以下、本発明のエアバッグの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2において、10はエアバッグで、このエアバッグ10を備えたエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれるもので、車両としての自動車を構成する車体の車室の収納位置、例えば本実施の形態ではルーフサイド部11に配置されている。そして、このエアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての座席に着席した乗員の側方にほぼ面状に展開し、乗員を保護するようになっている。
なお、以下、車幅方向である両側方向、上下方向、及び、前後方向などの方向は、車体の直進方向を基準とし、下方(図1に示す矢印D方向)、上方(図1に示す矢印U方向)、前側方向(図1に示す矢印F方向)、後側方向(図1に示す矢印R方向)、外方などを説明する。
そして、この自動車の車体は、図示しないが、車室内に乗員が着座可能な前席である1列目席、後席である2列目席及び3列目席などの座席を備え、これらの座席に対応して、開口可能な被覆部である窓部(サイドウィンドウ)15,16,17を備えたドアが設けられている。また、車室の両側部には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれるフロントピラー21、Bピラーとも呼ばれるセンターピラー22、Cピラーとも呼ばれるリアピラー23、及び、Dピラーとも呼ばれるリアピラー24が設けられている。そして、これら窓部15〜17、ドア及び各ピラー21〜24などにより、車室の両側の側部に所定面が構成されている。また、これらピラー21〜24の上側、すなわち窓部15〜17の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネル25が設けられ、この車体パネル25を介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラー21の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラー24の後側にはリアガラスが設けられている。そして、ルーフサイド部11は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分と交差する方向に伸びるフロントピラー21及びリアピラー24のほぼ全長にかかる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー21及びリアピラー24とで仮想的に構成される弧の内側に、エアバッグ10が展開する所定面が設定される。
なお、ここで、センターピラー22とは、前後の端部のピラーではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラーを示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば5本以上のピラーを備える場合があるが、前から3本目以後のピラーは、リアピラーとして説明する。
そして、エアバッグ装置は、座席に着座した乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、ルーフサイド部11に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ10に加え、後席の後部上側に位置してエアバッグ10に膨張のための膨張ガスを供給するガス発生器であるインフレータ31、エアバッグ10を取り付ける図示しないブラケット、折り畳んだエアバッグ10に沿って取り付けられた図示しない樹脂製のカバー体、折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する図示しない形状保持部材及び制御装置などが備えられ、モジュールが構成されている。
エアバッグ10は、前後方向に沿って長手方向を有する長手状の(扁平な)袋状に形成されたエアバッグ本体部34と、このエアバッグ本体部34の一の縁部である上縁部35の中央部に形成されインフレータ31からの膨張ガスを供給するガス供給部としてのインフレータ接続部36と、エアバッグ本体部34の上縁部35に形成された複数の取付部37と、エアバッグ本体部34の前側の下端部に取り付けられたテザー部38となどを備え、前後方向を長手方向として細長く折り畳んでルーフサイド部11に収納される。
