JP2013209543A - 熱伝導フッ素樹脂フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導性付与のために充填剤を充填しなくても、少なくとも一方向に高い熱伝導率を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂のみからなる熱伝導体を提供すること。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂のみからなり、ASTM D257に準拠して、レーザーフラッシュ法によって測定した、少なくとも一方向の熱伝導率が0.5W/m・K以上である熱伝導成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導成形体、それより得られる熱伝導切削フィルムまたはシート、それらの用途、使用方法および製造方法に関する。
フッ素樹脂フィルムは、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性などの利点があるため、低誘電回路基板としてよく利用される。特に、LED(発光ダイオード)や集積回路(ICやLSI)などの半導体素子を備える電子装置でよく利用されている。しかしながら、フッ素樹脂は熱伝導特性が低いため、半導体素子により生じた熱を蓄熱し、その結果、その熱ストレスによって電気特性の変化が生じて、電子装置の誤作動や故障などの不具合が発生することがあった。
その対策として、上記のように生じた熱を装置外へ放熱させることが考えられる。フッ素樹脂に熱伝導性を付与する場合には、フッ素樹脂にアルミナ粉、チッ化アルミ粉などの高熱伝導性の充填材を添加するなどして、基材の熱伝導特性を向上させる方法などが知られている。
例えば、特許文献1には、実質的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子と、成形助剤とからなるシート状成形体を複数準備する工程と、複数の前記シート状成形体を重ね合わせて圧延する工程と、前記成形助剤を除去する工程とを含む絶縁性熱伝導シートの製造方法が開示されている。
特許文献2には、鱗片状黒鉛とバインダー樹脂を含む混合物をシ−ト状に押出成形し、得られたシートを積層一体化したのち、積層方向に切断してシート化する、熱伝導性シートの製造方法が開示されている。
しかし、これら製造方法で得られる成形体は、高熱伝導性の充填剤が樹脂に配合されているので熱伝導特性には優れるものの、該充填剤により絶縁性が低下することで、電子部品への使用時に悪影響を来す恐れがある。しかも、高い熱伝導性を達成するためには充填材を多量に配合する必要があるため、成形性、低誘電性、耐電圧性などのフッ素樹脂フィルムとしてより重要となる特性をも悪化させてしまう傾向にあった。
フッ素樹脂以外の樹脂を用いる態様としては、例えば、液晶高分子化合物の分子を特定の方向へ配向させて、熱伝導性を発現させる方法が知られている。
例えば、特許文献3には、液晶性高分子を主成分とする液晶性組成物から得られる熱伝導性高分子成形体であって、加熱溶融状態の前記液晶性組成物に磁場又は電場を印加することによって、熱伝導率(λ1)を前記液晶性高分子から得られる成形体の熱伝導率(λ2)よりも高くなるように形成した熱伝導性高分子成形体が開示されている。
しかし、フッ素樹脂は液晶性高分子ではないため、フッ素樹脂に特許文献3に開示された方法を適用しても、その熱伝導性を向上させることはできない。また、仮に適用できたとしても、特許文献3に開示された方法は、磁場または電場で液晶性高分子を配向させる必要があることから、設備上の制限があったりコストが高くなったりするという問題が生じる。
その一方で、フッ素樹脂の配向方向を任意方向に揃えた成形体やその製造方法が知られている。
例えば、特許文献4には、一軸延伸多孔質PTFEで形成されるリング状のシール材であって、空孔率が10〜90%である該一軸延伸多孔質PTFEのフィブリルの配向方向が該シール材の厚さ方向であることを特徴とするリング状シール材が開示されている。
特許文献5には、PTFEを含む膜であって、少なくとも一方向におけるマトリックスの引張強さが少なとも25,000psiであり、2つの直交方向におけるマトリックスの引張強さ比が約0.25〜4であり、配向指数が約50°以下であり、そして密度が約2.0g/cc以下である膜が開示されている。
そして、特許文献4および特許文献5は、PTFEのみからなる成形体も開示している。しかし、該成形体の熱伝導性については何ら教示されていないし、空隙が存在している(密度が低い)こと、該成形体は熱伝導性充填材を含有していないことからその熱伝導性は熱伝導性部材の用途に供するには不十分であると推定される。
このように、高い熱伝導特性を有するフッ素樹脂のみからなる成形体は知られていない。
特開2010−137562号公報 特開2009−66817号公報 特開2004−43629号公報 特開平10−281291号公報 特表2006−524283号公報
本発明の目的は、大きく分類して、次の通りである。
(1)熱伝導性充填剤が充填されていなくても高い熱伝導性を有し、少なくとも一方向に高い熱伝導率を有するポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」ともいう)系樹脂のみからなる熱伝導成形体を提供すること。
(2)熱伝導性充填剤が充填されていなくても高い熱伝導率を有し、少なくとも一方向に高い熱伝導率を有する、PTFE系樹脂のみからなる熱伝導切削フィルムまたはシートを提供すること。
(3)上記熱伝導成形体、および熱伝導切削フィルムまたはシートの好適な用途を提供すること。
(4)上記熱伝導成形体、および熱伝導切削フィルムまたはシートの好適な使用方法および製造方法を提供すること。
そこで、本出願人は、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂のみからなる成形体であり、特定の方法によって測定した熱伝導率が、少なくとも一方向において、0.5W/m・K以上である熱伝導成形体が上記課題(1)を解決できることを見出した。
具体的には、次の通りである。
本発明の熱伝導成形体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂のみからなるフィルムまたはシートの成形体であり、ASTM D257に準拠してレーザーフラッシュ法によって測定した熱伝導率が、少なくとも一方向において、0.5W/m・K以上であることを特徴とする。
