JP2013203891A - 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体 - Google Patents

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体 Download PDF

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出 島袋
Makoto Machida
誠 町田
Kenji Hirai
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Abstract

【課題】型内発泡成形法によって発泡成形体を製造する際に表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても発泡粒同士の融着が良好となり、かつ圧縮強度の高い発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の提供。
【解決手段】粒子状のポリスチレン系樹脂に発泡剤を含有させてなり、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤が2.0〜2.5質量部含有され、嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造するために用いる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関し、型内発泡成形法によって発泡成形体を製造する際に表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても発泡粒同士の融着が良好となり、かつ圧縮強度の高い発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、該樹脂粒子から得られる予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。本発明の発泡成形体は、圧縮強度に優れており、軽量盛土を構築するための盛土用部材などとして特に有用であり、軽量盛土を構築する以外の用途として土木用緩衝部材、土木用断熱部材、建築用断熱部材、シート貼り合わせ用芯部材などとしても特に有用である。
ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造するために用いる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子として、該樹脂粒子に溶剤を添加したものは、型内発泡成形法による発泡成形体の製造時に、表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても融着が可能になる。また最高面圧が低く抑えられるので、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
従来、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に可塑剤(溶剤)を添加することに関しては、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1には、ポリスチレン系樹脂粒子径の変動係数(CV値)が5〜15%であるポリスチレン系樹脂粒子を水性懸濁液中に分散させた後、発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、可塑剤100重量部に対して粉末状の難燃剤テトラブロモシクロオクタン33〜300重量部を可塑剤に溶解させてなる難燃剤溶解液を水性懸濁液中に供給して、前記ポリスチレン系樹脂粒子中に前記難燃剤を含浸させることを特徴とする盛土に用いられる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、及びこの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を型内発泡成形法によって発泡成形させて得られたポリスチレン系発泡成形体であって、密度が0.01〜0.033g/cmであり、その発泡成形体の平均弦長が40μm〜120μmであるポリスチレン系発泡成形体が開示されている。
特開2011−16934号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載されたポリスチレン系発泡成形体は、平均弦長40〜120μmの範囲のものであり、この発泡成形体は、溶剤を添加することで弾性率が低下し、機械強度、例えば1%圧縮強度が低下してしまう。このため、所定の強度を満たすために発泡成形体の密度を増加させることが必要となり、密度増加による成形サイクル時間の増加やコストアップの懸念がある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、型内発泡成形法によって発泡成形体を製造する際に表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても発泡粒同士の融着が良好となり、かつ圧縮強度の高い発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、該樹脂粒子から得られる予備発泡粒子及び発泡成形体の提供を課題とする。
前記課題を達成するため、本発明は、粒子状のポリスチレン系樹脂に発泡剤を含有させてなり、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤が2.0〜2.5質量部含有され、嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記芳香族系溶剤が、トルエン、スチレン、エチルベンゼンからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
また本発明は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなることを特徴とする予備発泡粒子を提供する。
また本発明は、前記予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体であって、発泡倍数30倍での気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とする発泡成形体を提供する。
本発明の発泡成形体において、密度が0.020〜0.060g/cmの範囲内であることが好ましい。
本発明の発泡成形体は、盛土用部材、土木用緩衝部材、土木用断熱部材、建築用断熱部材、シート貼り合わせ用芯部材からなる群から選択される1種又は2種以上に用いられるものであることが好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤が2.0〜2.5質量部含有され、嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内である構成としたことによって、型内発泡成形法によって発泡成形体を製造する際に表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても発泡粒同士の融着が良好となり、かつ圧縮強度の高い発泡成形体を製造することができる。
