JP2023145969A - 離型フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 離型層の剥離性と濡れ性を両立させ易く、離型層の塗布均一性とリサイクル性が良好な離型フィルムを提供する。【解決手段】 基材フィルムと、水性コーティング組成物を反応及び固化させてなる離型層と、を有する離型フィルムであって、前記水性コーティング組成物は、分子内に2つ以上のアルケニル基を有する数平均分子量1000以上10000未満のアルケニル基含有シリコーン、及び、分子内に2つ以上のSi-H基を有する数平均分子量1000以上5000以下のSi-H基含有シリコーンを含む、離型フィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、基材フィルムと離型層とを有する離型フィルムに関し、各種工程用フィルムとして有用な離型フィルムに関する。
従来、ポリエステルフィルム等を基材とした離型フィルムは、耐熱性や機械特性が高く、粘着シートやカバーフィルム、セラミックスラリーや高分子電解質膜などの樹脂シートを製膜するための工程用フィルムとして使用されている。また、離型フィルムの離型層としては、耐熱性や剥離性が良好なため、シリコーンを含むコーティング組成物により形成した離型層が、数多く提案されている(例えば特許文献1~4)。
特許文献1~2には、不飽和基を有するポリシロキサン、Si-H基を有するポリシロキサン、白金族金属系触媒等及び有機溶媒を含むコーティング組成物により離型層を形成した離型フィルムが提案されている。
しかし、この技術では、有機溶媒系のコーティング組成物となるため、基材フィルムの延伸製膜中に塗布する方法(以下「インラインコーティング」という)に適さないという問題があった。つまり、コーティング組成物の溶媒として有機溶媒が単独で使用されるため、製膜延伸設備には大掛かりな防爆設備が必要となり、初期設置費用かかることや運用が煩雑となるため製造コストが高くなるという問題があった。
一方、インラインコーティングに適する技術として、特許文献3には、アルケニル基含有シリコーン、及びSi-H基含有シリコーンを含む水性コーティング組成物を用いて離型層を形成した離型フィルムが提案されている。また、実施例として、数平均分子量25000のアルケニル基含有シリコーンと、数平均分子量4500のSi-H基含有シリコーンとを使用して離型層を形成した離型フィルムが開示されている。
このように、従来、離型層を形成する際に、ポリジメチルシロキサンの螺旋構造が塗膜表面で形成しやすいように、比較的高分子量の不飽和基含有ポリシロキサンが、一般的に使用されていた。この点は、有機溶媒系のコーティング組成物を用いる場合(例えば特許文献1~2)でも同様であった。
特開2003-292894号公報 特開2003-292895号公報 特許第6077327号公報 国際公開WO2017/200056号公報
しかしながら、近年、離型フィルムの離型層上に形成されるセラミックグリーンシート等の部材が薄膜化する傾向があり、離型層表面には、剥離性と共に、セラミックスラリー等に対する濡れ性が求められる場合があり、これらの両立が難しくなっている。つまり、濡れ性を高めるために、離型層の化学組成を変えると、剥離性が低下するという問題があった。
なお、特許文献4には、分子量が500~30000のビニル基を有するポリジメチルシロキサン、および分子量が150~10000のSi-H基を有するポリジメチルシロキサンを含む有機溶媒系のコーティング組成物で離型層を有する離型フィルムが提案されているが、剥離性と濡れ性とを両立させることは示唆されておらず、また、有機溶媒系のためインラインコーティングに適さないという問題があった。
そして、本発明者らの検討によると、シリコーン系の離型フィルムをリサイクルして、基材フィルムの原料として使用する場合、離型層の組成によっては、特定サイズ以上の異物が発生して、リサイクルに適さないことが判明した。
また、本発明者らの別の検討によると、シリコーン系の水性コーティング組成物を用いて離型層を形成する場合、セラミックグリーンシート等の薄膜化に対応する上で、離型層の塗布時に生成する凝集物による表面形状への影響が問題となり易いことが判明した。
そこで、本発明の目的は、離型層の剥離性と濡れ性を両立させ易く、離型層の塗布均一性とリサイクル性が良好な離型フィルムを提供することにある。
本発明者等は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、従来より低分子量のシリコーンを用いた水性コーティング組成物を用いて離型層を形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1]基材フィルムと、水性コーティング組成物を反応及び固化させてなる離型層と、を有する離型フィルムであって、
前記水性コーティング組成物は、分子内に2つ以上のアルケニル基を有する数平均分子量1000以上10000未満のアルケニル基含有シリコーン、及び、分子内に2つ以上のSi-H基を有する数平均分子量1000以上5000以下のSi-H基含有シリコーンを含む、離型フィルム。
[2]前記アルケニル基含有シリコーンが、下記一般式(I)で表される、[1]に記載の離型フィルム。
(一般式(I)中、Rは、同一又は異なっていてもよい、炭素数2以上8以下のアルケニル基、又はアルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、Rのうち2つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、[SiO]b1で示すケイ素原子に結合するRのうち1つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、Rは、同一又は異なっていてもよい、アルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、a1+b1を100モル%とするとき、a1は90モル%以上100モル%以下、b1は0モル%以上10モル%以下である。)
[3]前記Si-H基含有シリコーンが、下記一般式(II)で表される、[1]又は[2]に記載の離型フィルム。
(一般式(II)中、Rは、同一又は異なっていてもよい、アルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、a2+b2を100モル%とするとき、a2は30モル%以上90モル%以下、b2は10モル%以上70モル%以下である。)
[4]前記水性コーティング組成物は、前記アルケニル基含有シリコーンの100質量部に対して、前記Si-H基含有シリコーンを1質量部以上50質量部以下含む、[1]~[3]いずれか1項に記載の離型フィルム。
[5]前記離型層は、結晶配向が完了する前の基材フィルムに前記水性コーティング組成物を塗布し、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理をして、結晶配向を完了させることによって形成されている、[1]~[4]いずれか1項に記載の離型フィルム。
[6]前記基材フィルムが、ポリエステルフィルムである、[1]~[5]いずれか1項に記載の離型フィルム。
[7]前記離型フィルムが、積層セラミックコンデンサ用離型フィルム、又は樹脂シート用離型フィルムである、[1]~[6]いずれか1項に記載の離型フィルム。
本発明によれば、離型層の剥離性と濡れ性を両立させ易く、離型層の塗布均一性とリサイクル性が良好な離型フィルムを提供することができる。
