続鋳造装置)において、最終凝固位置や最終凝固形状等の鋳片の凝固状態(鋳片内部の温度分布状態ともいう。)を常時把握することは、脆化による表面割れ、あるいは鋼種によって問題となる偏析等の品質異常防止のため、また、後段の圧延工程において鋳片をその長手方向の適切な位置で圧下するため等に必要とされている。その他にも、生産性向上を目的とし、連続鋳造機の機端手前のぎりぎりの位置で鋳造を完了するよう制御される鋼種においては、機端抜けが発生して最終凝固位置が機端の外側に出てしまうと、鋳片が膨張する等のトラブルの原因となるため、最終凝固位置を機端の内側に収めるためには、最終凝固位置を把握しておくことが必要となる。
この種の課題を解決するため、従来から、鋳片内部の温度分布状態、特に、鋳片の最終的な凝固状態やシェル厚状態の推定計算方法として様々な数値計算(凝固計算)の手法が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている手法では、先ず、連続鋳造中のストランド内に所定長さの鋳込みが進行する毎に鋳込み方向(鋳片の引き抜き方向)に垂直な計算(断)面を発生させる。そして、発生させた計算面が鋳込み方向に連続して設定された複数のゾーンをそれぞれ通過し、次のゾーン入側境界に到達した時点で、この計算面が直前に通過したゾーンの平均冷却条件に基づき計算面内の2次元凝固計算を行う。その後、得られた計算面内の温度分布を次のゾーン以降で行う凝固計算の初期値として与え、順次計算面内の凝固計算を行って最終ゾーン入側境界での計算面内の温度分布を求めている。
また、特許文献2には、凝固計算の精度向上のため、温度計を設置して少なくとも1つの測定点で鋳片の表面温度を測定し、凝固シュミレーションを行うことで測定点における計算値と実測値とが一致するように熱流束分布を補正する手法が開示されている。
一方で、最終凝固位置や最終凝固形状を知るため、連続鋳造中の鋳片内部の温度を測定する手法についても、これまでに様々な提案がされている。しかしながら、温度計の使用環境が高温多湿であるがゆえに操業中に温度計を常時使用するのは難しく、特許文献1に開示されているような凝固計算によって鋳片内部の温度分布状態を推定しているのが現状である。
特開2002−178117号公報 特開平10−291060号公報
ところで、上記した凝固計算による凝固状態の推定では、鋳片に鋲打ち等を行って実際の凝固位置を確認したり、一時的に超音波によって鋳片断面の平均温度を測定する等して凝固計算に用いるパラメータ等を調整することで、凝固計算により推定した凝固状態と実際の凝固状態との一致性を補償している。そして、一旦調整が行われると、計算結果を信用した実操業を行う。しかしながら、前述の調整が行われた時点とは異なる状況下、例えば、鋳造条件の変更や冷却機器の変更、あるいは冷却機器の経年劣化や一時的な故障等が発生した場合、計算による凝固状態の推定結果が実際の凝固状態とは異なる事態が生じ得るため、推定精度が低下するという問題があった。
これに対し、特許文献2は、鋳片表面の温度を測定し、その実測値を用いることで凝固計算により推定した凝固状態と実際の凝固状態とのずれを修正するものである。しかしながら、この修正を適切に行い、鋳片の凝固状態を精度良く推定するためには、温度計を連続鋳造機内のどの位置に設置するのかが重要となる。すなわち、連続鋳造機内で実施される鋳片の冷却(2次冷却)は、鋳片の引き抜き方向に沿って分割された複数の冷却ゾーンで構成される2次冷却ゾーンを通過させることで実施されるが、鋳片の表面温度は、特定の冷却ゾーンでの冷却状態に強く影響される場合もあれば、温度計の設置位置までの冷却過程を表した値として得られる場合もあり、2次冷却ゾーンのどの位置での鋳片の表面温度を用いるかによって、鋳片内部の温度分布状態の推定精度が異なる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、連続鋳造中の鋳片の表面温度を、その凝固状態の推定に用いるのに適した値として