エアバッグ本体部34は、単数、あるいは複数の基布を縫製などによってインフレータ接続部36を除く位置の周縁部を周辺接合部40により接合することで袋状に形成されている。また、このエアバッグ本体部34の上縁部35には、全ての取付部37が配置される取付エリアA1と、取付エリアA1の外方に位置し取付部37が配置されない外方エリアA2とが設定されており、取付エリアA1に対応して、インフレータ接続部36と連通する第1の膨張部41が区画され、外方エリアA2に対応して、インフレータ接続部36及び第1の膨張部41と連通する第2の膨張部42が区画されている。
取付エリアA1は、全ての取付部37を介して車体側のルーフサイド部11に固定される部分であり、エアバッグ本体部34の上縁部35の長手方向の一端部である前端部から、このエアバッグ本体部34の長手方向の他端部である後端部近傍、すなわち長手方向(前後方向)の中央部よりも後方(インフレータ接続部36よりも後方)の位置に亘って連続する部分である。この取付エリアA1は、本実施の形態では、エアバッグ10を車体側に取り付けた状態で、フロントピラー21の上端近傍から、センターピラー22、及びリアピラー23の上端部の後方に亘る位置までに対応する領域となっている。したがって、この取付エリアA1は、第1の膨張部41、及び、この第1の膨張部41に連続し第2の膨張部42の第1の膨張部41側である前側の領域に対応している。換言すれば、この取付エリアA1は、車両の1列目席前方から2列目席までに対応し、外方エリアA2よりも長手状の領域である。
また、外方エリアA2は、オーバハング部分とも呼び得るもので、エアバッグ本体部34の上縁部35において、取付エリアA1に連続してこの取付エリアA1の後方に位置している。すなわち、この外方エリアA2は、第2の膨張部42の後側全体の領域に対応している。換言すれば、この外方エリアA2は、取付エリアA1よりも後方のエアバッグ本体部34の上縁部35全体に亘る領域である。この外方エリアA2は、本実施の形態では、エアバッグ10を車体側に取り付けた状態で、リアピラー23の上端部の後方からリアピラー24に亘る位置までに対応する領域となっている。
また、第1の膨張部41は、取付エリア側膨張部とも呼び得るもので、展開時に1列目席及び2列目席の乗員の側方に対向して(少なくとも窓部15、及び窓部16の一部を覆い、かつ、窓部17の前側を覆う位置に)展開する保護部であり、1列目席(窓部15)に対応する一端側膨張部である前側膨張部44と、2列目席(窓部16の一部)に対応する他端側膨張部である後側膨張部45とが、連通部46により互いに連結されているとともに、この連通部46の下方が、例えば1列目席の側方に対向し膨張ガスが導入されない非膨張部47となっている。
前側膨張部44は、連通部46の前側に連通し、インフレータ接続部36に直接的に連通している。また、後側膨張部45は、連通部46の後側に連通し、この連通部46を介してインフレータ接続部36と連通している。
また、連通部46は、インフレータ接続部36よりも後側に位置してこの連通部46に連通し、エアバッグ本体部34の上縁部35に沿って前後方向を長手方向として直線状に形成され、前後方向を長手方向である軸方向として略水平な柱状に展開する。
また、第2の膨張部42は、外方膨張部とも呼び得るもので、展開時に3列目席の乗員の側方に対向して(窓部17の後側を覆う位置に)展開する保護部である。したがって、第1の膨張部41と第2の膨張部42とは、本実施の形態において、例えば窓部17の上方に位置する取付部37のうち最も前部に位置する取付部37(最後から2番目の取付部37)と、窓部17よりも前方に位置する取付部37のうち最も後部に位置する取付部37(最後から3番目の取付部37)との間から上下方向に沿って後方下側に向けて傾斜した仮想線Lの前後に形成される。さらに、この第2の膨張部42は、エアバッグ本体部34の長手方向に沿う前後方向の寸法がエアバッグ本体部34の長手方向に対して交差(直交)する上下方向の寸法よりも大きく設定されている。換言すれば、この第2の膨張部42は、前後方向に長手状に形成されている。また、第2の膨張部42は、第1の膨張部41側である前側から後側へと徐々に上下寸法が小さくなるように、下縁部49(エアバッグ本体部34の他の縁部)が徐々に上方向に傾斜して(上縁部35側へと接近して)形成されている。