このような効果が得られる理由の詳細は明らかではないが、比較的低分子量のシリコーン同士が反応したシリコーン架橋体は、緻密な3次元構造を形成し易いため、有機溶剤と接した状態でも硬さが維持され易く、離型層表面に塗布、キャストされた積層物を剥離する際の密着力を低減できると考えられる。また、緻密な3次元構造を有するシリコーン架橋体はポリジメチルシロキサン等の螺旋構造を形成しにくくなり、これが離型層表面の表面自由エネルギーにも影響するため、積層物に対して適度な濡れ性を発現し易くなると考えられる。
更に、水性コーティング組成物に含まれるシリコーンを低分子量化することで、塗膜の安定性や均一性が増し、離型層中に凝集状物が生じにくくなって、塗布均一性が高まると考えられる。また、リサイクル時に再溶融する際にも、均一性の高い塗膜であるため塗膜同士が再溶融されたベースフィルム樹脂内で分散化しやすいことにより、異物が生じにくくなると考えられる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[離型フィルム]
本発明の離型フィルムは、基材フィルム(以下「基材」という場合がある)と、水性コーティング組成物を反応及び固化させてなる離型層と、を有するものである。後に詳述するように、水性コーティング組成物には、相互に反応し得る2種のシリコーンを含有するため、得られる高分子の構造の同定やそれに基づくクレームの特定は容易ではなく、非実際的な事情が存在する。このため、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの形式により、本発明の離型フィルムを特定した。
[離型層]
離型層は、水性コーティング組成物を反応及び固化させて得られるものである。水性コーティング組成物は、分子内に2つ以上のアルケニル基を有する数平均分子量1000以上10000未満のアルケニル基含有シリコーン、及び、分子内に2つ以上のSi-H基を有する数平均分子量1000以上5000以下のSi-H基含有シリコーンを含むものである。以下、構成成分毎に詳述する。
(アルケニル基含有シリコーン)
アルケニル基含有シリコーンとしては、分子内に2つ以上のアルケニル基を有し、主鎖にシロキサン結合を有する化合物であれば何れの化合物でもよいが、末端及び/又は側鎖にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。また、ジアルキルシロキサン単位又はアルキルフェニルシロキサン単位とを含む共重合体であることが、剥離性を発現させつつ、1分子中のアルケニル基量を調整し易いため好ましい。末端のケイ素原子は、アルケニル基を有することが好ましいが、トリメチルシラン等のトリアルキルシラン構造であってもよい。
アルケニル基は、片末端、両末端、側鎖の何れに導入されていてもよいが、少なくとも何れかの末端に導入されていることが好ましく、両末端に導入されていることがより好ましい。アルケニル基は、分子内に2つ以上有しており、2以上20以下が好ましく、2以上
10以下がより好ましい。
アルケニル基含有シリコーンとしては、例えば、下記一般式(I)で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。
(一般式(I)中、Rは、同一又は異なっていてもよい、炭素数2以上8以下のアルケニル基、又はアルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、Rのうち2つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、[SiO]b1で示すケイ素原子に結合するRのうち1つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、Rは、同一又は異なっていてもよい、アルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、a1+b1を100モル%とするとき、a1は90モル%以上100モル%以下、b1は0モル%以上10モル%以下である。)
[SiO]a1で示すケイ素原子に結合するRは、アルキル基もしくはアリール基を含む1価の炭化水素基であればよいが、アルキル基もしくはアリール基から選択される炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、又はフェニル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
[SiO]b1で示すケイ素原子に結合するRは、炭素数2以上8以下のアルケニル基、又はアルキル基もしくはアリール基を含む1価の炭化水素基であればよいが、[SiO]b1で示すケイ素原子に結合するRのうち1つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基である。Rとしては、炭素数2以上8以下のアルケニル基、又はアルキル基もしくはアリール基から選択される炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、又はフェニル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
両末端のRも[SiO]b1で示すケイ素原子に結合するRと同様であるが、好ましい構成としては炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、末端のアルケニル基はSi-H基との反応をした場合に立体的な構造障害が比較的小さくなり、剥離性を向上させやすいため特に好ましい。
で表される炭素数2以上8以下のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられ、これらの中でも特にビニル基が好ましい。
[SiO]a1と[SiO]b1の構成単位を合計して100モル%とするとき、剥離性を向上させるために炭化水素基を塗膜表面に局在化させる観点から、[SiO]a1の構成単位の範囲として90モル%以上100モル%以下が好ましく、より好ましい範囲として95モル%以上100モル%以下である。
アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量は、1000以上10000未満が好ましく、より好ましくは3000以上10000未満である。数平均分子量が1000以上であるとよりも小さいと、炭化水素基が塗膜表面に局在化して十分な剥離性が得られ易くなる。一方、数平均分子量が10000未満であると、水系コーティング組成物へ乳化特性が良好になり、均一塗工性も良好になる傾向がある。
(Si-H基含有シリコーン)
Si-H基含有シリコーンとしては、分子内に2つ以上のSi-H基(即ち、Si原子に直接結合する2つ以上の水素原子)を有し、主鎖にシロキサン結合を有する化合物であれば何れの化合物でもよいが、側鎖にSi-H基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。また、ジアルキルシロキサン単位又はアルキルフェニルシロキサン単位を含む共重合体であることが、剥離性を発現させつつ、1分子中のSi-H基量を調整し易いため好ましい。末端のケイ素原子は、Si-H基を有していてもよいが、トリメチルシラン等のトリアルキルシラン構造であることが好ましい。
Si-H基含有シリコーンとしては、下記の一般式(II)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが例示される。
(一般式(II)中、Rは、同一又は異なっていてもよい、アルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、a2+b2を100モル%とするとき、a2は30モル%以上90モル%以下、b2は10モル%以上70モル%以下である。)
