以下、本発明のエアバッグの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図4において、10はエアバッグで、このエアバッグ10を備えたエアバッグ装置11は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれるもので、車両である自動車の車体の車室14の収納位置としてのルーフサイド部15に配置されている。そして、このエアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護用エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての乗員の側方にほぼ面状に所定方向である下方へと展開し、乗員Aの頭部Hなどを保護するようになっている。
なお、以下、前後方向、車幅方向である両側方向、上下方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、前側方向(矢印F方向)、後側方向(矢印R方向)、上方(矢印U方向)、下方(矢印D方向)、車室14の外方(矢印W方向)、車室14の内方(矢印C方向)などを説明する。
そして、この自動車の車体は、車室14内に乗員が着座可能な前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ上部に開口可能なガラス18a,19aにより覆われた(第1及び第2の)窓部(サイドウィンドウ)18,19を備えた図示しないドアが設けられている。また、車室14の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれる(第1の)柱状体としてのフロントピラー21、Bピラーとも呼ばれる(第2の)柱状体としての(第1の)ピラー部であるセンターピラー22、Cピラーとも呼ばれる(第3の)柱状体としての(第2の)ピラー部であるリアピラー23が設けられており、フロントピラー21の後方でかつセンターピラー22の前方に窓部18(ガラス18a)が位置し、センターピラー22の後方でかつリアピラー23の前方に窓部19(ガラス18a)が位置している。そして、これら窓部18,19(ガラス18a,19a)、ドア及び各ピラー21,22,23により、車室14の両側部に所定面24が構成されている。また、これらピラー21,22,23の上側、すなわち窓部18,19の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネル25が設けられ、この車体パネル25を介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラー21の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラー23の後側にはリアガラスが設けられている。そして、収納位置としてのルーフサイド部15は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分といわば交差する方向に伸びるフロントピラー21及びリアピラー23のほぼ全長にかかる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー21及びリアピラー23とで仮想的に構成される弧の内側に、エアバッグ10が展開する所定面24が設定される。
なお、ここで、センターピラー22とは、前後の端部のピラー部ではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラー部を示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラー部を備える場合があるが、前から3本目以後のピラー部は、リアピラー23として説明する。