所望の方向に高い熱伝導率を有する熱伝導成形体を提供するという観点からは、本発明の熱伝導成形体は以下の態様であることが好ましい。
本発明の熱伝導成形体は、密度が2.1g/cm3以上であることが好ましい。
本発明の熱伝導成形体は、少なくとも二軸方向に延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシートの積層体であることが好ましい。
本発明の熱伝導成形体は、少なくとも二軸方向に延伸され、空隙率が50〜98%であるPTFE延伸樹脂フィルムまたはシートを、PTFE系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスすることで得られるものであることが好ましい。
さらに、本出願人は、上記熱伝導成形体より得られる特定の熱伝導性切削フィルムまたはシートにより、上記課題(2)を解決できることを見出した。
すなわち、本発明のPTFE系樹脂のみからなる熱伝導切削フィルムまたはシート(以下、単に「熱伝導切削フィルムまたはシート」ともいう)は、少なくとも二軸方向に延伸され、空隙率が50〜98%であるPTFE系樹脂フィルムまたはシートを、該PTFE系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスして、前記延伸フィルムまたはシートの延伸方向が円柱の高さ方向と垂直となるように円柱に成形し、次いで、該円柱の側面を切削して得られることを特徴とする。
さらに、本出願人は、上記熱伝導成形体や、熱伝導切削フィルムまたはシートが熱伝導部材用に好適であることを見出し、上記課題(3)を解決できることを見出した。
さらに、本出願人は、下記により上記課題(4)も解決できることを見出した。
すなわち、本発明の熱伝導成形体の使用方法は、前記PTFE系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が発熱体と冷却体とを結ぶ方向になるように、前記熱伝導成形体を発熱体および冷却体に接合することを特徴とする。
本発明の熱伝導切削フィルムまたはシートの使用方法は、前記PTFE系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が発熱体と冷却体とを結ぶ方向になるように、前記熱伝導切削フィルムまたはシートを発熱体および冷却体に接合することを特徴とする。
本発明のPTFE系樹脂のみからなる熱伝導成形体の製造方法は、少なくとも二軸方向に延伸され、空隙率が50〜98%であるPTFE系樹脂のフィルムまたはシートを、該延伸フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスすることを特徴とする。
本発明のPTFE系樹脂のみからなる熱伝導切削フィルムまたはシートの製造方法は、少なくとも二軸延伸され、空隙率が50〜98%であるPTFE系樹脂のフィルムまたはシートを、該延伸フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、得られた積層体を、プレス温度350〜430℃、プレス圧5〜50MPa、プレス時間10分〜5時間の条件で熱プレスして、前記延伸フィルムまたはシートの延伸方向が円柱の高さ方向と垂直となるように円柱に成形し、次いで、該円柱の側面を切削することを特徴とする。
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、熱伝導性充填剤が充填されていないPTFE系樹脂のみからなるものであるにもかかわらず、少なくとも一方向に高い熱伝導性を示す。しかも、本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、熱伝導性充填剤をはじめとする各種充填剤などが配合されていないので、それら充填剤によりPTFE樹脂の本来の特性を損なうこともない。よって、本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、熱伝導率が高いのみならず、誘電特性、絶縁特性、耐電圧特性、成形性、薄膜性、フレキシブル性のいずれにも優れる。
また、本発明の熱伝導成形体が、少なくとも二軸方向に延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシートが成形一体化された成形体では、高い熱伝導率を発現する方向が、上記フィルムまたはシートの延伸方向と同じ方向である。よって、少なくとも二軸方向に延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシートの少なくとも一方向の延伸方向が、例えば、面内方向や厚み方向になるように配置され、熱伝導率が面内方向や厚み方向に高い熱伝導切削フィルムまたはシートを提供することもできる。密度が特定値以上である熱伝導成形体は、より熱伝導率が高い。また、上記特定の工程を経て得られる熱伝導積層体は、優れた熱伝導性をはじめとする上記特性のいずれのみバランスよく優れる。
上記特定の工程を経て得られる熱伝導切削フィルムまたはシートは、優れた熱伝導性をはじめとする上記特性をいずれも併せ持ち、少なくとも一方向(例えば、平面方向や厚み方向)に高い熱伝導率を発現する。
上記熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、優れた熱伝導特性をはじめとする上記特性を有するので、熱伝導部材に好適に用いることができ、上記特性に優れる熱伝導部材を提供することができる。
本発明の熱伝導成形体の使用方法、熱伝導切削フィルムまたはシートの使用方法では、本発明の熱伝導成形体、および熱伝導切削フィルムまたはシートを介して発熱体から冷却体へ熱が流れるように制御することができる。したがって、上記方法は、例えば、発熱体の熱を効率よく放熱させることができる。
本発明の熱伝導成形体の製造方法、熱伝導切削フィルムまたはシートの製造方法によれば、上記熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートを非常に効率よく製造することができる。