[SiO]a2で示すケイ素原子には、水素原子(ハイドロジェン基)が結合し、Rは、アルキル基もしくはアリール基を含む1価の炭化水素基であればよいが、アルキル基もしくはアリール基から選択される炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であることが好ましい。
[SiO]b2、及び末端のSi原子に結合するRは、アルキル基もしくはアリール基を含む1価の炭化水素基であればよいが、アルキル基もしくはアリール基から選択される炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であることが好ましい。
何れのRについても、アルキル基もしくはアリール基の炭素数はより少ない数の方がより好ましく、立体的な構造障害が比較的小さくなり、架橋反応が進行しやすいものとなる。また、流動性や、離型層中の反応構造の均一性の観点からも好ましい。このため、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが好ましく、またアリール基としては、フェニル基、トリル基などが好ましい。
[SiO]a2と[SiO]b2の構成単位を合計して100モル%とすると、[SiO]a2の構成単位の範囲として30モル%以上90モル%以下が好ましく、40モル%以上80モル%以下がより好ましい。[SiO]a2の構成単位が30モル%以上であると、架橋反応点が十分な量となり、離型層の凝集力が大きくなり、離型層の耐擦過性や耐溶剤性も良好になり好ましい。また、[SiO]a2の構成単位が90モル%以下であると、離型層中にSi-H基が残存しにくくなり、離型層表面の活性が上がりにくく剥離性が良好に維持されるため好ましい。
本発明におけるSi-H基含有シリコーンの数平均分子量は、1000以上5000以下が好ましく、より好ましくは3000以上5000以下である。数平均分子量が1000以上であると、十分な剥離性が得られ易くなる。一方、数平均分子量が5000以下であると、水性コーティング組成物への乳化特性が良好になり、塗工均一性も良好になる傾向がある。かつ架橋反応が効率的に進行し易くなり、離型層中の残存Si-H基が少なくなり、剥離性が良好になる。
水性コーティング組成物中において、アルケニル基含有シリコーンの100質量部に対して、Si-H基含有シリコーンを1質量部以上50質量部以下含むことが好ましく、2質量部以上40質量部以下がより好ましく、3質量部以上30質量部以下が更に好ましい。Si-H基含有シリコーンの含有量が、1質量部以上になると、架橋反応点が十分な量となり、緻密な架橋構造が形成され易くなり、離型層性が向上するため好ましい。Si-H基含有シリコーンの含有量が、50質量部以下になると、離型層中のSi-H基が残存しにくくなり、離型層表面の活性が上がりにくく剥離性が良好に維持されるため好ましい。
(白金系触媒)
アルケニル基含有シリコーンとSi-H基含有シリコーンとの架橋反応は付加反応であり、一態様において、反応を促進させるために白金系触媒を用いることが好ましい。
白金系触媒としては公知のものが使用でき、例えば塩化白金や塩化白金酸が挙げられる。該白金系触媒はシリコーンへの分散性を考慮して1,3-ジビニルー1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体(Karstedt触媒)を用いてもよく、シリコーンを乳化させる際に同時に分散させることで、均一分散性を確保することができる。
白金系触媒の含有量は、アルケニル基含有シリコーンとSi-H基含有シリコーンとを合わせた質量に対し、白金元素の質量が10ppm以上400ppm以下の範囲で含まれていることが好ましい。このような範囲とすることで、シリコーンの硬化を十分に行うことができ、かつ、シリコーン凝集物の発生を抑制することができ、表面性に優れた離型フィルムを得ることができる。白金元素の質量比が上限以下であると、アルケニル基とSi-H基との付加反応が適度になり、シリコーン凝集物の発生を抑制できる傾向にある。かかる観点から、白金系触媒の含有量は、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。また、白金元素の質量比が下限以上であると付加反応が十分進行して、シリコーンの硬化不良を引き起こし難くなる。かかる観点から、白金触媒の含有量は、より好ましくは15ppm以上、さらに好ましくは20ppm以上である。
(水系溶媒)
水性コーティング組成物には、アルケニル基含有シリコーン、及びSi-H基含有シリコーンに加えて、通常、水系溶媒を含有するが、水系溶媒としては水が含むものが好ましく用いられる。一態様において、アルケニル基含有シリコーンの水分散体と、Si-H基含有シリコーンの水分散体とが、水性コーティング組成物の調製のために使用される。各々のシリコーンの水分散体としては、好ましくは水系乳化液か使用される。
離型層はこのような水系乳化液から形成されており、水系乳化液を含む水性コーティング組成物(以下、「水系塗布液」と略称する場合がある)を塗設することで離型層が形成される。水系塗布液は水系溶媒を用いることにより、フィルム製膜の工程中に有機溶剤で必要となる防爆設備および回収設備を用いることなく離型層を形成させることができる。必要に応じて、多少の有機溶媒を含むことも可能である。
(その他成分)
一態様において、発明の効果を損なわない範囲内で、例えば界面活性剤、カップリング剤、架橋反応抑制剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、有機又は無機粒子、潤滑剤、ブロッキング防止剤等の他の添加剤を水性コーティング組成物に混合することができる。
(界面活性剤)
一態様において、離型層を設ける際の基材フィルムへの濡れを促進するために、水性コーティング組成物に界面活性剤を添加することが好ましい。かかる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられ、これらの1種以上を用いることも可能である。それぞれのシリコーンの水系乳化液同士の凝集を防ぎ、且つシリコーンの硬化反応に影響を与えないためには、乳化剤としてノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、HLB値が6以上18以下の範囲が好ましく、例えば、高級アルコール、ないし高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸とアルコールとのアルキレンオキシド付加体のエステル体、アルカノールアミドのアルキレンオキシド付加体、ソルビタンエステルのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸グリセリドのアルキレンオキシド付加体などのアルキレンオキシド付加型から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ここで、HLB値はGriffinの計算式により算出される値である。
アルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらのうちの1種を用いても複数用いてもよい。複数用いる場合、ブロック、ランダムの付加形式を問わないが、HLB値が8以上18以下の範囲であることが好ましく、10以上15以下の範囲であることがさらに好ましい。これらのノニオン系界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等が好ましく挙げられる。必要に応じてノニオン系界面活性剤は2種類以上を混合してもよい。HLB値がかかる範囲をはずれるノニオン系界面活性剤をシリコーン水分散体の乳化剤として用いると、乳化分散力や水分散体の安定性が低下することがある。
