JP2013215116A - 減塩液体調味料およびその製造方法 - Google Patents

減塩液体調味料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】通常よりも食塩含有量を低減した液体調味料でありながら、通常の液体調味料と同程度に塩味を感じられる減塩液体調味料を得ることを課題とする。
【解決手段】融点が25〜85℃の水不溶性物質を融解させて、融解させた水不溶性物質と食塩を混合して混合物を得る。得られた混合物を冷却し凝固させた後に破砕して、水不溶性物質で被覆した食塩を調製し、該水不溶性物質で被覆した食塩を減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0〜10.0w/v%の割合で減塩液体調味料に添加分散させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、食塩含有量を低減した液体調味料に関する。
食塩の主要構成成分であるナトリウムの過剰摂取が、高血圧をはじめとする生活習慣病の危険因子となると言われており、近年、食塩の摂取量を減らして生活習慣病を予防したいという消費者の要望が増加している。これに伴い、塩化ナトリウム含有量を減じた様々な減塩飲食品が開発され、市販されている。しかし、塩化ナトリウム添加量を減らしただけでは、味が物足りなくなり、味のバランスも崩れて、満足度が低下するという問題点がある。
このような問題を解決するために、それ自身が塩味を呈する塩味代替物質を使用する方法(例えば、特許文献1参照)や、それ自身は塩味を呈しないが、食塩の塩味を強調する効果を有する塩味増強物質を使用するという方法(例えば、特許文献2参照)が試みられている。
しかし、これらの塩味代替物質や塩味増強物質を使用した減塩飲食品は、塩味増強効果、官能、経済性等の総合的な観点から考えると、充分に消費者のニーズにあった技術にはいまだ到達しておらず、満足感のある減塩飲食品を提供できる技術が強く求められている。
一方、食塩粒子を造粒し、水不溶性物質で被覆することを特徴とする食塩顆粒の製造方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかし、この技術は食塩顆粒入り歯磨剤の塩味を低減することが目的であり、塩味を増強する目的で減塩飲食品に添加するという報告例はなかった。
特開2006−141223号公報 特開2002−345430号公報 特開平6−116126号公報
本発明は、通常よりも食塩含有量を低減した液体調味料でありながら、通常の液体調味料と同程度に塩味を感じられる減塩液体調味料を得ることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、食塩を水不溶性物質で被覆した粒子を減塩調味料に添加することにより、通常よりも食塩含有量を低減した液体調味料でありながら、通常の液体調味料と同程度に塩味を感じられる減塩液体調味料が得られることがわかり、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に示す減塩液体調味料およびその製造方法である。
(1)水不溶性物質で被覆した食塩を含有する減塩液体調味料。
(2)水不溶性物質で被覆した食塩を減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0〜10.0w/v%含有する前記(1)に記載の減塩液体調味料。
(3)減塩液体調味料が減塩醤油である前記(1)または(2)に記載の減塩液体調味料。
(4)食塩を融点が25〜85℃の水不溶性物質と混合し、凝固させた後に破砕して、水不溶性物質で被覆した食塩を調製し、該水不溶性物質で被覆した食塩を減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0〜10.0w/v%の割合で減塩液体調味料に添加分散させることを特徴とする減塩液体調味料の製造方法。
(5)減塩液体調味料が減塩醤油である前記(4)に記載の減塩液体調味料の製造方法。
本発明によれば、通常よりも食塩含有量を低減した液体調味料でありながら、通常の液体調味料と同程度に塩味を感じられる減塩液体調味料を容易に得ることができる。
一対比較法による比較例1に対する実施例1の官能試験結果である。
本発明を実施するには、食塩を水不溶性物質で被覆した粒子を減塩液体調味料に添加すればよい。