そして、エアバッグ装置11は、前後の座席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、車体パネル25と各ピラー21,22,23の上端から天井へと連続する内装材としての天井被覆部材であるヘッドライニング26となどに囲まれたルーフサイド部15すなわち車体のドア開口部の上縁に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ10と、後席の後方あるいは上方に収納されこのエアバッグ10にガスを供給するガス発生器であるインフレータ27となどを備えている。また、このエアバッグ装置11は、エアバッグ10を車体パネルに取り付ける金属板をプレス加工などして形成された図示しないブラケット、及び折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する破断可能な筒状あるいは紐状の形状保持部材としてのスリーブ、エアバッグ10の前端部に連結されたテザー部としてのテザーベルト29などが備えられている。また、各ピラー21,22,23のそれぞれの車室14の室内側は、構造物としてのカバー体すなわち被覆内装材であるピラーガーニッシュ30により覆われている。
そして、エアバッグ10は、インフレータ27が挿入接続されガスが導入されるインフレータ接続部としてのガス導入部32と、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体部33とを備え、複数の取付部34を介して上縁部の複数箇所が車体側に取り付けられて、細長く折り畳んだ状態でセンターピラー22の上方であるルーフサイド部15に前後方向に沿って長手状に収納される。本実施の形態では、エアバッグ10は、いわゆるセンターマウントタイプのものであり、ガス導入部32が例えばエアバッグ本体部33の上部の前後方向の中央部に突設されている。また、本実施の形態では、エアバッグ10の内部に、補強部材36が配置されている。
ガス導入部32及びエアバッグ本体部33は、単数または複数、例えば本実施の形態では車室14の室内側に位置する基布である第1の基布41と、車室14の室外側である車体側に位置する基布である第2の基布42とにより構成されている。そして、第1及び第2の基布41,42は、外縁部が主区画線であるエアバッグ接合部45により接合されることで、エアバッグ10にガス導入部32とエアバッグ本体部33とが設定されている。このエアバッグ接合部45は、エアバッグ本体部33の長手方向に沿って第1及び第2の基布41,42の前端部、下端部及び後端部に亘って連続するとともに、上端部からガス導入部32の前後両端部に亘って連続している。このため、ガス導入部32の後端部(上端部)が、インフレータ27が挿入される挿入開口43となっている。
また、補強部材36は、ガス導入部32をガスの圧力などに対して補強するとともにガスをエアバッグ本体部33内の前後に分配するためのものであり、第1及び第2の基布41,42間に挟まれ、これら第1及び第2の基布41,42に一体的に固定されて位置している。そして、この補強部材36は、単数または複数の補強用基布47が折り返されて筒状に重ね合わせられ補強部材接合部48により接合されることで、ガス導入部32の内部に沿って上下方向に位置する筒状の突出補強部36aと、この突出補強部36aの下端部と連通するとともにエアバッグ本体部33内にて前後方向に分岐して延びる筒状の通気部36bとを備えて構成される。なお、この補強部材36は、図2では説明をより明確にするために図示を省略している。
なお、各接合部45,48は、例えば縫製、接着、あるいは縫製とシール手段との併用などにより略気密あるいは高度な気密に構成されている。
エアバッグ本体部33は、第1及び第2の基布41,42が重ねられてエアバッグ接合部45で接合されて構成され、流入したガスにより膨張展開するように形成されている。このエアバッグ本体部33は、中空部である気室であり、複数の分割区画線である本体接合部51により複数の膨張部(セル)52に分割されている。そして、このエアバッグ本体部33の膨張部52は、補強部材36を介してガス導入部32と直接連通し、インフレータ27から供給されたガスが、補強部材36の通気部36bを介してガス導入部32から直接供給されるようになっている。
ここで、この膨張部52には、本実施の形態では、第1ないし第5の膨張部54,55,56,57,58が設定されている。
第1の膨張部54は、エアバッグ本体部33の前端部に位置して前席の前側の側方、すなわちフロントピラー21及び窓部18(ガラス18a)の車室14側に対向する位置に膨張展開する前端膨張部であり、上下方向に長手状に形成されている。この第1の膨張部54の上部は、前方へと下側に傾斜している。