本発明の発泡成形体は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡して得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して得られ、発泡倍数30倍での気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とするものなので、機械強度、例えば圧縮強度が高くなり、所定の強度を満たすために発泡成形体の密度を低くすることができ、成形サイクル時間の短縮化及びコスト低減化を図ることができる。
実施例1で製造した発泡成形体の断面の気泡構造を示す顕微鏡観察画像である。 比較例1で製造した発泡成形体の断面の気泡構造を示す顕微鏡観察画像である。 比較例4で製造した発泡成形体の断面の気泡構造を示す顕微鏡観察画像である。
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、粒子状のポリスチレン系樹脂に発泡剤を含有させてなり、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤が2.0〜2.5質量部含有され、嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とする。
本発明におけるポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(1)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する懸濁重合法、(2)水性媒体及びポリスチレン系樹脂種粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的に或いは断続的に供給して、ポリスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造するシード重合法などが挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂種粒子は、前記(1)の懸濁重合法により製造し分級すればよい。
ここで、本発明におけるポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられる。
更に、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレン系単量体を主成分とする、前記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
そして、ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて型内発泡成形を行う場合に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子のキャビティ内への充填性の観点から、0.3〜2.0mmが好ましく、0.5〜1.4mmがより好ましい。さらに、盛土用部材の場合は、0.6〜1.4mmが好ましい。粒子の平均粒子径が2.0mmを超えると、キャビティ内への予備発泡粒の充填性が悪化するため、充填不良が起こり金型の細部に発泡粒が充填できないため発泡性体を得られない問題があった。一方、粒子の平均粒子径が0.3mm未満であると、成形体の強度が不足し、施工時に成形体が割れるなどの問題があった。
本発明において、ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、高発泡倍率の発泡成形体を得ることができない虞れがあるので、20万〜50万が好ましく、24万〜40万がより好ましい。
なお、前記懸濁重合法及びシード重合法において用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
重合時に水性媒体中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液は、前記懸濁重合法又はシード重合法による重合後の反応液を水性懸濁液として用いても、或いは、前記懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を反応液から分離し、このポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成してもよい。なお、水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
また、前記懸濁重合法又はシード重合法において、スチレン系単量体を重合させる際に、スチレン系単量体の液滴又はポリスチレン系樹脂種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよく、このような懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩などが挙げられ、難水溶性無機塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
そして、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、前記水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤を公知の要領で含浸させる。このような発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であって、常圧でガス状もしくは液状の有機化合物が適しており、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテルなどの低沸点のエーテル化合物、炭酸ガス、窒素、アンモニアなどの無機ガスなどが挙げられ、沸点が−45〜40℃の炭化水素が好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンがより好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ポリスチレン系樹脂粒子に添加する発泡剤の量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して1.0〜10質量部の範囲内であることが好ましく、2.0〜8.0質量部の範囲がより好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前に或いは含浸中に、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤を2.0〜2.5質量部となるように添加する。