取得することができる連続鋳造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、連続鋳造中の鋳片の表面温度をその凝固状態の推定に用いるのに適した値として取得し、連続鋳造中の鋳片の凝固状態を高精度に推定することができる凝固状態推定方法を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる連続鋳造装置は、鋳型に注入された溶鋼を引き抜き、該引き抜き方向に沿って分割された複数の冷却ゾーンで構成される2次冷却ゾーンを通過させて2次冷却を行うことで連続的に鋳片を鋳造する連続鋳造装置であって、前記2次冷却中の前記鋳片の表面温度を測定する温度計を備え、前記温度計は、前記複数の冷却ゾーンのうち、前記2次冷却の過程で表面温度が内部からの復熱によって上昇する前記鋳片の位置を含む冷却ゾーン内、該冷却ゾーンの近傍、または該冷却ゾーンよりも下流側の位置に設置されたことを特徴とする。
また、本発明にかかる凝固状態推定方法は、鋳型に注入された溶鋼を引き抜き、該引き抜き方向に沿って分割された複数の冷却ゾーンで構成される2次冷却ゾーンを通過させて2次冷却を行うことで連続鋳造される鋳片の凝固状態を推定する凝固状態推定方法であって、前記複数の冷却ゾーンのうち、前記2次冷却の過程で表面温度が内部からの復熱によって上昇する前記鋳片の位置を含む冷却ゾーン内、該冷却ゾーンの近傍、または該冷却ゾーンよりも下流側の位置に前記鋳片の表面温度を測定する温度計を設置する設置工程と、2次冷却モデルによって鋳片表面の熱流束を推定し、前記鋳片の表面温度計算値を求める算出工程と、前記温度計が測定した前記2次冷却中の前記鋳片の表面温度を表面温度実測値として取得する取得工程と、前記表面温度計算値と前記表面温度実測値とが一致するように前記鋳片表面の熱流束を補正する補正工程と、前記補正した前記鋳片表面の熱流束に基づき前記鋳片の凝固状態を推定する推定工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、連続鋳造中の鋳片の表面温度を、その凝固状態の推定に用いるのに適した値として取得することができる。また、本発明によれば、連続鋳造中の鋳片の表面温度をその凝固状態の推定に用いるのに適した値として取得し、連続鋳造中の鋳片の凝固状態を高精度に推定することができる。
図1は、連続鋳造機の構成例を示す模式図である。 図2は、凝固推定装置の機能構成例を示すブロック図である。 図3は、鋳片長手方向に沿った表面温度変化のシミュレーション結果の一例を示す図である。 図4は、温度計の設置位置を変えて検証した最終凝固位置の推定結果の一例を示す図である。 図5は、凝固状態推定方法の実施手順の一例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の連続鋳造装置および凝固状態推定方法を実施するための形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
(実施の形態)
図1は、本発明の連続鋳造装置の一実施形態である連続鋳造機1の構成例を示す模式図であり、図1では、垂直曲げ型連続鋳造機を図示している。また、図2は、図1の連続鋳造機1に適用される凝固推定装置20の機能構成例を示すブロック図である。
先ず、連続鋳造機1の構成について説明する。図1に示す連続鋳造機1では、溶鋼2が注入されるタンディッシュ3の下方に鋳型4が設けられ、タンディッシュ3の底部に鋳型4への溶鋼供給口となる浸漬ノズル5が設けられている。鋳型4の下方には、複数のサポートロール6が設置され、これら複数のサポートロール6に沿って鋳片Sが所定の引き抜き速度で引き抜かれる構成となっている。
