JP5495324B2 - 離型性ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、離型性ポリエステルフィルムに関する。
セラミック積層コンデンサに用いられるセラミックグリーンシートを成形するためのキャリアフィルムとして、離型フィルムが使用される。また、かかる離型フィルムの基材としては、寸法安定性、耐熱性の点でポリエステルフィルムが使用される。
近年、セラミック積層コンデンサの小型化・大容量化が進むに伴い、セラミックグリーンシートが益々薄膜化する傾向にあり、例えば、乾燥後の厚みが1μm以下のセラミックグリーンシートが用いられるようになってきた。一方、かかる薄膜化に伴い、セラミックグリーンシートの剛性が低くなり、従来の離型フィルムの剥離力では、セラミックグリーンシートを剥離する際に破れが生じてしまう場合があり、問題となっている。
そこで、離型フィルムの剥離力を軽くすることが求められており、例えば特許文献1では、シリコーンの架橋構造を制御することにより剥離力を調整する方法が提案されている。しかし、このように離型層の架橋構造を制御する方法は、特殊構造を有するポリマーや架橋剤の新たな設計が必要となったり、紫外線照射や電子線照射等の際により強力なエネルギーが必要となったりするため、コストが高くなるという問題がある。また、特許文献2では、架橋構造を有するシリコーン樹脂と、架橋構造を有さないシリコーン樹脂とからなる離型層が提案されている。しかし、この方法では、離型層を形成するための塗布剤の溶媒が有機溶剤であるため、塗工や乾燥時の有機溶剤処理設備が大掛かりになり、また揮発させた有機溶剤処理のランニングコストもかかり、結果としてコストが高くなるという問題がある。さらに、作業環境面の問題や、有機溶剤爆発火災等の安全面等の問題がある。また、特許文献3のごとく、有機溶剤を使用しない方法も提案されているが、この方法では、塗剤の粘度上昇により取り扱いが煩雑になったり、均一塗工がしにくいといった問題がある。また、特許文献4には、水系のシリコーンエマルジョンによる方法が提案されているが、この方法では、エマルジョンの安定性が悪く、均一塗工できないという問題がある。セラミックグリーンシートの薄膜化においては、離型層表面に非常に高い均一性が要求されており、これらの方法では不十分である。
特開2006−7689号公報 特開2008−254207号公報 特開2003−192987号公報 特表2009−518499号公報
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、セラミック積層コンデンサに用いられる薄膜セラミックグリーンシートを成形するためのキャリアフィルムとして好適に用いることのできる、適度な剥離強度を有し、かつ離型層の均一性に優れた離型性ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、特定のシリコーンを用い、かつかかるシリコーンの乳化をノニオン系乳化剤によって行ない、それを用いて得られた離型層によって、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の構成を採用するものである。
1.ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、反応基を有するシリコーン及び反応基を有さないシリコーンをそれぞれノニオン系乳化剤によって乳化されたエマルジョンとした後、それらを混合して得られる塗布液を塗布し、乾燥、硬化して得られる離型層を有し、離型層表面における剥離強度が0.2〜20g/10mmである離型性ポリエステルフィルム。
また本発明は、以下の構成を包含する。
2.ノニオン系乳化剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである上記1に記載の離型性ポリエステルフィルム。
3.反応基を有さないシリコーンがポリジメチルシロキサンであり、粘度が100〜500,000cpsの範囲であり、離型層中に、反応基を有するシリコーン100質量%に対して1.0〜10.0質量%含有される上記1または2に記載の離型性ポリエステルフィルム。
4.セラミック積層コンデンサ用のセラミックグリーンシート成型用である上記1〜3のいずれか1に記載の離型性ポリエステルフィルム。
また本発明は、以下の製造方法を包含する。
5.上記1〜4のいずれか1に記載の離型性ポリエステルフィルムを製造するに際して、反応基を有するシリコーン及び反応基を有さないシリコーンをそれぞれノニオン系乳化剤によって乳化してエマルジョンとし、次いでそれらエマルジョンを混合して塗布液とし、該塗布液をポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に塗布し、乾燥、硬化して離型層を形成する離型性ポリエステルフィルムの製造方法。
本発明によれば、適度に低い剥離強度を有し、かつ離型層の均一性に優れた離型性ポリエステルフィルムを提供することができる。このような特性を具備する本発明の離型性ポリエステルフィルムは、セラミック積層コンデンサに用いられる薄膜セラミックグリーンシートを成形するためのキャリアフィルムとして好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステルフィルム]
(ポリエステル)