減塩液体調味料の対象となる調味料としては、食塩を含有する液体調味料であれば特に限定されない。醤油、ソース、麺つゆ、焼肉のたれなどのたれ類、ドレッシングなどが挙げられる。
本発明の減塩液体調味料を得るには、まず対象となる液体調味料の食塩濃度を通常の食塩濃度より低くした液体調味料(以下、「減塩液体調味料ベース」と言う)を調製する。対象となる液体調味料の食塩濃度を低くする方法は特に限定されない。基本的には、原料の食塩の使用量を減らすか、電気透析などにより、食塩を除去するなどの方法が行われる。
例として、麺つゆと醤油について次に示す。
麺つゆの一般的な製造方法としては、醤油、砂糖、みりんなどの麺つゆのかえしとなる部分を調製し、これに鰹節、昆布、しいたけなどの風味原料から抽出しただしを添加し、さらに、食塩やグルタミン酸ナトリウムなどの調味料を使用して味を調整する方法が挙げられる。その際に、原料として使用する醤油や食塩の量を減らすことにより食塩濃度の低い麺つゆを得ることができる。
醸造物である醤油の場合は、仕込み時に食塩水の量を減らして濃度の高い諸味を製造し、これを希釈することで、窒素濃度を確保しながら食塩濃度の低い醤油を得る方法や、通常の製造方法で製造した醤油を電気透析膜により脱塩処理して食塩濃度の低い醤油を得る方法がある。
本発明の水不溶性物質で被覆した食塩(以下、「加工食塩粒子」と言う)を調製するには、融解させた水不溶性物質と食塩を混合したのち、冷却して凝固させ、破砕する方法が挙げられる。破砕する方法としては、圧縮力、剪断力、衝撃力、磨砕力などを利用した方法が考えられるが特に限定されない。しかし、加工食塩粒子の大きさを次の好ましい範囲にすることが必要である。加工食塩粒子の粒径は、0.1〜3.0mmが好ましく、0.3〜1.0mmがより好ましい。0.1mmより細かいと食塩の溶出が早くなり、3.0mmより大きいと食した際に食感が悪くなる。
本発明で食塩を被覆する水不溶性物質としては、食用油脂、脂肪酸または脂肪酸エステルが適している。本発明で使用する水不溶性物質の融点は25〜85℃が好ましい。水不溶性物質の融点が25℃より低いと被覆した水不溶性物質が融解するので食塩を被覆できず、加工食塩粒子中の食塩が液体調味料中で溶解してしまい、本発明の効果が得られなくなる。
本発明の減塩液体調味料は、減塩液体調味料ベースに加工食塩粒子を添加して得られる。添加する加工食塩粒子の量は、減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0〜10.0w/v%であることが好ましい。添加する加工食塩粒子の量が減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0w/v%より少ないと塩味増強効果が得られず、10.0w/v%より多くなると減塩液体調味料に対する水不溶性物質の割合が多くなり、減塩液体調味料の風味が悪くなる。
本発明の減塩液体調味料は、通常の調味料の食塩濃度よりも低い濃度で、通常の調味料と同等の塩味が得られる。加工食塩粒子は、液体調味料中で溶けずに、分散しているが、食したときに、水不溶性皮膜が体温や咀嚼による摩擦などによって破壊され、内包されている食塩が溶解し舌の塩味を感じる部位に直接接触することにより、食塩が溶解している液体調味料に比べて塩味を強く感じると考えられる。
減塩液体調味料ベース中に加工食塩粒子を分散させるために増粘剤を添加して減塩液体調味料の粘度を高めてもよい。増粘剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガムなど、減塩液体調味料の粘度を適当に調整できるものであれば特に限定されない。減塩液体調味料の粘度としては、1.0〜1000mPa・sが好ましく、1.5〜100mPa・sがより好ましい。
以下、実施例を示して本発明の効果をより具体的に説明する。
(加工食塩粒子の調製)
食塩はフードプロセッサ(岩谷産業社製IFM−300型)を用いて破砕し、目開き0.25mm(65メッシュ)のふるいを通過したものを使用した。チョコレート用油脂(不二製油社製、融点27℃)20gを融解して35℃に保温して、前記破砕した食塩50gと充分に混合し、混合しながら冷却し凝固させ、食塩と油脂の混合物を得た。該混合物をフードプロセッサを使用して破砕し、目開き0.5mm(28メッシュ)のふるいにかけ、通過させて、本発明の加工食塩粒子を得た。
(本発明の減塩液体調味料の調製)
