JP2013211108A - 導電性複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーと、カルボキシ基で修飾されたカーボンナノチューブとを含有する導電性フィルムなどの導電性複合体。カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーは、カルボキシ基量が0.1〜3.5mmol/gであることが好ましい。
【選択図】なし
Description
そのため、フィルム基材、導電性物質ともに、他の材料での代替が急務になっている。
本発明の導電性複合材は、さらに架橋剤を含有して形成されていることが好ましい。
前記カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーは、カルボキシ基量が0.1〜3.5mmol/gであることが好ましい。
本発明の導電性複合体は、カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーと、カルボキシ基で修飾されたカーボンナノチューブとを含有する。以下、セルロースナノファイバーのことをCSNF、カーボンナノチューブのことをCNTという場合がある。また、カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーを修飾CSNF、カルボキシ基で修飾されたカーボンナノチューブを修飾CNTという場合がある。
本発明の導電性複合体の好適な形態としては、例えば、水を主成分とする水性溶媒に修飾CSNFと修飾CNTとが分散した複合分散液をキャスト用基材上にキャスト、乾燥し、形成されたフィルムを剥離する方法で製造された導電性フィルム;上述の複合分散液を絶縁性基材上にキャストまたは塗布、乾燥する方法で形成された導電層;上述の複合分散液を導電性インクとして用い、絶縁性基材上に印刷する方法で形成された導電性薄膜やパターン化された導電性薄膜などが挙げられる。
なお、修飾CSNFの有するカルボキシ基は、酸型(−COOH)であっても、塩型(−COO−)であってもよい。また、カルボキシ基の誘導体、すなわち、カルボキシ基から誘導されるアルデヒド基、エステル基、COO−NR2(RはH,アルキル基、またはベンジル基、またはフェニル基、またはヒドロキシアルキル基で、2つのRが同一でも異なっていてもよい。)で表されるアミド基などであってもよい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、またはこれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を促進する酸化剤であれば用いることができる。具体的には、入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
また、酸化反応の反応系には、臭化物やヨウ化物を共存させると、酸化反応をより円滑に進行させ、カルボキシ基の導入効率を高めることができる。臭化物としては、コストや安定性から、臭化ナトリウムを用いることが好ましい。
酸化反応の反応系は、アルカリ性に維持されることが好ましく、pH9〜11に維持されることがより好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどの水溶液やアンモニア水溶液などのアルカリ水溶液を、反応系に適宜することで、反応中のpH低下を抑制し、pHをアルカリ性に維持することが好ましい。アルカリ水溶液としては、コストや入手の容易さから、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
なお、本明細書においてpHは、20℃における値である。
なお、導入されるカルボキシ基量は、原料として用いるセルロース類の種類や、添加する共酸化剤の量などに依存する。また、セルロース類の表面を膨潤させて反応を進めることにより、膨潤させずに反応を進める場合に比べて、カルボキシ基の導入量を増加させることもできる。例えば、木材パルプを原料として用いた場合、膨潤させない場合には1.6mmol/g程度であるカルボキシ基量を、その表面を膨潤させて反応を進めることにより2.0mmol/g以上とすることが可能となる。
具体的には、改質セルロース類を分散媒である水に浸漬した後、アルカリを添加して、pHを6〜12にすることが好ましい。このようなpH領域において微細化工程を行うと、カルボキシ基の静電気的な反発から、改質セルロース類をナノオーダーまで解繊して、透明性の高い分散液を得ることができる。これに対して、pHが6未満では、上述のような反発が起こりにくく、得られた分散液は不透明となる。ここで使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどの水溶液やアンモニア水溶液、さらには、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの有機アルカリも使用できる。