界面活性剤は、全固形分に対して0.1質量%以上20質量%以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上15質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下の範囲である。この範囲の下限以上であると、乳化状態が良好になり、この範囲の上限以下であると、重剥離化を引き起こしにくくなる。
(架橋反応抑制剤)
一態様において、水系塗布液の状態で室温における白金系触媒の活性を抑制するために、反応抑制剤が含有されていることが好ましい。かかる反応抑制剤は、好ましくはアルキニル基を有する反応抑制剤である。アルキニル基を有する反応抑制剤としては、アルキニル基を有するものであれば特に限定されないが、具体的には1-エチニル-1-シクロヘキサノール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-メチル-1-ドデシン-3-オール、3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール、1,1-ジフェニル-2-プロピン-3-オール、3-エチル-6-エチル-1-ノニン-3-オール、3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3-フェニル-1-ブチン-3-オールが例示される。本発明では水系塗布液であるため、水への親和溶解性と白金への配位能のバランス及び沸点から、例示するアルキニル基と水酸基を有する反応抑制剤を使用することが好ましい。または白金系触媒は水系塗布液に添加するために一般的なオルガノポリシロキサンと混合し、水系乳化液として用いる場合がある。
架橋反応抑制剤の含有量は、離型層の形成に用いられる水性コーティング組成物の質量に対し、好ましくは5ppm以上1000ppm以下、より好ましくは10ppm以上700ppm以下、さらに好ましくは20ppm以上500ppm以下である。該架橋反応抑制剤の含有量が下限以上の場合は、ポットライフが長くなり、室温においてシリコーンの付加硬化反応が進行し難く、シリコーン凝集物が発生し難くなる傾向にある。また該架橋反応抑制剤の含有量が上限以下であると、相手材を剥離した後に相手材にシリコーンが移行し難くなり、熱処理時に揮発する反応抑制剤の量が減少するためオーブン内部の汚染が生じにくい。
(カップリング剤)
一態様において、水性コーティング組成物には、シリコーン成分と基材フィルムの密着性を向上させるためにカップリング剤を添加することが出来る。カップリング剤としては、例えば、一般式YRSiXで表される化合物であり、例えばシランカップリング剤を挙げることができる。ここで、Yはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等の如き有機官能基であり、Yがエポキシ基やビニル基であることが特に好ましい。
Rはメチレン、エチレン、プロピレン基の如きアルキレン基、又は単結合である。Xはメトキシ基、エトキシ基、アセトキシ等の如き加水分解性基、又はアルキル基であり、3つのXのうち少なくとも1つが加水分解性基であり、好ましくは3つのXが加水分解性基である。加水分解性基としては、メトキシ基が好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等が挙げることができる。
カップリング剤の他の例としては、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等の金属を含む有機金属化合物が挙げられ、有機金属化合物はアルコキシド、キレート、アシレート系に分類されるものが好ましい。具体例を挙げると、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、チタンアセチルアセトネート、トリエタノールアミンチタネート、チタンラクテート等であり、これらに限定されるものではない。
また、カップリング剤としては、Yがエポキシ基であるシランカップリング剤と、Yがビニル基であるシランカップリング剤とを併用するなど、2種以上のカップリング剤を使用することも可能である。
一態様において、カップリング剤を添加することで離型層の主成分であるシリコーンとポリエステルフィルム等との耐久密着性が向上する。例えば、有機溶剤を使用した溶液キャスト方式の樹脂シートのキャスト時には離型層に有機溶剤成分が浸透する場合があり、離型層が浸食される可能性あるが、カップリング剤の添加により浸食を抑制することができる。高温での溶融キャスト方式の樹脂シートのキャスト時には高温に離型層が晒され、熱劣化の可能性あるが、カップリング剤の添加により熱劣化を抑制し、離型層を保持可能となる。
上記のような観点から、カップリング剤の含有量としては、離型層に含まれるアルケニル基含有シリコーンとSi-H基含有シリコーンの合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
(シリコーン水分散体の作製)
一態様において、水系乳化液の作製は、所定のアルケニル基含有シリコーンまたはSi-H基含有シリコーン、水系溶媒及び界面活性剤を用いて、乳化させる方法が挙げられる。これら成分の乳化は公知の方法を用いることができ、例えば、予め作製した所定のシリコーンと界面活性剤と必要に応じてその他成分とをホモジナイザー、アジホモミキサー、ウルトラプラネタリーミキサー等の撹拌装置を用いて水系媒体中で機械的に乳化する方法が挙げられる。
また、撹拌翼の大きさ、撹拌速度および撹拌時間を調整して水分散体の粒径を調整することができる。各シリコーン水分散体の分散粒子の平均粒径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上200nm以下である。
[基材フィルム]
本発明における基材フィルムは、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレントリアセチルセルロース、アクリル、ポリイミド等からなるシートあるいはフィルムを例示することができる。中でも、機械特性、耐熱性に優れ、またこれらの特性と価格とのバランスが良いという観点から、ポリエステルからなるフィルムが好ましい。以下、ポリエステルフィルムの場合を例にとって説明するが、他の樹脂フィルムを用いる場合でも、共重合成分、ブレンド成分、添加剤、フィルムの製法、積層構造等については、以下と同様である。
(ポリエステルフィルム)
基材フィルムとして用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム用基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成形したものを使用することが出来る。好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適である。とりわけ、ポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよい。例えば、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明の離型フィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