本発明において、使用する芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、これらの中でも特に、トルエン、スチレン、エチルベンゼンからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記芳香族系以外の溶剤を添加した場合には、その発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡して得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体を得る際に、発泡粒子同士の融着が悪くなって、成形サイクル時間が長くなり、成形サイクル短縮化の目的が達せられない。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、芳香族系溶剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、2.0〜2.5質量部の範囲であり、2.1〜2.4質量部の範囲がより好ましい。芳香族系溶剤の添加量が2.0質量部未満であると、発泡成形体の表面の伸びが悪くなり、また発泡成形体内部の発泡粒子同士の融着が悪くなるために、成形サイクル時間が長く必要となり、成形サイクルの短縮化を達成できなくなる。芳香族系溶剤の添加量が2.5質量部を超えると、得られる発泡成形体の気泡の平均弦長が大きくなって気泡が粗大化し易くなり、発泡成形体の圧縮強度が低下してしまう。
さらに、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前に或いは含浸中に、テトラブロモシクロオクタン等の難燃剤、難燃助剤を溶解させてなる難燃剤を必要に応じて溶剤に溶解させた溶解液を前記水性懸濁液中に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子に難燃剤及び難燃助剤を含浸させてもよい。なお、含浸は加圧下にてするのが好ましい。なお、水性媒体は、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させている水性懸濁液と相溶性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、前記芳香族系溶剤、難燃剤以外に、物性を損なわない範囲内において気泡調整剤、充填剤、滑剤、架橋剤、着色剤などの添加剤を必要に応じて添加することができ、これら添加剤を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に添加する場合には、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させた水性懸濁液中に添加剤を添加するか、又は、難燃剤溶解液若しくは該難燃剤溶解液中に添加剤を添加すればよい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤が2.0〜2.5質量部含有され、嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内である構成としたことによって、型内発泡成形法によって発泡成形体を製造する際に表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても発泡粒同士の融着が良好となり、かつ圧縮強度の高い発泡成形体を製造することができる。
嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210μm未満であると、発泡成形体を製造する際に表面の伸びが悪くなり、また発泡成形体内部の発泡粒子同士の融着が悪くなるために、成形サイクル時間が長く必要となり、成形サイクルの短縮化を達成できなくなる。前記平均弦長が290μmを超えると、気泡が粗大化し易くなり、発泡成形体の圧縮強度が低下してしまう。
(予備発泡粒子及び発泡成形体)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、水蒸気加熱等により加熱して予備発泡し、予備発泡粒子とする。この予備発泡粒子は、製造するべき発泡成形体の密度と同等の嵩密度となるように予備発泡される。本発明において、その嵩密度は限定されないが、通常は0.020〜0.060g/cmの範囲内が好ましく、0.035〜0.055g/cmの範囲内とするのがより好ましい。
なお、本発明において予備発泡粒子の嵩密度とは、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。
<予備発泡粒子の嵩密度>
先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm
この予備発泡粒子中の気泡の平均弦長は、嵩発泡倍数30倍に予備発泡させた状態で210〜290μmの範囲内である。この予備発泡粒子の気泡の平均弦長が210μm未満であると、発泡成形体を製造する際に表面の伸びが悪くなり、また発泡成形体内部の発泡粒子同士の融着が悪くなるために、成形サイクル時間が長く必要となり、成形サイクルの短縮化を達成できなくなる。前記平均弦長が290μmを超えると、気泡が粗大化し易くなり、発泡成形体の圧縮強度が低下してしまう。
前記予備発泡粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、該予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、水蒸気加熱等により加熱して型内発泡成形し、発泡成形体を製造する。
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.020〜0.060g/cmの範囲内が好ましく、0.035〜0.055g/cmの範囲内とするのがより好ましい。
なお、本発明において発泡成形体の密度とは、JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した発泡成形体密度のことである。
<発泡成形体の密度>
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
<発泡成形体の発泡倍数>
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm
本発明の発泡成形体は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡して得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して得られ、気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とするものなので、機械強度、例えば圧縮強度が高くなり、所定の強度を満たすために発泡成形体の密度を低くすることができ、成形サイクル時間の短縮化及びコスト低減化を図ることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
(ポリスチレン系樹脂粒子の作製)
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブに第三リン酸カルシウム(大平化学社製)120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.4g、ベンゾイルパーオキサイド(純度75質量%)160g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを供給して攪拌羽を100rpmの回転速度にて回転させて攪拌して水性懸濁液を形成した。
