JP2013208810A - シリコーン離型ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】積層セラミックコンデンサ製造時に使用する、特に薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】アルケニル基含有シリコーンの水分散体、Si−H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーンの水分散体およびエチニル基を有する架橋反応抑制剤を含む離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層を有するシリコーン離型ポリエステルフィルムにおいて、該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が10000〜30000かつ該架橋反応抑制剤の含有量が該塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して50〜300ppmであり、該塗布層厚みが10〜100nmであって、該塗布層表面1mmあたり400nm以上の高さのシリコーン凝集物が存在せず、100nm以上400nm未満の高さのシリコーン凝集物の個数が200個/mm以下であるシリコーン離型ポリエステルフィルムにより得られる。
【選択図】なし

Description

本発明はシリコーン離型ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは積層セラミックコンデンサ製造時に使用される薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムに関する。
積層セラミックコンデンサの製造には、セラミックグリーンシート成形用キャリアフィルムとして離型フィルムが使用される。特に寸法安定性、耐熱性の点で、離型フィルムの基材としてポリエステルフィルムが使用される。近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化が進むに伴い、セラミックグリーンシートの厚みも益々薄膜化する傾向にある。
セラミックグリーンシートの薄膜化に伴い、乾燥後のシートの厚みが1μm以下という領域になっている。そのため、キャリアフィルムには大きく分けて軽剥離性と表面平滑性の2点が求められている。前者については、薄膜化によりセラミックグリーンシートの剛性が低くなり、従来の離型フィルムの剥離力ではグリーンシートを剥離する時に破れが生じてしまうため、軽剥離性が求められている。また後者については、従来よりピンホールの欠点が生じないようシリコーン離形層表面の異物を低減することが検討されているが(特許文献1)、25μm前後の大きな異物を対象とし、凝集粒子を取り除く方法で達成されるものであった。一方、キャリアフィルム表面の凸形状が薄膜化されたグリーンシートに凹み状の転写あるいはシートを貫通することによって積層セラミックコンデンサの歩留まりを著しく悪化させてしまうため、セラミックグリーンシートの薄膜化によってキャリアフィルムに対してさらに高度な表面平滑性が求められるようになってきている。
また、薄膜セラミックグリーンシートの他のピンホール発生原因として、例えば硬化型シリコーン樹脂層の削れも挙げられている(特許文献2)。
一般にグリーンシートの打ち抜き剥離加工は数m/min〜100m/minの高速度領域で行われることが多く、薄膜セラミックグリーンシートの高速剥離加工に適したシリコーン離型フィルムの軽剥離化手法として、シリコーン架橋密度の向上および離型層厚みの低減が検討されている。しかしながら、かかる方策による軽剥離化を行うとシリコーン塗布液のポットライフの短縮化を招き、シリコーン凝集物に由来する突起物の発生が促進され、従来の大きな異物とは異なる原因による微細な凸形状が発生するため、軽剥離化と表面平滑性の確保とはトレードオフの関係にあることが課題となっている。
特開平11−348186号公報 特開2003−145685号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積層セラミックコンデンサ製造時に使用する、特に薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、シリコーン組成物を用いた離型層の形成にあたり、環境配慮、安全性、塗布液のハンドリング性などの観点からエマルジョン型シリコーンを用い、軽剥離化方策として挙げた離型層厚みを薄くするためには高希釈塗布液を調整する必要があるが、エマルジョン型シリコーンの場合、高希釈状態では、室温でのシリコーン架橋反応を抑制する反応抑制剤の効力が低下し、その結果、シリコーン凝集物が形成されることを見出した。そして、シリコーンエマルジョン中のアルケニル基含有シリコーンの分子量と架橋反応抑制剤の濃度および離型層厚みに着目し、軽剥離化と表面平滑性の両方を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、アルケニル基含有シリコーンの水分散体、Si−H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーンの水分散体およびエチニル基を有する架橋反応抑制剤を含む離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層を有するシリコーン離型ポリエステルフィルムにおいて、該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が10000〜30000かつ該架橋反応抑制剤の含有量が該塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して50〜300ppmであり、該塗布層厚みが10〜100nmであって、該塗布層表面1mmあたり400nm以上の高さのシリコーン凝集物が存在せず、100nm以上400nm未満の高さのシリコーン凝集物の個数が200個/mm以下であるシリコーン離型ポリエステルフィルムによって達成される。