引き抜き方向である鋳片Sの長手方向(鋳造方向)には、分割された複数の冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bが配置されており、2次冷却ゾーンを構成している。各冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bには複数のスプレー用またはエアミストスプレー用のノズル等の冷却ノズル(不図示)が設置されており、各冷却ノズルから鋳片Sの表面に2次冷却水が噴霧され、目標とする鋳片Sの2次冷却が実施される。なお、図1では、冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bのうち、反基準面側(上面側)に配置されたものを冷却ゾーン7a〜15aとし、基準面側(下面側)に配置されたものを冷却ゾーン7b〜15bとしている。また、図1では、2次冷却ゾーンを構成する冷却ゾーンは合計9ゾーンであるが、ゾーン数はこれに限定されない。実際の連続鋳造機において2次冷却ゾーンがいくつに分割されるか(ゾーン数をいくつにするか)は、機長等によって様々である。
また、連続鋳造機1の機内には、鋳片長手方向に沿った2次冷却ゾーン内の適所において、鋳片Sの表面温度をその幅方向に沿って測定するための温度計16が設置されている。この温度計16は、センサ部分が鋳片Sの鉛直方向上方で鋳片幅方向に沿ってスキャンしながら鋳片Sの表面温度を測定するものであり、センサ部分の移動経路内に存在する水蒸気等が温度測定に与える影響を例えばセンサ部分をパージする等の方法で抑制した環境の下、温度を測定する。温度計16の出力値(以下、「表面温度実測値」と呼ぶ。)は後述する凝固推定装置20の凝固状態推定計算機22に出力され、熱流束分布補正部22bが行う処理で用いられる。なお、図1では、冷却ゾーン12a,12bと冷却ゾーン13a,13bとの間に温度計16を図示しているが、この温度計16の設置位置は一例であって、その具体的な設定位置については後述する。
次に、凝固推定装置20の構成について説明する。この凝固推定装置20は、鋳片Sの凝固状態(鋳片S内部の温度分布状態)を推定するものであり、図2に示すように、制御設定決定計算機21と、凝固状態推定計算機22とが互いにデータの送受可能に接続されて構成されている。これら制御設定決定計算機21および凝固状態推定計算機22は、CPU等の演算装置、主記憶装置、ハードディスクや各種記憶媒体等の補助記憶装置、通信装置、表示装置や印刷装置等の出力装置、入力装置、各部を接続し、あるいは外部入力を接続するインターフェース装置等を備えた公知のハードウェア構成で実現でき、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータを利用することができる。
制御設定決定計算機21は、連続鋳造機1における制御用の設定を決定するものであり、連続鋳造機1の鋳造条件等の操業条件や操業実績値等の必要なデータを保持している。この制御設定決定計算機21は、鋳造条件として与えられる鋼種や鋳造速度等に基づいて、連続鋳造機1を構成する制御対象機器の各種制御設定値、例えば2次冷却のパターンを定める冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15b毎の2次冷却水量やエアー量といった様々な値を決定する。そして、制御設定決定計算機21は、例えばスプレー制御装置等の該当する制御対象機器の制御装置(ローカル機器)に対して決定した制御設定値を含む制御指令を通知する。この制御指令に応答して、制御対象機器の制御装置では、該当する値が通知された制御設定値となるように、制御対象機器の制御を行う。
凝固状態推定計算機22は、連続鋳造機1で連続鋳造中の鋳片Sの最終凝固位置や最終凝固形状を鋳片Sの凝固状態として推定するものであり、制御設定決定計算機21から連続鋳造機1の操業条件および操業実績値を取得し、取得した操業条件および操業実測値に基づき2次冷却計算を行う。この凝固状態推定計算機22は、凝固状態推定部22aと、熱流束分布補正部22bとを備える。
