以下、本発明の実施例を示す図面に基づいて説明する。その他の構成については、冷蔵庫の一般的な技術が適用できることはいうまでもない。
図1は、製氷装置を備える冷蔵庫の正面図である。冷蔵庫1は、冷蔵室2、左扉3L、右扉3R、製氷室4、製氷室扉5、冷凍室6、冷凍室扉7、冷凍室8、野菜室9等から構成される。冷蔵庫1は、最上段が冷蔵室2、冷蔵室2の扉が観音開きで、左扉3L、右扉3Rを備え、その下の段が製氷室4、製氷室扉5、冷凍室6、冷凍室扉7、その下の段が引き出し式の冷凍室8、最下段が引き出し式の野菜室9である。製氷室4内部の上側には、製氷装置10がある。製氷装置10で作られた氷を蓄える氷容器10Aが製氷装置10の真下にある。不図示の圧縮機と熱交換器を含む冷凍サイクルが冷気を生成し、その冷気がダクトを通じて各室に分配され、各室において必要とされる冷蔵温度又は冷凍温度が得られる。
図2は、冷蔵庫1の左側面方向から見た製氷装置10の断面図である。図において、左向きを示す矢印が奥側であり、右向きを示す矢印が扉5側である。
製氷室4の奥の壁に、製氷室4に冷気を吹き込むためのダクト11が形成されている。ダクト11の上端から前方に、製氷皿ケーシング12が延び出す。製氷皿ケーシング12は、製氷皿20で製造した氷を落とすため、下面が開口している。ダクト11には、製氷皿ケーシング12の内部に向けて、冷気吐出口13が形成されている。冷気吐出口13は、上下に2分割され、上の部分は、製氷皿20の冷気吐出口13から見て遠方部分を指向する遠方用吐出口13aとなっている。下の部分は、製氷皿20の冷気吐出口13から見て近傍部分を指向する近傍用吐出口13bとなっている。遠方用吐出口13aからの吐出風量は、近傍用吐出口13bからの吐出風量より小に設定されている。これは、例えば、遠方用吐出口13aより近傍用吐出口13bを大きくしている。
遠方用吐出口13aと近傍用吐出口13bを設けることにより、製氷皿20の特定の製氷セル21に冷気が集中するということがなく、各製氷セル21とも均等に凍結を進めることができる。遠方用吐出口13a、近傍用吐出口13bから製氷皿20の上面に向かって流れる冷気は、それぞれ略水平方向を示す矢印A、BとCの方向に流れる。
製氷皿20は、低温でも弾性を失わないポリプロピレンなどの合成樹脂により成型される。製氷皿20の表面に発生する静電気により吸引された微粒子も透明氷の生成の妨げとなる。そのため、静電気が発生しにくい材料、例えばシリコーン配合樹脂や帯電防止剤を練り込んだ樹脂で製氷皿20を成型したり、成型後の製氷皿20に帯電防止剤を塗布したりするなどの対策を施すことが望ましい。
製氷皿20は、断面台形の氷を製造する製氷セル21を計8個備える。8個の製氷セル21は2列4行の形に並び、そのため製氷皿20は平面形状が細長いものになっている。このように細長い製氷皿20を、その長手方向を冷蔵庫1の奥行方向に一致させる形で配置する。製氷セル21も製氷皿20と同様に水を入れる開口部の平面形状が細長いものになっている。製氷セル21の外側面21aには、断熱材27が貼り付けられている。断熱材27の材料は、軟質のポリスチレン樹脂発泡体である。なお、ポリスチレン樹脂発泡体に限らずポリエチレン樹脂発泡体等の断熱できる樹脂発泡体であればよい。
樹脂発泡体である断熱材27の表面は、水を通さないなめらかな薄い表面層、すなわちスキン層で覆ってもよい。断熱材は、スキン層で覆われることにより、断熱材27の内部に水や水蒸気が入るのを防止でき、かつ丈夫で弾力性もよいものとなる。
製氷皿20の長手方向の一端には支持軸22が形設され、他方の端にはソケット部23が形設されている。支持軸22は、製氷皿ケーシング12に回転自在に支持される。
図3は、図2と直角の方向で断面にした、製氷装置の垂直断面図である。
ソケット部23は、製氷皿ケーシング12の内部に設けた離氷装置24の軸に結合し、離氷装置24により支持される。支持軸22とソケット部23は、共通の水平軸線上に配置されている。離氷装置24は、モータと減速装置を備え、製氷皿20に、前記水平軸線を回転軸とする一定角度範囲の回転を与える。