本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
ポリエステルは、これらポリエステルのうちの1つを主たる成分とする共重合体であってもよく、またはこれらポリエステルのうちの少なくとも2つをブレンドしたものであってもよい。ここで「主たる成分」とは、ポリエステルの繰り返し構造単位のモル数を基準として80モル%以上であるであることを示し、好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。また、共重合成分またはブレンド成分は、ポリエステルの繰り返し構造単位のモル数を基準として20モル%以下であり、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。本発明においては、力学的物性と成形性のバランスがよいので、ポリエチレンテレフタレートおよびこれを主たる成分とする共重合体、または、ポリエチレン2,6−ナフタレートおよびこれを主たる成分とする共重合体が好ましく、ホモのポリエチレンテレフタレートまたはホモのポリエチレン2,6−ナフタレートが特に好ましい。
(粒子)
ポリエステルフィルムは、ロールとして巻き取られるため、フィルム表面にはある程度の易滑性が必要であり、そのためフィルム内部に粒子を含有することが好ましい。含有する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。あるいは、耐熱性有機粒子の別の例として、シリコーン、ポリスチレン、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等からなる粒子を用いてもよい。さらには、ポリエステル製造工程における触媒等の金属化合物の一部を、沈殿、微分散させた析出粒子をそのまま用いることもできる。粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の形状の粒子を用いてもよい。また、粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。なお、ポリエステルフィルムが含有する粒子は、1種単独であっても、必要に応じて2種類以上であってもよい。
ポリエステルフィルムが含有する粒子の平均粒径としては、0.1〜1μmを満足することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.8μm、特に好ましくは0.5〜0.8μmの範囲である。平均粒径がこの範囲であると、易滑性と表面平滑性とに同時に優れ、またこれらのバランスに優れる。平均粒径が小さすぎる場合は、易滑性に劣る傾向にあり、巻き取り性が低くなる傾向にある。他方、大きすぎる場合は、フィルム表面が粗くなりすぎて、セラミックグリーンシート生産時にピンホールが発生しやすくなる傾向にある。
粒子の含有量としては、フィルムが単層構造の場合はポリエステルフィルム全体の質量に対して、またフィルムが後述するような積層構造の場合は粒子を含有する層の質量に対して、0.01〜2質量%を満足する範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%、特に好ましくは0.05〜0.2質量%の範囲である。含有量がこの範囲であると、易滑性と表面平滑性とに同時に優れ、またこれらのバランスに優れる。粒子の含有量が少なすぎる場合は、フィルムの易滑性に劣る傾向にあり、他方、多すぎる場合は、フィルム表面が粗くなりすぎて、セラミックグリーンシート生産時にピンホールが発生しやすくなる傾向にある。
(積層構造)
本発明におけるポリエステルフィルムは、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、単層構造であってもよいし、積層構造(例えば、A/B、A/B/A、A/B/C、A/B/A’等)であってもよく、積層構造である場合には、2層、3層構造以外にも、4層またはそれ以上の多層であっても良い。薄膜セラミックグリーンシート製造用として用いる場合は、ピンホール発生の観点から、離型層表面はより平坦である程好ましく、離型層を形成する側の層が実質的に粒子を含まない層で、その反対側に粒子が添加された易滑性を有する層を有する異種表面構成(例えばA/B、A/B/C等)が、特に好ましい。このような態様によって、易滑性を付与しながら、ピンホール発生を抑制することができる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
ポリエステルフィルムは、例えば次の方法で製造することができる。すなわち、ポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて非晶未延伸フィルムとし、縦方向(連続製膜方向のこと。以下、長手方向またはMD方向と称することがある。)および横方向(連続製膜方向と直交する方向のこと。以下、幅方向またはTD方向と称することがある。)に延伸する。縦方向の延伸は、例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で、縦方向に例えば2.0〜5.0倍、好ましくは2.5〜4.0倍に延伸する。横方向の延伸は、例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で、横方向に例えば2.0〜6.0倍、好ましくは3.0〜5.5倍に延伸する。なお、延伸方法は、逐次にそれぞれの方向に延伸する方法、または同時に縦、横方向に延伸する方法のどちら方法でも構わない。