また、このようにして微細化を行うと、微細化に伴って次第に分散液が高粘度化し、高いエネルギーを要するようになる。よって、分散液中の改質セルロース類の量は、10質量%以下として、微細化を開始することが好ましい。
修飾CSNFのカルボキシ基量(修飾CSNF1g中に含まれるカルボキシ基のモル量)は、0.1〜3.5mmol/gが好ましい。この範囲の下限値以上であると、修飾CSNFと修飾CNTとを含有する複合分散液の分散性、粘度が適度となり、取扱性の点で好適である。一方、この範囲の上限値以下であると、最終的に得られた導電性複合体の耐水性が良好となるし、修飾CSNFと修飾CNTとを含有する複合分散液中における修飾CNTの分散性を低下させるおそれもない。
このようなカルボキシ基量のうち、修飾CSNFの安定性と製造しやすさの点からは、1.0〜2.0mmol/gが好ましい。また、最終的に得られる導電性複合体の導電性が良好となり、また、複合分散液の粘度がキャスト、印刷などに適した範囲となる点からは、1.5〜3.5mmol/gが好ましい。また、導電性複合体を湿度センサーとして利用する場合には、湿度に対する応答性に優れる点から、2.0〜3.5mmol/gが好ましい。
なお、修飾CSNFのカルボキシ基量は、例えば0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により測定できる。
なお、直径および長さの平均値も、繊維幅および繊維長の場合と同様にして求められる。
また、複合分散液には、溶媒として水以外のものが含まれてもよいが、溶媒の主成分(50質量%以上である成分)は水とすることが好ましい。
複合分散液における修飾CSNFと修飾CNTの濃度としては、導電性複合体を良好に形成できる点、複合分散液の安定性などの点から、これらの合計濃度として、0.01〜5質量%が好ましく、特に0.1〜1質量%の範囲が好ましい。0.01質量%未満では、製膜の効率が低く、5質量%を超えると分散性が低下し、一部凝集が見られる場合がある。
親水性イオン液体としては、特に制限はないが、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルスルファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムクロリド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルスルファート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
これら架橋剤を添加する場合には、修飾CSNF100質量部に対して、架橋剤が0.1〜30質量部の範囲が好ましい。
また、複合分散液は、ラジカル補足剤、脱泡剤、界面活性剤、アルコールなどの溶媒、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、金属粒子、カーボン材料、保湿剤、乾燥剤、吸着剤などを性能を阻害しない範囲で含み、これらの物質が導電性複合体に含まれるようにしてよい。
また、複合分散液には、塩酸などのゲル化剤を添加して、これをゲル化してから、導電性複合体の形成に供してもよい。
導電性フィルムの厚みは、適宜設定でき、例えば0.1〜300μmである。
また、本発明の導電性複合体は、絶縁性基材などに接着剤などで貼り合わされてもよい。
また、その形態は、フィルム状基材であっても、立体的形状の基材であってもよい。
[製造例]
次のようにして、修飾CSNFの分散液(A)を調製した。
(1)改質工程
針葉樹晒クラフトパルプ30gを蒸留水1800gに懸濁した懸濁液を調製した。一方、蒸留水200gに、TEMPOを0.3g、臭化ナトリウムを3g溶解させた溶液を調製し、この溶液を上述の懸濁液に加え、20℃に調温した。
この懸濁液に、1NのHCl水溶液によりpH10に調整された次亜塩素酸ナトリウム水溶液(濃度2mol/L、密度1.15g/mL)を220g滴下し、酸化反応を開始した。
系内の温度は20℃に維持した。また、反応中にはpHが低下するが、その際には、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、pHを10に維持した。