すなわち、上記製造方法によれば、磁場や電場の印加などを適用するための大掛かりな装置などを必要とせず、簡易な方法で上記熱伝導率などの特性に優れる熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートを製造できる。さらに、上記製造方法によれば、最終的にPTFE系樹脂のみからなる熱伝導成形体および熱伝導切出しフィルムまたはシートの製造過程において各種充填剤などの成分を必ずしも必要とせず、PTFE系樹脂のみを原料として上記熱伝導成形体、熱伝導切出しフィルムまたはシートを製造することも可能であり、コストパフォーマンスが非常に高い。
また、特に、熱伝導切削フィルムまたはシートの製造方法によれば、厚さ方向に熱伝導率が高い熱伝導切削フィルムまたはシートを、簡易な方法で連続的に効率よく製造することができる。
少なくとも二軸延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシートをMD方向とTD方向の延伸方向が一致するように積層、成形して得られる熱伝導成形体を用いて、熱伝導が厚さ方向の熱伝導切削フィルムまたはシートを連続的に製造する一例を示す図である。 四軸延伸に延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシートを各延伸方向が一致するように積層、成形して得られる熱伝導成形体を用いて、厚さ方向に熱伝導率が高い熱伝導切削フィルムまたはシートを連続的に製造する一例を示す図である。 二軸延伸されたPTFE系樹脂シートのSEM観察(装置:S−3400N((株)日立ハイテクノロジーズ社製)、倍率:1000倍)の写真を示す図である。
以下、本発明の最良の形態について、詳細に説明する。
なお、後述の各種特性値は、特に断りがない場合は、常圧(約1.013MPa)、常温(約25℃)で測定した時の値である。
1.熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートおよびそれらの製造方法
本発明の熱伝導成形体は、テトラフルオロポリエチレン(PTFE)系樹脂のみからなるものである。
本明細書において、PTFE系樹脂とは、PTFE樹脂およびPTFE樹脂に変性PTFE樹脂を適当量混合したものをいう。変性PTFE樹脂とは、PTFEと、PTFEとの共重合が可能な共単量体との共重合体の樹脂を意味する。PTFEとの共重合が可能な共単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン等があげられ、PTFEに対して1重量%以下を用いることが好ましい。
本発明の熱伝導成形体は、PTFE系樹脂のみからなり充填剤などを含まないので、充填剤などによりPTFE樹脂の本来の特性を損なわれることがない。よって、例えば、従来の熱伝導フッ素樹脂成形体のように、熱伝導性充填剤をフッ素樹脂成形体に充填したがために、フッ素樹脂成形体の誘電特性、絶縁特性、高耐電圧特性、成形性、薄膜性、フレキシブル性などがPTFE樹脂に比して低下してしまうなどの弊害を招くこともない。また、本発明の熱伝導成形体は、後に詳述するように、少なくとも一方向の熱伝導率に優れるものである。
本発明の熱伝導切削フィルムまたはシートは、上記熱伝導成形体を切削して得られるものである。
以下、本発明の熱伝導成形体および熱伝導切削フィルムまたはシートについて、それら製造方法と併せて説明する。
[少なくとも二軸方向に延伸されたPTFE樹脂延伸フィルムまたはシート(PTFE系樹脂多軸軸延伸フィルムまたはシート)]
本発明の熱伝導成形体に用いるPTFE樹脂延伸フィルムまたはシートは、例えば、従来法に従って製造したものであってもよいし、市販のものでもよい。
PTFE樹脂としては、未焼成または半焼成のPTFEのファインパウダーを好適に用いることができる。
熱伝導成形体に少なくとも二軸方向に延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシート(以下、「PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシート」ともいう)を用いる場合は、PTFE系樹脂を、例えば、ペースト押出して得られるPTFE系樹脂フィルムまたはシートを少なくとも二軸方向に延伸処理したものなどを用いることができる。
PTFE系樹脂のPTFE樹脂フィルムまたはシートへの成形は、例えば、上記PTFE系樹脂に、必要に応じてソルベントナフサ、ホワイトオイル、流動パラフィンなどの潤滑助剤を混合した後、ペースト押出により行なうことができる。また好適には、得られたペーストを圧延する工程、乾燥などにより潤滑助剤を除去する工程を含む。
上記延伸は、通常、延伸温度200〜420℃、好ましくは320〜380℃、延伸速度10〜600%/秒、好ましくは50〜400%/秒の条件で行う。
延伸倍率は、二軸延伸の場合、MD方向が通常1.5〜20倍、好ましくは2〜10倍であり、TD方向が通常2〜80倍、好ましくは3〜50倍である。なお最終的な延伸倍率(MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率の積)は、例えば10倍以上、好ましくは20〜600倍、より好ましくは30〜300倍程度にする。三軸以上の方向への延伸の場合、各軸方向への延伸倍率は目的に応じて選択すればよいが、最終的な延伸倍率(延伸前後の面積比より算出される)を10倍以上、好ましくは20〜600倍、より好ましくは30〜300倍程度とすることが好ましい。
PTFE系樹脂フィルムまたはシートの少なくとも二軸方向への延伸を上記条件で行なうことで、通常、空隙率が50〜98%、好ましくは、好ましくは、空隙率が前記の範囲であり、かつ、アルキメデス法にて測定した密度が0.05〜1.1g/cm3であるPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートが得られる。
上記のようなPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートとして市販品を用いる場合は、例えば、日本バルカー工業株式会社製の「sa−PTFEシリーズ」、住友電気工業株式会社製の「ポアフロン(登録商標)メンブレンシリーズ」、W. L. Gore and Associates, Inc.製の「expanded PTFEシリーズ」などを利用することができる。