なお、フィルムの延伸後には熱固定処理を行なうことが好ましい。熱固定処理は、最終延伸温度より高く融点以下の温度で1〜60秒の時間行なうことが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレートフィルムでは、150〜250℃の温度、2〜60秒の時間の範囲で選択して熱固定することが好ましい。その際、20%以内の制限収縮下もしくは伸長下、または定長下で行なっても良いし、また、2段以上で行なってもよい。
(厚み)
ポリエステルフィルムの厚みは、ハンドリング性、成形性、透明性、強度の観点から、好ましくは12〜100μm、さらに好ましくは19〜50μmである。
[離型層]
本発明における離型層は、反応基を有するシリコーンおよび反応基を有さないシリコーンを含有する。また、これらシリコーンは、それぞれ、ノニオン系乳化剤によって乳化されたエマルジョンとして用いられる。以下、本発明における離型層を構成する組成物について説明する。
(反応基を有するシリコーン)
本発明における反応基を有するシリコーンとしては、付加反応型、縮合反応型、熱硬化型等で反応し得るシリコーンが挙げられ、更に好ましくは、塗膜凝集力を上げることができるという観点から、付加型反応可能な反応基を有するシリコーンである。付加型反応可能なシリコーンとしては、構造中に不飽和炭化水素基を有するシリコーンと水素基を有するシリコーンがあり、これらの混合物を用いる。塗布液のポットライフをより延長化するため、不飽和炭化水素基と水素基は同一の分子中に存在しないことが好ましい。
不飽和炭化水素基を有するシリコーンは、一般式R SiO(4−a−b)/2で示される構造ユニットを有するシロキサンポリマーである。式中のRはビニル基、ヘキセニル基などの炭素数2〜8の1価不飽和炭化水素基、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基またはフェニル基、トリル基などのアリール基などから選択される炭素数1〜16の1価飽和炭化水素基であり、aは1〜3、bは0〜2であって、a+b≦3を満たす整数である。このシリコーンは直鎖状、分岐鎖状構造のいずれでもよく、また部分的に交差結合を有するものでもよく、さらにこれらの混合物であってもよい。また適度に低い剥離力得るためには、R中の80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
また、このシリコーンに含まれる1価不飽和炭化水素基は1分子中に少なくとも2個必要であるが、全ケイ素原子に対し、不飽和炭化水素基を有するケイ素原子が0.05モル%未満では組成物の硬化速度が遅く実用的でなく、また20モル%を超えるとポットライフが短くなる傾向にあり、0.05〜20モル%の範囲が好ましい。
水素基を有するシリコーンは、一般式R SiO(4−c−d)/2で示される構造ユニットを有するシロキサンポリマーである。式中のRはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基またはフェニル基、トリル基などのアリール基などから選択される炭素数1〜16の1価飽和炭化水素基であり、cは0〜2、dは1〜3であって、c+d≦3を満たす整数である。硬化特性から、1分子中に少なくとも3個、好ましくは5個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有する。このシリコーンは直鎖状、分岐鎖状構造のいずれであってもよく、また、塗膜凝集力を上げるためにR中の50モル%以上がメチル基であることが好ましい。
不飽和炭化水素基を有するシリコーンと水素基を有するシリコーンの好ましい混合比としては、それぞれの反応基の含有量に応じて、残存反応基を少なくし、適度に低い剥離力得るために、(不飽和炭化水素基のモル数)/(水素基のモル数)が0.1〜2の範囲が好ましく、0.3〜1.5の範囲がより好ましい。
(反応基を有さないシリコーン)
本発明における反応基を有さないシリコーンとしては、一般式R SiO(4−e)/2で示されるシロキサンポリマーである。式中のRはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基またはフェニル基、トリル基などのアリール基などから選択される炭素数1〜16の1価飽和炭化水素基であり、eはe≦3を満たす正の整数である。このシリコーンは、直鎖状、分岐鎖状構造のいずれであってもよく、また、適度に低い剥離力得るために、R中の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。特に、ポリジメチルシロキサンであることが好ましい。
反応基を有さないシリコーンは、耐熱性、乳化のし易さ等から、粘度が100から500,000cpsの範囲であることが好ましい。粘度が低すぎると、分子量が小さくなり、耐熱性が低いため、離型層として耐久性が低くなり好ましくない。他方、粘度が高すぎると、乳化が難しくなり、エマルジョンの粒径が大きくなる傾向にあり、塗布均一性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、粘度は、200〜10000cpsがより好ましく、500〜2000cpsがさらに好ましい。