上記ポリエステルフィルムの固有粘度は0.50dl/g以上0.70dl/g以下が好ましく、0.52dl/g以上0.62dl/g以下がより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が多く発生することがなく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料ペレットは十分に真空乾燥することが好ましい。
なお、本明細書において、単に「ポリエステルフィルム」と記載する場合、表面層Aと表面層Bを有する(積層した)ポリエステルフィルムを意味する。
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1倍以上8倍以下、特に2倍以上6倍以下の延伸をすることが好ましい。
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12μm以上50μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは15μm以上38μm以下であり、より好ましくは、19μm以上33μm以下である。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましい。
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であっても構わない。例えば、基材フィルムは、粒径1.0μm以上の粒子を実質的に含まない表面層Aと、粒子を含む表面層Bとを有するポリエステルフィルムであってもよい。好ましくは、表面層Aは、粒径1.0μm以上の無機粒子を実質的に含まない。
この態様において、表面層Aに、粒径1.0μm未満1nm以上の粒子は存在してもよい。表面層Aが、粒径1.0μm以上の粒子、例えば無機粒子を実質的に含まないことにより、樹脂シートに基材中の粒子形状が転写して不具合が生じることを低減できる。
一態様において、表面層Aは、粒径1.0μm未満の粒子についても含有しないことで、樹脂シートに基材中の粒子形状が転写して不具合が生じることを、より効果的に抑制できる。
一態様において、上記ポリエステルフィルム基材は、少なくとも片面には実質的に無機粒子を含まない表面層Aを有する積層フィルムであることが好ましい。これにより、更に効果的に、樹脂シートに基材中の粒子形状が転写して不具合が生じることを抑制できる。
例えば、粒径1.0μm未満の粒子を実質的に含有しない表面層Aは、粒径1.0μm以上の粒子についても実質的に含まない態様が好ましい。
ここで、本発明において、「粒子を実質的に含有しない」とは、例えば、1.0μm未満の無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。また、「粒径1.0μm以上の粒子を実質的に含まない」とは、積極的に粒径1.0μm以上の粒子を含まないことを意味する。
2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に無機粒子を含有しない表面層Aの反対面には、無機粒子などを含有することができる表面層Bを有することが好ましい。
積層構成としては、離型層を塗布する側の層をA層、その反対面の層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。当然ながらC層は複数の層構成であっても構わない。また、表面層Bには無機粒子を含まないこともできる。その場合、フィルムをロール状に巻き取るための滑り性付与するため、表面層B上には少なくとも無機粒子とバインダーを含んだコート層を設けることが好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、無機粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される無機粒子含有量は、表面層B中に無機粒子の合計で5000ppm以上15000ppm以下含有することが好ましい。
このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、1nm以上40nm以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、5nm以上35nm以下の範囲である。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシート製造時に品質が安定し好ましい。
上記B層に含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子なども用いることができるが、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましい。また、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ-シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
上記表面層Bに添加する無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。無機粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面の平滑性に悪影響を与える恐れがないため、セラミックグリーンシートにピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの無機粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、表面層Bにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50質量%以上90質量%以下のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、B層に含まれる滑剤の種類や量、粒径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、表面処理などを施すこともできる。
一態様において、水性コーティング組成物を塗布する離型層形成面には、離型層との密着性を高めるために、表面処理をしたり、易接着層を設けることが可能である。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理及び電子線・放射線処理などが挙げられ、易接着層としては、基材フィルムと同じ樹脂を含有し、更に帯電防止剤、顔料、界面活性剤、潤滑剤、アンチブロッキング剤など、を含有する層が挙げられる。水性コーティング組成物にカップリング剤のような密着性向上剤が添加されている場合は、易接着層等を設けなくても、離型層が基材フィルムに対して十分な密着性を有することができる。
[離型層の形成]
一態様において、離型層は、アルケニル基含有シリコーンの水系乳化液とSi-H基含有シリコーンの水系乳化液を含む水性コーティング組成物を塗設して形成される。その際、基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層が形成される。離型層は、該基材フィルム上に該水系塗布液を塗布した後、加熱・乾燥が施され、水系塗布液の成分が反応及び固化させてなる離型層が形成される。該離型層の形成はフィルム製膜工程において形成されることが好ましい。
離型層の厚みは、乾燥後の厚みとして5nm以上100nm以下が好ましい。離型層の厚みが下限以上であると、剥離性が十分得られ易く、また上限以下であると、剥離強度が増大しにくい傾向にある他、水系塗布液の離型層成分を高濃度にしたり、塗工量を増やす必要がなくなり、塗布し易くなる傾向にある。従って、離型層の厚みは、より好ましくは5nm以上70nm以下、さらに好ましくは5nm以上50nm以下である。