凝固状態推定部22aは、2次冷却計算により、水冷、空冷、ミスト冷却、ロール抜熱等からなる2次冷却の冷却条件(2次冷却条件)を少なくとも用いて熱流束を求め、求めた熱流束を用いた熱伝達モデル(2次冷却モデル)によって鋳片Sの凝固状態を推定する。
ここで、凝固状態推定部22aが行う2次冷却計算について説明する。通常、連続鋳造における2次冷却計算では、例えば、鋳片長手方向に沿って単位長さでスライスされた鋳片断面を考える。そして、2次冷却計算は、先ず、連続鋳造中の機内(ストランド内)の場所に応じた2次冷却条件における鋳片表面での境界条件に基づいて、鋳片表面における熱流束を求める。そして、求めた熱流束を用い、スライスされた鋳片断面の2次元伝熱方程式を解くことで実施される。この2次冷却計算の結果、スライスされた鋳片断面毎に温度分布状態が求まる。鋳片表面の熱流束は、上記スライスの境界条件となる。
熱流束分布補正部22bは、凝固状態推定部22aが2次冷却計算によって求めた鋳片表面における熱流束の鋳片幅方向の分布を補正する。ここで、冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bには、鋳片長手方向の位置に応じた鋳片Sの2次冷却を行うために、それぞれ個別に2次冷却水量やエアー量(スプレー流量)が設定されている。また、熱流束分布補正部22bには、連続鋳造機1に設置された温度計16の表面温度実測値が入力される。温度計16は、上記したように、鋳片長手方向の所定位置に設置され、この設置位置において鋳片幅方向に沿って鋳片Sの表面温度を測定するものである。熱流束分布補正部22bは、前述の冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15b毎のスプレー流量に基づき、温度計16が鋳片幅方向に沿って測定した表面温度実測値を用いて鋳片表面における鋳片幅方向の熱流束分布を補正する。
具体的には、熱流束分布補正部22bは、凝固状態推定部22aが2次冷却モデルによって求めた鋳片表面の鋳片幅方向に沿った温度計算値(表面温度計算値)と、温度計16が鋳片幅方向に沿って測定した表面温度実測値とが一致するように鋳片幅方向の熱流束分布を補正する。実際の処理としては、熱流束分布補正部22bは、表面温度計算値と表面温度実測値との差がその鋳片幅方向全体で所定の閾値以下となるまで鋳片幅方向の熱流束分布の補正係数を繰り返し修正することで補正を行う。このとき、表面温度計算値は、温度計16の鋳片長手方向の設置位置と同じ位置について求めた表面温度計算値を用いる。その後は、鋳片幅方向の熱流束分布の補正係数を修正した2次冷却モデルによって凝固状態推定部22aが行った2次冷却計算の結果を補正することで、鋳片S内部の温度分布状態を推定し、推定した結果に基づき最終凝固位置や最終凝固形状を推定する。これにより、2次冷却計算だけでは推定できない、例えば外乱等による最終凝固位置の変化を捉えた推定が可能となる。
なお、熱流束分布補正部22bは、鋳造条件が変更された等のタイミングで随時上記した鋳片幅方向の熱流束分布の補正係数を修正し、鋳片Sの凝固状態を推定するようになっている。このようにして随時推定される凝固状態推定計算機22での推定結果は、制御設定決定計算機21に出力するようにしてもよい。そして、制御設定決定計算機21が、凝固状態推定計算機22での推定結果に基づいて関連する制御設定値を再度決定し、改めて制御指令を通知するようにしてもよい。これによれば、鋳造条件の変更タイミング等で行われる凝固状態推定計算機22での推定結果をその都度連続鋳造機1の制御に反映させることができる。
次に、温度計16の設置位置について説明する。以上説明したように、凝固状態推定計算機22が行う鋳片Sの凝固状態の推定では、連続鋳造機1内に設置された温度計16の出力値である表面温度実測値を用いており、温度計16は、凝固状態推定計算機22での推定に適した位置に設置される。図3は、2次冷却計算によって求めた鋳片中央部の鋳造位置の鋳片長手方向に沿った表面温度変化のシミュレーション結果を示す図であり、ある連続する3つの冷却ゾーン(以下、冷却ゾーンZ1,Z2,Z3と表記する。)を通過した際の表面温度変化を示している。図3に示すように、冷却ゾーンが切り替わる2次冷却ゾーン内の位置では、その切り替わる前ゾーンと切り替わった後の自ゾーンとの熱流束差によって、鋳片の表面温度がある時定数をもって変化している。