こいくちしょうゆ(キッコーマン社製)を電気透析膜により常法に従って脱塩処理し、総窒素濃度1.3w/v%、ナトリウム濃度0.15w/v%、食塩濃度0.4w/v%の脱塩醤油を得た。該脱塩醤油にエタノールと乳酸を添加して、エタノール濃度を6.4v/v%、pHを4.4に調整し、さらに、加工食塩粒子を分散させることを目的としてキサンタンガム(三栄源エフエフアイ社製ビストップSAK)を0.3w/v%になるように添加して減塩液体調味料ベースを調製した。
次に、該減塩液体調味料ベース100mlに前記加工食塩粒子4.2g(食塩3.0gを含有)を添加して実施例1の減塩液体調味料を調製した。
(比較例1の減塩液体調味料の調製)
前記加工食塩粒子の調製で、食塩を添加しない以外は同様にして食塩無添加の前記チョコレート用油脂のみの粒子(以下、「食塩無添加粒子」と言う)を調製した。次に食塩3.0gを上記実施例1の減塩液体調味料ベース100mlに溶解し、さらに該食塩無添加粒子4.2gを添加して比較例1の減塩液体調味料を調製した。
(官能試験)
実施例1と比較例1の減塩液体調味料について、一対比較法により14名のパネルで官能試験を行った。試料をポリスチレン製のスプーンに約0.2mlのせて、口の中へ入れて塩味、甘味、旨味、酸味、苦味、しょうゆ感、後味の7項目について、「とても強い」「強い」「やや強い」「同程度」「やや弱い」「弱い」「とても弱い」の7段階で評価を行い、得られた結果に対しt検定による有意差検定を行った。結果を図1に示した。実施例1の減塩液体調味料は比較例1の減塩液体調味料に比べて、塩味、酸味の各項目において危険率5%で有意に強いと識別された。なお、実施例1と比較例1の減塩液体調味料の成分分析値を表1に示した。実施例1と比較例1の成分分析値は、ほぼ同じであった。
Figure 2013215116
[実験例1]
(水不溶性物質の融点の検討)
チョコレート用油脂を表2に記載した脂肪酸および脂肪酸エステルに置き換えることと融解後の保温温度を85℃にする以外は実施例1の加工食塩粒子の調製と同様にして、融点の異なる水不溶性物質を使用した加工食塩粒子を調製した。次に、実施例1の減塩液体調味料ベースに該融点の異なる水不溶性物質を使用した加工食塩粒子を100mlあたり4.2g(食塩3.0gを含有)になるように添加して減塩液体調味料を調製した。
前記官能試験と同様に、試料をポリスチレン製のスプーンに約0.2mlのせて、口の中へ入れ、塩味を確認し、実施例2〜7を前記比較例1の減塩液体調味料と比較して、「強い」「差なし」「弱い」の3段階で塩味の強さを評価した。評価した人数で塩味の強さを判断した。結果を表3に示す。
Figure 2013215116
Figure 2013215116
表3と実施例1(融点27℃)の結果から、本発明により製造された加工食塩粒子は、少なくとも27〜81℃の融点を持つ水不溶性物質であれば塩味増強の効果が得られることがわかる。
[実験例2]
(減塩調味料ベースの粘度の検討)
減塩液体調味料ベースに添加するキサンタンガムの添加量を変更し、表4に記載した粘度にすること以外は実施例1と同様にして、粘度の異なる減塩液体調味料ベースを調製した。次に、粘度の異なる減塩液体調味料ベースに実施例1の加工食塩粒子を100mlあたり4.2g(食塩3.0gを含有)になるように添加して撹拌し、加工食塩粒子を充分に分散させた後、静置して、1分後、5分後、10分後の加工食塩粒子の分散の様子を観察し評価した。結果を表4に示した。
Figure 2013215116
加工食塩粒子が減塩液体調味料中に10分以上分散していれば、減塩液体調味料としての使用上の問題がない。表4に示す結果から明らかなように、比較例2の粘度0.1mPa・sでは、5分後には液体調味料の上方に加工食塩粒子が浮上してしまうが、実施例8〜11の粘度が1.0mPa・s以上の本発明の減塩液体調味料は、使用上問題ない程度に加工食塩粒子が分散していることがわかる。
[実験例3]
(加工食塩粒子添加量の検討)
実施例1で調製した減塩液体調味料ベースと加工食塩粒子を使用して、塩味増強効果が得られる加工食塩粒子の添加量について検討した。
実施例1の減塩液体調味料ベース100mlに実施例1の加工食塩粒子を表5に示した量添加して減塩液体調味料を調製した。なお、比較のため加工食塩粒子中の食塩含有量を表中に示した。対照として、表5に示した配合で、減塩調味料ベース100mlに加工食塩粒子に含まれるのと同じ量の食塩を溶解し、前記食塩無添加粒子を加工食塩粒子と同量添加して対照の減塩液体調味料を調製し、比較例3および実施例12、13の減塩液体調味料をそれぞれ対照の減塩液体調味料に比べて「強い」「差なし」「弱い」の3段階で評価した。評価した人数で塩味の強さを判断した。