本発明において、反応基を有するシリコーン100質量%に対する反応基を有さないシリコーンの混合率は、1.0〜10.0質量%であることが好ましい。混合率が上記数値範囲にあると、剥離力をより好ましい態様にすることができる。混合率が少なすぎると、適度に低い剥離力が得難くなる傾向にある。他方、混合率が多すぎると、塗膜の凝集力が低下し、後述する残留接着率が低下する傾向にある。このような観点から上記混合率は、より好ましくは1.0〜5.0質量%、さらに好ましくは1.5〜2.5質量%である。
(ノニオン系乳化剤)
本発明においては、上記反応基を有するシリコーンおよび反応基を有さないシリコーンは、乳化剤を用いてエマルジョンとして用いられる。このようにすることで離型層を形成するための塗布液を水系とすることができる。本発明においては、エマルジョンの安定性、および耐せん断性を高くし、離型層の均一性を向上するために、かかる乳化剤としてはノニオン系乳化剤を用いる。また、ノニオン系乳化剤を用いることにより、乳化剤によるシリコーンの付加反応等の硬化反応への影響を抑制し、離型層の剥離力のバラツキや重剥離化を抑制することができ、適度に低い剥離力とすることができる。これに対して、イオン性を有する乳化剤を用いた場合は、シリコーンの付加反応等の硬化反応に影響を与える可能性があり、また塗膜中で局在化する場合には、例えば、表面にブリードアウトして、剥離力に影響を与える場合があり、好ましくない。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、高級アルコール、高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸とアルコールとのアルキレンオキシド付加体のエステル体、アルカノールアミドのアルキレンオキシド付加体、ソルビタンエステルのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸グリセリドのアルキレンオキシド付加体等のアルキレンオキシド付加型等が挙げられる。これらは1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。ここで、アルキレンオキシドとは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドの単独、若しくは混合を意味し、混合の場合、ブロック、ランダムの付加形式を問わないが、ノニオン系乳化剤のHLB値が後述する範囲となるようにするのが好ましい。
本発明におけるノニオン系乳化剤は、HLB値が、好ましくは8〜18、さらに好ましくは10〜15である。ここで、HLB値は、Griffinの計算式により算出される値である。HLB値が上記数値範囲にあると、乳化の際の分散力やエマルジョンの安定性により優れる傾向にある。それによって、塗布均一性の向上効果を高くすることができる。HLB値が8未満、あるいは、HLB値が18を越えると、乳化分散力やエマルジョンの安定性が低下する傾向にある。HLB値が上記数値範囲にある乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等が好ましく挙げられる。
本発明においては、上記のようなノニオン系乳化剤は、反応基を有するシリコーンまたは反応基を有さないシリコーンのそれぞれ100質量%に対して、1.0〜10.0質量%混合してシリコーンを乳化することが好ましい。混合率が少なすぎると、塗工後の塗膜均一性の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、混合率が多すぎると、塗膜の凝集力が低下し、後述する残留接着率が低下する傾向にある。このような観点から、かかる混合率は、より好ましくは1.0〜5.0質量%、さらに好ましくは1.5〜2.5質量%である。
(白金系触媒)
その他、本発明におけるシリコーンが付加型反応系である場合は、白金系触媒が必要である。この白金系触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、塩化白金酸等が挙げられる。この白金系触媒は予めノニオン系乳化剤を使用して、乳化したものを使用しても良く、または、シリコーンの乳化の時に同時に乳化して、使用しても良い。この白金系触媒の使用量は、通常、シリコーン成分量に対して、1〜1000ppmの範囲内が好ましいが、反応性、コストの面で、所望の反応速度等に応じて、増減させることができる。
なお、必要に応じて白金系触媒の活性を抑制し、ポットライフを調整させる目的で、各種の有機窒素化合物、有機りん化合物、アセチレン系化合物などの活性抑制剤を添加することも出来る。
(乳化)
これら成分の乳化は公知の方法を用いることができ、例えば、予め作成したシリコーンと乳化剤と(必要に応じて、その他成分)をホモジナイザー、アジホモミキサー、ウルトラプラネタリーミキサー等を使用して、水媒体中に機械乳化することができる。
[離型層の製造方法]
本発明において離型層を構成する上記組成物は、これら組成物を含む塗布液として用いられ、かかる塗布液をポリエステルフィルムの離型層を形成したい表面に塗布し、乾燥、硬化して離型層を形成する。かかる塗布液は、必須成分としての反応基を有するシリコーンをノニオン系乳化剤によって乳化したエマルジョン、必須成分としての反応基を有さないシリコーンをノニオン系乳化剤によって乳化したエマルジョン、任意成分として白金系触媒、および後述する任意成分を混合して得られる。