第2の膨張部55は、第1の膨張部54の後部に隣接して位置して前席の後側の側方、すなわちセンターピラー22の前方にて窓部18(ガラス18a)の車室14側に対向する位置に膨張展開する(第1の)窓部用膨張部であり、前席の乗員Aの頭部Hと対向する部分である。この第2の膨張部55は、上部55aが補強部材36の通気部36bの前端部と直接連通している。また、この第2の膨張部55は、前側部が後側部に対して下方へと突出して形成されており、前側部の下端部が第1の膨張部54の下端部と略等しい高さ位置となっている。したがって、この第2の膨張部55の下部55bは、下端部が後側部から前側部へと下方に段差状となるように形成されている。
第3の膨張部56は、第2の膨張部55の後部に隣接して位置して前席と後席との間の側方、すなわちセンターピラー22の車室14側に対向する位置に膨張展開する(第1の)ピラー部用膨張部であり、上下方向に沿って長手状に形成され、上部56aがガス導入部32の下端部に対向して位置している。すなわち、この上部56aには、補強部材36の一部、本実施の形態では、補強部材36の突出補強部36aと通気部36bとが連続する部分、すなわち突出補強部36aの下端部が位置している。さらに、この第3の膨張部56は、センターピラー22の形状に対応して、上部56aから下部56bへと、前方下側に向けて傾斜している。
第4の膨張部57は、第3の膨張部56の後部に隣接して位置して後席の前側の側方、すなわちセンターピラー22の後方にて窓部19(ガラス19a)の車室14側に対向する位置に膨張展開する膨張部であり、エアバッグ本体部33の下端部の位置で前後方向に沿って長手状に形成されている。また、この第4の膨張部57の上部には、第3の膨張部56と第5の膨張部58とを連通する連通路59が前後方向に沿って形成されている。この連通路59は、補強部材36の通気部36bの後部、すなわち第3の膨張部56の上部56aと直接連通している。
第5の膨張部58は、後席の後側の側方、すなわち窓部19(ガラス19a)及びリアピラー23の車室14側に対向する位置に膨張展開する後端膨張部であり、上下方向に沿って長手状に形成されている。この第5の膨張部58は、上部58aが連通路59と連通し、下部58bが第4の膨張部57の後部に隣接している。
そして、本体接合部51は、第1及び第2の基布41,42を車幅方向に接合して構成されている。本実施の形態では、この本体接合部51には、前側から後側へと、第1ないし第4の区画接合部61,62,63,64が設定されている。なお、この本体接合部51は、例えば縫製、接着、あるいは縫製とシール手段との併用などにより略気密あるいは高度な気密に構成されている。
第1の区画接合部61は、第1の膨張部54と第2の膨張部55とを前後に区画するもので、エアバッグ接合部45の前側寄りの位置である窓部18(ガラス18a)に対向する位置の上端部から、前方下側に向けて上下方向に沿って直線長手状に延びて形成され、先端側である下端がエアバッグ接合部45の下端部に対して上方に離間されている。したがって、この第1の区画接合部61の先端(下端)には、エアバッグ接合部45との間に、第1の膨張部54と第2の膨張部55とを連通する連通口66が形成されている。また、この第1の区画接合部61は、補強部材36の通気部36bの前方に対向して位置している。
第2の区画接合部62は、第2の膨張部55内を前後に区画してガスの流れを制御するもので、第1の区画接合部61よりも後方で、かつ、エアバッグ接合部45の前側寄りの位置である窓部18(ガラス18a)に対向する位置の下端部から、上側に向けて短手状に延びて形成されている。
第3の区画接合部63は、第2の膨張部55と第3の膨張部56とを前後に区画する(第1の)区画部であり、第2の区画接合部62よりも後方で、かつ、エアバッグ接合部45の前端部寄りの位置である窓部18(ガラス18a)に対向する位置の下端部から、後方上側に向けて上下方向に沿って直線長手状に延びる(第1の)区画部本体である直線部63aと、この直線部63aの上端部に連続する(第1の)突出部63bと、この突出部63bに連続する(第1の)折り返し部63cとを備えている。そして、突出部63bは、直線部63aの上端部から後方上側に向けて、すなわちガス導入部32の下端部に向けて補強部材36の通気部36bの下部の位置まで延びている。