基材フィルム上に該水系塗布液を塗布するにあたり、その固形分濃度は水系塗布液中の離型層成分を基準として20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。水系塗布液中の離型層成分の固形分濃度が下限以上であると、造膜性が良好になる傾向がある。また固形分濃度が上限以下であると、水系塗布液の安定性や離型層の外観が良好になり易い。固形分濃度を調整する水性溶媒として水が好ましく用いられる。
離型層を形成させるために基材フィルムへ塗布する水系塗布液は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。その後、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理をして、結晶配向を完了させることができる。
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延フィルムを縦方向(以下、フィルム連続製膜方向、長手方向、MD方向と称することがある)または横方向(以下、縦方向と直交する方向、幅方向、TD方向と称することがある)のいずれか一方に配向させた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向させたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸して配向結晶化を完了させる前の二軸延伸フィルム)などを含むものである。
なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向させた一軸延伸フィルムに、水系塗布液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施す、いわゆるインラインコーティングが好ましい。塗布後の延伸工程あるいは熱固定処理によって離型層を乾燥させてもよく、さらに必要に応じて乾燥工程を加えてもよい。また、触媒を用いて組成物を硬化させ、硬化状の被膜を得る場合には、延伸工程あるいは熱固定処理によって硬化させることができるが、さらに必要に応じて硬化工程を加えてもよい。
水系塗布液をポリエステルフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共に前述した乳化剤を濡れ剤として併用することや界面活性剤を濡れ剤として追添加することが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
[離型フィルムの特性]
本発明においては、後述する試験法における、離型層の表面自由エネルギーが10mN/m以上40mN/m以下の範囲が好ましく、より好ましくは12mN/m以上38mN/m以下、さらに好ましくは14mN/m以上36mN/m、特に好ましくは15mN/m以上35mN/mの範囲である。離型層の表面自由エネルギーが、上限以下であると、付着力が低減されて重剥離化し難くなる。また下限以上であると、離型層表面に塗工されるセラミックシートや樹脂シート等の加工層のはじきによる欠点が生じ難く、ピンホール欠点も生じにくくなる。
[用途]
本発明における離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ製造時や樹脂シートキャスト時等に使用される工程用フィルムとして用いることができる。特に乾燥後の厚みが1μm以下の薄膜樹脂シートを作製しても、濡れ性が良好であるため、加工層のピンホールは低減し、例えば、グリーンシート製造用の離型フィルムに用いた場合に、薄肉の積層セラミックコンデンサの不良率を低減させることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性等の評価方法は以下の通りである。
(1)離型層の塗布均一性
離型フィルムをA4版に切り出し、離型層面を蛍光灯、ハロゲンライトを用いて目視で観察した際に凝集状塗布欠点の個数(A4版1枚あたりの個数)を比較し、以下の基準により評価した。
◎:塗布欠点なし
○:塗布欠点が1~2個
△:塗布欠点が3~5個
×:塗布欠点が6個以上
(2)離型層の表面自由エネルギー
23℃、50%RHの条件下で、24時間調湿したサンプルについて、接触角計(協和界面化学(株)製DMo-501)を使用して、水を滴下し30秒静置した際の静的接触角を測定した。同様にしてエチレングリコール、ヨウ化メチレンの静的接触角をそれぞれ測定し、下記の各液体の表面張力成分を用いて、離型層の表面張力成分に関する下記の連立方程式を立てた(水、エチレングリコール、ヨウ化メチレンのそれぞれの測定液を1、2、3とし、γLDは液体の分散力成分、γLPは液体の極性力成分、γLHは液体の水素結合成分、γLは液体における各表面張力成分の合計値であり、またγSDは離型層の分散力成分、γSPは離型層の極性力成分、γSHは離型層の水素結合成分を表す。またθは接触角を表す。)。
(γSD・γLD1)1/2+(γSP・γLP1)1/2+(γSH・γLH1)1/2=γL1(1+cosθ1)/2
(γSD・γLD2)1/2+(γSP・γLP2)1/2+(γSH・γLH2)1/2=γL2(1+cosθ2)/2
(γSD・γLD3)1/2+(γSP・γLP3)1/2+(γSH・γLH3)1/2=γL3(1+cosθ3)/2
なお、水、エチレングリコール、ヨウ化メチレンのγLD、γLP、γLH、γLは表1の通りである。
次に、上記で求められたγSD、γSPおよびγSHの数値より、下記の式を用いて離型層表面の表面自由エネルギーγSを算出した。
γS=γSD+γSP+γSH
(3)離型層のスミアテスト(耐摩擦性)
離型フィルムの離型面を人差し指で荷重約500gfで一回擦り、離型層の表面の白化状態を目視観察して下記基準で評価した。
○:変化無し
△:若干白化
×:白化
(4)離型層のラブオフテスト(密着性)
離型フィルムの離型面を親指で荷重約500gfで10回擦り、その部分のシリコーン脱落を確認するため、粘着テープ(日東電工(株)製、商品名「31Bテープ」)を貼合わせ、粘着テープの剥離状態を確認して下記基準で評価した。
○:粘着テープの剥離時、剥離変化無し
△:粘着テープの剥離時、若干剥離変化有り
×:粘着テープの剥離時、剥離変化有り
(5)セラミックシート剥離性
チタン酸バリウム(BaTiO、共立マテリアル社製)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学社製)7質量部、ジオクチルフタレート3質量部、分散剤(DISPERBYK-103、ビックケミー社製)3質量部をトルエン:エタノール=1:1(体積比率)の混合溶媒に加え、ボールミルにて分散させ、スラリーを調製した。このスラリーを離型フィルムの離型層上に乾燥後厚みが2μmとなるように均一塗工した後、乾燥させセラミックシートを形成した。セラミックシートが形成された離型フィルムを25mm×150mmに裁断し、セラミックシート側に粘着テープ(日東電工(株)製、商品名「31Bテープ」)を貼合わせ、試験片を作製した。この試験片を23℃、湿度50%条件下で24時間調湿し、次いで引っ張り試験機を用いて剥離角度180°、剥離速度300mm/分でセラミックシートを剥離し、剥離強度を測定した。セラミックシートの剥離強度については以下の指標から優劣を判断した。
◎:剥離強度が1g/25mm未満
○:剥離強度が1g/25mm以上、3g/25mm未満
△:剥離強度が3g/25mm以上、12g/25mm以下
×:剥離強度が12g/25mmを超える、もしくはセラミックシートの破れが生じる。