本発明における塗布液は、水を媒体として、水分散液或いは乳化液の水性塗布液の形態で使用されることが好ましい。ここで水性塗布液は、媒体において水が70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。このような水性塗布液は、作業環境や安全の面で有機溶剤系よりも好ましい。かかる塗布液には、必要に応じて、前記組成物に着色剤、濡れ剤、紫外線吸収剤、微粒子等の任意成分を添加することができる。
本発明に用いる塗布液の固形分濃度は、該塗布液の質量を基準として、通常20質量%以下、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜5質量%である。固形分濃度が上記数値範囲にあると、ポリエステルフィルムへの濡れ性、および塗布液の安定性に優れ、塗布均一性の向上効果を高くすることができる。固形分濃度が下限に満たないと、ポリエステルフィルムへの塗れ性が低くなる傾向にある。また固形分濃度が上限を超えると、塗液の安定性が低くなる傾向にあり、コーターにおける剪断等でエマルジョンの破壊等が発生し、塗布均一性の向上効果が低くなる傾向にある。
塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに塗布液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施す、いわゆるインラインコーティングが好ましい。
塗布液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共に前述のような乳化剤を濡れ剤として併用することが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗布方法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
(離型層の厚み)
離型層の厚みは、乾燥後の厚みとして、好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.02〜0.1μm、特に好ましくは0.02〜0.06μmである。離型層の厚みが上記数値範囲にあると、離型性の向上効果を高くすることができ、また、塗布の均一性の向上効果を高くすることができる。厚みが下限値に満たないと、離型性の向上効果が低くなる傾向にあり、また上限を超えると、塗液を高濃度にしたり、塗工量を増やしたりする必要があるため、塗布がし難くなる傾向にあり、塗布均一性の向上効果が低くなる傾向にある。
<離型性ポリエステルフィルムの特性>
(剥離強度)
本発明の離型性ポリエステルフィルムは、離型層表面における後述の剥離強度が0.2〜20g/10mmである。剥離強度が上記数値範囲にあると、セラミックグリーンシート製造時において、搬送工程においてセラミックシートが容易に剥離してしまうことを抑制し、かつ、剥離時には、セラミックグリーンシートの破断を抑制することができる。剥離強度が低すぎると、離型フィルムにセラミックシート等を積層した積層シートを搬送する際や巻き取る際等において、セラミックシート等が離型フィルムから剥離してしまうことがある。一方、剥離強度が高すぎると、セラミックシート等を剥離分離して使用する際に剥離が困難となり、またセラミックシートに破れが発生することがあるため好ましくない。このような観点から、剥離強度は、好ましくは0.2〜2g/10mm、より好ましくは0.2〜1g/10mmである。
上記のような剥離強度は、例えば、乳化剤としてノニオン系乳化剤を用いたり、反応基を有するシリコーンにおける反応基の割合や、反応基を有するシリコーンと反応基を有さないシリコーンの混合率、離型層の厚み、乾燥、硬化条件等を調整することによって達成できる。例えば、乾燥、硬化条件を強化すると剥離強度は低くなる傾向にある。
(残留接着率)
本発明の離型性ポリエステルフィルムは、残留接着率が、好ましくは80%以上である。残留接着率が上記数値範囲にあると、セラミックシート等への移行成分を抑制することができる。残留接着率が低すぎると、移行性成分が多くなり、例えば、セラミックシートへ、離型層成分が移行し、積層セラミックコンデンサの特性に影響を与えることがあり、好ましくない。このような観点から、残留接着率は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは94%以上である。
上記のような残留接着率は、例えば反応基を有するシリコーンにおける反応基の割合や、反応基を有するシリコーンと反応基を有さないシリコーンの混合率、シリコーンを乳化時のノニオン系乳化剤の混合率、離型層の厚み、乾燥、硬化条件等を調整することによって達成できる。例えば、乾燥、硬化条件を強化したりすると残留接着率は高くなる傾向にある。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、各種物性は下記の方法により評価した。またwt%は質量%を表わす。
(1)シリコーンの粘度
B型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、JIS K5600−2−5に準じて、乳化前のシリコーンの粘度を測定した。