また本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、好ましい態様として、該塗布層が粒子を含まないポリエステルフィルム上に形成されてなること、該アルケニル基含有シリコーンのアルケニル基がビニル基であること、積層セラミックコンデンサ製造におけるセラミックグリーンシート成形に用いられること、の少なくともいずれか1つの態様も包含される。
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、積層セラミックコンデンサ製造の際の薄膜セラミックグリーンシートに対する剥離力が小さく、さらに微小なシリコーン凝集物に由来するグリーンシートへの転写やピンホール形成が低減されるため、薄肉の積層セラミックコンデンサの不良率を低減させることのでき、その工業的価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
[離型用コーティング組成物]
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、本発明の離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層を有し、該離型用コーティング組成物はアルケニル基含有シリコーンの水分散体、Si−H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーンの水分散体およびエチニル基を有する架橋反応抑制剤を含む。また該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量は10000〜30000であり、該エチニル基を有する架橋反応抑制剤の含有量は該塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して50〜300ppmである。以下、各成分ごとに詳述する。
(アルケニル基含有シリコーン)
本発明におけるアルケニル基含有シリコーンとして、数平均分子量が10000〜30000のアルケニル基含有シリコーンが用いられる。また、かかる数平均分子量は15000〜25000であることが好ましい。アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が下限に満たないと架橋反応速度が増大し、シリコーン凝集物が発生する。また、アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が上限を超えると高速剥離速度における剥離強度が増加する。
該アルケニル基含有シリコーンとして、下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンが例示される。
SiO(4−a−b)/2 ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、Rはアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1〜16の1価の飽和炭化水素基であり、aは1〜3、bは0〜2で、かつa+b≦3を満たす整数をそれぞれ表す)
該アルケニル基含有シリコーンは、直鎖状構造、分岐鎖状構造のいずれでもよく、また部分的に交差結合を有するもの、さらにこれらの混合物、のいずれであってもよい。
で表される炭素数2〜8のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられ、これらの中でも特にビニル基が好ましい。
また、Rで表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など、またアリール基として、フェニル基、トリル基などが挙げられる。中でも、Rの置換基の80モル%以上がメチル基であることが軽剥離性の点で好ましい。
また、該アルケニル基含有シリコーン中の全ケイ素原子に対し、アルケニル基を有するケイ素原子が0.05〜20モル%の範囲であることが、組成物の硬化速度およびポットライフの点から好ましい。アルケニル基を有するケイ素原子の割合が下限に満たないときは組成物の硬化速度が低下し、後述するフィルム製膜中に硬化状のシリコーン被膜を効率的に形成し難くなることがある。また、アルケニル基を有するケイ素原子の割合が上限を超える範囲では組成物のポットライフが短くなることがある。
本発明におけるアルケニル基含有シリコーンは、公知の方法で製造することができる。また、本発明におけるアルケニル基含有シリコーンは水分散体の状態で該組成物に含有される。
(Si−H基含有シリコーン)
本発明における、Si−H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーン(以下、Si−H基含有シリコーンと称することがある)として、下記の一般式(II)で示される構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが例示される。
SiO(4−c−d)/2 ・・・(II)
(式(II)中、Rはアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1〜16の1価の飽和炭化水素基であり、cは0〜2、dは1〜3で、かつc+d≦3を満たす整数をそれぞれ表す)
該Si−H基含有シリコーンは、直鎖状構造、分岐鎖状構造のいずれでもよい。
また、Rで表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など、またアリール基として、フェニル基、トリル基などが挙げられる。中でも、Rの置換基の50モル%以上がメチル基であることが軽剥離性の点で好ましい。
該Si−H基含有シリコーンは、硬化特性の観点から、シリコーン1分子中に少なくとも3個、好ましくは5個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有することが好ましい。