(6)リサイクル性評価
リサイクル性は、フィルム中の含有する異物のサイズと個数を万能投影機で、投下照射にて20倍に拡大し、50μm以上の最大径を持つ異物の個数をカウントした。測定面積は0.05mとした。
◎:異物個数10個/0.05m未満、使用上問題にならない。
○:異物個数10個/0.05m以上から30個/0.05m未満、若干、平坦性に影響あるが、使用上問題にならない。
△:異物個数30個/0.05m以上から100個/0.05m未満、用途を限定して使用可能である。
×:異物個数100個/0.05m以上、キャスト面の変形が大きく目立ち、使用できない。
(7)数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を測定し、ポリスチレン換算値として算出した。
(8)離型層の厚み
離型フィルムを三角形の小片に切り出した後、コーティングにより、厚み2nmのPt(白金)層を離型層表面に形成した。得られたサンプルを多軸包埋カプセルに固定して、エポキシ樹脂を用いて包埋処理し、ミクロトームULTRACUT-Sを用いて、フィルムの面方向に垂直な方向にスライスして、厚さ50nmの超薄サンプルを得た。次いで、得られた超薄サンプルをグリッドに載台して、2%オスミウム酸により、60℃、2時間の条件で蒸気染色した。蒸気染色後の超薄サンプルを用いて、透過電子顕微鏡LEM-2000により、加速電圧100kVの条件でフィルム断面を観測し、離型層の厚みを測定した。測定は、任意の10点について実施し、それらの平均値を離型層の厚み(単位:nm)とした。
[実施例1]
平均粒子径が0.6μmの炭酸カルシウムの粒子を0.1質量%含むポリエチレンテレフタレート([η]=0.64dl/g、Tg=78℃)を押出機で溶融させて、ろ過精度10μmのフィルターを通し、ダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとした。次いで縦方向に80℃で3.3倍に延伸した後、製品厚みで表2に示す離型層厚みとなるように、製造例1で得られた水系塗布液(水性コーティング組成物)をロールコーターで均一に塗布した。なお、用いた水系塗布液は調製後、24時間以内のものを用いた。
次いで、塗布後のフィルムを110℃で乾燥し、140℃で横方向に4.5倍に延伸し、更に235℃で約10秒間熱固定して、水系塗布液を反応及び固化させてなる離型層を有する離型フィルム(厚み25μm)を得て、その評価を実施した。その評価結果を表2に示す。
なお、製品ロールを採取する際に製品とならなかった離型フィルム部分や欠点等で製品とならなかった離型フィルムを各実施例、比較例毎にフィルム片長径が約5mm以下となるまで粉砕し、溶融して、再生した原料を40質量%使用した。
<製造例1>
(サンプル1A)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(1)のa1が100モル%、b1が0モル%であり、数平均分子量が9000であるシリコーンオイルを96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル1Aの水系乳化液を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径210nmに調整した。
(サンプル2A)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(2)のa2が50モル%、b2が50モル%であり、数平均分子量が3000であるシリコーンオイル96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル2Aの水分散体を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径170nmに調整した。
(水系塗布液)
水系塗布液として、サンプル1Aとサンプル2Aのシリコーンの固形分質量が表2に示す配合量となるように調製し、その他成分としては以下に示す通りとした。シリコーンの合計質量に対して、下記のカップリング剤を3質量%、サンプル1とサンプル2の固形分合計質量に対して60ppmの下記の白金系触媒、並びに水系塗布液質量に対し120ppmの下記の架橋反応抑制剤を混合し、目標の離型層厚みとなるように水系塗布液の固形分濃度を水で希釈し、水系塗布液を調製した。
・カップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(JNC株式会社製、商品名「サイラエースS510」)
・白金系触媒:白金系触媒エマルジョン(ワッカー社製、商品名「CATALYST EM440」)
・架橋反応抑制剤:1-エチニルシクロヘキサノール(Alfa Lancaster社製)
[実施例2~3]
実施例1において、水系塗布液を調製する際に、表2に示すように、サンプル1Aとサンプル2Aの含有量を変えたこと以外は、実施例1と全く同じ条件で離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例1において、サンプル1Aの代わりに、製造例2で製造したサンプル1Bを用いて水系塗布液を調製したこと以外は、実施例1と全く同じ条件で離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。
<製造例2>(サンプル1B)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(1)のa1が100モル%、b1が0モル%であり、数平均分子量が5000であるシリコーンオイルを96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル1Bの水系乳化液を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径190nmに調整した。
[実施例5]
実施例1において、サンプル1Aの代わりに、製造例3で製造したサンプル1Cを用いて水系塗布液を調製したこと以外は、実施例1と全く同じ条件で離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。
<製造例3>(サンプル1C)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(1)のa1が100モル%、b1が0モル%であり、数平均分子量が3000であるシリコーンオイルを96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル1Cの水系乳化液を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径170nmに調整した。
[実施例6]
実施例1において、サンプル1Aの代わりに、製造例4で製造したサンプル1Dを用いて水系塗布液を調製したこと以外は、実施例1と全く同じ条件で離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。
<製造例4>(サンプル1D)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(1)のa1が96モル%、b1が4モル%であり、数平均分子量が7000であるシリコーンオイルを96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル1Dの水系乳化液を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径200nmに調整した。
[比較例1~3]