次に、攪拌羽を100rpmの回転速度で回転させて水性懸濁液を撹拌しながらオートクレーブ内の温度を90℃まで昇温して90℃にて6時間に亘って保持し、更に、オートクレーブ内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間に亘って保持することによって、スチレン単量体を懸濁重合した。
しかる後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、オートクレーブ内からポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、ポリスチレン粒子を分級して、粒子径が0.2〜1.2mmでかつ重量平均分子量が24万のポリスチレン粒子を得た。
次いで、100リットルの撹拌機付オートクレーブに純水30kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに前記記載の粒子径0.2〜1.2mmで重量平均分子量が24万のポリスチレン核粒子11kg(25質量部)を加えて120rpmで撹拌し液中に分散させた。
次いで、予め用意しておいた乳濁液を75℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水6kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2g、ピロリン酸マグネシウム20gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)110g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート50gを溶解したスチレン5kgを加え、ホモミキサーで撹拌して乳濁化させたものである。その後、ポリスチレン系樹脂粒子中にスチレンと重合開始剤とがよく吸収されるように30分間保持し、その後スチレン28kgを160分かけてオートクレーブ内を75℃から108℃まで0.2℃/分で昇温しながら連続的に滴下した。(滴下が終了した時点において、反応器中に添加されたスチレンは33kg即ち75質量部であり、ポリスチレン系樹脂粒子と添加されたスチレンの合計量は100質量部になる。) 次に、スチレンの滴下が終了してから20分後に、1℃/分の割合で120℃まで昇温し、90分間保持し、ポリスチレン系樹脂粒子を作製した。
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製)
次いで、予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム45g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gをホモミキサーで攪拌し、芳香族系溶剤として、トルエン225g、スチレンモノマー214g、エチルベンゼン78.9gを入れ、難燃剤としてテトラブロムシクロオクタン225g、ジクミルパーオキサイト63gを入れ懸濁液を調製した。
次いで、内容積50リットルの攪拌機付オートクレーブに前記のポリスチレン系樹脂粒子22.54kg、蒸留水20.33kg、前記懸濁液を撹拌し懸濁させた。
懸濁液を反応器に加え始めた時点から30分間で反応器内温度を90℃まで連続的に昇温した。その後、90℃を維持した状態で、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製、商品名ノルマルブタン)1014gを圧入し、20分間で反応器内温度を100℃まで連続的に昇温し、5時間30分保持した後、20℃まで冷却して取り出し、洗浄、脱水、乾燥し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の洗浄時に、JIS1000μm篩を通過しない合着粒子、及びJIS500μm篩を通過する微粉末状重合体を除き、その重量を各々測定した。さらに発泡後の気泡径が完全に安定するまで15℃で3日間熟成させて、メジアン径0.85mmの発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の被覆)
この発泡性スチレン系樹脂粒子4kgを松坂貿易社製レーディゲミキサーM20型(内容量20リットル)に投入した。次いで脂肪酸トリグリセライド4g、ステアリン酸マグネシウム1.6g、軽質炭酸カルシウム3.2g、を順次投入し、230rpmで3分間攪拌した。次いで重量平均分子量300であるポリエチレングリコール1.6g、流動パラフィン1.6gを投入し230rpmで5分間攪拌し、樹脂粒子表面を被覆した。
(発泡成形)
この被覆済みの発泡性スチレン系樹脂粒子を内容量約40リットルの小型バッチ式予備発泡機を用いて、常圧下でゲージ圧力0.05MPaの水蒸気で加熱し嵩倍数30倍に予備発泡した。
この予備発泡粒子を20℃で24時間放置し、乾燥、熟成させた後、面圧計が取付けられ、箱形の成形品(300×400×50mm)が得られる金型を成形機に取付け、スチームによる熱成形を行った。成形は積水工機製作所製ACE−3SPを用い、QS成形モードで成形スチーム圧0.08MPa(ゲージ圧力)、金型加熱4秒、一方加熱0.03MPa接点圧、逆一方加熱4秒、両面加熱10秒、水冷10秒、設定取出面圧0.015MPaの条件として型内発泡成形を行って、密度0.033g/cm(発泡倍数30倍)の発泡成形体を得た。
前記予備発泡粒子中の気泡の平均弦長、発泡成形体の型内発泡成形における成形サイクル評価、得られた発泡成形体の内部融着、表面伸び及び圧縮強度の測定・評価を、下記の通り行った。その結果を表1に記す。
<予備発泡粒子中の気泡の平均弦長>
予備発泡粒子の気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には、予備発泡粒子を略二等分となるように切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(JOEL社製 商品名「JSM−6360LV」)を用いて15倍に拡大して撮影する。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描く。この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。又、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。
<成形サイクル評価>
前記発泡成形における1回の成形サイクルの所要時間(単位:秒)を測定し、次の評価基準:
良好(○):成形サイクルが500秒以下
やや不良(△):成形サイクルが500〜600秒
不良(×):成形サイクル600秒以上
にて評価した。
<内部融着の評価>
得られた箱形の発泡成形品を衝撃によって破断させ、その破断面の発泡粒子100〜150個を含む任意の範囲について、全粒子数(A)と粒子内で破断している粒子数(B)を計数し、以下の式により融着率(%)を算出した。
融着率=(B)×100/(A)
内部融着の評価基準は、融着率70%以上を良好、70%未満を不良とした。
<発泡成形体の表面伸びの評価>
発泡成形体の外観を目視にて評価した。発泡成形体表面の発泡粒子同士が接合した境界部分が平滑である場合を良好、境界部分に凹凸があり平滑性が劣るものを不良とした。
<圧縮強度の評価>