そして、第1の膨張部41の前側膨張部44及び後側膨張部45と、第2の膨張部42とは、それぞれ接合部51により複数のセルである気室52に分割されている。
第1の膨張部41の各気室52、及び、第2の膨張部42のうち、取付エリアA1に対応する位置の気室52は、それぞれ主として上下方向に沿って延びる気室となっている。さらに、第2の膨張部42のうち、外方エリアA2に対応する位置の各気室52は、それぞれ第1の膨張部41側(後側膨張部45側)と連続しエアバッグ本体部34の長手方向である前後方向に沿って(上縁部35に沿って)延びる筒状の一連の気室である保持気室54,54となっている。すなわち、これら保持気室54は、第1の膨張部41から第2の膨張部42に亘って連続する接合部51を挟んで上下に互いに隣接して形成されている。換言すれば、第2の膨張部42は、屈曲点となる気室(セルパターン)を備えず、エアバッグ本体部34の長手方向に沿う保持気室54,54のみを備えている。また、最上部に(上縁部35に最も隣接して)位置する保持気室54は、連通部46とほぼ直線状に連通する気室であり、かつ、最後端に位置する(第2の膨張部42に最も近い)取付部37側である前側から後側へと、上下寸法(膨張径)が徐々に小さくなるように形成されている。したがって、最上部に位置する保持気室54は、前側の上下寸法が後側の上下寸法よりも大きく形成されている。このため、第2の膨張部42は、各保持気室54により前後方向の剛性が向上されており、膨張展開した状態で、自立性(自己保形性)を有している。
また、インフレータ接続部36は、エアバッグ本体部34の上縁部35の取付エリアA1に、先端側(下流側)が後方に向けて屈曲するように突設されている。さらに、このインフレータ接続部36の内部には、必要に応じて、膨張ガスを導くためのガス導入部56が挿入されている。このガス導入部56は、インナパイプなどとも呼び得るもので、例えば基布などにより一体に形成され、連通部46内に沿って位置する筒状の導入部本体56aと、この導入部本体56aから分岐されてインフレータ接続部36内に位置する筒状の連結部56bとを有している。
また、各取付部37は、エアバッグ本体部34の上縁部35の取付エリアA1で、かつ、インフレータ接続部36を除く位置に互いに離間されて突設されている。これら取付部37は、ルーフサイド部11に設定された固定位置である固定点58に対して、図示しないボルトなどの固定具を介して固定される。
また、テザー部38は、エアバッグ10を車室に連結するためのものであり、吊り紐、テザー、テザーベルト、あるいはストラップなどとも呼ばれる。
また、カバー体は、ガーニッシュあるいはピラーガーニッシュとも呼ばれるもので、ルーフサイド部11のフロントピラー21及びリアピラー24のほぼ全長に配置され、テザー部38を覆うとともに、折り畳んだエアバッグ10の一部を覆うようになっている。そして、このカバー体は、エアバッグ10の展開時に一部が屈曲することによりエアバッグ10を膨張展開可能としている。
一方、インフレータ31は、円柱状のインフレータ本体部61を備え、このインフレータ本体部61に、薬剤を燃焼させる燃焼式(パイロテクニックタイプ)、膨張ガスを高圧で貯蔵は、する貯蔵式(ストレージタイプ)、あるいはこれら燃焼式と貯蔵式とを組み合わせたハイブリッド式などの図示しないガス発生手段が内蔵されている。そして、このインフレータ本体部61には、膨張ガスを噴射する図示しないガス噴射部が設けられ、このガス噴射部が接続管62によりエアバッグ10のインフレータ接続部36(ガス導入部56)に接続されている。また、インフレータ本体部61には、ハーネスと呼ばれる電線が接続されるコネクタ部が設けられている。
さらに、制御装置は、インフレータ31に電気的に接続されている。
また、形状保持部材は、所定の形状に折り畳まれたエアバッグ10の形状を保持して折り崩れを防止するもので、破断可能なスリットを設けた筒状部材や、破断可能な粘着テープなどが用いられる。
そして、このエアバッグ10の折畳方法は、種々の方法を採ることができるが、例えばエアバッグ本体部34の下縁部49側から上縁部35側へとロール状に折り畳む。