ここで、冷却ゾーンZ1は、2次冷却の強いゾーンであり、この2次冷却が鋳片中心付近(鋳片内部)の高温部からの伝熱による復熱よりも勝っているため、その表面温度はゾーン入口側で大きく低下している。この冷却ゾーンZ1のように、自ゾーンでの2次冷却が表面温度に大きく影響するような冷却ゾーンでは、仮に自ゾーンでの2次冷却に鋳片幅方向の冷却ムラがあった場合、この冷却ムラの影響が表面温度実測値に強く現れてしまう。したがって、このような冷却ゾーンの表面温度実測値は、鋳片内部の温度分布状態を推定するのに適当ではない。
また、冷却ゾーンZ3では、冷却が弱いゾーンにも関わらず、温度の上昇は緩やかであり、最終的には下降傾向にある。これは、鋳片の凝固が既に完了し、この凝固完了位置(計算上は、後述する基準位置から30mの位置)から離れていくため、内部からの復熱が徐々に小さくなっているためである。このような状態では、鋳片内部の温度分布は伝熱により既に平準化されつつあるため、その表面温度を用いて鋳片内部の凝固ムラを捕らえるのは困難である。したがって、このような冷却ゾーンの表面温度実測値は、鋳片内部の温度分布状態を推定するのに適当ではない。
これに対し、冷却ゾーンZ2の表面温度は、鋳片内部の温度の影響が現れた温度変化となっている。すなわち、冷却ゾーンZ2では、ゾーン入口側に比べてゾーン出口側で表面温度が高くゾーン全体として温度が上昇しており、かつ、ゾーン後半で表面温度がほぼ一定値で安定している。このため、この冷却ゾーンZ2での表面温度には、冷却ゾーンZ1,Z3と比べて鋳片内部からの伝熱による復熱の影響がより強く現れているといえ、この冷却ゾーンZ2は、その表面温度が内部からの復熱によって上昇する鋳片の2次冷却ゾーン内の位置を含むと考えられる。したがって、このような冷却ゾーンの表面温度実測値は、鋳片内部の温度分布状態を推定するのに適している。特に、この冷却ゾーンZ2のゾーン入口側付近の領域Z21や、ゾーン出口側付近の領域Z23では、表面温度がほぼ定常値を維持しており、表面温度の変化が平坦で安定しているため、温度計の設置位置としてより好ましい。
以上のようにして鋳片内部の温度分布状態を推定するのに適した冷却ゾーンを特定したならば、例えば、冷却ゾーンZ2の領域Z21内や、例えば直前の冷却ゾーンZ1との間といった領域Z21の近傍、あるいは領域Z23内や、例えば直後の冷却ゾーンZ3との間といった領域Z23の近傍において、温度計の設置が可能な位置を温度計の設置位置として決定する。また、この領域Z21,Z23内またはその近傍に限らず、鋳片内部の温度分布状態を推定するのに適していると判明した冷却ゾーンZ2内や、例えば直前の冷却ゾーンZ1との間といった冷却ゾーンZ2の近傍、あるいはこの冷却ゾーンZ2よりも下流側で温度計を設置可能な位置を適宜選んで温度計の設置位置として決定してもよい。
なお、鋳片長手方向に沿った表面温度の推移パターンは、鋼種等の鋳造条件によって変化する。このような場合を想定し、復熱開始が一番遅い鋼種について表面温度の推移パターンを検証し、温度計の設置位置を決定するようにしてもよい。あるいは、鋳片内部の温度分布状態の把握が、品質維持上重要な鋼種について表面温度の推移パターンを検証し、温度計の設置位置を決定するようにしてもよい。
実際に、図3に示す冷却ゾーンZ2に温度計を設置して測定した表面温度実測値を用い、操業条件に基づき鋳片の最終凝固位置を推定するとともに、それとは別に冷却ゾーンZ1に温度計を設置して測定した表面温度実測値を用い、操業条件に基づき鋳片の最終凝固位置を推定し、推定結果を比較検討した。図4は、検証結果を示す図であり、2次冷却ゾーンの図1に示す鋳型4側の端部位置である基準位置から鋳片長手方向に沿って29.5mの位置に設置した温度計を使用した場合の推定結果と、基準位置から鋳片長手方向に沿って18.5mの位置に設置した温度計を使用した場合の推定結果とを示している。また、超音波の伝播時間に基づいて鋳片内部の温度分布を測定することで求めた最終凝固位置を併せて示している。ここで、基準位置から29.5mの位置は図3に示す冷却ゾーンZ2に、基準位置から18.5mの位置は図3に示す冷却ゾーンZ1に、それぞれ属する位置である。