製氷皿20の下面には、2列に並んだ製氷セル21の間の位置に、サーミスタ25が配置される。サーミスタ25は、製氷セル21の壁を隔てて製氷セル21の内部の温度を検知する。
サーミスタ25は、サーミスタカバー26に固定されている。サーミスタ25の上にサーミスタ保護シーラ30を重ね、その上にサーミスタカバー26を重ね、固定手段により、サーミスタ25は機械的に固定されている。
風防板45とカバー34の間には、製氷皿20からできた氷を取り外す離氷のため、製氷皿20がねじられても相互接触を生じないだけの隙間47が設けられている。製氷皿20の下面には、サーミスタ25に加えて、ヒータ31が配置される。各製氷セル21の、上下反転状態における頂点部分には、ヒータ31を受け入れる平行リブ32が形成されている。製氷皿20の下面は、カバー34で覆われている。カバー34の貫通穴からバネ取付リブ41が突き出ている。
図4は、上下反転状態の製氷皿と、それに組み合わせられるヒータ及びカバーの斜視図である。
ヒータ31は、発熱線をシリコーン樹脂で被覆したものであり、製氷皿20のねじりに追随できるよう、全体が柔軟に仕上げられている。ヒータ31を受け入れる平行リブ32は、2個のリブを所定間隔で平行に配置したものであり、ヒータ31をすきまばめの形で受け入れられるようにリブ間の間隔が設定されている。リブ間の間隔をこのように設定するのは、製氷皿20がねじられたとき、ヒータ31がある程度自由に動き得るようにするためである。
ヒータ31は、製氷皿20の長手方向中心線の左右に対称形状を描くように引き回されている。実施形態では、全体形状がほぼU字形となっている。Uの字の開放端となる箇所に1対の給電線33が接続される。
ヒータ31は、設計発熱量が小さいので、ごく細い発熱線をガラス繊維の芯に巻き付けた構造であり、巻き付きが締まる方向にねじられたりすると発熱線が切れやすい。そのため、前述のようにヒータ31がある程度自由に動き得るようにする他、ヒータ31の全体的な引き回しの形状も、発熱線に極力無理な力がかからないような形状とされる。
ヒータ31は、平行リブ32に入れ、製氷皿20の下面に密着させた。次に、製氷皿20の下面はカバー34で覆う。カバー34は、製氷皿20の下面部分に冷気が侵入するのを防ぎ、各製氷セル21間の温度分布を均一化すると共に、ヒータ31を平行リブ32の中に押しとどめる役割を担うものである。
カバー34は、長方形のトレイ形状であり、一端には支持軸22を通すリング35が形成されている。カバー34は、リング35を支持軸22に嵌合させた上で、2本のビス36と、1個のバネ37により製氷皿20に取り付けられる。カバー34の取り付けは、製氷皿20の動きを束縛するような堅固なものではなく、離氷時の製氷皿20のねじりを邪魔することのない、柔軟なものとなっている。カバー34自体も、製氷皿20と同様、低温でも弾性を失わない合成樹脂により成型することが望ましい。
カバー34には、長手方向中心線の両端近くに2個の貫通穴38が形成されている。また、貫通穴38よりカバー中央に寄った箇所には、長手方向中心線を挟んで対称的に、2個の貫通穴39が形成されている。貫通穴38は、円形であって、製氷皿20の下面に形成された断面円形のボス40を通す。貫通穴39は、矩形であって、製氷皿20の下面に形成されたバネ取付リブ41を通す。
ビス36は、貫通穴38から露出するボス40にねじ込んで固定する。カバー34は、ビス36を抜け止め用ストッパとする形で、ボス40の軸線に沿い移動可能に保持される。すなわちビス36は、カバー34を締め付けることなく、カバー34が製氷皿20から抜け落ちないようにする。
カバー34をビス36で抜け止めすると、カバー34の貫通穴39からバネ取付リブ41が突き出す。バネ取付リブ41の先端に形成された水平貫通穴42に、バネ37の両端の取付フック43を係合させる。バネ37は、長手方向中央部に取付フック43があり、長手方向の両端部にヘアピン部44が存在するという形に、バネ鋼の線材を屈曲成形したものである。