該Si−H基含有シリコーンは、公知の方法で製造することができる。また、本発明におけるSi−H基含有シリコーンは水分散体の状態で該組成物に含有される。
(Si−H基数とアルケニル基数との比率)
本発明の離型用コーティング組成物中のSi−H基数とアルケニル基数との比率(Si−H基数/アルケニル基数)は1.0〜2.0の範囲が好ましい。
該比率が下限に満たないと、過剰のアルケニル基が形成された塗布層中に残留するため、経時剥離強度が変化し易くなる上に架橋密度が低下することで剥離力の均一性および残留接着率が低下することがある。また、該比率が上限を越えると反応性の高いSi−H基が形成された塗布層中に残留し、剥離力の増加を引き起こすことがある。
(シリコーン含有量)
本発明の離型用コーティング組成物において、該組成物の固形分重量を基準としてアルケニル基含有シリコーン固形分とSi−H基含有シリコーン固形分の合計量は70重量%以上であることが好ましい。また、それぞれのシリコーン固形分のより好ましい含有量は80〜97重量%である。ここでシリコーン固形分とは水系溶媒を除いた量を指し、組成物の固形分重量は各添加剤の固形分の合計量を指す。
該シリコーン固形分の合計量が下限よりも少ないと、塗膜が形成されるフィルム表面に対してシリコーンで被覆される面積が少なくなり、剥離力が重くなったり、剥離力の不均一化が生じることがある。
(水系溶媒)
本発明の各シリコーン水分散体を形成する水系溶媒として、水が好ましく用いられる。水系溶媒を用いることにより、フィルム製膜の工程中に有機溶剤で必要となる回収設備を用いることなくシリコーン離型層を形成させることができる。
(乳化剤)
それぞれのシリコーン水分散体は、水分散体の安定性、せん断耐性を上げるために乳化剤を使用して作成される。乳化剤として、シリコーンの硬化反応に影響を与えないノニオン系乳化剤が好ましい。イオン性を有する乳化剤はシリコーンの硬化反応に影響を与える可能性があり、また塗膜中に局在化、例えば表面にブリードアウトして離型性に影響を与える場合がある。
ノニオン系乳化剤としては、HLB値が8〜18の範囲が好ましく、例えば、高級アルコール、ないし高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸とアルコールとのアルキレンオキシド付加体のエステル体、アルカノールアミドのアルキレンオキシド付加体、ソルビタンエステルのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸グリセリドのアルキレンオキシド付加体などのアルキレンオキシド付加型から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
アルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらのうちの1種を用いても複数用いてもよい。複数用いる場合、ブロック、ランダムの付加形式を問わないが、HLB値が8〜18の範囲であることが好ましく、10〜15の範囲であることがさらに好ましい。ここで、HLB値はGriffinの計算式により算出される値である。
これらのノニオン系乳化剤の中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等が好ましく挙げられる。
HLB値がかかる範囲をはずれるノニオン系乳化剤をシリコーン水分散体の乳化剤として用いると、乳化分散力や水分散体の安定性が低下することがある。
(触媒)
本発明の塗布層を構成する離型用コーティング組成物には、アルケニル基含有シリコーンとSi−H基含有シリコーンとを付加反応させるため、触媒が用いられることが好ましく、特に白金系触媒が好ましい。
白金系触媒としては公知のものが使用でき、例えば塩化白金や塩化白金酸が挙げられる。該白金系触媒は予めノニオン系乳化剤を使用して乳化した状態で用いてもよく、シリコーンを乳化させる際に同時に用いてもよい。白金系触媒は、シリコーン水分散体量に対して1〜1000ppmの範囲内で使用することが好ましいが、所望する反応速度などに応じて増減させることができる。
(架橋反応抑制剤)
本発明において、室温における白金系触媒の活性を抑制するために離型用コーティング組成物にエチニル基を有する架橋反応抑制剤が含有されることが必要であり、該離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対し、該架橋反応抑制剤の含有量は50〜300ppmである。また、該架橋反応抑制剤の含有量は50〜150ppmであることがより好ましい。
一般的に、付加硬化型シリコーン組成物には室温における白金系触媒の活性を抑制し、ポットライフを調整させる目的で架橋反応抑制剤が添加されるが、本発明において、水分散体型、すなわちエマルジョン型のシリコーン組成物を用い、軽剥離化のために高希釈塗布液を調整して離型層厚みを薄くしようとすると架橋反応抑制剤の効力が低下し、シリコーン凝集物が形成されることを見出し、該架橋反応抑制剤の含有量をかかる範囲にすることで、薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムを提供できることを見出したものである。なお、塗布液を高希釈化すると反応抑制効果が低下する理由として、該架橋反応抑制剤の水への溶解性と触媒金属への配位能とのバランスが崩れるためと考えられる。
該架橋反応抑制の含有量が下限に満たない場合はポットライフが著しく低下し、室温においてシリコーンの付加硬化反応が進行するためシリコーン凝集物が多発する。また該架橋反応抑制の含有量が上記範囲を超えると付加硬化反応が十分に進行せず、相手材をはがした後に相手材にシリコーンが移行しやすい上に、熱処理時に揮発する反応抑制剤の量が増加するためオーブン内部の汚染につながる。
エチニル基を有する架橋反応抑制剤は、エチニル基を有するものであれば特に限定されないが、本発明では水系コーティング組成物を採用しているため、水への溶解性と白金への配位能のバランスおよび沸点から、1−エチニルシクロヘキサノールを代表とするエチニル基水酸基を有する架橋反応抑制剤を使用することが好ましい。