そして、このエアバッグ装置(カーテンエアバッグモジュール)を車室内に持ち込み、ヘッドライニング及びピラーガーニッシュなどの内装部材が取り付けられる前に車体への取付作業を行う。この取付作業は、エアバッグ10の複数の取付部37、テザー部38、インフレータ31に設けたインフレータ取付部、及び、取付ブラケットをそれぞれボルトなどの固定具で車体に固定することにより行われる。また、インフレータ31から導出されたハーネスを車体に備えた制御装置に接続する。次いで、車体の天井パネルにヘッドライニングを取り付け、各ピラー21〜24にピラーガーニッシュを取り付けてエアバッグ装置を覆うことにより、エアバッグ装置の車体への取付作業、すなわち、折り畳んだエアバッグ10を所定面の上縁部に沿った収納位置であるルーフサイド部11に配置する作業が完了する。
そして、車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ31が作動し、このインフレータ31から噴射される膨張ガスがインフレータ接続部36からエアバッグ10内へと導入される。
この導入された膨張ガスは、ガス導入部56によって連通部46に流入することで、エアバッグ10のロール状に折り畳まれた部分が、ヘッドライニング及び前後のピラーガーニッシュを押しのけつつ膨張展開する。この後、膨張ガスは、連通部46を介して第1の膨張部41の前側膨張部44及び後側膨張部45へと直接流入する(矢印Gに示す)とともに、この後側膨張部45を介して第2の膨張部42へと直接流入する。この結果、各気室52(保持気室54)が膨張し、エアバッグ10が車室の側部内面である所定面に沿った所定方向である略下方に迅速にカーテン状に展開して、窓部15〜17及びセンターピラー22及びリアピラー23,24などを覆う。この状態で、第1の膨張部41は、取付エリアA1の各取付部37によってルーフサイド部11に吊り下げ支持され、第2の膨張部42は、膨張した長手状の各保持気室54によって前後方向に剛性が付与されることによって自立性(自己保形性)を有し、取付部37を介することなく自由端状に自立保持される。そして、このエアバッグ10は、各膨張部41,42により、側方に投げ出されてくる乗員を拘束してその頭部などを保護する。
このように、本実施の形態によれば、車体側の被取付部(ルーフサイド部11)の固定位置に取り付ける全ての取付部37を配置した取付エリアA1の外方に位置する外方エリアA2に少なくとも対応して第2の膨張部42を設け、この第2の膨張部42に、取付エリアA1の(少なくとも)一部に対応して設けた第1の膨張部41側と連続して上縁部35に沿って保持気室54を少なくとも外方エリアA2に対応して設けることにより、この保持気室54によって第2の膨張部42のエアバッグ本体部34の長手方向の剛性を向上して第2の膨張部42に自立性を付与できる。したがって、車体側の被取付部の固定位置(固定点58)の設定に制限が生じる場合でも、第2の膨張部42によって保護エリアを充分に確保できる。
すなわち、車体側の被取付部の固定位置(固定点58)は、車体側のレイアウトにより設定される領域が制限されるため、取付部37のみでエアバッグ10を支持するようにした場合には、固定位置に対応する部分にしか保護エリアを設定できないのに対して、本実施の形態では、エアバッグ本体部34に、自立性を備えた第2の膨張部42を形成することにより、取付部37により固定される第1の膨張部41に加えて、自立性によって自己保持される第2の膨張部42によって保護エリアを拡大できる。したがって、エアバッグ10による保護エリアを充分に確保できる。
しかも、第2の膨張部42の最上部に位置する保持気室54は、取付部37(固定点58)に最も近い前側の上下寸法を、取付部37(固定点58)から相対的に遠い位置の上下寸法よりも大きくすることにより、自重による第2の膨張部42の垂れ下がりが発生することがなく、所定位置に第2の膨張部42を確実に膨張展開させることができる。
特に、第2の膨張部42の長手寸法が上下寸法より小さい場合、エアバッグ本体部34が第1及び第2の膨張部41,42の間の位置で折れ曲がりやすくなるので、上記のように保持気室54を長手方向に沿って形成することにより、付帯設備を設けることなく展開状態のエアバッグ10を保持できる。
また、保持気室54を複数設けることにより、第2の膨張部42の自立性をより向上できる。