ヘアピン部44は、製氷皿20の方向に延びている。このため、取付フック43をバネ取付リブ41の水平貫通穴42に係合させると、ヘアピン部44がカバー34を圧迫する。カバー34は、ヒータ31に押し付けられ、平行リブ32から抜け出さないようにヒータ31を一定荷重で保持する。これにより、ヒータ31が製氷セル21に密着し、熱を効率よく製氷セル21に伝えている。
製氷皿20の長手方向の両縁には、製氷皿20の上端の縁から下向きに延びる風防板45が一体成型されている。風防板45は、製氷皿20に上方から吹き付けられる冷気が製氷セル21の外側面21aに沿って下方に回り込むのを阻止している。
製氷皿20の長手方向両縁に沿った4個の製氷セル21の外側面21aに、1枚ものの長方形状の断熱材27が貼り付けられている。なお、個々の製氷セル21の外側面21aに、製氷セル21の形状に近い台形形状又は四角形状等の断熱材27を貼り付けてもよいし、複数の製氷セル21の外側面21aに、複数の製氷セル21にまたがる1枚ものの断熱材27を貼り付けてもよい。また、複数の製氷セル21にまたがる1枚ものでなく、複数に分けて製氷セル21の外側面21aに貼り付けてもよい。本実施例では、断熱材27にPEFを用いたが、他の樹脂発泡体又は樹脂等の断熱性を有する素材であってもよい。
断熱材27は、風防板45に沿って下方に流れて風防板45の下端から製氷皿20側に回り込む冷気から、製氷セル21の外側面21aを断熱している。
断熱材27を製氷セル21に貼り付けるための方法としては、接着材を用いて、製氷セル21に接着することで、断熱材27を製氷セル21に固定する。離氷時には、離氷装置24により製氷皿20が回転し、突起48が製氷皿ケーシング12に形成された図示しないストッパに当たる。離氷装置24は、これ以後も所定角度だけ製氷皿20を回転させ続けることから、製氷皿20はねじられて変形するため、断熱材27が製氷セル21の外側面21aから外れないように固定すればよい。
又は、断熱材27を製氷セル21に貼り付けるのではなく、断熱材27の上側を風防板45と製氷セル21の外側面21aの上部との間に形成された隙間に挿入して挟持することで固定してもよい。
また、断熱材27の上側を上記のいずれかの方法で固定し、下側をカバー34の上端面に押し当てることで固定してもよく、断熱材27の端部端面の厚みを厚くして、端面に凹設した溝を設けてカバー34の上端面を該溝に差し込むようにして固定してもよい。又は、断熱材27の下側をカバー34と製氷セル21の外側面21aの下部との間に挿入して挟持させる。もしくは、これらの組合せで固定してもよい。
接着剤を用いずに断熱材27を製氷セル21に固定することによって、接着剤を用いて断熱材27を製氷セル21に貼り付けて(接着して)固定する方法と比べて、断熱材27が離氷時における製氷皿20のねじりに対して容易に追従でき、かつ、製氷皿20の剛性を保つことができる。
断熱材27の材質は、軟質の樹脂発泡体であることから、離氷時における製氷皿20のねじりに対して容易に追従できる。更に、断熱材27の表面をスキン層で覆うことで、製氷皿20のねじりによる断熱材と風防板45、カバー34とのそれぞれの接触摩擦を低減することができる。
風防板45には、製氷セル21同士間の長手方向の境界と一致する箇所に、ノッチ46が形成されている。ノッチ46は、1枚の風防板45に2個設けられている。ノッチ46を設けることにより、製氷皿20がねじられたとき、風防板45への応力を分散させ、製氷皿20を構成する樹脂材料の白化や製氷皿20に亀裂が発生することをくい止めることができる。
製氷皿20の支持軸22の側の端には、片側の側面に突起48が形成されている。突起48は、離氷時に製氷皿20にねじりを生じさせるためのものである。
図5は、冷蔵庫の制御ブロック図である。
冷凍サイクルの運転制御とヒータ31への通電制御を含む冷蔵庫1の全体制御をつかさどるのは、図5に示す制御部50である。制御部50には、離氷装置24及びヒータ31の他、冷凍サイクルの一環をなす圧縮機51、庫内各部に冷気を送る送風機52、製氷装置10に給水する給水装置53、温度センサ54、及び製氷室4に配置される氷量センサ55などが接続されている。温度センサ54は、温度制御が必要とされる場所に配置された温度を検知するセンサであり、一例としてサーミスタなどがある。