(その他成分)
本発明の離形用コーティング組成物には、本発明の課題を損なわない範囲内でさらに密着性付与剤、着色剤、紫外線吸収剤、粒子などを添加してもよい。
(シリコーン水分散体の作成)
本発明の各シリコーン水分散体を作成するにあたり、上述のシリコーン成分、水系溶媒および乳化剤を用いて乳化させる方法が挙げられる。これら成分の乳化は公知の方法を用いることができ、例えば、予め作成したシリコーンと乳化剤と、必要に応じてその他成分とを、ホモジナイザー、アジホモミキサー、ウルトラプラネタリーミキサー等の撹拌装置を用いて水系媒体中で機械的に乳化する方法が挙げられる。
また、撹拌翼の大きさ、撹拌速度および撹拌時間を調整して水分散体の粒径を調整することができる。本発明の各シリコーン水分散体の平均粒径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。
[ポリエステルフィルム]
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムとして、公知のポリエステルフィルムが使用でき、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート等の公知のポリエステルが用いられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートが力学的物性と成形性のバランスがよいので特に好ましい。
上記で例示した各ポリエステルは、ホモポリマーであっても、これらポリエステルのうちの1つを主たる成分とする共重合体であってもよく、またはブレンドしたものであってもよい。ここで「主たる成分」とは、ポリエステルの繰り返し構造単位のモル数を基準として80モル%以上である。また主たる成分の割合は、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。また、共重合成分またはブレンド成分はポリエステルの繰り返し構造単位のモル数を基準として20モル%以下であり、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
ポリエステルフィルムには、本発明の課題を損なわない範囲内で、滑剤粒子、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤を含有してもよい。表面平坦性が求められる場合は、滑剤粒子は実質的に含有しないことが好ましい。
ポリエステルの製造には公知の方法が用いられ、エステル化反応もしくはエステル交換反応により低重合度のポリエステルを得た後、重合触媒を用いて重合度を高める方法が挙げられる。
また、ポリエステルフィルムも公知の方法で得ることができ、逐次延伸方法、同時二軸延伸方法のいずれの方法を用いてもよい。例えば、ポリエステルを溶融状態で押出機のダイからシート状に押し出す工程、得られたシート状物を冷却固化することで未延伸ポリエステルフィルムとする工程、そして得られた未延伸ポリエステルフィルムを製膜方向と幅方向に延伸することで製造できる。ポリエステルフィルムが積層構成である場合は、例えばA層用のポリエステルとB層用のポリエステルとを用意し、これらを溶融状態で積層してダイからシート状に共押出し、続いて上述の方法に従って製膜する方法が例示される。
また、本発明におけるポリエステルフィルムは粒子を含まないことが好ましい。ポリエステルフィルムが積層構成である場合、全層が粒子を含まない構成の他、積層ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面層が粒子を含まない構成であってもよい。
本発明において粒子を含まないとは、具体的にはポリエステルフィルムの重量を基準として粒子含有量が0.5重量%以下であることを指す。なお、積層ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面層が粒子を含まない構成である場合には、該層の重量を基準として粒子含有量が0.5重量%以下であることを指す。
ポリエステルフィルムに粒子が含まれていると、粒子によって形成されるポリエステルフィルムの表面突起がグリーンシートに凹み状転写したり、グリーンシートの貫通を引き起こすことがある。
[塗布層]
本発明において、本発明の離型用コーティング組成物を用いてポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に塗布層が形成される。本発明の塗布層は、該ポリエステルフィルム上に該離型用コーティング組成物を用いて塗布された後、乾燥が施され、塗布層が形成される。該塗布層の形成はフィルム製膜工程において形成されることが好ましい。
本発明において、塗布層厚みは乾燥後の厚みとして10〜100nmであり、好ましくは10〜50nmである。塗布層の厚みが下限に満たないと離型特性が不十分となることがあり、また上限を超えると剥離強度が増大する他、塗布液を高濃度にしたり、塗工量を増やす必要があるため、塗布し難くなる傾向にある。
ポリエステルフィルム上に本発明の離型用コーティング組成物を塗布するにあたり、該組成物を含む水性塗布液が作成され、水性塗布液の固形分濃度は該塗布液の重量を基準として20重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1〜10重量%である。水性塗布液中の固形分濃度が下限に満たないとポリエステルフィルムへの塗れ性が不足することがある。また固形分濃度が上限を超えると塗液の安定性や塗布層の外観が悪化することがある。固形分濃度を調整する水性溶媒として水が好ましく用いられる。