実施例1~3において、製造例1で得られた水系塗布液の代わりに、製造例5で得られた水系塗布液を用いたこと以外は、実施例1~3と全く同じ条件で離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。
<製造例5>
(サンプル1E)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(1)のa1が97モル%、b1が3モル%であり、数平均分子量が30000であるシリコーンオイルを96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル1Eの水系乳化液を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径200nmに調整した。
(サンプル2B)
容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、式(2)のa2が55モル%、b2が45モル%であり、数平均分子量が7000であるシリコーンオイル96質量%、および界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオコールTD-90」)4質量%からなる原料を水媒体中で機械的に乳化させて、固形分50質量%のサンプル2Bの水分散体を得た。また、乳化の際の撹拌速度と撹拌時間の調整によりエマルジョン粒径を平均粒径190nmに調整した。
(水系塗布液)
水系塗布液として、サンプル1Eとサンプル2Bのシリコーンの固形分質量が表2に示す配合量となるように調製したこと以外は、製造例1と同じ条件で水系塗布液を調製した。
[比較例4]
実施例1において、離型層を塗布しない以外は実施例1と同様に製膜した基材フィルムを作製した。また、固形分比で式(1)のa1が96モル%、b1が4モル%であり、数平均分子量が150000であるシリコーンを88質量%、式(2)のa2が80モル%、b2が20モル%であり、数平均分子量が20000であるシリコーンを9質量%、触媒:CM670(モメンティブ社製)を3質量%含まれるように混合し、必要量白金系触媒を添加し、目標の離型層厚みとなるように塗布液の固形分濃度をメチルエチルケトンとトルエンが70質量%/30質量%の有機溶剤で希釈し、塗布液を調製した。その基材フィルムに塗工機を用いて、塗布液を塗布し離型層として、乾燥を温度130℃、時間30秒で実施し、離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。なお、有機溶剤を用いて離型層を形成させているため、特別な防爆設備が必要となり、乾燥させた有機溶剤の排気処理も実施例と比較し、余計に必要となった。
[比較例5]
離型層を塗布しない以外は実施例と同様に製膜した基材フィルムを作製した。また、固形分比で式(1)のa1が99モル%、b1が1モル%であり、数平均分子量が8000であるシリコーンを88質量%、式(2)のa2が60モル%、b2が40モル%であり、数平均分子量が4000であるシリコーンを9質量%、触媒:CM670(モメンティブ社製)を3質量%3質量%含まれるように混合し、目標の離型層厚みとなるように塗布液の固形分濃度をメチルエチルケトンとトルエンが70質量%/30質量%の有機溶剤で希釈し、塗布液を調製した。その基材フィルムに塗工機を用いて、塗布液を塗布し離型層として、乾燥を温度130℃、時間30秒で実施し、離型フィルムを作製し、前述の評価を行なった。その結果を表2に示す。なお、有機溶剤を用いて離型層を形成させているため、特別な防爆設備が必要となり、乾燥させた有機溶剤の排気処理も実施例と比較し、余計に必要となった。
表2に示すように、実施例1~6では、離型層の剥離性と濡れ性を両立させ易く、離型層の塗布均一性とリサイクル性が良好な離型フィルムが得られた。これに対して、シリコーンの分子量が大きい比較例1~3では、塗布均一性の悪化、セラミックシート剥離性が重剥離化する傾向があり、リサイクル性も悪化していた。溶剤型の塗布液を用いてオフラインで離型層を形成した比較例4~5では、離型層の塗布均一性と離型層の密着性が低下し、特にシリコーンの分子量が大きい比較例4ではリサイクル性も悪化していた。
本発明の離型フィルムは、離型層の塗布均一性と剥離性が高く、比較的濡れ性も良く、各種工程用フィルムとして使いやすく、リサイクル性もあり、環境に対する負荷を下げることもでき、産業上の利用価値は極めて高い。

Claims (7)

  1. 基材フィルムと、水性コーティング組成物を反応及び固化させてなる離型層と、を有する離型フィルムであって、
    前記水性コーティング組成物は、分子内に2つ以上のアルケニル基を有する数平均分子量1000以上10000未満のアルケニル基含有シリコーン、及び、分子内に2つ以上のSi-H基を有する数平均分子量1000以上5000以下のSi-H基含有シリコーンを含む、離型フィルム。
  2. 前記アルケニル基含有シリコーンが、下記一般式(I)で表される、請求項1に記載の離型フィルム。
    (一般式(I)中、Rは、同一又は異なっていてもよい、炭素数2以上8以下のアルケニル基、又はアルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、Rのうち2つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、[SiO]b1で示すケイ素原子に結合するRのうち1つ以上は炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、Rは、同一又は異なっていてもよい、アルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、a1+b1を100モル%とするとき、a1は90モル%以上100モル%以下、b1は0モル%以上10モル%以下である。)
  3. 前記Si-H基含有シリコーンが、下記一般式(II)で表される、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
    (一般式(II)中、Rは、同一又は異なっていてもよい、アルキル基もしくはアリール基を含む炭素数1以上16以下の1価の炭化水素基であり、a2+b2を100モル%とするとき、a2は30モル%以上90モル%以下、b2は10モル%以上70モル%以下である。)
  4. 前記水性コーティング組成物は、前記アルケニル基含有シリコーンの100質量部に対して、前記Si-H基含有シリコーンを1質量部以上50質量部以下含む、請求項1~3いずれか1項に記載の離型フィルム。
  5. 前記離型層は、結晶配向が完了する前の基材フィルムに前記水性コーティング組成物を塗布し、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理をして、結晶配向を完了させることによって形成されている、請求項1~4いずれか1項に記載の離型フィルム。
  6. 前記基材フィルムが、ポリエステルフィルムである、請求項1~5いずれか1項に記載の離型フィルム。
  7. 前記離型フィルムが、積層セラミックコンデンサ用離型フィルム、又は樹脂シート用離型フィルムである、請求項1~6いずれか1項に記載の離型フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024058163A1 (ja) * 2022-09-16 2024-03-21 東洋紡株式会社 離型フィルム及びその製造方法

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