制御部50は、ヒータ31への通電を次の3段階に制御する。すなわち「通常加熱」と、「通常加熱」に比べ発熱量が小さい「予熱」と、「通常加熱」に比べ発熱量が大きい「急加熱」である。例えば、「通常加熱」の消費電力は5〜6W、「予熱」の消費電力は2W、「急加熱」の消費電力は7〜8Wに設定して、発熱量に差をつけることができる。
図6は、製氷装置の動作を示すフローチャートである。離氷動作を終え、製氷皿20が上向き状態に戻ったところからフローがスタートするものとする。
ステップ#101では、制御部50が給水装置53を動作させ、製氷皿20への給水を行わせる。
製氷室4の温度は、冷凍温度(マイナス18℃に設定されている)の近傍なので、給水が行われると製氷皿20の温度が上昇する。サーミスタ25は、ステップ#102でこの温度上昇を検知する。温度上昇が無い場合は、ステップ#101に戻る。水は、給水されるやいなや冷却されるので、サーミスタ25が検知する温度は、一旦上昇した後、低下し始める。ここからステップ#103に入る。
ステップ#103は、凍結準備ステップである。制御部50は、ヒータ31に「予熱」の通電を行い、水温を所定レートで低下させる。
以後のステップでもヒータ31による加熱が行われる。製氷皿20を下からヒータ31で加熱しつつ凍結させることにより、製氷皿20の内面に接する部位からでなく、製氷皿20の内面から離れた部位から透明氷を成長させることができるので、透明度の高い氷を成長させやすい。
ステップ#103の途中で圧縮機51が停止期間に入ったときは、温度低下に自ずとブレーキがかかる。制御部50は、ヒータ31への通電を中止し、無駄な電力消費を避ける。
制御部50は、また、サーミスタ25の検知温度が所定値以上のとき、例えば1℃以上のときは、ヒータ31への通電を中止する。これにより、水が製氷皿20に接触する箇所から凍結が発生するおそれのない時にまでヒータ31に通電して電力を無駄に消費することが避けられる。
ステップ#104では、サーミスタ25の検知する温度が氷点下まで降下したかどうかを制御部50がチェックする。氷点下まで降下したらステップ#105に進む。
ステップ#105は、氷融解ステップである。制御部50は、ヒータ31に一定時間だけ「急加熱」の通電を行い、製氷皿20を加熱する。サーミスタ25の検知誤差により、ステップ#104からステップ#105に移行するのが遅れ、製氷セル21の内面に氷が付着しているようなことがあったとしても、その氷はこの段階で融解する。そのため、均質な透明氷を得る妨げとなる残留氷を生じることなくステップ#106に移行することができる。
制御部50は、ステップ#105では、圧縮機51が運転中か停止中かにかかわらずヒータ31に「急加熱」の通電を行う。これにより、氷の融解を一気に進めることができる。
ステップ#106は、凍結進行ステップである。制御部50は、サーミスタ25の検知温度が所定温度に降下するまで、ヒータ31に「通常加熱」の通電を行う。
制御部50は、ステップ#106の途中で圧縮機51が停止期間に入ったときは、ヒータ31への通電を中止し、電力の無駄な消費を避ける。但し、ヒータ31への通電を中止したことにより、圧縮機51の運転を再開した時、製氷皿20の内面に凍結が発生している可能性がある。そこで、圧縮機51の運転を再開した後、一定時間だけヒータ31に「急加熱」の通電を行い、製氷皿20の内面に凍結が発生していたらそれを融解する。これにより、ヒータ31への通電が断続するにもかかわらず、透明氷の生成を連続的に行うことができる。
ステップ#107では、サーミスタ25の検知する温度が所定温度まで降下したかどうかを制御部50がチェックする。所定温度、例えばマイナス9℃まで降下したら製氷は完了したと判断し、ステップ#108に進む。
制御部50は、ステップ#108でヒータ31への通電を停止する。一定時間が経過したら、透明氷の生成が確実になったと判断し、ステップ#109に進む。