水性塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向(以下、フィルム連続製膜方向、長手方向、MD方向と称することがある)または横方向(以下、縦方向と直交する方向、幅方向、TD方向と称することがある)のいずれか一方に配向させた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向させたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸して配向結晶化を完了させる前の二軸延伸フィルム)などを含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向させた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗布液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施す、いわゆるインラインコーティングが好ましい。塗布後の延伸工程あるいは熱固定処理によって塗布層を乾燥させてもよく、さらに必要に応じて乾燥工程を加えてもよい。また、触媒を用いて組成物を硬化させ、硬化状の被膜を得る場合には、延伸工程あるいは熱固定処理によって硬化させることができるが、さらに必要に応じて硬化工程を加えてもよい。
水性塗布液をポリエステルフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共に前述した乳化剤を濡れ剤として併用することが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
[シリコーン凝集物]
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、塗布層表面1mmあたり400nm以上の高さのシリコーン凝集物が存在せず、100nm以上400nm未満の高さのシリコーン凝集物の個数が200個/mm以下である。また、100nm以上400nm未満の高さのシリコーン凝集物の個数は100個/mm以下であることがより好ましい。
測定面積1mm当たりに高さ400nm以上の凝集突起が存在すると、1μm以下の薄肉セラミックグリーンシートの成形用キャリアフィルムとして使用する場合に、このような従来よりも小さなサイズのシリコーン凝集物であってもグリーンシートの凹み状転写や膜厚不良、シートの貫通(ピンホール)などを引き起こす。また、100nm以上高さ400nm未満の突起については少ない方が好ましいが200個/mmまでは許容される。この範囲を超えると凝集部と正常部との剥離強度の差からグリーンシートの破れや剥離不良が生じる。
本発明の離型用コーティング組成物を塗布層に用い、かかるサイズのシリコーン凝集物の個数をかかる範囲にする方法として、アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量および架橋反応抑制剤の含有量を調整することが挙げられる。
[用途]
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、積層セラミックコンデンサ製造時に使用される薄膜グリーンシート成形のキャリアフィルムとして用いられる離型フィルムに好適に用いられる。かかる用途に用いた場合、軽剥離性に優れるため、離型フィルム上に乾燥後の厚みが1μm以下の薄膜グリーンシートを作成し、離型フィルムを剥離する際に、薄肉グリーンシートに破れが生じることなく高速で剥離することができる。同時に、微小なシリコーン凝集物に由来する薄膜グリーンシートへの転写やピンホール形成が低減されるため、薄肉の積層セラミックコンデンサの不良率を低減させることができる。
(剥離強度)
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、剥離強度が30〜100g/50mmであることが好ましい。かかる剥離強度は、離型フィルムの塗布層(離型層)表面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B)を貼合せ、5kgの圧着ローラーで圧着し30分以上放置後、離型層と粘着テープとの剥離強度(剥離角度180度、剥離速度100mm/分、単位:g/50mm幅)を高速剥離強度試験機で測定して得られる強度である。
剥離強度が下限に満たないと離型フィルムにセラミックシート等を積層した積層シートを巻き取る際に、セラミックシート等が離型フィルムから剥離してしまうことがある。一方、上限より大きな剥離強度では、剥離力が重くなり、積層シートからセラミックシート等を剥離分離して使用する際に剥離が困難となったり、セラミックシートに破れが生じることがある。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、各種物性は下記の方法により評価した。またwt%は重量%を表わす。
(1)数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を測定し、ポリスチレン換算値として算出した。
(2)塗布層厚み
包埋樹脂でフィルムを固定して断面をミクロトームで切断し、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて、塗布層の厚みを測定した。
(3)剥離強度
離型フィルムの塗布層(離型層)表面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B、50mm幅)を貼合せ、5kgの圧着ローラーで圧着し30分以上時間放置後、離型層と粘着テープとの剥離強度(剥離角度180度、剥離速度100m/分、単位:g/50mm幅)を高速剥離強度試験機にて測定した。
(4)凝集物個数測定
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより突起高さを求めた。なお、測定は測定箇所を変えて18回行い、100nm以上の高さの突起について、1mmあたりの突起個数と各々の突起高さを集計した。
[実施例1〜9、比較例1〜8]