図4に示すように、18.5m位置と、29.5m位置とでは、異なる推定結果が得られた。そして、超音波測定を行って求めた最終凝固位置との比較によって明らかなように、29.5m位置での表面温度実測値を用いた場合の方が、より実際の最終凝固位置に近い推定結果となっている。
図5は、本発明の一実施形態である凝固状態推定方法の実施手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、図5に示すように、先ず、上記した要領で、連続鋳造機1の2次冷却ゾーンを構成する冷却ゾーン7a〜15a,7b〜15bの中から、表面温度が内部からの復熱によって上昇している鋳片Sの位置を含む冷却ゾーンを特定し、特定した冷却ゾーン内、この冷却ゾーンの近傍、またはこの冷却ゾーンよりも下流側の位置に温度計16を設置する(ステップs1:設置工程)。
その後は、凝固推定装置20の凝固状態推定計算機22がステップs3〜ステップs13の処理を実行することで、連続鋳造機1で連続鋳造中の鋳片Sの凝固状態を推定する。なお、凝固状態推定処理は、ステップs3〜ステップs13の処理手順を実現するためのプログラムを凝固状態推定計算機22に保存しておき、CPU等の演算装置がこのプログラムを読み出して実行することで実現できる。
すなわち先ず、凝固状態推定部22aが、上記した要領で、2次冷却計算によって鋳片Sの表面における熱流束分布を推定し、鋳片Sの鋳片幅方向に沿った温度計算値(表面温度計算値)を求める(ステップs3:算出工程)。続いて、熱流束分布補正部22bが、温度計16が鋳片幅方向に沿って測定した表面温度実測値を取得する(ステップs5:取得工程)。ここでの処理は、例えば、熱流束分布補正部22bが、温度計16に温度測定指令を通知する。そして、この温度測定指令に応答して温度計16が設置位置における鋳片Sの鋳片幅方向に沿った表面温度の分布を測定し、測定結果(鋳片幅方向に沿った表面温度実測値)を熱流束分布補正部22bに出力することで実現できる。
続いて、熱流束分布補正部22bは、上記した要領で、ステップs5で取得した鋳片幅方向に沿った表面温度実測値を用い、ステップs3で求めた鋳片Sの表面における鋳片幅方向の熱流束分布を補正し(ステップs7:補正工程)、補正した熱流束分布に基づいて鋳片Sの凝固状態を推定する(ステップs9:推定工程)。
その後は、凝固状態推定計算機22は、鋳造条件が変更されるまでの間待機状態となる(ステップs11:No)。そして、凝固状態推定計算機22は、鋳造条件が変更された等のタイミングで(ステップs11:Yes)、随時ステップs3に戻って上記した処理を行い、再度鋳片Sの凝固状態を推定する。また、凝固状態推定計算機22は、操業を終える等の所定のタイミングで処理を終了する(ステップs13:Yes)。
以上説明したように、本実施の形態では、2次冷却ゾーンを構成する冷却ゾーンの中から、2次冷却の過程で表面温度が内部からの復熱によって上昇する鋳片の位置を含む冷却ゾーンを特定し、このような冷却ゾーン内、この冷却ゾーンの近傍、またはこの冷却ゾーンよりも下流側の位置に温度計を設置することとした。これによれば、通過する鋳片の表面温度の温度変化に鋳片内部の温度の影響が現れている冷却ゾーン内、この冷却ゾーンの近傍、またはこの冷却ゾーンよりも下流側で鋳片の表面温度を測定することができる。したがって、連続鋳造中の鋳片の表面温度実測値を、その凝固状態の推定に用いるのに適した値として取得することができる。