ステップ#109では、制御部50は離氷装置24に製氷皿20の反転動作を行わせる。離氷装置24が支持軸22まわりに製氷皿20を回転させて行くと、上下反転が完了する少し手前の段階で、突起48が製氷皿ケーシング12に形成された図示しないストッパに当たる。離氷装置24は、これ以後も所定角度だけ製氷皿20を回転させ続けるので、製氷皿20はねじられて変形する。風防板45とカバー34の間には、製氷皿20がねじられても相互接触を生じないだけの隙間47が設けられているので、カバー34の縁と風防板45がこすれ合ってきしみ音を立てたり、摩耗させ合ったりすることはない。
製氷皿20がねじられると、製氷セル21の中の氷は押し出され、製氷室4内に置かれた氷容器10Aに落下する。離氷後、離氷装置24は、製氷皿20を逆方向に回転させ、製氷皿20を元の向きに戻す。これにより、1サイクルの製氷作業が終了する。氷容器10A内の氷量を検知する氷量センサ55は、氷量がまだ十分でないことを検知すれば、引き続き次のサイクルの製氷作業を開始する。氷量センサ55は、氷量が十分存在することを検知すれば、製氷装置10は、製氷作業を休止状態にする。
なお、ステップ#108では、サーミスタ25の検知温度が所定温度に降下した後、制御部50が直ちにヒータ31への通電を停止するのでなく、ヒータ31への通電電流を徐々に減少させて通電停止させてもよい。
図7は、製氷装置の製氷時における水の凍結状態の断面を略示する製氷セル21の概念図である。図7(A)は本発明で、図7(B)は比較例である。図7(a)〜(d)は、水の凍結の進行状態を示す概念図である。図7(a)〜(b)は、図6でのステップ#105の氷融解ステップで「急加熱」の通電を行い、図7(c)〜(d)は、図6でのステップ#106の凍結進行ステップで「通常加熱」の通電を行った状態である。
本発明の実施例である図7(A)について図7(a)〜(d)を説明する。
図7(A)(a)は、凍結の初期の段階である。製氷セル21に入っている水60が、冷気吐出口13から吐出された冷気によって冷やされることで凍結し、表面の氷61が生成され、水60の表面を覆っている。断熱材27を製氷セル21の外側面21aに貼り付けていることから冷気が外側面21aに直接流れないため、断熱材27を貼り付けない場合と比べて(図7(B)(a))、外側面21aの内面に接する部位の凍結速度が遅れている。そのため、表面の氷61の厚さは、外側面21aと内側面21bとで略均等である。
次に図7(A)(b)は、凍結が進行した状態である。表面の氷61が製氷セル21の上部から下部に向かって成長している。図7(A)(a)と同様に、冷気が外側面21aに直接流れないことから、外側面21aの内面に接する部位であって、表面の氷61よりも下部の部位の凍結が進行していないため、急加熱時のヒータの消費電力を小さくして、凍結を進行させることができる。また、表面の氷61の厚さは、外側面21aと内側面21bとで略均等である。
図7(A)(c)は、さらに凍結が進行した状態である。表面の氷61が製氷セル21の上部から下部に向かってさらに成長している。(b)と同様に、冷気が外側面21aに直接流れないことから外側面21aの内面に接する部位であって、表面の氷61よりも下部の部位の凍結が進行していないため、通常加熱時のヒータの消費電力を小さくして、凍結を進行させることができる。また、表面の氷61の厚さは、外側面21aと内側面21bとで略均等である。
図7(A)(d)は、水60がすべて凍結する直前であり、氷内部の凍結が進んでいる状態である。
本実施例によれば、急加熱時及び通常加熱時のステップに渡り、ヒータの消費電力が小さいため、氷内部の凍結が速くなり、製氷時間を短縮するとともにヒータの消費電力を小さくすることができる。
次に比較例である図7(B)について図7(a)〜(d)を説明する。
図7(B)(a)は、凍結の初期の段階である。製氷セル21に入っている水60が冷やされることで凍結して表面の氷61が生成され、水60の表面を覆っている。断熱材27を貼り付けていないことから冷気が製氷セル21の外側面21aに直接流れるため、外側面21aの内面に接する部位の凍結速度が内側面21bの内面に接する部位の凍結速度より速くなる。そのため、製氷セル21の表面の氷61の厚さは、外側面21aの内面に接する部位の氷の方が内側面21bの内面に接する部位の氷より厚い。