セルロース1gに対して、水酸化ナトリウムの消費量が2.5mmolになったところで、所望量のカルボキシ基が導入されたものと判断し(予め作製した検量線に基く。)、充分量のエタノールを添加して反応を停止させた。その後、pH3になるまで塩酸を添加し、ついで、蒸留水で洗浄を繰り返し、改質セルロースを得た。
なお、改質セルロースを固形分質量として0.1g秤量し、1質量%濃度となるように、水分散させるとともに、塩酸を加えてpHを3とした。ついで、この液に対して、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量を求めたところ、1gの改質セルロース(表面がカルボキシ基で修飾されたセルロース)あたり1.6mmol、すなわち、1.6mmol/gであった。
(2)微細化工程
上記(1)で得られた改質セルロース4gを396gの蒸留水に分散させ、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。ついで、ミキサーにより、この液を60分間微細化処理し、修飾CSNFの分散液(A)(修飾CSNFの濃度1質量%)を得た。
分散液(A)に含まれる修飾CSNFの繊維幅(平均値)は3.5nm、繊維長(平均値)は800nmであった(原子間力顕微鏡(AFM)観察による。測定サンプル数は20)。
上記分散液(A)を蒸留水で希釈して、カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーの分散液(A−1)(濃度0.1質量%)を得た。
この分散液(A−1)10mLに対して、修飾CNTが分散した分散液(B−1)(濃度0.003質量%)を20mL混合し、複合分散液(1)を調製した。
なお、修飾CNTとしては、上述の「Single−walled carbon nanotubes,carboxylic acid functionalized(652490−250MG,1G)」(シグマアルドリッチジャパン社)を用いた。
また、この複合分散液は、30分間の超音波分散後、9000rpmの条件で40分間遠心分離しても、良好な分散性を維持していた。
この複合分散液(1)をテフロン(登録商標)シャーレ上にキャストし、40℃で3日間乾燥した後にシャーレから剥離し、修飾CNTを6質量%含有する厚み6μmの自立フィルム(導電性フィルム)を得た。
得られた自立フィルムについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
(1)電気抵抗値
JIS R3256に基づき、得られた自立フィルムの電気抵抗値を測定した。5回測定し、その平均値RAを求めた。
また、測定された最大値と最小値のうち、平均値RAとの差の絶対値が大きい方の電気抵抗値とRAとの差(絶対値)をRとし、下記式により、電気抵抗値の振れ幅を求めた。
振れ幅(%)=R/RA×100
(2)透明性
分光光度計により、得られた自立フィルムの可視光透過率を測定した(波長λ=600nm)。
(3)湿度センサーとしての使用可能性
(a)得られた自立フィルムを50、60、70、80、90、98%RHの各湿度環境下に置き、上記(1)と同様の方法にて電気抵抗値を測定し、湿度センサーとしての使用可能性を評価した。温度はいずれも30℃とした。
(b)得られた自立フィルムの電気抵抗値を上記(1)と同様の方法にて測定しながら、自立フィルムの置かれた環境の湿度を変化させた。具体的には、60%RHと90RH%とを繰り返した。温度はいずれも30℃とした。
修飾CNTのみが分散した分散液(B−1)(濃度0.003質量%)をテフロン(登録商標)シャーレ上にキャストし、40℃で3日間乾燥したが、フィルム化できなかった。
実施例1で調製した修飾CSNFの分散液(A−1)(濃度0.1質量%)をテフロン(登録商標)シャーレ上にキャストし、40℃で3日間乾燥し、修飾CSNFからなる厚み6μmの自立フィルム(2)を得た。そして、実施例1と同様の評価(1)(2)を実施した。
修飾CNTが分散した分散液(B−1)(濃度0.003質量%)の代わりに、未修飾のCNTが分散した分散液(濃度0.003質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚み6μmの自立フィルム(3)を得た。そして、実施例1と同様の評価(1)を実施した。
なお、この複合分散液中のCNTは、30分間の超音波分散後、9000rpmの条件で40分間遠心分離すると、良好な分散性を維持できず凝集した。
(1)電気抵抗値、(2)透明性