(2)塗布層厚み
包埋樹脂でフィルムを固定し、その断面をミクロトームで切断してフィルム断面を観測できるようにしたものを、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて観測し、離型層の厚みを測定した。
(3)剥離強度
離型層表面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B)を貼り合わせ、5kgの圧着ローラーで圧着し20時間放置後、離型層と粘着テープとの剥離強度(剥離角度180度、剥離速度300mm/分、単位:g/10mm幅)を引張試験機にて測定した。
(4)残留接着率
ポリエステル粘着テープ(日東電工製、No.31B)を、JIS G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS304)に貼り付けた後の剥離強度を測定し、基礎接着力(f0)とした。また、前記ポリエステル粘着テープを離型性ポリエステルフィルムの離型層表面に5kgの圧着ローラーで圧着し、30秒間維持した後粘着テープを剥がし、この剥がした粘着テープを上記のステンレス板に貼り付けた後の剥離強度を測定し、残留接着力(f)とした。得られた基礎接着力(f0)と残留接着力(f)から下記式を用いて残留接着率を求めた。なお、剥離角度はいずれも180度、剥離速度は300mm/分とした。
残留接着率(%)=(f)/(f0)×100
(5)塗布均一性
離型層の塗布均一性について、離型層表面を反射光下、目視で観測し、下記の判定基準にて評価した。
A: 塗布欠点はなく、均一な塗布である。
B: 塗布欠点が若干あり、均一な塗布とはいえない。
[実施例1、2、比較例1〜3]
平均粒径0.7μmの炭酸カルシウムの粒子0.1質量%を含む溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.64dl/g、Tg=78℃)を、ダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.6倍に延伸した後、表1に示す固形分比率となるように各成分を混合して調製した水性塗布液(固形分濃度3質量%の水分散体)をフィルムの表面に、ロールコーターで均一に塗布した。
次いで、この塗布フィルムを115℃で乾燥し、145℃で横方向に4.5倍に延伸し、更に230℃で熱固定して離型層を硬化し、厚さ38μmの離型性ポリエステルフィルムを得た。得られた離型性ポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
[比較例4]
水性塗布液を表1のとおりとする以外は、実施例1と同様にして離型性ポリエステルフィルムを得ようとしたところ、塗布工程において水性塗布液のエマルジョン破壊が発生し、塗布が出来ず、離型性ポリエステルフィルムを得ることができなかった。
Figure 0005495324
なお、表1における各成分は以下のとおりに製造した。
シリコーン1:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、下記式(1)で表わされる不飽和炭化水素基を有するシリコーン98質量%と、ノニオン系乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB値13.6、花王株式会社製、商品名「エマルゲン109P」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分20質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
Figure 0005495324
シリコーン2:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、下記式(2)で表わされる水素基を有するシリコーン98質量%と、ノニオン系乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB値13.6、花王株式会社製、商品名「エマルゲン109P」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分10質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
Figure 0005495324
シリコーン3:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、下記式(3)で表わされる反応基を有さないシリコーン(粘度1000cps)98質量%と、ノニオン系乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB値13.6、花王株式会社製、商品名「エマルゲン109P」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分30質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
Figure 0005495324