また、折り返し部63cは、突出部63bに対して前方へと円弧状に湾曲して折り返され、補強部材36の下部に沿って位置している。したがって、この折り返し部63cの上部には、エアバッグ接合部45との間に、第2の膨張部55と第3の膨張部56とを連通する連通口67が形成されている。そして、この第3の区画接合部63により、第2の膨張部55の上部55a、及び第3の膨張部56の上部56aの車室14側への膨張量が抑制されている。したがって、これら第2及び第3の膨張部55,56は、第3の区画接合部63により、上部55a,56aの車室14内方への膨張量が下部55b,56bの車室14内方への膨張量よりも小さく設定されている。
これら第1ないし第3の区画接合部61,62,63は、それぞれフロントピラー21よりも後方で、かつ、センターピラー22よりも前方の位置、すなわち窓部18(ガラス18a)の車室14側に対向する位置に配置されている。
第4の区画接合部64は、第3の膨張部56と第4の膨張部57とを区画するとともに、第4の膨張部57と第5の膨張部58及び連通路59とを区画するものであり、エアバッグ接合部45の後端部寄りの位置である窓部19(ガラス19a)に対向する位置の下端部から、前方上側に向けて上下方向に沿って直線長手状に延びて第4の膨張部57と第5の膨張部58とを前後に区画する基端部64aと、この基端部64aの上端部に連続し前方上側に向けて傾斜した直線長手状に延びて連通路59と第4の膨張部57とを上下に区画する中間部64bと、この中間部64bの前端部に連続し前方下側に向けて傾斜した直線長手状に延びて第3の膨張部56と第4の膨張部57とを前後に区画する先端部64cとを備えている。そして、先端部64cの先端(下端)は、エアバッグ接合部45の下端部の上方に離間されて位置している。このため、この先端部64cの下端には、エアバッグ接合部45との間に、第3の膨張部56と第4の膨張部57とを連通する連通口68が形成されている。また、中間部64bは、第3の区画接合部63の突出部63bの上側及び折り返し部63cよりも下方に位置している。換言すれば、第3の区画接合部63の突出部63bの上側及び折り返し部63cが、第4の区画接合部64よりも上方に位置している。
取付部34は、例えば車体取付用の取付片であり、エアバッグ本体部33の上縁部の所定位置に複数形成されている。そして、取付部34は、エアバッグ本体部33を構成する第1及び第2の基布41,42と一体に形成され、例えば、これら第1及び第2の基布41,42を重ね縫着して形成されている。
ヘッドライニング26は、例えば表皮体を備えた合成樹脂などにより形成され、ルーフサイド部15のフロントピラー21及びリアピラー23のほぼ全長から天井部に亘って配置され、折り畳まれたエアバッグ10を含むエアバッグ装置11の車室14の室内側を覆っている。このヘッドライニング26の下端部は、ピラーガーニッシュ30に係合されている。そして、このヘッドライニング26は、エアバッグ10の展開時にルーフサイド部15において下端部が屈曲するように変形することでピラーガーニッシュ30の上端から離反して、エアバッグ10を車室14内へと膨張展開可能としている。
インフレータ27は、細長い円筒状に形成されている。このインフレータ27は、薬剤を燃焼させる燃焼式(パイロテクニックタイプ)、ガスを高圧で貯蔵する貯蔵式(ストレージタイプ)、あるいはこれら燃焼式と貯蔵式とを組み合わせたハイブリッド式などのガス発生手段が内蔵されている。そして、このインフレータ27には、ガスを噴射するガス噴射部71が長手方向の一端部に設けられ、このガス噴射部71がエアバッグ10の挿入開口43から、すなわち後方からガス導入部32内へと挿入されて固定されている。さらに、インフレータ27の他端部には、ハーネスと呼ばれる電線が接続される図示しないコネクタ部が設けられている。このコネクタ部は、インフレータ27をガス導入部32内へと挿入した状態でこのガス導入部32の外側に位置している。そして、このコネクタ部を介して、インフレータ27は図示しない制御装置と電気的に接続され、この制御装置からの電気信号によりインフレータ27の動作が制御されている。
テザーベルト29は、エアバッグ10を例えばフロントピラー21の位置で車室14に連結するためのものであり、吊り紐、テザー、あるいはストラップなどとも呼ばれる。このテザーベルト29は、例えば本実施の形態において、エアバッグ10(エアバッグ本体部33)の前部下側にて第1の膨張部54の前方に位置している。