なお、上記の第1の実施の形態において、必要な保護エリアの大きさ、あるいは膨張ガスの流れなどを考慮して、図3に示す第2の実施の形態のように、保持気室54を、上下に3つ(以上)形成してもよい。
次に、第3の実施の形態を図4を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のエアバッグ10は、上記の第1の実施の形態の第2の膨張部42と第1の膨張部41との間の位置(最後端に位置する取付部37に対応する位置)において、上縁部35に、下方(エアバッグ本体部34の内方)へと円弧状などに屈曲した屈曲部65が形成されているものである。
そして、第2の膨張部42には、屈曲部65によってより強固な自立性(自己保持性)を付与でき、第2の膨張部42を展開状態でより確実に保持できる。
なお、上記の第3の実施の形態の屈曲部65は、上記の第2の実施の形態に対して適用してもよい。
次に、第4の実施の形態を図5を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のエアバッグ10は、第1の膨張部41と第2の膨張部42との境界付近、例えば最後部に位置する取付部37の後方の位置などに、エアバッグ本体部34の長手方向(前後方向)に対して交差(直交)する上下方向に沿って折線部67を形成し、エアバッグ本体部34(エアバッグ10)を折り畳んだ状態で、この折線部67から第2の膨張部42の少なくとも一部を第1の膨張部41(の後側膨張部45)側である前側へと折り返して重ね合わせたものである。
このため、折り畳んだ状態でのエアバッグ本体部34(エアバッグ10)の長手寸法(収納長さ)を、第1の膨張部41の長手寸法とほぼ等しく設定できるので、折り畳んだ状態のエアバッグ本体部34(エアバッグ10)の長手寸法をよりコンパクト化でき、エアバッグ10の車体側への設置スペースをより低減できる。このため、エアバッグ10は、車体側の機能部品との設置場所の重複を回避でき、コンパクトに折り畳んで車体側に配置できる。
また、折線部67から折り返されて第1の膨張部41側に折り重ねた第2の膨張部42は、膨張ガスの導入によって折線部67から復帰して展開し(図5の想像線)、3列目席の乗員の
側方に対向して窓部17の後側を覆うことができる。
なお、上記の第4の実施の形態の折線部67は、上記の第2及び第3の実施の形態にそれぞれ適用してもよい。
次に、第5の実施の形態を図6及び図7を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のエアバッグ10は、第2の膨張部42の気室52に、エアバッグ10の展開を補助する補助気室71が設定されているものである。
この補助気室71は、エアバッグ押し出し気室とも呼ぶべきもので、最上部に位置する保持気室54の前端部を上縁部35側(上側)の周辺接合部40に亘って最後部の取付部37,37間の位置で連続して接合した接合部72により、連通部46の後方の位置で、前側から後側へと、上方から下方に向けて傾斜した形状に形成され、第1の膨張部41の後側膨張部45側の気室52への膨張ガスの逆流を防止するとともに、折り畳まれたエアバッグ10(エアバッグ本体部34)を膨張展開により下方へと押し出すものである。
また、接合部72により、上側に位置する保持気室54は、一端側である前端側が閉塞されており、他端側である後端側は、下側に位置する保持気室54の後端側と連通している。このため、保持気室54,54は、補助気室71から下側の保持気室54及び上側の保持気室54に亘って、一連の膨張ガスの流れによって膨張するようになっている。
また、エアバッグ本体部34の後端部の下部、すなわち第2の膨張部42の後端部の下部には、切欠部74が形成されている。
そして、エアバッグ10を折り畳む際には、切欠部74の前端の位置からエアバッグ本体部34の長手方向(前後方向)に対して交差(直交)する上下方向に沿って形成した折線部75により第2の膨張部42の後側を前側へと折り返して重ね合わせる(図7(a))ことで収納長さを調整しつつ、エアバッグ本体部34の下縁部49側から上縁部35側へとロール状に折り畳み(図7(b))、さらにこのロール状に折り畳んだエアバッグ本体部34の後端部を前端部側へと、補助気室71の後端部に対応する位置(取付エリアA1と外方エリアA2との境界に対応する位置)に上下方向に沿って形成した折線部76により前側へと折り返して重ね合わせた折返部77を形成し(図7(c))、エアバッグ本体部34の最終的な収納長さを調整する。すなわち、折返部77を、展開状態での補助気室71に対応する位置、換言すれば取付エリアA1の最後部に形成する。