図7(B)(b)は、凍結が進行した状態である。表面の氷61が製氷セル21の上部から下部に向かって成長しており、表面の氷61の厚さは、外側面21aの内面に接する部位の氷の厚さの方が内側面21bの内面に接する部位の氷の厚さより厚い。図7(B)(a)と同様に、冷気が外側面21aに直接流れることから外側面21aの内面に接する部位の凍結速度が内側面21bの内面に接する部位の凍結速度より速いため、急加熱時のヒータの消費電力を大きくして、外側面21aの内面に接する部位の凍結速度を遅らせることになる。
図7(B)(c)は、さらに凍結が進行した状態である。表面の氷61が製氷セル21の上部から下部に向かってさらに成長しており、表面の氷61の厚さは、外側面21aの内面に接する部位の氷の厚さの方が内側面21bの内面に接する部位の氷の厚さより厚い。外側面21aの内面に接する部位の氷61が底面に到達するタイミングで、通常加熱へ移行するが、図7(B)(b)と同様に、冷気が製氷セル21の外側面21aに直接流れるため外側面21aの内面に接する部位の凍結速度が速いため、通常加熱時のヒータの消費電力を大きくして、外側面21aの内面に接する部位の凍結速度を遅らせることになる。
図7(B)(d)は、水60がすべて凍結する直前であり、氷内部の凍結が進んでいる状態である。
比較例によれば、急加熱時及び通常加熱時のステップに渡り、ヒータの消費電力が大きいため、氷内部の凍結が遅くなり、製氷時間が長くなるとともにヒータの消費電力が大きくなる。
以上の本発明の実施例によると、製氷皿20の外側面21aに断熱材27を貼り付けることから冷気が直接外側面21aに流れないため、外側面21aの内面に接する部位の凍結速度を遅らせることができる。この結果、急加熱時のヒータの消費電力を小さくすることが可能となる。
外側面21aの内面に接する部位の凍結速度が遅いので、表面の氷61氷が底面まで達する前に、急過熱時から通常加熱へ移行して、ヒータの消費電力を小さくすることができる。また、急加熱時及び通常加熱時でのヒータの消費電力を下げることが可能なため氷内部の凍結が速くなることから、製氷時間の短縮とヒータの消費電力の削減により省エネとなる。
図8は、本発明の変形例となる断熱材28の貼り付けた製氷皿20であり、図8(a)は平面図で、図8(b)はD−D’断面図である。
図8(a)は、長方形状の断熱材28を個々の製氷セル21の外側面21aにそれぞれ貼り付けたものである。
図8(b)は、長方形状の断熱材28を製氷皿20の外側面21aに貼り付けており、断熱材28の上部が風防板45と製氷セル21との交点に、断熱材28の下部が製氷皿20の外側面21aに貼り付けている状態を示すものである。
断熱材28の固定方法については、複数の製氷セル21にまたがる1枚ものである断熱材27の場合と同一である。ただし、製氷セル21の外側面21aの風防板45が配置されてない部分への断熱材28の固定は、接着剤によって固定する。
断熱材28の形状は、一例として、長方形状にしたが、四角、円、楕円等の形状であってもよく、断熱性を確保できる形状であればよい。
さらに断熱材28の上端部を製氷セル21の縁方向に延ばして及び/又は断熱材28の下端部を底面方向に伸ばすことで、断熱材28の形状をL字又はコの字形状として、製氷セル21に接着剤等によって固定してもよい。さらに個々の製氷セル21の凍結速度のバラツキに合わせて、個々の製氷セル21ごとに、断熱材28の形状又は固定方法を変えてもよい。
個々の製氷セル21の凍結速度に合わせて断熱材28の形状を変えることで、個々の製氷セル21での製氷速度のバラツキを略均一化することができることからヒータの最適な制御が可能になり、省エネとなるとともに、効率よく透明氷を生成することができる。
以上で説明した実施形態は、あくまで本発明を実施するに当たっての一例であり、本発明はそれらに限定されるものではない。上述した実施形態に開示された技術的手段に周知慣用技術を適宜組み合わせて得られる態様についても本発明の技術的範囲に含まれる。