上記PTFE系樹脂フィルムまたはシートは、延伸工程によって、図3に示すように、PTFE系樹脂フィルムまたはシートの一部に繊維状の構造が生じる。本明細書では、該繊維状の構造を「フィブリル」といい、PTFE系樹脂フィルムまたはシートにフィブリルが生じる現象をフィブリル化という。このフィブリル化により、該フィブリル中で分子鎖または/および結晶の配向が特定の方向に揃い、結果として、熱伝導成形体の特定方向の熱伝導特性の発現と熱伝導特性が向上するものと推察される。このような特異的な熱伝導特性は、結晶化度が高いほど、また分子鎖または/および結晶の配向度が高いほど顕著に発現すると推察される。上記延伸条件にて延伸を行ったPTFE樹脂フィルムまたはシートは、分子鎖または/および結晶の配向度がより高く、かつフィルム強度またはシート強度も維持されている。
フィブリルが生じたPTFE系樹脂フィルムまたはシートを加熱処理などする場合は、フィブリルが生じたことにより形成された結晶構造が大きく変化しないように熱履歴を調整することが、高い熱伝導率を維持できる観点から好ましい。
上記のような延伸条件でPTFE系樹脂の多軸延伸を行うと、ここで得られるPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを後述のように積層して成形一体化して熱伝導性PTFE樹脂フィルムまたはシート成形体を製造する際に、該成形体の熱伝導率、密度、空隙率を後述の範囲に制御することが容易となる。
PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの厚さは、膜強度、延伸処理工程の容易さなどの観点より通常0.001〜0.5mm、好ましくは0.01〜0.2mmである。
上述のようにして、本発明の熱伝導成形体に用いるに好適なPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを製造できる。
なお、最終的にPTFE系樹脂のみからなる熱伝導成形体が得られればよいので、最終的に除去できる添加剤であれば、上記PTFE系樹脂の製造時や、PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの製造時に添加してもよい。上記添加剤は、熱伝導成形体製造の最終段階で一度にすべてを除去してもよいし、熱伝導成形体の製造段階中で何段階かに分けて一部を複数回除去し、最終的にすべて除去するなどしてもよい。
[熱伝導成形体]
上記のようにして得られたPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートは、多軸延伸によりフィブリルが形成されているが、上記PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの熱伝導率は0.01〜0.1W/m・K程度であり、例えば電子装置内の熱を該装置外に放熱するなどに用いるには不十分な値である。これは、多軸延伸によりPTFE系樹脂が一部フィブリル化したことにより、得られるPTFE樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの空隙率が大きくなること(例えば50〜98%)、密度が低くなること(例えば0.05〜1.1g/cm3)などに起因していると推定される。
そこで、本発明では、上記PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを所定枚数積層し、例えば、成形一体化する際のプレス条件などを調整して密度や空隙率を後述の範囲に制御することにより、ある特定の方向に優れた熱伝導性を有する熱伝導成形体を製造する。
以下、加圧成形により上記成形一体化を行う態様を具体例として、詳述する。
このような態様では、本発明の熱伝導成形体は、上記PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを所定枚数積層し、加圧成形(好ましくは熱プレス)により成形一体化して得られる。
上記のように、加圧成形を行うと、成形体中の空隙を少なくして密度を向上させることができ、成形体の熱伝導性を向上させることができる。すなわち、得られる成形体の熱伝導性をさらに向上させるためには、成形体の空隙率を小さくして密度を大きくして後述の範囲とすることが望ましい。また、加圧成形は、PTFEの焼成温度範囲内の温度(例えば350〜430℃で行うことが望ましい。このような温度で加圧成形することにより、効率よく空隙率を小さくし、密度を大きくすることができる。
以下、上記PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはフィルムまたはシートを積層し、次いで加圧成形を行う態様について、図1および図2を参照しながらさらに詳述する。
まず、上記PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを所定数枚用意して積層する。この際、PTFE系樹脂延伸フィルムは、必要に応じて、所定の大きさへ切り出してもよい。
積層するPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの枚数は、目的とする熱伝導成形体の厚さや物性、熱伝導成形体から得られる切削フィルムまたはシートの形状や物性などによるが、通常、50枚以上、好ましくは100〜10000枚程度である(ここでの合計厚さは通常、10mm以上、好ましくは50〜1000mm程度)。また熱伝導成形体から得られる切削フィルムまたはシートの大面積化、フィルムまたはシート強度を上げる観点からは、合計厚さは100〜1000mm程度が望ましい。
PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを積層する際の各PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの多軸延伸方向の重ね方は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されない。
ここで、各PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを下記のように積層することで、該延伸方向に熱伝導率の高い熱伝導成形体を製造することができる。