修飾CNTを用いた実施例1の自立フィルムは、電気抵抗値の振れ幅が非常に小さかった。このことから、実施例1の自立フィルム中では修飾CNTが均一に分散し、そのために安定した電気抵抗値を示すことがわかった。また、実施例1の自立フィルムは、フィルム全体にわたって透明性が優れ、可視光透過率が高かった。これに対して、未修飾のCNTを用いた比較例3の自立フィルム中では未修飾のCNTの分散にムラがあり、そのために、透明な部分と不透明な部分とがあり、外観が不良であるとともに、電気の流れる部分と流れない部分が生じ、電気抵抗値の振れ幅も大きかった。
(3)湿度センサーとしての使用可能性
実施例1のみ行った。評価(a)にて、湿度環境を50、60、70、80、90、98%RHとすると、電気抵抗値も1.5、1.7、1.8、2.1、3.1、4.2kΩと変化し、湿度を大きくすると抵抗値も大きくなった。また、2日かけてこの測定を2回繰り返し、再現性が確認された。
評価(b)にて、60%RHと90RH%とを繰り返し、電気抵抗値を測定した場合、いずれの場合でも、電気測定値が10分以内に安定し、良好な応答性が認められた。
これらの結果から、実施例1の自立フィルムは、湿度センサーとして利用できることが示された。
上記分散液(A)を蒸留水で希釈して、カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーの分散液(A−2)(濃度0.2質量%)を得た。
この分散液(A−2)20mLに対して、カルボキシ基で修飾されたCNTが分散した分散液(B−1)(濃度0.003質量%)を10mL混合して混合液を得た。
この混合液2mLに対して、0.2mM−HCl水溶液を1mL添加し、室温で1時間放置することにより、CNT/セルロースナノファイバーハイドロゲル(水分99質量%)を得た。
このゲルを複合分散液(1)の代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして、自立フィルムを得た。
実施例1で調製された複合分散液(1)を厚み100μmのPETフィルム上に塗工し、40℃で3日間乾燥し、膜厚0.5μmの導電層が形成されたPETフィルム積層体を得た。
このPETフィルム積層体について、実施例1と同様にして可視光透過率を測定したところ、70%であり、透明性に優れていた。
また、導電層表面の平均表面粗さ(JIS B0651)は2.66nmであり、平滑性にも優れていた。これは、導電層中において、修飾CSNFおよび修飾CNTが高分散していることを裏付けるものと理解できる。
実施例1と同様にして、各例の自立フィルム(厚み6μm)を得た。ただし、各例では、得られた自立フィルム中における、修飾CSNF100質量部に対する修飾CNTの質量比率が表2に示す値となるようにした。
実施例4〜6で得られた自立フィルムの導電率をJIS H0505により測定した。また、実施例5の自立フィルムの表面抵抗値をJIS C2139により測定した。また、実施例4〜7の自立フィルムの弾性率および引張強度をJIS K6400により測定した。これらの結果を表2に示す。
(導電率)
実施例4〜6の各自立フィルムは、表2に示す導電率を示した。
これに対して、マトリックス成分として、カルボキシル基を導入していないセルロースナノファイバー(バクテリアセルロース)を用いたフィルムの導電率は0.1S/cm(Biomacromolecules 2006,7,1280-1284参照。参考例1とする。)、マトリックス成分として、ポリエチレンを用いたフィルムの導電率は0.8S/cm(CARBON47(2009)1983-1988参照。参考例2とする。)、マトリックス成分として、再生セルロースを用いたフィルムの導電率は0.03S/cm(Journal of AppliedPolymer Science,Vol. 117, 3588-3594(2010)参照。参考例3とする。)である。なお、これら参考例1〜3のフィルムにおけるマトリックス成分と修飾CNTとの比率は、実施例5における修飾CSNFと修飾CNTとの比率と同程度である。
このように実施例5と同程度に修飾CNTを含有する参考例1〜3のフィルムの導電率は、いずれも実施例5の導電率を大幅に下回った。
この結果から、マトリックス成分として修飾CSNFを使用することが、導電率の向上に大きく寄与していることが理解できる。
実施例5の自立フィルムの表面抵抗値は、表2に示すように300Ω/□であった。
これに対して、マトリックス成分として、PEDOT/PSS(ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))を用いたフィルム(参考例4とする。)の表面抵抗値は1200Ω/□、マトリックス成分として、ポリエチレンを用いたフィルム(参考例5とする。)の表面抵抗値は8.1MΩ/□、マトリックス成分として、ポリアミドを用いたフィルム(参考例6とする。)の表面抵抗値は0.5MΩ/□(いずれもAdv. Mater. 2010, 22, 1672-1688参照。)である。なお、これら参考例4〜6のフィルムにおけるマトリックス成分と修飾CNTとの比率は、実施例5における修飾CSNFと修飾CNTとの比率と同程度である。