ピラーガーニッシュ30は、所定面24の一部をなすもので、例えば表皮体を備えた合成樹脂などにより上下方向に沿って長手状に形成され、各ピラー21,22,23の車室14の室内側を覆って配置されており、フロントピラー21の位置でテザーベルト29を覆っている。
スリーブは、所定の形状に折り畳まれたエアバッグ10の形状を保持して折り崩れを防止するもので、破断可能なスリットを設けた筒状部材や、破断可能な粘着テープなどが用いられる。
次に、エアバッグ10の折畳工程及び折畳形状を説明する。
本実施の形態において、エアバッグ10は、まず、エアバッグ本体部33を平面状に広げた状態から、ガス導入部32の挿入開口43にインフレータ27の一端側、すなわちガス噴射部71側を挿入し、このインフレータ27をエアバッグ10から外側に露出させた状態として一体的に固定する。
そして、エアバッグ本体部33を下端部、すなわち第1ないし第5の膨張部54,55,56,57,58の下部から車体側すなわち所定面24側(第2の基布42側)に第3の区画接合部63の直線部63aを含む程度まで巻き上げる、いわゆる外ロール状に折り畳んで集積部73を形成するとともに、第2及び第3の膨張部55,56の上部55a,56a及び連通路59をこの集積部73の上部に、両側方向にジグザグ状に重ねるように、パラソル状に折り畳んだ重ね部としての案内部74を重ねる。すなわち、集積部73には、第3の区画接合部63の突出部63b及び折り返し部63cよりも下方に位置する第1の膨張部54の下部、第2の膨張部55の下部55b、第3の膨張部56の下部56b、第4の膨張部57及び第5の膨張部58の下部58b(エアバッグ本体部33の下側領域B1)が配置され、案内部74には、第3の区画接合部63の突出部63b及び折り返し部63c以上に位置する第1の膨張部54の上部、第2の膨張部55の上部55a、第3の膨張部56の上部56a、連通路59及び第5の膨張部58の上部58a(エアバッグ本体部33の上側領域B2)が配置される。特に、第3の区画接合部63の突出部63b及び折り返し部63cは、案内部74のうち、集積部73と連続する車外側の下端の位置P(図3)に配置される。この結果、エアバッグ10が所定の細長い形状に折り畳まれる。この後、スリーブなどを用いてエアバッグ10の展開時の圧力で結合解除すなわち破断可能となるように折り畳み形状を保持する。このようにして、エアバッグ10が細長く折り畳まれ、かつ、折畳形状が保持された状態となり、カーテンエアバッグモジュールとなるエアバッグ装置11が構成される。
そして、上記のように折り畳まれたエアバッグ10を備えるエアバッグ装置11を車室14内に持ち込み、ヘッドライニング26及びピラーガーニッシュ30などの内装材が取り付けられる前に車体への取付作業を行う。この取付作業は、エアバッグ10の複数の取付部34及びテザーベルト29を図示しないボルトなどの固定具により車体に取り付け固定することにより行われる。このとき、センターピラー22に相当する位置にインフレータ27が固定される。また、インフレータ27から導出されたハーネスを車体に備えた制御装置に接続する。次いで、車体の天井パネルにヘッドライニング26を取り付けてエアバッグ装置11を覆うとともに、各ピラー21,22,23にピラーガーニッシュ30をそれぞれ取り付けて、エアバッグ装置11の車体への取付作業が完了する。この取付状態で、エアバッグ装置11がヘッドライニング26及びピラーガーニッシュ30によって車室14内と隔離されるとともに、ガス導入部32に挿入されたインフレータ27と、ロール状に折り畳まれたエアバッグ本体部33とが、ピラーガーニッシュ30の上方の位置に保持される。
次に、エアバッグ10の展開動作を説明する。
車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ27が作動し、このインフレータ27のガス噴射部71から噴射されるガスがガス導入部32を膨張させた後、エアバッグ本体部33内へと導入されて、エアバッグ本体部33が車室14の側部の所定面24に沿って下方へと面状に膨張展開して乗員Aを保護する。