例えば、図1に示すように、二軸延伸されたPTFE系樹脂フィルムまたはシート(以下「PTFE系樹脂二軸延伸フィルムまたはシート」ともいう)をMD方向とTD方向の延伸方向がいずれも一致するように積層すると、MD方向およびTD方向に熱伝導率が高い熱伝導成形体を、その他の積層方法で積層する場合に比して、より少ない枚数のPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートで効率よく製造することができる。
また、PTFE系樹脂二軸延伸フィルムまたはシートの延伸方向がある程度の角度ずれるようにして、三方向以上の方向に熱伝導率が高い熱伝導成形体を製造することも可能である。
上記のような積層構成で、積層一体化の際に圧力を受けるフィルムまたはシートを支えるための圧縮金型の上にPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートを積層する。このとき、PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートが連続フィルムまたはシートである場合には、積層前に適度な寸法に切断しておいてもよい。積層枚数は、上述の通りである。次いで、350〜430℃、好ましくは350〜400℃で、5〜50MPaの圧力を加えて10分〜5時間処理することで、PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの成形一体化(ここでは圧着)を行うことができる。圧力は、通常、積層されたPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの面内方向に対して垂直にかける。また、通常、温度が高いほど、短時間で上記成形一体化を行う。このような条件でPTFE樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの圧着を行うと、十分に空隙率を小さくできない、あるいは、十分に密度を大きくできないなどの弊害を伴わずにPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートを圧着できる。
高い熱伝導率を達成するという観点からは、熱伝導成形体中では、各延伸方向において、PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの延伸方向のずれが全体で0〜10°程度の範囲に収まるように積層されているPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの集合のPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの枚数が、PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの全枚数を100%とした時に、95〜100%であることが好ましく、100%であることが特に好ましい。
ここで、上記各集合では、PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートの延伸方向は一致しているものとして取り扱う。
本発明の熱伝導成形体の形状は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限されず、例えば、フィルム、シート、多面体(例えば、四面体、五面体、六面体など)、柱体(例えば、三角柱、四角柱(立方体、長方体など)、五角柱、六角柱などの多角柱、円柱など)、リング、円筒などの形状があげられる。
上記形状の熱伝導成形体を得るには、例えば、所望の形状を形成できる形状のフィルムまたはシートを積層したり(例えば、円柱であれば円形のフィルムまたはシートを積層する)、所望の形状の熱伝導成形体を製造できる金型を有する圧着装置などを用いたり、任意形状の熱伝導成形体を、ミクロトーム、かんななどによる切出し、カッター刃などによる切削などにより、該熱伝導成形体を所望の形状に加工したり、所望の形状の金型で打ち抜いたりすることで、上述の形状の熱伝導成形体を製造することができる。
例えば、熱伝導成形体を、円柱として用いる場合は、円柱の軸に対してPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートのフィブリルの長軸方向が垂直方向になるように積層すれば、円柱の軸に対して垂直な方向に熱伝導性に優れた成形体を製造することができる。
また、任意の形状のPTFE樹脂シート成形体をPTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシートのフィブリルの方向が所望の方向に向くように円柱の形状に打ち抜くなどして成形してもよい。
このように、本発明によれば、形状にとらわれず少なくとも一方向に高い熱伝導率を有する熱伝導成形体を提供することができるので、例えば、電子装置などに適用する場合、適用する箇所の形状に左右されずに該成形体の熱伝導率の高い方向を利用することが容易である場合が多い。
これら形状の中でも、以下に詳述する熱伝導切削フィルムまたはシートが、電子機器、特にLED(発光ダイオード)や集積回路(ICやLSI)などの半導体素子を備える電子装置に適用しやすいことや、熱伝導の方向を制御しやすい観点より好ましい。
[熱伝導切削フィルムまたはシート]
本発明の熱伝導成形体から切削フィルムまたはシートを得るには、例えば、該成形体をカッター刃などの切削手段を用いて切削するなどして得られる。
さらに、次の方法により、少なくとも一方向に熱伝導率が高い切削フィルムまたはシートを製造することもできる。
例えば、PTFE系樹脂二軸延伸フィルムまたはシートがその延伸方向が円柱の高さ方向に対して垂直となるように積層された円柱の熱伝導成形体を、カッター刃などの切断手段(切削手段)を用いて、円柱の底面の円の接線方向に刃を円柱の側面に当てて、該成形体を円柱の2つの底面の円の中心を通る線を軸として回転させてスカイビングすることで、厚さ方向に熱伝導率が高い熱伝導切削フィルムまたはシートを連続生産することができる(図1)。
さらに、四軸方向に延伸されたPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートがその延伸方向が円柱の高さ方向に対して垂直となるように積層成形された円柱の熱伝導成形体を、カッター刃などの切断手段(切削手段)を用いて、円柱の底面の円の接線方向に刃を円柱の側面に当てて、該成形体を円柱の2つの底面の円の中心を通る線を軸として回転させてスカイビングすることで、厚さ方向に熱伝導率が高い熱伝導切削フィルムまたはシートを連続生産することができる(図2)。