A層として平均粒子径が0.7μmの炭酸カルシウムの粒子を0.1重量%含むポリエチレンテレフタレート([η]=0.64dl/g、Tg=78℃)と、B層として粒子を含まないポリエチレンテレフタレート([η]=0.64dl/g、Tg=78℃)とを溶融状態で積層させ押出機のダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に80℃で3.6倍に延伸した後、後述する組成からなるシリコーンコーティング組成物をフィルムのB層表面に、ロールコーターで均一に塗布した。なお、用いたシリコーンコーティング組成物の塗布液は調整後、24時間以内のものを用いた。
次いで、この塗布フィルムを115℃で乾燥し、145℃で横方向に4.0倍に延伸し、更に230℃で約10秒間熱固定して表1に示す塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルム(全体厚さ31μm、A層厚さ24μm、B層厚さ7μm)を得た。
各実施例は、軽剥離性に優れ、グリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されていた。
一方、比較例1、7、8は剥離強度が大きく、また比較例2〜4、6はシリコーン凝集物の個数が増加した。比較例5は粘着テープを剥がした後に相手材にシリコーンが移行しており、また製膜中、オーブン内部の揮発物の増加が見られた。
<アルケニル基含有シリコーン水分散体>
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製 装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、下式(1)で表されるアルケニル基を有するシリコーン(それぞれの実施例、比較例の数平均分子量は表1、表2に記載)98重量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製 商品名「エマルゲン109P」)2重量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分20重量%のアルケニル基含有シリコーン水分散体を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を調整した。
Figure 2013208810
式(1)中、mは2であり、nは表1、表2に記載の数平均分子量となるよう調整した。
<Si−H基含有シリコーン水分散体>
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製 装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、下式(2)で表される水素基を有するシリコーン(数平均分子量:4500)98重量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製 商品名「エマルゲン109P」)2重量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分10重量%のSi−H基含有シリコーン水分散体を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を調整した。
Figure 2013208810
(式(2)中、o=30、p=35、である)
・白金系触媒: 白金系触媒エマルジョン(信越化学工業株式会社製 商品名「CAT−PM−10A」)を用いた。
・架橋反応抑制剤: 1−エチニルシクロヘキサノール(Lancaster社製)を精製せずに使用した。
<塗布液>
離型用コーティング組成物として、アルケニル基含有シリコーン水分散体100重量部/Si−H基含有シリコーン水分散体12重量部/白金系触媒0.02重量部/架橋反応抑制剤(表1の通りに調整)で構成される組成物を用い、目標の塗布層厚みとなるように塗布液の固形分濃度を水で希釈し、塗布液を準備した。
Figure 2013208810
Figure 2013208810
本発明のシリコーン離型ポリエステルフィルムは、積層セラミックコンデンサ製造の際の薄膜セラミックグリーンシートに対する剥離力が小さく、さらに微小なシリコーン凝集物に由来するグリーンシートへの転写やピンホール形成が低減されるため、薄肉の積層セラミックコンデンサの不良率を低減させることのでき、その工業的価値は極めて高い。

Claims (4)

  1. アルケニル基含有シリコーンの水分散体、Si−H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーンの水分散体およびエチニル基を有する架橋反応抑制剤を含む離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層を有するシリコーン離型ポリエステルフィルムにおいて、該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が10000〜30000かつ該架橋反応抑制剤の含有量が該塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して50〜300ppmであり、該塗布層厚みが10〜100nmであって、該塗布層表面1mmあたり400nm以上の高さのシリコーン凝集物が存在せず、100nm以上400nm未満の高さのシリコーン凝集物の個数が200個/mm以下であることを特徴とするシリコーン離型ポリエステルフィルム。
  2. 該塗布層が粒子を含まないポリエステルフィルム上に形成されてなる、請求項1に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。
  3. 該アルケニル基含有シリコーンのアルケニル基がビニル基である請求項1または2に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。
  4. 積層セラミックコンデンサ製造におけるセラミックグリーンシート成形に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。
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