より詳細には、エアバッグ10にガス導入部32にてガスが供給されると、このガス導入部32からガスが導入されたエアバッグ本体部33の案内部74の一部の膨張により押し出された集積部73がヘッドライニング26の下端部を車室14の室内側へと押しのけるように変形させ、ピラーガーニッシュ30の上端部から離反させて形成した開口部76から車室14内へと突出する。
車室14内に突出したエアバッグ本体部33は、案内部74が集積部73を車外側へと案内する一方で、この案内部74は、第1及び第2の基布41,42が互いに接合されている第3の区画接合部63の突出部63b及び折り返し部63cの位置は膨張せず、この第3の区画接合部63の突出部63b及び折り返し部63cの前後に位置する第2及び第3の膨張部55,56の上部55a,56aが膨張する。そこで、例えば前席の乗員Aの頭部Hが窓部18のガラス18aに接触した、いわゆるヘッドオングラス状態(以下、HOG状態という)である場合、センターピラー22の前部近傍に位置する前席の乗員Aの頭部Hの位置に対向する第3の区画接合部63の突出部63b及び折り返し部63cの位置近傍でエアバッグ本体部33は膨張が規制されているため、案内部74の車外側の端部が乗員Aの頭部Hと窓部18のガラス18aとの間に無理なく入り込み(図4(a)及び図4(b))、続いてガスにより集積部73が膨張展開する。この結果、エアバッグ本体部33の展開挙動が安定し、HOG状態の乗員Aの頭部Hとガラス18aとの間に展開した第2の膨張部55により、乗員Aの頭部Hを保護する。また、第3の膨張部56では、下部56bの車室14側への膨張量が上部56aよりも相対的に大きいことで、この第3の膨張部56の下部56bがセンターピラー22の下部と早期に接触して(図2)張りが持たされ、乗員Aを強固に支持し、保護性能を確保でき、特に米国法規(FMVSS)226に規定する車外放出軽減性能を実現できる。したがって、HOG状態への対応と、乗員Aの保護性能とを両立できる。なお、後席の乗員については、窓部19のガラス19aに対向して展開した第4の膨張部57及び第5の膨張部58により頭部などを保護する。
特に、第3の区画接合部63が、直線部63aの上部に連続して、第3の膨張部56の上部56aの位置で後方へと突出する突出部63bを備えるとともに、この突出部63bに連続して、この突出部63bから前方へと折り返されて第2の膨張部55の上部55aに位置する折り返し部63cを備えるので、第3の膨張部56の上部56aの車室14内方への膨張量を下部よりも小さく規制する第3の区画接合部63を容易に構成できる。
そして、このようにエアバッグ本体部33の膨張量のチューニングのみで乗員保護性能を満足できるので、エアバッグ本体部33の膨張量の増大やエアバッグ本体部33のドアトリムへの引っ掛け、あるいはエアバッグ本体部33のピラー21,22,23での張りや内圧の増加などの対応が不要である。
また、エアバッグ本体部33の上部にガス導入部32を設け、エアバッグ本体部33は、折り畳み状態で、突出部63b及び折り返し部63cよりも下方の下側領域B1を車室14外方すなわち車外側に巻き上げて集積部73を形成するとともに、突出部63b及び折り返し部63cを含む上側領域B2を、突出部63b及び折り返し部63cが車室14外方となるように集積部73に重ねて案内部74を形成するので、突出部63b及び折り返し部63cの近傍を窓部18(ガラス18a)に沿わせて展開させることができ、乗員Aの頭部Hと窓部18(ガラス18a)との間にエアバッグ本体部33をより効果的に入り込ませることができる。
次に、第2の実施の形態を図5及び図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第2の実施の形態は、上記の第1の実施の形態に加えて、エアバッグ10のエアバッグ本体部33の第5の膨張部58が、窓部19(窓ガラス19a)の車室14側に対向して位置する(第2の)窓部用膨張部である第5の前部膨張部81と、リアピラー23の車室14側に対向して位置する(第2の)ピラー部用膨張部である第5の後部膨張部82とに前後に分割されているものである。
第5の前部膨張部81は、後席の乗員Aの頭部Hと対向する部分であり、上下方向に沿って長手状に形成され、上部81aが連通路59の後端部と直接連通している。