このようにして得られる熱伝導切削フィルムまたはシートのうち、厚さ方向への熱伝導率が均一である点で、四軸方向に延伸されたPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートを用いて得られる熱伝導切削フィルムまたはシートの方が、二軸方向に延伸されたPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートを用いて得られる熱伝導切削フィルムまたはシートよりも好ましい。
このように、積層の際の層構成と積層方向、所望の形状への成形方法などにより、少なくとも一方向に高い熱伝導率を有する熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートを製造することができる。
上記熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートには、本発明の目的を損なわない限り、例えば、熱伝導性に優れた他の熱伝導性フィルムまたはシートなどを積層するなどしてもよいが、誘電特性、絶縁特性、耐電圧特性に優れる積層成形体を提供する観点より、上記熱伝導積層体や熱伝導切削フィルムまたはシートを単独で用いることが好ましい。
なお、本発明の熱伝導成形体や熱伝導切削フィルムまたはシートは、電場や磁場を印加して製造された液晶性高分子化合物のシートに比べて、絶縁特性、耐電圧特性の点で優位である。
2.[熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートの物性]
<熱伝導率>
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、PTFE系樹脂二軸延伸フィルムまたはシートを用いた場合、ASTM D257に準拠してレーザーフラッシュ法により測定したMD方向の熱伝導率が、通常0.5〜1.5W/m・Kであり、TD方向の熱伝導率が、通常0.5〜1.5W/m・Kである。
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、三軸方向以上に延伸されたPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートを用いた場合、ASTM D257に準拠してレーザーフラッシュ法により測定した各延伸方向の熱伝導率が、通常0.5〜1.2W/m・Kである。
本発明の課題を解決するに当たっては、熱伝導成形体は、少なくとも一方向の熱伝導率が、通常0.5〜1.2W/m・Kであればよい。
熱伝導率がこのような範囲にあると、熱伝導成形体の放熱特性が優れるという観点より好ましい。
上記熱伝導率は、例えば、上述のように、PTFE系樹脂フィルムまたはシートを延伸し、得られたPTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートを積層、熱プレスすることで達成することができる。
以下、PTFE系樹脂二軸延伸フィルムまたはシートのSEM観察(装置:S−3400N((株)日立ハイテクノロジーズ社製)、倍率:1000倍)の写真(図3)を参照しながらさらに詳細に説明する。
図3に示すように、二軸延伸フィルムまたはシートのMD方向およびTD方向に、フィブリルが生じている。そして、二軸延伸フィルムまたはシートはフィブリルの方向、換言すれば、MD方向およびTD方向に高い熱伝導率を発現する。これは、延伸により、PTFE樹脂中にフィブリルが生じ、この際に分子鎖の方向が延伸方向に配向されて結晶配向を生じ、この結晶配向に沿って熱が伝導しやすくなるものと推察される。
三軸以上の方向へ延伸されたPTFE系樹脂延伸フィルムにおいても、各延伸方向にフィブリルが生じ、この際に分子鎖の方向が延伸方向に配向されて結晶配向を生じ、この結晶配向に沿って熱が伝導しやすくなるものと推察される。
そして、このようなフィブリルを有する延伸フィルムまたはシートを上述のように積層、成形一体化し、優れた熱伝導性を発揮するような密度、空隙率を有する成形体としているので、上記のような優れた熱伝導率を有する成形体が得られるものと推察される。
いずれにせよ、PTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートの熱伝導率は、上記延伸条件や積層、熱プレス条件により制御することができる。
<密度、空隙率>
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、アルキメデス法にて測定した密度が、好ましくは2.1〜2.2g/cm3である。密度がとり得る上限値は、通常2.2g/cm3である。密度がこのような範囲にあると、誘電特性、絶縁特性、高耐電圧特性に優れる積層成形体を提供できる観点より好ましい。
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、空隙率が、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%である。ここで、「空隙率(%)=(PTFE系樹脂の真密度−熱伝導切出しシートの密度)÷PTFE系樹脂の真密度」である。空隙率がこのような範囲にあると、熱伝導特性、絶縁特性、高耐電圧特性に優れる積層成形体を提供できる観点より好ましい。
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートの密度や空隙率は、その熱伝導率に影響を与える因子であり、それらが上記範囲外である場合、特に密度が過小である場合や空隙率が過大である場合は、熱伝導率が低下し、上記範囲を満たさなくなる傾向がある。
なお、本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシート、PTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートにおける密度と空隙率の関係は、次のように表せる。
PTFE系樹脂多軸延伸フィルムまたはシート、熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートの密度(成形体密度)