Figure 2013215116
表5に示したように、減塩液体調味料ベースに食塩濃度が0.5w/v%になるように加工食塩粒子を添加した比較例3では、比較例3と同じ食塩濃度になるように調製した対照1に対して塩味の増強効果が得られなかったが、食塩濃度が1.0w/v%になるように加工食塩粒子を添加した実施例12は、実施例12と同じ食塩濃度になるように調製した対照2に対して塩味を強いと評価した人数は5人中4人であり、塩味の増強効果が得られることがわかる。これらのことから、減塩液体調味料ベースに食塩濃度が1.0w/v%以上になるように加工食塩粒子を添加することで、塩味の増強効果が得られることがわかる。
[実験例4]
(加工食塩粒子中の食塩濃度の検討)
前記実施例1の加工食塩粒子の調製において、チョコレート用油脂を5gとし、食塩の配合量を表6に示した配合にする以外は同様にして、加工食塩粒子を調製し、前記実施例1の本発明の減塩液体調味料の調製と同様にして、減塩液体調味料を調製した。前記官能試験と同様に、試料をポリスチレン製のスプーンに約0.2mlのせて、口の中へ入れ、塩味を確認し、前記比較例1の減塩液体調味料と比較して、「強い」「差なし」「弱い」の3段階で塩味の強さを評価した。評価した人数で塩味の強さを判断した。結果を表6に示す。
Figure 2013215116
加工食塩粒子中の食塩の割合が18w/w%以上であれば、塩味の増強作用があるが、60w/w%以上で、より塩味の増強効果がみられることがわかる。
[実験例5]
(加工食塩粒子の塩味増強効果の検討)
前記実施例1で調製した減塩液体調味料ベース(食塩濃度0.4w/v%)100mlに同じく前記実施例1で調製した加工食塩粒子5.1g(食塩3.6g含有)を添加して実施例18の減塩液体調味料を調製した。実施例18の減塩液体調味料は、食塩濃度4.0w/v%を含有している。同様にして、前記実施例1で調製した減塩液体調味料ベース(食塩濃度0.4w/v%)100mlに表7に示した量の食塩を添加して食塩を溶解し、前記実施例1で調製した食塩無添加粒子5.1g(食塩濃度0w/v%)を添加して、比較例5〜9の減塩液体調味料を調製した。比較例5の減塩液体調味料は、実施例18と同じく、食塩濃度4.0w/v%を含有している。
(加工食塩粒子中の食塩濃度の検討)
減塩液体調味料ベースの食塩濃度を変化させた比較例5〜9の減塩液体調味料について、食塩濃度4.0w/v%である実施例18の減塩液体調味料に対する塩味の強さを評価した。評価の方法は、前記官能試験と同様に、試料をポリスチレン製のスプーンに約0.2mlのせて、口の中へ入れ、塩味を確認し、前記実施例18の減塩液体調味料と比較して、「強い」「差なし」「弱い」の3段階で塩味の強さを評価した。評価した人数で塩味の強さを判断した。結果を表7に示す。
Figure 2013215116
表7に示す結果から、食塩濃度4.0w/v%の比較例5および食塩濃度5.0w/v%の比較例6は、食塩濃度4.0w/v%の実施例18よりも塩味が弱く感じられることがわかる。また、実施例18よりもさらに食塩濃度が高い、食塩濃度7.0w/v%の比較例8および食塩濃度8.0w/v%の比較例9は、食塩濃度4.0w/v%の実施例18と同程度の塩味を有することがわかる。これらのことから本発明の減塩液体調味料は、食塩濃度を3〜4w/v%高くしたのと同程度の塩味増強効果が得られることがわかる。

Claims (5)

  1. 水不溶性物質で被覆した食塩を含有する減塩液体調味料。
  2. 水不溶性物質で被覆した食塩を減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0〜10.0w/v%添加した請求項1に記載の減塩液体調味料。
  3. 減塩液体調味料が減塩醤油である請求項1または2に記載の減塩液体調味料。
  4. 食塩を融点が25〜85℃の水不溶性物質と混合し、凝固させた後に破砕して、水不溶性物質で被覆した食塩を調製し、該水不溶性物質で被覆した食塩を減塩液体調味料に対する食塩相当量として1.0〜10.0w/v%の割合で減塩液体調味料に添加分散させることを特徴とする減塩液体調味料の製造方法。
  5. 減塩液体調味料が減塩醤油である請求項4に記載の減塩液体調味料の製造方法。
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