第5の後部膨張部82は、第5の前部膨張部81の後部に隣接して位置して後席の後部の側方、すなわちリアピラー23の車室14側に対向する位置に膨張展開するものであり、上下方を向に沿って長手状に形成され、上部82aが連通路59の後端部と直接連通している。
また、本体接合部51は、第1ないし第4の区画接合部61,62,63,64に加えて、区画部である第5の区画接合部84を備えている。この第5の区画接合部84は、第3の区画接合部63と同様に、第4の区画接合部64よりも後方で、かつ、エアバッグ接合部45の後端部寄りの位置である窓部19(ガラス19a)に対向する位置の下端部から、後方上側に向けてすなわち第4の区画接合部64の基端部64aに対して拡開状に上下方向に沿って直線長手状に延びる(第2の)区画部本体である直線部84aと、この直線部84aの上端部に連続する(第2の)突出部84bと、この突出部84bに連続する(第2の)折り返し部84cとを備えている。そして、突出部84bは、直線部84aの上端部から後方上側に向けて突出している。また、折り返し部84cは、突出部84bに対して前方へと円弧状に湾曲して折り返されている。したがって、この折り返し部84cの上部には、エアバッグ接合部45との間に、連通路59と第5の前部膨張部81と第5の後部膨張部82とを連通する連通口86が形成されている。そして、この第5の区画接合部84により、第5の前部膨張部81の上部81a、及び第5の後部膨張部82の上部82aの車室14側への膨張量が抑制されている。したがって、これら膨張部81,82は、第5の区画接合部84により、上部81a,82aの車室14内方への膨張量が下部81b,82bの車室14内方への膨張量よりも小さく設定されている。
そして、エアバッグ10を折り畳む際には、上記の第1の実施の形態と同様に、集積部73及び案内部74を形成する。集積部73には、第3及び第5の区画接合部63,84の突出部63b,84b及び折り返し部63c,84cよりも下方に位置する第1の膨張部54の下部、第2の膨張部55の下部55b、第3の膨張部56の下部56b、第4の膨張部57及び第5の膨張部58の下部58bである第5の前部膨張部81の下部81b及び第5の後部膨張部82の下部82b(エアバッグ本体部33の下側領域B1)が配置され、案内部74には、第3及び第5の区画接合部63,84の突出部63b,84b及び折り返し部63c,84c以上に位置する第1の膨張部54の上部、第2の膨張部55の上部55a、第3の膨張部56の上部56a、連通路59及び第5の膨張部58の上部58aである第5の前部膨張部81の上部81a及び第5の後部膨張部82の上部82a(エアバッグ本体部33の上側領域B2)が配置される。特に、第3及び第5の区画接合部63,84の突出部63b,84b及び折り返し部63c,84cは、案内部74のうち、集積部73と連続する車外側の下端の位置P(図3)に配置される。
そして、エアバッグ10の展開の際には、上記の第1の実施の形態と同様に収納状態から順次展開するが、第1及び第2の基布41,42が互いに接合されている第5の区画接合部84の突出部84b及び折り返し部84cの位置は膨張せず、第5の区画接合部84の突出部84b及び折り返し部84cの前後に位置する膨張部81,82の上部81a,82aが膨張するので(図6)、例えば後席の乗員Aの頭部Hが窓部19のガラス19aに接触したHOG状態である場合、リアピラー23の前部近傍に位置する後席の乗員Aの頭部Hの位置に対向する第5の区画接合部84の突出部84b及び折り返し部84cの位置が膨張することなく、案内部74の車外側の端部が乗員Aの頭部Hと窓部18のガラス18aとの間に無理なく入り込む。
このように、上記の第1の実施の形態の構成を、後席にも適用でき、同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記の各実施の形態において、エアバッグ本体部33を構成する基布は2枚に限らず、1枚でも3枚以上でもよい。
また、エアバッグ本体部33の膨張部52は、センターピラー22またはリアピラー23とその前方に位置する窓部18または窓部19との内側に対向するピラー部用膨張部及び窓部用膨張部を備えていれば、第1ないし第5の膨張部54,55,56,57,58を設定する構成の他に、例えば6以上の膨張部を設定する構成や、2以上4以下の膨張部を設定する構成などとしてもよい。