=PTFE系樹脂の密度(材料密度)×(1−空隙率)
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートの密度や空隙率は、上記延伸で生じるフィブリルなどに関連するものであるので、熱伝導率同様、熱伝導成形体、および該熱伝導成形体から得られる熱伝導切削フィルムまたはシートの密度や空隙率は、例えば、上記PTFE系樹脂フィルムまたはシートの延伸条件、PTFE系樹脂一軸延伸フィルムまたはシートを積層した積層体の加圧成形条件などにより上記範囲内に制御することができる。
<体積固有抵抗率>
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、ASTM D257に準拠して測定した体積固有抵抗率より求められる体積抵抗率が、好ましくは1014Ω・cm以上である。体積抵抗率がこのような範囲にあると、絶縁特性、耐電圧特性に優れる積層成形体を提供できる観点より好ましい。体積抵抗率は、現存する測定装置の測定限界(約1018Ω・cm)を超える場合もある。
従来のように、PTFE系樹脂に熱伝導性充填剤を配合することで熱伝導性の高いPTFE系樹脂成形体を得ようとすると、該充填剤の影響による体積固有抵抗率の低下を避けることができなかったが、本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートでは、そのような充填剤を添加していない、内部に存在する空隙が極めて少ないので、PTFE樹脂本来の体積抵抗率を維持でき、高い熱伝導率との両立を実現できる。
3.熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートの用途
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、電子部品などの発熱体とヒートシンクやヒートパイプなどの放熱体との間に介在させることで、両者間での熱伝導を効果的に行うのに適している。また発熱体の温度が周囲温度より高い場合には、冷却体が空気であってもよい。本発明の熱伝導成形体は、熱伝導率が高いとともに、誘電率が低く、耐電圧性に優れるので、本発明の熱伝導成形体を、携帯電話、回路基板、デジタル家電、自動車電装品のような電気を帯びた部分に使用する用途にも別途絶縁体フィルムを介在させるなどの必要がないので、そのような部分に直接使用することができる。
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、薄膜性、フレキシブル性などに優れるばかりでなく、所望の方向に熱伝導を生じる所望の形状であることができるので、発熱部から低温部へ効率的に熱を移動させる放熱シートとして、照明器具、光モジュールにも好適に用いることができる。
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、PTFE系樹脂のみからなる成形体であるので、不純物の混入が懸念される分野、例えば、電気機器分野のみならず、精密機械分野、医療機器・器具・材料分野、食品機器・包装材料分野などにも好適に用いることができる。
また、本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、その高い帯電保持率を利用して、エレクトレット部材の用途に用いることもできる。本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートがエレクトレット部材の用途に好適であることは、PTFE結晶配向、すなわち結晶部と非晶部の分布制御により特徴的な電荷保持性能(高電荷保持率、電荷分布制御等)を示すことにもよると推察される。
4.熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートの使用方法
本発明の熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、PTFE系樹脂延伸フィルムまたはシートのフィブリル構造に由来した、分子鎖または/および結晶の配向がフィブリルの方向(延伸方向)に生じており、この配向方向に特異的に熱が伝導するという特性を有する。したがって、これらを、延伸フィルムの延伸方向が発熱体と冷却体を結ぶ方向になるように、熱伝導成形体、あるいは熱伝導切削フィルムまたはシートを発熱体および冷却体に接合して用いれば、発熱体で生じた熱を所望の方向に放熱することが可能となる。
発熱体の温度が周囲温度より高い場合には、発熱体に接合していない側の端は空気雰囲気中に放置してもよいが、冷却体を接合した方が発熱体の熱の放熱効率が高いので好ましい。空気雰囲気中に熱を放熱する場合には、ファンなどと共に組み込むことで、強制的に空気の移動量を増やし、熱の放熱効率が高くなるため好ましい。
発熱体としては、例えば、半導体素子を備えた電子装置、照明装置が挙げられ、絶縁性の観点より、これらの中でも、半導体素子を備えた電子装置が好ましい。
冷却体としては、例えば、ヒートシンク、各種冷却装置が挙げられる。
冷却体には、例えば、その中を冷却水、エチレングリコールなどの炭化水素系冷媒、二酸化炭素などの冷却媒体が入った容器などが設置されていてもよいし、あるいはそれら冷却媒体がパイプなどを通じて流通していてもよいし、その中に冷却装置などが組み込まれていてもよい。
以下、実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、圧力条件は常圧(約1.013MPa)である。
[実施例1]
<PTFE二軸延伸シートを用いた熱伝導成形体、熱伝導切削シートの製造>
PTFE二軸延伸樹脂フィルム(日本バルカー工業株式会社製sa−PTFETM(密度0.43g/cm3、空隙率80%、厚さ0.020mm、二軸延伸品)を円盤状に打ち抜き、打ち抜き物を2000枚作成し、MD方向とTD方向の延伸方向がそれぞれ揃うように積層し、次いで、360℃、20MPaで1時間熱プレスし、直径30mm、高さ10mmの円柱の熱伝導成形体を得た。
得られた熱伝導成形体の側面をスカイビングして、50μm厚みのPTFE樹脂のみからなる熱伝導切削シートを得た。
<熱伝導切削シートの各種物性の評価>
(1)熱伝導率
熱伝導切削シートの熱伝導率は、ASTM D257に準拠し、レーザーフラッシュ法によって測定した。