また、2次冷却モデルによって鋳片表面の熱流束を推定して鋳片の表面温度計算値を求め、前述のように取得した表面温度計算値と表面温度実測値とが一致するように鋳片表面の熱流束を補正し、補正した鋳片表面の熱流束に基づき鋳片内部の温度分布状態を求めて最終凝固位置や最終凝固形状を推定することができるので、鋳片の凝固状態を高精度に推定することが可能となる。また、推定結果を用いて生産・品質管理を行うことができるので、偏析等の品質異常や機端抜け卜ラブルを発生させないように鋳造条件を変更しながら操業を行うことが可能となる。
1 連続鋳造機
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 鋳型
5 浸漬ノズル
6 サポートロール
7a〜15a,7b〜15b 冷却ゾーン
16 温度計
20 凝固推定装置
21 制御設定決定計算機
22 凝固状態推定計算機
22a 凝固状態推定部
22b 熱流束分布補正部

Claims (6)

  1. 鋳型に注入された溶鋼を引き抜き、該引き抜き方向に沿って分割された複数の冷却ゾーンで構成される2次冷却ゾーンを通過させて2次冷却を行うことで連続的に鋳片を鋳造する連続鋳造装置であって、
    前記2次冷却中の前記鋳片の表面温度を測定する温度計を備え、
    前記温度計は、前記複数の冷却ゾーンのうち、前記2次冷却の過程で表面温度が内部からの復熱によって上昇する前記鋳片の位置を含む冷却ゾーン内、該冷却ゾーンの近傍、または該冷却ゾーンよりも下流側の位置に設置されたことを特徴とする連続鋳造装置。
  2. 前記温度計は、前記複数の冷却ゾーンのうち、該当する冷却ゾーン内における前記鋳片の表面温度が全体として上昇しており、かつ、前記表面温度の変化が平坦な範囲を含むことで特定される冷却ゾーンの前記平坦な範囲内または該範囲の近傍に設置されることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造装置。
  3. 前記温度計は、前記鋳片の幅方向に移動自在に構成され、当該温度計の設置位置において前記鋳片の幅方向に沿って前記鋳片の表面温度の分布を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造装置。
  4. 鋳型に注入された溶鋼を引き抜き、該引き抜き方向に沿って分割された複数の冷却ゾーンで構成される2次冷却ゾーンを通過させて2次冷却を行うことで連続鋳造される鋳片の凝固状態を推定する凝固状態推定方法であって、
    前記複数の冷却ゾーンのうち、前記2次冷却の過程で表面温度が内部からの復熱によって上昇する前記鋳片の位置を含む冷却ゾーン内、該冷却ゾーンの近傍、または該冷却ゾーンよりも下流側の位置に前記鋳片の表面温度を測定する温度計を設置する設置工程と、
    2次冷却モデルによって鋳片表面の熱流束を推定し、前記鋳片の表面温度計算値を求める算出工程と、
    前記温度計が測定した前記2次冷却中の前記鋳片の表面温度を表面温度実測値として取得する取得工程と、
    前記表面温度計算値と前記表面温度実測値とが一致するように前記鋳片表面の熱流束を補正する補正工程と、
    前記補正した前記鋳片表面の熱流束に基づき前記鋳片の凝固状態を推定する推定工程と、
    を含むことを特徴とする凝固状態推定方法。
  5. 前記設置工程は、前記複数の冷却ゾーンのうち、該当する冷却ゾーン内における前記鋳片の表面温度が全体として上昇しており、かつ、前記表面温度の変化が平坦な範囲を含むことで特定される冷却ゾーンの前記平坦な範囲内または該範囲の近傍に前記温度計を設置することを特徴とする請求項4に記載の凝固状態推定方法。
  6. 前記温度計は、前記鋳片の幅方向に移動自在に構成されており、
    前記取得工程は、前記温度計が該温度計の設置位置において前記鋳片の幅方向に沿って測定した前記鋳片の表面温度の分布を取得することを特徴とする請求項4または5に記載の凝固状態推定方法。
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