このように実施例5と同程度に修飾CNTを含有する参考例4〜6のフィルムの表面抵抗値は、いずれも実施例5の表面抵抗値を大幅に上回った。
この結果から、マトリックス成分として修飾CSNFを使用することが、表面抵抗値の低下に大きく寄与していることが理解できる。
実施例4〜7の自立フィルムは、表2に示す弾性率、引張強度を示した。
これに対して、マトリックス成分として、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用いたフィルム(参考例7とする。)の弾性率は3〜6GPa、引張強度は70〜110MPa(ただし、参考例7のフィルムにおけるマトリックス成分100質量部に対する修飾CNTの比率は0.5〜7質量部の範囲。文献Chemical Physics Letters 330 (2000) 219-225参照。)であり、マトリックス成分として、再生セルロースを用いたフィルム(参考例8とする。)の弾性率は1〜5GPa、引張強度は40〜80MPa(ただし、参考例8のフィルムにおけるマトリックス成分100質量部に対する修飾CNTの比率は0または0.2〜7質量部の範囲。Journal of AppliedPolymer Science,Vol. 117, 3588-3594(2010)参照。)である。なお、修飾CNT単体の弾性率は、8.0GPaである(Chem. Mater. 2003, 15, 175-178参照。)。
このように実施例4〜7と参考例7および8との比較から、マトリックス成分として修飾CSNFを使用することが、高い弾性率、高い引張強度に寄与しているものと理解できる。
上記分散液(A)(修飾CSNF:1質量%)に、オキサゾリン(WS−500)を添加した。この際、オキサゾリンの添加量(固形分)は、修飾CSNF100質量部に対し3質量部とした。添加後の分散液に対して、修飾CSNFと修飾CNTの比率が実施例1と同じになるように修飾CNTの分散液を加え、以降、実施例1と同様にして自立フィルムを作製した。
そして、この自立フィルムを120℃で15分間加熱した後、水または0.1NNaOH水溶液それぞれの中に1日間浸漬し、浸漬後の自立フィルムを観察し、耐水性を評価した。
修飾CSNFの代わりに、カルボキシメチルセルロース(DS(エーテル化度)=1.2)を用いた以外は、実施例1と同様にして自立フィルムを作製した。
そして、この自立フィルムを120℃で15分間加熱した後、水または0.1NNaOH水溶液それぞれの中に1日間浸漬し、浸漬後の自立フィルムを観察し、耐水性を評価した。
(耐水性)
実施例8の自立フィルムは、水、0.1NNaOH水溶液それぞれの中に1日間浸漬しても、外観上変化は認められなかった。これに対して、実施例1の自立フィルムについても、同様に水、0.1NNaOH水溶液への浸漬を実施したところ、水に浸漬後の自立フィルムには変化が認められなかったものの、0.1NNaOH水溶液に浸漬後の自立フィルムには膨潤が認められた。この結果から、実施例8ではオキサゾリン(架橋剤)を添加しているため、自立フィルムの耐水性が向上し、0.1NNaOH水溶液への浸漬後にも何ら変化が認められなかったものと理解できる。
また、比較例4のように、表面がカルボキシ基で修飾されているのではなく、化合物自体が(−COO−)を有するカルボキシメチルセルロースを用いた場合には、水に浸漬後の自立フィルムには膨潤が認められ、また、0.1NNaOH水溶液に浸漬後の自立フィルムには溶解が認められ、耐水性が劣っていることがわかった。
Claims (3)
- カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーと、カルボキシ基で修飾されたカーボンナノチューブとを含有することを特徴とする導電性複合体。
- さらに架橋剤を含有して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性複合体。
- 前記カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーは、カルボキシ基量が0.1〜3.5mmol/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性複合体。
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