したがって、インフレータ31の作動によってインフレータ接続部36からエアバッグ10内へと導入された膨張ガスがガス導入部56によって連通部46へと流入し、エアバッグ10のロール状に折り畳まれた部分が、ヘッドライニング及び前後のピラーガーニッシュを押しのけつつ膨張展開する。この後、膨張ガスは、連通部46を介して第1の膨張部41の前側膨張部44及び後側膨張部45へと流入して各気室52を膨張させるとともに、この後側膨張部45を介して補助気室71へと流入してこの補助気室71を下方へと膨張させ、折返部77を上方から後側下方へと押し出し(矢印Xに示す)、この折返部77を形成する第2の膨張部42を迅速に展開させる。
さらに、補助気室71を通過した膨張ガスは、下側に位置する保持気室54を前端側から後端側に流れ、この下側の保持気室54の後端側から上側に位置する保持気室54の後端側へと流入し、前端側へと折り返しつつ上側の保持気室54へと流入し、この上側の保持気室54の前端を閉塞する接合部72に衝突して、上下の保持気室54,54が充分な膨張固さでそれぞれ膨張する。
このように、本実施の形態では、補助気室71の膨張により、折返部77を展開方向である後側下方へと押し出しつつ、第2の膨張部42よりも先に他の未膨張部分へと膨張ガスが回り込むことを防止し、膨張ガスの噴出方向に対して反対方向に折り返されているために膨張ガスの勢いが相対的に弱くなる折返部77(後端側)へと、膨張ガスの流れを阻害することなく膨張ガスを円滑に流入させることができる。この結果、エアバッグ10を、安定的で、かつ、早期に所定位置に膨張展開させることができる。
また、保持気室54,54は、膨張ガスが異なる方向(対向する方向)から合流することなく単独の(一方通行の)膨張ガスの流れ(ガスフロー)によって膨張することにより、この膨張ガスの流れの下流端を閉塞する接合部72に膨張ガスが突き当たることによって、保持気室54,54を所定の充分な膨張固さで膨張させることができる。
なお、上記の第5の実施の形態において、図8に示す第6の実施の形態のように、補助気室71の前端部を形成する接合部51から、下縁部49側(下側)の周辺接合部40に亘って連続して縫製などにより接合した接合部78とすることで、補助気室71から前側の気室52への膨張ガスの逆流(矢印G1)を防止し、補助気室71から保持気室54へと、より集中的に膨張ガスを流入させ、エアバッグ10(エアバッグ本体部34)の後端側の展開速度をより向上してもよい。
また、上記の第5の実施の形態において、図9に示す第7の実施の形態のように、連通部46の後端部から補助気室71に亘って連続する接合部79を前後方向に沿って縫製などにより接合して形成することで、連通部46から第2の膨張部42の前側に位置する気室52へと直接流入する膨張ガス(矢印G2)を遮断して、連通部46から補助気室71へと直接流入する膨張ガスの量を相対的に増加させ、膨張展開時に折返部77を下方へと押し出す力をより大きくしてもよい。
また、上記の第6の実施の形態と上記の第7の実施の形態とを組み合わせてもよい。
また、上記の各実施の形態のエアバッグ10は、図10に示す第8の実施の形態のように、例えば前席の上方に位置する天井部を開閉可能、あるいは前席の上方に天井部がない、いわゆるオープンカーなどの自動車の収納位置であるドア81の上部に配置してもよい。この場合には、例えば折り畳み状態では上記の第4の実施の形態の折線部67、あるいは第5の実施の形態の折線部75,76によりエアバッグ本体部34の後端側を折り返して重ね合わせ、ドア81の上部の収納位置82に収納することで、エアバッグ10の車体側への設置スペースをより低減できる。また、エアバッグ本体部34の下縁部49に取付エリアA1と外方エリアA2とを前後に設定し、第1の膨張部41を前席の側方に展開させ、第2の膨張部42を後席83の側方の窓部(サイドウィンドウ)84及びセンターピラー22を覆うように展開させることで、上記の各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
さら、上記の各実施の形態において、エアバッグ10は、所定面に沿って面状に膨張展開する必要がある適宜のエアバッグ装置に適用できる。