シリコーン4:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、上記式(1)で表わされる不飽和炭化水素基を有するシリコーン98質量%と、イオン系乳化剤としてのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名「ペレックスSS−H」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分20質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
シリコーン5:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、上記式(2)で表わされる水素基を有するシリコーン98質量%と、イオン系乳化剤としてのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名「ペレックスSS−H」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分10質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
シリコーン6:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、上記式(3)で表わされる反応基を有さないシリコーン(粘度1000cps)98質量%と、イオン系乳化剤としてのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名「ペレックスSS−H」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分30質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
シリコーン7:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、上記式(1)で表わされる不飽和炭化水素基を有するシリコーンのみで、水媒体中で機械乳化させて、固形分20質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
シリコーン8:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、上記式(2)で表わされる水素基を有するシリコーンのみで、水媒体中で機械乳化させて、固形分10重量%のシリコーンエマルジョンを得た。
シリコーン9:容器内全体を攪拌できる乳化装置(株式会社エヌ・ピー・ラボ製、装置名「ウルトラプラネタリーミキサー」)を用いて、下記式(4)で表わされる不飽和炭化水素基を有するシリコーン98質量%と、ノニオン系乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB値13.6、花王株式会社製、商品名「エマルゲン109P」)2質量%とを水媒体中で機械乳化させて、固形分20質量%のシリコーンエマルジョンを得た。
Figure 0005495324
白金系触媒:白金系触媒エマルジョン(信越化学工業株式会社製 商品名「CAT−PM−10A)を用いた。
濡れ剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製 商品名「エマルゲン109P」)を用いた。
本発明の離型性ポリエステルフィルムは、塗工液の安定性や耐せん断性が優れているため、塗布均一性が良く、簡便かつ安定的に生産でき、しかも剥離特性が適正に調整され、セラミック積層コンデンサ製造時に使用する離型フィルムとして、特に薄膜グリーンシート成形用離型フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、反応基を有するシリコーン及び反応基を有さないシリコーンをそれぞれノニオン系乳化剤によって乳化されたエマルジョンとした後、それらを混合して得られる塗布液を塗布し、乾燥、硬化して得られる離型層を有し、離型層表面における剥離強度が0.2〜20g/10mmである離型性ポリエステルフィルム。
  2. ノニオン系乳化剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項1に記載の離型性ポリエステルフィルム。
  3. 反応基を有さないシリコーンがポリジメチルシロキサンであり、粘度が100〜500,000cpsの範囲であり、離型層中に、反応基を有するシリコーン100質量%に対して1.0〜10.0質量%含有される請求項1または2に記載の離型性ポリエステルフィルム。
  4. セラミック積層コンデンサ用のセラミックグリーンシート成型用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の離型性ポリエステルフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の離型性ポリエステルフィルムを製造するに際して、反応基を有するシリコーン及び反応基を有さないシリコーンをそれぞれノニオン系乳化剤によって乳化してエマルジョンとし、次いでそれらエマルジョンを混合して塗布液とし、該塗布液をポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に塗布し、乾燥、硬化して離型層を形成する離型性ポリエステルフィルムの製造方法。
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