(2)体積固有抵抗率
熱伝導切削シートの体積抵抗率は、ASTM D257に準拠し、体積固有抵抗率を測定して求めた。
(3)密度、空隙率
熱伝導切削シートの密度は、周知のアルキメデス法によって求めた。
熱伝導切削シートの空隙率は、下記式(1)に基づいて算出した。
空隙率(%)=
(PTFE樹脂の真密度−熱伝導切削シートの密度)÷PTFE樹脂の真密度…(1)
(式中の「PTFE樹脂の真密度」、「熱伝導切出しシートの密度」の単位はいずれも「g/cm3」である。また、「PTFE樹脂の真密度」は2.17g/cm3である。)
結果を表1に示す。
[比較例1]
PTFE樹脂(ダイキン工業株式会社製 ポリフロンPTFE M12)を、圧力20MPaにて圧縮成形した後、電気炉で380℃、3時間成形して成形体を得た。得られた成形体から切削した、厚さ50μmの非延伸シートを用意し、実施例1と同様の方法で各種物性の測定を行なった。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、熱プレス条件を300℃、5MPaで1時間とした以外は実施例1と同様に成形体を作成した。得られた成形体は面間剥離が生じており、積層体の一体化が十分ではなく、目的の熱伝導成形体および熱伝導フィルムまたはシートを得ることができなかった。
本発明にかかる熱伝導成形体、熱伝導切削フィルムまたはシートは、発熱部材と放熱部材との間に挟むことにより、密着性を向上させるとともに、熱の伝導効率を向上させるためのフィルムまたはシートなどとして好適に利用できる。
1 PTFE系樹脂延伸フィルムまたはシート
2 延伸方向
3 圧縮金型を具備する加圧成形機
4 熱伝導成形体
5 カッター刃
6 熱伝導フィルムまたはシート

Claims (10)

  1. ポリテトラフルオロエチレン系樹脂のみからなる成形体であり、
    ASTM D257に準拠してレーザーフラッシュ法によって測定した熱伝導率が、少なくとも一方向において、0.5W/m・K以上である熱伝導成形体。
  2. 密度が2.1g/cm3以上である、請求項1に記載の熱伝導成形体。
  3. 上記成形体が、少なくとも二軸方向に延伸された、ポリテトラフルオロエチレン樹脂系樹脂のみからなるフィルムまたはシートの積層体である請求項1または2に記載の熱伝導成形体。
  4. 空隙率が50〜98%であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートを、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、
    得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスして得られる請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導成形体。
  5. 少なくとも二軸方向に延伸され、空隙率が50〜98%であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートを、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、
    得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスして、前記延伸フィルムまたはシートの延伸方向が円柱の高さ方向と垂直となるように円柱に成形し、
    次いで、該円柱の側面を切削して得られる、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂のみからなる熱伝導切削フィルムまたはシート。
  6. 熱伝導部材用である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導成形体、あるいは、請求項5に記載の熱伝導切削フィルムまたはシート。
  7. 前記熱伝導成形体を構成する前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が発熱体と冷却体とを結ぶ方向になるように、前記熱伝導積層体を発熱体および冷却体に接合する、請求項2〜4のいずれかに記載の熱伝導成形体の使用方法。
  8. 前記熱伝導切削フィルムまたはシートを構成する前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が発熱体と冷却体とを結ぶ方向になるように、前記熱伝導切削フィルムまたはシートを発熱体および冷却体に接合する、請求項6に記載の熱伝導切削フィルムまたはシートの使用方法。
  9. 少なくとも二軸方向に延伸され、空隙率が50〜98%であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂のフィルムまたはシートを、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、
    得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスする、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂のみからなる熱伝導成形体の製造方法。
  10. 少なくとも二軸方向に延伸され、空隙率が50〜98%であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂のフィルムまたはシートを、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が一致するように積層し、
    得られた積層体を、温度350〜430℃、圧力5〜50MPa、時間10分〜5時間の条件で熱プレスして、前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂フィルムまたはシートの延伸方向が円柱の高さ方向と垂直となるように円柱に成形し、
    次いで、該円柱の側面を切削する、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂のみからなる熱伝導切削フィルムまたはシートの製造方法。
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