成形圧0.08Mpaの水蒸気圧力で成形した発泡成形品から、縦50mm×横50mm×厚さ50mmの試験片を切り出し、この試験片の曲げ試験をJIS−A9511に準拠して行い、圧縮強度(単位:kg/cm)とした。
圧縮強度の評価基準は、
良好(○):圧縮強度2.0kg/cm以上
不良(×):圧縮強度2.0kg/cm未満
とした。
[実施例2]
実施例1において、添加する芳香族系溶剤をトルエン225.43g、スチレンモノマー214.15gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体について、実施例1と同様の測定評価を行った。その結果を表1に記す。
[実施例3]
実施例1において、添加する芳香族系溶剤をトルエン225.43g、スチレンモノマー214.15g、エチルベンゼン112.71gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体について、実施例1と同様の測定評価を行った。その結果を表1に記す。
[比較例1]
実施例1において、芳香族系溶剤を添加しなかったこと、及び発泡剤のノルマルブタン(小池化学社製、商品名ノルマルブタン)1,668gを圧入したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体について、実施例1と同様の測定評価を行った。その結果を表1に記す。
[比較例2]
実施例1において、添加する芳香族系溶剤をトルエン225.43g、スチレンモノマー214.15g、エチルベンゼン225.43gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体について、実施例1と同様の測定評価を行った。その結果を表1に記す。
[比較例3]
実施例1において、添加する芳香族系溶剤に代えて、芳香族系以外の溶剤であるジイソブチルアジペート(DIBA)を518.48g添加し、それ以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体について、実施例1と同様の測定評価を行った。その結果を表1に記す。
[比較例4]
実施例1において、添加する芳香族溶剤をトルエン225.43gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた予備発泡粒子及び発泡成形体について、実施例1と同様の測定評価を行った。その結果を表1に記す。
表1の結果より、本発明に係る実施例1〜3において作製した予備発泡粒子は、気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内となり、この予備発泡粒子を型内発泡して発泡成形体を製造する際に、成形サイクルの短縮化を図ることができた。実施例1〜3において得られた発泡成形体は、内部融着及び表面伸びが良好であり、圧縮強度にも優れていた。
一方、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に芳香族系溶剤を添加しなかった比較例1では、予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が小さくなり、成形サイクル時間が長くなり、得られた発泡成形体は、内部融着及び表面伸びが不良であった。
比較例2は、芳香族系溶剤の量を実施例1〜3よりも増加したことによって、予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が大きくなり、気泡が粗大化した。さらに、得られた発泡成形体は、圧縮強度が低くなった。
比較例3は、芳香族系以外の溶剤を添加したことによって、成形サイクル時間が実施例1〜3よりも長くなり、成形サイクル短縮化が達成できなかった。
比較例4は、芳香族系溶剤の量を実施例1〜3よりも少なくしたことによって、予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が小さくなり、成形サイクル時間が長くなり、得られた発泡成形体は、内部融着及び表面伸びが不良であった。
[発泡成形体の気泡構造の比較]
図1は、実施例1で製造した発泡成形体の断面の気泡構造を示す顕微鏡観察画像である。
図2は、比較例1で製造した発泡成形体の断面の気泡構造を示す顕微鏡観察画像である。
図3は、比較例4で製造した発泡成形体の断面の気泡構造を示す顕微鏡観察画像である。
実施例1で製造した発泡成形体は、比較例1,4で製造した発泡成形体に比べ、気泡径が大きくなっており、かつ発泡粒子中の表面と中心部の気泡径バラツキが比較的小さくなっている。
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造するために用いる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関し、型内発泡成形法によって発泡成形体を製造する際に表面の伸びがよく、成形時の蒸気圧が低くても発泡粒同士の融着が良好となり、かつ圧縮強度の高い発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、該樹脂粒子から得られる予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。本発明の発泡成形体は、圧縮強度に優れており、軽量盛土を構築するための盛土用部材などとして特に有用であり、軽量盛土を構築する以外の用途として土木用緩衝部材、土木用断熱部材、建築用断熱部材、シート貼り合わせ用芯部材などとしても特に有用である。

Claims (6)

  1. 粒子状のポリスチレン系樹脂に発泡剤を含有させてなり、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族系溶剤が2.0〜2.5質量部含有され、嵩発泡倍数30倍に発泡させた予備発泡粒子中の気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
  2. 前記芳香族系溶剤が、トルエン、スチレン、エチルベンゼンからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
  3. 請求項1または2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなることを特徴とする予備発泡粒子。
  4. 請求項3記載の予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体であって、発泡倍数30倍での気泡の平均弦長が210〜290μmの範囲内であることを特徴とする発泡成形体。
  5. 密度が0.020〜0.060g/cmの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の発泡成形体。
  6. 盛土用部材、土木用緩衝部材、土木用断熱部材、建築用断熱部材、シート貼り合わせ用芯部材からなる群から選択される1種又は2種以上に用いられるものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の発泡成形体。
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